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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】液晶パネル及び液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20231122BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20231122BHJP
   G02F 1/139 20060101ALI20231122BHJP
   G02F 1/1347 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
G02F1/1337 505
G02F1/1337 525
G02F1/1337 520
G02F1/1337 530
G02F1/1335 510
G02F1/139
G02F1/1347
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022123405
(22)【出願日】2022-08-02
(65)【公開番号】P2023029254
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2022-08-02
(31)【優先権主張番号】63/234,365
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】村田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】土屋 博司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝
(72)【発明者】
【氏名】島田 伸二
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0160393(US,A1)
【文献】特開2008-310271(JP,A)
【文献】特開2008-111901(JP,A)
【文献】特開2017-083639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
G02F 1/1335
G02F 1/139
G02F 1/1347
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の電極を有する第一の基板と、
第一の配向膜と、
正の誘電率異方性を有する液晶分子を含有する液晶層と、
第二の配向膜と、
第二の電極を有する第二の基板と、を順に備え、
前記第一の電極と前記第二の電極との間に電圧が印加されていない電圧無印加状態において、前記液晶分子はホモジニアス配向し、
前記第二の配向膜の極角アンカリングエネルギー2EA及び方位角アンカリングエネルギー2EBは、それぞれ、前記第一の配向膜の極角アンカリングエネルギー1EA及び方位角アンカリングエネルギー1EBよりも小さく、
前記第二の配向膜の極角アンカリングエネルギー2EAは、前記第二の配向膜の方位角アンカリングエネルギー2EB以下であり
CBモードであることを特徴とする液晶パネル。
【請求項2】
前記第二の配向膜の極角アンカリングエネルギー2EA及び方位角アンカリングエネルギー2EBは、1×10-4J/m以下であることを特徴とする請求項1に記載の液晶パネル。
【請求項3】
第一の電極を有する第一の基板と、
第一の配向膜と、
正の誘電率異方性を有する液晶分子を含有する液晶層と、
第二の配向膜と、
第二の電極を有する第二の基板と、を順に備え、
前記第一の電極と前記第二の電極との間に電圧が印加されていない電圧無印加状態において、前記液晶分子はホモジニアス配向し、
前記第二の配向膜の極角アンカリングエネルギー2EA及び方位角アンカリングエネルギー2EBは、それぞれ、前記第一の配向膜の極角アンカリングエネルギー1EA及び方位角アンカリングエネルギー1EBよりも小さく、
前記第二の配向膜の極角アンカリングエネルギー2EAは、前記第二の配向膜の方位角アンカリングエネルギー2EB以下であり、
前記第二の配向膜は、シルセスキオキサン基を有する配向膜ポリマーを含むことを特徴とする液晶パネル。
【請求項4】
更に、前記第一の基板の前記液晶層とは反対側に設けられた第一の偏光板と、前記第二の基板の前記液晶層とは反対側に設けられた第二の偏光板と、を備え、
前記第一の偏光板の偏光軸は、前記第二の偏光板の偏光軸と平行であることを特徴とする請求項1に記載の液晶パネル。
【請求項5】
前記液晶層は、前記第一の電極と前記第二の電極との間に電圧が印加された電圧印加状態における最大リタデーションΔndが600nm以上、1600nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の液晶パネル。
【請求項6】
前記液晶層は、厚みdが3μm以上、10μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の液晶パネル。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の液晶パネルを第一の液晶パネルとして備え、
更に、前記第一の液晶パネルとは異なる第二の液晶パネルを備えることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項8】
前記第二の液晶パネルは、IPSモード又はFFSモードであることを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記第二の液晶パネルは、背面側から観察面側に向かって順に、第三の基板と、第三の配向膜と、液晶層と、第四の配向膜と、第四の基板と、を備え、
前記第四の配向膜の方位角アンカリングエネルギーは、1×10-5J/m以下であることを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、液晶パネル、及び、上記液晶パネルを備える液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルは、表示のために液晶組成物を利用する表示パネルであり、その代表的な表示方式は、一対の基板間に封入された液晶組成物に対して電圧を印加し、印加した電圧に応じて液晶組成物中の液晶分子の配向状態を変化させることにより、光の透過量を制御するものである。このような液晶パネルは、薄型、軽量及び低消費電力といった特長を活かし、幅広い分野で用いられている。
【0003】
液晶パネルにおいて、電圧が印加されていない状態における液晶分子の配向は、配向膜によって制御されるのが一般的である。上記配向膜は、例えば、基板上に液晶配向剤を塗布し、該塗膜に配向処理を施すことで得られる。
【0004】
配向膜に関する技術として、例えば、特許文献1には、液晶及びラジカル重合性化合物を含有する液晶組成物を、ラジカル発生膜に接触させた状態で、前記ラジカル重合性化合物を重合反応させるのに十分なエネルギーを与えるステップを含む、ゼロ面アンカリング膜の製造方法が開示されている。
【0005】
特許文献2には、第一の配向膜が形成された第一の基板と、第二の配向膜が形成された第二の基板と、液晶層を備え、第一の配向膜および第二の配向膜の少なくとも一方は、強アンカリング部分と弱アンカリング部分とを有し、強アンカリング部分は、弱アンカリング部分に比べて、電場が与えられた時に、液晶分子に対して初期配向方向を維持する拘束力が強く、強アンカリング部分と弱アンカリング部分は、駆動電極層の電極に重なる位置で混在するとともに、電極に重ならない位置でも混在する、液晶表示装置が開示されている。
【0006】
ところで、従来、表示装置は、狭い視野角の範囲から観察しても、広い角度の範囲から観察しても同様の画像が観察できるように視野角特性を向上させることが検討されている。一方で、プライバシー保持の観点からは、狭い視野角の範囲からは画像を観察できるが、広い視野角の範囲からは上記画像を観察し難くする表示方法が検討されている。
【0007】
このような表示装置に用いられる液晶パネルに関する技術として、例えば、特許文献3には、表示パネルの表面、又は、裏面に配置されることによって、前記表示パネルに表示された画像の視野角を制御し、液晶層を含み、かつ、前記液晶層に電圧を印加する際の単位としての画素が設けられた視野角制御用液晶パネルであって、前記液晶層には直線偏光が入射され、かつ、前記液晶層の光が出射する側には、前記液晶層から出射された光のうち、前記液晶層に入射された直線偏光の偏光軸と平行な成分のみを透過させる偏光板が設けられており、前記液晶層に含まれた液晶分子は、液晶層に電圧が印加されることによって、前記液晶層に入射された直線偏光の偏光軸と、平行又は垂直な方向に傾斜し、前記画素が複数個、マトリクス状に配設されている視野角制御用液晶パネルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2019/004433号
【文献】特開2018-151438号公報
【文献】特開2008-203565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1及び2では、表示パネルの表面、又は、裏面に配置されることによって、上記表示パネルに表示された画像の視野角を制御し得る液晶パネルについては検討されていない。また、特許文献3では、ECB(Electrically Controlled Birefringene)モードである視野角制御用液晶パネルと表示用液晶パネルと備え、ECB液晶に電圧印加することにより狭視野角モード、電圧無印加にすることにより広い視野角モードに切り替えることができる液晶表示装置が開示されているが、当該構成では、特定の極角(例えば45°)でしか、遮光することができず、それ以上の極角では透過率が高くなってしまい、遮光性が不充分であった。
【0010】
本発明は上記現状に鑑みてなされたものであり、特定の極角(例えば45°)だけでなく、それ以上の極角において充分に遮光することが可能な液晶パネル、及び、上記液晶パネルを備える液晶表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の一実施形態は、第一の電極を有する第一の基板と、第一の配向膜と、正の誘電率異方性を有する液晶分子を含有する液晶層と、第二の配向膜と、第二の電極を有する第二の基板と、を順に備え、上記第一の電極と上記第二の電極との間に電圧が印加されていない電圧無印加状態において、上記液晶分子はホモジニアス配向し、上記第二の配向膜の極角アンカリングエネルギー2EA及び方位角アンカリングエネルギー2EBは、それぞれ、上記第一の配向膜の極角アンカリングエネルギー1EA及び方位角アンカリングエネルギー1EBよりも小さく、上記第二の配向膜の極角アンカリングエネルギー2EAは、上記第二の配向膜の方位角アンカリングエネルギー2EB以下である、液晶パネル。
【0012】
(2)また、本発明のある実施形態は、上記(1)の構成に加え、上記第二の配向膜の極角アンカリングエネルギー2EA及び方位角アンカリングエネルギー2EBは、1×10-4J/m以下である、液晶パネル。
【0013】
(3)また、本発明のある実施形態は、上記(1)又は上記(2)の構成に加え、上記第二の配向膜は、シルセスキオキサン基を有する配向膜ポリマーを含む、液晶パネル。
【0014】
(4)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、上記(2)又は上記(3)の構成に加え、更に、上記第一の基板の上記液晶層とは反対側に設けられた第一の偏光板と、上記第二の基板の上記液晶層とは反対側に設けられた第二の偏光板と、を備え、上記第一の偏光板の偏光軸は、上記第二の偏光板の偏光軸と平行である、液晶パネル。
【0015】
