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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】折返し軌道玩具
(51)【国際特許分類】
   A63H 18/02 20060101AFI20231122BHJP
   A63H 18/16 20060101ALI20231122BHJP
   A63H 19/28 20060101ALI20231122BHJP
   A63H 17/36 20060101ALI20231122BHJP
   A63H 18/08 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
A63H18/02 Z
A63H18/16 B
A63H19/28 Z
A63H17/36
A63H18/08 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022094079
(22)【出願日】2022-06-10
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003584
【氏名又は名称】株式会社タカラトミー
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 護
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 三郎
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 秋男
【審査官】佐々木 祐
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110947188(CN,A)
【文献】米国特許第4564197(US,A)
【文献】実開昭57-113193(JP,U)
【文献】特開2014-000268(JP,A)
【文献】特開2006-175034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00 - 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走式の走行玩具を折返し走行させる折返し軌道玩具であって、
単線軌道に連結される入出口を有し、前記入出口から進入した前記走行玩具を折返しスポットの周りで旋回させて折り返させ前記入出口から退出させる折返し軌道部と、
第1位置と第2位置との間で動作可能に構成され、前記第1位置にあるときと前記第2位置にあるときとで、前記折返し軌道部での前記走行玩具の旋回方向を切り替えさせる旋回方向切替え部材と、
を備え、
前記旋回方向切替え部材は、前記第1位置にあるときに前記入出口から進入した前記走行玩具を平面視で反時計回りに旋回させ、旋回する当該走行玩具による押圧によって前記第2位置まで動作して前記走行玩具を退出させるとともに、前記第2位置にあるときに前記入出口から進入した前記走行玩具を平面視で時計回りに旋回させ、旋回する当該走行玩具による押圧によって前記第1位置まで動作して前記走行玩具を退出させる、
ことを特徴とする折返し軌道玩具。
【請求項2】
前記旋回方向切替え部材は、前記折返しスポットに立設された軸を中心に回動可能に構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の折返し軌道玩具。
【請求項3】
前記旋回方向切替え部材は前記折返し軌道部に対して着脱可能に構成されている、ことを特徴とする請求項2に記載の折返し軌道玩具。
【請求項4】
前記旋回方向切替え部材は平面視で扇状であり、要部分が前記軸によって支持されている、ことを特徴とする請求項3に記載の折返し軌道玩具。
【請求項5】
前記折返し軌道部には、前記第2位置から前記第1位置まで回動した際に前記旋回方向切替え部材が突き当たる第1壁と、前記第1位置から前記第2位置まで回動した際に前記旋回方向切替え部材が突き当たる第2壁とが設けられている、ことを特徴とする請求項2~請求項4いずれか一項に記載の折返し軌道玩具。
【請求項6】
