(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】給電管理システム及び給電管理装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20231122BHJP
【FI】
G06Q50/06
(21)【出願番号】P 2021186849
(22)【出願日】2021-11-17
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 亨
(72)【発明者】
【氏名】コップ,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ケーベル,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】長岡 久史
【審査官】加舎 理紅子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/244213(WO,A1)
【文献】特開2021-016243(JP,A)
【文献】国際公開第2019/181211(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/125217(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/064818(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送配電網によりカバーされる所定エリア内に止まっている電動移動体について、前記電動移動体に備えられた移動体蓄電池の
充電に使用された電力のカーボンクレジット及びコストの情報が含まれる充電履歴情報を取得する充電履歴情報取得部と、
前記送配電網から供給される電力のコストに関する送配電網電力コスト情報を、取得する送配電網電力コスト情報取得部と、
前記充電履歴情報に基づいて、前記移動体蓄電池に貯えられている電荷
を充電する際に使用された電力のコスト及びカーボンクレジットを価値評価の対象として、前記移動体蓄電池に貯えられている電荷の価値を評価する蓄電電荷価値評価部と、
前記所定エリア内に位置する電気負荷への給電を依頼する給電依頼者からの給電依頼情報の受信に応じて、前記電気負荷に対して電力を供給する給電処理を実行し、
前記給電依頼者がカーボンクレジット優先を指示している場合に、前記給電処理に使用される電力のカーボンクレジットの総量が多くなるように、前記給電処理に利用する候補とする前記電動移動体を前記蓄電電荷価値評価部によるカーボンクレジットの評価に基づいて選択し、選択した前記電動移動体に備えられた前記移動体蓄電池から放電される第1供給電力の前記蓄電電荷価値評価部による評価に基づくコストが、前記送配電網から供給される第2供給電力の前記送配電網電力コスト情報に基づくコスト以上に設定された上限コスト以下であるときに、前記第1供給電力を前記電気負荷に供給して前記給電処理を実行する給電制御部と、
を備える給電管理システム。
【請求項2】
前記給電制御部が、前記第1供給電力を使用して前記給電処理を実行した場合に、前記第1供給電力の放電により減少した前記移動体蓄電池の残電荷量を回復するために、前記移動体蓄電池を充電する回復充電処理を実行する充電制御部を備える
請求項
1に記載の給電管理システム。
【請求項3】
前記給電制御部は、
第1電動移動体を含む複数の前記電動移動体について、前記給電処理により、前記移動体蓄電池からの放電により前記第1供給電力を電気負荷に供給するか否かを決定し、
前記給電処理により、前記第1電動移動体に備えられた第1移動体蓄電池の放電により前記第1供給電力を前記電気負荷に電力を供給した後、前記充電制御部による前記回復充電処理が実行される際に、前記第1移動体蓄電池を前記電気負荷として、前記給電処理を前記第1電動移動体以外の前記移動体蓄電池から放電される第1供給電力と、前記送配電網から送電される第2供給電力とのうちのどちらを使用するかを決定して、前記給電処理を実行する
請求項
2に記載の給電管理システム。
【請求項4】
送配電網によりカバーされる所定エリア内に止まっている電動移動体に備えられた移動体蓄電池の充電状況が記録された充電履歴データベースにアクセスして、前記移動体蓄電池の充電に使用された電力のカーボンクレジット及びコストの情報が含まれる充電履歴情報を取得する充電履歴情報取得部と、