(5)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、上記(2)、上記(3)又は上記(4)の構成に加え、上記液晶パネルは、ECBモードである、液晶パネル。
【0016】
(6)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、上記(2)、上記(3)、上記(4)又は上記(5)の構成に加え、上記液晶層は、上記第一の電極と上記第二の電極との間に電圧が印加された電圧印加状態における最大リタデーションΔndが600nm以上、1600nm以下である、液晶パネル。
【0017】
(7)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、上記(2)、上記(3)、上記(4)、上記(5)又は上記(6)の構成に加え、上記液晶層は、厚みdが3μm以上、10μm以下である、液晶パネル。
【0018】
(8)また、本発明の他の実施形態は、上記(1)、上記(2)、上記(3)、上記(4)、上記(5)、上記(6)及び上記(7)のいずれかに記載の液晶パネルを第一の液晶パネルとして備え、更に、上記第一の液晶パネルとは異なる第二の液晶パネルを備える、液晶表示装置。
【0019】
(9)また、本発明のある実施形態は、上記(8)の構成に加え、上記第二の液晶パネルは、IPSモード又はFFSモードである、液晶表示装置。
【0020】
(10)また、本発明のある実施形態は、上記(8)又は上記(9)の構成に加え、上記第二の液晶パネルは、背面側から観察面側に向かって順に、第三の基板と、第三の配向膜と、液晶層と、第四の配向膜と、第四の基板と、を備え、上記第四の配向膜の方位角アンカリングエネルギーは、1×10-5J/m以下である、液晶表示装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、特定の極角(例えば45°)だけでなく、それ以上の極角において充分に遮光することが可能な液晶パネル、及び、上記液晶パネルを備える液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態1に係る視野角制御用液晶パネルの電圧無印加状態の一例を示した断面模式図である。
図2】実施形態1に係る視野角制御用液晶パネルの電圧印加状態の一例を示した断面模式図である。
図3】実施形態1に係る視野角制御用液晶パネルの斜視模式図である。
図4】実施形態1の変形例に係る視野角制御用液晶パネルの斜視模式図である。
図5】実施形態2の液晶表示装置の一例を示した断面模式図である。
図6】実施形態2の液晶表示装置に関する図であり、表示用液晶パネルが電圧印加状態であり、視野角制御用液晶パネルが電圧無印加状態である場合の一例を示した断面模式図である。
図7】実施形態2の液晶表示装置に関する図であり、表示用液晶パネル及び視野角制御用液晶パネルが電圧印加状態である場合の一例を示した断面模式図である。
図8A】実施例1-1の視野角制御用液晶パネルの電圧無印加状態を示す断面模式図である。
図8B】実施例1-1の視野角制御用液晶パネルの電圧印加状態を示す断面模式図である。
図9A】比較例1-1の視野角制御用液晶パネルの電圧無印加状態を示す断面模式図である。
図9B】比較例1-1の視野角制御用液晶パネルの電圧印加状態を示す断面模式図である。
図10A】比較例2の視野角制御用液晶パネルの電圧無印加状態を示す断面模式図である。
図10B】比較例2の視野角制御用液晶パネルの電圧印加状態を示す断面模式図である。
図11】実施例1-1の視野角制御用液晶パネルの、電圧無印加状態及び電圧印加状態における透過率の極角依存性を示すグラフである。
図12】実施例2の視野角制御用液晶パネルの、電圧無印加状態及び電圧印加状態における透過率の極角依存性を示すグラフである。
図13】実施例3の視野角制御用液晶パネルの、電圧無印加状態及び電圧印加状態における透過率の極角依存性を示すグラフである。
図14】実施例1-1、実施例2~実施例3、比較例1-1及び比較例2~比較例4の視野角制御用液晶パネルの、電圧印加状態における透過率の極角依存性を示すグラフである。
図15A図14における極角30°、45°、60°及び75°での透過率を、実施例1-1、実施例2~実施例3、比較例1-1及び比較例2~比較例4の視野角制御用液晶パネルのそれぞれについて示したグラフである。
図15B】比較例1-1の視野角制御用液晶パネルの、白透過率の視野角依存性を示すグラフである。
図15C】実施例1-1の視野角制御用液晶パネルの、白透過率の視野角依存性を示すグラフである。
図15D】実施例2の視野角制御用液晶パネルの、白透過率の視野角依存性を示すグラフである。
図15E】実施例3の視野角制御用液晶パネルの、白透過率の視野角依存性を示すグラフである。
図15F】比較例2の視野角制御用液晶パネルの、白透過率の視野角依存性を示すグラフである。
図15G】比較例3の視野角制御用液晶パネルの、白透過率の視野角依存性を示すグラフである。
図15H】比較例4の視野角制御用液晶パネルの、白透過率の視野角依存性を示すグラフである。
図16】実施例1-1の視野角制御用液晶パネルに対する印加電圧を変化させた場合の透過率の極角依存性を示すグラフである。
図17】実施例2の視野角制御用液晶パネルに対する印加電圧を変化させた場合の透過率の極角依存性を示すグラフである。
図18】実施例3の視野角制御用液晶パネルに対する印加電圧を変化させた場合の透過率の極角依存性を示すグラフである。
図19】実施例1-1~実施例1-2、及び、比較例1-1~1-4の視野角制御用液晶パネルの、電圧印加状態における透過率の極角依存性を示すグラフである。
図20A】実施例4-1の液晶表示装置が備える表示用液晶パネル及び視野角制御用液晶パネルが電圧印加状態である場合を示す断面模式図である。
図20B】実施例4-1の液晶表示装置が備える表示用液晶パネルが電圧印加状態であり、視野角制御用液晶パネルが電圧無印加状態である場合を示す断面模式図である。
図21】実施例5-1の液晶表示装置の断面模式図である。
図22A】実施例5-1の液晶表示装置が備える表示用液晶パネル及び視野角制御用液晶パネルが電圧印加状態である場合を示す断面模式図である。
図22B】実施例5-1の液晶表示装置が備える表示用液晶パネルが電圧印加状態であり、視野角制御用液晶パネルが電圧無印加状態である場合を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に記載された内容に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。なお、以下の説明において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して適宜用い、その繰り返しの説明は適宜省略する。本発明の各態様は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよい。
【0024】
[用語の定義]
本明細書中、観察面側とは、液晶パネルの画面(表示面)に対してより近い側を意味し、背面側とは、液晶表示装置の画面(表示面)に対してより遠い側を意味する。
【0025】
本明細書中、極角とは、対象となる方向(例えば測定方向)と、液晶パネルの画面の法線方向とのなす角度を意味する。方位とは、対象となる方向を液晶パネルの画面上に射影したときの方向を意味し、基準となる方位との間のなす角度(方位角)で表現される。ここで、基準となる方位(0°)は、液晶パネルの画面の水平右方向に設定される。角度及び方位角は、反時計回りを正の角度、時計回りを負の角度とする。反時計回り及び時計回りは、いずれも液晶パネルの画面を観察面側(正面)から見たときの回転方向を表す。また、角度は、液晶パネルを平面視した状態で測定された値を表し、2つの直線(軸、方向及び稜線を含む)が互いに直交するとは、液晶パネルを平面視した状態で直交することを意味する。
【0026】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る視野角制御用液晶パネルの電圧無印加状態の一例を示した断面模式図である。図2は、実施形態1に係る視野角制御用液晶パネルの電圧印加状態の一例を示した断面模式図である。図1及び図2は、一画素の断面模式図である。図1及び図2に示すように、本実施形態の上記液晶パネルとしての視野角制御用液晶パネル10は、第一の電極112を有する第一の基板110と、第一の配向膜120と、正の誘電率異方性を有する液晶分子131を含有する液晶層130と、第二の配向膜140と、第二の電極152を有する第二の基板150と、を順に備え、第一の電極112と第二の電極152との間に電圧が印加されていない電圧無印加状態において、液晶分子131はホモジニアス配向する。このような態様とすることにより、視野角制御用液晶パネル10の背面側にバックライトを配置する場合に、電圧無印加状態において、低い極角側から高い極角側にかけてバックライト光を透過させることが可能となり、広視野角モード(パブリックモード)を実現することができる。より具体的には、第一の基板110の液晶層130と反対側(背面側)に第一の偏光板10P1及びバックライトを順に設け、第二の基板150の液晶層130と反対側(観察面側)に第二の偏光板10P2を設け、第一の偏光板10P1の偏光軸と第二の偏光板10P2の偏光軸とを互いに平行に配置した場合に、電圧無印加状態においてバックライトからの光を低い極角から高い極角にかけて透過させることが可能となる。
【0027】
また、本実施形態の視野角制御用液晶パネル10では、第二の配向膜140の極角アンカリングエネルギー2EA及び方位角アンカリングエネルギー2EBは、それぞれ、第一の配向膜120の極角アンカリングエネルギー1EA及び方位角アンカリングエネルギー1EBよりも小さく、第二の配向膜140の極角アンカリングエネルギー2EAは、第二の配向膜140の方位角アンカリングエネルギー2EB以下である。このような態様とすることにより、視野角制御用液晶パネル10の背面側にバックライトを配置する場合に、第一の電極112と第二の電極152との間に電圧が印加された電圧印加状態において、図2に示すように、第一の配向膜120近傍の液晶分子131以外の液晶分子131を垂直に配向させることが可能となる。その結果、狭視野角モード(プライバシーモード)において、バックライトからの光を特定の極角(例えば、極角45°)だけでなく、それ以上の極角(例えば、極角60°~75°)においても充分に遮光することが可能となる。
【0028】
上記特許文献1及び上記特許文献2の液晶表示装置は、一対の基板の一方の基板に一対の電極を備えるIPS(In-Plane Switching)モードの液晶表示装置である。一方、本実施形態の視野角制御用液晶パネル10は、第一の基板110に第一の電極112が設けられ、第二の基板150に第二の電極152が設けられており、特許文献1及び特許文献2とは構成が異なる。また、特許文献1及び特許文献2には、バックライトからの光を特定の極角(例えば45°)だけでなく、それ以上の極角においても充分に遮光することは検討されていない。
【0029】
上記特許文献3の液晶表示装置は、ECB(Electrically Controlled Birefringene)モードの視野角制御用液晶パネルと表示用液晶パネルとを2枚重ねた構成である。特許文献3の液晶表示装置では、視野角制御用液晶パネルを電圧印加状態とすることにより得られる狭視野角モードと、視野角制御用液晶パネルを電圧無印加状態とすることにより得られる広視野角モードとを切り替え可能である。しかしながら、特許文献3には、配向膜のアンカリングエネルギーについて開示されておらず、また、バックライトからの光を特定の極角(例えば45°)だけでなく、それ以上の極角においても充分に遮光することは検討されていない。
【0030】
以下、本実施形態について詳細を説明する。
【0031】
