(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20231122BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20231122BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M10/0587
(21)【出願番号】P 2021173467
(22)【出願日】2021-10-22
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 洋明
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/235476(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/148866(WO,A1)
【文献】特開2016-103361(JP,A)
【文献】国際公開第2011/036960(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00-10/39
H01M50/40-50/497
H01M 4/00-4/62
H01G11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平な直方体形状の収容空間を有する電池ケースと、
前記電池ケースに収容された捲回電極体と、
前記電池ケースと前記捲回電極体とに接続された第1電極端子と第2電極端子と
を有し、
前記捲回電極体は、帯状の第1セパレータと、帯状の第1電極板と、帯状の第2セパレータと、帯状の第2電極板とを備えており、
前記第1セパレータと前記第1電極板と前記第2セパレータと前記第2電極板とは、
長さ方向を揃えられ、順に重ねられ、前記第1電極板の幅方向に設定された捲回軸周りに捲回されており、かつ、
前記捲回軸に直交した断面が矩形部と該矩形部を挟み込む第1湾曲部および第2湾曲部とを有する形状にされて前記電池ケースの収容空間に収容されており、
前記第1電極板の一部は、前記捲回軸に沿った第1側において前記第1セパレータと前記第2セパレータとからはみ出ており、前記捲回軸に直交した方向に沿って束ねられて前記第1電極端子に接合されており、
前記第2電極板の一部は、前記捲回軸に沿った第2側において前記第1セパレータと前記第2セパレータとからはみ出ており、前記捲回軸に直交した方向に沿って束ねられて前記第2電極端子に接合されており、
前記捲回軸に直交する断面において、
前記捲回電極体の内周領域では、前記第1セパレータと前記第2セパレータとは、それぞれ前記第1電極板および前記第2電極板よりも前記捲回電極体の内側に延びており、
前記第1セパレータと前記第2セパレータとのうちの一方のセパレータの、前記捲回電極体の最内周を構成する部分は、前記第1湾曲部の中で折り曲げられており、該一方のセパレータの内周側端部は、前記捲回電極体の捲回軸周りにおいて、前記第1電極板と前記第1電極端子とが接合された第1接合部または前記第2電極板と前記第2電極端子とが接合された第2接合部と、該第1湾曲部の第1湾曲頂点との間に配置されており、
前記第1セパレータと前記第2セパレータとのうちの他方のセパレータの、前記捲回電極体の最内周を構成する部分は、前記第2湾曲部の中で折り曲げられており、該他方のセパレータの内周側端部は、前記捲回電極体の捲回軸周りにおいて、前記第1接合部または前記第2接合部と、前記第2湾曲部の第2湾曲頂点との間に配置されている、
二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許4630855号公報には、発電要素である電極体と、電極体を収容する電池ケースと、電極体と電池ケースとを接続する電極端子を備える二次電池が開示されている。同公報で開示される二次電池は、帯状のセパレータと、帯状の負極板と、帯状の正極板とが重ねられて捲回軸方向に捲回された捲回電極体を備えている。かかる捲回電極体では、捲回軸方向において、電極板の一部がセパレータから外方に突出するように形成されている。そして、この突出部分には、対応する電極の電極端子が接合されている。
