(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】オンボードチャージャー(OBC)
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20231122BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
H02M7/12 A
H02J7/10 A
(21)【出願番号】P 2021514363
(86)(22)【出願日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2019078225
(87)【国際公開番号】W WO2020088945
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-08-05
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エスモリス ベルトア アントン
(72)【発明者】
【氏名】ヨルダン エレロ ドナト
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-150371(JP,A)
【文献】特開平05-096372(JP,A)
【文献】実開昭61-065885(JP,U)
【文献】特開2010-085231(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0123612(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/00 - 7/40
H02J 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相電気グリッドから抽出される参照最大電力P
MAX3Φに等しい電力値を、オンボードチャージャー(OBC)(200)を用いてAC電気グリッドから抽出する方法であって、
前記OBCは、
AC電気グリッドに接続された3相アクティブフロントエンド(AFE)(220)を有する力率補正器(PFC)、
前記PFCから調整されたDC電圧を受け取り、高電圧バッテリ(140)を充電するよう構成されたDC/DCコンバータ(230)、及び
前記電力値を抽出するように前記OBCを構成する手段
を備え、
前記手段は、3つのスイッチSW1、SW2、及びSW3、及び前記AFE(220)の高圧側及び低圧側の間に直列に接続されたダイオードD1及びD2を有するダイオードアーム(260)を備え、
前記スイッチSW1及びSW2は、前記AFE(220)と前記AC電気グリッドとの間に配置され、3相AFE(220)の相アーム間を流れる電流を遮断でき、
前記スイッチSW3は、前記ダイオードアームを前記AC電気グリッドに接続する線に配置され、
前記方法は、
前記PFCが3相電気グリッド(210)に接続されることに応答して、前記3つのスイッチSW1、SW2、及びSW3を開いた状態に設定することによって、スイッチSW1及びSW2が前記3相AFE(220)の相アーム間を流れる電流を遮断するようにして前記電力値を抽出することであって、ここで前記スイッチSW3は、3相電気グリッド(210)と前記ダイオードアーム(260)との間を流れる電流を遮断することで、前記3つのスイッチSW1、SW2、及びSW3及び前記ダイオードアーム(260)が電流を流さないようにする、抽出すること、
又は
前記PFCが単相電気グリッド(310)に接続されることに応答して、前記3つのスイッチSW1、SW2、及びSW3を閉じた状態に設定することによって、前記電力値を抽出することであって、ここで前記スイッチSW1及びSW2が、前記3相AFE(220)の相アームの間で電流が流れることを可能にするよう、前記ダイオードアーム(260)が電流を流し、ここで前記スイッチSW3は、前記単相電気グリッド(310)と前記ダイオードアーム(260)との間で電流が流れることを可能にするよう閉じられる、抽出すること、
又は
前記PFCが分相又は2相電気グリッド(410)に接続されることに応答して、前記3つのスイッチSW1、SW2、及びSW3を閉じた状態に設定することによって、スイッチSW1及びSW2が前記3相AFE(220)の相アーム間を電流が流れることを可能にするようにして前記電力値を抽出することであって、ここで前記スイッチSW3は、前記ダイオードアーム(260)と前記分相又は前記2相電気グリッド(410)のうちの1本の線との間で電流が流れることを可能にするよう閉じられる、抽出すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記AC電気グリッドと前記3相AFE(220)との間に電磁干渉(EMI)フィルタを確立すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