前記旋回方向切替え部材は軸方向に動作可能に構成され、前記第1壁と前記第2壁とは前記折返し軌道部の円周方向に所定距離離れて設けられ、前記第1壁及び前記第2壁の上面には前記折返し軌道部の円周方向で前記入出口から離れる方向に下り勾配を有する傾斜面が形成され、前記折返し軌道部の円周方向で前記第1壁と前記第2壁とによって挟まれる2つの領域のうちで、前記旋回方向切替え部材が前記入出口側とは反対の領域にあるときに、旋回する当該走行玩具による押圧によって、前記旋回方向切替え部材が前記傾斜面を摺接して前記第1壁又は前記第2壁を乗り越えて前記入出口側の領域まで回動するように構成されている、特徴とする請求項5に記載の折返し軌道玩具。
【請求項7】
前記折返し軌道部の軌道面の外側は壁で区画されており、前記旋回方向切替え部材の自由端部は前記壁の外方に突出する、ことを特徴とする請求項6に記載の折返し軌道玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折返し軌道玩具、さらに詳しくは、自走式の走行玩具を折り返し走行させることができる折返し軌道玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、折返し軌道玩具として、回転テーブルを備え、自走式の走行玩具が回転テーブルの入出口から前記回転テーブルに進入した際に、走行玩具の走行動力で当該回転テーブルを半回転させることにより走行玩具の向きを反転させ、前記入出口から走行玩具を退出させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-229813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この折返し軌道玩具では、回転テーブルを半回転させるための歯車機構を必要とすることから、構造が複雑であった。また、折返しの際の回転テーブルの回転方向が常に同じであることから、走行玩具が同じ態様で折り返すだけであり、変化に乏しく興趣性に欠けるという問題があった。
本発明は、構造が簡素で、興趣性に富んだ折返し軌道玩具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の手段は、
自走式の走行玩具を折返し走行させる折返し軌道玩具であって、
単線軌道に連結される入出口を有し、前記入出口から進入した前記走行玩具を折返しスポットの周りで旋回させて折り返させ前記入出口から退出させる折返し軌道部と、
第1位置と第2位置との間で動作可能に構成され、前記第1位置にあるときと前記第2位置にあるときとで、前記折返し軌道部での前記走行玩具の旋回方向を切り替えさせる旋回方向切替え部材と、
を備え、
前記旋回方向切替え部材は、前記第1位置にあるときに前記入出口から進入した前記走行玩具を平面視で反時計回りに旋回させ、旋回する当該走行玩具による押圧によって前記第2位置まで動作して前記走行玩具を退出させるとともに、前記第2位置にあるときに前記入出口から進入した前記走行玩具を平面視で時計回りに旋回させ、旋回する当該走行玩具による押圧によって前記第1位置まで動作して前記走行玩具を退出させる、
ことを特徴とする折返し軌道玩具である。
【0006】
第2の手段は、第1の手段であって、前記旋回方向切替え部材は、前記折返しスポットに立設された軸を中心に回動可能に構成されている、ことを特徴とする。
【0007】
第3の手段は、第2の手段であって、前記旋回方向切替え部材は前記折返し軌道部に対して着脱可能に構成されている、ことを特徴とする。
【0008】
第4の手段は、第3の手段であって、前記旋回方向切替え部材は平面視で扇状であり、要部分が前記軸によって支持されている、ことを特徴とする。
【0009】
第5の手段は、第2~第4のいずれかの手段であって、前記折返し軌道部には、前記第2位置から前記第1位置まで回動した際に前記旋回方向切替え部材が突き当たる第1壁と、前記第1位置から前記第2位置まで回動した際に前記旋回方向切替え部材が突き当たる第2壁とが設けられている、ことを特徴とする。
【0010】
第6の手段は、第5の手段であって、前記旋回方向切替え部材は軸方向に動作可能に構成され、前記第1壁と前記第2壁とは前記折返し軌道部の円周方向に所定距離離れて設けられ、前記第1壁及び前記第2壁の上面には前記折返し軌道部の円周方向で前記入出口から離れる方向に下り勾配を有する傾斜面が形成され、前記折返し軌道部の円周方向で前記第1壁と前記第2壁とによって挟まれる2つの領域のうちで、前記旋回方向切替え部材が前記入出口側とは反対の領域にあるときに、旋回する当該走行玩具による押圧によって、前記旋回方向切替え部材が前記傾斜面を摺接して前記第1壁又は前記第2壁を乗り越えて前記入出口側の領域まで回動するように構成されている、特徴とする。
【0011】
