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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の速度及びトルク制御
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/08 20060101AFI20231122BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20231122BHJP
   B60K 6/52 20071001ALI20231122BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20231122BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20231122BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20231122BHJP
   B60W 20/17 20160101ALI20231122BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60K6/48 ZHV
B60K6/52
B60K6/54
B60L15/20 J
B60L50/16
B60W20/17
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022542297
(86)(22)【出願日】2021-01-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-13
(86)【国際出願番号】 EP2021050320
(87)【国際公開番号】W WO2021140234
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】2000312.5
(32)【優先日】2020-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513208973
【氏名又は名称】ジャガー・ランド・ローバー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JAGUAR LAND ROVER LIMITED
【住所又は居所原語表記】Abbey Road,Whitley,Coventry,Warwickshire CV3 4LF GB
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ロドルフォ・オリヴェイラ・ジャクー
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ハンコック
(72)【発明者】
【氏名】オリビエ・ジャン・ブリス・ロケ
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-091581(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0297111(US,A1)
【文献】特開2017-159719(JP,A)
【文献】特開2006-101644(JP,A)
【文献】特開2003-061207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/08
B60K 6/48
B60K 6/54
B60W 20/17
B60K 6/52
B60L 50/16
B60L 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の電気牽引モーターを制御するための制御システムであって、前記制御システムは1つ又は複数のコントローラを備え、前記制御システムは、
ラッシュクロス保護比率リミッターに依存して、速度目標に向けて速度を変更するために前記電気牽引モーターから要求されるトルクの変化比率を制限し、
前記速度が前記速度目標に到達する前の前記制限の解除時に、前記速度目標に向けて速度を変更するために前記電気牽引モーターから要求されるトルクの初期増加を抑制する、
ように構成されている、制御システム。
【請求項2】
前記1つ又は複数のコントローラは、
速度及び/又は前記速度目標を示す情報を受信するための電気入力を有する少なくとも1つの電子プロセッサと、
前記少なくとも1つの電子プロセッサに電気的に結合され、その中に格納された命令を有している少なくとも1つの電子メモリデバイスと、
を集合的に備え、
前記少なくとも1つの電子プロセッサは、前記少なくとも1つのメモリデバイスにアクセスし、その上で前記命令を実行して、前記制御システムに、前記情報に応じて前記電気牽引モーターを制御させるように構成されている、
請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
制御方式の積分器トルクを制御することによって、前記トルクの初期増加を抑制するように構成されている、請求項1又は2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記積分器トルクを減少させて前記積分器トルクの上昇を少なくとも部分的にキャンセルすることによって、前記トルクの初期増加を抑制するように構成される、請求項3に記載の制御システム。
【請求項5】
前記ラッシュクロス保護比率リミッターの解除後に前記電気牽引モーターから要求される最初のトルクの前記積分器トルクが減少される、請求項4に記載の制御システム。
【請求項6】
前記積分器トルクは、前記制限の解除時に前記要求されるトルクのステップ変化を低減又は除去するように制御される、請求項3,4又は5に記載の制御システム。
【請求項7】
前記ステップ変化を低減させることは、10Nm未満の大きさに前記ステップ変化を低減させることを備える、請求項6に記載の制御システム。
【請求項8】
比例トルク、積分器トルク及び任意選択の微分トルクを使用して、前記速度目標に向けて速度を変更するように、前記制限の解除後に前記電気牽引モーターから要求される前記トルクを制御するように構成されている、請求項1から7までのいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項9】
