(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】地表点抽出装置、地表点抽出方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06V 20/17 20220101AFI20231122BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20231122BHJP
【FI】
G06V20/17
G06T7/00 C
G06T7/00 640
(21)【出願番号】P 2022185717
(22)【出願日】2022-11-21
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207778
【氏名又は名称】阿形 直起
(72)【発明者】
【氏名】李 勇鶴
(72)【発明者】
【氏名】坂元 光輝
【審査官】千葉 久博
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-149063(JP,A)
【文献】特開2011-158278(JP,A)
【文献】特開2004-272688(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111985496(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06V 20/17
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体から対象領域を計測して得られた3次元点群に含まれる複数の構成点を取得する取得手段と、
前記対象領域を複数の単位領域に区分する区分手段と、
前記複数の構成点のそれぞれについて、当該構成点の高度の低さに応じた指標を算出し、前記指標に基づいて、前記区分された各単位領域に含まれる構成点のうちから各単位領域の代表点を設定する設定手段と、
前記複数の単位領域のうちから傾斜変化点を含む単位領域を検出する検出手段と、
前記傾斜変化点を含む単位領域の代表点の重みが前記傾斜変化点を含まない単位領域の代表点の重みよりも大きくなるようにして各単位領域の代表点から近似曲面を算出する算出手段と、
前記近似曲面に対する相対高度が所定範囲である構成点を、地表を示す地表点として抽出する抽出手段と、
を有
し、
前記検出手段は、各単位領域について、当該単位領域の代表点と当該単位領域の周囲の単位領域の代表点とから二つの近似平面を算出し、前記二つの近似平面の傾斜角度に基づいて当該単位領域が前記傾斜変化点を含むか否かを判定する、
ことを特徴とする地表点抽出装置。
【請求項2】
前記算出手段は、
前記傾斜変化点を含む単位領域の代表点の重みが、前記傾斜変化点を含まない単位領域の代表点の重みよりも大きくなるようにして仮の近似曲面を算出し、
前記算出された仮の近似曲面に対する相対高度が高い代表点ほど重みが小さくなるようにして前記近似曲面を算出する、
請求項1に記載の地表点抽出装置。
【請求項3】
前記検出手段は、各単位領域について、当該単位領域が前記二つの近似平面の境界を含み、かつ前記二つの近似平面がなす角の角度が所定角度以上である場合に、当該単位領域が前記傾斜変化点を含むと判定する、
請求項
1または2に記載の地表点抽出装置。
【請求項4】
前記検出手段は、各単位領域について、当該単位領域が前記二つの近似平面の境界を含み、かつ前記二つの近似平面のうちの一方の近似平面の傾斜角度が0度を含む所定角度範囲内であり他方の近似平面の傾斜角度が所定傾斜角度以上である場合に、当該単位領域が前記傾斜変化点を含むと判定する、
請求項
1または2に記載の地表点抽出装置。
【請求項5】
コンピュータによって実行される地表点抽出方法であって、
飛行体から対象領域を計測して得られた3次元点群に含まれる複数の構成点を取得し、
前記対象領域を複数の単位領域に区分し、
前記複数の構成点のそれぞれについて、当該構成点の高度の低さに応じた指標を算出し、前記指標に基づいて、前記区分された各単位領域に含まれる構成点のうちのいずれかを各単位領域の代表点に設定し、
前記複数の単位領域のうちから傾斜変化点を含む単位領域を検出し、
前記傾斜変化点を含む単位領域の代表点の重みが前記傾斜変化点を含まない単位領域の代表点の重みよりも大きくなるようにして各単位領域の代表点から近似曲面を算出し、
前記近似曲面に対する相対高度が所定範囲である構成点を、地表を示す地表点として抽出する、
ことを含
み、
前記検出において、各単位領域について、当該単位領域の代表点と当該単位領域の周囲の単位領域の代表点とから二つの近似平面を算出し、前記二つの近似平面の傾斜角度に基づいて当該単位領域が前記傾斜変化点を含むか否かを判定する、
ことを特徴とする地表点抽出方法。
【請求項6】
飛行体から対象領域を計測して得られた3次元点群に含まれる複数の構成点を取得し、
前記対象領域を複数の単位領域に区分し、
前記複数の構成点のそれぞれについて、当該
構成点の高度の低さに応じた指標を算出し、前記指標に基づいて、前記区分された各単位領域に含まれる構成点のうちのいずれかを各単位領域の代表点に設定し、
前記複数の単位領域のうちから傾斜変化点を含む単位領域を検出し、
前記傾斜変化点を含む単位領域の代表点の重みが前記傾斜変化点を含まない単位領域の代表点の重みよりも大きくなるようにして各単位領域の代表点から近似曲面を算出し、
前記近似曲面に対する相対高度が所定範囲である構成点を、地表を示す地表点として抽出する、
ことをコンピュータに実行させ
、
前記検出において、各単位領域について、当該単位領域の代表点と当該単位領域の周囲の単位領域の代表点とから二つの近似平面を算出し、前記二つの近似平面の傾斜角度に基づいて当該単位領域が前記傾斜変化点を含むか否かを判定する、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地表点抽出装置、地表点抽出方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
DEM(Digital Elevation Model)の生成等を目的として航空レーザ測量等により得られた3次元点群から地表点を抽出する、フィルタリングと呼ばれる技術が知られている。
【0003】
非特許文献1には、MCC(Multiscale Curvature Classification)と呼ばれるフィルタリング技術が記載されている。MCCでは、処理対象の地理的領域に設定されるウィンドウ内の3次元点群の近似曲面が算出され、近似曲面よりも高度が一定以上高い点が非地表点として除外される。ウィンドウを段階的に大きくしながら近似曲面の算出および非地表点の除外が繰り返され、最後まで除外されずに残った点が地表点として抽出される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】A Multiscale Curvature Algorithm for Classifying Discrete Return LiDAR in Forested Environments, S. Evans and T. Hudak, IEEE TRANSACTIONS ON GEOSCIENCE AND REMOTE SENSING, VOL. 45, NO. 4,2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
