(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】通信制御装置
(51)【国際特許分類】
H04L 12/28 20060101AFI20231122BHJP
【FI】
H04L12/28 400
(21)【出願番号】P 2022508709
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2020012026
(87)【国際公開番号】W WO2021186624
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深谷 芳行
【審査官】中川 幸洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/105047(WO,A1)
【文献】特開2010-154576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフィールド機器の作業により基板製品を生産する対基板作業機のネットワークに適用され、前記複数のフィールド機器ごとの通信装置をノードとし、複数の前記ノードごとに規定容量のデータ区画を割り当てられたデータフィールドを有するフレームの送受信により複数の前記ノードと通信する通信制御装置であって、
前記対基板作業機による生産が休止され前記複数のフィールド機器の少なくとも一部の対象機器との通信を用いたメンテナンスが実行される場合に、前記データフィールドにおける各前記データ区画の比率を変更して前記フレームを再構成するフレーム構成部と、
再構成された前記フレームを複数の前記ノードのうち少なくとも前記対象機器の前記通信装置を含む前記ノードが送受信可能となるようにコンフィグレーション処理の実行を指令する処理指令部と、
を備え
、
前記複数のフィールド機器のうち複数の前記対象機器に前記メンテナンスが実行される場合に、前記メンテナンスの通信にはサイクル転送または一括転送を切り換えて適用可能であり、
前記サイクル転送は、複数の前記対象機器の一つとの通信が優先されるように前記フレームを再構成した後に前記コンフィグレーション処理を実行させる通信サイクルを、前記メンテナンスに用いられる通信ごとに優先する前記対象機器を変更して順次実行させ、
前記一括転送は、それぞれの前記メンテナンスに用いられる通信に同一の前記フレームが用いられるように前記フレームの再構成および前記コンフィグレーション処理を実行する通信制御装置。
【請求項2】
前記複数のフィールド機器のうち複数の前記対象機器に前記メンテナンスが実行される場合に、
前記メンテナンスの通信には、前記サイクル転送または前記一括転送が、前記コンフィグレーション処理の所要時間とそれぞれの通信の所要時間とに基づいて切り換え
て適用される、請求項
1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記通信制御装置は、前記複数のフィールド機器のうち前記対象機器を除いた非対象機器の電源をオフにするように指令する電源指令部をさらに備え、
前記フレーム構成部は、前記データフィールドの一部の領域または全域を対象フィールドとし、前記対象機器に対応する前記ノードごとに前記対象フィールドを再配分することにより各前記データ区画の比率を変更して前記フレームを再構成する、請求項1
または2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記電源指令部は、前記メンテナンスが終了した後に、前記非対象機器の電源をオンにするように指令し、
前記フレーム構成部は、前記非対象機器の電源のオンに伴って対応する前記ノードから前記ネットワークへの加入要求があった後に、前記複数のフィールド機器に対応する前記ノードごとに前記規定容量の前記データ区画が割り当てられるように前記対象フィールドを再配分することにより各前記データ区画の比率を元に戻して前記フレームを再構成する、請求項
3に記載の通信制御装置。
【請求項5】
前記複数のノードのそれぞれには、前記フレームを送受信するために必要な最小データ容量が設定され、
前記フレーム構成部は、前記データフィールドの一部の領域または全域を対象フィールドとし、前記複数のフィールド機器のうち前記対象機器を除いた非対象機器に対応する前記ノードに前記最小データ容量の前記データ区画を割り当てるとともに、前記対象機器に対応する前記ノードごとに前記対象フィールドのうち残りの領域を再配分することにより各前記データ区画の比率を変更して前記フレームを再構成する、請求項1-
4の何れか一項に記載の通信制御装置。
【請求項6】
前記フレーム構成部は、前記メンテナンスが終了した後に、前記複数のフィールド機器に対応する前記ノードごとに前記規定容量の前記データ区画が割り当てられるように前記対象フィールドを再配分することにより各前記データ区画の比率を元に戻して前記フレームを再構成する、請求項
5に記載の通信制御装置。
【請求項7】
前記フレーム構成部は、それぞれの前記メンテナンスに用いられる通信に同一の前記フレームが用いられるように前記フレームを再構成する場合に、複数の前記ノードごとの前記メンテナンスに必要なデータ容量の割合に基づいて前記データフィールドを再配分することにより各前記データ区画の比率を変更して前記フレームを再構成する、請求項
1-6の何れか一項に記載の通信制御装置。
【請求項8】
前記フレーム構成部は、それぞれの前記メンテナンスに用いられる通信に同一の前記フレームが用いられるように前記フレームを再構成する場合に、前記データフィールドを複数の前記対象機器に対応する複数の前記ノードごとに均等に再配分し、または前記データフィールドを複数の前記対象機器に対応する複数の前記ノードごとに予め設定された通信の重みの割合に基づいて前記データフィールドを再配分することにより、各前記データ区画の比率を変更して前記フレームを再構成する、請求項
1-6の何れか一項に記載の通信制御装置。
【請求項9】
前記メンテナンスには、前記複数のフィールド機器の少なくとも一つにインストールされているソフトウェアの更新処理が含まれる、請求項1-
8の何れか一項に記載の通信制御装置。
【請求項10】
前記メンテナンスには、前記複数のフィールド機器の少なくとも一つが実行した作業に関する動作ログデータの取得処理が含まれる、請求項1-
9の何れか一項に記載の通信制御装置。