前記制限の解除後及び前記初期増加の抑制後に、前記電気牽引モーターから要求されるトルクを前記制限された比率よりも大きな比率まで増加させることができるように構成された、請求項1から8までのいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項10】
前記速度目標は、車両クリープ速度目標又は車両クリープに関連するエンジンアイドル速度目標である、請求項1から9までのいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項11】
エンジンは車両ホイールの第1セットに牽引トルクを提供するように動作可能であり、前記電気牽引モーターは車両ホイールの第2セットに牽引トルクを提供するように動作可能である、請求項1から10までのいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項12】
前記車両ホイールの第1セットが前輪であり、かつ前記車両ホイールの第2セットが後輪であるか、又は前記車両ホイールの第1セットが後輪であり、かつ前記車両ホイールの第2セットが前輪である、請求項11に記載の制御システム。
【請求項13】
前記電気牽引モーターは、エンジンアクセサリ駆動モータージェネレーター又はクランクシャフト一体型モータージェネレーターである、請求項1から10までのいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項に記載の前記制御システム及び前記電気牽引モーターを備える車両。
【請求項15】
車両のエンジン及び電気牽引モーターを制御する方法であって、前記方法は、
ラッシュクロス保護比率リミッターに依存して、速度目標に向けて速度を変更するために前記電気牽引モーターから要求されるトルクの変化比率を制限することと、
前記速度が前記速度目標に到達する前の前記制限の解除時に、前記速度目標に向けて速度を変更するために前記電気牽引モーターから要求されるトルクの初期増加を抑制することと、
を備える、方法。
【請求項16】
実行されたとき、請求項15に記載の方法を実行するように構成されたコンピュータソフトウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハイブリッド車両の制御システム及び方法に関する。特に、しかし排他的にではなく、それは、車両クリープを制御するためのハイブリッド車両の制御システム及び方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
車両クリープ現象は、内燃機関(エンジン)等の原動機(トルク源)と車両ホイールとの間のトルク経路にトルクコンバータを備えた車両で発生する。車両クリープは、トルク経路が接続されている間、エンジンがアイドリング中であっても、車両に移動を生じさせる。車両クリープは、トルクコンバータの流体継手設計により発生する。
【0003】
電気牽引モーターと車両ホイールの間のトルク経路を備えているが、トルクコンバータがないか又は「アイドリング」する必要がない電気車両又はハイブリッド電気車両では、運転者が期待する車両クリープに近づけるために疑似的な車両クリープ機能を提供され得る。疑似的な車両クリープ機能は、トルクコンバータの代わりにクラッチパックが設けられるデュアルクラッチオートマチックトランスミッション等のオートマチックトランスミッションとエンジンとを備えた車両にも提供されることができる。
【0004】
車両クリープ状態に入ると、トルク方向の反転が発生する場合がある。例えば、より速い車両速度から車両クリープに入るときに、トルクは、負のトルク(オーバーラン又はブレーキ)から正のトルク(最小アイドル速度/クリープ速度を維持するため)に切り替わる場合がある。例えば下り坂勾配等により、車両クリープ中に車両速度が増加すると、車両クリープトルクは、負になり、アイドル速度/クリープ速度を維持するであろう。摩擦ブレーキで車両が停止され、その次に摩擦ブレーキが解放された場合、トルクが負から正に切り替わる場合がある。
【0005】
車両クリープに関連するトルク方向の反転は、車両の乗員にジャークを与えるとともに知覚可能なトルクショックを与えるラッシュクロスイベントを引き起こす場合がある。ラッシュクロスイベントは、トルク方向の反転から生じるバックラッシュとして定義される。バックラッシュは、トルク経路を提供する駆動ライン等の機構における無駄な動き(lost motion)を吸収する回転方向の反転によって引き起こされる。ラッシュクロスイベントは、トルク経路内のすべての構成要素の無駄な動きが組み合わされるので、車両がギアに入っている状態のときに、最も知覚可能となる。従って、車両のクリープは、知覚可能なラッシュクロスイベントに関連している。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、従来技術に関連する1つ又は複数の不利な点に対処し、車両乗員の快適性を向上させるとともに、耐久性を向上させることである。
【0007】
本発明の態様及び実施形態は、添付の特許請求の範囲に記載されているように、制御システム、車両、方法、及びコンピュータソフトウェアを提供する。
【0008】
本発明の一態様によれば、車両の電気牽引モーターを制御するための制御システムが提供され、制御システムは1つ又は複数のコントローラを備え、制御システムは、ラッシュクロス保護比率リミッターに依存して、速度目標に向けて速度を変更するために電気牽引モーターから要求されるトルクの変化比率を制限し、速度が速度目標に到達する前の制限の解除時に、速度目標に向けて速度を変更するために電動牽引モーターから要求されるトルクの初期増加を抑制(すなわち低減又は防止)するように構成されている。
【0009】
利点は、速度コントローラによって命令されるトルク反転中にジャークが減少されるので、車両の快適性及び耐久性が改善されることである。まず、ラッシュクロス保護比率リミッターにより、ジャークが減少される。次に、ラッシュクロス保護比率リミッターの解除後の速度コントローラの再初期化時にトルクが急激に増加することが抑制されるので、ジャークが減少される。
【0010】