【0003】
一方、特開2008-204781号公報には、捲回電極体の作製方法が開示されている。同公報で開示される捲回電極体の作製方法では、まず、帯状のセパレータと、帯状の負極板と、帯状の正極板とを重ね合わせて捲回し、渦巻状の電極体を形成する。次いで、この渦巻状の電極体を押しつぶして扁平状にする。このとき、捲回電極体を構成するシートの捲回始端部を、電極体の最内周における所定の位置に配置することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許4630855号公報
【文献】特開2008-204781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本発明者は、捲回電極体と電極端子とのよりよい接合を実現したい、と考えている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示される二次電池は、扁平な直方体形状の収容空間を有する電池ケースと、上記電池ケースに収容された捲回電極体と、上記電池ケースと上記捲回電極体とに接続された第1電極端子と第2電極端子とを有する。上記捲回電極体は、帯状の第1セパレータと、帯状の第1電極板と、帯状の第2セパレータと、帯状の第2電極板とを備えている。上記第1セパレータと上記第1電極板と上記第2セパレータと上記第2電極板とは、長さ方向を揃えられ、順に重ねられ、上記第1電極板の幅方向に設定された捲回軸周りに捲回されており、かつ、上記捲回軸に直交した断面が矩形部と該矩形部を挟み込む第1湾曲部および第2湾曲部とを有する形状にされて上記電池ケースの収容空間に収容されている。上記第1電極板の一部は、上記捲回軸に沿った第1側において上記第1セパレータと上記第2セパレータとからはみ出ており、上記捲回軸に直交した方向に沿って束ねられて上記第1電極端子に接合されている。上記第2電極板の一部は、上記捲回軸に沿った第2側において上記第1セパレータと上記第2セパレータとからはみ出ており、上記捲回軸に直交した方向に沿って束ねられて上記第2電極端子に接合されている。
【0007】
上記捲回軸に直交する断面において、上記捲回電極体の内周領域では、上記第1セパレータと上記第2セパレータとは、それぞれ上記第1電極板および上記第2電極板よりも上記捲回電極体の内側に延びている。また、上記第1セパレータと上記第2セパレータとのうちの一方のセパレータの、上記捲回電極体の最内周を構成する部分は、上記第1湾曲部の中で折り曲げられており、該一方のセパレータの内周側端部は、上記捲回電極体の捲回軸周りにおいて、上記第1電極板と上記第1電極端子とが接合された第1接合部または上記第2電極板と上記第2電極端子とが接合された第2接合部と、該第1湾曲部の第1湾曲頂点との間に配置されている。また、上記第1セパレータと上記第2セパレータとのうちの他方のセパレータの、上記捲回電極体の最内周を構成する部分は、上記第2湾曲部の中で折り曲げられており、該他方のセパレータの内周側端部は、上記捲回電極体の捲回軸周りにおいて、上記第1接合部または上記第2接合部と、上記第2湾曲部の第2湾曲頂点との間に配置されている。
【0008】
かかる構成の二次電池では、捲回電極体の捲回始端部が第1湾曲部または第2湾曲部で折れ曲がり、第1セパレータの内周側端部または第2セパレータの内周側端部が、第1湾曲頂点または第2湾曲頂点と、第1接合部または第2接合部と、の間に配置されている。そのため、第1セパレータの内周側端部または第2セパレータの内周側端部が予め定められた位置から多少ずれても、電極端子と捲回電極体との接合に関わりにくくなっている。ここで開示される二次電池では、電極端子と捲回電極体との接合が、セパレータの共ズレによって阻害されにくくなっている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、二次電池100の部分断面図である。
【
図3】
図3は、捲回電極体20の構成を説明する模式図である。
【
図4】
図4は、捲回電極体の作製方法の模式図である。
【
図5】
図5は、捲回電極体20の捲回軸に直交した断面の模式図である。
