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特許7389807イヌ科動物における変性性僧帽弁疾患を診断及び治療するための組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】イヌ科動物における変性性僧帽弁疾患を診断及び治療するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/06 20060101AFI20231122BHJP
   C12Q 1/6888 20180101ALI20231122BHJP
【FI】
C12Q1/06 ZNA
C12Q1/6888 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021534603
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-21
(86)【国際出願番号】 IB2019060939
(87)【国際公開番号】W WO2020136505
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】62/785,373
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】リー, チンホン
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0064140(US,A1)
【文献】国際公開第2014/196957(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/218211(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/090842(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
A23K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヌ科動物における早期変性性僧帽弁疾患を診断する方法であって、
前記イヌ科動物から糞便試料を採収する工程と、
前記糞便試料におけるエリシペラトクロストリジウム、ルミノコッカスUCG014、ブチリシコッカス、フィーカリバクテリウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるバイオマーカーの、正規化した相対存在量を測定する工程であって、前記糞便試料から糞便DNAを抽出し、前記抽出された糞便DNAの配列決定を行い、分類学的割り当て及び配列アライメントを実施することを含む工程と、
前記エリシペラトクロストリジウムの正規化した相対存在量が0~0.5である場合、前記ルミノコッカスUCG014の正規化した相対存在量が0~0.1である場合、前記ブチリシコッカスの正規化した相対存在量が0~0.1である場合、又は前記フィーカリバクテリウムの正規化した相対存在量が0~0.1である場合に、前記イヌ科動物が早期変性性僧帽弁疾患を有すると判定する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記判定する工程が、2つのバイオマーカーに基づくものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記判定する工程が、3つのバイオマーカーに基づくものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記判定する工程が、4つのバイオマーカー全てに基づくものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記判定する工程が、エリシペラトクロストリジウムに基づくものである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記判定する工程が、ルミノコッカスUCG014に基づくものである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記判定する工程が、ブチリシコッカスに基づくものである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記判定する工程が、フィーカリバクテリウムに基づくものである、請求項1に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]関連出願の相互参照
本出願は、2018年12月27日に出願された米国特許仮出願第62/785,373号の優先権を主張するものであり、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
[0002]イヌ科動物の変性性僧帽弁疾患(DMVD)は、僧帽弁逆流を引き起こし、及び一部のイヌではうっ血性心不全(CHF)を引き起こす、遅進行性の弁膜変性を特徴とする。早期段階のイヌは、典型的には長い発症前期間を有するが、CHFを有する段階まで進行すると、疾患がより急速に進行し、その平均生存期間は12ヶ月未満である。したがって、罹患したイヌの寿命を延ばすためには、発症前段階の早期に介入することが極めて重要である。近年では、イヌDMVDを分類するステージング体系が、American College of Veterinary Internal Medicine(ACVIM)により設立されたコンセンサス委員会によって採用されている。DMVDを発症するリスクがあるが、それ以外は健康であるイヌは、ステージAであるとみなされ;僧帽弁逆流による心雑音があるが、CHFの臨床的徴候はみられないイヌは、ステージBに分類され;CHFの明らかな臨床徴候を有するイヌは、ステージCに分類される。ステージBのイヌは、心室リモデリングの有無により、ステージB1又はB2に更に分けられる。