【請求項11】
前記対基板作業機は、供給された部品を採取して基板に前記部品を装着する部品装着機であり、
前記複数のフィールド機器には、前記基板を搬送する基板搬送装置、前記部品を供給する部品供給装置、前記部品を採取して前記基板上の所定の装着位置に前記部品を移載する部品移載装置、および前記部品の装着処理に用いられる画像データを取得するカメラが含まれる、請求項1-
10の何れか一項に記載の通信制御装置。
【請求項12】
前記通信制御装置は、前記複数のノードのそれぞれを前記ネットワークにおけるスレーブとして定周期で通信を行うマスターであり、
前記ネットワークにおける通信は、前記マスターから送信された前記フレームが全ての前記スレーブを通過するとともに、前記フレームが再び全ての前記スレーブを通過して前記マスターに戻される処理を一周期とする、請求項1-
11の何れか一項に記載の通信制御装置。
【請求項13】
前記スレーブは、前記フレームへの書き込みを許容されたアクティブ状態において、前記フレームを通過させる際に、前記フレームにおける前記データフィールドのうち自己に割り当てられた前記データ区画にデータを読み書きする、請求項
12に記載の通信制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通信制御装置は、複数のフィールド機器の作業により基板製品を生産する対基板作業機のネットワークにおける通信を制御する。例えば特許文献1には、対基板作業機としての部品装着機に適用された通信制御装置が開示されている。部品装着機におけるネットワークは、装着ヘッドや部品供給装置などのフィールド機器をノードとして構成される。通信制御装置は、ネットワークの通信に適用される通信規格に準拠して、例えばデータフィールドを有するフレームを送受信することで通信を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ネットワークに適用される通信規格によっては、フレームのデータフィールドにおいて複数のノードごとに規定容量のデータ区画が割り当てられる。ところで、ネットワークにおける通信は、対基板作業機による生産が休止された状態で一部のフィールド機器に対するメンテナンスに用いられることがある。このとき、フレームにおける複数のデータ区画が対基板作業機による生産時の通信に適するように設定されていると、メンテナンス時の通信効率が低下するおそれがある。
【0005】
本明細書は、メンテナンス時の通信効率の向上を図ることができる通信制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、複数のフィールド機器の作業により基板製品を生産する対基板作業機のネットワークに適用され、前記複数のフィールド機器ごとの通信装置をノードとし、複数の前記ノードごとに規定容量のデータ区画を割り当てられたデータフィールドを有するフレームの送受信により複数の前記ノードと通信する通信制御装置であって、 前記対基板作業機による生産が休止され前記複数のフィールド機器の少なくとも一部の対象機器との通信を用いたメンテナンスが実行される場合に、前記データフィールドにおける各前記データ区画の比率を変更して前記フレームを再構成するフレーム構成部と、再構成された前記フレームを複数の前記ノードのうち少なくとも前記対象機器の前記通信装置を含む前記ノードが送受信可能となるようにコンフィグレーション処理の実行を指令する処理指令部と、を備える通信制御装置を開示する。
【発明の効果】
【0007】
このような構成によると、メンテナンスの対象の対象機器を勘案して各データ区画の比率を変更してフレームが再構成される。これにより、フレームにおいて対象機器に対応するノードに割り当てられる容量が増量されるので、メンテナンスにおけるデータの通信に必要なフレームの送受信回数を低減できる。結果として、メンテナンス時における通信効率を向上でき、メンテナンスの所要時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】部品装着機のネットワークを示すブロック図である。
【
図3】ネットワークにおいて送受信されるフレームの形式を示す図である。
【
図4】通信制御処理の第一態様を示すフローチャートである。
【
図5】通信サイクルの実行に伴うデータ区画の比率の変動を示す図である。
【
図6】データ区画の比率の変更の一例を示す図である。
【
図7】データ区画の比率の変更の一例を示す図である。
【
図8】データ区画の比率の変更の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.通信制御装置の概要
通信制御装置は、基板製品の生産に用いられる対基板作業機のネットワークを対象として、複数のノードを含むネットワークにおける通信を制御する。本実施形態において、通信制御装置が複数のフィールド機器を有する対基板作業機としての部品装着機に適用された態様を例示する。通信制御装置の詳細については後述する。
【0010】
2.部品装着機1の構成
部品装着機1は、基板91に部品を装着する装着処理を実行する。部品装着機1は、例えば他の部品装着機1を含む複数種類の対基板作業機とともに、基板製品を生産する生産ラインを構成する。上記の生産ラインを構成する対基板作業機には、印刷機や検査装置、リフロー炉などが含まれ得る。
【0011】
部品装着機1は、
図1に示すように、基板搬送装置10、部品供給装置20、部品移載装置30、部品カメラ41、基板カメラ42、および制御装置50を備える。基板搬送装置10は、基板91を搬送方向へと順次搬送するとともに、基板91を機内の所定位置に位置決めする。部品供給装置20は、基板91に装着される部品を供給する。部品供給装置20は、複数のスロット21にフィーダ22をそれぞれ装備される。フィーダ22には、例えば多数の部品が収納されたキャリアテープを送り移動させて、部品を採取可能に供給するテープフィーダが適用され得る。
【0012】
部品移載装置30は、部品供給装置20により供給された部品を基板91上の所定の装着位置に移載する。部品移載装置30は、ヘッド駆動装置31、移動台32、および装着ヘッド33を備える。ヘッド駆動装置31は、直動機構により移動台32を水平方向(X方向およびY方向)に移動させる。装着ヘッド33は、図示しないクランプ部材により移動台32に着脱可能に固定され、機内を水平方向に移動可能に設けられる。