制御システムは、制御方式(速度コントローラ)の積分器トルクを制御することによって、トルクの初期増加を抑制するように構成されていてよい。利点は、比率リミッターが適用されている間に積分器トルクが大幅に上昇(ワインドアップ)する傾向を補償することによって、比率リミッターの解除後の車両の快適性がさらに改善されることである。
【0011】
制御システムは、積分器トルクを減少させて積分器トルクの上昇を少なくとも部分的にキャンセルすることによって、トルクの初期増加を抑制するように構成されてよい。利点は、ラッシュクロス保護比率リミッターの影響としての追加の上昇がキャンセルされ得ることである。
【0012】
いくつかの例では、ラッシュクロス保護比率リミッターの解除後に電気牽引モーターから要求される最初のトルクの積分器トルクが減少される。利点は、積分器トルクが再び上昇する必要があるので、トルクがその後スムーズに強くなることである。
【0013】
いくつかの例では、積分器トルクは、制限の解除時に要求されるトルクのステップ変化を低減又は除去するように制御される。いくつかの例では、ステップ変化を低減させることは、10Nm未満の大きさにステップ変化を低減させることを備えている。
【0014】
制御システムは、比例トルク、積分器トルク及び任意選択の微分トルクを使用して、速度目標に向けて速度を変更するように、制限を解除後に電動牽引モーターから要求されるトルクを制御するように構成されていてよい。利点は、比率リミッターが解除されると、比例積分微分(PID:proportional-integral-derivative)速度コントローラ又はPI速度コントローラがトルクの完全な制御を取り戻すため、トルクがスムーズかつ迅速に強くなることである。
【0015】
制御システムは、制限の解除後及び初期増加の抑制後に、電動牽引モーターから要求されるトルクを制限された比率よりも大きい比率まで増加させることができるように構成されていてよい。利点は、必要とされる速度目標に迅速に到達できることである。
【0016】
速度目標は、車両クリープ速度目標であってよい。利点は、車両クリープがよりスムーズになり、車両クリープへの/からの移行がよりスムーズになることである。
【0017】
いくつかの例では、エンジンは車両ホイールの第1セットに牽引トルクを提供するように動作可能であり、電動牽引モーターは車両ホイールの第2セットに牽引トルクを提供するように動作可能である。一例では、車両ホイールの第1セットは前輪であり、かつ車両ホイールの第2セットは後輪である。別の例では、車両ホイールの第1セットは後輪であり、かつ車両ホイールの第2セットは前輪である。利点は、4輪駆動車両クリープを実装できる可能性があることである。
【0018】
他の例では、電動牽引モーターは、エンジンアクセサリ駆動モータージェネレーター又はクランクシャフト一体型モータージェネレーターである。
【0019】
本発明の別の態様によれば、制御システム、エンジン及び電気牽引モーターを備える、車両が提供される。
【0020】
本発明の別の態様によれば、車両のエンジン及び電気牽引モーターを制御する方法が提供され、この方法は、ラッシュクロス保護比率リミッターに依存して、速度目標に向けて速度を変化させるために電気牽引モーターから要求されるトルクの変化比率を制限することと、速度が速度目標に到達する前の制限の解除時に、速度目標に向けて速度を変更するために電動牽引モーターから要求されるトルクの初期増加を抑制することとを備えている。
【0021】
本発明の別の態様によれば、実行されたとき、本明細書に記載の方法のいずれか1つ又は複数を実行するように構成されたコンピュータソフトウェアが提供される。
【0022】
本発明の更なる態様によれば、プロセッサによって実行されたとき、本明細書に記載の方法のいずれか1つ又は複数の実行を引き起こすコンピュータ可読命令を備える非一時的なコンピュータ可読媒体が提供される。
【0023】
本発明の別の態様によれば、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つ又は複数を実行するように構成された制御システムが提供される。
【0024】
本明細書に記載の1つ又は複数のコントローラは、速度及び/又は速度目標を示す情報を受信するための電気入力を有する少なくとも1つの電子プロセッサと、少なくとも1つの電子プロセッサに電気的に結合され、その中に格納された命令を有している少なくとも1つの電子メモリデバイスと、を集合的に備えていてよく、少なくとも1つの電子プロセッサは、少なくとも1つのメモリデバイスにアクセスし、その上で命令を実行して、制御システムに、情報に応じて電気牽引モーターを制御させるように構成されている。
【0025】
本発明の別の態様によれば、車両の電気牽引モーター及び/又はエンジンを制御するための制御システムが提供され、この制御システムは1つ又は複数のコントローラを備え、制御システムは、ラッシュクロス保護比率リミッターに依存して、速度目標に向けて速度を変更するために電気牽引モーター及び/又はエンジンから要求されるトルクの変化比率を制限し、速度が速度目標に到達する前の制限の解除時に、速度目標に向けて速度を変更するために電動牽引モーターから要求されるトルクの初期増加を抑制(すなわち低減又は防止)するように構成されている。一例では、速度目標は、エンジンアイドル速度目標であり得る。
【0026】
本出願の範囲内で、先の段落、特許請求の範囲及び/又は以下の説明並びに図面に記載されている様々な態様、実施形態、実施例及び代替案、特にそれらの個々の特徴事項は、独立して又は任意の組み合わせで取り得ることが明示的に意図されている。すなわち、すべての実施形態及び/又は任意の実施形態の特徴事項は、そのような特徴事項が非互換でない限り、任意の方法及び/又は組み合わせで組み合わせることができる。出願人は、最初に提出した請求項を変更する権利、又はそれに応じて新しい請求項を提出する権利を留保する。これには、当初その方法で請求されていなくても、他の請求項に従属するように、及び/又は他の請求項の任意の特徴事項を組み込むように、最初に提出した任意の請求項を補正する権利が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
次に、本発明の1つ又は複数の実施形態を、例としてのみ、添付の図面を参照して説明する。