AC電気グリッドに接続された3相アクティブフロントエンド(AFE)(220)を有する力率補正器(PFC)、及び
前記PFCから調整されたDC電圧を受け取り、高電圧バッテリ(140)を充電するよう構成されたDC/DCコンバータ(230)
を備えるオンボードチャージャー(OBC)(200)であって、前記OBCは、
3相電気グリッドから抽出される参照最大電力P
MAX3Φに等しい電力値を、前記OBCが接続された任意のタイプのAC電気グリッドから抽出するよう前記OBCを設定する手段を備え、
前記手段は、3つのスイッチSW1、SW2、及びSW3、及び前記AFE(220)の高圧側及び低圧側の間に直列に接続されたダイオードD1及びD2を有するダイオードアーム(260)を備えることによって、前記スイッチSW1及びSW2は、前記AFE(220)と前記AC電気グリッドとの間に配置され、3相AFE(220)の相アーム間を流れる電流を遮断でき、ここで前記スイッチSW3は、前記ダイオードアームを前記AC電気グリッドに接続する線に配置される
OBC。
【請求項4】
前記AC電気グリッドと前記3相AFE(220)との間に確立されたEMIフィルタをさらに備える、請求項
3に記載のOBC。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、任意のタイプのAC電源に接続されるように構成され、3相電気グリッドにおける最大電力に等しい最大電力を単相、2相、及び分相グリッドにおいて抽出することを可能にする手段を備えるOBCに関する。
【背景技術】
【0002】
オンボードチャージャー(OBC)としての電力変換システムは、AC入力電力をDC負荷に供給するために用いられる。OBCは、ACモータを駆動するインバータ段を持つモータ駆動において用いられ得る。OBCは、グリッド50/60HzをDC電力に変換し、DC電圧を高電圧バッテリに要求されるレベルに調整し、ガルバニック絶縁、力率補正器(PFC)、及びホットの時にプラグを抜くことによって発生するアークによるダメージを防止する制御を提供する。
【0003】
OBCは、ある限度以下の入力電流の全高調波歪(THD)を制限しつつ、力率PFが1に近くなるようにするPFCコンバータを通して電気グリッドに典型的には接続される。ほとんどの場合、顧客は、PFCが単相、分相、及び3相グリッドで動作することを要求する。典型的には、全電力の1/3だけが単相/分相構成においては伝達され得る。しかし、全電力が構成の全てにおいて提供されることが要求され得て、この場合は、高電力密度の値を確保する一方で、電力要件を充足するという両方を可能にする代替の回路トポロジーが要求されることになる。
【0004】
従来は、単相PFC段コンバータは、単相ブリッジ整流器と、それに続くブーストコンバータに基づき得る。ブーストコンバータの出力は、DC/DCコンバータ、すなわちバッテリチャージャーの、高電圧DCバッテリを充電するという正しい動作を確保する調整されたDC電圧であり得る。
【0005】
前述の単相トポロジーは、1相当たりの単相ブーストPFCコンバータに基づいて、3相PFC段を実現するために複数個、設けられ得る。このアーキテクチャは、既に既存の単相設計が存在するときは良い選択であるが、その理由は上市するための時間を短縮できるからである。しかし、要素の個数及び電力密度は、他のアーキテクチャに比べて最適化されないかもしれない。不利なことには、単相ブリッジ整流器及び1相当たりのブーストコンバータに基づく3相PFC段は、要素の個数を最適化しない。したがって、OBC入力段の電力密度は、妥協され得る。
【0006】
他の現在の実現例としては、並列な単相ブーストPFC段に基づく1相ブーストPFC段が含まれ、ここで単相PFC段のそれぞれは、前述のブリッジ整流器とそれに続くブーストコンバータを置き換える3相AFEに基づいて、潜在的には単相電源、又は3相OBC又は単相OBCに並列に接続され得る。AFEは、要素の個数を減らし、より高い電力密度を可能にする。不利なことには、3相AFEに基づく3相PFC段は、電気グリッドから単相のものへと抽出され得る最大電流を制限するので、単相動作モードにおける最大電力は、3相動作モードにおける最大電力の1/3である。
【0007】