【0013】
装着ヘッド33は、ヘッド駆動装置31により機内を水平方向に移動可能に設けられる。装着ヘッド33は、部品供給装置20により供給された部品を、吸着ノズル34などの保持部材を用いて採取する。そして、装着ヘッド33は、保持部材を回転させるとともに下降させ、保持部材による部品の保持状態に応じて部品を基板91上の所定の装着位置に所定の装着角度で装着する。
【0014】
部品カメラ41、および基板カメラ42は、CMOSなどの撮像素子を有するデジタル式の撮像装置である。部品カメラ41、および基板カメラ42は、制御信号に基づいて撮像を行い、当該撮像により取得した画像データを送出する。部品カメラ41は、吸着ノズル34に保持された部品を下方から撮像可能に構成される。基板カメラ42は、装着ヘッド33と一体的に水平方向に移動可能に移動台32に設けられる。基板カメラ42は、基板91を上方から撮像可能に構成される。
【0015】
制御装置50は、主として、CPUや各種メモリ、制御回路により構成される。制御装置50は、装着処理の制御に用いられる制御プログラムなどの各種データを記憶する。制御プログラムは、装着処理において基板91に装着される部品の装着位置、装着角度、および装着順序を示す。制御装置50は、装着処理において装着ヘッド33の動作を制御し、部品供給装置20により供給された部品を採取するとともに、基板91に部品を装着する。
【0016】
また、制御装置50は、複数の吸着ノズル34のそれぞれに保持された部品の保持状態の認識処理を実行する。具体的には、制御装置50は、部品カメラ41の撮像により取得された画像データを画像処理し、装着ヘッド33の基準位置に対する各部品の位置および角度を認識する。なお、制御装置50は、部品カメラ41の他に、例えば装着ヘッド33に一体的に設けられるヘッドカメラユニットなどが部品を側方、下方、または上方から撮像して取得された画像データを画像処理するようにしてもよい。
【0017】
3.部品装着機1のネットワーク70
3-1.フィールド機器およびネットワーク70
上記のような構成からなる部品装着機1において、基板搬送装置10、部品供給装置20、部品移載装置30、部品カメラ41、および基板カメラ42は、制御装置50との間でデータ伝送を行うフィールド機器である。ここで、「フィールド機器」とは、エンコーダ等の各種センサやリレー装置等の機器から出力されるデータを処理し、生産における所定の作業を行う機器である。
【0018】
また、それぞれのフィールド機器は、要求される機能(例えばフィーダ22が部品を供給する機能、装着ヘッド33が部品を採取および装着する機能)に応じたソフトウェアを実行する。本実施形態において、上記のソフトウェアは、フィールド機器にインストールされている更新可能なファームウェアである。フィールド機器におけるファームウェアは、新たな機能の追加などに伴いバージョン変更を必要とされることがある。
【0019】
複数のフィールド機器のそれぞれは、
図2に示すように、制御装置50および他のフィールド機器との間で通信するための通信装置を備える。制御装置50は、複数のフィールド機器の通信装置を複数のノード71-75とし、複数のノード71-75との通信においてフレーム80(
図3を参照)を送受信する通信制御装置60を備える。複数のノード71-75は、隣り合うノード間を通信線76によりそれぞれ接続される。
【0020】
ここで、部品装着機1のネットワーク70には、例えばイーサネット(登録商標)に準拠した通信方式を用いた通信により各種のデータ伝送を行う産業用イーサネットが適用され得る。また、本実施形態において、部品装着機1のネットワーク70には、マスター・スレーブ方式が採用される。通信制御装置60は、複数のノード71-75のそれぞれをネットワーク70におけるスレーブとして定周期で通信を行うマスターである。通信制御装置60は、マスターとして各スレーブとの間で送受信されるフレーム80の伝送を統括的に制御する。ネットワーク70における通信は、マスターから送信されたフレーム80が全てのスレーブを通過するとともに、フレーム80が再び全てのスレーブを通過してマスターに戻される処理を一周期とする。
【0021】
通信制御装置60は、フレーム80に含まれる各種データを入力する。制御装置50は、入力された各種データに基づいて装着処理における制御内容等を決定する。これにより、制御装置50は、例えば基板搬送装置10に基板91を搬入するように指令し、また部品移載装置30に制御プログラムに応じて部品を基板91に移載するように指令する。そのため、特に上記のような部品の移載を伴う装着処理の実行中においては、各種のフィールド機器により取得された現在状態を反映させた動作が必要となり、通信にリアルタイム性が要求される。
【0022】
3-2.通信用のフレーム80
ここで、通信に用いられるフレーム80は、
図3の上段に示すように、ヘッダ81およびデータフィールド82を有する。ネットワーク70における通信がイーサネットに準拠する場合には、フレーム80は、図示しないFCS(Frame Check Sequence)を有し、イーサネットフレームを構成する。その場合に、ヘッダ81は、宛先アドレスや、送信元アドレスなどのフィールドにより構成され、フィールド長が固定されている。データフィールド82のフィールド長は、ネットワーク70に適用される通信規格に応じて、所定範囲で可変とされるか、または所定値に固定される。
【0023】
本実施形態において、データフィールド82のデータ長は、
図3の中段に示すように、所定値に固定されている。また、データフィールド82は、複数のノード71-75ごとに規定容量のデータ区画R1-R5を割り当てられている。データ区画R1-R5の各規定容量は、例えば必要なデータ通信容量に応じて予め設定される。具体的には、フィールド機器が有するセンサやリレーの数に応じた信号数、指令コマンドの伝送に必要な容量に基づいて、データ区画R1-R5の各規定容量が設定される。なお、余剰領域Rsは、データフィールド82からデータ区画R1-R5を除いた領域である。
【0024】
上記のように規定容量を設定されたデータ区画R1-R5は、
図3の下段に示すように、テレグラムヘッダ、データ、およびワーキングカウンタにより構成される。このヘッダには、規定容量に相当するデータ長やノード71-75のアドレスが含まれる。ワーキングカウンタは、検証用のチェックビットである。なお、各ノード71-75の規定容量は、通常時において、固定のフィールド長からなるデータフィールド82に収まるように、最小データ容量から最大データ容量までの間で設定される。