【0028】
図1図1は、車両の一例を示す。
図2図2は、システムの一例を示す。
図3A図3Aは、制御システムの一例を示す。
図3B図3Bは、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体の一例を示す。
図4図4は、方法の一例を示す。
図5図5は、速度コントローラの一例のブロック図を示す。
図6A図6Aは、車両速度軸及び時間軸を有するグラフの一例を示す。
図6B図6Bは、トルク要求軸及び時間軸を有するグラフの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明の実施形態が実装され得る車両10の一例を示している。必ずしもすべてではないがいくつかの例では、車両10は乗用車両であり、乗用車又は車両とも呼ばれる。他の例では、本発明の実施形態は、産業用車両等の他の用途に関して実装され得る。
【0030】
車両10は、他の推進モードの中でも電気のみの推進モードを有するハイブリッド電気車両(HEV)であり得る。HEVは、パラレルHEVとして動作するように構成され得る。パラレルHEVは、エンジンと少なくとも1つの車両ホイールとの間のトルク経路、及び電気牽引モーターと少なくとも1つの車両ホイールとの間のトルク経路を備える。トルク経路は、クラッチ等のトルク経路コネクタによって切断可能であり得る。パラレルHEVはシリーズHEVとは異なる。これは、シリーズHEVでは、エンジンの目的が電気エネルギーを生成することであり、エンジンと車両ホイールとの間にトルク経路がないためである。
【0031】
図2は、パラレルHEV10のシステム20を示している。システム20は、少なくとも部分的に、HEVのパワートレインを定義する。
【0032】
システム20は、制御システム208を備える。制御システム208は、1つ又は複数のコントローラを備える。制御システム208は、ハイブリッドパワートレイン制御モジュール、エンジン制御ユニット、トランスミッション制御ユニット、牽引バッテリー管理システム、及び/又は同様のものの1つ又は複数を備えていてよい。
【0033】
システム20は、エンジン202を備える。エンジン202は、燃焼機関である。図示のエンジン202は、内燃機関である。図示のエンジン202は、3つの燃焼室を備えるが、他の例では、異なる数の燃焼室が設けられていてよい。
【0034】
エンジン202は、制御システム208がエンジン202の出力トルクを制御できるように、制御システム208に動作可能に結合されている。エンジン202の出力トルクは、エンジン202のタイプに応じて、空燃比、スパークタイミング、ポペットバルブリフト、ポペットバルブタイミング、スロットル開度、燃料圧力、ターボチャージャーブースト圧力及び/又は同様のもののうちの1つ又は複数を制御することによって制御され得る。
【0035】
システム20は、エンジン202を始動するための任意選択のピニオンスターター206を備える。
【0036】
システム20は、エンジン202から出力トルクを受け取るための車両トランスミッション配置204を備える。車両トランスミッション配置204は、オートマチック車両トランスミッション又はセミオートマチック車両トランスミッションを備えていてよい。車両トランスミッション配置204は、エンジン202とギアトレインとの間に流体継手トルクコンバータ217を備える。
【0037】
システム20は、ギアトレインからの出力トルクを受け取るためのデファレンシャル(図示せず)を備えていてよい。デファレンシャルは、トランスアクスルとして車両トランスミッション配置204に統合されるか又は別個に設けられていてよい。
【0038】
エンジン202は、トルク経路220を介して車両ホイールの第1セット(FL,FR)に機械的に接続されているか又は接続可能である。トルク経路220は、エンジン202の出力から車両トランスミッション配置204に延び、次に車軸/駆動シャフトに延び、その次に車両ホイールの第1セット(FL,FR)に延びる。車両オーバーラン及び/又は摩擦ブレーキの状況では、トルクは、車両ホイールの第1セット(FL,FR)からエンジン202に流れる場合がある。車両ホイールの第1セット(FL,FR)に向かうトルクの流れは正のトルクであり、車両ホイールの第1セット(FL,FR)からのトルクの流れは負のトルクである。
【0039】
図示された車両ホイールの第1セット(FL,FR)は前輪を備え、車軸は前横方向車軸である。従って、システム20は、エンジン202による前輪駆動用に構成される。別の例では、車両ホイールの第1セット(FL,FR)は後輪を備える。図示された車両ホイールの第1セット(FL,FR)は一対の車両ホイールであるが、他の例では異なる数の車両ホイールが設けられ得る。
【0040】
図示のシステム20では、ハイブリッド車両の構成要素のためのスペースを作るために、長手方向(中央)の駆動シャフトが設けられていない。従って、エンジン202は、後輪の第2セット(図では後輪RL,RR)に接続可能ではない。エンジン202は、スペースを節約するために横置きに取り付けられ得る。代替的な例では、エンジン202は、前輪及び後輪を駆動するように構成され得る。
【0041】
クラッチ等のトルク経路コネクタ218は、車両トランスミッション配置204のベルハウジングの内側及び/又は外側に設けられている。クラッチ218は、エンジン202と車両ホイールの第1セット(FL,FR)との間のトルク経路220を接続及び切断するように構成されている。システム20は、ユーザーの介入なしにクラッチ218を自動的に作動させるように構成され得る。
【0042】
システム20は、第1電気牽引モーター216を備えている。第1電気牽引モーター216は、交流誘導モーター、又は永久磁石モーター、又は別のタイプのモーターであり得る。第1電気牽引モーター216は、クラッチ218のエンジン側に配置されている。
【0043】
第1電気牽引モーター216は、ベルト又はチェーンを介してエンジン202に機械的に結合され得る。例えば、第1電気牽引モーター216は、ベルト一体型スタータージェネレーターであり得る。この図では、第1電気牽引モーター216は、エンジン202の車両トランスミッション端の反対側の、エンジン202のアクセサリー駆動端に配置されている。代替的な例では、第1電気牽引モーター216は、エンジン202の車両トランスミッション端に配置された、クランクシャフト一体型モータージェネレーターである。
