(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】硬化性組成物及びその成形品
(51)【国際特許分類】
C08F 2/44 20060101AFI20231122BHJP
C08F 292/00 20060101ALI20231122BHJP
G02B 5/20 20060101ALN20231122BHJP
【FI】
C08F2/44 A
C08F292/00
G02B5/20
(21)【出願番号】P 2021209703
(22)【出願日】2021-12-23
【審査請求日】2021-12-24
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 竜一
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/051732(WO,A1)
【文献】特開2017-082054(JP,A)
【文献】国際公開第2020/013213(WO,A1)
【文献】特開2021-130773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/44
C08F 292/00
G02B 5/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒活性を有しない無機微粒子と、式I:
【化1】
(式中、R
1は分子量105以下の立体障害性基であり、R
2は水素又は炭素数1~5の直鎖状又は分岐状アルコキシ基である)
で表される、立体障害性基を有する分子量160以下の環化重合性モノマーとからなり、
光触媒活性を有しない前記無機微粒子が、チタン酸化物を含むコアを有し
、前記コアは、表面に水酸基を有し、且つ前記コアの表面に形成されたシェルを有し、
前記シェルが、AlO
2
でできており、1~10nmの厚さを有する、
硬化性組成物。
【請求項2】
前記環化重合性モノマーが、以下の式IIIで示される化合物である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【化3】
【請求項3】
光触媒活性を有しない無機微粒子の平均粒子径が、2nm以上100nm以下である、請求項1
又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
硬化性樹脂組成物の粘度が、200mPa・s以下である、請求項1から
3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか一項に記載の硬化性組成物の成形品。
【請求項6】
請求項
5に記載の成形品を含む電子部品。
【請求項7】
有機EL素子、自発光素子又は光学フィルターである、請求項
6に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物及びその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
無機酸化物粒子を用いた高屈折率を有する硬化性組成物は、光学用途の分野で様々な製品に活用されている(特許文献1、2)。中でも、有機発光ダイオード(OLED)を水分や酸素などの外部要因から保護する保護膜として用いるための硬化性組成物は、精力的に研究及び開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-085937号公報
【文献】特開2010-037534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、そのような保護膜を成形するための樹脂組成物は、一般的に高粘度であり、例えばインクジェット法での塗布は不可能であった。粘度を低下させるために、無機酸化物粒子の濃度を低下させると、屈折率が低下し、OLED構成材料との屈折率差によって光の屈折角が変化してしまい、光の取り出し効率が低下するという問題点があった。また、低粘度化するために有機溶媒で希釈すると、有機溶媒がOLEDに経時的にダメージを与えることとなり、上記の用途には不適切であった。
【0005】
本発明は、溶媒での希釈を必要とすることなく低粘度で高屈折率を有する硬化性組成物及びその成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、様々な手段を検討した結果、光触媒活性を有しない無機微粒子と、式I:
【化1】
(式中、R
1及びR
2は、独立して、水素原子又は有機基を表し、R
1及びR