【0025】
ここで、上記の「最小データ容量」とは、複数のノード71-75のそれぞれがフレーム80を送受信するために最低限必要な容量であり、テレグラムヘッダ、上記の信号数に応じたデータ、およびワーキングカウンタに応じた容量となる。また、上記の「最大データ容量」とは、ノード71-75が1つのフレーム80により送受信可能な容量であり、ノード71-75の通信装置の仕様に依存してノード71-75ごとに設定される。具体的には、所定の通信規格においては、ノードの通信装置が有する通信バッファの容量が最大データ容量に相当する。
【0026】
3-3.ノードの状態
ネットワーク70における複数のノードは、アクティブ状態とパッシブ状態とを切り換え可能に構成される。ここで、ノードの「アクティブ状態」とは、受信したフレーム80の通過を許容し、且つフレーム80への書き込みを許容された状態をいう。つまり、アクティブ状態のノードは、フレーム80を通過させる際に、フレーム80におけるデータフィールド82のうち自己に割り当てられたデータ区画にデータを書き込みすることを許容される。
【0027】
また、ノードの「パッシブ状態」とは、ネットワーク70に加入した状態であり、且つ受信したフレーム80の通過を許容しつつフレーム80への書き込みを禁止された状態をいう。つまり、パッシブ状態のノードは、規定容量のデータ区画が割り当てられているか否かに関わらず、自己のデータ区画に対して書き込みを行わない。但し、パッシブ状態のノードは、アクティブ状態のノードと同様にデータの読み取りについては禁止されていない。よって、パッシブ状態のノードは、通過させたフレーム80におけるデータフィールド82のうち自己または他のノードに割り当てられたデータ区画のデータを読み取ることは許容される。
【0028】
ここで、複数のノード71-75は、例えばネットワーク70とは異なる別系統の制御回線を介した制御装置50からの指令に応じてフィールド機器の電源がオフになると、ネットワーク70から除外された状態となる。また、複数のノード71-75は、対応するフィールド機器の電源がオンになるとネットワーク70に接続された状態となり、ネットワーク70への加入要求を行う。加入要求を行ったノードは、アクティブ状態またはパッシブ状態とされ、アクティブ状態であれば他のノードと通信可能な状態となる。
【0029】
4.通信制御装置60
4-1.通信制御装置60の概要
通信制御装置60は、上記のように、複数のノードとの通信において、フレーム80を送受信する。このようなフレーム80を用いた通信を行うネットワーク70において、通信制御装置60は、フレーム80を複数のノードが送受信可能となるようにコンフィグレーション処理の実行を各ノードに指令する。コンフィグレーション処理の実行により、各ノードは、データフィールド82のうち自己に割り当てられたデータ区画を割り当てられる。
【0030】
コンフィグレーション処理は、一般に、各ノードが通信可能に接続されてネットワーク70が構築された場合に実行される。その他に、コンフィグレーション処理は、ネットワーク70への加入要求をするノードが検出された場合や、一部のノードがネットワーク70から除外された場合などに、必要に応じて実行される。コンフィグレーション処理が実行されると、各データ区画の規定容量は、ネットワーク70から除外されていないノードごとの最小データ容量を確保しつつ、総和がデータフィールド82の容量(フィールド長)を超えないように適宜設定される。
【0031】
ここで、フレーム80のデータフィールド82において複数のノードごとに割り当てられるデータ区画の規定容量は、上記のようにフィールド機器が有するセンサやリレーの数に応じた信号数、指令コマンドの伝送に必要な容量に基づいて設定される。より詳細には、データ区画の規定容量は、部品装着機1による生産時、即ち装着処理の実行時の通信に適するように設定される。
【0032】
ところで、ネットワーク70における通信は、対基板作業機(部品装着機1)による生産(部品の装着処理)が休止された状態で一部のフィールド機器に対するメンテナンスに用いられることがある。このとき、フレーム80における複数のデータ区画が部品装着機1による装着処理の実行時の通信に適するように設定されていると、メンテナンス時の通信には非効率であることがある。
【0033】
なお、上記のメンテナンスには、フィールド機器にインストールされているソフトウェアの更新処理が含まれる。このような場合に、通信制御装置60は、部品装着機1のメンテナンスとして、ネットワーク70の通信を用いて、所定バージョンのファームウェアを特定のフィールド機器に対して送信する。
【0034】
また、メンテナンスには、フィールド機器が実行した作業に関する動作ログデータの取得処理が含まれる。具体的には、フィールド機器は、外部入力した指令信号や、各種センサの検出値などを動作ログデータとして記録する。さらに、上記の動作ログデータには、フィールド機器がカメラを有する場合には、当該カメラの撮像により取得された画像データや、画像データを対象に実行された画像処理の結果などが含まれ得る。
【0035】
そして、フィールド機器に記憶されている上記の動作ログデータは、例えば装着処理の精度向上や不具合の原因究明に必要とされる。このような場合に、通信制御装置60は、部品装着機1のメンテナンスとして、ネットワーク70の通信を用いて、対象のフィールド機器から動作ログを取得する。なお、上記のようなメンテナンスは、複数のフィールド機器のうち1つを対象機器とする場合もあるし、複数を対象機器とする場合もある。
【0036】
上記のように複数のフィールド機器の少なくとも一部の対象機器との通信を用いたメンテナンスが実行される場合に、ファームウェアや動作ログデータのファイルサイズに応じて、データフィールド82において対象機器に対する通信容量の増加が要求される。そこで、本実施形態の通信制御装置60は、以下のように、メンテナンス時の通信効率の向上を図ることができる構成を採用する。
【0037】
4-2.フレーム構成部61
通信制御装置60は、