本実施形態の視野角制御用液晶パネル10は、誘電率異方性が正のネマティック液晶を用いたECBモードの液晶パネルである。視野角制御用液晶パネル10は、第一の電極112と第二の電極152との間に印加する電圧を変化させることにより、液晶層130のリタデーションを変化させ、液晶層130の光の透過及び不透過を制御することができる。
【0032】
図3は、実施形態1に係る視野角制御用液晶パネルの斜視模式図である。図3では、第一の配向膜120及び第二の配向膜140を省略している。図1図3に示すように、本実施形態の視野角制御用液晶パネル10は、背面側から観察面側に向かって順に、第一の偏光板10P1と、第一の基板110と、第一の配向膜120と、液晶分子131を含有する液晶層130と、第二の配向膜140と、第二の基板150と、第二の偏光板10P2と、を有する。第一の基板110は第一の支持基板111及び第一の電極112を備え、第二の基板150は、第二の支持基板151及び第二の電極152を備える。
【0033】
視野角制御用液晶パネル10はパッシブ駆動されるパッシブ液晶パネルである。一般的なパッシブ液晶パネルと同様に、視野角制御用液晶パネル10が備える第一の基板110は、画面50全面を覆うようなベタ電極である第一の電極112を備え、第二の基板150は、画面50全面を覆うようなベタ電極である第二の電極152を備える。このような態様とすることにより、画面50全体でパブリックモードとプライバシーモードとの切り替えを行うことができる。
【0034】
第一の支持基板111及び第二の支持基板151としては、例えば、ガラス基板、プラスチック基板等の基板が挙げられる。ガラス基板の材料としては、例えば、フロートガラス、ソーダガラス等のガラスが挙げられる。ブラスチック基板の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン等のプラスチックが挙げられる。
【0035】
第一の電極112及び第二の電極152は、透明電極であってもよく、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等の透明導電材料、又は、それらの合金で形成することができる。
【0036】
第一の配向膜120及び第二の配向膜140は、電圧無印加状態における液晶分子131の初期配向方位及び電圧無印加状態における液晶分子131の極角(プレチルト角)を制御する。第一の配向膜120及び第二の配向膜140は、水平配向膜であっても垂直配向膜であってもよいが、電圧無印加状態における透過率を向上させる観点から、第一の配向膜120及び第二の配向膜140は、水平配向膜であることが好ましい。
【0037】
ここで、水平配向膜は、当該配向膜を備える基板を液晶表示装置に用いた場合に、液晶層に電圧を印加しない電圧無印加状態において、液晶層中の液晶分子を配向膜に対して、略水平に配向させる配向規制力を発現させる配向膜である。また、垂直配向膜は、当該配向膜を備える基板を液晶表示装置に用いた場合に、液晶層に電圧を印加しない電圧無印加状態において、液晶層中の液晶分子を配向膜に対して、略垂直に配向させる配向規制力を発現させる配向膜である。
【0038】
略水平とは、プレチルト角が0°以上、10°以下であることを意味し、好ましくは0°以上、5°以下、より好ましくは0°以上、2°以下であることを意味する。略垂直とは、プレチルト角が83°以上、90°以下であることを意味し、好ましくは85°以上、90°以下、より好ましくは87.5°以上、88.0°以下であることを意味する。なお、本明細書において「プレチルト角」とは、配向膜を形成した基板面と平行な方向からの液晶分子の傾きの角度(液晶分子の長軸が形成する角度)を表し、基板面と平行な角度が0°、基板面の法線の角度が90°である。
【0039】
第二の配向膜140の極角アンカリングエネルギー2EA及び方位角アンカリングエネルギー2EBは、それぞれ、第一の配向膜120の極角アンカリングエネルギー1EA及び方位角アンカリングエネルギー1EBよりも小さく、かつ、第二の配向膜140の極角アンカリングエネルギー2EAは、第二の配向膜140の方位角アンカリングエネルギー2EB以下である。すなわち、第二の配向膜140の極角アンカリングエネルギー2EAは、第一の配向膜120の極角アンカリングエネルギー1EAよりも小さく、第二の配向膜140の方位角アンカリングエネルギー2EBは、第一の配向膜120の方位角アンカリングエネルギー1EBよりも小さく、かつ、第二の配向膜140の極角アンカリングエネルギー2EAは、第二の配向膜140の方位角アンカリングエネルギー2EB以下である。
【0040】
ここで、アンカリングエネルギーとは、配向膜と液晶分子との間の相互作用を示す指標であり、配向膜と液晶分子との相互作用により、配向膜の面内における液晶分子の回転を束縛する方位角方向のアンカリングエネルギー、及び、配向膜面からの液晶分子の起き上がりを束縛する極角方向のアンカリングエネルギーに分離される。この方位角方向及び極角方向のアンカリングエネルギーを指標として用いることにより、配向膜による液晶分子の束縛度合いを定量的に示すことができ、アンカリングエネルギーが大きいほど、配向膜と液晶分子との間に強い相互作用が生じていることを示す。
【0041】
以下では、極角アンカリングエネルギー及び方位角アンカリングエネルギーが1×10-4J/m以下である配向膜を弱アンカリング膜、又は、スリッパリー配向膜ともいい、極角アンカリングエネルギー及び方位角アンカリングエネルギーが1×10-4J/mを超える配向膜を強アンカリング膜ともいう。また、極角アンカリングエネルギーが1×10-4J/m以下である配向膜を極角弱アンカリング膜ともいい、極角アンカリングエネルギーが1×10-4J/mを超える配向膜を極角強アンカリング膜ともいう。また、方位角アンカリングエネルギーが1×10-4J/m以下である配向膜を方位角弱アンカリング膜ともいい、方位角アンカリングエネルギーが1×10-4J/mを超える配向膜を方位角強アンカリング膜ともいう。
【0042】
極角アンカリングエネルギー及び方位角アンカリングエネルギーは、電界印加による方法、回転磁場法など一般的に使用される方法を用いて測定することができる。以下では、前者の電界印加による方法について説明する。
【0043】
まず、電界印加による方法を用いて配向膜の極角アンカリングエネルギーを測定する方法について説明する。アンカリングエネルギーを測定する対象の配向膜を、以下では単に測定対象の配向膜ともいう。ベタ状のITO電極を有する第一の基板、測定対象の配向膜、液晶層、上記測定対象の配向膜、及び、ベタ状のITO電極を有する第二の基板を備える液晶セル(以下、両側ベタ電極セルともいう)を用意し、一対のベタ状のITO電極間に電圧を印加して液晶層に縦電界を作用させ、電圧-相対透過率(V-T)曲線の立ち上がりの傾き(dT/dV)を計測することにより、極角方向のアンカリングエネルギー(極角アンカリングエネルギー)を求めることができる。なお、測定対象の配向膜が方位角強アンカリング膜であり、かつ、極角強アンカリング膜である場合の両側ベタ電極セルのdT/dV、すなわち、方位角強アンカリング膜であり、かつ、極角強アンカリング膜である配向膜を両基板上に備える両側ベタ電極セルのdT/dVは、測定対象の配向膜が極角弱アンカリング膜である場合の両側ベタ電極セル、すなわち、極角弱アンカリング膜を両基板上に備える両側ベタ電極セルよりも小さくなる。
【0044】
次に、電界印加による方法を用いて配向膜の方位角アンカリングエネルギーを測定する方法について説明する。互いに櫛歯が嵌合し合うように、同一の電極層に設けられた一対のIPS電極を有する第一の基板、測定対象の配向膜、液晶層、方位角強アンカリング膜であり、かつ、極角強アンカリング膜である配向膜、及び、第二の基板を備える液晶セル(以下、IPS電極セルともいう)を用意し、一対のIPS電極間に電圧を印加して液晶層に横電界を作用させ、電圧-相対透過率(V-T)曲線の立ち上がりの傾き(dT/dV)を計測することにより、方位角方向のアンカリングエネルギー(方位角アンカリングエネルギー)を求めることができる。なお、測定対象の配向膜が方位角強アンカリング膜であり、かつ、極角強アンカリング膜である場合のIPS電極セルのdT/dV、すなわち、方位角強アンカリング膜であり、かつ、極角強アンカリング膜である配向膜を両基板上に備えるIPS電極セルのdT/dVは、測定対象の配向膜が方位角弱アンカリング膜である場合のIPS電極セル、すなわち、方位角弱アンカリング膜を第一の基板上に備え、方位角強アンカリング膜であり、かつ、極角強アンカリング膜である配向膜を第二の基板上に備えるIPS電極セルよりも小さくなる。
【0045】
第二の配向膜140の極角アンカリングエネルギー2EA及び方位角アンカリングエネルギー2EBは、1×10-4J/m以下であることが好ましい。すなわち、第二の配向膜140は、弱アンカリング膜であることが好ましい。このような態様とすることにより、視野角制御用液晶パネル10の背面側にバックライトを配置する場合に、電圧印加状態において、バックライトからの光を高極角(例えば、極角60°~75°)側でより効果的に遮光することが可能となる。第二の配向膜140の極角アンカリングエネルギー2EA及び方位角アンカリングエネルギー2EBは、1×10-5J/m以下であることがより好ましく、1×10-7J/m以下であることが更に好ましい。
【0046】
第二の配向膜140の極角アンカリングエネルギー2EA及び方位角アンカリングエネルギー2EBの下限値は特に限定されないが、第二の配向膜140の極角アンカリングエネルギー2EA及び方位角アンカリングエネルギー2EBは、例えば、1×10-9J/m以上である。
【0047】
ECBモードであり、ポジ型の液晶分子を含有する液晶層の両側に強アンカリング膜を配置する場合、電圧印加状態における遮光性が不充分となる。縦電界印加によるリタデーション調整に基づく透過率制御のため、特定の極角(例えば45°)でしか、遮光することができず、それ以上の角度では透過率が高くなってしまい、遮光性が不十分となる。また、HAN(Hybrid-aligned Nematic)モードであり、ネガ型の液晶分子を含有する液晶層の両側に強アンカリング膜を配置する場合、液晶層が高いリタデーションを有する場合においてのみ、特定の極角(例えば45°)以上において充分遮光することができるが、高Δnのネガ型の液晶分子を用い、かつ、20μm以上のセル厚(液晶層の厚み)dが必要となり、量産性がない。
【0048】
第二の配向膜140の極角アンカリングエネルギー2EAは、第二の配向膜140の方位角アンカリングエネルギー2EBに対して、10-3倍以上、1倍以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、視野角制御用液晶パネル10の背面側にバックライトを配置する場合に、電圧印加状態において、バックライトからの光を高極角(例えば、極角60°~75°)側でより効果的に遮光することが可能となる。第二の配向膜140の極角アンカリングエネルギー2EAは、第二の配向膜140の方位角アンカリングエネルギー2EBに対して、10-2倍以上、1倍以下あることがより好ましく、10-1倍以上、1倍以下であることが更に好ましい。
【0049】
第一の配向膜120の極角アンカリングエネルギー1EA及び方位角アンカリングエネルギー1EBは、それぞれ、第二の配向膜140の極角アンカリングエネルギー2EA及び方位角アンカリングエネルギー2EBより大きければ特に限定されない。すなわち、第一の配向膜120の極角アンカリングエネルギー1EAは、第二の配向膜140の極角アンカリングエネルギー2EAよりも大きければ特に限定されず、第一の配向膜120の方位角アンカリングエネルギー1EBは、第二の配向膜140の方位角アンカリングエネルギー2EBよりも大きければ特に限定されない。第一の配向膜120の極角アンカリングエネルギー1EA及び方位角アンカリングエネルギー1EBは、互いに異なっていても同一であってもよい。
【0050】