MCCでは、ウィンドウ内に地表面の傾斜が急変する領域が存在する場合に、近似曲面が地表面を適切に近似することができず、地表点の抽出漏れが生じる場合がある。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、3次元点群から地表点を高精度に抽出することを可能とする地表点抽出装置、地表点抽出方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る地表点抽出方法は、飛行体から対象領域を計測して得られた3次元点群に含まれる複数の構成点を取得する取得手段と、対象領域を複数の単位領域に区分する区分手段と、複数の構成点のそれぞれについて、候補点の高度の低さに応じた指標を算出し、指標に基づいて、区分された各単位領域に含まれる構成点のうちから各単位領域の代表点を設定する設定手段と、複数の単位領域のうちから傾斜変化点を含む単位領域を検出する検出手段と、傾斜変化点を含む単位領域の代表点の重みが傾斜変化点を含まない単位領域の代表点の重みよりも大きくなるようにして各単位領域の代表点から近似曲面を算出する算出手段と、近似曲面に対する相対高度が所定範囲である構成点を、地表を示す地表点として抽出する抽出手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、算出手段は、傾斜変化点を含む単位領域の代表点の重みが、傾斜変化点を含まない単位領域の代表点の重みよりも大きくなるようにして仮の近似曲面を算出し、算出された仮の近似曲面に対する相対高度が高い代表点ほど重みが小さくなるようにして近似曲面を算出することが好ましい。
【0009】
また、検出手段は、各単位領域について、単位領域の代表点と単位領域の周囲の単位領域の代表点とから二つの近似平面を算出し、二つの近似平面の傾斜角度に基づいて単位領域が傾斜変化点を含むか否かを判定することが好ましい。
【0010】
また、検出手段は、各単位領域について、単位領域が二つの近似平面の境界を含み、かつ二つの近似平面がなす角の角度が所定角度以上である場合に、単位領域が傾斜変化点を含むと判定することが好ましい。
【0011】
また、検出手段は、各単位領域について、単位領域が二つの近似平面の境界を含み、かつ二つの近似平面のうちの一方の近似平面の傾斜角度が0度を含む所定角度範囲内であり他方の近似平面の傾斜角度が所定傾斜角度以上である場合に、単位領域が傾斜変化点を含むと判定することが好ましい。
【0012】
本発明の実施形態に係る地表点抽出方法は、飛行体から対象領域を計測して得られた3次元点群に含まれる複数の構成点を取得し、対象領域を複数の単位領域に区分し、複数の構成点のそれぞれについて、構成点の高度の低さに応じた指標を算出し、指標に基づいて、区分された各単位領域に含まれる候補点のうちから各単位領域の代表点を設定し、複数の単位領域のうちから傾斜変化点を含む単位領域を検出し、傾斜変化点を含む単位領域の代表点の重みが傾斜変化点を含まない単位領域の代表点の重みよりも大きくなるようにして各単位領域の代表点から近似曲面を算出し、近似曲面に対する相対高度が所定範囲である構成点を、地表を示す地表点として抽出する、ことを含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の実施形態に係るプログラムは、飛行体から対象領域を計測して得られた3次元点群に含まれる複数の構成点を取得し、対象領域を複数の単位領域に区分し、複数の構成点のそれぞれについて、構成点の高度の低さに応じた指標を算出し、指標に基づいて、区分された各単位領域に含まれる候補点のうちから各単位領域の代表点を設定し、複数の単位領域のうちから傾斜変化点を含む単位領域を検出し、傾斜変化点を含む単位領域の代表点の重みが傾斜変化点を含まない単位領域の代表点の重みよりも大きくなるようにして各単位領域の代表点から近似曲面を算出し、近似曲面に対する相対高度が所定範囲である構成点を、地表を示す地表点として抽出する、ことをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る地表点抽出装置、地表点抽出方法およびプログラムは、3次元点群から地表点を高精度に抽出することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】構成点テーブルT1のデータ構造の例を示す図である。
【
図3】地表点抽出処理の流れの例を示すフロー図である。
【
図4】単位領域およびグループの設定について説明するための模式図である。
【
図5】代表点設定処理の流れの例を示すフロー図である。
【
図6】指標の算出および代表点の設定について説明するための模式図である。
【
図8】近似平面の傾斜角度に関する条件について説明するための模式図である。
【
図9】近似曲面算出処理の流れの例を示すフロー図である。
【
図10】(A)および(B)は、近似曲面の算出について説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の様々な実施形態について説明する。本発明の技術的範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る地表点抽出装置1の機能ブロック図である。地表点抽出装置1は、飛行体から対象領域を計測して得られた3次元点群を構成する点のうちから地表を示す地表点を抽出する。3次元点群は、飛行体から対象領域の地表面に向けてレーザを照射したときの反射点の位置を算出することにより得られる。レーザは対象領域の樹木や建造物のような地物でも反射されるため、3次元点群には、地表面を示す地表点と地表面以外の地物を示す非地表点とが含まれる。すなわち、地表点抽出装置1は、地表点と非地表点とを含む3次元点群から地表点のみを抽出する。地表点抽出装置1は、記憶部11、通信部12、表示部13、操作部14および処理部15を有する。
【0018】
記憶部11は、プログラムおよびデータを記憶するための構成であり、例えば半導体メモリを備える。記憶部11は、プログラムとして、処理部15による処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム等を記憶する。プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)等のコンピュータ読取可能かつ非一時的な可搬型記憶媒体から記憶部11にインストールされる。
【0019】
通信部12は、地表点抽出装置1を他の装置と通信可能にする構成であり、通信インタフェース回路を備える。通信部12が備える通信インタフェース回路は、有線LAN(Local Area Network)又は無線LAN等の通信インタフェース回路である。通信部12は、データを他の装置から受信して処理部15に供給するとともに、処理部15から供給されたデータを他の装置に送信する。
【0020】