力率補正のためにOBCで用いられるアクティブフロントエンド(AFE)コンバータは、入力AC電力を変換して、DC電力をバスに提供するために、アクティブスイッチング整流器を採用し、この後段には、力率補正器の出力からOBC出力へのガルバニック絶縁を保持してエネルギーを伝達するためにトランスを駆動するインバータがある。絶縁トランスの2次電流は、DC負荷を駆動するために整流される。そのようなアクティブフロントエンドコンバータは、それぞれの電力相と接続されたLCLフィルタ回路のような入力フィルタと典型的には結合される。フロントエンド整流器は、スイッチング回路なので、入力フィルタは、不要な高調波成分が電力グリッド又は他の入力ソースに流入しないように動作する。フィルタインダクタを含むフィルタ要素は、電力コンバータの定格に従って典型的には設計され、ここで入力フィルタ要素を大きくしすぎると、システムのコストを上げ、貴重な筐体スペースを専有する。しかし、グリッド電圧が低下したり、コンバータが設計された定格AC入力電圧よりも利用可能な入力電源電圧が低くなったりする状況が起こり得る。
【0008】
したがって、現在のOBCの構成の上述の欠点を克服し、1に近い力率(PF)及び低いTHDiを確保し、最小個数の要素を用いながら高い電力密度を達成する、単相、分相、及び3相電気グリッドでOBCを動作させることを可能にするOBC入力段アーキテクチャを得ることが求められている。さらに、単相、2相、及び分相電気グリッドにおいて、3相グリッドから抽出され得るのと同じ合計電力を抽出する(よって、前述のAFEアーキテクチャによって課される単相1/3の制限を回避する)OBCも必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前述の欠点を解決する、例えば、AFCアーキテクチャによって課される単相1/3の制限を回避し、OBCが単相、2相、分相、及び3相電気網と互換性があるようにし、1に近いPF及び低いTHDiを確保する、OBCのためのアーキテクチャを提案する。さらに、提案されているOBCの電力密度は、標準的な3相電気網AFEに匹敵し得て、要素の個数も、単相PFC段を並列化することに基づいて、前述の最新の解決策に比べて、最適化され得る。
【0010】
よって、本発明の主要な局面においては、3相電気グリッドから抽出される参照最大電力PMAX3Φに等しい電力値を、オンボードチャージャーOBCを用いてAC電気グリッドから抽出する方法が提案され、前記オンボードチャージャーOBCは、AC電気グリッドに接続された3相アクティブフロントエンドAFEを有する力率補正器PFC、前記PFCから調整されたDC電圧を受け取り、高電圧バッテリを充電するよう構成されたDC/DCコンバータ、及び前記電力値を抽出するように前記OBCを構成する手段を備え、前記手段は、3つのスイッチSW1、SW2、及びSW3、及び前記AFEの高圧側及び低圧側の間に直列に接続されたダイオードD1及びD2を有するダイオードアームを備え、前記2つのスイッチSW1及びSW2は、前記AFEと前記AC電気グリッドとの間に配置され、3相AFEの相アーム間を流れる電流を遮断でき、前記第3スイッチSW3は、前記ダイオードアームを前記AC電気グリッドに接続する線に配置され、前記方法は、前記PFCが3相電気グリッドに接続されることに応答して、前記3つのスイッチSW1、SW2、及びSW3を開いた状態に設定することによって、スイッチSW1及びSW2が前記3相AFEの相アーム間を流れる電流を遮断するようにして前記電力値を抽出することであって、ここで前記第3スイッチSW3は、前記3相電気グリッドと前記ダイオードアームとの間を流れる電流を遮断することで、前記3つのスイッチSW1、SW2、及びSW3及び前記ダイオードアームが電流を流さないようにする、抽出することを含む。
【0011】
代替として、前記方法は、前記PFCが単相電気グリッドに接続されることに応答して、前記3つのスイッチSW1、SW2、及びSW3を閉じた状態に設定することによって、前記電力値を抽出することであって、ここで前記スイッチSW1及びSW2が、前記3相AFEの前記相アームの間で電流が流れることを可能にするよう、前記ダイオードアームが電流を流し、ここで前記第3スイッチSW3は、前記単相電気グリッドと前記ダイオードアームとの間で電流が流れることを可能にするよう閉じられる、抽出することを含む。
【0012】
代替として、前記方法は、前記PFCが分相又は2相電気グリッドに接続されることに応答して、前記3つのスイッチSW1、SW2、及びSW3を閉じた状態に設定することによって、スイッチSW1及びSW2が前記3相AFEの相アーム間を電流が流れることを可能にするようにして前記電力値を抽出することであって、ここで前記第3スイッチSW3は、前記ダイオードアームと前記分相又は前記2相電気グリッドのうちの1本の線との間で電流が流れることを可能にするよう閉じられる、抽出することを含む。
【0013】