第7の手段は、第6の手段であって、前記折返し軌道部の軌道面の外側は壁で区画されており、前記旋回方向切替え部材の自由端部は前記壁の外方に突出する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の手段によれば、走行玩具が自身の動力による旋回によって折り返すので、簡素な構成の折返し軌道玩具を実現できる。また、折返しの度に旋回方向切替え部材が第1位置と第2位置との間で位置を変え、進入してくる走行玩具の旋回方向を変化させるので、興趣性の高い折返し軌道玩具を実現できる。
【0013】
第2の手段によれば、折返しの度に旋回方向切替え部材を回動させ、次に進入してくる走行玩具の旋回方向を変化させることができる。
【0014】
第3の手段によれば、旋回方向切替え部材は折返し軌道部に対して着脱可能となっているので、使用後に取り外すことにより、折返し軌道玩具が平面的となるので、片付けが容易となる。また、折返し軌道玩具や旋回方向切替え部材を持って振り回したりすることを防止でき、折返し軌道部や旋回方向切替え部材の破損を防止することができる。特に、旋回方向切替え部材は軸に対して緩く嵌合させる構造とし、旋回方向切替え部材を手で持って持ち上げようとしたときに、旋回方向切替え部材が軸から抜けるようにしておけば、簡単に、旋回方向切替え部材を折返し軌道部から取り外すことができる。
【0015】
第4の手段によれば、旋回方向切替え部材が扇状であるので、視覚上も目立つものとなり、旋回方向切替え部材の動作を見て楽しむことができる。また、旋回方向切替え部材の上を荷等の置き場としても利用することができる。
【0016】
第5の手段によれば、旋回方向切替え部材が第1位置又は第2位置で確実に停止されるので、走行玩具の進行方向を適切に切り替えることができる。
【0017】
第6の手段によれば、旋回方向切替え部材がどの位置にあるときでも、走行玩具の旋回によって旋回方向切替え部材を正規領域に戻すことができる。
【0018】
第7の手段によれば、旋回方向切替え部材は、自由端部が軌道面の外側の壁の外方に突出するので、手動による操作性が向上することになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】折返し軌道玩具及び走行玩具を示した斜視図である。
図2】走行玩具の斜視図である。
図3】折返し軌道玩具の分解斜視図である。
図4】一方の折返し軌道片の斜視図である。
図5】他方の折返し軌道片の斜視図である。
図6】旋回方向切替え部材の斜視図である。
図7】旋回方向切替え部材を下方から見た斜視図である。
図8】旋回方向切替え部材が第1位置にある状態を示した折返し軌道片の様子を示す平面図である。
図9】旋回方向切替え部材が第2位置にある状態を示した折返し軌道片の様子を示す平面図である。
図10】旋回方向切替え部材が第1位置にあるときの走行玩具の進入時の折返し軌道片の様子を示す斜視図である。
図11】旋回方向切替え部材が第1位置にあるときの走行玩具の旋回時の折返し軌道片の様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
《全体構成》
図1は、折返し軌道玩具100及び走行玩具50を示した斜視図である。
折返し軌道玩具100は、2つの折返し軌道片10a、10bと、1つの直線軌道片30と、を備えている。ここで、2つの折返し軌道片10a、10bは、直線軌道片30を挟んで、所定距離を隔てて設けられており、この折返し軌道片10a、10bは、中央の直線軌道片30を介して互いに連結されている。
この折返し軌道玩具100は、自走式の走行玩具50を折り返し走行させるように構成されている。以下、この折返し軌道玩具100の細部構成を説明する。
【0022】
《細部構成》
1.走行玩具50
図2は走行玩具50の斜視図である。
走行玩具50は自走式の走行玩具である。この走行玩具50として、ここでは、列車玩具の動力車が用いられている。この走行玩具50は、前輪50a及び後輪50bを備え、後輪50bが動輪、前輪50aが従輪となっている。後輪50bの外周には平目状の刻み目50dが形成されている。
走行玩具50の内部には、図示しないが、電源となる電池と、モータと、モータ動力を後輪に伝達して後輪50bを回転させる歯車機構等の動力伝達機構と、を備えている。
また、走行玩具50には、天板から突出して操作摘み50cが設けられている。そして、走行玩具50は、操作摘み50cを操作することで、モータ駆動回路が閉成され、前進走行するように構成されている。