表示部13は、画像を表示するための構成であり、例えば液晶ディスプレイまたは有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイを備える。表示部13は、処理部15から供給された表示データに基づいて画像を表示する。
【0021】
操作部14は、地表点抽出装置1に対する操作を受け付けるための構成であり、例えばキーボード、キーパッド、マウス等を備える。操作部14は、表示部13と一体化されたタッチパネルでもよい。操作部14は、受け付けた操作に応じた操作信号を生成して処理部15に供給する。
【0022】
処理部15は、地表点抽出装置1の動作を統括的に制御する構成であり、一つまたは複数のプロセッサおよびその周辺回路を備える。処理部15は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を備える。処理部15は、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等を備えてもよい。処理部15は、記憶部11に記憶されているプログラムに基づいて地表点抽出装置1の各種処理が適切な手順で実行されるように、各構成の動作を制御するとともに、各種の処理を実行する。
【0023】
処理部15は、取得部151、区分部152、選択部153、設定部154、検出部155、算出部156、候補点抽出部157、地表点抽出部158および出力部159を機能ブロックとして備える。これらの各部は、処理部15が実行するプログラムによって実現される機能モジュールである。これらの各部は、ファームウェアとして地表点抽出装置1に実装されてもよい。取得部151、区分部152、選択部153、設定部154、検出部155、算出部156、候補点抽出部157、地表点抽出部158および出力部159は、それぞれ取得手段、区分手段、選択手段、設定手段、検出手段、算出手段、候補点抽出手段、地表点抽出手段および出力手段の一例である。
【0024】
図2は、記憶部11に記憶される構成点テーブルT1のデータ構造の例を示す図である。構成点は、3次元点群を構成する点である。構成点テーブルT1は、構成点ID、座標およびパルス種別を相互に関連付けて記憶する。
【0025】
構成点IDは、3次元点群を構成する構成点のそれぞれを識別する情報である。座標は、構成点の位置を示す3次元座標であり、例えば平面直角座標系で規定される。なお、以降では、3次元座標のうち、x座標またはy座標によって規定される位置を水平位置と称し、z座標によって規定される位置を高度と称することがある。パルス種別として、ファーストパルス、中間パルスおよびラストパルスのうちのいずれか1つが記憶される。
【0026】
構成点テーブルT1の各データは、飛行体から対象領域を計測して得られた計測データに基づいてあらかじめ生成される。飛行体には、GNSS(Global Navigation Satellite System)、IMU(Inertial Measurement Unit)およびレーザ計測器が搭載される。レーザ計測器は、対象領域に向けてレーザを照射してその反射光を検出することにより反射点までの距離を計測する。GNSSおよびIMUによる計測結果に基づく飛行体の位置および姿勢と、レーザ計測器によって計測された反射点までの距離とに基づいて、反射点である構成点の位置が算出される。
【0027】
レーザ計測器から照射されたレーザが複数の反射点で反射され、複数の反射光が検出されることがある。この場合、最初に検出された反射光がファーストパルスであり、最後に検出された反射光がラストパルスであり、ファーストパルスとラストパルスとの間に検出された反射光が中間パルスである。一般に、ファーストパルスおよび中間パルスの反射点はラストパルスの反射点よりも上方であるため、ファーストパルス、中間パルスおよびラストパルスのうち、地表点で反射した可能性が最も高いのはラストパルスである。なお、一回のレーザの照射に対して1つの反射光のみが検出された場合、その反射光はラストパルスであるものとする。
【0028】
パルス種別に代えて、一回のレーザの照射に対して検出された複数の反射光のうち何番目の反射光であるかを示す反射順が記憶されてもよい。この場合、反射順の値が1である反射光がファーストパルスであり、反射順の値が最大である反射光がラストパルスであり、他の反射光が中間パルスである。
【0029】
図3は、地表点抽出装置1によって実行される地表点抽出処理の流れの例を示すフロー図である。地表点抽出処理は、記憶部11に記憶されたプログラムに基づいて、処理部15が地表点抽出装置1の他の構成と協働することにより実現される。
【0030】
以下では、地表点抽出処理の流れの概略について説明する。
【0031】
最初に、対象領域が複数の単位領域に区分される。また、対象領域に含まれる構成点の少なくとも一部が候補点に設定される。例えば、構成点テーブルT1に記憶された構成点のうちラストパルスに対応する構成点が候補点に設定される。次に、候補点の高度に基づいて、地表点である可能性が高い候補点が各単位領域の代表点に設定される。次に、代表点の高度に基づいて、地表面の傾斜が急変する傾斜変化点を含む単位領域が検出される。次に、傾斜変化点を含む単位領域の代表点の重みが他の代表点の重みよりも大きくなるようにして、代表点の近似曲面が算出される。次に、近似曲面に対する相対高度が所定範囲である構成点が候補点として抽出される。所定範囲は、例えば、所定の閾値未満の範囲である。相対高度が高い候補点は、地表面よりも上方の樹木や建造物で反射された反射点に対応し、非地表点である可能性が高いため、相対高度が低い構成点が候補点として抽出される。処理対象の領域を段階的に縮小するとともに、相対高度の所定範囲の閾値を減少させながら上述の処理が繰り返される。構成点テーブルT1に記憶された構成点のうち、最終段階において近似曲面に対する相対高度が所定範囲である構成点が地表点として抽出される。
【0032】
単位領域の候補点の多くが非地表点である場合には、非地表点が代表点に設定される可能性が高くなり、地表面の形状が適切に反映された近似曲面を算出することができない場合がある。しかし、単位領域を最初に広く設定することにより、最初の段階における単位領域のそれぞれに地表点が含まれる可能性が高くなる。そして、最初の段階において非地表点を候補点から除外することにより、後段階では地表点である候補点の割合が多くなり、地表面の形状が適切に反映された近似曲面が算出される。したがって、単位領域が段階的に縮小されることにより、非地表点が密集している領域を含む3次元点群から地表点を高精度に抽出することが可能となる。
【0033】
また、一般に、近似曲面は傾斜が連続的に変化する面として算出されるため、地表面の傾斜が急変する領域においては地表面の形状を適切に反映することができない場合がある。しかし、傾斜変化点を含む単位領域の代表点に大きい重みを設定することにより、地表面の傾斜が急変する領域においても地表面の形状が近似曲面に適切に反映されるようになる。したがって、傾斜変化点を含む単位領域の代表点の重みが大きく設定されることにより、傾斜が急変する領域を含む3次元点群から地表点を高精度に抽出することが可能となる。
【0034】
以下では、地表点抽出処理の流れの詳細について説明する。
【0035】