図2に示すように、フレーム構成部61を備える。フレーム構成部61は、データフィールド82における各データ区画R1-R5の比率を変更してフレーム80を再構成する。ここで、各データ区画R1-R5の比率とは、前回のコンフィグレーション処理の実行によって定義された各データ区画R1-R5の規定容量の比率である。
【0038】
例えば、データフィールド82の容量が160バイトであり、
図3に示すように、5つのデータ区画(R1,R2,R3,R4,R5)がそれぞれ30,40,40,30,20バイトである場合には、各データ区画 の比率は、3:4:4:3:2となる。なお、この例においては、データフィールド82から5つのデータ区画(R1,R2,R3,R4,R5)を除いた余剰領域Rsの容量は、10バイトである。
【0039】
フレーム構成部61は、部品装着機1に実行されるメンテナンスに応じてフレーム80を再構成する。具体的には、部品装着機1がメンテナンスモードに切り換えられると、複数のフィールド機器のうち対象機器を特定する情報を入力し、対象機器に応じて各データ区画R1-R5の比率を変更してフレーム80を再構成する。また、フレーム構成部61は、部品装着機1がメンテナンスモードから生産モードに切り換えられると、各データ区画R1-R5の比率を元に戻してフレーム80を再構成する。フレーム構成部61によるフレーム80の再構成処理の詳細については後述する。
【0040】
4-3.処理指令部
通信制御装置60は、
図2に示すように、処理指令部62を備える。処理指令部62は、再構成されたフレーム80を複数のノードのうち少なくとも対象機器の通信装置を含むノードが送受信可能となるようにコンフィグレーション処理の実行を指令する。これにより、各ノードは、再構成されたフレーム80におけるデータフィールド82のうち自己に割り当てられたデータ区画を定義される。
【0041】
また、処理指令部62は、複数のノードのアクティブ状態とパッシブ状態とを切り換えることができる。例えば、処理指令部62は、部品装着機1のメンテナンスモードへの切り換えに伴ってネットワーク70における通信の必要性が低減したノードをパッシブ状態に切り換える。また、処理指令部62は、部品装着機1の生産モードへの切り換えに伴って、パッシブ状態のノードをアクティブ状態に切り換える。処理指令部62は、複数のノードの一部または全部に対して状態を切り換えるように指令した場合に、ネットワーク70に接続されたノードを示す構成情報を更新すべくコンフィグレーション処理の実行を指令する。
【0042】
4-4.電源指令部
通信制御装置60は、
図2に示すように、電源指令部63を備える。電源指令部63は、複数のフィールド機器のうち対象機器を除いた非対象機器の電源をオフにするように指令する。上記のように、ネットワーク70にノードが加入した状態となるには、ノードに対応するフィールド機器の電源がオンにされ、且つネットワーク70への加入要求を容認されてコンフィグレーション処理が実行される必要がある。
【0043】
換言すると、ネットワーク70から非対象機器の通信装置であるノードを除外する場合には、ノードが通信応答しない状態にすればよい。本実施形態において、電源指令部63は、メンテナンスの非対象機器に対応するノードをネットワーク70から強制的に除外するために、ネットワーク70とは異なる別系統の制御回線を介して、電源をオフにするように指令する。また、電源指令部63は、メンテナンスが終了した後に、非対象機器の電源をオンにするように指令する。
【0044】
上記のような構成によると、複数のフィールド機器のうちメンテナンスの対象でない非対象機器は、部品装着機1のメンテナンスモードへの切り換えに伴って電源をオフにするように制御指令を入力し、電源をオフにされる。また、非対象機器は、部品装着機1のメンテナンスモードから生産モードへの切り換えに伴って電源をオンにするように制御指令を入力し、電源をオンにされる。
【0045】
5.通信制御装置60による通信制御処理
通信制御装置60による通信制御処理について
図4-
図8を参照して説明する。通信制御装置60は、例えば部品装着機1による生産が休止されメンテナンスモードに切り換えられた場合に、
図4に示すように、通信制御処理を実行する。通信制御装置60は、制御装置50からメンテナンスに関する情報を入力し、複数のフィールド機器のうち対象機器を特定する(S11)。
【0046】
通信制御装置60は、特定された対象機器が単数であるか、または通信サイクルの設定がオンであるか否かを判定する(S12)。ここで、部品装着機1のメンテナンスでは、上記のように対象機器が複数となることがある。このような場合に、メンテナンスの通信にはサイクル転送、および一括転送が適用され得る。
【0047】
詳細には、通信にサイクル転送が適用される場合に、通信制御装置60は、複数の対象機器の一つとの通信が優先されるようにフレーム80を再構成した後にコンフィグレーション処理を実行させる通信サイクルを、メンテナンスに用いられる通信ごとに優先する対象機器を変更して順次実行させる(S21-S24)。換言すると、サイクル転送の態様は、複数の対象機器の一つに対してメンテナンス用の通信を実行し、当該通信が終了した後に通信対象を切り換える手法を採用する。
【0048】
このような態様によると、通信終了後にフィールド機器における処理が必要な場合に、当該処理を異なる対象機器との通信に並行して実行できる。これにより、メンテナンスの所要時間の短縮を図ることができる。また、メンテンナンス用の通信においてフィールド機器からの応答を要するなど通信容量が変動し得る場合には、サイクル転送は、通信の終了をもって通信対象が切り換えられるため、後述する一括転送よりも好適である。
【0049】
また、通信に一括転送が適用される場合に、通信制御装置60は、それぞれのメンテナンスに用いられる通信に同一のフレーム80が用いられるようにフレーム80の再構成およびコンフィグレーション処理を実行する(S31,S32)。換言すると、一括転送の態様は、対象機器が複数であってもそれぞれのメンテナンスに必要な通信を同一のフレーム80を用いて実行する。これにより、それぞれのメンテナンスが並行して実行されることになる。このような態様によると、コンフィグレーション処理の実行回数が低減されるので、処理負荷および所要時間の短縮を図ることができる。
【0050】