なお、走行玩具50は、列車玩具の動力車に限定されない。この走行玩具は、自走式の走行玩具であれば足り、その種類を問わない。例えば、走行玩具は、自走式の自動車玩具であってもよい。また、走行玩具は、動力源の種類を問わない。走行玩具は、モータに代えてぜんまいばねを動力源とするものであってもよい。この場合には電源は不要である。
【0023】
2.折返し軌道片10a、10b
図3は折返し軌道玩具100の分解斜視図、図4は一方の折返し軌道片10aの斜視図、図5は他方の折返し軌道片10bの斜視図である。
折返し軌道片10a、10bは略同じ構成であるので、折返し軌道片10a、10bの構成の共通部分を説明する場合には、両者の総称である折返し軌道片10とし、両者を一緒に説明する。また、折返し軌道片10は当該入出口11から見て左右対称となっているため、左右共通部分には、左側部分の符号末尾にアルファベットLを付し、右側部分の符号末尾にアルファベットRを付してこれも一緒に説明するものとする。
【0024】
折返し軌道片10は、走行玩具50が入出する入出口11と、平面視略円形で走行玩具50を折返しスポットTPの周りで旋回させて折り返させる旋回領域12と、を備える。入出口11は旋回領域12の半径方向外方に突出している。ここでは、折返しスポットTPは、特に限定はされないが、円形となっており、単線軌道である直線軌道30の幅寸法と同程度の直径を有している。
【0025】
旋回領域12の軌道は、折返しスポットTPを取り巻く環状の単線となっている。旋回領域12の中央には、折返しスポットTPを区画する環状の内壁12aが立設されている。折返しスポットTPには軸13が立設されている。
また、旋回領域12の外側の縁には、上記内壁12aを略270度の角度範囲で取り囲み且つ上記内壁12aと同心的に延在する弧状の外壁12bが立設されている。そして、弧状の外壁12bの各端には、直線軌道片30に向けて直線状に延びる外壁12cL、12cRが連結されている。対向する2つの外壁12cL、12cRは、直線軌道片30に向けてテーパ状に狭窄している。2つの外壁12cL、12cRは、折返し軌道片10に直線軌道片30が連結された際、直線軌道片30の幅方向両側の外壁30a、30aに連なる。
【0026】
折返し軌道片10の軌道面には、直線軌道片30側を除いて折返しスポットTPを取り巻くようにC字状に延在する刻み目14が形成されている。刻み目14は平目状となっている。この刻み目14は、走行玩具50の後輪50bの刻み目50dと噛み合い滑り止めとして機能する。
また、折返し軌道片10の軌道面には、走行玩具50の入出の際に走行玩具50の前輪50aや後輪50bに当接して向きを規制する突起15aL、15aR、15bL、15bR、15cが形成されている。
【0027】
このうち、走行玩具50の入出端に形成された突起15cは、平面視で、一端側が前記内壁12aに向けて尖るように山形状に形成されている。
【0028】
図4に示すように、折返し軌道片10aの突起15cの他端部には、鳩尾状の切欠き16が形成されている。この切欠き16には、直線軌道片30の鳩尾状の突起31(図3)が嵌合し、折返し軌道片10aに直線軌道片30が連結される。一方、図5に示すように、折返し軌道片10bの突起15cの他端部には、鳩尾状の突起17が形成されている。この突起17には、直線軌道片30の鳩尾状の切欠き32(図3)が嵌合し、折返し軌道片10bに直線軌道片30が連結される。
【0029】
また、外壁12bと外壁12cの境界部分の外側には鰭状の突起18L、18Rが設けられている。突起18L、18Rの外側の縁には、軸13と同心的な弧状の起立壁18aL、18aRが形成されている。起立壁18aL、18aRは、折返し軌道片10の外壁12b、12cL、12cRよりも上方に突出している。起立壁18aLの入出口11側の端は第1係止面18bLとなっており、起立壁18aRの入出口11側の端は第2係止面18bRとなっている。
【0030】
起立壁18aL、18aRの上面には、第1係止面18bL、18bRの背部が入出口11から離れる方向に下り勾配を有する傾斜面が形成されている。そして、起立壁18aLと起立壁18aRとによって区画される2つの領域のうち、旋回方向切替え部材20が入出口11から離れた領域にあるときに、旋回する走行玩具50による押圧によって旋回方向切替え部材20が傾斜面を摺接して乗り越え入出口11側の領域まで回動するように構成されている。
【0031】
3.旋回方向切替え部材20