最初に、取得部151は、地表点を抽出する対象となる対象領域および複数の構成点を取得するとともに、複数の構成点を候補点に設定する(ステップS101)。例えば、取得部151は、操作部14に対する利用者の操作によって指定された地理的領域を対象領域として取得する。対象領域は任意の形状の領域であってよいが、以下では矩形領域であるものとする。また、取得部151は、構成点テーブルT1に記憶された構成点のうち、対象領域に含まれる構成点を取得する。対象領域に含まれる構成点は、x座標およびy座標によって規定される候補点の水平位置が対象領域に含まれる構成点である。
【0036】
取得部151は、操作部14に対する利用者の操作によって指定された計測データに基づく全ての構成点の水平位置を包含する地理的領域を対象領域として取得してもよい。その場合、対象領域は、後述する単位領域の辺の長さの倍数である長さの辺を有する矩形領域であるのが好ましい。また、取得部151は、通信部12を介して他の装置から対象領域および構成点を取得してもよい。
【0037】
取得部151は、複数の構成点のうちの少なくとも一部の構成点を候補点に設定する。例えば、取得部151は、対象領域に含まれる構成点のうち、ラストパルスに対応する構成点を候補点に設定する。
【0038】
次に、区分部152は、対象領域を複数の単位領域に区分する(ステップS102)。単位領域は任意の形状の領域であってよいが、以下では矩形領域であるものとする。また、区分部152は、相互に隣接する所定個数の単位領域からなる複数のグループを設定する。
【0039】
図4(A)および(B)は、単位領域およびグループの設定について説明するための模式図である。
図4(A)は、最初の段階における単位領域およびグループについて示している。
図4(A)に示す例では、正方形である対象領域Tが16個(4×4個)の単位領域U1に区分されており、各単位領域の境界が破線により図示されている。また、相互に隣接する4個(2×2個)の単位領域U1からなるグループG1が設定されており、各グループの境界が実線により図示されている。
【0040】
ステップS102-S109の処理は、単位領域の大きさを段階的に縮小させながら繰り返し実行される。
図4(B)は、
図4(A)の次の段階における単位領域およびグループについて示している。
図4(B)に示す例では、2段階目の単位領域U2(2回目に実行されるステップS102において設定される単位領域)は1段階目の単位領域U1(1回目に実行されるステップS102において設定される単位領域)の半分の大きさ(4分の1の面積)に設定されている。これにより、対象領域Tは64個(8×8個)の単位領域U2に区分されている。すなわち、対象領域Tは、二段階目以降において、直前の段階における単位領域U1よりも小さい複数の単位領域U2に区分される。また、相互に隣接する4個(2×2個)の単位領域U2からなるグループG2が設定されている。このように、単位領域は後段階の単位領域が前段階の単位領域よりも小さくなるように設定され、グループは各段階において同一の数の単位領域からなるように設定される。したがって、グループが段階的に縮小される。
【0041】
段階数、各段階における単位領域の大きさ、グループを構成する単位領域の数は、任意に設定されてよい。段階数は、例えば6段階に設定される。この場合、各段階における単位領域は、例えば四辺がそれぞれ32m、16m、8m、4m、2m、1mの矩形領域に設定される。また、グループを構成する単位領域の数は、例えば100個(10×10個)に設定される。このような例に限られず、段階数は、非地表点が地表点として誤抽出(過剰抽出)される可能性が小さくなるように事前の実験を通じて適宜に設定されてよい。単位領域の大きさ、特に最初の段階における単位領域の大きさは、非地表点が密集し得る建造物の大きさや樹木の密集部の広さを考慮して適宜に設定されてよい。グループを構成する単位領域の数は、近似曲面の精度と近似曲面の算出処理の負荷とのトレードオフを考慮して適宜に設定されてよい。
【0042】
なお、
図4(A)および(B)に示す例では、2段階目の単位領域U2は、1段階目の単位領域U1の半分の大きさを有し、1段階目の単位領域U1を4つに区分したものとなっている。すなわち、後段階の単位領域は前段階の単位領域を区分することにより設定されている。このような例に限られず、後段階の単位領域は前段階の単位領域にかかわらずに設定されてよい。例えば、単位領域が直前の単位領域の0.9倍の大きさに設定される場合には、後段階の単位領域は前段階の単位領域を区分したものではなくなる。
【0043】
図3に戻り、次に、選択部153は、処理対象となるグループを選択する(ステップS103)。選択部153は、ステップS102で設定された複数のグループのうち、まだ処理対象として選択されていないグループを処理対象のグループとして選択する。
【0044】
次に、設定部154は、処理対象のグループの各単位領域に含まれる候補点のうちから代表点を設定する代表点設定処理を実行する(ステップS104)。代表点設定処理の詳細は後述する。
【0045】
次に、検出部155は、傾斜変化点を含む単位領域を検出する検出処理を実行する(ステップS105)。検出処理の詳細は後述する。
【0046】
次に、算出部156は、各単位領域の代表点から近似曲面を算出する近似曲面算出処理を実行する(ステップS106)。近似曲面算出処理の詳細は後述する。
【0047】
次に、選択部153は、ステップS102で設定された全てのグループが処理対象のグループとして選択されたか否かを判定する(ステップS107)。
【0048】
全てのグループが処理対象のグループとして選択されていない場合(ステップS107-No)、地表点抽出処理はステップS103に戻り、選択部153は、まだ処理対象として選択されていないグループを処理対象のグループとして選択する。
【0049】
全てのグループが処理対象のグループとして選択された場合(ステップS107-Yes)、候補点抽出部157は、最終段階の処理が実行されたか否かを判定する(ステップS108)。候補点抽出部157は、ステップS102-S107の処理が予め設定された段階数だけ実行された場合に、最終段階の処理が実行されたと判定する。
【0050】
まだ最終段階の処理が実行されていない場合(ステップS108-No)、候補点抽出部157は、ステップS101で取得された構成点のうち、現段階において算出された近似曲面に対する相対高度が所定範囲である構成点を候補点として抽出する(ステップS109)。相対高度は、構成点の高度から、構成点と同一の水平位置における近似曲面の高度を減じた値である。所定範囲は、例えば、所定の閾値未満の範囲である。この場合、閾値は、段階的に小さくなるように設定される。すなわち、閾値は、二段階目以降において、直前の段階の閾値よりも小さくなるように設定される。例えば、閾値は、直前の段階の閾値の半分となるように設定される。
【0051】
ステップS108の後に、地表点抽出処理はステップS102に戻り、区分部152は、対象領域を次段階の大きさの単位領域に区分する。また、区分部152は、相互に隣接する所定個数の単位領域からなる複数のグループを設定する。
【0052】