なお、通信制御装置60は、コンフィグレーション処理の所要時間とそれぞれの通信態様の所要時間とに基づいて、通信に適用するサイクル転送または一括転送を切り換えるようにしてもよい(S12)。本実施形態において、通信制御装置60は、通信サイクルを実行するか否かの設定を予め受け付けて記憶しておき、当該設定に基づいて通信に適用する態様(サイクル転送または一括転送)を切り換える。
【0051】
5-1.サイクル転送の実行
以下では、部品装着機1が5つのフィールド機器を備え、第一から第五のフィールド機器のうち第二、第四、および第五のフィールド機器がメンテナンスの対象機器であるものとして説明する。フレーム80のデータフィールド82において、第二、第四、および第五のフィールド機器の通信装置(ノード72,74,75)には、5つのデータ区画R1-R5のうち第二のデータ区画R2、第四のデータ区画R4、および第五のデータ区画R5が割り当てられている。
【0052】
S11において特定された対象機器が単数であるか、または通信サイクルの設定がオンである場合に(S12:Yes)、通信制御装置60は、通信態様にサイクル転送を適用し、1回以上の通信サイクルを実行する。詳細には、通信制御装置60は、一の対象機器を除いた他のフィールド機器をネットワーク70から除外する(S21)。具体的には、電源指令部63は、第二のフィールド機器を除いた他の第一、第三から第五のフィールド機器に対して電源をオフにするように指令する。つまり、ネットワーク70から除外されるフィールド機器には、後に実行されるメンテナンスの対象機器が含まれる。
【0053】
次に、フレーム構成部61は、データフィールド82の一部または全域を対象フィールドとし、一の対象機器である第二のフィールド機器に対応するノード72に対象フィールドを再配分することによりデータ区画の比率を変更してフレーム80を再構成する(S22)。具体的には、フレーム構成部61は、フレーム80が通信制御装置60と第二のフィールド機器との通信に専用となるように、
図5の上から3段目に示すように、データフィールド82の全域を対象フィールドして第二のデータ区画R21に割り当てる。
【0054】
続いて、処理指令部62は、再構成されたフレーム80をノード72が送受信可能となるようにコンフィグレーション処理の実行を指令する(S23)。ここでは、第二のフィールド機器の電源のみがオンであるため、通信制御装置60と第二のフィールド機器に対応するノード72がコンフィグレーション処理を実行することになる。これにより、通信制御装置60および第二のフィールド機器に対応するノード72は、再構成されたフレーム80を用いた通信が可能な状態となる。
【0055】
その後に、部品装着機1において、第二のフィールド機器を対象として、ネットワーク70の通信を用いたメンテナンスが実行される。このメンテナンスにおける通信において、データフィールド82の全域が第二のデータ区画R2に割り当てられ、第二のフィールド機器との通信に専用のフレーム80が用いられる。これにより、通信の所要時間の短縮が図られている。
【0056】
通信制御装置60は、上記のメンテナンスにおける制御装置50と対象機器(第二のフィールド機器)との通信が終了したか判定する(S24)。通信制御装置60は、メンテナンスの通信が終了していない場合には(S24:No)、上記の判定を繰り返すことにより待機状態を維持する。通信制御装置60は、メンテナンスの通信が終了した場合には(S25:Yes)、今回の通信サイクル(S21-S24)を終了する。通信制御装置60は、実行予定のメンテナンスの通信が全て終了したか否かを判定する(S13)。
【0057】
通信制御装置60は、実行予定のメンテナンスの通信が全て終了していない場合に(S13:No)、複数の対象機器のうち次のメンテナンスの対象である一の対象機器を除いた他のフィールド機器をネットワークから除外する(S21)。具体的には、電源指令部63は、第四のフィールド機器を除いた他の第一から第三、第五のフィールド機器に対して電源をオフにするように指令するとともに、第四のフィールド機器に対して電源をオンにするように指令する。これにより、第四のフィールド機器からネットワーク70への加入要求が検出される。
【0058】
2回目以降の通信サイクル(S21-S24)は、初回と実質的に同一であるため詳細な説明を省略する。なお、上記の通信サイクルでは、データフィールド82の全域が、第四のデータ区画R41、および第五のデータ区画R51に順に割り当てられる(
図5の上から4段目および5段目を参照)。これにより、対象機器である第四のフィールド機器および第五のフィールド機器との通信に専用のフレーム80がそれぞれのメンテナンスにおける通信に用いられる。
【0059】
実行予定のメンテナンスの通信が全て終了した場合に(S13:Yes)、電源指令部63は、電源がオフであるフィールド機器に対して電源をオンにするように指令する(S14)。具体的には、電源指令部63は、第五のフィールド機器が直前の通信サイクルのS21にて既に電源がオンになっているので、第一から第四のフィールド機器に対して電源をオンにするように指令する。
【0060】
フレーム構成部61は、非対象機器を含む各フィールド機器の電源のオンに伴って対応するノード71-74からネットワーク70への加入要求があった後に、データ区画R1-R5の比率を元に戻してフレーム80を再構成する(S15)。詳細には、フレーム構成部61は、複数のフィールド機器に対応するノード71-75ごとに規定容量のデータ区画R1-R5が割り当てられるように対象フィールド(上記の例では、データフィールド82の全域)を再配分する(
図5の最下段を参照)。
【0061】
これにより、フレーム構成部61は、各データ区画R1-R5の比率を元に戻してフレーム80を再構成する。つまり、規定容量のデータ区画R1-R5が割り当てられたことにより、フレーム80は、部品装着機1の生産モードにおいて必要とされる状態に戻されることになる。最後に、処理指令部62は、再構成されたフレーム80を複数のノード71-75が送受信可能となるようにコンフィグレーション処理の実行を指令する(S16)。これにより、通信制御装置60および第一から第五のフィールド機器に対応するノード71-75は、再構成されたフレーム80を用いた通信が可能な状態となる。
【0062】
5-2.一括転送の実行
