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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】電動弁用ステータ及び電動弁
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/00 20060101AFI20231122BHJP
【FI】
H02K5/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022159431
(22)【出願日】2022-10-03
(62)【分割の表示】P 2018215546の分割
【原出願日】2018-11-16
(65)【公開番号】P2022173516
(43)【公開日】2022-11-18
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】土井 琢郎
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-074245(JP,A)
【文献】特開2003-185302(JP,A)
【文献】特開2014-052037(JP,A)
【文献】特開2017-015104(JP,A)
【文献】特開2008-249148(JP,A)
【文献】特開2007-147013(JP,A)
【文献】特開2015-010659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ部の駆動により作動する弁装置に対して装着されて該弁装置側のマグネットロータと共に内装するコイルにより前記モータ部を構成する電動弁用ステータであって、前記弁装置を嵌め込む嵌挿孔を有するとともに、前記弁装置に係合して当該電動弁用ステータと前記弁装置とを固定する弾性部材を備え、
前記嵌挿孔の軸線回りの開口部の外周に前記コイルの前記軸線方向の端部より外側に固定ブロックが形成されるとともに、前記弾性部材は、前記弁装置と係合する弾性片と、前記固定ブロックに固定される基部とを有し、
前記基部は、前記固定ブロックを前記嵌挿孔の径方向に挟みつける外側板と内側板とを連結板で一体にした構造であり、
前記弾性部材には、前記弾性片の一部を切除した切除部分が設けられていることを特徴とする電動弁用ステータ。
【請求項2】
前記弾性片は、前記基部の側部から延設され、
前記弾性片には、前記弁装置の凹部に係合する凸部が設けられ、
前記切除部分は、前記凸部と干渉しない部分に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電動弁用ステータ。
【請求項3】
前記弾性片は、前記基部と反対側の一部を折り曲げることで形成された押圧部と、前記押圧部よりも前記基部側に形成される支点部と、前記支点部よりも前記基部側の一部を折り曲げることで形成された折り曲げ部と、を有し、
前記切除部分は、前記押圧部、前記支点部、および前記折り曲げ部のうち少なくともいずれかに設けられていることを特徴とする請求項2に記載の電動弁用ステータ。
【請求項4】
前記弾性片は、前記基部と反対側の一部を折り曲げることで形成された押圧部と、前記押圧部よりも前記基部側に形成される支点部と、前記支点部よりも前記基部側の一部を折り曲げることで形成された折り曲げ部と、を有し、
前記切除部分は、前記支点部および前記折り曲げ部の少なくとも一方を跨いで設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の電動弁用ステータ。
【請求項5】
前記切除部分は、前記弾性片の幅方向一方または他方に開口する切り欠き、または、前記弾性片の板厚方向に開口する開口であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の電動弁用ステータ。
【請求項6】
前記切除部分は、前記弾性片に少なくとも一箇所以上設けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の電動弁用ステータ。
【請求項7】