よって、本発明の他の主要な局面では、オンボードチャージャーOBCを用いてAC電気グリッドから電力値を抽出する方法が提案され、前記オンボードチャージャーOBCは、AC電気グリッドに接続された3相アクティブフロントエンドAFEを有する力率補正器PFC、前記PFCから調整されたDC電圧を受け取り、高電圧バッテリを充電するよう構成されたDC/DCコンバータ、及び前記AFEと前記AC電気グリッドとの間に配置され、前記3相AFEの2つの相アームの間を流れる電流を遮断できるスイッチSW2を備え、前記方法は、前記PFCが前記3相電気グリッドに接続されることに応答して、前記スイッチSW2を開いた状態に設定することによって、前記スイッチSW2が前記3相AFEのうちの前記2つの相アームの間に流れる電流を遮断するようにし、3相電気グリッドから抽出される参照最大電力PMAX3Φに等しい電力値を抽出することを含む。
【0014】
代替として、前記方法は、前記PFCが単相電気グリッドに接続されることに応答して、前記スイッチSW2を閉じた状態に設定することによって、前記スイッチSW2が前記3相AFEのうちの前記2つの相アームの間に電流が流れることを可能にし、3相電気グリッドから抽出される参照最大電力PMAX3Φに等しい電力値を抽出することであって、ここで前記AFEの第3相アームは、線電流IMAXの最大値に耐え、前記3相AFEの前記2つの相アームは、1/2IMAXに等しい線電流の値に耐える、抽出することを含む。
【0015】
代替として、前記方法は、前記PFCが分相又は2相電気グリッドに接続されることに応答して、前記スイッチSW2を閉じた状態に設定することによって、前記スイッチSW2が前記3相AFEのうちの前記2つの相アームの間に電流が流れることを可能にし、参照値2/3PMAX3Φに等しい電力値を抽出することであって、ここで前記3相AFEの第3相アームは、線電流IMAXの最大値に耐え、前記3相AFEの前記2つの相アームは、1/2IMAXに等しい線電流の値に耐える、抽出することを含む。
【0016】
本発明の他の主要な局面では、AC電気グリッドに接続された3相アクティブフロントエンドAFEを有する力率補正器PFC、及び前記PFCから調整されたDC電圧を受け取り、高電圧バッテリを充電するよう構成されたDC/DCコンバータを備えるオンボードチャージャー(OBC)が提案される。前記OBCは、3相電気グリッドから抽出される参照最大電力PMAX3Φに等しい電力値を、前記OBCが接続された任意のタイプのAC電気グリッドから抽出するよう前記OBCを設定する手段を備え、前記手段は、3つのスイッチSW1、SW2、及びSW3、及び前記AFE(220)の高圧側及び低圧側の間に直列に接続されたダイオードD1及びD2を有するダイオードアーム(260)を備えることによって、前記2つのスイッチSW1及びSW2は、前記AFE(220)と前記AC電気グリッドとの間に配置され、3相AFE(220)の相アーム間を流れる電流を遮断でき、ここで前記第3スイッチSW3は、前記ダイオードアームを前記AC電気グリッドに接続する線に配置される。
【0017】
ある例では、このOBCは、前記電気グリッドと前記3相AFEとの間に確立されたEMIフィルタをさらに備える。
【0018】
本発明の他の主要な局面では、AC電気グリッドに接続された3相アクティブフロントエンドAFEを有する力率補正器PFC、及び前記PFCから調整されたDC電圧を受け取り、高電圧バッテリを充電するよう構成されたDC/DCコンバータを備えるオンボードチャージャー(OBC)が提案され、前記OBCは、前記AFEと前記AC電気グリッドとの間に配置され、前記3相AFEの2つの相アームの間を流れる電流を遮断できるスイッチSW2を備え、前記ACグリッドが3相電気グリッドであるときには、前記PFCが前記3相電気グリッドに接続されることに応答して、前記スイッチSW2を開いた状態に設定することによって、前記スイッチSW2が前記3相AFEのうちの前記2つの相アームの間に流れる電流を遮断するようにし、3相電気グリッドから抽出される参照最大電力PMAX3Φに等しい電力値を抽出する。
【0019】
代替として、前記ACグリッドが単相、2相、又は分相電気グリッドであるときには、前記PFCが分相又は2相電気グリッドに接続されることに応答して、前記スイッチSW2が前記3相AFEのうちの前記2つの相アームの間に電流が流れることを可能にし、参照値2/3PMAX3Φに等しい電力値を抽出し、ここで前記3相AFEの第3相アームは、線電流IMAXの最大値に耐え、前記3相AFEの前記2つの相アームは、1/2IMAXに等しい線電流の値に耐える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
上の説明をよりよく理解するために、及び例を提供する目的だけのために、いくつかの実際の実施形態を概略的に図示する非限定的な図面が含まれる。
【
図1】
図1は、OBCの従来の充電制御システムを示す。
【
図2】
図2は、本開示による3相電気グリッドに接続されたOBCの例を示す。