第一の配向膜120の極角アンカリングエネルギー1EA及び方位角アンカリングエネルギー1EBは、1×10-4J/mを超えることが好ましい。すなわち、第一の配向膜120は、強アンカリング膜であることが好ましい。このような態様とすることにより、第一の配向膜120の液晶分子131に対する配向規制力が安定化するため、視野角制御用液晶パネル10内で液晶分子131を一様配向(ホモジニアス配向)することが可能となる。第一の配向膜120の極角アンカリングエネルギー1EA及び方位角アンカリングエネルギー1EBの上限値は特に限定されないが、第一の配向膜120の極角アンカリングエネルギー1EA及び方位角アンカリングエネルギー1EBは、例えば、1×10J/m以下である。
【0051】
第二の配向膜140の極角アンカリングエネルギー2EAは、第一の配向膜120の極角アンカリングエネルギー1EAに対して、10-10倍以上、1倍未満であることが好ましい。このような態様とすることにより、視野角制御用液晶パネル10の背面側にバックライトを配置する場合に、電圧印加状態において、バックライトからの光を高極角(例えば、極角60°~75°)側でより効果的に遮光することが可能となる。第二の配向膜140の極角アンカリングエネルギー2EAは、第一の配向膜120の極角アンカリングエネルギー1EAに対して、10-9倍以上、1倍未満であることがより好ましく、10-8倍以上、1倍未満であることが更に好ましい。
【0052】
第二の配向膜140の方位角アンカリングエネルギー2EBは、第一の配向膜120の方位角アンカリングエネルギー1EBに対して、10-10倍以上、1倍未満であることが好ましい。このような態様とすることにより、視野角制御用液晶パネル10の背面側にバックライトを配置する場合に、電圧印加状態において、バックライトからの光を高極角(例えば、極角60°~75°)側でより効果的に遮光することが可能となる。第二の配向膜140の方位角アンカリングエネルギー2EBは、第一の配向膜120の方位角アンカリングエネルギー1EBに対して、10-9倍以上、1倍未満であることがより好ましく、10-8倍以上、1倍未満であることが更に好ましい。
【0053】
強アンカリング膜は、配向処理を行うことにより形成される。弱アンカリング膜は配向処理を行うことにより形成される他、配向処理を行わなくとも形成することができる。具体的には、強アンカリング膜は、ラビング処理が施されたラビング配向膜であってもよいし、光配向処理が施された光配向膜であってもよい。弱アンカリング膜は、ラビング配向膜であってもよいし、光配向膜であってもよいし、配向処理が施されていない未処理の配向膜であってもよい。例えば、極角アンカリングエネルギー及び方位角アンカリングエネルギーは、弱アンカリングを誘起するモノマー、液晶材料及び弱アンカリングを誘起するモノマーの組成比率、液晶パネルの作製プロセス(PSA(Polymer Sustained Alignment)条件)等を選択することにより低減することができる。
【0054】
ラビング配向膜は、例えば、ラビング配向膜用ポリマーを含む配向膜材料を基板上に成膜し、レーヨンや綿等からなる布を巻いたローラを、回転速度及びローラと基板との距離を一定に保った状態で回転させ、ラビング配向膜用ポリマーを含む膜の表面を所定の方向に擦る(ラビング法)ことにより得られる。ラビング処理の条件を変更することにより、配向膜のアンカリングエネルギーを調整し、強アンカリング膜及び弱アンカリング膜を形成することができる。
【0055】
ラビング配向膜用ポリマーとしては、例えば、ポリイミド等が挙げられる。ラビング配向膜に含まれるラビング配向膜用ポリマーは、一種であっても、二種以上であってもよい。
【0056】
光配向膜は、例えば、光官能基を有する光配向性ポリマーを含む配向膜材料を基板上に成膜し、偏光紫外線を照射して光配向性ポリマーを含む膜の表面に異方性を発生させる(光配向法)ことにより得られる。光配向処理の条件や材料構造を変更することにより、配向膜のアンカリングエネルギーを調整し、強アンカリング膜及び弱アンカリング膜を形成することができる。
【0057】
上記光配向性ポリマーとしては、例えば、シクロブタン基、アゾベンゼン基、カルコン基、シンナメート基、クマリン基、スチルベン基、フェノールエステル基及びフェニルベンゾエート基から選択される少なくとも一種の光官能基を有する光配向性ポリマー等が挙げられる。上記光官能基は、紫外線、可視光等の光(電磁波、好ましくは偏向光、より好ましくは偏向紫外線、特に好ましくは直線偏光紫外線)が照射されることによって、例えば、二量化(二量体形成)、異性化、光フリース転移、分解(開裂)等の構造変化を生じ、液晶分子の配向規制力を発現できる官能基である。光配向性ポリマーが有する光官能基は、ポリマーの主鎖に存在してもよいし、ポリマーの側鎖に存在してもよいし、ポリマーの主鎖及び側鎖の両方に存在してもよい。光配向膜に含まれる光配向性ポリマーは、一種であっても、二種以上であってもよい。
【0058】
上記光配向性ポリマーの光反応の型も特に限定されないが、光分解型ポリマー、光転移型ポリマー(好ましくは光フリース転移型ポリマー)、光異性化型ポリマー、光二量化型ポリマー及び光架橋型ポリマーを好適な例として挙げることができる。これらは何れかを単独で用いることもでき、二種以上を併用することもできる。なかでも、配向安定性の観点からは、254nm付近を反応波長(主感度波長)とする光分解型ポリマー、及び、254nm付近を反応波長(主感度波長)とする光転移型ポリマーが特に好ましい。側鎖に光官能基を有する光異性化型ポリマー及び光二量化型ポリマーもまた好ましい。
【0059】
上記光配向性ポリマーの主鎖構造は特に限定されないが、ポリアミック酸構造、ポリイミド構造、ポリ(メタ)アクリル酸構造及びポリシロキサン構造、ポリエチレン構造、ポリスチレン構造、ポリビニル構造を好適な例として挙げることができる。
【0060】
未処理の配向膜は、例えば、基板上に配向膜ポリマーを含む配向膜材料を成膜することにより得られる。上記配向膜ポリマーとしては、例えば、ポリイミド、ポリへキシルメタクリレート等が挙げられる。未処理の配向層に含まれる配向膜ポリマーは、一種であっても、二種以上であってもよい。
【0061】
また、未処理の配向膜に含まれる上記配向膜ポリマーとしては、ポリイミド及びポリへキシルメタクリレート以外に、ポリエチレングリコール、ポリプロポレングリコール等のポリアルキレンオキサイドも好ましい。
【0062】
第一の配向膜120は、第一の配向膜ポリマーを含む。第一の配向膜ポリマーは、例えば、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミド及びポリシロキサンから選択される少なくとも一種の構造を主鎖に有するポリマーである。第一の配向膜120は、ラビング配向膜であってもよいし、光配向膜であってもよい。ポリイミドは、ポリアミック酸に含まれるアミック酸(アミド酸)中のカルボキシル基を加熱等により脱水・環化し、イミド化したものである。本明細書では、イミド化率が50%以上のポリアミック酸をポリイミドと称する。
【0063】
第二の配向膜140は、上記配向膜ポリマーとして、第二の配向膜ポリマーを含む。第二の配向膜ポリマーは、例えば、ポリアミック酸、ポリイミド及びポリシロキサンから選択される少なくとも一種の構造を主鎖に有するポリマーである。
【0064】
上記第二の配向膜ポリマーは、シルセスキオキサン基を有することが好ましい。このような態様とすることにより、配向膜の極角アンカリングエネルギーを、例えば、1×10-4J/m以下に低減することが可能となる。その結果、視野角制御用液晶パネル10の背面側にバックライトを配置する場合に、電圧印加状態において、バックライトからの光を高極角側でより効果的に遮光することが可能となる。
【0065】
シルセスキオキサン基は、(RSiO1.5で表される構造から少なくとも1つのR基を除去することにより得られる基である。上記(RSiO1.5におけるRは、イソブチル基(-CHCH(CH)を表す。
【0066】
シルセスキオキサンは、シリカ(SiO)及びシリコーン(RSiO)の中間の組成を有し、3官能性シランを加水分解することで得られる(RSiO1.5の構造を持つネットワーク型ポリマー又は多面体クラスターのことである。各シリコンは平均1.5個(Sesqui)の酸素原子と1つの炭化水素基と結合している。シルセスキオキサンは、最大8つまでの有機官能基とSi-O結合で出来たカゴ状骨格を持つ無機化合物である。
【0067】
上記シルセスキオキサン基は、下記化学式(1)で表される構造であってもよい。下記化学式(1)で表される構造は、カゴ型のシルセスキオキサン基である。
【0068】
【化1】
【0069】
上記第二の配向膜ポリマーは、下記化学式(2)で表されるポリアミック酸を主鎖とする構造を含んでもよい。
【0070】
【化2】
(式中、Xは、下記化学式(X-1)~(X-12)のいずれかで表される構造を表し、Y1は、下記化学式(Y1-1)~(Y1-16)のいずれかで表される構造を表し、Y2は、下記化学式(Y2-1)で表される構造を表し、Wは、側鎖を表す。m1は、0より大きく1未満の実数である。p1は、繰り返し数を表し、1以上の整数である。)
【0071】
【化3】
【0072】
【化4】
【0073】
【化5】
【0074】
上記第二の配向膜ポリマーは、下記化学式(3)で表されるポリイミドを主鎖とする構造を含んでもよい。
【0075】
【化6】
(式中、Xは、上記化学式(X-1)~(X-12)のいずれかで表される構造を表し、Y1は、上記化学式(Y1-1)~(Y1-16)のいずれかで表される構造を表し、Y2は、上記化学式(Y2-1)で表される構造を表し、Wは、側鎖を表す。m2は、0より大きく1未満の実数である。p2は、繰り返し数を表し、1以上の整数である。)
【0076】
上記第二の配向膜ポリマーは、配向性官能基を含むことが好ましい。上記配向性官能基は、上記化学式(2)及び(3)において、側鎖Wに導入されることがより好ましい。側鎖Wに導入される配向性官能基は、一種であってもよいし、二種以上であってもよい。上記第二の配向膜ポリマー中の配向性官能基は、水平配向性官能基であってもよいし、垂直配向性官能基であってもよい。本明細書中、「水平配向性官能基」、「垂直配向性官能基」とは、配向膜を備える基板を液晶表示装置に用いた場合に、液晶層に電圧を印加しない電圧無印加状態において、液晶層中の液晶分子を配向膜に対して、それぞれ、略水平、略垂直に配向させる配向規制力を発現させる官能基をいう。
【0077】
上記第二の配向膜ポリマー中の配向性官能基は、光反応部位を含む光反応性基であってもよい。上記光反応部位とは、紫外光、可視光等の光(電磁波)が照射されることによって構造変化を生じ得る構造を意味する。上記光反応部位の構造変化としては、例えば、二量化(二量体形成)、異性化、光フリース転移、分解等が挙げられる。上記光反応部位の構造変化に起因して、配向膜の配向規制力が発現したり、配向膜の配向規制力の大きさ及び/又は向きが変化したりする。配向規制力とは、配向膜近傍に存在する液晶分子の配向を規制する性質をいう。本明細書中、光反応性基には、上記水平配向性官能基及び垂直配向性官能基のうち、光反応部位を含む官能基が含まれる。本明細書中、光反応性基を有する第一の高分子及び/又は光反応性基を有する第二の高分子を含む配向膜を、光配向膜ともいう。
【0078】
上記化学式(2)及び(3)中、Wは、例えば、下記化学式(W-1-1)~(W-1-8)のいずれかで表される構造を表すことが好ましい。下記化学式(W-1-1)~(W-1-8)で表される構造は、上記水平配向性官能基のうち、光反応部位を含まない官能基である。
【0079】
【化7】
【0080】
上記化学式(2)及び(3)中、Wは、例えば、下記化学式(W-2-1)~(W-2-7)のいずれかで表される構造を表すことも好ましい。下記化学式(W-2-1)~(W-2-7)で表される構造は、上記垂直配向性官能基のうち、光反応部位を含まない官能基である。
【0081】
【化8】
【0082】