S11において特定された対象機器が複数であり、且つ通信サイクルの設定がオフである場合に(S12:No)、通信制御装置60は、通信態様に一括転送を適用する。詳細には、通信制御装置60は、複数のフィールド機器のうち複数の対象機器を除いた他のフィールド機器(非対象機器)をネットワーク70から除外する(S31)。具体的には、電源指令部63は、第二、第四、および第五のフィールド機器を除いた他の第一、第三のフィールド機器に対して電源をオフにするように指令する。
【0063】
次に、フレーム構成部61は、データフィールド82の一部または全部を対象フィールドとし、複数の対象機器に対応するノード72,74,75に対象フィールドを再配分することによりデータ区画の比率を変更してフレーム80を再構成する(S32)。具体的には、フレーム構成部61は、
図6の上から二段目に示すように、データフィールド82の全域を対象フィールドとして、第二、第四、および第五のデータ区画R2,R4,R5にそれぞれ割り当てる。
【0064】
また、フレーム構成部61は、それぞれのメンテナンスに用いられる通信に同一のフレーム80が用いられるようにフレーム80を再構成する場合に、対象フィールドの比率の設定について種々の態様を採用し得る。具体的には、フレーム構成部61は、本実施形態において、下記の比率の設定方法(A)-(C)の何れか一つにより対象フィールドを再配分する。
【0065】
設定方法(A)において、フレーム構成部61は、複数の対象機器のそれぞれに対応する複数のノードごとのメンテナンスに必要なデータ容量の割合に基づいて比率を設定する。ここで、複数のノード72,74,75ごとのメンテナンスに必要なデータ容量の割合を、a:b:cとする。フレーム構成部61は、上記のデータ容量の割合(a:b:c)に基づいてデータフィールド82を再配分することにより各データ区画R1-R5の比率を変更してフレーム80を再構成する。これにより、
図6の上から三段目に示すように、対象フィールドにおけるそれぞれのデータ区画R22,R42,R52の割合が、データ容量の割合(a:b:c)となる。
【0066】
設定方法(B)において、フレーム構成部61は、データフィールド82を複数の対象機器に対応する複数のノード72,74,75ごとに均等に再配分する。これにより、フレーム構成部61は、各データ区画R1-R5の比率を変更してフレーム80を再構成する。結果として、データフィールド82は、
図7の上から三段目に示すように、対象フィールドにおけるそれぞれのデータ区画R23,R43,R53が等しい容量(q)となり、それぞれの割合が1:1:1となる。
【0067】
設定方法(C)において、フレーム構成部61は、データフィールド82を複数の対象機器に対応する複数のノード72,74,75ごとに予め設定された通信の重みの割合に基づいてデータフィールド82を再配分する。ここで、複数のノード72,74,75ごとに予め設定された通信の重みの割合を、d:e:fとする。フレーム構成部61は、上記の重みの割合(d:e:f)に基づいてデータフィールド82を再配分することにより各データ区画R1-R5の比率を変更してフレーム80を再構成する。
【0068】
結果として、データフィールド82は、
図8の上から三段目に示すように、対象フィールドのけるそれぞれのデータ区画R24,R44,R54の割合が、重みの割合(d:e:f)となる。なお、上記の「通信の重み」、例えばノードであるフィールド機器が過去に実行されたメンテナンスにおける通信容量の実績値や、メンテナンスの頻度に基づいて設定される。これにより、ファームウェアのファイルサイズや更新頻度、動作ログのファイルサイズなどに応じて設定された通信の重みが、データフィールド82の再配分に反映される。
【0069】
続いて、既述のサイクル転送と同様に、処理指令部62によるコンフィグレーション処理の実行の指令(S23)、およびメンテナンスにおける通信の終了判定(S24)が実行される。ここで、一括転送の態様においては、実行予定のメンテナンスの通信が同一のフレーム80によって一括で行われるため、メンテナンスにおける通信の終了(S24:Yes)と同時に、実行予定のメンテナンスの通信が全て終了する(S13:Yes)。
【0070】
その後に、電源指令部63が非対象機器に対して電源をオンにするように指令する(S14)。さらに、フレーム構成部61は、非対象機器の電源のオンに伴って対応するノード71,73からネットワーク70への加入要求があった後に、データ区画R1-R5の比率を元に戻してフレーム80を再構成する(S15)。詳細には、フレーム構成部61は、複数のフィールド機器に対応するノード71-75ごとに規定容量のデータ区画R1-R5が割り当てられるように対象フィールド(上記の例では、データフィールド82の全域)を再配分する(
図6-
図8の最下段を参照)。
【0071】
最後に、処理指令部62によりコンフィグレーション処理の実行が指令され(S16)、通信制御装置60および複数のノードは、再構成されたフレーム80を用いた通信が可能な状態となる。上記のように、サイクル転送や一括転送を適用する通信制御処理を実行する本実施形態に構成によると、メンテナンスの対象の対象機器を勘案して各データ区画R1-R5の比率を変更してフレーム80が再構成される。
【0072】
これにより、フレーム80において対象機器に対応するノード71-75に割り当てられる容量が増量されるので、メンテナンスにおけるデータの通信に必要なフレーム80の送受信回数を低減できる。結果として、メンテナンス時における通信効率を向上でき、メンテナンスの所要時間を短縮することができる。
【0073】
6.実施形態の変形態様
6-1.通信制御処理について
通信制御装置60は、通信制御処理においてネットワーク70から非対象機器に対応するノードを除外する場合に、電源指令部63により非対象機器の電源をオフにするように指令する構成とした。これに対して、通信制御装置60は、上記の他に、非対象機器に対応するノードを実質的に通信対象から除外すべく、そのノードをパッシブ状態にするように制御してもよい。
【0074】
具体的には、通信制御装置60は、通信制御処理のS21,S31において、電源指令部63による非対象機器に対する電源オフ指令の送出に換えて、処理指令部62による非対象機器に対応するノードに対するパッシブ状態への切り換え指令の送出を行わせてもよい。これにより、非対象機器に対応するノードは、フレーム80への書き込みを禁止されて、実質的にネットワーク70から除外された状態となる。このとき、フレーム構成部61は、パッシブ状態のノードに割り当てるデータ区画のデータ容量を0または最小データ容量にしてもよい。