【
図3】
図3は、本開示による単相電気グリッドに接続された提案されているOBCを示す。
【
図4】
図4は、本開示による分相又は2相電気グリッドに接続された提案されているOBCを示す。
【
図5】
図5は、本開示によるEMIフィルタを持つOBCの例を示す。
【
図6】
図6は、本開示によるEMIフィルタを持つOBCの例を示す。
【
図7】
図7は、本開示による3相グリッド接続のためのOBCの他の例を示す。
【
図8】
図8は、本開示による単相グリッド接続のためのOBCの他の例を示す。
【
図9】
図9は、本開示による2相又は分相グリッド接続のためのOBCの他の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、OBC(100)の従来の充電制御システムを示す図である。従来は、これら充電制御システムは、力率改善回路(PFC)段(120)及びDC-DCコンバータ(130)を通して、単相、分相(split phase)、及び三相のグリッドの交流(AC)電力がDC電力に変換され、入力電源として供給され、DC電源にエネルギーとして貯蔵され得る構造を有する。
図1は、3相電気グリッド(110)のための3相PFC段(120)を持つOBC(100)を示す。
【0022】
低速充電の間、OBC(100)は、入力電源(例えば外部AC電源)を整流し昇圧し、AC電源をDC電源に変換し高電圧バッテリ(140)を充電するよう構成され得る。OBCは、高効率スイッチングオン/オフ動作を実行するよう構成されたDC-DCコンバータ(130)(電力変換器)を含み得る。PFC(120)の入力/出力電圧制御は、PFC(120)のスイッチングモジュールのデューティー比を調整することによって実行され得て、よってDC-DCコンバータ(130)に供給されるPFC(120)の出力電圧の大きさも調整され得る。
【0023】
したがってDC-DCコンバータ(130)は、高電圧バッテリに要求される電圧及び電流に従って充電を実行するために出力電圧及び電流を調整するよう構成され得る。DC-DCコンバータ(130)は、入力電圧としてPFC(120)の出力電圧を使用し得て、周波数及び位相シフト調整を実行することによって、OBC(100)の出力電圧及び電流を調整するよう構成され得る。
【0024】
PFC(120)は、PF改善回路であり、AC電源をDC電源に変換するプロセスで発生する電力損失を低減させるよう構成され得る。PFC(120)は、インピーダンス整合回路を用いてAC電源の電圧及び電流の間の位相差を打ち消すよう電力伝送効率を向上させるよう構成され得る。PFC(120)は、パルス幅変調(PWM)制御を通してAC電源を等化させる(equalize)よう構成されたスイッチングモジュールを含み得る。
【0025】
前に述べたように、
P
MAX3Φ=3・V
pn(rms)・I
p(rms)
P
MAX1Φ=V
pn(rms)・I
p(rms)
に従って、
図1に示される従来のOBC構成の単相/分相では3相グリッドの全電力のうちの1/3しか伝達されない。
【0026】
ある例では、相の対中性点グリッド電圧は230Vrmsであり、最大要求線電流は16Armsであると仮定すると、3相ネットワークにグリッドから抽出され得る最大電力は、PMAX3Φ=11kWであり、単相について抽出され得る最大電力は、PMAX1Φ=3.7kWである。
【0027】
図2は、本開示による3相電気グリッド(210)のための提案されているOBC(200)を持つ充電制御システムの例を示す。提案されているOBC(200)は、PFCコンバータとして機能する3相AFE(220)及びDC電力を高電圧バッテリ(240)に供給する充電器DC-DCコンバータ(230)を備える。
【0028】
AFE(220)は、パルス幅変調(PWM)制御を通して3相電気グリッド(210)を等化する(equalize)よう構成されたスイッチングモジュール(224)を含む。充電システムは、3相グリッドソースのそれぞれの相について入力インダクタンス(222)と、不要高調波成分の導入を阻止するキャパシタ(226)を備える。
【0029】
提案されているOBC(200)は、OBCが接続されている電気グリッドのタイプとは独立して、OBC(200)がグリッドから最大電力P
MAX3Φを抽出することを可能にする手段、すなわち
図2で示されるように、参照符号250で示されるスイッチSW1、SW2及び参照符号255で示されるスイッチSW3、加えて、参照符号260で示されるダイオードD1及びD2をさらに備える。ダイオードD1及びD2は、AFE(220)の高電位側及び低電位側の間に直列に接続され、それによって2つのスイッチSW1及びSW2がAFE(220)及びAC電気グリッドの間に配置され、3相AFE(220)の相アームの間を流れる電流を遮断でき、第3スイッチSW3は、ダイオードアーム(260)をAC電気グリッドに接続する線の途中に配置される。OBC(200)のAFE(220)が3相、2相、単相又は分相(split phase)の電気グリッドに接続されているかに依存して、このOBCの動作には3つのモードが存在する。