【0003】
[0003]現在、発症前早期のDMVDに有効であることが証明されている唯一の薬剤はピモベンダンであり、これは、どの薬剤もそうであるように副作用を伴う。現在、DMVD診断のゴールドスタンダードは、心エコー検査であり、これは高価であるだけでなく、専門性の高い心臓専門獣医も必要とする。したがって、現在の方法及び治療の欠点を克服する有効な診断方法及び治療が尚も探求されている。
【0004】
[発明の概要]
[0004]本開示は、概して、イヌ科動物における変性性僧帽弁疾患を診断及び治療するための組成物及び方法に関する。一実施形態では、イヌ科動物における早期変性性僧帽弁疾患を診断する方法は、エリシペラトクロストリジウム(Erysipelatoclostridium)、ルミノコッカス(Ruminococcaceae)UCG014、ブチリシコッカス(Butyricicoccus)、フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるバイオマーカーの、正規化した相対存在量(normalized relative abundance)を測定する工程と、エリシペラトクロストリジウムの正規化した相対存在量が0~0.5である場合、ルミノコッカスUCG014の正規化した相対存在量が0~0.1である場合、ブチリシコッカスの正規化した相対存在量が0~0.1である場合、又はフィーカリバクテリウムの正規化した相対存在量が0~0.1である場合に、該イヌ科動物が早期変性性僧帽弁疾患を有すると判定する工程と、を含み得る。
【0005】
[0005]別の実施形態では、イヌ科動物における変性性僧帽弁疾患の治療又は進行遅延の方法は、イヌ科動物に組成物を投与する工程を含んでもよく、該組成物は、ブチリシコッカス及びフィーカリバクテリウムからなる群から選択されるプロバイオティクスを含む。
【0006】
[0006]別の実施形態では、ペットフードは、タンパク質と、脂肪と、炭水化物と、繊維と、ブチリシコッカス、フィーカリバクテリウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるプロバイオティクスと、を含み得る。
【0007】
[0007]更なる特徴及び利点が本明細書に記述されており、以下の発明を実施するための形態から明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[0008]
定義
本開示及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「1つの」、すなわち「a」、「an」及び「the」には、別段の指示がない限り、複数の参照物も含まれる。したがって、例えば、「組成物(a composition)」又は「組成物(the composition)」についての言及は、2つ以上の組成物を含む。「X及び/又はY」という文脈で使用される用語「及び/又は」は、「X」若しくは「Y」又は「X及びY」と解釈すべきである。本明細書で使用する場合、「例」及び「例えば」という用語は、特に用語の列挙が続くときには、単に例示的及び図示的に用いられるものであり、排他的又は包括的なものでない。
【0009】
[0009]本明細書で使用する「約」は、数値範囲内の数を指すものと理解され、例えば、参照する数字の-10%から+10%の範囲、-5%から+5%の範囲内、又は一態様では参照する数字の-1%から+1%の範囲内、具体的態様では参照する数字の-0.1%から+0.1%の範囲内の数を指す。更に、本明細書における全ての数値範囲は、その範囲内の全ての整数、整数又は分数を含むものと理解されたい。更に、これらの数値範囲は、この範囲内の任意の数又は数の部分集合を対象とする請求項をサポートすると解釈されたい。例えば、1~10という開示は、1~8、3~7、1~9、3.6~4.6、3.5~9.9などの範囲をサポートするものと解釈されたい。
【0010】
[0010]本明細書で表されている全ての百分率(パーセンテージ)は、別段の記述がない限り、乾物ベースでの組成物の重量百分率である。当業者は、「乾物ベース(dry matter basis)」という用語が、前記組成物中の全ての自由水分が除かれた後に組成物における含有物の濃度又は百分率が計測される又は計算されること、を意味していることを十分に理解するであろう。pHについての参照がなされる場合には、値は標準的な装置により25℃にて測定されるpHに相当する。「量」は、組成物の1回分当たりの参照成分の総量、又は組成物の別個の単位当たりの総量であってよく、及び/又は乾燥重量による参照成分の重量%であり得る。更に、「量」は、ゼロを含み;例えば、化合物の量の記述は、ゼロを除外する範囲を伴わない限り、化合物が存在することを必ずしも意味しない。
【0011】
[0011]用語「食品」、「食品製品」、及び「食品組成物」とは、動物による摂取を意図し、その動物に少なくとも1つの栄養素を提供する、製品又は組成物を意味する。更に、この点において、これらの用語は、当該製品又は組成物が、摂取の準備が整った形態であること、及びそれをもとに摂取可能な製品又は組成物が作られる単なる中間製品ではないこと、を意味しているものの、いくつかの実施形態では、他の食品組成物を加えることができる。用語「ペットフード」とは、ペットによる摂取を意図した任意の食品組成物を意味する。用語「ペット」とは、本開示により提供される組成物から恩恵を得られる、又はかかる組成物を堪能することのできる、任意の動物を意味する。例えば、ペットは、鳥類、ウシ科動物、イヌ科動物、ウマ科動物、ネコ科動物、ヤギ、オオカミ科動物、ネズミ、ヒツジ又はブタといった動物であってもよいが、ペットは任意の好適な動物であり得る。