2の少なくとも一方は立体障害性基である)で表される、立体障害性基を有する分子量160以下のアクリル系モノマーとを含む、硬化性組成物とすることにより、溶媒での希釈を必要とすることなく低粘度で高屈折率を有する硬化性組成物となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、以下に関するものである。
(1)光触媒活性を有しない無機微粒子と、式I:
【化2】
(式中、R
1及びR
2は、独立して、水素原子又は有機基を表し、R
1及びR
2の少なくとも一方は立体障害性基である)
で表される、立体障害性基を有する分子量160以下のアクリル系モノマーとを含む、硬化性組成物。
(2)立体障害性基が、複素環、環状の炭化水素基、芳香環、又は重合により環を形成する基を有する、(1)に記載の硬化性組成物。
(3)式Iにおいて、R
1は水素原子又は炭素数4以下のアルキル基であり、R
2は分子量105以下の立体障害性基である、(1)又は(2)に記載の硬化性組成物。
(4)式Iにおいて、R
1は分子量105以下の立体障害性基であり、R
2は水素又は炭素数1~5の直鎖状又は分岐状アルコキシ基である、(1)又は(2)に記載の硬化性組成物。
(5)立体障害性基を有する分子量160以下のアクリル系モノマーが、以下の式II及び式IIIで示される化合物のいずれかである、(1)から(4)のいずれかに記載の硬化性組成物。
【化3】
【化4】
(6)光触媒活性を有しない無機微粒子が、チタン酸化物、ジルコニウム酸化物、チタン酸バリウム及び酸化アンチモンからなる群から選択される金属酸化物を含むコアを有する、(1)から(5)のいずれかに記載の硬化性組成物。
(7)コアの表面に、SiO
2及びAlO
2からなる群から選択される金属酸化物を含むシェルが形成されている、(6)に記載の硬化性組成物。
(8)光触媒活性を有しない無機微粒子が表面に水酸基を有する、(1)から(7)のいずれかに記載の硬化性組成物。
(9)光触媒活性を有しない無機微粒子の平均粒子径が、2nm以上100nm以下である、(1)から(8)のいずれかに記載の硬化性組成物。
(10)硬化性樹脂組成物の粘度が、200mPa・s以下である、(1)から(9)のいずれかに記載の硬化性組成物。
(11)(1)から(10)のいずれかに記載の硬化性組成物の成形品。
(12)(11)に記載の成形品を含む電子部品。
(13)有機EL素子、自発光素子又は光学フィルターである、(12)に記載の電子部品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、溶媒での希釈を必要としない低粘度かつ高屈折率を有する硬化性組成物及びその成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0010】
本実施形態にかかる硬化性組成物は、光触媒活性を有しない無機微粒子と、式I:
【化5】
(式中、R
1及びR
2は、互いに同一又は異なり、水素原子又は有機基を表し、R
1及びR
2の少なくとも一方は立体障害性基である)
で表される、立体障害性基を有する分子量160以下のアクリル系モノマーとを含む、硬化性組成物である。
【0011】
(光触媒活性を有しない無機微粒子)
無機微粒子とは、無機成分を含む微粒子を意味し、例えば、金属、その塩(炭酸塩、硫酸塩等)、その酸化物等が挙げられる。限定されないが、チタン、ジルコニウム、カルシウム、バリウム、アンチモン、アルミニウム、チタン酸化物、ジルコニウム酸化物、チタン酸バリウム、酸化アンチモン等が好ましい。無機微粒子は、適切に分散させることで1.65以上の屈折率をもたらし得るものであることが好ましく、例えば、チタン酸化物、ジルコニウム酸化物、チタン酸バリウム、酸化アンチモンが挙げられる。
【0012】
本発明の一実施形態において、無機微粒子は表面に水酸基を有している。無機微粒子が表面に水酸基を有することで、分子間で水素結合を形成しやすくなり、分散性に寄与する。
無機微粒子の平均粒子径は、2~100nmであることが好ましい。この範囲内にあることで、無機微粒子の分散性が得られやすくなる。より好ましい範囲は3~80nmであり、さらに好ましい範囲は5~50nmである。
平均粒子径は、例えばレーザー回折式粒度分布測定機を用いて体積基準累積径(D50)として測定することができる。
【0013】
本発明の一実施形態において、無機微粒子は無機成分を含むコアを有している。さらなる実施形態においては、無機微粒子は、コアの表面を覆うようにシェルを有している。シェルには、光触媒活性を有する金属酸化物が含まれないことが好ましく、SiO2及びAlO2からなる群から選択される金属酸化物を含むことがより好ましい。シェルの厚みは、1~10nmであることが好ましい。この範囲内にあることで、無機微粒子自体の光触媒活性が抑制されることとなる。より好ましい範囲は2~10nmであり、さらに好ましい範囲は2~8nmである。