前記弾性部材は、前記切除部分の数、または大きさにより、前記弾性片の弾性力を調整可能であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の電動弁用ステータ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の電動弁用ステータを前記弁装置が備えることを特徴とする電動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機等の冷凍サイクルシステムなどに使用する電動弁用ステータ及びそれを備えた電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動弁として、ステッピングモータ等のモータ部のマグネットロータの回転により弁本体内の弁部材を作動させるものがある。このような電動弁では流体の流路を密閉する必要があり、弁本体と共に密閉構造をなす円筒形状のキャン内に、モータ部のマグネットロータを収容している。そして、モータ部のステータはキャンの外周に配置する構造となっている。例えば特開2015-10659号公報(特許文献1)や特開2017-15104号公報(特許文献2)に同様な電動弁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-10659号公報
【文献】特開2017-15104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、空気調和機の室外機の省スペース化が盛んであり、また、省エネ性の向上も重要視されており、室外機内の配管形状なども多様化して複雑になっている。このように複雑に配管された室外機内はスペースが狭いため、弁装置の形状に制約がある。特許文献1のものでは、ステータを固定するためのブラケットがステータの軸線回りの全周に設けられ、その分だけステータの外周が大きくなっている。特許文献2のものでは、ブラケットの弾性力によって、ブラケットが備える凸形状のブラケット係止部を、弁本体に形成されたドーム形状の凹み形状の係合部に係合するところ、ブラケットの弾性力が強すぎて、電磁アクチュエータ(ステータ)を弁本体に固定するための挿入時に、硬くて入れづらく、組立作業性が悪い場合があった。
【0005】
本発明は、弁装置のマグネットロータとともにモータ部を構成する電動弁用ステータにおいて、弁装置のキャン等の円筒部に固定するためのブラケットを改良し、ステータの弁装置への保持固定強度を維持しつつも、弁装置を軽く挿入できる様になり、組立性が向上する電動弁用ステータ、及び電動弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の電動弁用ステータは、モータ部の駆動により作動する弁装置に対して装着されて該弁装置側のマグネットロータと共に内装するコイルにより前記モータ部を構成する電動弁用ステータであって、前記弁装置を嵌め込む嵌挿孔を有するとともに、前記弁装置に係合して当該電動弁用ステータと前記弁装置とを固定する弾性部材を備え、前記嵌挿孔の軸線回りの開口部の外周に前記コイルの前記軸線方向の端部より外側に固定ブロックが形成されるとともに、前記弾性部材は、前記弁装置と係合する弾性片と、前記固定ブロックに固定される基部とを有し、前記基部は、前記固定ブロックを前記嵌挿孔の径方向に挟みつける外側板と内側板とを連結板で一体にした構造であり、前記弾性部材には、前記弾性片の一部を切除した切除部分が設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項2の電動弁用ステータは、請求項1に記載の電動弁用ステータであって、前記弾性片は、前記基部の側部から延設され、前記弾性片には、前記弁装置の凹部に係合する凸部が設けられ、前記切除部分は、前記凸部と干渉しない部分に設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項3の電動弁用ステータは、請求項2に記載の電動弁用ステータであって、前記弾性片は、前記基部と反対側の一部を折り曲げることで形成された押圧部と、前記押圧部よりも前記基部側に形成される支点部と、前記支点部よりも前記基部側の一部を折り曲げることで形成された折り曲げ部と、を有し、前記切除部分は、前記押圧部、前記支点部、および前記折り曲げ部のうち少なくともいずれかに設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項4の電動弁用ステータは、請求項2または3に記載の電動弁用ステータであって、前記弾性片は、前