【
図6】
図6は、捲回電極体220の捲回軸に直交した断面の一部の模式図である。
【
図7】
図7は、捲回電極体320の捲回軸に直交した断面の一部の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、ここで開示される二次電池の一実施形態を説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。ここで開示される技術は、特に言及されない限りにおいて、ここで説明される実施形態に限定されない。各図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。また、数値範囲を示す「A~B」などの表記は、特に言及されない限りにおいて「A以上B以下」を意味するとともに、「Aを上回り、かつ、Bを下回る」の意味をも包含する。なお、以下に説明する図面において、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
【0011】
本明細書において「二次電池」とは、電解質を介して一対の電極(正極と負極)の間で電荷担体が移動することによって充放電反応が生じる蓄電デバイス一般をいう。かかる二次電池は、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等のいわゆる蓄電池の他に、電気二重層キャパシタ等のキャパシタなども包含する。以下では、上述した二次電池のうち、リチウムイオン二次電池を対象とした場合の実施形態について説明する。
【0012】
《第1実施形態》
〈二次電池100〉
図1は、二次電池100の部分断面図である。
図1では、略直方体のケース本体12の片側の幅広面に沿って、内部を露出させた状態が描かれている。
図2は、
図1のII-II断面図である。
図2では、略直方体のケース本体12の片側の幅狭面に沿って、内部を露出させた状態が描かれている。
図1,2に示されているように、二次電池100は、電池ケース10と、捲回電極体20と、正極端子30および負極端子40と、を有している。なお、正極端子30は、ここで開示される二次電池における第1電極端子の一例である。負極端子40は、ここで開示される二次電池における第2電極端子の一例である。
【0013】
〈電池ケース10〉
電池ケース10は、
図1,2に示されているように、一側面が開口した略直方体の角形形状を有するケース本体12と、開口に装着された蓋14とを有している。この実施形態では、ケース本体12および蓋14は、軽量化と所要の剛性を確保するとの観点で、それぞれアルミニウムまたはアルミニウムを主体とするアルミニウム合金で形成されている。
【0014】
〈ケース本体12〉
ケース本体12は、
図1,2に示されているように、捲回電極体20を収容しており、捲回電極体20を収容するための開口12hを有している。ケース本体12は、一側面が開口した扁平な直方体の収容空間を有している。ケース本体12は、
図1に示されているように、略矩形の底面12aと、一対の幅広面12bと、一対の幅狭面12cとを有している。一対の幅広面は、それぞれ底面12aのうち長辺から立ち上がっている。一対の幅狭面12cは、それぞれ底面12aのうち短辺から立ち上がっている。開口12hは、一対の幅広面の長辺と一対の幅狭面12cの短辺とで囲まれて形成されている。
【0015】
またケース本体12は、捲回電極体20と一緒に、図示しない電解液を収容していてもよい。電解液としては、非水系溶媒に支持塩を溶解させた非水電解液を使用できる。非水系溶媒の一例として、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート系溶媒が挙げられる。支持塩の一例として、LiPF6等のフッ素含有リチウム塩が挙げられる。
【0016】
〈蓋14〉
蓋14は、ケース本体12の開口12hに取り付けられている。そして、蓋14の周縁部が、ケース本体12の開口12hの縁に接合される。かかる接合は、例えば、隙間がない連続した溶接によるとよい。かかる溶接は、例えば、レーザー溶接によって実現されうる。ケース本体12および蓋14は、捲回電極体20の収容数、サイズ等に応じた大きさを有している。