【0014】
本実施形態において、無機微粒子は、光触媒活性を有していない。ここで、「光触媒活性を有していない」とは、紫外線が照射されても、光触媒活性を実質的又はまったく示さない無機微粒子をいう。
光触媒活性は、例えばISO19810(JIS R 1753)に従って、可視光の照射により水接触角が一定の値まで減少する時間を測定することで、測定することができる。水接触角が一定の値まで減少しない場合もしくは水接触角が一定の値まで減少する時間が80時間以上である場合に、その無機微粒子は実質的に光触媒活性を有していないとする。
また、以下の方法でも測定することができる。
石英製容器(縦150mm×横150mm×高さ60mm)に測定する無機微粒子を入れ、窒素ガスで置換した後密閉し、次いで濃度が50ppmとなるようにアセトアルデヒドを注入し、被膜の表面からの距離が100mmの高さよりブラックライト(紫外線波長365nm、強度0.6mW/cm2)を1時間照射する。次いで、容器中に残存するアセトアルデヒドの濃度をガスクロマトグラフィーにより測定し、アセトアルデヒドの減少率により光触媒活性を評価する。アセトアルデヒドの減少率が5%未満である場合に、その無機微粒子は実質的に光触媒活性を有していないとする。
【0015】
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物においては、無機微粒子の含有量は、無機微粒子とアクリル系モノマーとの合計100質量部に対して10~80質量部である。無機微粒子の含有量は、無機微粒子とアクリル系モノマーとの合計100質量部に対して12~75質量部がより好ましく、20~70質量部がさらに好ましい。無機微粒子を10質量部以上含有することにより屈折率が1.65以下となることが抑制され、80質量部以下とすることにより粘度の上昇が抑制される。
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物においては、無機微粒子の含有量は、硬化性組成物に対して9~79質量%である。無機微粒子の含有量は、硬化性組成物に対して11~74質量%がより好ましく、19~69質量%がさらに好ましい。
無機微粒子及びアクリル系モノマーの含有量は、例えばTGA(TGA Q500;TAインスツルメント社製)を用いて測定することができる。
【0016】
(立体障害性基を有する分子量160以下のアクリル系モノマー)
アクリル系モノマーは、分子中にアクリル結合を有する化合物を意味している。
本実施形態においては、アクリル系モノマーは、式I:
【化6】
(式中、R
1及びR
2は、独立して、水素原子又は有機基を表し、R
1及びR
2の少なくとも一方は立体障害性基である)
で表される、立体障害性基を有する分子量160以下のアクリル系モノマーである。
本実施形態におけるアクリル系モノマーの分子量は、160以下である。アクリル系モノマーの分子量は、157以下であることが好ましい。アクリル系モノマーの分子量が160以下であることにより、硬化性組成物の粘度上昇が抑制される。ここでいう分子量とは、化学式量から算出された値を意味する。
アクリル系モノマーは、重合反応により硬化し、フィルム等の成形品とすることができる。
【0017】
立体障害性基とは、有機基のうち、立体的に嵩高い基を意味する。本発明の一実施形態においては、立体障害性基は、電子的相互作用により分子同士の凝集を抑制できる基である。本実施形態においては、立体障害性基の分子量は、105以下であるが、100以下であることがより好ましい。
本発明の一実施形態においては、立体障害性基は、複素環、環状の炭化水素基、芳香環、又は重合により環を形成する基を有する。好ましくは、立体障害性基は、複素環、環状の炭化水素基、又は重合により環を形成する基を有する。
複素環としては、例えばインドリル環、ピロリドン基、フラン環、ピリジン環、モルホリン環、エポキシ環、プリン環、ピリミジン環等が挙げられる。また、置換基を有していてもよい。
環状の炭化水素基としては、炭素数4以上8以下の飽和又は不飽和の環構造を有する炭化水素が挙げられ、具体的には、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環などの飽和環状炭化水素;シクロプロペン環、シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロヘプテン環などの不飽和環状炭化水素が挙げられる。また、置換基を有していてもよい。