記基部と反対側の一部を折り曲げることで形成された押圧部と、前記押圧部よりも前記基部側に形成される支点部と、前記支点部よりも前記基部側の一部を折り曲げることで形成された折り曲げ部と、を有し、前記切除部分は、前記支点部および前記折り曲げ部の少なくとも一方を跨いで設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項5の電動弁用ステータは、請求項1~4のいずれか一項に記載の電動弁用ステータであって、前記切除部分は、前記弾性片の幅方向一方または他方に開口する切り欠き、または、前記弾性片の板厚方向に開口する開口であることを特徴とする。
請求項6の電動弁用ステータは、請求項1~5のいずれか一項に記載の電動弁用ステータであって、前記切除部分は、前記弾性片に少なくとも一箇所以上設けられていることを特徴とする。
請求項7の電動弁用ステータは、請求項1~6のいずれか一項に記載の電動弁用ステータであって、前記弾性部材は、前記切除部分の数、または大きさにより、前記弾性片の弾性力を調整可能であることを特徴とする。
請求項8の電動弁は、請求項1~7のいずれか一項に記載の電動弁用ステータを前記弁装置が備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1~7の電動弁用ステータによれば、ステータの弁装置への保持固定強度を維持しつつも、軽く挿入できる様になり、組立性が向上する電動弁用ステータを提供することができる。
【0012】
請求項8の電動弁によれば、請求項1~7と同様な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態の電動弁の一部断面側面図である。
図2】第1実施形態の電動弁用ステータの縦断面図及び底面図である。
図3】第1実施形態の電動弁用ステータのコイル部分の倒立外観図及び倒立底面図である。
図4】第1実施形態におけるブラケットを示す図である。
図5】第1実施形態における固定ブロックの周囲を示す図である。
図6】第1実施形態におけるブラケットを固定ブロックに組み付けた状態を示す図である。
図7】第1実施形態におけるブラケットとキャンとの係合状態を示す図である。
図8】第2実施形態の電動弁用ステータの要部拡大図である。
図9】実施形態におけるブラケットの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の電動弁用ステータ及び電動弁の実施形態を図面を参照して説明する。図1は第1実施形態の電動弁の一部断面側面図、図2は第1実施形態の電動弁用ステータの縦断面図及び底面図であり、図2(B)は図1のA-A断面図、図2(A)は図2(B)のB-B断面図である。図3は第1実施形態の電動弁用ステータのコイル部分の倒立外観図及び倒立底面図であり、図3(B)は図3(A)のブラケット取り付け前のE-E断面図である。図4は第1実施形態におけるブラケットを示す図、図5は第1実施形態における固定ブロックの周囲を示す図、図6は第1実施形態におけるブラケットを固定ブロックに組み付けた状態を示す図である。なお、以下の説明における「上下」の概念は図1の図面における上下に対応する。
【0015】
図1及び図2に示すように、この電動弁は、「弾性部材」としてのブラケット1と、「モータ部」としてのステッピングモータ20と、弁本体30と、非磁性体からなる円筒形状のキャン40とを備えている。ステッピングモータ20は、キャン40の外周に取り付けられた後述説明する「電動弁用ステータ」としてのステータ21と、キャン40の内部に回転可能に配設されたマグネットロータ22とで構成されている。なお、マグネットロータ22の外周面とキャン40の内周面との間には所定の隙間が設けられている。
【0016】
弁本体30はステンレス等のハウジング310を有し、このハウジング310の内部に弁部材等を内蔵している。そして、この弁本体30はステッピングモータ20の駆動(マグネットロータ22の回転)により作動し、第1継手管31から第2継手管32へ流れる流体の流量、または第2継手管32から第1継手管31へ流れる流体の流量を制御する。
【0017】
弁本体30のハウジング310の上端には、キャン40が溶接等によって気密に組み付けられ、これにより、弁本体30及びキャン40は「弁装置」を構成している。
【0018】
