(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】接触器、その故障検知方法、及び接触器の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01H 33/00 20060101AFI20231122BHJP
H02B 3/00 20060101ALI20231122BHJP
H01H 9/54 20060101ALI20231122BHJP
H01H 11/00 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
H01H33/00 A
H02B3/00 M
H01H9/54 G
H01H11/00 Z
(21)【出願番号】P 2022547649
(86)(22)【出願日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 JP2021033164
(87)【国際公開番号】W WO2022054871
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2020152423
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 尚喜
(72)【発明者】
【氏名】岡本 武士
(72)【発明者】
【氏名】徳永 仁
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-079709(JP,A)
【文献】特開平10-066213(JP,A)
【文献】特開2003-134619(JP,A)
【文献】特開2019-029321(JP,A)
【文献】中国実用新案第207215977(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/54
H01H 11/00
H01H 33/00
H01H 33/70 - 33/99
H01H 45/00 - 45/14
H01H 50/00 - 50/92
H02B 3/00
H02B 13/00 - 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主回路を構成する主回路導体と、該主回路導体に接続された主接点と、を備えた接触器であって、
所定の熱容量を有する絶縁材を介して前記主回路導体に付設された温度検出部
と、
前記主接点を開閉操作する開閉駆動部と、
前記主接点を開閉制御する制御部の制御に応じて生成された制御電圧を前記開閉駆動部に供給する投入回路と、
を備え、
該温度検出部は
、
制限温度を超えたことによる検出結果を前記
制御部に通知
し、
前記検出結果に応じて、警報状態を意味する開閉状態に切り換えて維持し、当該警報状態から通常状態へと手動操作で復帰させられる温度検知接点をさらに備え、
前記制御部は、前記通知された前記検出結果に応じて前記投入回路の前記制御電圧を制御する、
接触器。
【請求項2】
前記主接点と連動した投入検知接点と、
該投入検知接点の開閉状態に基づいて前記主接点の開閉状態を検知して前記制御部に通知する検知回路と、
をさらに有し、
前記検知回路には、前記温度検知接点及び前記投入検知接点を直列に接続し、
前記温度検知接点による前記検出結果は、前記検知回路を兼用利用して前記制御部に通知される、
請求項
1に記載の接触器。
【請求項3】
前記開閉駆動部は、少なくとも励磁コイル及び可動鉄心を有する電磁駆動部であり、
前記制御部は、前記励磁コイルに前記制御電圧を印加して励磁することにより前記可動鉄心を吸引して前記主接点を閉じた状態のとき、前記温度検知接点が接点開である場合に、温度異常が発生したと判断する、
請求項
2に記載の接触器。
【請求項4】
主回路を構成する主回路導体と、該主回路導体に接続された主接点と、を備えた接触器であって、
所定の熱容量を有する絶縁材を介して前記主回路導体に付設された温度検出部と、
前記主接点と連動した投入検知接点と、
該投入検知接点の開閉状態に基づいて前記主接点の開閉状態を検知して前記
主接点を開閉制御する制御部に通知する検知回路と、
を
有し、
該温度検出部は制限温度を超えたことによる検出結果を前記制御部に通知し、
前記検知回路から独立して前記制御部へ前記検出結果を通知可能な通知経路を備えた、
接触器。
【請求項5】
主回路を構成する主回路導体と、該主回路導体に接続された主接点と、を備えた接触器の故障検知方法であって、
所定の熱容量を有する絶縁材を介して前記主回路導体に付設された温度検出部を用い、
前記主回路導体が通常利用とは異なる発熱原因により温度上昇した結果、
前記温度検出部は制限温度を超えた検出結果を前記主接点を開閉制御する制御部へ通知して故障検知
し、
制御に応じて生成された制御電圧が投入回路より開閉駆動部へ供給された結果、
該開閉駆動部が前記主接点を閉じて通常使用状態とし、
前記制御部は、前記検出結果が通知されたならば故障検知するとともに、前記制御電圧を制御して前記主接点を開き、
前記温度検出部は、所定の温度特性に基づいて動作する温度検知接点を備え、
該温度検知接点は、前記検出結果に応じて、警報状態を意味する開閉状態に切り換えて維持する一方で、当該警報状態から通常状態へと手動操作で復帰させることも可能である、
接触器の故障検知方法。
【請求項6】
前記主接点の開閉動作に連動する投入検知接点には、前記温度検知接点が直列接続されて検知回路を形成しており、
前記投入検知接点の開閉状態に基づいて前記主接点の開閉状態が検知され、
前記温度検知接点による前記検出結果は、前記検知回路を兼用利用するように、該検知回路を経由し、前記主接点の開閉状態についての検知内容と共に、前記制御部へ通知される、