図2は、3相電気グリッド(210)に接続されている動作のモードを示す。
【0030】
3相電気グリッドに接続する場合のOBC(200)の動作モードは、以下の通りである。OBC(200)が3相電気グリッドに接続されている時、スイッチSW1、SW2、及びSW3は、
図2に示されるように恒久的に開いており、PFCの段は、通常の3相AFEとして振る舞う。この動作モードにおいて、ダイオードD1及びD2は、電流を流さない。実際の例では、中性点に対する相グリッド実効電圧が230V
rmsであると仮定すると、グリッドから抽出され得る最大電力は、P
MAX3Φ=11kW(PF=1であり、相あたりの最大線電流16A
rmsであると想定)である。この例では、3相AFEは、パルス幅変調法によって制御され得る。他の例では、スイッチSW3は、OBC(200)に含まれない。他の例では、OBC(200)は、2相電気グリッドから電力を抽出する。
【0031】
図3は、単相電気グリッド(310)に接続されている、本開示による提案されているOBC(200)を示す。
図3は、PFCコンバータとしてのAFE(220)及びDC電力を高電圧バッテリに供給する充電器DC-DCコンバータを備えるOBC(200)を示す。前に述べたように、提案されているOBC(200)は、参照符号250で示されるスイッチSW1、SW2、及び参照符号255で示されるスイッチSW3、加えて参照符号260で示されるダイオードD1及びD2を備える。
図3は、単相電気グリッド(310)のための動作モードを示す。
【0032】
OBC(200)が単相電気グリッド(310)に接続されている時、スイッチSW1、SW2、及びSW3は、恒久的に閉じている。この動作モードでは、3相アームは、互いに並列に動作し、それぞれのアームは、合計線電流I
rmsの1/3ずつを担い、ダイオードD1及びD2は、電流を通し、トーテムポール整流器として知られるトポロジーを形成する。よって、電力要素は、単相、2相、分相又は3相動作についての1/3I
rmsの定格にされ得る。
図3に示されるように、単相電気グリッド(310)が、スイッチSW3を介してダイオードアームに及びダイオードD1及びD2の間に接続される。この例について、中性点に対する相電圧(phase to neutralgrid voltage)V
rms=230V
rmsであり、合計線電流I
rms=48Aであり、それぞれのアームについての電流が16A
rmsに等しいと仮定すると、グリッドから抽出され得る最大電力は、P
MAX1Φ=P
MAX3Φ=11kW(PF=1と想定)である。ダイオード及びSW3は、線電流の3倍(×3)(例えばこの例では48A
rms)に耐えられるようにそれら仕様が定められなければならない。D1及びD2は、低い周波数(電源周波数)のダイオードであり、よってそれらのコストは限定的であり得る。
【0033】
この例では、AFE(220)の3相アームのそれぞれは、パルス幅変調技術によって制御され得る。これらアームは、制御信号を共有してもよく、又は例えば、インターリービングのような異なる変調技術を用いてもよく、そのような技術は、PFCコンバータの電力密度をさらに向上させるために用いられ得る。これは、例えば、高い周波数の高調波低減によって、電磁干渉EMIフィルタリング及びブーストインダクタの低減によって達成され得る。
【0034】
図4は、分相又は2相電気グリッド(410)に接続された、前の図に記載されたOBC(200)を示す。この動作モードは、
図4に見られるように、単相の動作モードと類似している。この動作モードの主要な違いは、ダイオードアーム(260)の中点がどのように分相又は2相の電気グリッド(410)に接続されるかに関連する。
【0035】
同様に、中性点に対するグリッド相電圧(phase to neutral grid voltage)Vrms=115Vrmsであり、よってOBC(200)から見て等価な入力電圧230Vrmsがかかり、線電流Irms=48Armsであると仮定すると、グリッドから抽出され得る最大電力は、PMAX2Φ=PMAXsplit=PMAX3Φ=11kWである。分相の場合、相間で180°の位相差が存在する。したがって、中性点に対するグリッド相電圧Vrms_L-N=115Vrmsである。これは、PFCコンバータから見れば、PFCコンバータの入力の間に230Vrmsがかかっていることになる。したがって、PMAXsplit=11kWをグリッドから抽出するためには、線電流48Armsが必要となる。