前記送配電網から供給される電力の情報が保存された電力供給データベースにアクセスして、前記送配電網から供給される電力のコストに関する送配電網電力コスト情報情報を取得する送配電網電力コスト情報取得部と、
前記充電履歴情報に基づいて、前記移動体蓄電池に貯えられている電荷を充電する際に使用された電力のコスト及びカーボンクレジットを価値評価の対象として、前記移動体蓄電池に貯えられている電荷の価値を評価する蓄電電荷価値評価部と、
前記所定エリア内に位置する電気負荷への給電を依頼する給電依頼者からの給電依頼情報の受信に応じて、前記電気負荷に対して電力を供給する給電処理を実行し、前記給電依頼者がカーボンクレジット優先を指示している場合に、前記給電処理に使用される電力のカーボンクレジットの総量が多くなるように、前記給電処理に利用する候補とする前記電動移動体を前記蓄電電荷価値評価部によるカーボンクレジットの評価に基づいて選択し、選択した前記電動移動体に備えられた前記移動体蓄電池から放電される第1供給電力の前記蓄電電荷価値評価部による評価に基づくコストが、前記送配電網から供給される第2供給電力の前記送配電網電力コスト情報に基づくコスト以上に設定された上限コスト以下であるときに、前記第1供給電力を前記電気負荷に供給して前記給電処理を実行する給電制御部と、
を備える給電管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動車両の充電を行う際に、蓄電池に充電されている電力の価格と商用電力系統から供給される電力の価格とを比較して、どちらの電力によって電動車両の充電を行うかを決定するシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のシステムでは、電動車両を充電する際の電力コストの低減を図ることができるが、電動車両の普及が進むと想定されることから、電動車両に備えられた蓄電池を、電力バッファとして活用する技術が要望されている。
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、電気自動車等の電力を動力源とする電動移動体を、電力バッファとして活用することができる給電管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための第1態様として、送配電網によりカバーされる所定エリア内に止まっている電動移動体について、前記電動移動体に備えられた移動体蓄電池の充電に使用された電力のカーボンクレジット及びコストの情報が含まれる充電履歴情報を取得する充電履歴情報取得部と、前記送配電網から供給される電力のコストに関する送配電網電力コスト情報を、取得する送配電網電力コスト情報取得部と、前記充電履歴情報に基づいて、前記移動体蓄電池に貯えられている電荷を充電する際に使用された電力のコスト及びカーボンクレジットを価値評価の対象として、前記移動体蓄電池に貯えられている電荷の価値を評価する蓄電電荷価値評価部と、前記所定エリア内に位置する電気負荷への給電を依頼する給電依頼者からの給電依頼情報の受信に応じて、前記電気負荷に対して電力を供給する給電処理を実行し、前記給電依頼者がカーボンクレジット優先を指示している場合に、前記給電処理に使用される電力のカーボンクレジットの総量が多くなるように、前記給電処理に利用する候補とする前記電動移動体を前記蓄電電荷価値評価部によるカーボンクレジットの評価に基づいて選択し、選択した前記電動移動体に備えられた前記移動体蓄電池から放電される第1供給電力の前記蓄電電荷価値評価部による評価に基づくコストが、前記送配電網から供給される第2供給電力の前記送配電網電力コスト情報に基づくコスト以上に設定された上限コスト以下であるときに、前記第1供給電力を前記電気負荷に供給して前記給電処理を実行する給電制御部と、を備える給電管理システムが挙げられる。
【0008】
上記給電管理システムにおいて、前記給電制御部が、前記第1供給電力を使用して前記給電処理を実行した場合に、前記第1供給電力の放電により減少した前記移動体蓄電池の残電荷量を回復するために、前記移動体蓄電池を充電する回復充電処理を実行する充電制御部を備える構成としてもよい。
【0009】