【0017】
詳細な図示は省略するが、この実施形態では、蓋14には、ガス排出弁および注液口が設けられている。ガス排出弁は、二次電池100の内圧が所定値以上になったときに破断して、二次電池100内のガスを外部に排出するように構成された薄肉部である。注液口は、ケース本体12に蓋14を接合した後に電解液を注液するための貫通孔である。注液口は、例えば、封止部材により封止されている。
【0018】
この実施形態では、蓋14には、正極端子30と、負極端子40とが取り付けられている。正極端子30と負極端子40とによって、電池ケース10と捲回電極体20とは接続されている。
【0019】
〈電極端子〉
正極端子30は、内部端子31と、外部端子32とを備えている。負極端子40は、内部端子41と、外部端子42とを備えている。内部端子31,41は、それぞれインシュレータ72を介して蓋14の内側に取り付けられている。外部端子32,42は、それぞれガスケット71を介して蓋14の外側に取り付けられている。内部端子31,41は、それぞれケース本体12の内部に延びている。正極の内部端子31の先端は、正極集電箔21aの未形成部21a1に接続されている。負極の内部端子41の先端は、負極集電箔22aの未形成部22a1に接続されている。
【0020】
図1,2に示されているように、正極の内部端子31は、基部31aと、接続片31bとを備えている。基部31aは、例えば、インシュレータ72を介して、蓋14の内表面に沿って配置される部位である。接続片31bは、例えば、基部31aの一端から延びた部位である。この実施形態では、接続片31bは、ケース本体12の内方に向かって延びている。
図2に示されているように、接続片31bが延びた方向における該接続片31bの端部は、正極の未形成部21a1に接合されている。かかる接合手段は、特に限定されず、例えば、超音波接合、レーザー溶接、抵抗溶接等の従来の接合手段でありうる。なお、負極側の内部端子41についても、正極側と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0021】
〈捲回電極体20〉
図3は、捲回電極体20の構成を説明する模式図である。捲回電極体20は、二次電池100の発電要素であり、絶縁フィルム(図示は省略)などで覆われた状態で、ケース本体12に収容されている。
図1,3に示されているように、捲回電極体20は、帯状の第1セパレータ25と、帯状の正極板21と、帯状の第2セパレータ26と、帯状の負極板22と、を備えている。なお、正極板21は、ここで開示される二次電池における第1電極板の一例である。負極板22は、ここで開示される二次電池における第2電極板の一例である。
【0022】
〈正極板21〉
正極板21は、予め定められた幅および厚さの正極集電箔21a(例えば、アルミニウム箔)に、幅方向の片側の端部に一定の幅で設定された未形成部21a1を除いて、正極活物質を含む正極活物質層21bが両面に形成されている。正極活物質は、例えば、リチウムイオン二次電池では、リチウム遷移金属複合材料のように、充電時にリチウムイオンを放出し、放電時にリチウムイオンを吸収しうる材料である。正極活物質は、一般的にリチウム遷移金属複合材料以外にも種々提案されており、特に限定されない。
【0023】
〈負極板22〉
負極板22は、予め定められた幅および厚さの負極集電箔22a(例えば、銅箔)に、幅方向の片側の縁に一定の幅で設定された未形成部22a1を除いて、負極活物質を含む負極活物質層22bが両面に形成されている。負極活物質は、例えば、リチウムイオン二次電池では、天然黒鉛のように、充電時にリチウムイオンを吸蔵し、充電時に吸蔵したリチウムイオンを放電時に放出しうる材料である。負極活物質は、一般的に天然黒鉛以外にも種々提案されており、特に限定されない。
【0024】
〈セパレータ25,26〉
第1セパレータ25および第2セパレータ26には、例えば、所要の耐熱性を有する電解質が通過しうる多孔質の樹脂シートが用いられる。第1セパレータ25および第2セパレータ26についても種々提案されており、特に限定されない。
【0025】