【0012】
[0012]用語「完全かつバランスのとれた」は、食品組成物について言及する際、動物栄養学の分野で認められた権威の推奨に基づき、既知の必要な栄養素の全てを、適切な量及び割合で含有しており、したがって、栄養補給源を追加せずとも、生命を維持し、又は生産を促進する食餌の唯一の供給源としての役割を果たすことができるという意味である。栄養学的にバランスのとれたペットフード及び動物の食餌組成物は公知であり、当該技術分野において広く利用されており、例えば、米国飼料検査官協会(AAFCO)によって確立された基準に従って配合された、完全かつバランスのとれた食品組成物がある。
【0013】
[0013]用語「コンパニオンアニマル」とは、イヌ又はネコを意味する。一実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法は、高齢のイヌにも関わる。イヌは、寿命の残りが25%以内である場合高齢とみなされる。イヌの寿命は、その体格及び/又は犬種によるが、本開示においては、高齢犬は、少なくとも5歳齢(例えば、少なくとも6歳齢、少なくとも7歳齢、又は少なくとも8歳齢)のイヌである。
【0014】
[0014]本明細書で使用するとき、「正規化した相対存在量」は、各微生物の量であって、各サンプルにおいてそれぞれのカウントをとり、総シークエンスカウント(total sequence count)で除算して、平方根で変換することによって計算された量を指す。
【0015】
[0015]本明細書で使用するとき、「早期変性性僧帽弁疾患」は、変性性僧帽弁疾患のステージBを指す。
【0016】
[0016]本明細書で使用するとき、「ステージA」は、変性性僧帽弁疾患を発症するリスクがあるが、それ以外は健康な心臓を有するイヌを指す。
【0017】
[0017]本明細書で使用するとき、「ステージB」は、僧帽弁逆流に起因する心雑音があるが、うっ血性心不全の臨床的徴候を有さないイヌを指す。「ステージB」は、ステージB1(心室リモデリングなし)及びステージB2(心室リモデリングあり)を含む。
【0018】
[0018]本明細書で使用するとき、「ステージC」は、うっ血性心不全を有するイヌを指す。
【0019】
[0019]本明細書で使用するとき、「変性性僧帽弁疾患」、「DMVD」、「僧帽弁粘液腫様変性」、及び「MMVD」は互換的に使用可能であり、僧帽弁逆流及び/又はうっ血性心不全(CHF)を引き起こす進行性弁膜変性を指し、ステージA、ステージB、及びステージCを含む。
【0020】
[0020]「ブレンドされた」組成物は、本開示の文脈において、互いに対して異なる特性を少なくとも1つ有する、好ましくは、少なくとも水分含有量及び水分活性が異なる、少なくとも2種類の成分を単に有する。この点において、「ブレンドされた」組成物についての記載は、ブレンドされた組成物が、「ブレンド」と称されることがある加工を受けたこと、つまりはそれぞれの成分を区別できなくなるように混合する加工を受けたことを意味するものではなく、一態様では、ある成分を他の成分と混合してブレンドされた組成物を形成する際(例えば、ドライ成分をウェット成分又はセミモイスト成分と混合する際)、このような加工は回避される。更にこの点において、ブレンドされた組成物では、少なくとも1つの互いに異なる特性を有する少なくとも2つの成分のそれぞれは、好ましくはそれぞれのそのものの同一性及び外観を保持する。
【0021】
[0021]「ウェットフード」とは、含水率が約50%~約90%、一態様では約70%~約90%のペットフードを意味する。「ドライフード」とは、含水率が約20%未満、一態様では約15%未満、特定の態様では約10%未満のペットフードを意味する。「セミモイストフード」とは、含水率が約20%~約50%、一態様では約25%~約35%のペットフードを意味する。
【0022】
[0022]「キブル」は本明細書では「チャンク」と同義的に使用され、いずれの用語もペレット形状又は他の任意の形状を有し得るドライ又はセミモイストのペットフード片を意味し、食品組成物を個別の片にスライスすることで作ることができる。キブルの非限定例としては、粒子状のもの;ペレット;ペットフード、脱水肉、肉類似物、野菜、及びこれらの組み合わせの小塊;並びに肉若しくは野菜の干物、ローハイド、及びビスケットなどのペットスナックが挙げられる。「肉類似物」とは、外観、テクスチャー及び物理的構造の点で天然の肉片に類似している肉エマルション製品である。
【0023】
[0023]用語「治療有効量」の「有効量」とは、本発明の化合物の、(i)特定の疾患、状態、若しくは障害を治療若しくは予防する量、(ii)特定の疾患、状態、若しくは障害の1つ以上の症状を和らげる、寛解させる、若しくは取り除く量、又は(iii)本明細書に記載の特定の疾患、状態、若しくは障害の1つ以上の症状の発現を予防若しくは遅延させる量、を意味する。いくつかの態様では、特定の疾患、状態、又は障害は、変性性僧帽弁疾患であり得る。
【0024】
[0024]用語「ダイエタリーサプリメント」とは、通常の動物の食餌に加えて摂取されることが意図された製品を意味する。ダイエタリーサプリメントは、任意の形態、例えば、固体、液体、ゲル、錠剤、カプセル、粉末などであってよい。一態様では、ダイエタリーサプリメントは、都合のよい用量の形態で提供され得る。いくつかの実施形態では、ダイエタリーサプリメントは、バルク粉末、液体、ゲル、又は油などの家庭用バルクパッケージで提供され得る。他の実施形態では、ダイエタリーサプリメントは、スナック、トリート、サプリメントバー、飲料などの他の食品アイテムに含められるようバルク量で提供され得る。