上記垂直配向性官能基は、アルキル基又はコレステロール基を含んでもよい。アルキル基を含む垂直配向性官能基は、フェニル基又はピリジン骨格を含むことが好ましく、フェニル基又はピリジン骨格と、更にエステル結合を含むことがより好ましい。上記アルキル基を含む垂直配向性官能基としては、上記化学式(W-2-5)~(W-2-7)で表される構造が挙げられる。コレステロール基を含む垂直配向性官能基としては、上記化学式(W-2-1)~(W-2-4)で表される構造が挙げられる。
【0083】
上記化学式(2)及び(3)中、Wは、例えば、下記化学式(W-3-1)~(W-3-6)のいずれかで表される構造を表すことも好ましい。下記化学式(W-3-1)~(W-3-6)で表される構造は、上記水平配向性官能基のうち、光反応部位を含む官能基である。本明細書中、光反応部位を含む水平配向性官能基を「水平光配向性官能基」ともいう。下記化学式(W-3-1)~(W-3-3)で表される構造は、シンナメート基を含む水平光配向性官能基の例示である。下記化学式(W-3-4)で表される構造は、カルコン基を含む水平光配向性官能基の例示である。下記化学式(W-3-5)で表される構造は、アゾベンゼン基を含む水平光配向性官能基の例示である。下記化学式(W-3-6)で表される構造は、クマリン基を含む水平光配向性官能基の例示である。
【0084】
【化9】
【0085】
上記化学式(2)及び(3)中、Wは、例えば、下記化学式(W-4-1)~(W-4-24)のいずれかで表される構造を表すことも好ましい。下記化学式(W-4-1)~(W-4-24)で表される構造は、上記垂直配向性官能基のうち、光反応部位を含む官能基である。本明細書中、光反応部位を含む垂直配向性官能基を「垂直光配向性官能基」ともいう。下記化学式(W-4-1)~(W-4-21)で表される構造は、シンナメート基を含む垂直光配向性官能基の例示である。下記化学式(W-4-22)で表される構造は、カルコン基を含む垂直光配向性官能基の例示である。下記化学式(W-4-23)で表される構造は、アゾベンゼン基を含む垂直光配向性官能基の例示である。下記化学式(W-4-24)で表される構造は、クマリン基を含む垂直光配向性官能基の例示である。
【0086】
【化10】
【0087】
【化11】
【0088】
【化12】
【0089】
【化13】
【0090】
上記第二の配向膜ポリマーは、ポリマーブラシであることも好ましい。このような態様とすることにより、配向膜の極角アンカリングエネルギーを、例えば、1×10-4J/m以下に低減することが可能となり、スリッパリー配向膜を実現することができる。その結果、視野角制御用液晶パネル10の背面側にバックライトを配置する場合に、電圧印加状態において、バックライトからの光を高極角側でより効果的に遮光することが可能となる。
【0091】
ポリマーブラシは、一端が基板表面に固定され、他端が基板の表面から離間する方向に延びたグラフトポリマー鎖により形成される。このようなグラフトポリマー鎖は、基板側から延伸させるようにして生成してもよいし、予め所定長を有したポリマー鎖を、基板に付着させてもよい。ポリマーブラシは、例えば、PHMA(poly(hexyl methacrylate))を含有する。
【0092】
強アンカリング膜である第一の配向膜120と、弱アンカリング膜である第二の配向膜140と、を備える視野角制御用液晶パネル10の製造方法の一例を説明する。まず、第一の電極112としてベタ状のITO電極を有する第一の基板110上に、ラビング配向膜の材料をスピンコートで2000rpm/12sで塗布し、仮焼成80℃/60s、本焼成220℃/15分の後、ローラ回転数300rpm、ステージ搬送速度15mm/s、押し込み厚0.4mmのラビング処理条件でラビングする。更に、純水洗浄(1分)及び乾燥(80℃/10分)を行い、第一の基板110上に強アンカリング膜である第一の配向膜120を形成することができる。
【0093】
また、第二の電極152としてのベタ状のITO電極を有する第二の基板150上に、弱アンカリング誘起モノマー(HMA(hexyl methacrylate))を固定化できる反応部位を含むラビング配向膜の材料を、スピンコートで2000rpm/12sで塗布し、仮焼成80℃/60s、本焼成220℃/15分の後、ローラ回転数90rpm、ステージ搬送速度15mm/s、押し込み厚0.4mmのラビング処理条件でラビングする。更に、純水洗浄(1分)及び乾燥(80℃/10分)を行う。
【0094】
次に、第一の基板110側はビーズ散布を行う一方で、第二の基板150側はシール描画を行い、お互いを貼り合わせることにより、空パネルを作製する。その後、HMAモノマー(液晶材料に対し10wt%)を含む液晶材料を、真空注入し、110℃/10分で再配向処理を行う。最後に、HMAモノマーをポリマー化させるための処理(PSA処理)として、セルに対し、波長313nmの無偏光UV、14J(波長313nmの無偏光UV、7mW)を照射することによって、第二の基板150上に、PHMAを含む弱アンカリング膜である第二の配向膜140を形成し、第一の基板110及び第二の基板150間にホモジニアス配向状態の液晶層130を備えるスイッチングセルが得られる。更に、当該スイッチングセルを、パラレルニコルに配置された第一の偏光板10P1及び第二の偏光板10P2により挟持することにより、強アンカリング膜である第一の配向膜120と弱アンカリング膜である第二の配向膜140とを備える視野角制御用液晶パネル10が得られる。
【0095】
液晶層130は液晶分子131を含有し、液晶層130に対して印加された電圧に応じて液晶分子131の配向状態が変化することにより、光の透過量が制御される。液晶分子131は、下記式(L)で定義される誘電率異方性(Δε)が正の値を有する。また、液晶分子131は、電圧が印加されていない状態(電圧無印加状態)で、ホモジニアス配向する。電圧無印加状態における液晶分子131の長軸の方向は、液晶分子の初期配向の方向ともいう。なお、正の誘電率異方性を有する液晶分子をポジ型の液晶分子といい、負の誘電率異方性を有する液晶分子をネガ型の液晶分子という。
Δε=(液晶分子の長軸方向の誘電率)-(液晶分子の短軸方向の誘電率) (L)
【0096】
なお、本明細書において、ホモジニアス配向とは、視野角制御用液晶パネルを構成する基板の基板面(例えば、第一の基板110及び第二の基板150の少なくとも一方の基板面)に対して水平であり、且つ向きも揃っている配向状態を意味する。また、電圧無印加状態とは、液晶層中に液晶分子の閾値以上の電圧が印加されていない状態をいい、例えば、第一の電極112及び第二の電極152に同じ定電圧が印加されている状態であってもよいし、第一の電極112及び第二の電極152の一方の電極に定電圧が印加され、他方の電極に、上記定電圧に対して液晶分子の閾値未満の電圧が印加される状態であってもよい。電圧印加状態とは、液晶層中に液晶分子の閾値以上の電圧が印加されている状態をいう。
【0097】
液晶分子131の複屈折率Δnは、0.08以上、0.24以下であってもよい。高い信頼性(高い電圧保持率、広い動作温度範囲)の観点から、Δnは、0.08以上、0.16以下が好ましい。
【0098】
液晶層130の厚みdは、3μm以上、10μm以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、液晶分子131の応答速度を速くすることができる。また、視野角制御用液晶パネル10の厚みをより薄くすることができる。薄型化の観点では、液晶層130の厚みdは、3μm以上、5μm以下であることがより好ましい。歩留まりの観点では、液晶層130の厚みdは、5μm以上、10μm以下であることがより好ましい。液晶層130の厚みdが5μm以上であると、異物混入時の表示ムラを目立ちにくくし、歩留まりを向上させることができる。
【0099】
第一の電極と第二の電極との間に電圧が印加された電圧印加状態における液晶層130の最大リタデーションΔnd(以下、単に「リタデーション」ともいう)は、波長550nmにおいて、600nm以上、1600nm以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、十分な遮光性能とともに、生産安定性も担保することができる。液晶層130のリタデーションは、1000nm以上、1600nm以下であることがより好ましい。なお、上記リタデーションは、液晶分子の複屈折率(Δn)と液晶層の厚み(d)の積で表される。
【0100】
第一の偏光板10P1及び第二の偏光板10P2は、いずれも吸収型偏光子である。第一の偏光板10P1及び第二の偏光板10P2としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムにヨウ素錯体(又は染料)等の異方性材料を、染色及び吸着させてから延伸配向させた偏光子(吸収型偏光板)等を用いることができる。
【0101】
第一の偏光板10P1の偏光軸は、第二の偏光板10P2の偏光軸と平行であることが好ましい。すなわち、第一の偏光板10P1及び第二の偏光板10P2は、パラレルニコルに配置されることが好ましい。このような態様とすることにより、視野角制御用液晶パネル10の背面側にバックライトを配置する場合に、電圧無印加状態において、低い極角側から高い極角側にかけてバックライト光をより効果的に透過させることが可能となる。
【0102】
なお、本明細書中、2つの軸(例えば、偏光軸)が平行であるとは、両者のなす角度が0~6°であることを意味し、好ましくは0~2°、より好ましくは0~1°、特に好ましくは0°(完全に平行)であることを意味する。また、2つの軸(例えば、偏光軸)が直交するとは、両者のなす角度が87~93°であることを意味し、好ましくは89~91°、より好ましくは89.5~90.5°、特に好ましくは90°(完全に直交)であることを意味する。
【0103】
第一の偏光板10P1の偏光軸及び第二の偏光板10P2の偏光軸は、それぞれ、電圧無印加状態における液晶分子131の長軸方向と平行である。このような態様とすることにより、視野角制御用液晶パネル10の背面側にバックライトを配置する場合に、電圧無印加状態において、低い極角側から高い極角側にかけてバックライト光を更に効果的に透過させることが可能となる。
【0104】
(実施形態1の変形例)
図4は、実施形態1の変形例に係る視野角制御用液晶パネルの斜視模式図である。上記実施形態1の視野角制御用液晶パネル10はパッシブ駆動されるパッシブ液晶パネルであるが、視野角制御用液晶パネル10はこれに限定されず、例えば、アクティブマトリクス駆動されるアクティブマトリクス液晶パネルであってもよい。なお、本変形例において説明すること以外の構成は、上記実施形態1と同じである。また、説明の便宜上、上記実施形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0105】
本変形例の視野角制御用液晶パネル10はアクティブマトリクス駆動されるアクティブマトリクス液晶パネルである。このような態様とすることにより、画面全体ではなく、部分的にパブリックモードとプライバシーモードとを切り替えることが可能となる。
【0106】
視野角制御用液晶パネル10が備える第一の基板110は、一般的なアクティブマトリクス液晶パネルと同様に、互いに直交したゲート線113とソース線114とが、格子を形成するように配設され、その交点近傍には、スイッチング素子としてのTFT(Thin Film Transistor)115が設けられている。そして、ゲート線113とソース線114とに囲まれた領域が画素11Pを形成し、各画素11Pには、第一の電極112として、TFT115に接続された画素電極が設けられる。
【0107】
一方、第一の基板110と対向する第二の基板150には、第二の電極152として、画面50全面を覆うようなベタ電極である共通電極が設けられる。
【0108】
