(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】椎茸栽培用容器
(51)【国際特許分類】
A01G 18/64 20180101AFI20231122BHJP
A01G 18/65 20180101ALI20231122BHJP
【FI】
A01G18/64
A01G18/65
(21)【出願番号】P 2022144459
(22)【出願日】2022-09-12
(62)【分割の表示】P 2018170867の分割
【原出願日】2018-09-12
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390034142
【氏名又は名称】ホクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【氏名又は名称】石井 理太
(72)【発明者】
【氏名】藏前 健一
(72)【発明者】
【氏名】黒田 圭介
(72)【発明者】
【氏名】松本 暁人
(72)【発明者】
【氏名】田中 延和
(72)【発明者】
【氏名】小林 直哉
(72)【発明者】
【氏名】宮嵜 光
(72)【発明者】
【氏名】山本 翔也
(72)【発明者】
【氏名】大利 洋平
(72)【発明者】
【氏名】大内 謙二
(72)【発明者】
【氏名】稲冨 聡
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-29097(JP,A)
【文献】特開平10-215679(JP,A)
【文献】特開平2-9321(JP,A)
【文献】特開2001-42(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 18/64
A01G 18/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮光性材料によって形成され、上面が開口した平箱状の容器本体と、該容器本体内に充填された培地材が所定の圧力で圧縮されてなる培地と、該培地の上面を覆うシートと、前記容器本体の上面開口部に着脱可能に嵌合する透光性及び通気性を有する
樹脂製の蓋部材とを備え、
前記シートには、複数の透孔が形成され、
前記蓋部材は、中央部が上向きに膨出し、前記容器本体の上面との間に空間が形成されるようにしたことを特徴とする
椎茸栽培用容器。
【請求項2】
前記蓋部材は、一又は複数の円柱状の作業孔と、該作業孔を開閉可能に塞ぐ円柱状の作業孔用蓋を備え、該作業孔用蓋が透光性及び通気性を有する請求項1に記載の
椎茸栽培用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に椎茸の栽培に使用される椎茸栽培用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、椎茸等のキノコ栽培としては、袋状の栽培用容器を使用した方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
この方法では、栽培容器におが屑等の培地材を充填し、ブロック状の培地を形成し、培地の上面を透光性シートで覆った後、培地が充填された容器を殺菌する殺菌工程、キノコの菌を接種し、栽培用容器に封をする菌接種工程を行う。
【0004】
そして、栽培用容器の全周面及び底面をシートで覆った後、菌糸を培養させ、原基が形成され、ある程度成長したら培地を覆う透光性シートを除去し、原基より成長したキノコを収穫するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、培地の体積に対しキノコが成長する培地上面の表面積が小さく、栽培効率が悪いという問題があった。
【0007】
また、従来のキノコ栽培用容器は、培地を容器に充填する作業、シートによる培地の被覆作業、容器の一部を開放して接種する作業、栽培用容器の全周面及び底面をシートで覆う作業等の作業を手作業で行わざるを得ず、オートメーション化に適応し難く、効率が悪いという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、オートメーション化に適応し、椎茸等のキノコ類を効率よく栽培するための椎茸栽培用容器の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、遮光性材料によって形成され、上面が開口した平箱状の容器本体と、該容器本体内に充填された培地材が所定の圧力で圧縮されてなる培地と、該培地の上面を覆うシートと、前記容器本体の上面開口部に着脱可能に嵌合する透光性及び通気性を有する樹脂製の蓋部材とを備え、前記シートには、複数の透孔が形成され、前記蓋部材は、中央部が上向きに膨出し、前記容器本体の上面との間に空間が形成されるようにした椎茸栽培用容器にある。