【0025】
[0025]用語「長期投与」は、1ヶ月を超える反復した投与又は摂取の期間を意味する。所定の実施形態に関して、2ヶ月、3ヶ月、又は4ヶ月超の期間を採用し得る。また、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、又は10ヶ月超を含む、より長い期間も採用し得る。11ヶ月又は1年を超える期間も採用し得る。1年、2年、3年、又はそれ以上の年を超えて延長したより長期の使用が、本発明に含まれる。特定の老齢動物については、動物は、その残りの生涯にわたって定期的な摂取を続けることになるであろう。これはまた、「延長された」期間(“extended” periods)にわたる摂取と呼ぶことができる。
【0026】
[0026]「定期的に」という用語は、少なくとも毎月の組成物の投与又は組成物の摂取を意味し、一態様では、少なくとも毎週の投与を意味する。所定の実施形態では、週に2回又は3回など、より頻繁な投与又は摂取を行うことができる。更に、他の実施形態では、少なくとも1日1回の摂取を含む投与計画を用いることができる。
【0027】
[0027]本明細書において表現される投与量は別途記載のない限り、1日当たりの、体重1kg当たりのミリグラム(mg/kg/日)である。
【0028】
[0028]本明細書で開示される組成物には、本明細書にて具体的に開示されない任意の要素が存在しない場合がある。したがって、「含む/備える(comprising)」という用語を用いた実施形態の開示は、特定されている構成成分「から本質的になる(consisting essentially of)」実施形態、及び「からなる(consisting of)」実施形態の開示を含む。同様にして、本明細書で開示される方法には、本明細書において具体的に開示されない任意の工程が存在しない場合がある。したがって、「を含む」という用語を用いた実施形態の開示は、特定されている工程から本質的になる」実施形態、及び「からなる」実施形態の開示を含む。別途記載のない限り及び直接的に明言のない限り、本明細書に開示される任意の実施形態を、任意の他の実施形態と組み合わせることもできる。
【0029】
[0029]別途記載のない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語、並びにいかなる略語も、本発明の属する技術分野の当業者により一般に理解されるものと同様な意味を有する。本明細書に記載のものに類似又は等価の任意の組成物、方法、製品、又はその他の手法若しくは材料を本発明の実施に使用できるが、好ましい組成物、方法、製品、又はその他の手法若しくは材料が本明細書に記載される。
【0030】
[0030]本明細書において引用又は参照される全ての特許、特許出願、出版物、及びその他の参考文献は、参照により、法によって許容される範囲で本明細書に援用される。これらの参照についての論考は、該参照においてなされる主張を要約することを意図するにすぎない。このような特許、特許出願、出版物、若しくは参考文献、又はこれらの任意の部分が、本発明の関連する先行技術についてのものであるとの了解はなされず、かつこのような特許、特許出願、出版物、及びその他の参考文献の正確性及び適切性について異議申し立てをする権利は明確に保有される。
【0031】
[0031]
実施形態
一実施形態では、イヌ科動物における早期変性性僧帽弁疾患を診断する方法は、エリシペラトクロストリジウム、ルミノコッカスUCG014、ブチリシコッカス、フィーカリバクテリウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるバイオマーカーの、正規化した相対存在量を測定する工程と、エリシペラトクロストリジウムの正規化した相対存在量が0~0.5である場合、ルミノコッカスUCG014の正規化した相対存在量が0~0.1である場合、ブチリシコッカスの正規化した相対存在量が0~0.1である場合、又はフィーカリバクテリウムの正規化した相対存在量が0~0.1である場合に、該イヌ科動物が早期変性性僧帽弁疾患を有すると判定する工程と、を含み得る。
【0032】
[0032]概して、早期変性性僧帽弁疾患の診断は、エリシペラトクロストリジウム、ルミノコッカスUCG014、ブチリシコッカス、及びフィーカリバクテリウムのいずれか1つの測定に基づくものであり得る。しかしながら、一態様では、診断は、エリシペラトクロストリジウムに基づいて判定できる。別の態様では、診断は、ルミノコッカスUCG014に基づいて判定できる。更に別の態様では、診断は、ブチリシコッカスに基づいて判定できる。更に別の態様では、診断は、フィーカリバクテリウムに基づいて判定できる。更に、一実施形態では、診断は、2つのバイオマーカーに基づいて判定できる。別の実施形態では、診断は、3つのバイオマーカーに基づいて判定できる。更に別の実施形態では、診断は、4つのバイオマーカーの全てに基づいて判定できる。
【0033】
[0033]概して、このようなバイオマーカーは、属内の任意の種を含むことができる。しかしながら、一態様では、ブチリシコッカスは、ブチリシコッカス属菌(Butyricicoccus spp.)とすることができる。別の態様では、フィーカリバクテリウムはフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterinm prausnitzii)とすることができる。
【0034】