視野角制御用液晶パネル10の駆動方法は、特には限定されず、例えば一般に行われているアクティブマトリクス駆動方式を用いることができる。すなわち、ゲートドライバを介して各画素に設けられたTFT115をスイッチングする(オン・オフする)。そして、このスイッチングに連動して、オンする画素に対して、ソースドライバを介して電圧を印加し、TFT115のドレインバスを介して各画素内の蓄積容量に電荷を蓄積する。そして、この蓄積容量によって、当該画素がオン状態に保たれるというものである。
【0109】
ゲート線113は、TFT115のゲート電極に接続された配線(通常は複数のゲート電極に接続されたバスライン)であり、接続されたTFT115のゲート電極に走査信号(TFTのオン状態及びオフ状態を制御する信号)を印加する。ソース線114は、TFT115のソース電極に接続された配線(通常は複数のソース電極に接続されたバスライン)であり、接続されたTFT115にデータ信号(例えば映像信号)を印加する。ゲート線113及びソース線114は、通常、一方が、TFT115がマトリクス状に配列されたアレイ領域を縦断するように線状に配置され、他方が、上記アレイ領域を横断するように線状に配置される。
【0110】
ゲート線113、ソース線114及びTFT115を構成する各種配線及び電極は、スパッタリング法等により、銅、チタン、アルミニウム、モリブデン、タングステン等の金属、又は、それらの合金を、単層又は複数層で成膜し、続いて、フォトリソグラフィ法等でパターニングを行うことで形成することができる。これら各種配線及び電極は、同じ層に形成されるものについては、それぞれ同じ材料を用いることで製造が効率化される。
【0111】
(実施形態2)
本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1と重複する内容については説明を省略する。本実施形態は、実施形態1の視野角制御用液晶パネル10を上記第一の液晶パネルとして備え、更に、上記第一の液晶パネルとは異なる上記第二の液晶パネルを備える液晶表示装置に関する。
【0112】
図5は、実施形態2の液晶表示装置の一例を示した断面模式図である。図6は、実施形態2の液晶表示装置に関する図であり、表示用液晶パネルが電圧印加状態であり、視野角制御用液晶パネルが電圧無印加状態である場合の一例を示した断面模式図である。図7は、実施形態2の液晶表示装置に関する図であり、表示用液晶パネル及び視野角制御用液晶パネルが電圧印加状態である場合の一例を示した断面模式図である。
【0113】
図5図7に示す本実施形態の液晶表示装置1は、上記第一の液晶パネルとしての視野角制御用液晶パネル10と、上記第二の液晶パネルとしての表示用液晶パネル20とを備える。このような態様とすることにより、図6に示すように視野角制御用液晶パネル10を電圧無印加状態とすることにより、表示用液晶パネル20の画像を広視野角で視認することが可能であり、図7に示すように視野角制御用液晶パネル10を電圧印加状態とすることにより、表示用液晶パネル20の画像を特定の極角(例えば45°)よりも小さい極角においてのみ視認可能とし、上記特定の極角以上の極角においては視認されないようにすることができる。
【0114】
本実施形態の液晶表示装置1は、デュアルセル方式の視野角制御液晶表示装置である。液晶表示装置1は、視野角制御用液晶パネル10と、表示用液晶パネル20とを2枚重ねた液晶表示装置であって、視野角制御用液晶パネル10はECBモードからなり、例えば、片側の配向膜(例えばバックライト30光入射側の第一の配向膜120)は、強アンカリング膜であり、もう片側の配向膜(例えばバックライト30光出射側の第二の配向膜140)は弱アンカリング膜である。ECB液晶に電圧を印加しない時は、広視野角モードとして機能し、電圧を印加するときは、特定の極角(例えば45°)だけでなく、それ以上の角度において十分に遮光することができる狭視野角モードとして機能しするため、プライバシー切り替えを実現することができる。
【0115】
本実施形態の液晶表示装置1は、背面側から観察面側に向かって順に、バックライト30と視野角制御用液晶パネル10と表示用液晶パネル20とを備える。
【0116】
視野角制御用液晶パネル10は、背面側から観察面側に向かって順に、第一の偏光板10P1と第一の基板110と第一の配向膜120と液晶層130と第二の配向膜140と第二の基板150と第二の偏光板10P2とを備える。
【0117】
表示用液晶パネル20は、背面側から観察面側に向かって順に、第三の基板210と、第三の配向膜220と、上記第二の液晶パネルが備える上記液晶層としての表示用液晶層230と、第四の配向膜240と、第四の基板250と、第三の偏光板10P3と、を備える。
【0118】
第三の基板210は、図5図7に示すように、第三の電極212及び第四の電極214を備えることが好ましい。このような態様とすることにより、IPS(In-Plane Switching)モード又はFFS(Fringe Field Switching)モードを実現することが可能であり、表示用液晶パネル20単独では、広視野角モードとして機能することができる。
【0119】
表示用液晶パネル20は、面内方向にマトリクス状に配置された複数の画素を含む。第三の基板210は、第三の基板210上に、互いに平行に延設された複数のゲート線と、絶縁膜を介して各ゲート線と交差する方向に互いに平行に延設され複数のソース線とを備える。複数のゲート線及び複数のソース線は、全体として格子状に形成されている。ゲート線とソース線との交点にはスイッチング素子として、TFTが配置される。
【0120】
図5図7に示したように、第三の基板210は、背面側から観察面側に向かって順に、第三の支持基板211と、上記画素毎に配置された第三の電極212と、絶縁層213と、線状電極部214aを有する第四の電極214とを有する。すなわち、第三の基板210は、絶縁層213を介して積層された第三の電極212及び第四の電極214を有するFFS型の電極構造を有する。
【0121】
なお、本実施形態ではFFS型の電極構造を有する表示用液晶パネル20を例に挙げて説明するが、本実施形態は、第三の電極212及び第四の電極214がそれぞれ櫛歯電極であり、櫛歯電極である第三の電極212及び櫛歯電極である第四の電極214が、互いに櫛歯が嵌合し合うように、同一の電極層に設けられているIPS型の電極構造にも適用することができる。
【0122】
第三の基板210が備える第三の支持基板211としては、特に限定されず、例えば、第一の支持基板111及び第二の支持基板151と同様のものを挙げることができる。
【0123】
第三の電極212及び第四の電極214は、画素毎に配置される。第三の電極212は、平面状電極であることが好ましい。本明細書中、「平面状電極」とは、平面視において、スリットや開口が設けられていない電極をいう。第三の電極212は、平面視において、少なくとも後述する第四の電極214が有する線状電極部214aと重畳することが好ましい。
【0124】
第四の電極214は、複数の画素を跨いで電気的に結合して配置されている。第四の電極214は、線状電極部214aを有する。第四の電極214の平面形状としては、複数の線状電極部214aの両端が閉じられた構造が挙げられる。第四の電極214には、電極部分に囲まれた開口214bが設けられてもよい。
【0125】
画素毎に配置された複数の第四の電極214は、互いに電気的に接続され、記複数の画素に対して共通した定電圧を印加し、かつ、画素毎に配置された複数の第三の電極212のそれぞれはTFTが備える半導体層を介して、対応するソース線と電気的に接続され、画像信号に応じて画素毎に異なる電圧を印加してもよい。また、複数の第四の電極214のそれぞれは、TFTが備える半導体層を介して、対応するソース線と電気的に接続され、画像信号に応じて画素毎に異なる電圧を印加し、かつ、複数の第三の電極212は、互いに電気的に接続され、上記複数の画素に対して共通した定電圧を印加してもよい。
【0126】
第三の電極212及び第四の電極214としては、第一の電極112及び第二の電極152と同様のものを挙げることができる。
【0127】
絶縁層213としては、無機絶縁膜、有機絶縁膜等が挙げられる。無機絶縁膜としては、例えば、窒化珪素(SiNx)、酸化珪素(SiO)等の無機膜(比誘電率ε=5~7)や、それらの積層膜を用いることができる。有機絶縁膜としては、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ノボラック樹脂等の有機膜や、それらの積層体を用いることができる。
【0128】
第三の配向膜220及び第四の配向膜240は、電圧無印加状態における液晶分子231の初期配向方位及び電圧無印加状態における液晶分子231の極角(プレチルト角)を制御する。第三の配向膜220及び第四の配向膜240は、水平配向膜であっても垂直配向膜であってもよいが、面内の液晶リタデーションを調整し、十分な白輝度を得る観点から、第三の配向膜220及び第四の配向膜240は、水平配向膜であることが好ましい。
【0129】
第三の配向膜220及び第四の配向膜240は、ラビング配向膜であっても光配向膜であってもよい。第三の配向膜220及び第四の配向膜240は、例えば、ポリイミドを主鎖に有するポリマー、ポリアミック酸を主鎖に有するポリマー、ポリシロキサンを主鎖に有するポリマー等の配向膜ポリマーを含有する。第三の配向膜220及び第四の配向膜240は、例えば、上記配向膜ポリマーを含有する配向膜材料を第三の基板210及び第四の基板250上に塗布することによって形成することができ、上記塗布方法は特に限定されず、例えば、フレキソ印刷、インクジェット塗布等を用いることができる。
【0130】
第三の配向膜220の極角アンカリングエネルギー及び方位角アンカリングエネルギーは特に限定されないが、1×10-9J/m以上、1×10J/m以下である。
【0131】
第四の配向膜240の方位角アンカリングエネルギーは、1×10-5J/m以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、第三の電極212と第四の電極214との間に電圧が印加された場合に、これらの電極間で発生するフリンジ電界から遠い場所に位置する第四の配向膜240近傍の液晶分子231がより回転し易くなるため、視野角を広げることができる。第四の配向膜240の方位角アンカリングエネルギーの下限値は特に限定されないが、第四の配向膜240の方位角アンカリングエネルギーは、例えば、1×10-9J/m以上である。
【0132】
第四の配向膜240の極角アンカリングエネルギーは特に限定されないが、例えば、1×10-9J/m以上、1×10J/m以下である。
【0133】
第四の配向膜240は、ポリエチレングリコール(PEG:Polyethylene Glycol)及びポリメタクリル酸メチル(PMMA:Poly Methyl Methacrylate)の少なくとも一方のポリマーを含むことが好ましい。このような態様とすることにより、第四の配向膜240の方位角アンカリングエネルギーを抑えることが可能となり、方位角アンカリングエネルギーを例えば1×10-5J/m以下にすることができる。
【0134】
表示用液晶層230は液晶分子231を含有し、表示用液晶層230に対して印加された電圧に応じて液晶分子231の配向状態が変化することにより、光の透過量が制御される。液晶分子は、上記式(L)で定義される誘電率異方性(Δε)が正の値を有するものであってもよく、負の値を有するものであってもよいが、誘電率異方性が正の値を有するものであることが好ましい。
【0135】
第四の基板250は、第四の支持基板251を備える。第四の支持基板251としては、特に限定されず、例えば、第一の支持基板111及び第二の支持基板151と同様のものを挙げることができる。
【0136】