芳香環としては、芳香族性を示す環構造であれば特に限定されず、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ペリレン環などのベンゼン系芳香環、ピリジン環、チオフェン環などの芳香族複素環、インデン環、アズレン環などの非ベンゼン系芳香環などが挙げられる。また、置換基を有していてもよい。
重合により環を形成する基としては、重合反応により複素環、環状の炭化水素基又は芳香環を形成する基であり、2以上のビニル基を有するエーテル基などが挙げられる。より具体的には、-R3-O-R4であって、R3は炭素数1~4の不飽和のアルキル基又はアルキニル基であり、R4は炭素数1~4の不飽和のアルキル基又はアルキニル基である、基である。
【0018】
本発明の一実施形態においては、R1とR2のいずれかは立体障害性基であるが、もう一方は立体障害性を有していない基であることが好ましい。例えば、水素原子、炭素数4以下のアルキル基、炭素数1~5の直鎖状又は分岐状アルコキシ基等であってもよい。
ある実施形態においては、式Iにおいて、R1は水素原子又は炭素数4以下のアルキル基であり、R2は分子量105以下の立体障害性基である。
別の実施形態においては、式Iにおいて、R1は分子量105以下の立体障害性基であり、R2は水素又は炭素数1~5の直鎖状又は分岐状アルコキシ基である。
【0019】
本発明の一実施形態においては、立体障害性基を有する分子量160以下のアクリル系モノマーは、以下の式II又はIIIで示される化合物のいずれかである。
【化7】
【化8】
【0020】
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物においては、アクリル系モノマーの含有量は、21~91質量%が好ましく、26~89質量%がより好ましく、31~81質量%がさらに好ましい。
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物においては、上記立体障害性基を有する分子量160以下のアクリル系モノマー以外の重合性モノマーの含有量は、15質量%以下である。
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、上記立体障害性基を有する分子量160以下のアクリル系モノマー以外の重合性モノマーを含有しない。
【0021】
本発明の一実施形態においては、硬化性組成物中の上記光触媒活性を有しない無機微粒子と立体障害性基を有する分子量160以下のアクリル系モノマーとの合計の含有量は、95質量%以上である。好ましくは97質量%以上であり、より好ましくは99質量%以上であり、さらに好ましくは99.9質量%以上である。
本発明の一実施形態においては、硬化性組成物には、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド等の表面処理剤を、硬化性組成物に対して0.05~0.3質量%を添加してもよい。
本発明の一実施形態においては、シランカップリング剤の含有量が硬化性組成物中に5質量%未満とすることができる。本発明の別の実施形態では、シランカップリング剤を含まない。
【0022】
本発明の一実施形態においては、硬化性組成物中で、アクリル系モノマーが、共有結合もしくは配位結合により無機微粒子の表面に結合し、複合粒子を形成している。この場合、アクリル系モノマーの無機微粒子表面への結合は、直接(スペーサーとなる原子を介すことなく)又は3個以下の原子を介して結合していることが好ましい。また、1つの無機微粒子に対して1つのアクリル系モノマーが結合していてもよく、複数(例えば2~5)のアクリル系モノマーが結合していてもよい。本発明の別の実施形態においては、硬化性組成物中で、無機微粒子とアクリル系モノマーとは結合しておらず、それぞれ独立した状態となっている。
上記のいずれの実施形態においても、無機微粒子と、アクリル系モノマー中の立体障害性基との間の電子的相互作用により、複合粒子、無機微粒子及び/又はアクリル系モノマーとの間の距離が保たれ、凝集することなく分散性を維持している。
【0023】
本実施形態の硬化性組成物には、無機微粒子とアクリル系モノマー以外の添加剤も含まれ得るが、有機溶媒等の溶媒を含まない。本発明の一実施形態においては、硬化性組成物は、無機微粒子とアクリル系モノマーからなる。
【0024】