【0044】
第1電気牽引モーター216は、正のトルクを加えるように構成されるとともに、エンジン202のクランクシャフトに負のトルクを加えるように構成され、例えば、エンジン202の出力トルクを高める、停止中又は惰行中にエンジン202を非アクティブ化(停止)する、エンジン202をアクティブ化(始動)する、及び回生モードでの回生ブレーキ等の機能を提供する。ハイブリッド電気車両モードでは、エンジン202及び第1電気牽引モーター216は両方とも、出力トルクを高めるために正のトルクを同時に供給するように動作可能である。第1電気牽引モーター216は、持続的な電気のみの駆動ができなくてもよい。
【0045】
しかしながら、エンジン202と車両ホイールの第1セット(FL,FR)との間のトルク経路220が切断されたとき、第1電気牽引モーター216と車両ホイールの第1セット(FL,FR)との間のトルク経路220も切断される。
【0046】
図2は、電気のみの駆動を備える少なくとも電気車両モードを可能にするように構成された第2電気牽引モーター212を示している。必ずしもすべてではないがいくつかの例では、第2電気牽引モーター212の公称最大トルクは、第1電気牽引モーター216の公称最大トルクよりも大きい。
【0047】
エンジン202と車両ホイールの第1セット(FL,FR)との間のトルク経路220がクラッチ218によって切断された場合であっても、第2電気牽引モーター212が少なくとも1つの車両ホイールに接続されているので、車両10は電気車両モードで駆動され得る。
【0048】
図示の第2電気牽引モーター212は、図示の車両ホイールの第2セット(RL,RR)にトルクを提供するように構成されている。車両ホイールの第2セット(RL,RR)は、車両ホイールの第1セット(FL,FR)とは異なる車両ホイールを備える。図示された車両ホイールの第2セット(RL,RR)は後輪を備え、第2電気牽引モーター212は後部横軸を介して後輪RL,RRにトルクを提供するように動作可能である。従って、車両10は、電気車両モードで駆動される後輪である。代替的な例では、車両ホイールの第2セットは、車両ホイールの第1セットのうちの少なくとも1つの車両ホイールを備える。
【0049】
制御システム208は、寄生的なポンピングエネルギー損失を低減するために、電気車両モードにおいて、エンジン202と車両ホイールの第1セット(FL,FR)との間のトルク経路220を切断するように構成され得る。例えば、クラッチ218が開かれ得る。図2の例では、これは、第1電気牽引モーター216も車両ホイールの第1セット(FL,FR)から切り離されるだろうことを意味する。
【0050】
第2電気牽引モーター212の別の恩恵は、中央の駆動シャフトがないにもかかわらず4輪駆動動作を可能にするために、第2電気牽引モーター212もハイブリッド電気車両モードで動作可能に構成されることができることである。
【0051】
電気牽引モーター用の電力を貯蔵するために、システム20は、牽引バッテリー200を備える。牽引バッテリー200は、電気牽引モーター等の電力ユーザーによって必要とされる公称電圧を提供する。電気牽引モーターが異なる電圧で動作する場合、電圧を変換するためにDC-DCコンバーター(図示せず)等が設けられ得る。
【0052】
牽引バッテリー200は、高電圧バッテリーであり得る。高電圧牽引バッテリーは、数十ボルトの公称電圧を提供するマイルドなHEVの牽引バッテリーとは対照的に、数百ボルトの公称電圧を提供する。牽引バッテリー200は、持続的な距離の電気のみの駆動をサポートするための電圧及び容量を有していてよい。牽引バッテリー200は、範囲を最大化するために、数キロワット時の容量を有していてよい。容量は、数十キロワット時であってもよいし、100キロワット時を超えていてもよい。
【0053】
牽引バッテリー200は1つの実体として示されているが、牽引バッテリー200の機能は、車両10上の異なる場所にある複数の小さな牽引バッテリーを使用して実装され得る。
【0054】
いくつかの例では、第1電気牽引モーター216及び第2電気牽引モーター212は、同じ牽引バッテリー200から電気エネルギーを受け取るように構成され得る。第1(マイルドな)電気牽引モーター216を大容量バッテリー(数十から数百キロワット時)とペアにすることによって、第1電気牽引モーター216は、短いバーストではなく、持続的な期間にわたって、本明細書に記載の方法の機能性を提供することができる場合がある。別の例では、電気牽引モーター212,216は、異なる牽引バッテリーとペアにされ得る。
【0055】
最後に、図示のシステム20は、インバータを含む。電気牽引モーターのそれぞれに1つずつ、2つのインバータ210,214が示されている。他の例では、1つのインバータ又は3つ以上のインバータが設けられ得る。
【0056】
代替的な実施形態では、車両10は、図2に示されている以外のものであり得る。
【0057】
図3Aは、制御システム208がどのように実装され得るかを示している。図3Aの制御システム208は、コントローラ300を示す。他の例では、制御システム208は、車両10にオンボード及び/又はオフボードする複数のコントローラを備えていてよい。
【0058】
図3Aのコントローラ300は、少なくとも1つの電子プロセッサ302と、電子プロセッサ302に電気的に結合され、その中に格納された命令306(例えばコンピュータプログラム)を有する少なくとも1つの電子メモリデバイス304とを含み、少なくとも1つの電子メモリデバイス304及び命令306は、少なくとも1つの電子プロセッサ302と共に、本明細書に記載の方法のいずれか1つ又は複数の実行を引き起こすように構成されている。
【0059】
図3Bは、命令306(コンピュータソフトウェア)を備える非一時的なコンピュータ可読記憶媒体308を示している。
【0060】