【0010】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記蓋部材は、一又は複数の円柱状の作業孔と、該作業孔を開閉可能に塞ぐ円柱状の作業孔用蓋を備え、該作業孔用蓋が透光性及び通気性を有することにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る椎茸栽培用容器は、請求項1に記載の構成を具備することによって、培地の上面側より効率よくキノコを発育させることができ、培地の体積に対しキノコが成長する培地3上面の表面積を大きくすることができ、栽培効率を向上させることができる。また、オートメーション化に適応させることができる。
【0012】
また、本発明において、請求項2に記載の構成を具備することによって、蓋部材を開くことなく、接種作業等を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(a)は本発明に係る
椎茸栽培用容器を示す正面図、(b)は同平面図である。
【
図3】本発明に係る
椎茸栽培用容器の組み立て装置を示す概略図である。
【
図4】
図3中の培地押圧手段の概略を示す正面図である。
【
図5】
図3中の培地押圧手段を示す拡大縦断面図である。
【
図6】
図3中のフィルム被せ手段の概略を示す正面図である。
【
図7】同上のフィルムの移送時の状態を示す正面図である。
【
図8】
図3中の蓋被せ手段の概略を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る
椎茸栽培用容器の実施態様を
図1及び
図2に示した実施例に基づいて説明する。
【0015】
この椎茸栽培用容器1は、上面が開口した平箱状の容器本体2と、容器本体2内に培地材を充填してなる培地3と、培地3の上面を覆うシート4と、容器本体2の上面開口部に着脱可能に嵌合する透光性を有する蓋部材5とを備え、シート4を通して椎茸等のキノコの菌を培地3に接種し、菌糸を培養させ、キノコを生育させるようになっている。
【0016】
容器本体2は、平板状の底板部2aと、底板部2aの周縁より立ち上げた矩形枠状の周壁部2bとを備え、上面が開口した有底平箱状を成している。
【0017】
この容器本体2は、底板部2a及び周壁部2bが遮光性材料によって形成され、底面及び周面からの培地3に対する光の透過を制限できるようになっている。
【0018】
培地材は、おが屑、広葉樹チップに栄養体及び水を加えたものを使用し、培地材間の隙間が均等になるように充填されるとともに、所定の圧力で圧縮されブロック状の培地3が形成される。
【0019】
シート4は、極薄シート状に形成され、表裏に貫通する微小な複数の透孔を備え、培地3の上面を覆うことによって、培地3の乾燥防止及び殺菌後の接種孔としての機能を果たすようになっている。
【0020】
蓋部材5は、透光性及び通気性を有する樹脂材によって形成され、容器本体2の上面開口部に着脱可能に嵌合されるようになっている。
【0021】
また、蓋部材5は、
図2に示すように、蓋部材の天板部分の内底面と容器本体2の上面との間に空間が形成されている。
【0022】
この蓋部材5には、複数の円柱状の作業用孔5a,5a…が設けられ、各作業用孔5a,5a…には、透光性を有する樹脂材からなり、通気性を備える円柱状の作業孔用蓋5bが開閉可能に嵌合されている。
【0023】
このように構成された椎茸栽培用容器1は、遮光性材料からなる底板部2a及び周壁部2bによって容器本体2を平箱状に形成するとともに、培地3の表面を複数の透孔が形成されたシート4によって覆うことによって、培地3の上面側より効率よくキノコを発育させることができ、培地3の体積に対しキノコが成長する培地3上面の表面積を大きくすることができ、栽培効率を向上させることができる。
【0024】
次に、この
椎茸栽培用容器1を組み立てる装置について
図3~
図9に基づいて説明する。
【0025】