図6は旋回方向切替え部材20の斜視図、図7は旋回方向切替え部材20を下方から見た斜視図である。この旋回方向切替え部材20は当該自由端側から見て左右対称となっているため、左右共通部分には、左側部分の符号末尾にアルファベットLを付し、右側部分の符号末尾にアルファベットRを付して一緒に説明するものとする。
旋回方向切替え部材20は、折返し軌道片10上で走行玩具50の旋回方向を切り替えるものである。旋回方向切替え部材20は、平面視で扇状に形成され、上面は水平な略平面となっている。この旋回方向切替え部材20は、走行玩具50の折返し軌道片10の上に設けられている。
【0032】
旋回方向切替え部材20の縁には垂下壁20aが設けられている。垂下壁20aの垂下寸法は旋回方向切替え部材20の自由端部側で小さくなっている。また、旋回方向切替え部材20の下側にはこの垂下壁20aによって区画される凹部20bが形成されている。以下、垂下壁20aのうち、垂下寸法の小さい部分を第1壁部、それ以外の部分を第2壁部と言う。また、旋回方向切替え部材20の凹部20bのうち、垂下寸法の小さい垂下壁20aに対応する部分を第1凹部、それ以外の部分を第2凹部と言う。
【0033】
旋回方向切替え部材20の第2凹部には、扇の要となる部分に、前記軸13に嵌合する筒穴21が形成されている。旋回方向切替え部材20は、この筒穴21を折返し軌道片10の軸13に嵌合させることで、軸13を中心に回動可能且つ軸方向に移動可能に、折返し軌道片10に取り付けられる。また、旋回方向切替え部材20は、特に限定はされないが、自由端部が入出口11側に位置するとき、同時に外壁12cL、12cRに乗り、入出口11を跨ぐ程度の幅を有している。
【0034】
旋回方向切替え部材20の第2凹部20b内には、上記筒穴21と同心的な弧状の突片22L、22Rが第2部分よりも下方に突出するように垂設されている。2つの突片22L、22Rは、上記筒穴21の中心から等距離で、且つ、旋回方向切替え部材20の円周方向に距離を隔てて設けられている。この突片22L、22Rは、旋回方向切替え部材20が折返し軌道片10に取り付けられた状態では、折返し軌道片10の外壁12b、12cL、12cRの内側に位置し、旋回方向切替え部材20が回動するとき、軌道面に摺接する。
【0035】
さらに、旋回方向切替え部材20の第1凹部20b内には、被係止部23L、23Rが第1壁部よりも下方に突出するように垂設されている。2つの被係止部23L、23Rは、上記筒穴21の中心から等距離で、且つ、旋回方向切替え部材20の円周方向に距離を隔てて設けられている。この被係止部23L、23Rの下端は、垂下壁20aの下端と面一となっており、第2壁部旋回方向切替え部材20が折返し軌道片10に取り付けられた状態では、折返し軌道片10の外壁12b、12cL、12cRの上に位置している。
【0036】
また、旋回方向切替え部材20の上面には壁板25が着脱可能に立設されている。壁板25は表示板や、旋回方向切替え部材20上に載せられる荷の押さえ板として利用することができる。例えば、壁板25の表面に所定の絵柄を表示しておけば、様々な演出が可能となる。例えば、雪の塊、泥の塊又は廃材などの絵柄を表示しておけば、旋回方向切替え部材20の動作に伴って走行玩具50が除雪作業、土木作業又は解体作業をしている様子を演出することができる。また、矢印を表示しておけば道標としても利用できる。
【0037】
この旋回方向切替え部材20は、軸13に筒穴21を外嵌させることにより、折返し軌道片10に取り付けられている。この場合、旋回方向切替え部材20は、通常は、自由端が入出口11に向くように、折返し軌道片10に取り付けられる。
この状態で、旋回方向切替え部材20を回動させて、被係止部23Lを第1係止面18bLに当接させると、旋回方向切替え部材20は第1位置を取る。この第1位置に旋回方向切替え部材20があるとき、入出口11から進入する走行玩具50を反時計回りに旋回させる。図8は、旋回方向切替え部材20が第1位置にある状態を示した折返し軌道片10aの様子を示す平面図、図10は、旋回方向切替え部材20が第1位置にあるときの走行玩具50の進入時の折返し軌道片10aの様子を示す斜視図、図11は、旋回方向切替え部材20が第1位置にあるときの走行玩具50の旋回時の折返し軌道片10aの様子を示す斜視図である。
一方、旋回方向切替え部材20を回動させて、被係止部23Rを第1係止面18bRに当接させると、旋回方向切替え部材20は第2位置を取る。この第2位置に旋回方向切替え部材20があるとき、入出口11から進入する走行玩具50を時計回りに旋回させる。図9は、旋回方向切替え部材20が第2位置にある状態を示した折返し軌道片10bの様子を示す平面図である。