上記給電管理システムにおいて、前記給電制御部は、第1電動移動体を含む複数の前記電動移動体について、前記給電処理により、前記移動体蓄電池からの放電により前記第1供給電力を電気負荷に供給するか否かを決定し、前記給電処理により、前記第1電動移動体に備えられた第1移動体蓄電池の放電により前記第1供給電力を前記電気負荷に電力を供給した後、前記充電制御部による前記回復充電処理が実行される際に、前記第1移動体蓄電池を前記電気負荷として、前記給電処理を前記第1電動移動体以外の前記移動体蓄電池から放電される第1供給電力と、前記送配電網から送電される第2供給電力とのうちのどちらを使用するかを決定して、前記給電処理を実行する構成としてもよい。
上記目的を達成するための第2態様として、送配電網によりカバーされる所定エリア内に止まっている電動移動体に備えられた移動体蓄電池の充電状況が記録された充電履歴データベースにアクセスして、前記移動体蓄電池の充電に使用された電力のカーボンクレジット及びコストの情報が含まれる充電履歴情報を取得する充電履歴情報取得部と、前記送配電網から供給される電力の情報が保存された電力供給データベースにアクセスして、前記送配電網から供給される電力のコストに関する送配電網電力コスト情報情報を取得する送配電力コスト情報取得部と、前記充電履歴情報に基づいて、前記移動体蓄電池に貯えられている電荷を充電する際に使用された電力のコスト及びカーボンクレジットを価値評価の対象として、前記移動体蓄電池に貯えられている電荷の価値を評価する蓄電電荷価値評価部と、前記所定エリア内に位置する電気負荷への給電を依頼する給電依頼者からの給電依頼情報の受信に応じて、前記電気負荷に対して電力を供給する給電処理を実行し、前記給電依頼者がカーボンクレジット優先を指示している場合に、前記給電処理に使用される電力のカーボンクレジットの総量が多くなるように、前記給電処理に利用する候補とする前記電動移動体を前記蓄電電荷価値評価部によるカーボンクレジットの評価に基づいて選択し、選択した前記電動移動体に備えられた前記移動体蓄電池から放電される第1供給電力の前記蓄電電荷価値評価部による評価に基づくコストが、前記送配電網から供給される第2供給電力の前記送配電網電力コスト情報に基づくコスト以上に設定された上限コスト以下であるときに、前記第1供給電力を前記電気負荷に供給して前記給電処理を実行する給電制御部と、を備える給電管理装置が挙げられる。
【発明の効果】
【0010】
上記給電理システムによれば、電力を動力源とする電動移動体を、電力バッファとして活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図2は、駐車中の電動車両を電力バッファとして使用する給電マネジメント処理の第1フローチャートである。
【
図3】
図3は、駐車中の電動車両を電力バッファとして使用する給電マネジメント処理の第2フローチャートである。
【
図4】
図4は、利用者DBに記録される情報の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[1.給電管理システムの構成]
図1を参照して、本実施形態の給電管理システム1の構成について説明する。給電管理システム1は、送配電網100による電力供
給範囲であるエリアAR内の電気負荷に対する給電のマネジメント処理を行う。給電管理システム1は、送配電網100
のエリアAR内に駐車している電動車両60に備えられたバッテリ61(移動体蓄電池)を、電力バッファとして使用する。
【0013】
給電管理システム1は、電動車両60のバッテリ61から供給される第1供給電力と、送配電網100から供給される第2供給電力とのうちの、どちらの電力を電気負荷に供給するかを決定する。電気負荷は、例えば、空港APの管理施設で使用される電気機器、充電される際のバッテリ61等である。
【0014】
図1では、空港APに併設された駐車場70に複数の電動車両60が駐車している状況を示している。駐車場70の1台ごとの駐車スペースには、それぞれ充放電装置71が設定されている。電動車両60は、動力源であるバッテリ61を備えた電気自動車、プラグインハイブリッド自動車等であって、電動車両60の充電口に充放電装置71の充放電ケーブルを接続することによって、充放電装置71によるバッテリ61の充電と放電が行われる。電動車両60は、本開示の電動移動体に相当する。充放電装置71は、接続されている電動車両60のバッテリ61の残電荷量を検出して、バッテリ61の充電と放電の処理を実行する。
【0015】