図1,3に示されているように、負極活物質層22bの幅は、例えば、正極活物質層21bよりも広く形成されている。第1セパレータ25および第2セパレータ26の幅は、負極活物質層22bよりも広い。
【0026】
図4は、捲回電極体の作製方法の模式図である。
図4には、
図3に示されている捲回電極体20の作製方法の一例が示されている。かかる捲回電極体の作製方法では、まず、2枚の帯状のセパレータ25,26と、帯状の正極板21と、帯状の負極板22と、がそれぞれリール(図示省略)に巻き取られた状態で用意される。2枚の帯状のセパレータ25,26と、帯状の正極板21と、帯状の負極板22とは、捲回機にセットされ、巻軸Sに所定の経路に沿って導かれる。巻軸Sには、第1スリットSaおよび第2スリットSbが形成されている。この実施形態では、巻軸Sは、略円筒形状であり、第1スリットSaおよび第2スリットSbは、巻軸Sの捲回軸周りに180度離れた位置に配置されている。捲回電極体20の作製では、巻軸Sの第1スリットSaと第2スリットSbのうち一方に第1セパレータ25の先端を挟み、他方に第2セパレータ26の先端を挟み込む。次いで、巻軸Sを少し巻き、巻軸Sに巻かれた第2セパレータ26と巻軸Sに巻き込まれる第1セパレータ25との間に、正極板21の先端を差し込む。さらに、巻軸Sに巻かれた第1セパレータ25と巻軸Sに巻き込まれる第2セパレータ26との間に負極板22の先端を差し込む。その後、さらに巻軸Sを回転させることによって、2枚の帯状のセパレータ25,26と、帯状の正極板21と、帯状の負極板22とを巻き取る。その後、巻軸Sに巻き取られた円筒形状の電極体を巻軸Sから抜き取り、側面方向から押しつぶして拉げさせることによって扁平形状とする。このようにして、
図3に示されているような扁平な捲回電極体20は作製される。
【0027】
図1,3に示されているように、捲回電極体20では、正極集電箔21aの未形成部21a1と、負極集電箔22aの未形成部22a1とは、幅方向において互いに反対側に向けられている。また、第1セパレータ25と負極板22と第2セパレータ26と正極板21とは、それぞれ長さ方向を揃えられ、順に重ねられ、正極板21の幅方向に設定された捲回軸WL周りに螺旋状に捲回されている。負極活物質層22bは、第1セパレータ25および第2セパレータ26を介在させた状態で正極活物質層21bを覆っている。負極活物質層22bは、第1セパレータ25および第2セパレータ26に覆われている。正極板21の一部(この実施形態では、未形成部21a1)は、上記捲回軸に沿った第1側201(
図1,3における左側)において第1セパレータ25と第2セパレータ26とからはみ出ている。このはみ出た部分は、例えば、捲回軸WLに直交した方向(例えば、電極板およびセパレータの積層方向)に沿って束ねられて内部端子31に接合される。負極板22の一部(この実施形態では、未形成部22a1)は、捲回軸に沿った第2側202(
図1,3における右側)において第1セパレータ25と第2セパレータ26とからはみ出ている。このはみ出た部分は、例えば、捲回軸WLに直交した方向に沿って束ねられて内部端子41に接合される。
【0028】
図5は、捲回電極体20の捲回軸に直交した断面の模式図である。
図5に示されているように、捲回電極体20は、捲回軸WLに直交した断面において、矩形部20aと、第1湾曲部20b1および第2湾曲部20b2と、を有するオーバル形状に成形されている。矩形部20aは、例えば、捲回軸WLに直交した断面における長辺方向の中央に配置された部位であり、同方向の両側から第1湾曲部20b1および第2湾曲部20b2に挟み込まれている。この実施形態では、矩形部20aは、電極板およびセパレータの積層方向の両端部に、それぞれ幅広面を有している。例えば、矩形部20aは、第1領域R1と、第2領域R2と、を有している。第1領域R1は、例えば、電極端子と捲回電極体20との接続において、電極端子(例えば、正極の内部端子31の接続片31b)が配置される部位である。また、第2領域R2は、例えば、電極端子と捲回電極体20との接続において、電極端子(例えば、正極の内部端子31の接続片31b)が接合される部位である。第2領域R2は、例えば、後述の接合部91が形成される部位である。第1湾曲部20b1および第2湾曲部20b2は、例えば、上記長辺方向における両端部にそれぞれ配置された部位であり、矩形部20aを挟み込んでいる。第1湾曲部20b1および第2湾曲部20b2は、例えば、外表面が湾曲面からなっている。