[0034]別の実施形態では、イヌ科動物における変性性僧帽弁疾患の治療又は進行遅延の方法は、イヌ科動物に組成物を投与する工程を含んでもよく、該組成物は、ブチリシコッカス及びフィーカリバクテリウムからなる群から選択されるプロバイオティクスを含む。本明細書に記載されるように、一態様では、ブチリシコッカスは、ブチリシコッカス属菌とすることができる。別の態様では、フィーカリバクテリウムは、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイとすることができる。
【0035】
[0035]概して、プロバイオティクスは、概ね、治療有効量で存在する。一態様では、プロバイオティクスは、10~1012コロニー形成単位(cfu)の量で存在し得る。他の態様では、プロバイオティクスは、10~10、10~10、10~1011、又は更には10~1012の量で存在し得る。概して、組成物は、治療が有効となるように十分に投与され得る。一態様では、投与は、定期的にすることができる。別の態様では、投与は、長期投与とすることができる。
【0036】
[0036]組成物の投与は、任意の送達方法を含むことができる。一実施形態では、組成物は、ペットフード組成物と併せて投与することができる。別の実施形態では、組成物は、ペットフードである。更に別の実施形態では、組成物は、ペットフードと併せて投与されるサッシェ又はサプリメントとすることができる。更に別の実施形態では、組成物は、他の食品組成物とは別に投与されるサッシェ又はサプリメントとすることができる。
【0037】
[0037]別の実施形態では、ペットフードは、タンパク質と、脂肪と、炭水化物と、繊維と、ブチリシコッカス、フィーカリバクテリウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるプロバイオティクスと、を含み得る。本明細書に記載されるように、一態様では、ブチリシコッカスは、ブチリシコッカス属菌とすることができる。別の態様では、フィーカリバクテリウムは、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイとすることができる。本明細書に記載されるように、プロバイオティクスは、概して、治療有効量で存在する。一態様では、プロバイオティクスは、10~1012コロニー形成単位(cfu)の量で存在し得る。他の態様では、プロバイオティクスは、10~10、10~10、10~1011、又は更には10~1012の量で存在し得る。
【0038】
[0038]本明細書に記載されるように、ペットフードは、プロバイオティクスを単一組成物として含んでもよく、又は、併せて若しくは別々に投与できる複数の組成物で提供されてもよい。一実施形態では、ペットフード組成物は、パッケージ化されたペットフードと、ペットフードに添加され得るパッケージ化されたプロバイオティクスと、を含むことができる。別の実施形態では、ペットフードは、その中に単一組成物として配合されたプロバイオティクスを含み得る。
【0039】
[0039]本発明のペットフード組成物は、概して、イヌ科動物のための完全かつバランスのとれたペットフードである。様々な実施形態において、ペットフード組成物は、約15%~約50%の粗タンパク質を含み得る。粗タンパク質材料は、大豆ミール、大豆タンパク質濃縮物、トウモロコシグルテンミール、小麦グルテン、綿実、及びピーナッツミールなどの植物性タンパク質、又はカゼイン、アルブミン、及び肉タンパク質などの動物性タンパク質を含み得る。本明細書で有用な肉タンパク質の例としては、豚肉、子羊、ウマ、家禽、魚、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0040】
[0040]組成物は、約5%~約40%の脂肪を更に含むことができる。組成物は、炭水化物源を更に含み得る。組成物は、約15%~約60%の炭水化物を含み得る。そのような炭水化物の例としては、米、トウモロコシ、ミロ、ソルガム、アルファルファ、大麦、大豆、キャノーラ、オート麦、小麦、及びこれらの混合物などの穀物又は穀草類が挙げられる。組成物はまた、乾燥ホエイ及び他の乳製品副生成物などの他の材料を任意に含み得る。
【0041】
[0041]いくつかの実施形態では、組成物の灰分含有量は、1%未満~約15%、一態様では約5%~約10%の範囲である。
【0042】
[0042]含水率は、組成物の性質に応じて変わり得る。一実施形態では、組成物は、完全かつ栄養バランスのとれたペットフードであり得る。この実施形態では、ペットフードは、「ウェットフード」、「ドライフード」、又は中間含水率の食品であり得る。「ウェットフード」は、典型的には缶又はホイルバッグで販売され、典型的には約50%~約90%の範囲、一態様では70%~90%の範囲の含水率を有する。「ドライフード」は、ウェットフードと同様の組成のものであるが、典型的には約5%~約15%又は20%の範囲の限定された含水率を含むペットフードを表し、そのため、例えば、小さいビスケット状のキブルとして提供される。一実施形態では、組成物は、約5%~約20%の含水率を有することができる。ドライフード製品は、保管時に比較的安定であり、微生物又は真菌による劣化又は汚染に対して耐性を有するような様々な含水率の様々な食品を含む。また、ペットフードなどの押出食品製品、又はヒト若しくはコンパニオンアニマル用のスナック食品であるドライフード組成物も含まれる。「セミモイストフード」とは、含水率が約20%~約50%、一態様では約25%~約35%のペットフードを意味する。
【0043】