充放電装置71は、充放電装置コントローラ72に接続されている。充放電装置コントローラ72は、プロセッサ、メモリ、インターフェース回路等により構成された制御ユニットである。充放電装置コントローラ72には、充放電装置71により検出されたバッテリ61の状態を示すバッテリ状態情報が入力される。また、充放電装置コントローラ72から充放電装置71に出力される制御信号によって、充放電装置71によるバッテリ61の充電及び放電の処理内容が設定される。
【0016】
給電管理システム1は、プロセッサ10、メモリ20、通信ユニット30、電力分配回路31、バッテリ32等により構成されたコンピュータシステムである。電力分配回路31は、充放電装置コントローラ72と接続され、充放電装置コントローラ72を介して、充放電装置71との間で電力の伝送を行う。また、電力分配回路31は、送配電網100に接続されて、送配電網100との間で電力の伝送(買電と売電)を行う。ここで、送配電網100により伝送される電力には、再生可能エネルギー(太陽光、風力、地熱等)による発電電力が含まれる。
【0017】
バッテリ32は、電力分配回路31に接続され、必要に応じて、電力分配回路31からの出力電力により充電され、また、電力分配回路31に電力を供給する。さらに、電力分配回路31は、空港APの管理施設90と接続され、送配電網100又はバッテリ61からの電力を管理施設90の電気機器に供給する。
【0018】
通信ユニット30は、通信ネットワーク200を介して、電動車両管理サーバー210、電力会社サーバー220、充放電装置コントローラ72、電動車両60、電動車両60の利用者Uにより使用される携帯端末50、空港APの管理施設90等との間で通信を行う。なお、
図1では一人の利用者Uを例示しているが、実際には、給電管理システム1は、複数の利用者Uによりそれぞれ使用される複数の携帯端末50との間で、通信を行う。電動車両管理サーバー210、及び電力会社サーバー220は、プロセッサ、メモリ、通信ユニット等により構成されたコンピュータシステムである。携帯端末50は、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話等である。
【0019】
電動車両管理サーバー210は、電動車両60に備えられたバッテリ61の充電履歴(充電日時、充電に使用された電力のコスト、充電に使用された電力のカーボンクレジット等が含まれる)が記録された充電履歴DB(database)211を備えている。電動車両管理サーバー210は、電動車両60のバッテリ61の充電が行われたときに、電動車両60、充放電装置71、或いは充放電装置コントローラ72から、通信ネットワーク200を介して送信されるバッテリ61の充電情報を受信して、バッテリ61の充電状況を認識する。そして、電動車両管理サーバー210は、認識したバッテリ61の充電状況を充電履歴DB211に記録する。電力会社サーバー220は、供給する電力(商用電力)のコスト(電力料金)、エリアARにおける電力の過不足(需給状況)等の情報が記録された電力供給DB221を備えている。
【0020】
給電管理システム1のメモリ20には、給電管理システム1の制御用プログラム21と、給電管理システム1による給電マネジメントの利用登録を行った利用者Uが使用する、電動車両60のバッテリ61の情報が記録された利用者DB22が保存されている。利用者DB22には、
図4に示したように、利用者Uごとに、利用者UのID、利用者Uが使用する電動車両60の車両ID、電動車両60のバッテリ61に貯えられている電荷の量、バッテリ61に貯えられている電荷のコスト(充電に要したコスト)、バッテリ61に貯えられている電荷のカーボンクレジット量(充電に使用された電力のカーボンクレジット量)、利用者Uにより指定された優先事項(コスト優先、又はカーボンクレジット優先)、及び、利用者Uにより指定されたバッテリ61の回復充電の要否が記録されている。
【0021】
バッテリ61に貯えられている電荷の量、コスト、カーボンクレジット量については、後述するように、蓄電電荷価値評価部13により記録される。優先事項、及び回復充電の要否については、利用者Uが、携帯端末50等により給電管理システム1にアクセスすることによって、設定する。
【0022】