【0029】
ところで、
図4に示されている捲回直後、円筒形の電極体の最内周には第1セパレータ25および第2セパレータ26が配置されており、セパレータの上記端部(巻き始め端部)が巻軸Sと接触している。この電極体から巻軸Sが抜き取られる際に、第1セパレータ25および第2セパレータ26の巻き始めの端部が巻軸Sの抜き方向に連れて引き出されてずれることがある。かかる第1セパレータ25および第2セパレータ26の位置ズレが生じると、上記のように作製された捲回電極体20に電極端子を接合するときに、電極端子との接合部位に、第1セパレータ25および第2セパレータ26の位置ズレした部位が干渉することがあり、本発明者は、かかる事象が生じにくくなるようにしたいと考えた。
【0030】
上記の手順で作製された捲回電極体20では、
図5に示されているように、捲回軸WLに直交する断面において、正極側の捲回始端部E1と負極側の捲回始端部E2とが、捲回電極体20の内周領域20iに配置されている。内周領域20iでは、正極側の捲回始端部E1と、負極側の捲回始端部E2とが、捲回電極体20の中心Cに対して点対称となる位置に配置されうる。ここで、内周領域20iとは、例えば、捲回電極体20の最外周よりも中心C側の領域をいう。中心Cは、第1湾曲部20b1の第1湾曲頂点Pと第2湾曲部20b2の第2湾曲頂点Qとを結んだ線分PQの中点でありうる。
【0031】
図5に示されているように、正極側の捲回始端部E1は、第1セパレータ25の内周側端部25eと、正極板21の内周側端部21eとを含んでいる。この実施形態では、正極側の捲回始端部E1では、第1セパレータ25は、正極板21よりも捲回電極体20の内側に延びている。また、負極側の捲回始端部E2は、第2セパレータ26の内周側端部26eと、負極板22の内周側端部22eとを含んでいる。この実施形態では、負極側の捲回始端部E2では、第2セパレータ26は、負極板22よりも捲回電極体20の内側に延びている。
【0032】
図2に示された実施形態では、捲回電極体20を電池ケース10に収容したときに、第1湾曲部20b1が蓋14側に配置されている。また、
図1,2,5に示されているように、第1セパレータ25の、捲回電極体20の最内周を構成する部分は、第1湾曲部20b1の中で折り曲げられており、第1セパレータ25の内周側端部25eは、捲回電極体20の捲回軸WL周りにおいて、正極板21と正極端子30(例えば、内部端子31の接続片31b)とが接合された第1接合部91と第1湾曲部20b1の第1湾曲頂点Pとの間に配置されている。内周側端部25eは、例えば、矩形部20aに配置されうる。
図5に示された実施形態では、内周側端部25eは、矩形部20aの第1領域R1内であって、第2領域R2と第1湾曲部20b1との間に配置されている。
【0033】
図5に示されているように、第1セパレータ25の内周側端部25eに隣接する折り返し部25aは、第1湾曲部20b1に配置されている。折り返し部25aは、例えば、第1湾曲頂点Pと第2湾曲頂点Qとを結ぶ直線L1上にあるとよい。第1セパレータ25の折り返し量は、折り返し部25aから内周側端部25eまでの距離D1で規定されうる。距離D1は、折り返し部25aから第1接合部91の蓋14側の端部91aまでの距離D2よりも小さければよい。例えば、距離D1と距離D2との比(D1/D2)は、0.2~0.95に設定され得る。
【0034】
また、
図2に示された実施形態では、捲回電極体20を電池ケース10に収容したときに、第2湾曲部20b2がケース本体12の底面12a側に配置されている。また、
図1,2,5に示されているように、第2セパレータ26の、捲回電極体20の最内周を構成する部分は、第2湾曲部20b2の中で折り曲げられており、第2セパレータ26の内周側端部26eは、捲回電極体20の捲回軸WL周りにおいて、第1接合部91と第2湾曲部20b2の第2湾曲頂点Qとの間に配置されている。内周側端部26eは、例えば、第1接合部91の底面12a側の端部91b(