ステータ21は、樹脂製のボビン21aにコイル21b,21bを巻装することで、軸線L方向に一対のコイル部を積層して構成されている。また、ボビン21aには、磁極歯21dを持つ継鉄(ヨーク)21cがモールド成形により一体に組み付けられている。さらに、ステータ21は、中央に軸線Lを中心とする円柱形状の嵌挿孔21Hを有しており、この嵌挿孔21Hの内周面の一部に継鉄21cの磁極歯21dが配置されている。そして、この磁極歯21dはキャン40の外周面に対向配置されている。
【0019】
以上の構成により、ステッピングモータ20では、コイル21bへのパルス出力の印加によりコイル21bが磁力線を発生する。これにより、磁極歯21dに磁極(N、S極)が交互に変化し、マグネットロータ22に対して磁気吸引力及び磁気反発力を発生し、マグネットロータ22が回転する。これにより弁本体30内部の弁部材が作動し弁口の開度が可変に制御されることで、前記のように第1継手管31から第2継手管32へ、あるいは第2継手管32から第1継手管31へ流れる冷媒の流量が制御される。
【0020】
ステータ21のボビン21aの弁本体30側の底部には、嵌挿孔21Hの開口部21H1から弁本体30側に拡径された袴部21Kを有している。また、キャン40は軸線Lを中心軸とし、マグネットロータ22の外周に対向する小径部40Aと、小径部40Aから弁本体30側に拡径された大径部40Bとから構成されている。そして、ステータ21の嵌挿孔21H内にキャン40の小径部40Aが嵌め込まれるとともに、キャン40の大径部40Bが、開口部21H1の弁本体30側に位置する状態で、ステータ21の袴部21K内に、その一部が収容されている。これにより、ステータ21が弁装置に装着されている。ステータ21の底部には、「弾性部材」としてのブラケット1が取り付けられている。
【0021】
図4はブラケット1を示す図であり、図4(A)は図4(C)のF方向矢視図、図4(B)は図4(C)のG方向矢視図、図4(C)は図2(B)のブラケット1を抜き出した図である。図示のように、ブラケット1は、金属板のプレス加工等により形成され、3つの板状部からなる溝構造の基部11と、基部11と一体に該基部11の側部から延設された弾性片12とを有している。基部11は、外側板11aと対向して上記弾性片12が延設された内側板11bと、外側板11aと内側板11bとを連結する連結板11cとで構成されている。外側板11aは、軸線Lと平行な両側に軸線Lと交差する方向(軸線L回りの周方向)に突出する一対の係止アーム11a1,11a1を有している。また、内側板11bは基部11の内側に切り出された爪11b1を有している。弾性片12は、この弾性片12と一体に形成された「第一係合部」としての凸部12aと、弾性片12の基部
11とは反対側の一部を折り曲げることで形成された押圧部12bと支点部12cとを有している。
【0022】
ステータ21の袴部21Kの一部には、ボビン21aによって略直方体状の固定ブロック21Bが形成されている。すなわち、この固定ブロック21Bは、嵌挿孔21Hの軸線L回りの開口部21H1の外周に形成されるとともに、ボビン21aにおいてコイル21bの軸線L方向の端部より外側に形成されている。図5は固定ブロック21Bの周囲を示す図であり、図5(B)は図5(A)のC-C断面図である。また、図5(C)は図5(A)のH-H矢視図である。この固定ブロック21Bを構成するボビン21aにおいて固定ブロック21Bの内側(軸線L側)にはスリット51が形成され、固定ブロック21Bの外側には嵌め込み溝52が形成されている。また、固定ブロック21Bの外側(軸線Lと反対側の側部)には、テーパ面53aを有する一対の突起53,53が形成されており、この一対の突起53,53の間には、ブラケット1の外側板11aが嵌合する凹部54が形成されている。そして、固定ブロック21Bにブラケット1が取り付けられている。なお、図5(C)の様に、ボビン21aにおいて嵌め込み溝52と、一対の突起53,53で構成された縦長の穴部は、ブラケット取り付け後も穴として残り、モールド材を充填する際、気泡が穴から抜けやすく、充填部分においてモールド材が流れやすくなるという効果がある。
【0023】