プロセッサ10は、メモリ20に保存された制御用プログラム21を読み込んで実行することにより、充電履歴情報取得部11、送配電網電力コスト情報取得部12、蓄電電荷価値評価部13、給電制御部14、及び充電制御部として機能する。充電履歴情報取得部11は、電動車両管理サーバー210にアクセスして、充電履歴DBを参照することにより、駐車場70に駐車している電動車両60の充電履歴情報を取得する。
【0023】
送配電網電力コスト情報取得部12は、電力会社サーバー220にアクセスして電力供給DB221を参照することにより、送配電網電力コスト情報を取得する。蓄電電荷価値評価部13は、充電履歴情報取得部11により取得された電動車両60のバッテリ61の充電履歴情報に基づいて、バッテリ61に貯められている電荷の価値を評価する。蓄電電荷価値評価部13は、コストとカーボンクレジットを評価要素として、バッテリ61に貯められている電荷の価値を評価して、評価結果(電荷のコスト、充電に使用された電力のカーボンクレジット)を利用者DB22に記録する。
【0024】
給電制御部14は、エリアAR内の電気負荷に対して、電動車両60のバッテリ61からの第1供給電力又は送配電網100からの第2供給電力を、供給する給電処理を実行する。充電制御部15は、給電処理に使用されて残電荷量が減少したバッテリ61に対して、残電荷量を回復させる回復充電処理を実行する。充電制御部15は、基本的には、回復充電処理によって、給電処理に使用される直前の残電荷量までバッテリ61を充電するが、利用者Uの指定に応じて、バッテリ61を満充電してもよく、或いは、利用Uの指定に応じて、バッテリ61の残充電量の回復の程度を設定してもよい。
【0025】
[2.給電マネジメント処理]
図2~
図3に示したフローチャートに従って、給電管理システム1により実行される、電気負荷に対する給電マネジメント処理について説明する。以下では、空港APの管理施設90で使用される電気機器を電気負荷として、管理施設90に給電する場合について説明する。
【0026】
図2のステップS1で、給電制御部14は、管理施設90から、給電を依頼する給電依頼情報を受信したときに、ステップS2に処理を進める。ステップS2で、充電履歴情報取得部11は、電動車両管理サーバー210にアクセスして、充電履歴DB211を参照することにより、駐車場70に駐車している電動車両60のバッテリ61の充電履歴情報を取得する。
【0027】
次のステップS3で、送配電網電力コスト情報取得部12は、電力会社サーバー220にアクセスして電力供給DB221を参照することにより、送配電網電力コスト情報を取得する。続くステップS4で、蓄電電荷価値評価部13は、充電履歴情報に基づいて、バッテリ61に貯えられている電荷の価値(コスト、及びカーボンクレジット)を評価する。この場合、電荷の価値の評価は、駐車している電動車両60が複数であるときは、複数の電動車両60のバッテリ61の総電荷量について行ってもよく、個々のバッテリ61の電荷の評価を平均してもよい。
【0028】
次のステップS5で、給電制御部14は、給電依頼者(ここでは、管理施設への給電の依頼者)が、カーボンクレジット優先を指示しているか否かを判断する。そして、給電制御部14は、カーボンクレジット優先が指示されている場合はステップS20に処理を進め、カーボンクレジット優先が指示されていない場合(コスト優先が指示されている場合)は、ステップS6に処理を進める。
【0029】
なお、カーボンクレジット優先の指示に、コストの上限を設定するようにしてもよい。すなわち、例えば、バッテリ61からの第1供給電力のコストが、送配電網100からの第2供給電力のコスト+αまでであれば、カーボンクレジットを優先して、第1供給電力を使用して給電処理を実行し、第1供給電力のコストが第2供給電力のコスト+αを超えたときには、第2供給電力を使用して給電処理を実行するようにしてもよい。
【0030】
ステップS6で、給電制御部14は、送配電網電力コスト情報から、送配電網100から供給される第2供給電力のコストを認識する。続くステップS7で、給電制御部14は、蓄電電荷価値評価部13によるバッテリ61の電荷の価値評価から、バッテリ61から供給される第1供給電力のコストを認識する。続くステップS8で、給電制御部14は、第1供給電力のコストが第2供給電力のコストよりも安いか否かを判断する。
【0031】