[0043]組成物はまた、1つ以上の繊維源を含み得る。「繊維」という用語は、易消化性又は難消化性のもの、可溶性又は不溶性のもの、発酵性又は非発酵性のもののいずれであろうと、食品中の全ての「バルク」源を含む。繊維は海の植物などの植物素材から得られるが、微生物によるものである繊維源もまた使用され得る。当業者に既知の、様々な可溶性又は不溶性の繊維を使用することができる。繊維源は、ビートパルプ(サトウダイコン由来)、アラビアゴム、タルハゴム(gum talha)、オオバコ、米ぬか、イナゴマメゴム、柑橘系パルプ、ペクチン、フラクトオリゴ糖、短鎖オリゴフルクトース、マンナンオリゴフルクトース、ダイズ繊維、アラビノガラクタン、ガラクトオリゴ糖、アラビノキシラン、又はこれらの混合物であってもよい。
【0044】
[0044]あるいは、繊維源は発酵性繊維であってもよい。発酵性繊維は、コンパニオンアニマルの免疫系に有益であることが以前から報告されている。腸内でのプロバイオティクスの増殖を増強するためのプレバイオティクスを提供する、当業者に知られている発酵性繊維又は他の組成物もまた、動物の免疫系に対し本発明によって提供される効果の増強を助けるために組成物に組み込むことができる。
【0045】
[0045]これらの組成物及び方法のそれぞれにおいて、ペットフード組成物は、ウェットフード、セミモイストフード又はドライフードであり得る。ある実施形態では、ペットフード組成物は、1つ以上の成分のブレンドされた組成物であってもよい。いくつかの実施形態では、ペットフード組成物はキブルであり、いくつかの実施形態では、ペットフード組成物は食肉代替品である。
【0046】
[0046]本明細書に開示されるペットフード組成物は、植物油、風味剤、着色剤及び水を含み得る。好適な植物油としては、大豆油、トウモロコシ油、綿実油、ヒマワリ油、キャノーラ油、落花生油、紅花油等が挙げられる。好適な風味剤の例としては、酵母、獣脂、レンダリングされた動物肉(例えば、家禽肉、牛肉、ラム肉、豚肉)、風味抽出物又はブレンド(例えば、グリルした牛肉)、動物消化物などが挙げられる。好適な着色剤としては、青色1号、青色2号、緑色3号、赤色3号、赤色40号、黄色5号、黄色6号等のFD&C着色剤、カラメル色素、アンナット、クロロフィリン、コチニール、ベタニン、ウコン、サフラン、パプリカ、リコピン、ニワトコジュース、パンダン、チョウマメなどの天然着色剤、二酸化チタン、並びに当業者に既知の任意の好適な食品着色剤が挙げられる。
【0047】
[0047]本明細書で開示されるペットフード組成物は、穀粉に追加又はその代替として他の穀物及び/又は他のデンプン、アミノ酸、食物繊維、糖類、動物油、アロマ類、植物油に追加又はその代替として他の油、湿潤剤、保存料、ポリオール、塩、口腔ケア成分、抗酸化剤、ビタミン、ミネラル、プロバイオティクス微生物、生理活性分子、又はこれらの組み合わせ等の追加の原材料を任意に含み得る。
【0048】
[0048]好適なデンプンとしては、トウモロコシ、米、小麦、大麦、オート麦、大豆などの穀粒、及びこれらの穀粒の混合物が挙げられ、いずれの粉にも少なくとも部分的に含まれ得る。好適な湿潤剤としては、塩、糖類、プロピレングリコール、並びにグリセリン及びソルビトール等の多価グリコール等が挙げられる。好適な口腔ケア原材料としては、クロロフィルを含有するアルファルファ栄養素濃縮物、重炭酸ナトリウム、ホスフェート(例えば、リン酸三カルシウム、酸性ピロホスフェート、ピロリン酸四ナトリウム、メタホスフェート、及びオルトホスフェート)、ペパーミント、クローブ、パセリ、生姜などが挙げられる。好適な抗酸化剤の例としては、ブチル化ヒドロキシアニソール(「BHA」)、及びブチル化ヒドロキシトルエン(「BHT」)、ビタミンE(トコフェロール)等が挙げられる。
【0049】
[0049]使用され得るビタミンの非限定的な例としては、ビタミンA、ビタミンB複合体(B-1、B-2、B-6及びB-12等)、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE及びビタミンK、ナイアシン並びにパントテン酸及び葉酸等の酸性ビタミン並びにビオチンが挙げられる。好適なミネラルの非限定的な例としては、カルシウム、鉄、亜鉛、マグネシウム、ヨウ素、銅、リン、マンガン、カリウム、クロム、モリブデン、セレン、ニッケル、スズ、ケイ素、バナジウム、及びホウ素などが挙げられる。
【0050】
[0050]本明細書に記載のように、組成物はプレバイオティクス又はプロバイオティクスを更に含み得る。プロバイオティクスは、摂取した場合に特定の医学的状態の予防及び治療において有益な効果を有する生きた微生物である。プロバイオティクスは、コロニー形成耐性として知られる現象を通して生物学的効果を発揮すると考えられる。プロバイオティクスは、常在嫌気性菌叢が、消化管内で有害である可能性のある(主に好気性の)細菌の濃度を制限するプロセスを促進する。胃腸管における酵素の供給又は酵素活性への影響などの他の作用機序も、プロバイオティクスの関与する他の機能の一部を構成し得る。プレバイオティクスは、結腸内で細菌の増殖及び/又は活動を選択的に刺激することによって宿主の健康に有益に影響を与える非消化性の食品原材料である。プレバイオティクスとしては、フルクトオリゴ糖(FOS)、キシロオリゴ糖(XOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、及びマンノオリゴ糖(通常、ペットフード用など、ヒト以外のための食品用)が挙げられる。プレバイオティクスであるフルクトオリゴ糖(FOS)は、小麦、タマネギ、バナナ、蜂蜜、ニンニク、及びリーキなどの多くの食品中に天然に見られる。また、FOSはチコリ根から単離することもでき、スクロースから酵素により合成することもできる。結腸内でのFOS発酵は、結腸内のビフィズス菌の数の増加、カルシウム吸収の増加、糞便重量の増加、胃腸通過時間の短縮、及び場合により血中脂質濃度の低下を含む数多くの生理作用をもたらす。プロバイオティクスは、全身性細胞性免疫応答を増強し、それ以外では健康な成体における自然免疫を強化するため、又は本明細書に記載される他の利益を提供するための、ダイエタリーサプリメントとして有用であり得る。