図1参照)と、第2湾曲頂点Qとの間に配置されているとよい。
【0035】
図5に示されているように、第2セパレータ26の内周側端部26eに隣接する折り返し部26aは、第2湾曲部20b2に配置されている。折り返し部26aは、例えば、直線L1上にあるとよい。第2セパレータ26の折り返し量は、折り返し部26aから内周側端部26eまでの距離で規定されうる。第2セパレータ26の折り返し量は、特に限定されないが、例えば、上記距離D1と同程度である。
【0036】
上記のとおり、正極側のみを説明したが、負極側も同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。なお、
図1における符号92は、負極板22と負極端子40(例えば、内部端子41の接続片)とが接合された第2接合部を示している。
【0037】
二次電池100では、捲回電極体20は、帯状の第1セパレータ25と、帯状の正極板21と、帯状の第2セパレータ26と、帯状の負極板22とを備えている。第1セパレータ25と正極板21と第2セパレータ26と負極板22とは、長さ方向を揃えられ、順に重ねられ、正極板の幅方向に設定された捲回軸周りに捲回されており、かつ、捲回軸WLに直交した断面が矩形部20aと該矩形部20aを挟み込む第1湾曲部20b1および第2湾曲部20b2とを有する形状にされて電池ケース10の収容空間に収容されている。正極板21の一部は、捲回軸WLに沿った第1側201において第1セパレータ25と第2セパレータ26とからはみ出ており、捲回軸WLに直交した方向に沿って束ねられて正極端子30に接合されている。負極板22の一部は、捲回軸WLに沿った第2側202において第1セパレータ25と第2セパレータ26とからはみ出ており、捲回軸WLに直交した方向に沿って束ねられて負極端子40に接合されている。
【0038】
捲回軸WLに直交する断面において、捲回電極体20の内周領域20iでは、第1セパレータ25と第2セパレータ26とは、それぞれ正極板21および負極板22よりも捲回電極体20の内側に延びている。第1セパレータ25の、捲回電極体20の最内周を構成する部分は、第1湾曲部20b1の中で折り曲げられており、該第1セパレータ25の内周側端部25eは、捲回電極体20の捲回軸WL周りにおいて、正極板21と正極端子30が接合された第1接合部91または負極板22と負極端子40とが接合された第2接合部92と、該第1湾曲部20b1の第1湾曲頂点Pとの間に配置されている。さらに、捲回軸WLに直交する断面において、第2セパレータ26の、捲回電極体20の最内周を構成する部分は、第2湾曲部20b2の中で折り曲げられており、第2セパレータ26の内周側端部26eは、捲回電極体20の捲回軸WL周りにおいて、第1接合部91または第2接合部92と、第2湾曲部20b2の第2湾曲頂点Qとの間に配置されている。
【0039】
換言すると、二次電池100では、捲回電極体20の捲回始端部が第1湾曲部20b1または第2湾曲部20b2で折れ曲がり、第1湾曲頂点Pまたは第2湾曲頂点Qと、第1接合部91または第2接合部92と、の間に配置されている。第1セパレータ25の内周側端部25eまたは第2セパレータ26の内周側端部26eが予め定められた位置から多少ずれても、電極端子と捲回電極体20との接合に関わりにくい。このため、電極端子と捲回電極体20との接合が、セパレータの共ズレによって阻害されにくくなっている。
【0040】
捲回電極体20の捲回始端部が第1湾曲部20b1または第2湾曲部20b2で折れ曲がることによって、第1湾曲部20b1および第2湾曲部20b2の内周部分がそれぞれ厚くなるため、捲回電極体20を作製するとき、湾曲部に適度な圧力が付与され、湾曲部がより鈍角となり、線接触から面接触へと変わり、かかる圧力が軽減される。そのため、耐圧不良を緩和することができる。また、第1湾曲部20b1および第2湾曲部20b2の内周部分がそれぞれ厚くなるため、湾曲部におけるカーブが緩やかになり、電極活物質層が剥離するのを抑制することができる。例えば、負極活物質層22bの剥離が抑制されると、金属リチウムの析出が抑制されうる。
【0041】