最終段階の処理が実行された場合(ステップS108-Yes)、地表点抽出部158は、ステップS101で取得された複数の構成点のうち、最終段階において各グループについて算出された近似曲面に対する相対高度が所定範囲である構成点を地表点として抽出する(ステップS110)。所定範囲は、例えば、所定の閾値未満の範囲である。閾値は、直前の段階のステップS109における閾値よりも小さくなるように設定されてもよく、ステップS109における閾値にかかわらずあらかじめ設定されてもよい。
【0053】
次に、出力部159は、抽出された地表点を出力する(ステップS111)。例えば、出力部159は、通信部12を介して、抽出された地表点のデータを他の装置に送信する。出力部159は、抽出された地表点を表示部13に表示してもよい。以上で、地表点抽出処理が終了する。
【0054】
図5は、代表点設定処理の流れの例を示すフロー図である。代表点設定処理は、処理対象のグループの各単位領域に含まれる候補点のうちから代表点を設定する処理である。代表点設定処理は、地表点抽出処理のステップS104において実行される。
【0055】
最初に、設定部154は、代表点を設定する対象となる処理対象の単位領域を選択する(ステップS201)。設定部154は、処理対象のグループの単位領域のうち、まだ処理対象として選択されていない単位領域を処理対象の単位領域として選択する。
【0056】
次に、設定部154は、処理対象の単位領域に候補点が含まれるか否かを判定する(ステップS202)。設定部154は、処理対象の単位領域に構成点テーブルT1に記憶されているいずれかの候補点の水平位置が含まれるか否かにより、処理対象の単位領域に候補点が含まれるか否かを判定する。
【0057】
処理対象の単位領域の候補点が含まれない場合(ステップS202-No)、設定部154は、処理対象の単位領域に代表点を設定しない(ステップS203)。
【0058】
処理対象の単位領域に候補点が含まれる場合(ステップS202-Yes)、設定部154は、処理対象の単位領域の候補点に、直前の段階において代表点に設定された候補点が含まれるか否かを判定する(ステップS204)。現段階が最初の段階である場合には、設定部154は、処理対象の単位領域の候補点に、直前の段階において代表点に設定された候補点は含まれないと判定する。
【0059】
処理対象の単位領域の候補点に直前段階に代表点として設定された候補点が含まれる場合(ステップS204-Yes)、設定部154は、直前段階の代表点であった候補点を代表点に設定する(ステップS205)。すなわち、直前の段階において代表点に設定された候補点は、現段階でも引き続き代表点に設定される。
【0060】
処理対象の単位領域の候補点に直前段階に代表点として設定された候補点が含まれない場合(ステップS204-No)、代表点設定処理はステップS206に進む。
【0061】
次に、設定部154は、処理対象の単位領域の候補点のそれぞれについて、候補点の高度の低さに応じた指標を算出する(ステップS206)。例えば、設定部154は、候補点と候補点を含む単位領域の中心位置との間の距離に基づく指標を算出する。指標は、候補点の高度が低いほど小さくなり、候補点と単位領域の中心位置との間の距離が短いほど小さくなる。例えば、指標Iは、候補点の高度と、候補点と単位領域の中心位置との間の水平距離との重み付け和であり、次の式に従う。
【数1】
ここで、Hは候補点の高度であり、Dは候補点の位置と単位領域の中心位置との間の水平距離である。また、aは重みであり、事前の実験を通じて0より大きい任意の値に設定される。
【0062】
次に、設定部154は、指標に基づいて、処理対象の単位領域に含まれる、代表点に設定されていない候補点のうちのいずれかを処理対象の単位領域の新たな代表点に設定する(ステップS207)。例えば、設定部154は、代表点に設定されていない候補点のうち最小の指標を有する候補点を代表点に設定する。すなわち、直前の段階に代表点に設定された候補点が処理対象の単位領域に含まれる場合には、直前の段階に代表点に設定された候補点と、直前の段階で代表点に設定されていない候補点のうち最小の指標を有する候補点とが代表点に設定される。
【0063】
図6は、指標の算出および代表点の設定について説明するための模式図である。上述したように、代表点は、候補点の高度Hの低さに応じた指標が最小となる候補点である。非地表点である候補点は地物で反射されたレーザの反射点であるため、地表面よりも高い高度を有する。代表点が候補点の高度Hの低さに応じた指標が最小となる候補点に設定されることにより、地表点である可能性が高い候補点が代表点に設定される。
【0064】
また、代表点は、各候補点と当該候補点を含む単位領域の中心位置との間の距離に基づく指標が最小となる候補点である。すなわち、候補点が処理対象の単位領域の中心に近いほど、その候補点が代表点に設定される可能性が高くなる。代表点が候補点の水平位置に基づかずに設定される場合、
図6の領域Aのように、単位領域の境界付近に地表面が窪んだ領域が存在するときに、多くの代表点がその領域に含まれる候補点に設定される可能性がある。この場合、地表面の形状が代表点に対する近似曲面に適切に反映されなくなる。処理対象の単位領域の中心に近い候補点を代表点に設定されやすくすることにより、単位領域の境界付近の候補点が代表点に設定されにくくなる。したがって、代表点が分散され、地表面の形状が適切に反映された近似曲面が算出される可能性が高くなる。
【0065】
図5に戻り、ステップS203またはS207の次に、設定部154は、処理対象のグループの全ての単位領域が処理対象の単位領域として選択されたか否かを判定する(ステップS208)。
【0066】
全ての単位領域が処理対象の単位領域として選択されていない場合(ステップS207-No)、代表点設定処理はステップS201に戻り、設定部154は、まだ処理対象として選択されていない単位領域を処理対象の単位領域として選択する。
【0067】
全ての単位領域が処理対象の単位領域として選択された場合(ステップS207-Yes)、代表点設定処理が終了する。
【0068】
図7は、検出処理の流れを示すフロー図である。検出処理は、各単位領域が傾斜変化点を含むか否かを判定することにより傾斜変化点を含む単位領域を検出する処理である。検出処理は、地表点抽出処理のステップS105で実行される。
【0069】
最初に、検出部155は、傾斜変化点を含むか否かの判定の対象となる処理対象の単位領域を選択する(ステップS301)。検出部155は、処理対象のグループの単位領域のうち、まだ処理対象として選択されていない単位領域を処理対象の単位領域として選択する。
【0070】
次に、検出部155は、処理対象の単位領域の代表点と処理対象の単位領域の周囲の単位領域の代表点とに対する二つの近似平面を算出する(ステップS302)。例えば、検出部155は、RANSAC(Random Sample Consensus)法により、境界が処理対象の単位領域に含まれるような二つの近似平面を算出する。
【0071】
例えば、検出部155は、処理対象の単位領域の周囲の8個の単位領域の代表点を取得する。検出部155は、取得した8個の代表点のうちから2個の代表点を無作為に抽出し、処理対象の単位領域の代表点と、抽出された2個の代表点とを含む第1の平面を算出する。また、検出部155は、同様にして第1の平面と異なる第2の平面を算出する。検出部155は、各代表点と第1の平面および第2の平面との間の残差を算出する。残差は、例えば、各代表点から第1の平面までの距離および各代表点から第2の平面までの距離のうちの小さいものの二乗平均平方根である。検出部155は、上述の処理を繰り返して算出された第1の平面と第2の平面との組合せのうち残差が最も小さいものを二つの近似平面とする。