キノコ用栽培容器の組立装置10は、容器本体2を移送する移送手段11と、移送手段11に容器本体2を送り込む容器供給手段12と、容器本体2内に培地材を投入する培地投入手段13と、培地投入手段13によって投入された培地材からなる培地3の上面を押圧し、培地3の上面を整形する培地押圧手段14と、培地押圧手段14によって整形された培地3の上面にシート4を被せるシート被せ手段15と、容器本体2上に蓋部材5を載置させる蓋被せ手段16と、蓋部材5の上面部を押圧し、容器本体2の上面開口部に蓋部材5を嵌合させる蓋嵌合手段17とを備え、移送手段11を通して容器供給手段12、培地投入手段13、培地押圧手段14、シート被せ手段15、蓋被せ手段16及び蓋嵌合手段17を順次経由することによって椎茸栽培用容器1が組み立てられるようになっている。
【0026】
移送手段11は、ローラーコンベア―を使用し、モーター(図示せず)等によって回転するローラー18,18…上を容器本体2が移動するようになっている。
【0027】
また、移送手段11には、それぞれ所定の位置に位置決め装置19,19…が配置され、容器本体2がローラーコンベア上の所定の位置で停止するようになっている。
【0028】
位置決め装置19,19…は、移送手段11下に配置され、シリンダ装置19aによって上下動するストッパー19bが移送手段11の表面より突出し、ストッパー19bに容器本体2の前面が当て止めされ、ストッパー19bが移送手段11の表面より下降することによって、容器本体2が移動できるようになっている。
【0029】
また、各位置決め装置19,19…は、それぞれ制御装置によってシーケンス制御され、各工程のタイミングに合わせて容器本体2を移動及び停止させるようになっている。
【0030】
容器供給手段12は、移送手段11上に多数の容器本体2を重ねた状態で保持し、移送手段11により前進した重ねられた容器本体2を1個毎に移送手段11上へ供給する送り出し部20を備えている。
【0031】
送り出し部20は、最下部の容器本体2より上に重ねられた多数の容器本体2を持ち上げる持ち上げアーム20aを備え、持ち上げアーム20aで多数の容器本体2を持ち上げている際に位置決め装置19,19…のストッパー19bを下降させることによって、最下部の容器本体2のみが移送手段11上を下流側に順次送り出されるようになっている。
【0032】
培地投入手段13は、培地材を貯留する貯留部21と、貯留部21より定量の培地材が投入される箱状の定量投入部22とを備え、定量投入部22内が培地押圧手段14まで移動した容器本体2上まで移動し、その位置で容器本体2内に所定量の培地3を投下するようになっている。尚、図中符号22aは、定量投入部22を移動させるためのシリンダ装置である。
【0033】
尚、培地投入手段13は、貯留部21から定量投入部22内に投入された培地材を解し、容器本体2に均等に培地材を投下する培地材均し機構を備えている。
【0034】
培地材均し機構は、特に図示しないが、定量投入部22内にスクリューを備え、スクリューの回転によって培地材を均等に解すようになっている。
【0035】
培地押圧手段14は、
図4、
図5に示すように、容器本体2の上面に位置する枠体23と、枠体23上に配置された押圧機構24と、移送手段11下に配置された振動機構25とを備え、移送手段11上で停止した容器本体2の下側に複数の振動板25a,25aを宛がい、振動板25a,25aを上下動させた状態で培地材からなる培地3の上面を押圧するようになっている。
【0036】
押圧機構24は、梁材24cに上下移動可能に支持された押圧板24aと、押圧板24aを上下移動させるシリンダ装置24bとを備え、
図5に示すように、押圧板24aをシリンダ装置24bによって降下させ、容器本体2内に投入された培地材からなる培地3の上面を所定の圧力で押圧するようになっている。
【0037】
振動機構25は、移送手段11の進行方向に並べて配置された複数の振動板25a,25aを備え、この振動板25a,25aをローラー18,18…間の隙間より移送手段11の上面側に突出させ、容器本体2の下面に宛がわれるようになっている。
【0038】
そして、各振動板25a,25aは、モータ25bによってクランク機構25cを動作させることによって、押圧板24aによる培地3の押圧時に上下動し、容器本体2に振動を与えるようになっている。
【0039】
枠体23は、培地材投入時に容器本体2の上面を覆うことによって、余分な培地材が容器本体2の上面に付着しないようにしている。
【0040】
シート被せ手段15は、移送手段11の近傍に配置され、多数のシート4を重ねて収容するシート収容部26と、シート収容部26に収容されたシート4の表面を吸着し、移送手段11上の容器本体2内の培地3の上面に移送するシート移送機構27とを備え、培地押圧手段14より移送された各容器本体2内の培地3上面にそれぞれ一枚のシート4を被せるようになっている。