そして、給電制御部14は、第1供給電力のコストが第2供給電力のコストよりも安いときはステップS9に処理を進めて、電動車両60のバッテリ61からの第1供給電力を使用して、管理施設90に電力を供給する給電処理を実行し、ステップS10に処理を進める。一方、第1供給電力のコストが第2供給電力のコストと同じであるか、又は第1供給電力のコストが第2供給電力のコストよりも高いときには、給電制御部14は、ステップS30に処理を進める。ステップS30で、給電制御部14は、送配電網100からの第2供給電力を使用して、管理施設90に電力を供給する給電処理を実行し、ステップS12に処理を進める。
【0032】
ステップS10で、充電制御部15は、利用者DB22を参照して、給電処理によりバッテリ61から放電を行った電動車両60のうち、回復充電が必要に指定されている電動車両60があるか否かを判断する。そして、充電制御部15は、回復充電が必要に指定されている電動車両60がある場合は、ステップS11に処理を進めて、回復充電が必要に指定されている電動車両60について回復充電処理を実行する。
【0033】
回復充電処理においては、回復充電処理の対象である電動車両60(本開示の第1電動移動体に相当する)のバッテリ61(本開示の第1移動体蓄電池に相当する)を、電気負荷として、他の電動車両60と送配電網100とについて、上述したステップS2~S12、S20,S21,S30の処理により、回復充電処理に使用される第1供給電力又は第2供給電力が決定される。一方、給電処理によりバッテリ61から放電を行った電動車両60のうち、回復充電が必要に指定されている電動車両60が無い場合には、充電制御部15はステップS12に処理を進める。
【0034】
図2のステップS20で、給電制御部14は、利用者DB22を参照して、駐車場70に駐車している電動車両60の中から、給電に使用するバッテリ61の電荷のカーボンクレジットの総量が多くなるように、給電処理に利用する電動車両60を選択する。続くステップS21で、給電制御部14は、選択した電動車両60のバッテリ561からの第1供給電力を使用して、管理施設に電力を供給する給電処理を実行し、
図3のステップS10に処理を進める。
【0035】
[3.他の実施形態]
上記実施形態では、本開示の電動移動体として電動車両60を示したが、本開示の電動移動体は蓄電池を動力源とする移動体であればよく、飛行体、船舶等の車両以外の電動移動体であってもよい。電動飛行体である場合は、駐機場に駐機している電動飛行体が電力バッファとして利用され、電動船舶である場合、係留場に係留されている電動船舶が電力バッファとして利用される。
【0036】
上記実施形態では、蓄電電荷価値評価部13は、バッテリ61に貯められている電荷の価値評価の対象として、コスト及びカーボンクレジットを用いたが、コストとカーボンクレジットのいずれか一方のみを価値評価の対象としてもよい。また、コスト及びカーボンクレジット以外を、電荷の価値評価の対象としてもよい。
【0037】
上記実施形態では、充電制御部15を備えて、給電処理に利用された電動車両60のバッテリ61の残電荷量を回復させる回復充電処理を実行したが、回復充電処理を実行しない構成としてもよい。
【0038】
なお、
図1は、本願発明の理解を容易にするために、給電管理システム1の構成を、主な処理内容により区分して示した概略図であり、給電管理システム1を、他の区分によって構成してもよい。また、各構成要素の処理は、1つのハードウェアユニットにより実行されてもよいし、複数のハードウェアユニットにより実行されてもよい。また、
図2~
図3に示したフローチャートによる各構成要素による処理は、1つのプログラムにより実行されてもよいし、複数のプログラムにより実行されてもよい。
【0039】
[4.上記実施形態によりサポートされる構成]
上記実施形態は、以下の構成の具体例である。
【0040】
(構成1)送配電網によりカバーされる所定エリア内に止まっている電動移動体について、前記電動移動体に備えられた移動体蓄電池の充電履歴に関する充電履歴情報を取得する充電履歴情報取得部と、前記送配電網から供給される電力のコストに関する送配電網電力コスト情報を、取得する送配電網電力コスト情報取得部と、前記充電履歴情報に基づいて、前記移動体蓄電池に貯えられている電荷の価値を評価する蓄電電荷価値評価部と、前記所定エリア内に位置する電気負荷に対して電力を供給する給電処理を実行し、前記給電処理により前記電気負荷に供給する電力として、前記移動体蓄電池から放電される第1供給電力と、前記送配電網から送電される第2供給電力とのうちのどちらを使用するかを、前記送配電網電力コスト情報から認識した前記第2供給電力のコストと、前記蓄電電荷価値評価部による前記移動体蓄電池に貯えられている電荷の価値と、に基づいて決定する給電制御部と、を備える給電管理システム。