固定ブロック21Bに対するブラケット1の取り付け時には、固定ブロック21Bの内側のスリット51にブラケット1の内側板11bと爪11b1を嵌め込むとともに、外側板11aを固定ブロック21Bの外側に嵌め込む。このとき、基部11の弾性力に抗して外側板11aと内側板11bとを僅かに開き、外側板11aの係止アーム11a1,11a1を突起53,53のテーパ面53a,53a上を摺動させる。そして、係止アーム11a1,11a1が突起53,53を乗り越えるようにして、基部11の弾性回復力により、図6に示すように、外側板11aを凹部54内に嵌合させるとともに、係止アーム11a1,11a1を突起53,53の係合端53b,53bに係合させる。
【0024】
これにより、突起53,53の係合端53b,53bと係止アーム11a1,11a1とは、基部11が固定ブロック21Bから離間する方向への外側板11aの移動を規制する。なお、ブラケット1の自然状態(図4(A)において、外側板11aと連結板11cとの内角αは、α<90°の関係に設定されており、固定ブロック21Bは略直方体であり、固定ブロック21Bの上面21B1と固定ブロック21Bの側面(凹部54)は略直角となっている。これにより、ブラケット1の取り付け状態では、その基部11の弾性力により外側板11aと内側板11bが固定ブロック21Bを挟み付けるように作用している。また、ボビン21aは樹脂製であり、ブラケット1の取り付け状態では、内側板11bの爪11b1が固定ブロック21Bの内側壁面に食い込むようになる。これにより、ブラケット1は固定ブロック21Bから軸線L方向の抜けが防止されるとともに、固定ブロック21Bに堅牢に固定される。このように、この実施形態では、ブラケット1の外側板11aの係止アーム11a1が「係止片」、固定ブロック2の突起53が「突部」の例であり、係止アーム11a1と突起53とで「固定構造」が構成されており、この係止アーム11a1と突起53とは、固定ブロック21Bの軸線L方向の幅W1内に位置している。幅W1は、図6における固定ブロック21Bの上面21B1と固定ブロック21Bの下面21B2の間の長さであり、コイル21b(巻線)の端面21B3と下面21B2の間の長さW2の分だけ、下面21B2からコイル21b(巻線)までの距離が離れているので、幅W1内に係止アーム11a1が位置していれば、係止アーム11a1とコイル21b(巻線)との距離は長さW2の分だけ遠くなる。
【0025】
以上のようにブラケット1はステータ21に取り付けられた状態で、弾性片12は、ステータ21の嵌挿孔21Hの開口部21H1の周囲の外側にある袴部21K内において、開口部21H1を臨む位置に配置される。また、図2(B)に示すように、弾性片12の凸部12aは、ステータ21の袴部21Kの中心側(軸線L側)に突出している。さらに、図1に示すように、キャン40は大径部40Bの外周に、ブラケット1の凸部12aに係合する形状をした凹部40aが複数形成されている。この実施形態では5つ形成されている。
【0026】
図7はブラケット1とキャン40との係合状態を示す図であり、ブラケット1の凸部12aとキャン40の凹部40aとは、ステータ21が弁装置に組み付けた状態で係合する。これにより、キャン40に対して、ステータ21の軸線L回りの位置決めがなされるとともに、ステータ21は軸線L方向の抜け防止をされた状態でキャン40に取り付けられている。また、図7に示すように、弾性片12は、押圧部12bをキャン40の外周に当接させた状態で、支点部12cを袴部21Kの内周に当接される。これにより、弾性片12は、この弾性片12の自己の弾性力により、支点部12cを支点としてキャン40を押圧している。これにより、弾性片12と開口部21H1の弾性片12とは反対側の対向内壁とでキャン40を挟み付けた状態となっている。
【0027】
以上のように、この実施形態では、弾性部材としてのブラケット1は、弁装置と係合する弾性片12と、固定ブロック21Bに固定される基部11とを有し、基部11は、固定ブロック21Bを嵌挿孔21Hの径方向に挟みつける外側板11aと内側板11bとを連結板11cで一体にした構造である。また、固定ブロック21Bと基部11の外側板11aとにより、固定ブロック21Bの軸線L方向の幅W1内に位置し、固定ブロック21Bに対して基部11の軸線L方向への移動を規制する固定構造を備えている。そして、固定ブロック21Bはコイル21bの軸線L方向の端部より外側に形成され、固定ブロック21Bに対してブラケット1の基部11の軸線L方向への移動を規制する固定構造は、この固定ブロック21Bと基部11の外側板11aとにより構成されるとともに、この固定構造は、固定ブロック21Bの軸線L方向の幅W1内に位置しているので、ブラケット1の基部11の一部(外側板11a等)がコイル21b側に突出することがなく、コイル21