公知のプロバイオティクスとしては、多くの種類の細菌が挙げられるが、概して、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacilllus acidophillus)、ビフィドバクテリア(Bifidobacteria)、ラクトコッカス(Lactococcus)、及びペディオコッカス(Pediococcus)の4つの属から選択される。有益な種としては、エンテロコッカス属(Enterococcus)及びサッカロマイセス属(Saccharomyces)の種が挙げられる。動物に投与すべきプロバイオティクス及びプレバイオティクスの量は、プレバイオティクス及びプロバイオティクスの種類及び性質並びに動物の種類及び性質、例えば、動物の齢、体重、健康状態、性別、微生物の枯渇の程度、有害な細菌の存在、及び食生活に基づいて、当業者によって決定される。概して、プロバイオティクスは、腸管微生物叢の健康的な維持のために1日当たり約1~約200億コロニー形成単位(CFU)、一態様では、1日当たり約50億個~約100億個の生菌量で動物に投与される。概して、プレバイオティクスは、腸内の健康な微生物叢を積極的に刺激し、これらの「善玉」細菌を繁殖させるのに十分な量で投与される。典型的な量は、1食あたり約1グラム~約10グラム、又は動物用に推奨される1日の食物繊維の約5%~約40%である。プロバイオティクス及びプレバイオティクスは、任意の好適な手段によって組成物の一部とすることができる。例えば、当該作用物質は、組成物と混合すること、又は組成物の表面に、例えば散布又は噴霧によって適用することができる。当該作用物質がキットの一部である場合、作用物質は他の材料と混合すること、又はそれらのパッケージ内で混合することができる。
【0051】
[0051]好適な保存料の非限定例としては、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、メチルパラヒドロキシ安息香酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0052】
[0052]本明細書で開示されるペットフード組成物におけるそれぞれの更なる成分の具体的な量は、第1の食材及び任意の第2の食材に含まれる成分;動物の種;動物の齢、体重、健康状態、性別、及び食生活;動物の飲食速度;食品製品を動物に投与する目的などの様々な因子に応じたものとなる。したがって、成分、及びその量は非常に様々であってもよい。
【0053】
[0053]例えば、上記原材料のうち任意のものの量を、変性性僧帽弁疾患に対する推定効果に基づいて減少又は増加させることができる。
【実施例
【0054】
[0054]以下の非限定的な実施例は、本開示の実施形態の例示である。
【0055】
[0055]
実施例1-イヌのMMVD研究
4つのグループのイヌから糞便試料を採取した:グループ1、心臓疾患のエビデンスがないイヌ;グループ2、ステージB1の僧帽弁粘液腫様変性(MMVD)を有するイヌ;グループ3、ステージB2のMMVDを有するイヌ;及びグループ4、ステージCのMMVDを有するイヌ。アメリカ獣医内科学学会(ACVIM)による合意声明に従って、委員会認定の心臓専門獣医による身体検査及び心エコー図に基づき、イヌを検査及び分類した。かかる4つのグループにおいて、イヌの年齢、性別、ボディコンディションスコア(BCS)を揃えた。以下の条件を有するイヌは除外した:1)60日以内に抗生物質を投与されている、2)活発な下痢又は嘔吐がある、3)癌、真性糖尿病、腎不全、又は全身性高血圧症などの重大な全身性疾患がある、4)先天性心疾患などの心臓異常がある、5)BCSが8以上又は3以下である、6)7歳未満である。投薬の履歴を記録した。
【0056】
[0056]排泄されたばかりの糞便を排便の30分以内に回収し、6時間で試験室に移した。各イヌから得た1~2gのアリコート3つを、使用するまで-80℃の冷凍庫に保存した。
【0057】
[0057]糞便DNAには、PowerFecal DNA isolation kit(MO BIO Laboratories,Inc(Carlsbad,CA))を製造元のプロトコルに従って使用して抽出を行い、PicoGreen assay(Thermo Fisher Scientific(Waltham,MA))を使用して定量した。16S rDNAライブラリーは、Illumina社の16S Metagenomic Sequencing Library Preparation guideに従って調製した。16SアンプリコンPCRのフォワードプライマー及びリバースプライマーの配列は、それぞれ、5’TCGTCGGCAGCGTCAGATGTGTATAAGAGACAGCCTACGGGNGGCWGCAG及び5’GTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAAGAGACAGGACTACHVGGGTATCTAATCCとした。Illumina MiSeqシーケンサを使用して、試薬キットv2及び500サイクルフォーマットにより2×250塩基対(bp)のペアエンドリードを得て、配列決定を行った。
【0058】