構成1の給電管理システムによれば、電動移動体を電力バッファとして活用して、移動体蓄電池に貯えられている電荷の価値に基づいて、移動体電池から電気負荷に電力を供給することを決定することができる。
【0041】
(構成2)前記充電履歴情報には、前記移動体蓄電池の充電に使用された電力のカーボンクレジット又はコストの情報が含まれ、前記蓄電電荷価値評価部は、前記移動体蓄電池に貯えられている電荷の価値として、前記移動体蓄電池に貯えられている電荷を充電する際に使用された電力の、コスト又はカーボンクレジットを価値評価の対象として、前記移動体蓄電池に貯えられている電荷の価値を評価する構成1に記載の給電管理システム。
構成2の給電管理システムによれば、移動体電池に貯えられている電荷を充電する際に使用された電力の、コスト又はカーボンクレジットを価値評価の対象として、移動体蓄電池に貯えられている電荷の価値を評価することにより、電気負荷の使用者のコスト意識又は環境意識に応じて、移動体蓄電池からの第1供給電力と送配電網からの第2供給電力とのうちのいずれを、電気負荷に供給するかを決定することができる。
【0042】
(構成3)前記蓄電電荷価値評価部は、前記移動体蓄電池に貯えられている電荷の価値として、前記移動体蓄電池に貯えられている電荷を充電する際に使用された電力のコストを評価し、前記給電制御部は、前記蓄電電荷価値評価部により評価された、前記移動体蓄電池に貯えられている電荷を充電する際に使用された電力のコストに基づく、前記第1供給電力のコストと、前記第2供給電力のコストとを比較して、コストが低い方の電力を前記電気負荷に供給する構成2に記載の給電管理システム。
構成3の給電管理システムによれば、移動体蓄電池からの第1供給電力と、送配電網からの第2供給電力とのうち、コストが低い方の電力を電気負荷に供給して、電気負荷の使用コストを低減することができる。
【0043】
(構成4)前記給電制御部が、前記第1供給電力を使用して前記給電処理を実行した場合に、前記第1供給電力の放電により減少した前記移動体蓄電池の残電荷量を回復するために、前記移動体蓄電池を充電する回復充電処理を実行する充電制御部を備える構成1から構成3のうちいずれか一つの構成に記載の給電管理システム。
構成4の給電管理システムによれば、電力バッファとして活用されることにより、移動体蓄電池の残電荷量が減少した場合に、回復充電処理によって移動体蓄電池の残電荷量が回復する。これにより、移動体蓄電池の残電荷量の不足によって、電動移動体による移動に支障が生じることを防止することができる。
【0044】
(構成5)前記給電制御部は、第1電動移動体を含む複数の前記電動移動体について、前記給電処理により、前記移動体蓄電池からの放電により前記第1供給電力を電気負荷に供給するか否かを決定し、前記給電処理により、前記第1電動移動体に備えられた第1移動体蓄電池の放電により前記第1供給電力を前記電気負荷に電力を供給した後、前記充電制御部による前記回復充電処理が実行される際に、前記第1移動体蓄電池を前記電気負荷として、前記給電処理を前記第1電動移動体以外の前記移動体蓄電池から放電される第1供給電力と、前記送配電網から送電される第2供給電力とのうちのどちらを使用するかを決定して、前記給電処理を実行する構成4に記載の給電管理システム。
構成5の給電管理システムによれば、回復充電処理によって移動体蓄電池を充電する際の電力コストを低減することができる。
【符号の説明】
【0045】
1…給電管理システム、10…プロセッサ、11…充電履歴情報取得部、12…送配電網電力コスト情報取得部、13…蓄電電荷価値評価部、14…給電制御部、15…充電制御部、20…メモリ、21…制御用プログラム、22…利用者DB、30…通信ユニット、31…電力分配回路、32…バッテリ、50…携帯端末、60…電動車両(電動移動体)、61…バッテリ(移動体蓄電池)、70…駐車場、71…充放電装置、72…充放電装置コントローラ、100…送配電網、200…通信ネットワーク、210…電動車両管理サーバー、211…充電履歴DB、220…電力会社サーバー、221…電力供給DB、U…利用者、AP…空港、AR…送配電網によりカバーされるエリア。