【0072】
次に、検出部155は、二つの近似平面の傾斜角度に関する第1の条件が満たされるか否かを判定する(ステップS303)。第1の条件は、二つの近似平面がなす角の角度に関する条件である。
【0073】
第1の条件が満たされる場合(ステップS303-Yes)、検出部155は、処理対象の単位領域が傾斜変化点を含むと判定する(ステップS304)。
【0074】
第1の条件が満たされない場合(ステップS303-No)、二つの近似平面の傾斜角度に関する第2の条件が満たされるか否かを判定する(ステップS305)。第2の条件は、二つの近似平面のそれぞれの傾斜角度に関する条件である。近似平面の傾斜角度は、近似平面と水平面がなす角の角度である。
【0075】
第2の条件が満たされる場合(ステップS305-Yes)、検出部155は、処理対象の単位領域が傾斜変化点を含むと判定する(ステップS304)。
【0076】
第2の条件が満たされない場合(ステップS305-No)、検出部155は、処理対象の単位領域が傾斜変化点を含まないと判定する(ステップS306)。
【0077】
図8は、近似平面の傾斜角度に関する第1の条件および第2の条件について説明するための模式図である。
図8に示す例では、処理対象の単位領域の代表点と処理対象の単位領域の周囲の単位領域の代表点とが二つの近似平面P1およびP2により近似されている。また、
図8では、水平面Hの方向が図示されている。
【0078】
第1の条件は、例えば、二つの近似平面P1およびP2がなす2つの角の角度のうち小さいもの(
図8に示す例では、角度α)が所定角度以上であることである。第2の条件は、例えば、二つの近似平面のうちの一方の近似平面P1の傾斜角度(
図8に示す例では、角度β)が0度を含む所定角度範囲内であり他方の近似平面P2の傾斜角度(
図8に示す例では、角度γ)が所定傾斜角度以上であることである。所定角度範囲は、例えば-10度以上+10度以下の範囲であり、所定傾斜角度は、例えば40度である。検出部155は、第1の条件および第2の条件のうちの少なくとも一つが満たされる場合に、処理対象の単位領域が傾斜変化点を含むと判定する。
【0079】
なお、検出部155は、第1の条件および第2の条件の両方が満たされる場合に処理対象の単位領域が傾斜変化点を含むと判定してもよい。また、検出部155は、第1の条件および第2の条件のうちのいずれか一方のみに基づいて処理対象の単位領域が傾斜変化点を含むか否かを判定してもよい。
【0080】
図7に戻り、ステップS304またはS306の後に、検出部155は、処理対象のグループの全ての単位領域が処理対象の単位領域として選択されたか否かを判定する(ステップS306)。
【0081】
全ての単位領域が処理対象として選択されていない場合(ステップS306-No)、推定処理はステップS301に戻り、検出部155は、まだ処理対象として選択されていない単位領域を処理対象の単位領域として選択する。
【0082】
全ての単位領域が処理対象として選択された場合(ステップS306-Yes)、推定処理が終了する。
【0083】
図9は、近似曲面算出処理の流れの例を示すフロー図である。近似曲面算出処理は、代表点に対する近似曲面を算出する処理である。近似曲面算出処理は、地表点抽出処理のステップS106において実行される。
【0084】
最初に、算出部156は、各単位領域の代表点に重みを設定する(ステップS401)。算出部156は、傾斜変化点を含むと推定された単位領域の代表点に、他の単位領域の代表点よりも大きい重みを設定する。また、算出部156は、傾斜変化点を含まないと推定された単位領域の代表点のうち、直前の段階において代表点に設定された代表点に、直前の段階において代表点に設定されていない代表点よりも大きい重みを設定する。例えば、算出部156は、傾斜変化点を含むと推定された単位領域の代表点に重み8.0を設定し、直前の段階において代表点に設定された代表点に重み2.0を設定し、他の代表点に重み1.0を設定する。
【0085】
次に、算出部156は、設定された重みに基づいて、代表点から仮の近似曲面を算出する(ステップS402)。すなわち、算出部156は、直前の段階において代表点に設定されていた代表点の重みが、直前の段階において代表点に設定されていなかった代表点の重みよりも大きくなり、かつ傾斜変化点を含む単位領域の代表点の重みが前記傾斜変化点を含まない単位領域の代表点の重みよりも大きくなるようにして仮の近似曲面を算出する。例えば、算出部156は、TPS(Thin Plate Spline)法により仮の近似曲面を算出する。
【0086】
次に、算出部156は、各代表点と仮の近似曲面との相対高度の標準偏差を算出する(ステップS403)。算出部156は、次の式により標準偏差σを算出する。
【数2】
ここで、wiはi番目の代表点の重みであり、riはi番目の代表点と仮の近似曲面との間の相対高度である。相対高度は、代表点の高度から、代表点と同一の水平位置における仮の近似曲面の高度を減じた値である。
【0087】
次に、算出部156は、相対高度に基づいて代表点の重みを更新する(ステップS404)。例えば、算出部156は、傾斜変化点を含まない単位領域の代表点のうち、直前の段階において代表点に設定されていない代表点の重みを、相対高度が低いほど大きくなるように更新する。例えば、算出部156は、相対高度riに基づいて、次の式に従い代表点の重みwiを更新する。
【数3】
【0088】
次に、算出部156は、更新された重みに基づいて、代表点から近似曲面を算出する(ステップS405)。すなわち、算出部156は、仮の近似曲面に対する相対高度が高い代表点ほど重みが小さくなるようにして近似曲面を算出する。例えば、算出部156は、更新された重みを用いて、ステップS402と同様のTPS法により近似曲面を算出する。以上で、近似曲面算出処理を終了する。
【0089】
図10(A)および(B)は、近似曲面の算出について説明するための模式図である。
図10(A)は、ステップS402で算出された仮の近似曲面を模式的に示している。
図10(A)は、黒塗りの丸で示される地表点である代表点よりも、白抜きの丸で示される非地表点である代表点が多い例を示している。この場合、仮の近似曲面は、地表点である代表点よりも非地表点である代表点に近くなるように算出される。すなわち、仮の近似曲面は、地表面ではなく地物の表面の形状を反映したものとなる。
【0090】
図10(B)は、ステップS405で算出された近似曲面を模式的に示している。ステップS404において仮の近似曲面に対する代表点の相対高度が低いほど重みが大きくなるように代表点の重みが更新されるため、
図10(B)に示す例では、低い高度を有する地表点である代表点の重みが大きくなっている。したがって、近似曲面は、非地表点である代表点よりも地表点である代表点に近くなるように算出される。すなわち、近似曲面は地表面の形状を反映したものとなる。