本発明の一実施形態においては、硬化性組成物の粘度は、200mPa・s以下である。100mPa・s以下であることがより好ましく、50mPa・s以下であることがさらに好ましい。また、インクジェット法で塗布する場合は、硬化性組成物を温調することで粘度を最適化するが、粘度が200mPa・s以下であることにより、常温(例えば28℃)でのインクジェット法での塗布が可能となる。
硬化性組成物の粘度は、例えばJIS Z8803:2011に従って、振動式粘度計(VM-10A-L、セコニック社)又は音叉振動式粘度計(SV-10、AND社)を使用して測定することができる。
【0025】
本発明の一実施形態においては、硬化性組成物の屈折率は、1.65以上である。1.7以上であることがより好ましく、1.73以上であることがさらに好ましい。1.65以上であることにより、OLED層と同等の屈折率となり、保護膜として用いた場合でも光の取り出し効率の低下が抑制される。
硬化性組成物の屈折率は、例えばデジタル屈折率計(RX-5000α、ATAGO社)を用い硬化性組成物を1mL程度サンプリングすることで液状態の屈折率を測定することができる。また、薄膜状態での屈折率は1umから10um程度の薄膜を作成し、分光エリプソメーター(SE-2000、SEMILAB社)を用い測定することができる。
【0026】
本発明の一実施形態において、硬化性組成物を用いてフィルムを作製した場合のヘイズ値が5%以下である。ヘイズ値は、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
ヘイズ値及び全光線透過率の測定は、例えば、分光測色計・色彩色差計CM-3600A(コニカミノルタ社)を用いてJIS K 7361-1、JIS K 7136、ASTM-D1003に従って測定することができる。
(DIN5033 Teil7、JIS Z 8722 条件c、ISO7724/1、CIE No.15、ASTM E1164 に準拠)
また、本発明の一実施形態において、硬化性組成物を用いてフィルムを作製した場合の全光線透過率が85%以上である。全光線透過率は、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
全光線透過率の測定は、例えば分光測色計・色彩色差計CM-3600A(コニカミノルタ社)を用いてJIS K 7361-1、JIS K 7136、ASTM-D1003に従って測定することができる。
(DIN5033 Teil7、JIS Z 8722 条件c、ISO7724/1、CIE No.15、ASTM E1164 に準拠)
【0027】
本発明の一実施形態において、硬化性組成物を用いてフィルムを作製した場合の黄色度(Y.I.値)が10以下である。Y.I.値は、6以下であることがより好ましく、3以下であることがさらに好ましい。
Y.I.値は、JIS K7373-2006に従って、分光測色計・色彩色差計CM-3600A(コニカミノルタ社)を用いて測定することができる。
(DIN5033 Teil7、JIS Z 8722 条件c、ISO7724/1、CIE No.15、ASTM E1164 に準拠)
【0028】
(硬化性組成物の製造方法)
本実施形態の硬化性組成物は、無機微粒子とアクリル系モノマーとを混合して製造することができる。一方、例えば無機微粒子がエタノールやメチルエチルケトン(MEK)等の有機溶媒に分散されている場合、アクリル系モノマーと混合する前に有機溶媒を減圧除去してもよく、アクリル系モノマーと混合した後に有機溶媒を減圧除去してもよい。
【0029】
(成形品)
本発明の一実施形態の成形品は、アクリル系モノマーをモノマーユニットとして重合したポリマーと無機微粒子とを含む成形品である。アクリル系モノマーを重合させたポリマーの重量平均分子量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されない。
硬化性組成物を紫外線照射により重合させることにより成形品とすることができる。重合反応は、硬化性組成物に対して3~10質量%の重合開始剤を硬化性組成物に溶解させることにより開始させてもよい。重合開始剤としては、Irgacure 184、Irgacure TPO、Irgacure 819、Irgacure OXE01(BASF社)等を用いることができる。また、重合開始剤と共に増感剤を添加することで薄膜の透明性改善や膜質の改善が期待できる。増感剤としては、ANTHRACURE UVS-2171 (川崎化成工業社)などを用いることができる。他の実施形態においては、150度以下の低温により重合反応を進行させる。
本実施形態の成形品は、例えば有機発光ダイオード(OLED)を水分/酸素などの外部要因から保護する保護膜として用いることができる。