【0036】
中性点に対するグリッド相電圧Vrms_L-N=230Vであり、120°の位相差を有する2相グリッドに接続されたOBC(200)の場合、グリッドから抽出され得る最大電力は、PMAX2Φ=230Vrms×√3×16Arms=6.3kWであり、よって3相グリッド運用のときと同じ最大電流が維持される。他の例では、PFC段の電力要素の電流制限値を適用することによって、グリッドから抽出され得る最大電力は、PMAX2Φ=230Vrms×√3×32Arms=12.7kWである。
【0037】
図5及び
図6は、本開示による提案されているOBC(500)の他の例を示す。OBC(500)は、3相電力グリッド(510)に接続されており、EMIフィルタ(570)を備える。特に、EMIは、放射又は伝導されている電磁波が電子装置に影響を与えるような電磁的な干渉又は伝搬外乱を表す。OBC(500)は、充電制御システムの電源である入力電源(システム電源)に直接に接続されているので、EMIフィルタ(570)は、OBCで発生したノイズのシステム電源への流入を最小化することが可能であり得る。入力EMIフィルタ(570)の使用によって、
図5及び
図6に示されるように、スイッチSW1及びSW2の位置についてさらなる自由度が得られる。
【0038】
図7、
図8、及び
図9は、本開示による提案されているOBC(700)の他の例を示す。
【0039】
提案されているOBC(700)は
図7に示され、ここでOBC(700)は、3相電気グリッドに接続されている。
図8及び
図9は、単相及び分相電力グリッドに接続されているOBC(700)をそれぞれ示す。OBC(700)は、OBC(700)が接続されている電気グリッドの種類に依存して、グリッドから合計電力を抽出するための単一の要素、すなわち参照符号750を持つスイッチSW2だけを備える。スイッチSW2は、AFE(220)及びAC電気グリッドの間に配置され、3相AFE(220)の2つの相アームの間を流れる電流を遮断し得る。よって単一のスイッチが閉じた状態だと、OBC(700)は、
図8に示される単相電気グリッドに接続されたときの、又は
図9に示される分相電気グリッドに接続されたときの最大電力の2/3を得ることができる。よって、
図8に示されるように提案されているOBC(700)が単相電気グリッドに接続されると、グリッドから抽出され得る最大電力は、P
MAX1Φ=2/3P
MAX3Φである。さらに、
図9に示されるように提案されているOBC(700)が分相電気グリッドに接続されると、P
MAXsplit=2/3P
MAX3Φである。さらに、提案されているOBC(700)が2相電気グリッドに接続されると、P
MAX2Φ=2/3P
MAX3Φである。
【0040】
本開示による提案されているOBC(700)は、単相の動作モードでは、相のうちの1つが最大電流IMAXに耐えるように設計されるが、他の2つの相は、その電流の半分に耐えることを要求する。単相又は分相又は2相の動作モードでは、これら2相は、並行に動作する。この例では、それぞれのアームについての線電流(Irms=16Arms)が並行に動作し、IMAX=32Armsである限り、高周波数PWMに基づく異なる制御方式も可能である。入力EMIフィルタの使用により、スイッチSW2をEMIフィルタの前にでも後にでも配置できるという、さらなる自由度が得られる。
【0041】
上記に基づいて、本開示は、OBCを単相、分相、2相、及び3相の電気グリッドと共に動作させて、1に近いPFと、低いTHDiと確保し、最低限の個数の部品を使いつつも高い電力密度を達成し、及び3相グリッドから抽出され得る最大電力PMAX3Φに等しい合計電力を、単相、分相、及び2相の電気グリッドにおいて得ることを可能にし、よって、前述の従来のAFEアーキテクチャによって課された単相1/3制限を回避する、3相AFEに基づくOBC入力段アーキテクチャを提案する。
【0042】
本発明の具体的な実施形態に参照がなされてきたが、ここで説明されたOBC入力段アーキテクチャは、多くの変形及び改変が可能であること、及び添付の特許請求の範囲によって規定される保護範囲から逸脱することなく、言及された全ての詳細は、他の技術的に等価なものと置換可能であることが当業者には明らかである。
【0043】