制御システム208は、設定値に向けて変数(トルク)を操作するためのコントローラ出力を提供するように構成されていてよい。設定値の例は、少なくとも1つのトルク目標である。少なくとも1つのトルク目標は、通常、運転者のトルク要求(例えばアクセルペダル踏み込み(accelerator pedal depression)、APD)、自律運転トルク要求、又はクルーズコントロールトルク要求等のトルク要求に基づいていてよい。少なくとも1つのトルク目標は、通常、トルク要求に比例していてよい。トルク目標は、エンジンの出力トルクを制御するためのエンジントルク目標を含んでいてよい。トルク目標は、電気牽引モーターの出力トルクを制御するための電気牽引モータートルク目標を含んでいてよい。
【0061】
別の設定値の例は、速度目標である。速度目標は、エンジンアイドル速度目標、車両速度目標、又は電気牽引モーター速度目標等のエンジン速度目標を含んでいてよい。エンジンからのトルク及び/又は電気牽引モータートルクは、アイドリング、車両クリープ、クルーズコントロール、又はその他のシナリオで使用される速度目標に速度を一致させるように制御され得る。
【0062】
図2のパワートレイン等のシステム20は、複数のモードで動作可能であってよい。1つのモードでは、エンジン202が非アクティブ化され、エンジン202と車両ホイールの第1セット(FL,FR)との間のトルク経路220が切断される。そのモードは電気車両モードであり得る。別のモードでは、エンジン202が再びアクティブ化され、トルク経路220が再接続される。その別のモードは、ハイブリッド電気車両モード又はエンジンのみモードであり得る。
【0063】
車両10は、上記のモードの1つ又は複数でクリープするように構成されていてよい。電気車両モードでは、第2電気牽引モーター212は、疑似的な車両クリープ機能を実施してよい。疑似的な車両クリープは、車両速度目標に依存する場合がある。ハイブリッド電気車両モードでは、第2電気牽引モーター212及びエンジン202は、4輪駆動車両クリープを共に実施してよい。いくつかの例では、少なくとも部分的にエンジン速度を制御するために、第1電気牽引モーター216が使用されることがある。ハイブリッド電気車両モード又はエンジンのみのモードでは、トルクコンバータ217は、オートマチック車両トランスミッションがインギアであるときに、車両クリープを引き起こす場合がある。クリープ速度は、とりわけ、一定又は可変のエンジンアイドル速度目標に依存する。
【0064】
車両10がどのモードにあるか、又はどのモードが利用可能であるかに依存して、クリープ速度は、少なくとも部分的に、速度制御の何らかの形態に依存する。速度制御は、クリープ速度に影響を与えるエンジンアイドル速度コントローラ、又は疑似的な車両クリープのための車両クリープ速度コントローラに対応する場合がある。
【0065】
図4は、制御システム208によって実施される、本発明の一態様による方法400を示す。方法400は、車両クリープ状況において、
ラッシュクロス保護比率リミッターに依存して、速度目標に向けて速度を変更するために電気牽引モーター(212又は216)から要求されるトルクの変化比率を制限すること(ブロック406)と、
速度が速度目標に到達する前の制限の解除時に、速度目標に向けて速度を変更するために電動牽引モーターから要求されるトルクの初期増加を抑制すること(ブロック408,410)と、
を備える。
【0066】
ブロック402において、方法400は、車両10が車両クリープ条件にあるか、又は車両クリープ条件に入っているかを決定することを備える。車両クリープ条件の充足は、少なくとも、ゼロAPD等のしきい値を下回るAPDを必要としてよい。車両クリープ条件の充足は、エンジン202と車両ホイールとの間のトルク経路220が接続されていることを必要としてよく(例えば、車両トランスミッション配置204がインギアであることをチェックし、及び/又はクラッチ218が閉じていることをチェックする)、及び/又は第2電気牽引モーター212と車両ホイールとの間のトルク経路が接続されていることを必要としてよい。車両クリープ条件の充足は、しきい値を下回る車両速度を必要としてよい。車両クリープ条件の充足は、ユーザーが車両クリープ機能を有効にしたか否かに依存してよい。
【0067】
車両クリープ条件が充足されない場合、方法400はブロック404で終了する。車両クリープ条件が充足された場合、制御システム208は、本明細書に記載の方法400を実行するように構成された車両クリープ機能を実施する。
【0068】
アクティブであるとき、車両クリープ機能は、制御システム208が速度コントローラとしてふるまうことを引き起こす。制御システム208は、速度目標(設定値)を入手する。エンジン202が車両クリープを提供している場合、速度目標は、エンジンアイドル速度目標であってよい。速度目標は、第2電気牽引モーター212を使用する疑似的なクリープ機能のための車両クリープ速度目標であってよい。制御システム208は、フィードバック速度と速度目標との間の差(速度誤差)を決定する。制御システム208は、速度誤差の関数としてトルク要求を出力する。この関数は、事前較正に基づいていてよい。
【0069】
ある実装では、速度誤差はPI/PIDコントローラを使用して処理される。速度誤差の現在値は、比例トルクの計算に使用される。速度誤差の過去値は、積分器トルクを計算するために蓄積される場合がある。速度誤差の変化比率は、微分トルクの計算に使用される。最終的なトルク要求は、比例トルク、積分トルク及び微分トルクの合計であってよく、トルクのそれぞれは異なる重み付けがされ得る。
【0070】
車両クリープ条件の充足時に、方法400はブロック406に進む。ブロック406は、トルク反転が発生したときにラッシュクロス保護比率リミッターを適用することを備える。ラッシュクロス保護比率リミッターは、例えばトルク要求の変化比率が所定の比率よりも高くならないことを確実にするために必要とされるトルク要求を飽和させること等によって、コントローラ出力(トルク要求)の変化比率を制限する。
【0071】
関連するトルク経路のトルクが検出されたとき又は所定範囲内にあると予測されたときに、ラッシュクロス保護比率リミッターが適用(アクティブ化)され得る。その所定範囲の終点(endpoints)は負のトルク及び正のトルクであってよく、その結果、終点間でトルクのゼロクロスが発生する。
【0072】
その範囲の終点は、設定時間が有意に増加するであろうため、速度コントローラが実質的に遅くなるほど広くされるべきではない。