【0041】
シート収容部26は、極薄のシート4を多数重ねて収容するトレイ26aと、トレイ26aが載置されるトレイ載置台26bとを備え、トレイ載置台26b上に載置されたトレイ26a内より順次シート4が移送手段11上で停止した容器本体2内の培地3上面に移送されるようになっている。
【0042】
シート移送機構27は、シート収容部26と移送手段11とに亘って架け渡されたレール28に沿って移動するシリンダ装置29と、シリンダ装置29のロッド下端に固定されたフレーム30と、フレーム30の四隅部に配置された吸引具31,31とを備え、各吸引具31,31を支持するフレーム30がシート収容部26と移送手段11との間を移動するとともに、上下移動できるようになっている。
【0043】
吸引具31は、フレーム30にリニアブッシュ32を介して上下動可能に支持されたロッド部31aと、ロッド部31aの下端に配置された吸盤部31bとを備え、ロッド部31aの上端が図示しない吸引ホースを介してポンプに接続され、吸盤部に負圧が作用するようになっている。
【0044】
尚、各吸引具31,31…は、シート4の外縁より内側に位置するように配置されことが好ましい。
【0045】
このシート被せ手段15による作業は、先ず、フレーム30をシート収容部26のトレイ26a上に移動させ、その位置でフレーム30を下降させ、トレイ26a内の最上に重ねられたシート4の表面に吸引具31の吸盤部31bを接触させる。
【0046】
次に、吸盤部31bに負圧を作用させ、シート4を吸盤部31bに吸着させ、その状態でフレーム30を上昇させ、シート4をトレイ26aより持ち上げる。
【0047】
シート4を持ち上げる際、シート4は、複数の微小な透孔を有しているため、透孔を通して各シート4,4間に空気が流れ込み、シート間の摩擦による付着を防止し、1枚ごとに持ち上げることができる。
【0048】
次に、シリンダ装置29をレール28に沿って移動させ、フレーム30を移送手段11上の容器本体2上に移動させ、その位置でシリンダ装置29を動作させ、フレーム30を下降させ、シート4を容器本体2内の培地3上面に被せる。
【0049】
その際、シート4に複数の透孔を有することによって、下降に伴う風圧が透孔を通して回避されるとともに、シート4の外縁部が風圧を受けて内側に巻き込まれることが防止されるようになっている。
【0050】
そして、シート4を被せ終えたら、容器本体2を蓋被せ手段16に送り出す。
【0051】
蓋被せ手段16は、
図9、
図10に示すように、移送手段11に併設された蓋部材供給部32と、蓋部材供給部32より蓋部材5を移送手段11上に移送する蓋部材移送機構33とを備えている。
【0052】
蓋部材供給部32は、コンベア装置32aを備え、コンベア装置32aに乗せて蓋部材5を順次移送手段11の近傍に送り出すようになっている。
【0053】
蓋部材移送機構33は、蓋部材供給部32と移送手段11とに亘って架け渡されたレール34に沿って移動するシリンダ装置35と、シリンダ装置35のロッド下端に固定されたアーム部36とを備え、アーム部36が蓋部材供給部32と移送手段11との間を移動するとともに、上下移動できるようになっている。
【0054】
そして、蓋部材移送機構33は、蓋部材供給部32に順次供給される蓋部材5を降下したアーム部36で掴み、シリンダ装置35をレール34に沿って移動させ、アーム部36を移送手段11上の容器本体2上に移動させる。
【0055】
そして、その位置でシリンダ装置35を動作させ、アーム部36を下降させるとともにアーム部36を開放し、容器本体2の上面に蓋部材5を被せ、容器本体2を蓋嵌合手段17に送り出す。
【0056】
蓋嵌合手段17は、蓋部材5の上面を押圧するプレス17aを備え、プレスの押圧によって容器本体2の上面開口部の外側に蓋部材5を嵌合させ、椎茸栽培用容器1の組立てが完了する。
【符号の説明】
【0057】
1 椎茸栽培用容器
2 容器本体
3 培地
4 シート
5 蓋部材
10 組立装置
11 移送手段
12 容器供給手段
13 培地投入手段
14 培地押圧手段
15 シート被せ手段
16 蓋被せ手段
17 蓋嵌合手段
18 ローラー
19 位置決め装置
20 送り出し部
21 貯留部
22 定量投入部
23 枠体
24 押圧機構
25 振動機構
26 シート収容部
27 シート移送機構
28 レール
29 シリンダ装置
30 フレーム
31 吸引具
32 蓋部材供給部