ある例では、本願は、3相電気グリッドから抽出される参照最大電力PMAX3Φに等しい電力値を、オンボードチャージャーOBCを用いてAC電気グリッドから抽出する第1方法に関し、前記オンボードチャージャーOBCは、AC電気グリッドに接続された3相アクティブフロントエンドAFEを有する力率補正器PFC、前記PFCから調整されたDC電圧を受け取り、高電圧バッテリを充電するよう構成されたDC/DCコンバータ、及び前記電力値を抽出するように前記OBCを構成する手段を備え、前記手段は、3つのスイッチSW1、SW2、及びSW3、及び前記AFEの高圧側及び低圧側の間に直列に接続されたダイオードD1及びD2を有するダイオードアームを備え、前記第1方法は、前記PFCが3相電気グリッドに接続されることに応答して、前記3つのスイッチSW1、SW2、及びSW3を開いた状態に設定することによって、前記ダイオードアームが電流を流さないようにする、合計電力を抽出すること、又は前記PFCが単相電気グリッドに接続されることに応答して、前記3つのスイッチSW1、SW2、及びSW3を閉じた状態に設定することによって、電力を迂回させ、前記ダイオードアームが電流を流すようにして、合計電力を抽出すること、又は前記PFCが分相又は2相電気グリッドに接続されることに応答して、前記3つのスイッチSW1、SW2、及びSW3を閉じた状態に設定することによって、電流を迂回させ、前記ダイオードアームが電流を流し、前記ダイオードアームの中点を前記分相又は前記2相電気グリッドのうちの1本の線に接続して、合計電力を抽出することを含む。
【0044】
ある例では、前記第1方法は、前記AC電気グリッドと前記3相AFEとの間に電磁干渉フィルタを確立することをさらに含む。
【0045】
ある例では、本願は、オンボードチャージャーOBCを用いてAC電気グリッドから電力値を抽出する方法であって、前記オンボードチャージャーOBCは、AC電気グリッドに接続された3相アクティブフロントエンドAFEを有する力率補正器PFC、前記PFCから調整されたDC電圧を受け取り、高電圧バッテリを充電するよう構成されたDC/DCコンバータ、及び前記AFEと前記AC電気グリッドとの間に配置され、前記3相AFEの2つの相アームの間を流れる電流を遮断できるスイッチSW2を備え、前記第2方法は、前記PFCが前記3相電気グリッドに接続されることに応答して、前記スイッチSW2を開いた状態に設定することによって、3相電気グリッドから抽出される参照最大電力PMAX3Φに等しい電力値を抽出すること、又は前記PFCが単相電気グリッドに接続されることに応答して、前記スイッチSW2を閉じた状態に設定することによって、3相電気グリッドから抽出される参照最大電力PMAX3Φに等しい電力値を抽出することであって、ここで前記AFEの第3相アームは、線電流IMAXの最大値に耐え、前記3相AFEの前記2つの相アームは、1/2IMAXに等しい線電流の値に耐える、抽出すること、又は前記PFCが分相又は2相電気グリッドに接続されることに応答して、前記スイッチSW2を電流を迂回させる閉じた状態に設定することによって、参照値2/3PMAX3Φに等しい電力値を抽出することであって、ここで前記3相AFEの第1相アームは、線電流IMAXの最大値に耐え、前記3相AFEの第2及び第3相アームは、1/2IMAXに等しい線電流の値に耐える、抽出することを含む、第2方法に関する。
【0046】
ある例では、前記第2方法は、前記AC電気グリッドと前記3相AFEとの間にEMIフィルタを確立することをさらに含む。
【0047】
ある例では、本願は、AC電気グリッドに接続された3相アクティブフロントエンドAFEを有する力率補正器PFC、及び前記PFCから調整されたDC電圧を受け取り、高電圧バッテリを充電するよう構成されたDC/DCコンバータを備える第1オンボードチャージャー(OBC)に関する。前記OBCは、3相電気グリッドから抽出される参照最大電力PMAX3Φに等しい電力値を、前記OBCが接続された任意のタイプのAC電気グリッドから抽出するよう前記OBCを設定する手段を備えることを特徴とし、前記手段は、3つのスイッチSW1、SW2、及びSW3、及びダイオードD1及びD2を有するダイオードアームを備える。
【0048】
ある例では、前記第1OBCは、前記電気グリッドと前記3相AFEとの間に確立されたEMIフィルタをさらに備える。
【0049】
ある例では、本願は、AC電気グリッドに接続された3相アクティブフロントエンドAFEを有する力率補正器PFC、及び前記PFCから調整されたDC電圧を受け取り、高電圧バッテリを充電するよう構成されたDC/DCコンバータを備える第2オンボードチャージャー(OBC)にも関する。前記OBCは、OBCが、OBCが接続されたAC電気グリッドから合計電力を抽出できるように構成するスイッチSW2を備えることを特徴とし、前記AC電気グリッドが3相電気グリッドであるときには、前記合計電力は、3相電気グリッドから抽出される参照最大電力PMAX3Φに等しく、前記AC電気グリッドが単相、2相、又は分相電気グリッドであるときには、前記合計電力は、2/3PMAX3Φに等しい。
【0050】
ある例では、前記第2OBCは、前記電気グリッドと前記3相AFEとの間に確立されたEMIフィルタをさらに備える。