[0058]43のサンプルについて合計11,498,568のリードが得られ、カバレッジの中央値は54,127であった。ソフトウェアPEARをデフォルト設定で用いて、各ペアエンドリードをマージし、シングルリードにアセンブルした。これにより、11,434,008のアセンブルされたリードが得られ、アセンブリ率は99.4%となった。アセンブルされた配列のうち350塩基未満又は475塩基超のものを破棄した。異なるサンプルからの配列を全て合わせて、単一のファイルを作成した。冗長配列を除外し、3,250,951個の固有の配列を得た。デレプリケーションした配列を選別し、類似度閾値を97%としてUPARSE-OTUクラスタリングアルゴリズムを用い、操作的分類単位(operational taxonomic unit、OTU)にクラスタリングした。UCHIME(バージョン4.2.40)を使用して、キメラ配列を検出及び除去した。OTUテーブルを952OTUで作成した。
【0059】
[0059]分類学的割り当ては、Mothur(バージョン1.39.5)に実装されているk-merベースのK近傍検索アルゴリズムを使用して、Greengenesデータベース(2013年8月リリース)から参照配列ファイルを検索することによって実施した。
【0060】
[0060]配列アライメントは、PyNASTを使用して実施した。FastTreeを使用して、アライメント済みの配列から系統樹を構築した。分類学的割り当て、OTUテーブル、及び系統樹のためにQIIME(バージョン1.9.1)機能(QIIME functions)を呼び出した。
【0061】
[0061]メタゲノム的に推定される細菌機能は、PICRUSt(Phylogenetic Investigation of Communities by Reconstruction of Unobserved States)により16S rRNA遺伝子存在量のデータに帰属させた。メタゲノム的な機能予測の前に、各OTUを既知の又は予測される16Sコピー数の存在量で除算することによってOTUテーブルを正規化した。OTUテーブルを、相対存在量を計算することによって正規化し、計算では、各特徴数を各サンプル中の全配列数で除算し、平方根で変換した。全てのサンプルにわたって90%以上のゼロ又は0.01%未満の相対存在量を有する分類群は除外した。
【0062】
[0062]α多様性指数とβ多様性指数の両方をQIIMEで計算した。OTUテーブルは、最初に、完全なOTUテーブルを100回の反復について1サンプル当たり20,000配列の深度カバレッジまでサブサンプリングすることによって、希薄化した。サブサンプリングした各OTUテーブルについてFaithの系統学的多様性指数を計算し、各測定基準のサンプル平均を取った。
【0063】
[0063]Linear Discriminant Analysis(LDA)Effect Size(LEfSe)ソフトウェアを使用して、差次的に豊富なKyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(KEGG)パスウェイを同定した。差次的に豊富な分類群は、ノンパラメトリックランク検定を用いて同定した。スピアマンの順位相関係数を、重要な心エコー検査変数と差次的に豊富な分類群との間で計算した。
【0064】
[0064]
腸内細菌の多様性及び存在量
系統学的多様性(PD)とは、系統学的な分類群の豊かさと同義である。ステージAのイヌは、ステージB1、B2、又はCのイヌと比較して区別可能なPD指数を有する。さらに、ステージAのイヌの有する属の数(116)は、ステージB1、B2、及びCのイヌ(それぞれ99、81、及び90)よりも一貫して多い。
【0065】
[0065]
差次的に豊富な分類群
エリシペラトクロストリジウム、ルミノコッカスUCG014、ブチリシコッカス、及びフィーカリバクテリウムの4つの属は、様々なステージのDMVDのイヌよりも、健康なステージAのイヌにおいて、より多量であることが示された(表1)。興味深いことに、これらの存在量は左心臓のサイズと逆相関し、心臓が肥大するにつれて細菌量は減少を示した。
【0066】
【表1】
【0067】
[0066]エリシペラトクロストリジウムの存在量は、左心室直径が増加するにつれて減少した。
【0068】
[0067]ブチリシコッカスの存在量は、左心房対大動脈根比及び左心室径と逆相関する。
【0069】
[0068]フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイの存在量は、左心室径が増加するにつれて減少した。
【0070】
[0069]ルミノコッカスUCG014(未同定属-https://www.arb-silva.de/browser/ssu/silva/X98011/)は、DMVDを有するイヌと比較して、健康なイヌ(ステージA)において非常に量が多かった。存在量は、左心房径、左心房対大動脈根比、及び左心室径との逆相関を示した。
【0071】
[0070]
メタゲノム的な機能予測
2つのメタゲノム経路であるカルジオリピン生合成及びバリン分解は、ステージB2のDMVDのイヌでは、健康なステージAのイヌと比較して過剰であったのに対し、グルタミン/グルタメート生合成及びトリプトファン生合成は、健康なイヌでは、B2のイヌと比較して少なかった。
【0072】
[0071]まとめると、腸内細菌多様性は、DMVDのイヌよりも健康なイヌの方が高い。エリシペラトクロストリジウム、ルミノコッカスUCG014、ブチリシコッカス、及びフィーカリバクテリウムの4つの細菌属は、DMVDのイヌよりも健康なイヌにおいてより豊富であった。
【0073】
[0072]本明細書で説明されている現在の好ましい実施形態に対する様々な変更及び修正が、当業者には明らかとなる点を理解されたい。かかる変更及び改変は、本発明の主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、かつ意図される利点を損なわずに、行うことができる。それゆえ、そのような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。