【0073】
ブロック408で、方法400は、トルクが範囲外になると、ラッシュクロス保護比率リミッターを解除することを備える。速度が速度目標にまだ到達していない可能性があるため、制御システム208はトルク要求を出力し続ける場合がある。
【0074】
ブロック410で、方法400は、トルク要求の初期増加を抑制することを備える。これは、比率リミッターの解除後のトルク要求の最初の値が、そうでなければ、比率リミッターが適用されていた間のトルク要求の直前の値よりも大幅に高くなり、トルクショックが発生するかもしれないためである。図5図6A及び図6Bは、PIDコントローラの実装例によるブロック410の効果を示す。
【0075】
図5は、方法400を実施するPI/PID(比例、積分及び微分)速度コントローラ500(微分ブロックは図示せず)のブロック図である。速度コントローラ500は、上述の制御システム208の命令306の機能であり得る。上記で定義された速度誤差がコントローラ500に入力される。
【0076】
比例トルク重み付けブロック(Kp)506は、速度誤差に重み付けを行うとともに、速度誤差に比例する重み付けされた比例トルクを出力する。
【0077】
積分器トルク重み付けブロック(Ki)502は、速度誤差に重み付けを行うとともに、重み付けされた誤差を積分器ブロック504に出力し、積分器ブロック504は、蓄積された速度誤差に基づいて、重み付けされた積分器トルクを計算する。積分器トルク重み付けブロック502及び比例トルク重み付けブロック506によって適用される重み付けゲインは、較正に基づいて、異なっていてよい。
【0078】
加算ブロック508は、重み付けされた比例トルクと重み付けされた積分器トルクとの合計に基づいて、トルク要求を計算する。
【0079】
ラッシュクロス保護比率リミッターブロック510は、トルク要求が所定範囲内にある場合、上述のようにトルク要求を飽和させる。
【0080】
フィードバックブロック512は、方法400のブロック410を実施し、比率リミッターブロック510の解除に続く最初の時間ステップに対応するトルク要求の最初の値に使用される。フィードバックブロック512は、以下に説明する2つのトルク要求を受信する。
【0081】
第1に、フィードバックブロック512は、比率リミッターブロック510への入力のために加算ブロック508によって出力される(事前に制限された)トルク要求を受け取る。
【0082】
第2に、フィードバックブロック512は、前の時間ステップでリミッターブロック510によって出力された制限された(最終的な)トルク要求を受信するか、又はリミッターブロック510がアクティブであった場合に、現在の時間ステップでリミッターブロック510によって出力されたであろうトルク要求を受信する。
【0083】
フィードバックブロック512は、制限されたトルク要求から事前に制限されたトルク要求を減算する。フィードバックブロック512は、減算の結果を積分器ブロック504にフィードバックし、積分器ブロック504は、積分器トルクから結果を減算する。
【0084】
この減算フィードバックにより、積分器トルクが減少する。実施に応じて、減少量により、最終的なトルク要求が、前の時間ステップの最終トルク要求と等しくなるか、又は比率リミッターブロック510が依然としてアクティブであった間の前の時間ステップの最終的なトルク要求と同じ勾配に置かれる。従って、フィードバックブロック512は、ラッシュクロス保護比率リミッターによって課せられた制限の解除時に、速度コントローラによって要求されるトルクの初期増加を抑制(低減又は防止)するものとして要約され得る。
【0085】
減算フィードバックは、比率リミッターブロック510がアクティブであった間に発生した積分器トルクの上昇のほとんどをキャンセルする。前述のように、比率リミッターの副作用の1つは、高い積分器の上昇が発生することであり、減算フィードバックがなければ、比率リミッターが解除されるとすぐにトルク要求が即座に不連続になることがあった。減算フィードバックの結果、比率リミッターの解除後の最終的なトルク要求の初期値は、比率リミッターの勾配又はその付近で始まり、その次に積分器トルクが再び上昇するときにスムーズに増加する。
【0086】
別の実装形態では、フィードバックブロック512による計算は、最終的なトルク要求のステップ/不連続が、フィードバックブロック512がなければ発生していただろうものよりも小さい限り、上記よりも少ない程度で積分器トルクを抑制(低減)するように修正され得る(後述の図6Bの614を参照)。ステップは10Nm未満であってよい。
【0087】
上記の例では、フィードバックブロック512は積分器トルクを減少させる。別の実施形態では、フィードバックブロック512の結果を比例トルク及び/又は微分トルクにフィードバックすることができるが、これは積分器トルクフィードバックよりも影響が少ない場合がある。さらなる変形では、フィードバックブロック512は、最終的なトルク要求の開ループ低減器に置き換えられてよい。
【0088】
上記の例は、PI/PIDコントローラである。他の例では、トルクの初期増加を抑制する概念に別のコントローラアーキテクチャが適用されてよい。
【0089】
図6A及び6Bは、比較例による車両速度及び(最終的な)トルク要求のグラフを示す。比較例は、ラッシュクロス保護比率リミッターを有しない速度コントローラ(短破線602,612)、ラッシュクロス保護比率リミッターを有するが積分器トルクを低減するためのフィードバックがない速度コントローラ(長破線604,614)、図5に示されるようにラッシュクロス保護比率リミッター及びフィードバックを有する速度コントローラ(実線606,616)、を含む。
【0090】
マークされた時間t0とt1の間で、トルク要求はトルク反転(ラッシュクロス)に関連する範囲内にある。時間t1とt2の間では、ラッシュクロス保護比率リミッターはアクティブではなく、速度は依然として速度目標に向けて増加している。時間t2で、速度目標に到達する。
【0091】
図6Aは、x軸の時間に対する、操作変数(車両速度)の大きさをy軸に示す。速度目標は、直線の破線600でマークされている。
【0092】
短破線602は、ラッシュクロス保護がないことにより、車両速度が最も急速に目標まで増加するが、バックラッシュが感じられる可能性があることを示している。