bの損傷を防止できるとともに、ブラケット1からの浸水による絶縁性の劣化を防止できる。
【0028】
なお、この実施形態では、図4に示すように、ブラケット1において係止アーム11a1の付け根部には円弧状の切り欠き11a2が形成されている。これにより係止アーム11a1の水平なストレート部を突起53,53の係合端53b,53bに対して確実に当接させることができる。また、外側板11aの係止アーム11a1を含む端部は、切り欠き11a2の中程において外側に僅かに折り曲げられている。これにより、係止アーム11a1をテーパ面53a,53a上でスムースに摺動させることができる。
【0029】
図8は第2実施形態の電動弁用ステータの要部拡大図であり、図8に図した部分以外は第1実施形態と同様構成である。また、第1実施形態と同様な要素は同様な作用効果を奏するものであり、図1乃至図7と同符号を付記して重複する説明は適宜省略する。この第2実施形態と第1実施形態との違いは固定構造であり、第2実施形態では、ブラケット1の基部11における外側板11aに矩形の孔11a3を形成し、固定ブロック21Bの外側の側部に矩形の突起55を形成したものである。そして、基部11を固定ブロック21Bに嵌め込んだとき、外側板11aの孔11a3内に突起55を係合させる。これにより、突起55の係合端55bと孔11a3の外側の外周片11a4とは、基部11が固定ブロック21Bから離間する方向への外側板11aの移動を規制する。この実施形態では、外側板11aの外周片11a4が「係止片」、固定ブロック2の突起55が「突部」の例である。そして、外周片11a4と突起55とで「固定構造」が構成されており、この外周片11a4と突起55とは、固定ブロック21Bの軸線L方向の幅W1内に位置している。
【0030】
なお、以上の実施形態におけるブラケット1ではその弾性片12の一部に切除部分12Aが形成されている。これは、ブラケット1においては凸部12aを設けるために弾性片12はある程度の幅が必要であったが、特許文献2に示す電磁アクチュエータのブラケットでは、切除部分がないので、ブラケットの弾性力が強すぎて、電磁アクチュエータを弁本体に固定するための挿入時に、硬くて入れづらく、組立作業性が悪い場合があった。しかし、実施形態では、凸部12aと干渉しない部分に切除部分12Aを設けることで、弾性片12の弾性力を調整することができるため、ステータの弁装置への保持固定強度を維持しつつも、軽く挿入できる様になり、組立性が向上する。特に、切除部分は、ブラケットの折り曲げ部である支点部12cや折り曲げ部12dを跨ぐ様に設けると効果的である。また、切除部分の幅や高さや数を変えることで、弾性力を自在に調整可能である。図9はブラケット1の変形例を示す図であり、図9(B)は図9(A)のD-D断面図である。この変形例のブラケット1は押圧部12bの部分に開口を設けることで切除部分12A′としたものである。すなわち、弾性力調整用の切除部分は切り欠でもよいし、孔でもよい。また、図9に示すブラケットは支点部12c、折り曲げ部12dに切り欠き(切除部分)を設け、押圧部12bに開口(切除部分)を設け、3箇所で弾性力を調整しているが、このような切除部分は、3箇所に限らず、1箇所でも2箇所でもよい。また、各切除部分の大きさを調整することで、弾性力を調整可能なことはいうまでもない。
【0031】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0032】
1 ブラケット(弾性部材)
11 基部
11a 外側板
11b 内側板
11c 連結板
11a1 係止アーム(係止片)
12 弾性片
12a 凸部
51 スリット
52 嵌め込み溝
53 突起(突部)
53a テーパ面
53b 係合端
54 凹部
20 ステッピングモータ(モータ部)
21 ステータ(電動弁用ステータ)
21a ボビン
21b コイル
21H 嵌挿孔
21H1 開口部
21K 袴部
21B 固定ブロック
22 マグネットロータ
30 弁本体(弁装置)
40 キャン(弁装置、円筒部)
40A 小径部
40B 大径部
L 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9