第三の基板210又は第四の基板250は、カラーフィルタ層を備えていてもよい。カラーフィルタ層は、例えば、赤色のカラーフィルタ、緑色のカラーフィルタ及び青色のカラーフィルタを含む。各色カラーフィルタの材料としては、例えば、染料、顔料等の色材を含む感光性樹脂を挙げることができる。顔料としては、1種又は1種以上の混合物が挙げられる。染料及び顔料としては、カラーフィルタの分野で一般的に用いられるものを使用することができる。感光性樹脂は、光の照射を受けると性質が変化する重合体であり、感光性樹脂としては、フォトレジスト等のカラーフィルタの分野で一般的に用いられるものを使用することができる。感光性樹脂としては、ネガ型又はポジ型を使用することができる。各色カラーフィルタは、染料、顔料等の色材を含む感光性樹脂を塗布して成膜し、露光及び現像等を行うフォトリソグラフィ法により形成される。
【0137】
第三の偏光板10P3は、吸収型偏光子である。第三の偏光板10P3としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムにヨウ素錯体(又は染料)等の異方性材料を、染色及び吸着させてから延伸配向させた偏光子(吸収型偏光板)等を用いることができる。
【0138】
第三の偏光板10P3の偏光軸は、第一の偏光板10P1の偏光軸及び第二の偏光板10P2の偏光軸に対して直交することが好ましい。このような態様とすることにより、電圧無印加状態において黒表示を実現することができる。
【0139】
バックライト30としては、液晶表示装置の分野において通常使用されるものを用いることができる。バックライト30は、視野角制御用液晶パネル10の背面側に配置し、バックライト30で生じた光を観察面側に出射できればよく、直下型であっても、エッジライト型であってもよい。バックライト30の光源の種類は特に限定されず、例えば、発光ダイオード(LED)、冷陰極管(CCFL)等が挙げられる。
【0140】
表示用液晶パネル20は、更に、第三の基板210の背面側又は第四の基板250の観察面側に視野角拡大フィルムを備えていてもよい。視野角拡大フィルムとしては、例えば、微細な楔状の斜面構造を有し、直進光を全方位に拡散させるSAMフィルム等が挙げられる。
【実施例
【0141】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明の効果を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0142】
(実施例1-1)
図8Aは、実施例1-1の視野角制御用液晶パネルの電圧無印加状態を示す断面模式図である。図8Bは、実施例1-1の視野角制御用液晶パネルの電圧印加状態を示す断面模式図である。図1図4図8A及び図8Bに示す、実施形態1と同様の構成を有する実施例1-1の視野角制御用液晶パネル10について、透過率の極角依存性、及び、白透過率の視野角依存性を計算した。具体的には、視野角制御用液晶パネル10の背面側にバックライトを配置し、視野角制御用液晶パネル10を透過する光の透過率の極角依存性、及び、白透過率の視野角依存性を、LCDmaster2D(シンテック社製のLCDシミュレータ)を用いて、波長550nmに設定し、計算した。
【0143】
ここで、実施例1-1の視野角制御用液晶パネル10の第一の電極112及び第二の電極152はベタ状のITO電極とした。第一の配向膜120(ラビング配向膜)のプレチルト角は1°~2°、極角アンカリングエネルギー1EA及び方位角アンカリングエネルギー1EBは1×10J/mに設定した。第二の配向膜140の極角アンカリングエネルギー2EA及び方位角アンカリングエネルギー2EBは1×10-5J/mに設定した。すなわち、第一の配向膜120は強アンカリング膜、第二の配向膜140は弱アンカリング膜であった。液晶層130は、ポジ型の液晶分子131を含有し、複屈折率Δn=0.22、セル厚d=3.64μm、リタデーションΔnd=808nmに設定した。第一の偏光板10P1及び第二の偏光板10P2は、パラレルニコルに配置した。実施例1-1の視野角制御用液晶パネル10は、狭視野角モード及び広視野角モードの切り替えを可能とするスイッチング液晶デバイス(アクティブルーバ)であった。
【0144】
(実施例1-2)
第二の配向膜140の方位角アンカリングエネルギー2EBを1×10-4J/mに変更したこと以外は、実施例1-1と同様の構成を有する実施例1-2の視野角制御用液晶パネル10について、実施例1-1と同様にして、透過率の極角依存性及び白透過率の視野角依存性を計算した。
【0145】
(実施例2)
第二の配向膜140の極角アンカリングエネルギー2EA及び方位角アンカリングエネルギー2EBを1×10-7J/mとしたこと以外は、実施例1-1と同様の構成を有する実施例2の視野角制御用液晶パネル10について、実施例1-1と同様にして、透過率の極角依存性及び白透過率の視野角依存性を計算した。
【0146】
(実施例3)
第二の配向膜140の極角アンカリングエネルギー2EA及び方位角アンカリングエネルギー2EBを1×10-7J/mとし、かつ、液晶層130のリタデーションΔnd=1554nmとしたこと以外は、実施例1-1と同様の構成を有する実施例3の視野角制御用液晶パネル10について、実施例1-1と同様にして、透過率の極角依存性及び白透過率の視野角依存性を計算した。
【0147】
(比較例1-1)
図9Aは、比較例1-1の視野角制御用液晶パネルの電圧無印加状態を示す断面模式図である。図9Bは、比較例1-1の視野角制御用液晶パネルの電圧印加状態を示す断面模式図である。第二の配向膜140を、第一の配向膜120と同じ極角アンカリングエネルギー(1×10J/m)及び方位角アンカリングエネルギー(1×10J/m)を有する配向膜140R(強アンカリング膜)に変更したこと以外は、実施例1-1と同様の構成を有する、図9A及び図9Bに示す比較例1-1の視野角制御用液晶パネル10Rについて、実施例1-1と同様にして、透過率の極角依存性及び白透過率の視野角依存性を計算した。比較例1-1の視野角制御用液晶パネル10Rは、第一の配向膜120及び配向膜140Rの両者が強アンカリング膜であった。
【0148】
(比較例1-2)
第二の配向膜140を、極角アンカリングエネルギー2EAが1×10J/mであり、方位角アンカリングエネルギー2EBが1×10-5J/mである配向膜140Rに変更したこと以外は、実施例1-1と同様の構成を有する比較例1-2の視野角制御用液晶パネル10Rについて、実施例1-1と同様にして、透過率の極角依存性及び白透過率の視野角依存性を計算した。
【0149】
(比較例1-3)
第二の配向膜140を、極角アンカリングエネルギー2EAが1×10-5J/mであり、方位角アンカリングエネルギー2EBが1×10J/mである配向膜140Rに変更したこと以外は、実施例1-1と同様の構成を有する比較例1-3の視野角制御用液晶パネル10Rについて、実施例1-1と同様にして、透過率の極角依存性及び白透過率の視野角依存性を計算した。
【0150】
(比較例1-4)
第二の配向膜140を、極角アンカリングエネルギー2EAが1×10-4J/mであり、方位角アンカリングエネルギー2EBが1×10-5J/mである配向膜140Rに変更したこと以外は、実施例1-1と同様の構成を有する比較例1-4の視野角制御用液晶パネル10Rについて、実施例1-1と同様にして、透過率の極角依存性及び白透過率の視野角依存性を計算した。
【0151】
(比較例2)
図10Aは、比較例2の視野角制御用液晶パネルの電圧無印加状態を示す断面模式図である。図10Bは、比較例2の視野角制御用液晶パネルの電圧印加状態を示す断面模式図である。第二の配向膜140を、第一の配向膜120と同じ極角アンカリングエネルギー(1×10J/m)及び方位角アンカリングエネルギー(1×10J/m)を有する配向膜140R(強アンカリング膜)に変更し、かつ、液晶層130を、ネガ型の液晶分子131Rを含有する液晶層130Rに変更してHANモードとしたこと以外は、実施例1-1と同様の構成を有する、図10A及び図10Bに示す比較例2の視野角制御用液晶パネル10Rについて、実施例1-1と同様にして、透過率の極角依存性及び白透過率の視野角依存性を計算した。
【0152】
(比較例3)
第二の配向膜140を、第一の配向膜120と同じ極角アンカリングエネルギー(1×10J/m)及び方位角アンカリングエネルギー(1×10J/m)を有する配向膜140R(強アンカリング膜)に変更し、液晶層130を、ネガ型の液晶分子131Rを含有する液晶層130Rに変更してHANモードとし、かつ、液晶層130RのリタデーションΔnd=1554nmとしたこと以外は、実施例1-1と同様の構成を有する比較例3の視野角制御用液晶パネル10Rについて、実施例1-1と同様にして、透過率の極角依存性及び白透過率の視野角依存性を計算した。
【0153】
(比較例4)
第二の配向膜140を、第一の配向膜120と同じ極角アンカリングエネルギー(1×10J/m)及び方位角アンカリングエネルギー(1×10J/m)を有する配向膜140R(強アンカリング膜)に変更し、液晶層130を、ネガ型の液晶分子131Rを含有する液晶層130Rに変更してHANモードとし、かつ、液晶層130RのリタデーションΔnd=5550nmとしたこと以外は、実施例1-1と同様の構成を有する比較例4の視野角制御用液晶パネル10Rについて、実施例1-1と同様にして、透過率の極角依存性及び白透過率の視野角依存性を計算した。
【0154】
(実施例1-1、実施例2~実施例3、比較例1-1及び比較例2~比較例4の視野角制御用液晶パネルの、透過率の極角依存性及び白透過率の視野角依存性の評価)
【0155】
図11は、実施例1-1の視野角制御用液晶パネルの、電圧無印加状態及び電圧印加状態における透過率の極角依存性を示すグラフである。図12は、実施例2の視野角制御用液晶パネルの、電圧無印加状態及び電圧印加状態における透過率の極角依存性を示すグラフである。図13は、実施例3の視野角制御用液晶パネルの、電圧無印加状態及び電圧印加状態における透過率の極角依存性を示すグラフである。図14は、実施例1-1、実施例2~実施例3、比較例1-1及び比較例2~比較例4の視野角制御用液晶パネルの、電圧印加状態における透過率の極角依存性を示すグラフである。図15Aは、図14における極角30°、45°、60°及び75°での透過率を、実施例1-1、実施例2~実施例3、比較例1-1及び比較例2~比較例4の視野角制御用液晶パネルのそれぞれについて示したグラフである。図15Bは、比較例1-1の視野角制御用液晶パネルの、白透過率の視野角依存性を示すグラフである。図15Cは、実施例1-1の視野角制御用液晶パネルの、白透過率の視野角依存性を示すグラフである。図15Dは、実施例2の視野角制御用液晶パネルの、白透過率の視野角依存性を示すグラフである。図15Eは、実施例3の視野角制御用液晶パネルの、白透過率の視野角依存性を示すグラフである。図15Fは、比較例2の視野角制御用液晶パネルの、白透過率の視野角依存性を示すグラフである。図15Gは、比較例3の視野角制御用液晶パネルの、白透過率の視野角依存性を示すグラフである。図15Hは、比較例4の視野角制御用液晶パネルの、白透過率の視野角依存性を示すグラフである。
【0156】
図11図13に示すように、実施例1-1及び実施例2~実施例3の視野角制御用液晶パネル10では、電圧無印加状態で、0°~180°方位において極角が増加するにしたがって、視野角制御用液晶パネル10の透過率がなだらかに減少することを確認できた。電圧無印加状態において液晶分子131がホモジニアス配向状態をとるため考えられる。このような特性を利用して、実施例1-1及び実施例2~実施例3の視野角制御用液晶パネルを用いることによりパブリックモード(広視野角モード)を実現することができた。実施例1-2についても、実施例1-1と同様の効果が得られた。
【0157】