また、この実施形態では、第1セパレータ25の内周側端部25eは、矩形部20aの第1領域R1内であって、第2領域R2と第1湾曲部20b1との間に配置されている。第1セパレータ25の内周側端部25eは、矩形部20aの第1領域R1内であっても、内周側端部25eが第2領域R2よりも第1湾曲部20b1側に配置されているため、電極端子と捲回電極体20との接合阻害を抑制する効果が実現されうる。
【0042】
上記実施形態では、第1電極板が正極板21であり、第2電極板が負極板22であったが、これに限定されない。第1電極板が負極板22であり、第2電極板が正極板21であってもよい。このとき、電池ケース10内で蓋14側に配置される第1湾曲部20b1における捲回始端部E1に含まれる電極板が、負極板22となる。かかる構成は、上述の負極活物質層22bの剥離を抑制するのに好ましい。
【0043】
また、上記実施形態では、第1セパレータ25の内周側端部25eが第1湾曲部20b1側に配置されていたが、これに限定されない。第2セパレータ26の内周側端部26eが第1湾曲部20b1側に配置され、第1セパレータ25の内周側端部25eが第2湾曲部20b2側に配置されてもよい。
【0044】
《第2実施形態》
上記第1実施形態では、第1セパレータ25の内周側端部25eは、矩形部20aの第1領域R1内に配置されていた。しかし、内周側端部25eの配置部位は、これに限定されない。
図6は、捲回電極体220の捲回軸WLに直交した断面の一部の模式図である。第2実施形態に係る二次電池は、発電要素として捲回電極体220を使用する以外は、上記第1実施形態に係る二次電池100と同様である。そのため、二次電池100と重複する説明は省略する。
【0045】
捲回電極体220は、例えば、正極側の捲回始端部E21に、第1セパレータ25の内周側端部25eと、正極板21の内周側端部21eとを含んでいる。
図6に示されているように、第1セパレータ25の内周側端部25eは、矩形部220aの第1領域R1よりも第1湾曲部220b1側に配置されている。この実施形態では、内周側端部25eが矩形部220aの第2領域R2からより遠くに配置されるため、電極端子と捲回電極体220との接合阻害を抑制する効果がよりよく実現されうる。なお、捲回電極体220について、上述した以外のことは、上記第1実施形態における捲回電極体20で説明したことと同様である。そのため、ここでの説明を省略する。また、
図6における符号220iは、捲回電極体220の内周領域である。
【0046】
《第3実施形態》
図7は、捲回電極体320の捲回軸WLに直交した断面の一部の模式図である。第3実施形態に係る二次電池は、発電要素として捲回電極体320を使用する以外は、上記第1実施形態に係る二次電池100と同様である。そのため、二次電池100と重複する説明は省略する。
【0047】
捲回電極体320は、例えば、正極側の捲回始端部E31に、第1セパレータ25の内周側端部25eと、正極板21の内周側端部21eとを含んでいる。
図7に示されているように、第1セパレータ25の内周側端部25eは、第1湾曲部320b1に配置されている。この実施形態では、内周側端部25eが矩形部320aの第2領域R2からさらに遠くに配置されるため、電極端子と捲回電極体320との接合阻害を抑制する効果がよりよく実現されうる。なお、捲回電極体320について、上述した以外のことは、上記第1実施形態における捲回電極体20で説明したことと同様であるため、ここでの説明を省略する。また、
図7における符号320iは、捲回電極体320の内周領域である。
【0048】
以上、ここで開示される技術の一実施形態について説明した。なお、上述した実施形態は、ここで開示される技術が適用された二次電池の一例を示すものであり、ここで開示される技術を限定することを意図したものではない。
【符号の説明】
【0049】
10 電池ケース
12 ケース本体
14 蓋
20 捲回電極体
21 正極板
22 負極板
22a 負極集電箔
25 第1セパレータ
26 第2セパレータ
30 正極端子
40 負極端子
71 ガスケット
72 インシュレータ
91 第1接合部
92 第2接合部
100 二次電池
220,320 捲回電極体