【0091】
このように、近似曲面算出処理は、処理対象のグループの代表点から近似曲面を算出する。すなわち、近似曲面は、処理対象のグループの全ての構成点から算出されるのではなく、構成点の一部である代表点のみから算出される。これにより、近似曲面を算出する処理の負荷が低減される。また、近似曲面算出処理は、処理対象のグループのそれぞれについて実行される。すなわち、近似曲面は、対象領域に含まれる全ての代表点から算出されるのではなく、処理対象のグループに含まれる代表点のみから算出される。これにより、近似曲面を算出する処理の負荷がより低減される。
【0092】
地表点抽出装置1には、次に述べるような変形例が適用されてもよい。
【0093】
上述した説明では、地表点抽出処理のステップS101において、取得部151がラストパルスに対応する構成点を候補点に設定するものとしたが、このような例に限られない。取得部151は、取得した構成点の全てを候補点に設定してもよい。すなわち、取得部151は、ラストパルスに対応する構成点に加えて、ファーストパルスおよび中間パルスに対応する構成点を候補点に設定してもよい。このようにしても、地表点抽出装置1は、3次元点群から地表点を高精度に抽出することができる。この場合、ステップS109において、候補点抽出部157は、ファーストパルスに対応する候補点、中間パルスに対応する候補点および近似曲面に対する相対高度が閾値以上であるラストパルスに対応する候補点を除外してもよい。また、取得部151は、構成点テーブルT1に記憶された構成点のうちラストパルスに対応する構成点のみを取得し、ファーストパルスまたは中間パルスに対応する構成点を取得しなくてもよい。
【0094】
上述した説明では、地表点抽出処理のステップS102において、区分部152が各段階に共通する個数の単位領域からなるグループを設定するものとしたが、このような例に限られない。区分部152は、段階ごとに異なる個数の単位領域からなるグループを設定してもよい。このようにしても、地表点抽出装置1は地表面の傾斜が急変する領域を含む3次元点群から地表点を高精度に抽出することができる。また、このようにしても、グループが段階的に縮小するように設定されていれば、地表点抽出装置1は非地表点が密集している領域を含む3次元点群から地表点を高精度に抽出することができる。
【0095】
上述した説明では、地表点抽出処理のステップS107において、候補点抽出部157が近似曲面に対する相対高度が所定範囲である構成点として、相対高度が閾値未満である構成点を候補点として抽出するものとしたが、このような例に限られない。所定範囲は、第1閾値未満であり、かつ第2閾値より大きい範囲でもよい。すなわち、候補点抽出部157は、近似曲面に対する相対高度が所定範囲内である構成点として、相対高度が第1閾値未満でありかつ第2閾値より大きい構成点を候補点として抽出してもよい。例えば、第1閾値は正値であり第2閾値は負値である。この場合、所定範囲は±0mを含む範囲であり、例えば、-0.5m以上+0.3m以下の範囲である。このようにすることで、近似曲面に対する相対高度が著しく低く、ノイズであると疑われる候補点が除外されるため、地表点抽出装置1は3次元点群から地表点をより高精度に抽出することができる。
【0096】
上述した説明では、地表点抽出処理のステップS107において、候補点抽出部157が、ステップS101で取得された構成点のうちから候補点を抽出するものとしたが、このような例に限られない。例えば、現段階における候補点のうち、近似曲面に対する相対高度が閾値未満である候補点または近似曲面に対する相対高度が所定範囲内である候補点を次段階における候補点として抽出してもよい。すなわち、候補点抽出部157は、複数の段階のうちの最終段階以外の段階において、相対高度が閾値以上である候補点を次段階の候補点から除外してもよい。
【0097】
上述した説明では、代表点設定処理のステップS205において、設定部154が直前の段階で代表点に設定されていた候補点を代表点に設定するものとしたが、設定部154は、そのような代表点を候補点に設定しなくてもよい。この場合、代表点設定処理のステップS203およびS204が省略される。また、設定部154は、直前の段階で代表点に設定されていた候補点が代表点に設定された場合には、指標に基づいて代表点を新たに設定しなくてもよい。
【0098】
上述した説明では、代表点設定処理のステップS206において、設定部154が候補点の高度が低いほど小さくなり、かつ候補点とその候補点を含む単位領域の中心との間の水平距離が短いほど小さくなる指標を算出するものとしたが、このような例に限られない。設定部154は、候補点の水平位置には基づかない指標を算出してもよい。例えば、設定部154は、候補点の高度をそのまま指標としてもよい。このようにしても、地表点抽出装置1は、3次元点群から地表点を高精度に抽出することができる。また、指標は、候補点の高度が高いほど大きくなるものでもよく、候補点と単位領域の中心位置との間の距離が長いほど大きくなるものでもよい。この場合、ステップS207において、設定部154は最大の指標を有する候補点を代表点に設定する。
【0099】
上述した説明では、代表点設定処理のステップS207において、設定部154が代表点に設定されていない候補点のうち最小の指標を有する候補点を処理対象の単位領域の代表点に設定するものとしたが、このような例に限られない。設定部154は、代表点に設定されていない候補点のうち指標が小さい複数の候補点を代表点に設定してもよい。
【0100】
上述した説明では、推定処理のステップS302において、検出部155は境界が処理対象の単位領域に含まれるような二つの近似平面を算出するものとしたが、このような例に限られない。検出部155は、境界が処理対象の単位領域に含まれるか否かを考慮せずに二つの近似平面を算出してもよい。例えば、検出部155は、最小二乗法を用いて代表点から第1の近似平面を算出し、代表点のうち第1の近似平面からの距離が閾値以下であるものを除外し、最小二乗法を用いて除外されていない代表点から第2の近似平面を算出してもよい。この場合、ステップS303において、検出部155は二つの近似平面の境界が処理対象の単位領域に含まれかつ第1の条件が満たされるか否かを判定する。また、ステップS305において、検出部155は二つの近似平面の境界が処理対象の単位領域に含まれかつ第2の条件が満たされるか否かを判定する。
【0101】
上述した説明では、近似曲面算出処理のステップS401において、算出部156が直前の段階において代表点に設定された代表点に、直前の段階において代表点に設定されていない代表点よりも大きい重みを設定するものとしたが、このような例に限られない。算出部156は、直前の段階において代表点に設定された代表点に他の代表点と同じ重みを設定してもよく、他の代表点よりも小さい重みを設定してもよい。
【0102】
同様に、算出部156は傾斜変化点を含むと推定された単位領域の代表点に他の代表点と同じ重みを設定してもよい。この場合、地表点抽出処理のステップS105の推定処理が省略されてもよい。このようにしても、地表点抽出装置1は、非地表点が密集している領域を含む3次元点群から地表点を高精度に抽出することができる。また、算出部156は傾斜変化点を含むと推定された単位領域の代表点に他の代表点よりも小さい重みを設定してもよい。