【0038】
4.直線軌道片30
図3に示すように、直線軌道片30の幅方向両側には、外側が外壁30a等によって区画され走行玩具50の車輪が転動する溝30bが形成されている。また、直線軌道片30の長手方向の一端には、折返し軌道片10aの切欠き16に嵌合する鳩尾状の突起31が形成され、直線軌道片30の長手方向他端には、折返し軌道片10bの突起17に嵌合する鳩尾状の切欠き32が形成されている。
【0039】
《動作》
今、折返し軌道片10a、10bの旋回方向切替え部材20が共に第1位置(図8参照)にあり、走行玩具50が先ず折返し軌道片10aに進入するものとする。
この場合、走行玩具50が折返し軌道片10aに進入する際、走行玩具50の左側が旋回方向切替え部材20に擦れて、走行玩具50は、進行方向右に向きを変えながら、折返し軌道片10aに進入する(図10)。そして、走行玩具50の前輪50aが外壁12bに当接すると、その後は、後輪50bの回転に伴い前輪50aが外壁12bに摺接しながら当該外壁12bに沿って移動し、走行玩具50が進行方向左に向きを変えながら軸13を中心に平面視反時計回りに旋回する。そして、図11に示すように、反時計回りに旋回した走行玩具50は第1位置にある旋回方向切替え部材20に突き当たり、当該旋回方向切替え部材20を押圧する。押圧された旋回方向切替え部材20は、平面視反時計回りに回動し、第2位置を取る。すると、走行玩具50の左側が旋回方向切替え部材20に擦れて、走行玩具50は、進行方向右に向きを変えながら、入出口11から退出し、直線軌道片30に入る。
【0040】
さらに、走行玩具50は直線軌道片30を経て他方の折返し軌道片10bに進入する。このとき、折返し軌道片10bの旋回方向切替え部材20は第1位置にあるので、折返し軌道片10bに進入する際、走行玩具50の左側が旋回方向切替え部材20に擦れて、走行玩具50は、進行方向右に向きを変えながら、折返し軌道片10aに進入する。そして、走行玩具50の前輪50aが外壁12bに当接すると、その後は、後輪50bの回転に伴い前輪50aが外壁12bに摺接しながら当該外壁12bに沿って移動し、走行玩具50が進行方向左に向きを変えながら軸13を中心に平面視反時計回りに旋回する。そして、反時計回りに旋回した走行玩具50は第1位置にある旋回方向切替え部材20に突き当たり、当該旋回方向切替え部材20を押圧する。押圧された旋回方向切替え部材20は、平面視反時計回りに回動し、第2位置を取る。すると、走行玩具50の左側が旋回方向切替え部材20に擦れて、走行玩具50は、進行方向右に向きを変えながら、入出口11から退出し、直線軌道片30に入る。
【0041】
そして、走行玩具50は再び折返し軌道片10aに進入する。このとき、折返し軌道片10aの旋回方向切替え部材20は第2位置にあるので、折返し軌道片10bに進入する際、走行玩具50の右側が旋回方向切替え部材20に擦れて、走行玩具50は、進行方向左に向きを変えながら、折返し軌道片10aに進入する。そして、走行玩具50が進行方向右に向きを変えながら軸13を中心に平面視時計回りに旋回し、旋回方向切替え部材20に突き当たり、当該旋回方向切替え部材20を押圧する。押圧された旋回方向切替え部材20は、平面視時計回りに回動し、第1位置を取る。すると、走行玩具50の右側が旋回方向切替え部材20に擦れて、走行玩具50は、進行方向左に向きを変えながら、入出口11から退出し、直線軌道片30に入る。
【0042】
さらに、走行玩具50は直線軌道片30を経て他方の折返し軌道片10bに進入する。このとき、折返し軌道片10bの旋回方向切替え部材20は第2位置にあるので、折返し軌道片10bに進入する際、走行玩具50の右側が旋回方向切替え部材20に擦れて、走行玩具50は、進行方向左に向きを変えながら、折返し軌道片10aに進入する。そして、走行玩具50が進行方向右に向きを変えながら軸13を中心に平面視時計回りに旋回し、旋回方向切替え部材20に突き当たり、当該旋回方向切替え部材20を押圧する。押圧された旋回方向切替え部材20は、平面視時計回りに回動し、第1位置を取る。すると、走行玩具50の右側が旋回方向切替え部材20に擦れて、走行玩具50は、進行方向左に向きを変えながら、入出口11から退出し、直線軌道片30に入る。
【0043】
以上の動作を繰り返して、走行玩具50が折り返し走行を繰り返すことになる。
【0044】