薄膜の製造方法としては、重合開始剤を溶解させた硬化性組成物をインクジェットプリンターやバーコーター等を用いて薄膜状に塗布した後に紫外線を照射する方法や、硬化性組成物をインクジェットプリンターやバーコーター等を用い素子をモールドするように塗布した後に紫外線を照射する方法等が挙げられる。
【0030】
(電子部品)
本発明の一実施形態の硬化性組成物の成形品は、電子部品に用いることができる。電子部品としては、有機EL素子、自発光素子、光学フィルター、光学センサー(受光素子)等を挙げることができる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は実施例等の内容に何ら限定されるものではない。
【0032】
実施例等で用いた各種原料は以下の通りである。
(無機微粒子)
・酸化チタニウム1(OPTLAKE、日揮触媒社製、一次粒径8nm、20重量%の酸化チタニウムを含有するメタノール分散体、光触媒活性を有しない)
・酸化チタニウム2(LCD-0091、石原産業社製、一次粒径45nm、35重量%の酸化チタニウムを含有するMEK分散体、光触媒活性を有しない)
・酸化チタニウム3(SRD-M、堺化学工業社製、一次粒径15nm、15重量%の酸化チタニウムを含有するメタノール分散体、光触媒活性を有する)
・酸化ジルコニウム1(ZP-153(ジルコスター)、日本触媒社製、一次粒径11nm、70重量%の酸化ジルコニウムを含有するMEK分散体、光触媒活性を有しない)
・酸化ジルコニウム2(HR-301、日本触媒社製、一次粒径11nm、光触媒活性を有しない)
(アクリル系モノマー)
・アクリロイルモルフォリン(ACMO、分子量141、KJケミカルズ社製)
・環化重合性モノマー(AOMA、分子量156、日本触媒社製)
・ベンジルアクリレート(BZA、分子量162、大阪有機化学工業社製)
・アクリル系モノマーA(分子量160以上のアクリル系モノマー)
(シランカップリング剤)
・KBE-503(信越化学工業社製、スペーサーとなる原子数:5)
・KBM-5803(信越化学工業社製、スペーサーとなる原子数:10)
・KBM-903(信越化学工業社製、スペーサーとなる原子数:5)
(表面処理剤)
・ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(BYK-333、ビックケミ-ジャパン社製)
(重合開始剤)
・2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフォンオキサイド(Irgacure TPO、BASFジャパン社製)
【0033】
実施例及び比較例の硬化性組成物、及びその成形品であるフィルムについての各種特性の評価方法は以下の通りである。
(1)粘度
硬化性組成物の粘度を、JIS Z8803:2011に従って、振動式粘度計(VM-10A-L、セコニック社)又は音叉振動式粘度計(SV-10、AND社)を使用して測定した。
(2)屈折率
液状態の屈折率の測定は、デジタル屈折率計(RX-5000α、ATAGO社)を用い硬化性組成物を1mL程度サンプリングすることで液状態の屈折率を測定した。また、薄膜状態での屈折率は1umから10um程度の薄膜を作成し、分光エリプソメーター(SE-2000、SEMILAB社)を用い測定した。
(3)ヘイズ
ヘイズ値の測定は、分光測色計・色彩色差計CM-3600A(コニカミノルタ社)を用いてJIS K 7361-1、JIS K 7136、ASTM-D1003に従い測定した。
(DIN5033 Teil7、JIS Z 8722 条件c、ISO7724/1、CIE No.15、ASTM E1164 に準拠)
(4)全光線透過率
全光線透過率の測定は、例えば分光測色計・色彩色差計CM-3600A(コニカミノルタ社)を用いてJIS K 7361-1、JIS K 7136、ASTM-D1003に従い測定した。
(DIN5033 Teil7、JIS Z 8722 条件c、ISO7724/1、CIE No.15、ASTM E1164 に準拠)
(5)黄色度(Y.I.値)
Y.I.値は、JIS K7373-2006に従って、分光測色計・色彩色差計CM-3600A(コニカミノルタ社)を用いて測定した。
(DIN5033 Teil7、JIS Z 8722 条件c、ISO7724/1、CIE No.15、ASTM E1164 に準拠)
【0034】
(試験1:酸化チタニウムを含む硬化性組成物)