【0103】
上述した説明では、近似曲面算出処理のステップS404において、算出部156は、傾斜変化点を含まない単位領域の代表点のうち、直前の段階において代表点に設定されていない代表点のみの重みを更新するものとしたが、このような例に限られない。算出部156は、傾斜変化点を含む単位領域の代表点または直前の段階において代表点に設定されていた代表点の重みを更新してもよい。ステップS401において、傾斜変化点を含む単位領域の代表点または直前の段階において代表点に設定されていた代表点には他の代表点よりも大きい重みが設定される。したがって、ステップS402で算出される仮の近似曲面に対するこれらの代表点の相対高度は、他の代表点の相対高度よりも小さくなり、ステップS404において、これらの代表点の重みは他の代表点の重みよりも大きくなるように更新される。その結果、ステップS405において、地表面の形状がより適切に反映された地表面が算出されるようになる。
【0104】
上述した近似曲面算出処理のステップS403-S405が省略されてもよい。すなわち、算出部156は、仮の近似曲面の算出および代表点の重みの更新をすることなく、ステップS401で設定された重みに基づいて近似曲面を算出してもよい。
【0105】
上述した説明では、地表点抽出処理において、ステップS102-S108の処理は複数の段階において実行されるものとしたが、一度だけ実行されるものとしてもよい。このようにしても、地表点抽出装置1は、地表面の傾斜が急変する領域を含む3次元点群から地表点を高精度に抽出することができる。
【0106】
上述した説明では、3次元点群は飛行体から対象領域を計測して得られるものとしたが、航空写真等の画像をステレオ解析または多視点画像解析して得られるものであってもよい。この場合、構成点テーブルT1はパルス種別を記憶しなくてもよい。
【0107】
以上説明したように、地表点抽出装置1は、対象領域を、後段階の単位領域が前段階の単位領域よりも小さくなるように設定された複数の単位領域に区分し、複数の段階のそれぞれにおいて、各候補点が示す高度の低さに応じた指標に基づいて代表点を設定し、代表点に対する近似曲面を算出する。また、地表点抽出装置1は、複数の段階のうちの最終段階以外の段階において、近似曲面に対する相対高度が所定範囲である構成点を候補点として抽出し、複数の段階のうちの最終段階において、近似曲面に対する相対高度が所定範囲である構成点を地表点として抽出する。このようにすることで、地表点抽出装置1は、非地表点が密集している領域を含む3次元点群から地表点を高精度に抽出することを可能とする。
【0108】
また、地表点抽出装置1は、少なくとも1つの候補点を含む単位領域のみにおいて代表点を設定する。このようにすることで、非地表点が密集しているために候補点が設定または抽出されなかった単位領域においては代表点が設定されなくなるため、地表点抽出装置1は地表面の形状を適切に反映した近似曲面を算出し、地表点をより高精度に抽出することを可能とする。
【0109】
また、地表点抽出装置1は、直前の段階において代表点に設定された候補点が存在する場合にその候補点を代表点に設定するとともに、直前の段階において代表点に設定されていない候補点のうち最小の指標を有する候補点とを代表点に設定する。直前の段階において代表点に設定された候補点は、処理対象の単位領域が広い段階において代表点に設定されているため、地表点である可能性が特に高い。地表点抽出装置1は、各段階において、地表点である可能性が特に高い候補点を代表点に設定することにより、地表面の形状をより適切に反映した近似曲面を算出し、地表点をより高精度に抽出することを可能とする。
【0110】
また、地表点抽出装置1は、直前の段階において代表点に設定された代表点に、直前の段階において代表点に設定されていない代表点よりも大きい重みを設定する。地表点抽出装置1は、地表点である可能性が特に高い代表点に他の代表点よりも大きい重みを設定することにより、地表面の形状をより適切に反映した近似曲面を算出し、地表点をより高精度に抽出することを可能とする。
【0111】
また、地表点抽出装置1は、近似曲面に対する相対高度が高い代表点ほど重みが小さくなるように代表点の重みを更新し、更新された重みに基づいて近似曲面を更新する。これにより、地表点抽出装置1は、地表面の形状をより適切に反映した近似曲面を算出し、地表点をより高精度に抽出することを可能とする。
【0112】
また、地表点抽出装置1は、各候補点の高度が低いほど小さくなり、かつ各候補点の水平位置が候補点を含む単位領域の中心に近いほど小さくなる指標を算出する。これにより、単位領域の境界付近の候補点が代表点に設定されにくくなるため、地表点抽出装置1は、地表面の形状をより適切に反映した近似曲面を算出し、地表点をより高精度に抽出することを可能とする。
【0113】
また、地表点抽出装置1は、対象領域を複数の単位領域に区分し、傾斜変化点を含む単位領域の代表点の重みを他の単位領域の代表点の重みよりも大きくなるようにして近似曲面を算出し、近似曲面に対する相対高度が所定範囲である構成点を抽出する。このようにすることで、地表点抽出装置1は、地表面の傾斜が急変する領域を含む3次元点群から地表点を高精度に抽出することを可能とする。
【0114】
また、地表点抽出装置1は、傾斜変化点を含む単位領域の代表点の重みが他の単位領域の代表点の重みよりも大きくなるようにして仮の近似曲面を算出し、仮の近似曲面に対する相対高度が高いほど重みが小さくなるように重みを更新し、更新された重みに基づいて近似曲面を算出する。このようにすることで、地表点抽出装置1は、地表面の形状を適切に反映した近似曲面を算出し、地表点をより高精度に抽出することを可能とする。
【0115】
当業者は、本発明の範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。例えば、上述した実施形態及び変形例は、本発明の範囲において、適宜に組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0116】
1 地表点抽出装置
151 取得部
152 区分部
153 選択部
154 設定部
155 検出部
156 算出部
157 候補点抽出部
158 地表点抽出部
159 出力部
【要約】
【課題】3次元点群から地表点を高精度に抽出することを可能とする地表点抽出装置等を提供する。
【解決手段】地表点抽出方法は、飛行体から対象領域を計測して得られた3次元点群に含まれる複数の構成点を取得する取得手段と、対象領域を複数の単位領域に区分する区分手段と、複数の構成点のそれぞれについて、構成点の高度の低さに応じた指標を算出し、指標に基づいて、区分された各単位領域に含まれる候補点のうちから各単位領域の代表点を設定する設定手段と、複数の単位領域のうちから傾斜変化点を含む単位領域を検出する検出手段と、傾斜変化点を含む単位領域の代表点の重みが傾斜変化点を含まない単位領域の代表点の重みよりも大きくなるようにして各単位領域の代表点から近似曲面を算出する算出手段と、近似曲面に対する相対高度が所定範囲である候補点を、地表を示す地表点として抽出する抽出手段と、を有する。
【選択図】
図3