また、図11図14及び図15Aに示すように、実施例1-1及び実施例2~実施例3の視野角制御用液晶パネル10では、電圧印加状態において、極角45°付近だけでなく、高極角(極角60°~75°)側においても透過率を減じることができた。第二の配向膜140の極角アンカリングエネルギーが第一の配向膜120の極角アンカリングエネルギーよりも小さいため、電圧印加状態において図8Bに示すように第一の配向膜120近傍以外の液晶分子131が垂直に配向し、図10Aに示すようなHANモードライクな配向状態を実現することができたためと考えられる。このような特性を利用して、実施例1-1及び実施例2~実施例3の視野角制御用液晶パネルを用いることによりプライバシーモード(狭視野角モード)を実現することができた。実施例1-2についても、実施例1-1と同様の効果が得られた。
【0158】
一方、図14及び図15Aに示すように、比較例1-1の視野角制御用液晶パネル10では、電圧印加状態において極角45°でしか遮光できず、高極角側の透過率を減じることができなかった。比較例1-2~比較例1-4についても、比較例1-1と同様であった。比較例2の視野角制御用液晶パネル10(HANセル)は、極角45°での透過率が約50%と高く、ほぼ遮光できていなかった。比較例2に対して、比較例3及び比較例4のようにリタデーションを高くすることによって斜め遮光性能(高極角側の遮光性)を高めることはできたが、高極角側において実施例1-1と同等以上の遮光性を得るには、リタデーションΔndは5000nm並みが必要であり、例えば、Δn=0.22の高屈折率の液晶分子を用いる場合、液晶層130の厚みdは25μmが必要となり、量産性に乏しいことが分かった。
【0159】
実施例2では、図14及び図15Aに示すように、実施例1-1よりも高極角側における透過率を減じることができた(遮光性を高めることができた)。実施例2の第二の配向膜140の極角アンカリングエネルギー2EA及び方位角アンカリングエネルギー2EBは1×10-7J/mであり、それぞれ、実施例1-1の第二の配向膜140の極角アンカリングエネルギー2EA及び方位角アンカリングエネルギー2EBよりも小さかったためと考えられる。
【0160】
実施例3では、図14及び図15Aに示すように、実施例1-1及び実施例2よりも高極角側における透過率を減じることができた(遮光性を高めることができた)。実施例3の第二の配向膜140の極角アンカリングエネルギー2EA及び方位角アンカリングエネルギー2EBは1×10-7J/mであり、それぞれ、実施例1-1の第二の配向膜140の極角アンカリングエネルギー2EA及び方位角アンカリングエネルギー2EBよりも小さく、かつ、実施例3の液晶層130のリタデーションΔndは1554nmであり、実施例1-1及び実施例2の液晶層130のリタデーションΔndより大きかったためと考えられる。
【0161】
(実施例1-1及び実施例2~実施例3の視野角制御用液晶パネルの最適電圧の評価)
実施例1-1及び実施例2~実施例3の視野角制御用液晶パネル10の背面側にバックライトを配置し、印加電圧を変化させ、視野角制御用液晶パネルを透過する光の透過率の極角依存性を測定した。図16は、実施例1-1の視野角制御用液晶パネルに対する印加電圧を変化させた場合の透過率の極角依存性を示すグラフである。図17は、実施例2の視野角制御用液晶パネルに対する印加電圧を変化させた場合の透過率の極角依存性を示すグラフである。図18は、実施例3の視野角制御用液晶パネルに対する印加電圧を変化させた場合の透過率の極角依存性を示すグラフである。図16図18中、破線で囲んだ印加電圧は、高極角側での透過率を最も効果的に抑制することができる最適電圧を示している。
【0162】
図16に示すように、実施例1-1の視野角制御用液晶パネル10では、印加電圧が1.3Vの場合に高極角側での透過率を最も効果的に抑制することが可能であった。図17に示すように、実施例2の視野角制御用液晶パネル10では、印加電圧が1.0Vの場合に高極角側での透過率を最も効果的に抑制することが可能であった。図18に示すように、実施例3の視野角制御用液晶パネル10では、印加電圧が1.5Vの場合に高極角側での透過率を最も効果的に抑制することが可能であった。
【0163】
(実施例1-1~実施例1-2及び比較例1-1~1-4の視野角制御用液晶パネルの、透過率の極角依存性の評価)
実施例1-1~実施例1-2及び比較例1-1~1-4の視野角制御用液晶パネルの背面側にバックライトを配置し、視野角制御用液晶パネルを透過する光の透過率の極角依存性を計算した。図19は、実施例1-1~実施例1-2、及び、比較例1-1~1-4の視野角制御用液晶パネルの、電圧印加状態における透過率の極角依存性を示すグラフである。図19では、各実施例及び比較例について、極角0°での透過率を100%とした場合の、極角45°、60°及び75°での透過率を示している。
【0164】
実施例1-1~実施例1-2及び比較例1-4より、第二の配向膜140の極角アンカリングエネルギー2EAは、第二の配向膜140の方位角アンカリングエネルギー2EB以下であることが、高極角(極角60°~75°)側における透過率低減に寄与することが分かった。また、実施例1-1~実施例1-2及び比較例1-3より、第二の配向膜140の極角アンカリングエネルギー2EAが方位角アンカリングエネルギー2EB以下であっても、第二の配向膜140の極角アンカリングエネルギー2EA及び方位角アンカリングエネルギー2EBが、それぞれ、第一の配向膜120の極角アンカリングエネルギー1EA及び方位角アンカリングエネルギー1EBよりも小さくなければ、高極角側において充分な透過率低減効果を得られないことが分かった。
【0165】
(実施例4-1)
図20Aは、実施例4-1の液晶表示装置が備える表示用液晶パネル及び視野角制御用液晶パネルが電圧印加状態である場合を示す断面模式図である。図20Bは、実施例4-1の液晶表示装置が備える表示用液晶パネルが電圧印加状態であり、視野角制御用液晶パネルが電圧無印加状態である場合を示す断面模式図である。図5図7図20A及び図20Bに示す、実施形態2と同様の構成を有する実施例4-1の液晶表示装置1を作製した。視野角制御用液晶パネル10には、実施例1-1の視野角制御用液晶パネル10を用いた。実施例4-1の液晶表示装置1は、視野角制御用液晶パネル10に表示用液晶パネル20を重ね合わせるデュアルセル方式の視野角切り替え液晶表示装置である。表示用液晶パネル20には、FFSモードの液晶パネルを用いた。表示用液晶パネル20が備える表示用液晶層230は、ポジ型の液晶分子231を含有し、電圧無印加状態においてホモジニアス配向状態をとり、第三の配向膜220及び第四の配向膜240はラビング配向膜であった。第三の配向膜220及び第四の配向膜240は、いずれも、極角アンカリングエネルギー及び方位角アンカリングエネルギーが1×10J/mである強アンカリング膜であった。視野角制御用液晶パネル10を挟持する第一の偏光板10P1及び第二の偏光板10P2はパラレルニコルで配置され、表示用液晶パネル20を挟持する第二の偏光板10P2及び第三の偏光板10P3はクロスニコルで配置されていた。
【0166】
視野角制御用液晶パネル10が電圧印加状態である場合、図20Aに示すように、第一の偏光板10P1を通過したバックライト30からの光(偏光)は、第二の偏光板10P2の偏光軸と直交するため、第二の偏光板10P2で光吸収され、斜め方向の光量が減少し、狭視野角モードを実現することができた。更に、実施例4-1では、視野角制御用液晶パネル10の第二の配向膜140の極角アンカリングエネルギー2EA及び方位角アンカリングエネルギー2EBが、それぞれ、第一の配向膜120の極角アンカリングエネルギー1EA及び方位角アンカリングエネルギー1EBよりも小さいため、狭視野角モードにおいて、高極角側の光を効果的に遮蔽することができた。
【0167】
視野角制御用液晶パネル10が電圧無印加状態である場合、図20Bに示すように、第一の偏光板10P1を通過したバックライト30からの光(偏光)は、第二の偏光板10P2の偏光軸と平行になるため、第二の偏光板10P2をそのまま通過し、斜め方向も明るくなった。
【0168】
(実施例4-2)
実施例2の視野角制御用液晶パネル10を用いたこと以外は、実施例4-1と同様にして実施例4-2の液晶表示装置1を作製した。実施例4-2の液晶表示装置1についても、実施例4-1と同様の効果が得られた。
【0169】
(実施例4-3)
実施例3の視野角制御用液晶パネル10を用いたこと以外は、実施例4-1と同様にして実施例4-3の液晶表示装置1を作製した。実施例4-3の液晶表示装置1についても、実施例4-1と同様の効果が得られた。
【0170】
(実施例5-1)
図21は、実施例5-1の液晶表示装置の断面模式図である。図22Aは、実施例5-1の液晶表示装置が備える表示用液晶パネル及び視野角制御用液晶パネルが電圧印加状態である場合を示す断面模式図である。図22Bは、実施例5-1の液晶表示装置が備える表示用液晶パネルが電圧印加状態であり、視野角制御用液晶パネルが電圧無印加状態である場合を示す断面模式図である。第四の配向膜240を、極角アンカリングエネルギーが1×10J/mであり、方位角アンカリングエネルギーが1×10-5J/mである第四の配向膜240Aに変更したこと以外は、実施例4-1と同様にして、図21図22A及び図22Bに示す実施例5-1の液晶表示装置1を作製した。実施例5-1では、第四の配向膜240Aはスリッパリー配向膜であった。
【0171】
視野角制御用液晶パネル10が電圧印加状態である場合、図22Aに示すように、第一の偏光板10P1を通過したバックライト30からの光(偏光)は、第二の偏光板10P2の偏光軸と直交するため、第二の偏光板10P2で光吸収され、斜め方向の光量が減少した。この際、第四の配向膜240近傍の液晶分子231はフリンジ電界により回転していたが、バックライト30からの斜めの光は視野角制御用液晶パネル10でカットされたため、狭視野角モードを充分に実現することができた。
【0172】
視野角制御用液晶パネル10が電圧無印加状態である場合、図22Bに示すように、第一の偏光板10P1を通過したバックライト30からの光(偏光)は、第二の偏光板10P2の偏光軸と平行になるため、第二の偏光板10P2をそのまま通過し、斜め方向も明るくなった。また、表示用液晶パネル20を通過する斜めの光は実施例4-1よりも大きくなった。表示用液晶パネル20がFFSモード等の横電界モードの液晶パネルである場合、スリッパリー配向膜である第四の配向膜240A近傍の液晶分子231は、フリンジ電界が遠方で発生している場合であっても回転することが可能であるため、視野角が更に広まったためと考えられる。
【0173】
(実施例5-2)
実施例2の視野角制御用液晶パネル10を用いたこと以外は、実施例5-1と同様にして実施例5-2の液晶表示装置1を作製した。実施例5-2の液晶表示装置1についても、実施例5-1と同様の効果が得られた。
【0174】
(実施例5-3)
実施例3の視野角制御用液晶パネル10を用いたこと以外は、実施例5-1と同様にして実施例5-3の液晶表示装置1を作製した。実施例5-3の液晶表示装置1についても、実施例5-1と同様の効果が得られた。
【符号の説明】
【0175】
1:液晶表示装置
10、10R:視野角制御用液晶パネル
20:表示用液晶パネル
30:バックライト
50:画面
10P1:第一の偏光板
10P2:第二の偏光板
10P3:第三の偏光板
11P:画素
110:第一の基板
111:第一の支持基板
112:第一の電極
113:ゲート線
114:ソース線
115:TFT(Thin Film Transistor)
120:第一の配向膜
130、130R:液晶層
131、131R、231:液晶分子
140:第二の配向膜
140R:配向膜
150:第二の基板
151:第二の支持基板
152:第二の電極
210:第三の基板
211:第三の支持基板
212:第三の電極
213:絶縁層
214:第四の電極
214a:線状電極部
214b:開口
220:第三の配向膜
230:表示用液晶層
240、240A:第四の配向膜
250:第四の基板
251:第四の支持基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F
図15G
図15H
図16
図17
図18
図19
図20A
図20B
図21
図22A
図22B