【0075】
また、実行予定のメンテナンスの通信が終了した後に、通信制御装置60は、通信制御処理のS14において、電源指令部63による非対象機器に対する電源オン指令の送出に換えて、処理指令部62による非対象機器に対応するノードに対するアクティブ状態への切り換え指令の送出を行わせる。その後に、フレーム80の再構成(S15)およびコンフィグレーション処理(S16)が実行されることにより、フレーム80は、部品装着機1の生産モードにおいて必要とされる状態に戻される。
【0076】
なお、上記の態様がサイクル転送に適用される場合には、順次実行されるメンテナンスの対象機器に対応するノードのみがアクティブ状態を維持され、メンテナンスの進行に伴ってアクティブ状態とパッシブ状態とが順次切り換えられる。また、上記の態様が一括転送に適用される場合には、メンテナンスの対象機器に対応するノードの全てがアクティブ状態を維持され、非対象機器に対応するノードの全てがパッシブ状態とされる。
【0077】
上記のような構成によると、メンテナンスの実行によって非対象機器の電源の切り換えを省略することができる。これにより、非対象機器の再起動等の所要時間だけメンテナンスの所要時間を短縮することができる。また、パッシブ状態とされたノードに割り当てるデータ区画のデータ容量を0にすることで、対象機器に対応するノードに割り当て可能なデータ容量を増加させることができる。
【0078】
また、通信制御装置60は、フレーム構成部61によりそれぞれのノードに割り当てるデータ区画のデータ容量の最小値を最小データ容量とすることにより、通信制御処理において全てのノードをアクティブ状態に維持することができる。具体的には、通信制御装置60は、通信制御処理のS21,S31における処理を省略し、S22,S32においてフレーム構成部61により非対象機器に対応するノードに割り当てるデータ区画の容量を最小データ容量とさせる。
【0079】
そして、フレーム構成部61は、対象機器に対応するノードごとに対象フィールドのうち残りの領域を再配分することにより各データ区画R1-R5の比率を変更してフレーム80を再構成する。なお、上記の態様がサイクル転送に適用される場合には、順次実行されるメンテナンスの対象機器以外のフィールド機器に対応するノードには、最小データ容量が割り当てられ、残りの容量が一の対象機器に対応するノードに割り当てられる。そして、一の対象機器がメンテナンスの進行に伴って順次切り換えられる。
【0080】
また、上記の態様が一括転送に適用される場合には、非対象機器に対応するノードの全てに最小データ容量が割り当てられ、残りの容量が1以上の対象機器に対応するノードに割り当てられる。なお、対象機器が複数の場合には、データ区画の比率について、実施形態にて例示したような比率の設定方法(A)-(C)を同様に適用することができる。
【0081】
また、実行予定のメンテナンスの通信が終了した後に、通信制御装置60は、通信制御処理のS14において、電源指令部63による非対象機器に対する電源オン指令の送出を省略する。その後に、フレーム80の再構成(S15)およびコンフィグレーション処理(S16)が実行されることにより、フレーム80は、部品装着機1の生産モードにおいて必要とされる状態に戻される。
【0082】
上記のような構成によると、メンテナンスの実行によってノードの状態の切り換えを省略することができる。但し、メンテナンスの対象機器に対応するノードにより大きなデータ容量を割り当てて通信効率の向上を図るという観点からは、実施形態にて例示した態様が好適である。
【0083】
6-2.ネットワーク70の通信規格
実施形態において、ネットワーク70に適用される通信規格は、イーサネットであるものとした。そして、通信制御装置60は、マスター・スレーブ方式が採用されたネットワーク70において、スレーブと定周期で通信を行うマスターであるものとした。これに対して、通信制御装置60は、複数のノードごとに規定容量のデータ区画を割り当てられたデータフィールド82を有するフレームを送受信するネットワーク70であれば、当該ネットワーク70に対応する種々の通信規格および通信方式を適用することができる。
【0084】
6-3.通信制御装置60の適用
実施形態において、通信制御装置60は、部品装着機1のネットワーク70に適用されるものとした。そして、通信制御装置60(マスター)が通信するノードは、基板搬送装置10、部品供給装置20、部品移載装置30、部品カメラ41、および基板カメラ42であるものとした。これに対して、通信制御装置60は、ノードが複数であるネットワーク70であれば適用することができる。
【0085】
複数のノードを有するネットワーク70においてフレーム80の再構成が必要となった場合に、通信制御装置60は、複数のノードごとの各データ区画の比率を変更してフレーム80を再構成する。具体的には、通信制御装置60は、部品供給装置20において複数のフィーダ22を管理するパレット装置に組み込まれてもよい。この構成において、複数のフィーダ22をフィールド機器であり、複数のフィーダ22ごとに設けられパレット装置と通信可能な通信装置がネットワーク70を構成するノードとなる。
【0086】
また、実施形態において、対基板作業機は、部品装着機1である構成とした。これに対して、通信制御装置60は、複数のフィールド機器を複数のノードとする対基板作業機であれば、部品装着機1以外の対基板作業機に適用することができる。具体的には、対基板作業機は、部品装着機1とともに生産ラインを構成するはんだ印刷機、電子部品を装着された回路基板を検査する検査装置であってもよい。さらに、通信制御装置60は、これらの対基板作業機とホストコンピュータを含むネットワークや、対基板作業機以外の種々の作業を行う装置のネットワークに適用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1:部品装着機、 10:基板搬送装置、 20:部品供給装置、 21:スロット、 22:フィーダ、 30:部品移載装置、 41:部品カメラ、 42:基板カメラ、 50:制御装置、 60:通信制御装置、 61:フレーム構成部、 62:処理指令部、 63:電源指令部、 70:ネットワーク、 71-75:ノード、 76:通信線、 80:フレーム、 81:ヘッダ、 82:データフィールド、 R1-R5:データ区画、 Rs:余剰領域