また、初期において、折返し軌道片10aの旋回方向切替え部材20を第1位置、折返し軌道片10bの旋回方向切替え部材20を第2位置とすれば、上記とは異なった走行をさせることができる。
【0045】
《効果》
このように構成された折返し軌道玩具100によれば次のような効果を得ることができる。
【0046】
ずなわち、上記折返し軌道玩具100によれば、走行玩具50が自身の動力による旋回によって折り返すので、折返し軌道片10内に折返しのための歯車機構等を必要としないため、簡素な構成の折返し軌道玩具100を実現できる。また、折返しの度に旋回方向切替え部材20が第1位置と第2位置との間で位置を変え、進入してくる走行玩具50の旋回方向を交互に変化させるので、興趣性の高い折返し軌道玩具100を実現できる。
【0047】
また、上記折返し軌道玩具100によれば、旋回方向切替え部材20が扇状であるので、視覚上も目立つものとなり、旋回方向切替え部材20の動作を見て楽しむことができる。また、旋回方向切替え部材20の上を荷等の置き場として利用することができる。
【0048】
さらに、旋回方向切替え部材20は、自由端部が軌道面の外側の外壁12bの外方に突出しているので、旋回方向切替え部材20を手動操作するのが容易となる。
【0049】
また、旋回方向切替え部材20が第1位置又は第2位置で確実に停止されるので、走行玩具50の進行方向を適切に切り替えることができる。
【0050】
さらに、旋回方向切替え部材20がどの位置にあるときでも、走行玩具50の旋回によって旋回方向切替え部材20を正規領域に戻すことができる。
【0051】
《変形例》
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の変形が可能であることは、言うまでもない。
【0052】
例えば、上記実施形態では、直線軌道片30を挟んで折返し軌道片10a、10bを連結したが、中央に位置する軌道片は、直線軌道片ではなく曲線軌道片であってもよい。また、折返し軌道片10a、10bで挟む軌道片は複数であってもよい。
【0053】
また、軌道の一部に上記折返し軌道片10と同様の構成の折返し軌道部が含まれるものであれば足りる。例えば、回転テーブル等の他の折返し軌道と一緒に用いてもよい。また、軌道の一端だけに上記折返し軌道片10と同様の構成の折返し軌道部が含まれるものであってもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、旋回方向切替え部材20を平面視で扇状としたが、棒状であってもよい。また、V字又はU字状でその基端部の屈曲部や湾曲部で軸支されたものでもよい。
【0055】
さらに、上記実施形態では、旋回方向切替え部材20は折返し軌道片10の外側の突起18L、18Rの起立壁18aL、18aRにて係止されるようになっているが、折返しスポットTPに壁を設けその壁により係止されるように構成されていてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、入出口11に連なる折返し領域の軌道の形を円形としたが、例えば、入出口11と旋回領域の軌道をそれぞれを例えばヘアピンカーブ状の半円とし、その半円と半円との間を略平行な2本の単線軌道で繋ぐ形としてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10、10a、10b 折返し軌道片
11 入出口
12 旋回領域
12a 内壁
12b、12cL、12cR 外壁
13 軸
20 旋回方向切替え部材
30 直線軌道片
50 走行玩具
50a 前輪
50b 後輪
TP 折返しスポット
【要約】
【課題】構造が簡素で、興趣性に富んだ折返し軌道玩具を提供すること。
【手段】自走式の走行玩具を折返し走行させる折返し軌道玩具であって、入出口から進入した走行玩具を折返しスポットの周りで旋回させて折り返させる折返し軌道部と、第1位置にあるときと第2位置にあるときとで、走行玩具の旋回方向を切り替えさせる旋回方向切替え部材と、を備え、旋回方向切替え部材は、第1位置にあるときに走行玩具を平面視で反時計回りに旋回させ、走行玩具による押圧によって前記第2位置まで動作して走行玩具を退出させ、第2位置にあるときに走行玩具を平面視で時計回りに旋回させ、当該走行玩具による押圧によって第1位置まで動作して走行玩具を退出させる、ことを特徴とする。
【選択図】図1
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図11