【0093】
長破線604は、ラッシュクロス保護のみがあることにより、車両速度がトルク反転領域t0-t1を通じてゆっくりと増加するが、トルク要求の不連続性のために、制限が解除される時間t1で勾配が急激に増加することを示している。勾配の変化は、車両乗員を妨害し、トルクショックを引き起こす可能性がある車両のジャークに対応する。曲線602よりも車両速度が速度目標に到達するのに少し時間がかかる。
【0094】
実線606は、図5のPI/PIDコントローラがあることにより、トルク反転を通して線604と同じ比率で車両速度が増加し、時間t1でジャークがないことを示している。曲線602及び604よりも車両速度が速度目標に到達するのに僅かに長くかかる場合がある。
【0095】
図6Bは、x軸の時間に対するトルク要求の大きさをy軸に示す。時間軸は、図6Aの時間軸と位置合わせされている。
【0096】
短破線612は、速度線602に関連するトルクを示し、ラッシュクロス保護がないことにより、バックラッシュ及び対応するトルクショック/ジャークを引き起こす可能性があるトルク反転を通して、トルクが高い比率で増加することを示している。
【0097】
長破線614は、速度線604に関連するトルクを示し、ラッシュクロス保護のみがあることにより、トルク反転を通してトルクがより低い比率で増加することを示している。比率リミッターの解除時に、積分器トルクの上昇の結果として、時間t1でトルクの不連続が存在する。
【0098】
図において、線614は、ラッシュクロス保護比率リミッターが、第1しきい値までの第1下側比率制限と、第1しきい値と第2上側しきい値との間の第2上側比率制限とを備えることも示す。これにより、コントローラの応答性とラッシュクロス性能との間の良好な妥協点が提供される。他の実施形態では、ラッシュクロス比率リミッターは、2つ以上の比率を含むことができ、又は1つの比率のみを含むことができる。
【0099】
実線616は、速度線606に関連するトルクを示し、図5のPI/PIDコントローラがあることにより、トルク反転を通してトルクが線614と同じ速度で増加し、時間t1で不連続がないことを示す。制限を解除した後のトルクの初期増加の比率は、時間t1の前に制限された比率よりも大きくなく、トルクの増加の比率はその後上昇することが許される。
【0100】
本開示の目的のために、本明細書に記載のコントローラ300は、1つ又は複数の電子プロセッサ302を有する制御ユニット又は計算装置をそれぞれ備えることができることを理解されたい。車両10及び/又はそのシステムは、単一の制御ユニット又は電子コントローラを備えていてよく、また代替的に、コントローラの異なる機能は、異なる制御ユニット又はコントローラで具体化されるか又はホストされてよい。実行されたとき、本明細書に記載の制御テクニック(記載された方法を含む)を前述のコントローラ又は制御ユニットに実施させる命令のセットが提供され得る。命令のセットは、1つ又は複数の電子プロセッサに埋め込まれ得るか、また代替的に、命令のセットは、1つ又は複数の電子プロセッサによって実行されるソフトウェアとして提供され得る。例えば、1つ又は複数の電子プロセッサで実行されるソフトウェアにおいて第1コントローラが実装されてよく、1つ又は複数の電子プロセッサ(任意選択で第1コントローラと同じ1つ又は複数のプロセッサ)で実行されるソフトウェアにおいて1つ又は複数の他のコントローラが実装されてもよい。しかしながら、他の配置も有用であり、従って、本開示は、特定の配置に限定されるように意図されないことが理解されよう。いずれにせよ、上記の命令のセットは、限定はされないが、磁気記憶媒体(例えばフロッピーディスク)、光記憶媒体(例えばCD-ROM)、光磁気記憶媒体、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、消去可能なプログラマブルメモリ(例えばEPROM及びEEPROM)、フラッシュメモリー、又はそのような情報/指示を格納するための電気的又は他のタイプの媒体を含む、機械又は電子プロセッサ/計算装置によって読み取り可能な形式で情報を格納するための任意のメカニズムを備え得るコンピュータ可読記憶媒体(例えば非一時的なコンピュータ可読記憶媒体)に埋め込まれてよい。
【0101】
本出願の範囲から逸脱することなく、本発明に対して様々な変更及び修正を行うことができることが理解されるであろう。
【0102】
「発明の態様」として説明されている各節は、追加の機能が必要とされない、現在又は将来の独立クレームに適した自己完結型のステートメントである。
【0103】
図4に示されるブロックは、コンピュータプログラム306におけるコードのセクション及び/又は方法におけるステップを表すことができる。ブロックに対する特定の順序の例示は、ブロックに関して必要とされるか又は好ましいとされる順序があることを必ずしも暗示するものではなく、ブロックの順序及び配置は変更されてよい。さらに、いくつかのステップを省略できる可能性もある。
【0104】
本発明の実施形態は様々な例を参照して先の段落で説明されてきたが、請求された発明の範囲から逸脱することなく、与えられた例への修正が行われ得ることが理解されるべきである。例えば、これらの例は、クルーズコントロール等の他の非クリープ速度制御使用ケースに適用され得る。
【0105】
前述の説明で説明されている特徴事項は、明示的に説明されている組み合わせ以外の組み合わせで使用され得る。
【0106】
機能は特定の特徴事項を参照して説明されているが、それらの機能は、説明されているかどうかに関係なく、他の特徴事項によって実行されてよい。
【0107】
特徴事項は特定の実施形態を参照して説明されてきたが、それらの特徴事項は、説明されているかどうかにかかわらず、他の実施形態に存在してもよい。
【0108】
前述の明細書において、特に重要であると考えられる本発明のそれらの特徴事項に注意を引くように努めたが、出願人は、上で言及した及び/又は図面に示されている前述の特許性のある特徴事項又は特徴事項の組み合わせに関して、特に強調されているかどうかに拘わらず、保護を請求することを理解されるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B