酸化チタニウム1(OPTLAKE、日揮触媒社製)又は酸化チタニウム2(LDC-0091、石原産業社製)と、アクリロイルモルフォリン(ACMO、KJケミカルズ社製)とを混合し、ロータリエバポレーターを用いて混合物から溶媒を減圧除去し、表1に記載の組成を有する硬化性組成物を得た。
比較例として、酸化チタニウム1(OPTLAKE、日揮触媒社製)又は酸化チタニウム3(SRD-M、堺化学工業社製)、メタクリル酸(M0079、東京化成工業社製)又はアクリロイルモルフォリン(ACMO、KJケミカルズ社製)、及びシランカップリング剤(KBE-503、KBM-5803、KBM-903、それぞれ信越化学工業社製)を用いて、表2に記載の組成を有する硬化性組成物を得た。
硬化性組成物6gに、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(BYK-333、ビックケミ-ジャパン社製)0.015g(0.05~0.3質量%)を加え、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(Irgacure TPO、BASFジャパン社製)0.18g(3~10質量%)を加えて溶解させた後に、バーコータ#5(Select-Roller、オーエスジーシステムプロダクツ社製)を用いて100mm×100mmガラス基板(EagleXG、コーニング社製)へ塗布し、フィルムを得た。
【0035】
結果を表1及び2に示す。
【表1】
(表1~3における粒子含有量及びシランカップリング剤の含有量は、無機微粒子とアクリル系モノマーとの合計100質量部に対する含有量を示している。)
【表2】
【0036】
上記の結果から、実施例の硬化性組成物は、溶媒での希釈を必要としない低粘度かつ高屈折率を有する硬化性組成物であり、その成形品であるフィルムも例えば有機発光ダイオード(OLED)の光取り出し向上機能を有する保護膜として有用であることが示された。
一方、比較例の硬化性組成物は、粘度が高く、光学用途に適したフィルムを成形することができなかった。これは、アクリル系モノマーが立体障害性基を有していないことによる凝集、無機微粒子の光触媒活性によりモノマーの重合が促進されたことによる粘度の上昇等の原因であると推測される。
【0037】
(試験2:酸化ジルコニウムを含む硬化性組成物)
酸化ジルコニウム1(ZP-153(ジルコスター)、日本触媒社製)をロータリエバポレーター(N-1300、EYELA社製)を用いて減圧下でMEKを蒸発させ、次いで真空乾燥機にて残留MEKを蒸発させ、酸化ジルコニウム粒子を乾燥させた。乾燥させた酸化ジルコニウム粒子と、環化重合性モノマー(AOMA、日本触媒社製)とをミックスローラーで12時間以上混合し、表3に記載する組成を有する硬化性組成物を得た。
比較例10として、酸化ジルコニウム1(ZP-153(ジルコスター)、日本触媒社製)及びベンジルアクリレート(BZA、大阪有機化学工業社製)を用いて硬化性組成物を得た。比較例11として、酸化ジルコニウム2(HR-301、日本触媒社製)及びアクリル系モノマーAを用いて硬化性組成物を得た。さらに比較例12及び13として、比較例11の硬化性組成物を環化重合性モノマー(AOMA、日本触媒社製)で希釈したものを用いた。
硬化性組成物6gに、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(Irgacure TPO、BASFジャパン社製)0.18g(3~10質量%)を加えて溶解させた後に、バーコータ#5(Select-Roller、オーエスジーシステムプロダクツ社製)を用いて100mm×100mmガラス基板(EagleXG、コーニング社製)へ塗布し、フィルムを得た。
【0038】
【0039】
上記の結果から、実施例の硬化性組成物は、溶媒での希釈を必要としない低粘度かつ高屈折率を有する硬化性組成物であり、その成形品であるフィルムも例えば有機発光ダイオード(OLED)の保護膜として有用であることが示された。
一方、比較例10及び11の硬化性組成物は、粘度が高く、光学用途に適したフィルムを成形することができなかった。これは、アクリル系モノマーの分子量が大きいことによる粘度の上昇が原因であると推測される。
比較例12及び13の硬化性組成物は、AOMAの添加により粘度が低下したものの、ヘイズ値が高く、例えば有機発光ダイオード(OLED)の光取り出し向上機能を有する保護膜としては不適切であった。これは、希釈する前の硬化性組成物の粘度が高く、無機微粒子間の距離が保たれずに凝集したことが原因であると推測される。
【0040】
以上、様々な実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。