請求項
5に記載した接触器の故障検知方法。
【請求項7】
前記開閉駆動部は、少なくとも励磁コイル及び可動鉄心を有する電磁駆動部であり、
前記制御部は、前記励磁コイルに前記制御電圧を印加して励磁することにより前記可動鉄心を吸引して前記主接点を閉じた状態のとき、前記温度検知接点が接点開である場合に、温度異常が発生したと判断する、
請求項
6に記載した接触器の故障検知方法。
【請求項8】
主回路を構成する主回路導体と、該主回路導体に接続された主接点と、を備えた接触器の故障検知方法であって、
所定の熱容量を有する絶縁材を介して前記主回路導体に付設された温度検出部を用い、
前記主回路導体が通常利用とは異なる発熱原因により温度上昇した結果、
前記温度検出部は制限温度を超えた検出結果を前記主接点を開閉制御する制御部へ通知して故障検知し、
所定の温度特性に基づいて動作する温度検知接点と、前記主接点と連動した投入検知接点
と、それぞれから取得された個別の事象を独立経路で前記制御部へ通知する、
接触器の故障検知方法。
【請求項9】
主回路を構成する主回路導体と、該主回路導体に接続された主接点と、を備えた接触器の製造方法であって、
前記主回路を構成する何れかで発生する温度異常を検知するための温度検出部を設定し、
該温度検出部は、所定の熱容量を有する絶縁材を介して前記主回路導体に付設され、
前記主接点を開閉操作する開閉駆動部を設定し、
前記主接点を開閉制御する制御部の制御に応じて生成された制御電圧を前記開閉駆動部に供給する投入回路を配線し、
該温度検出部が制限温度を超えたことによる検出結果を前記
制御部へ通知するための電気回路を配線
し、
該温度検出部には、前記検出結果に応じて、警報状態を意味する開閉状態に切り換えて維持し、当該警報状態から通常状態へと手動操作で復帰させられる温度検知接点を設け、
前記制御部を、前記通知された前記検出結果に応じて前記投入回路の前記制御電圧を制御するように設定する、
接触器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触器、その故障検知方法、及び接触器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
接触器は、電動機等の電力機器の起動及び停止のために、電力回路を開閉する電力機器であって、例えば交流鉄道車両に用いられる。この接触器は、正常稼働時(平常時)より主接点に大きな電流が流れた場合、又は、接触器内部の異常によって接触抵抗が大きくなった場合に、主回路導体の温度が平常時より上昇する。
【0003】
すなわち、接触器は、その主回路に過大な電流が通電された場合のほか、接触器内の部品の締結の緩み、又は主接点の磨耗によって接触圧力が低下することで、接触抵抗が増加した場合にも温度が過大となり、焼損等の事故の原因となる。したがって、接触器には、温度上昇を軽減する仕組みが必要となる。例えば、特許文献1には、電磁部によって駆動する接触器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の接触器では、接触器に温度異常があったことを、接触器外部に伝達しておらず、制御部が異常を認識することや、記録することはできない。本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡素な構成により、主回路の導通抵抗が上昇したことを検出して外部に伝達可能な接触器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明は、主回路を構成する主回路導体と、主回路導体に接続された主接点と、を備えた接触器であって、所定の熱容量を有する絶縁材を介して主回路導体に付設された温度検出部を備え、温度検出部は制限温度を超えたことによる検出結果を主接点を開閉制御する制御部に通知する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡素な構成により、主回路の導通抵抗が上昇したことを検出して外部に伝達可能な接触器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の前提技術に係る接触器を備える交流鉄道車両の駆動システムを示す回路図である。
【
図2】本発明の実施例1~3に係る接触器の略式構造を示す概念図である。
【
図3】本発明の実施例1に係る接触器における制御部の機能構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態に係る接触器20について説明する。
図1~
図3に示す実施例1は、交流鉄道車両に適用された接触器20である。
図1~
図2に示す実施例2は、温度検知接点37及び投入検知接点54(
図3参照)それぞれから取得された個別の事象を独立経路、例えば並列の経路(不図示)で制御部32へ通知できる構成例である。
図1~
図2に示す実施例3は、温度検知接点37(
図2,
図3参照)を温度ヒューズ(不図示)に置き換えた構成例である。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の前提技術に係る接触器20を備える交流鉄道車両の駆動システム1を示す回路図である。駆動システム1は、鉄道車両が走行する際に、単相交流電源である変電所と接続される架線2から単相交流電力を集電装置3によって取り込み、遮断器4を閉状態とすることで変圧器5へ電流を流し、架線2の架線電圧を変圧器5によって降圧する。変圧器5の入力側の1次巻線は、一端が事故電流等の大きな電流を遮断する遮断器4と接続し、他端はレールに接する(接地する)車輪に接地ブラシ6を介して接続する。
【0011】
変圧器5の出力側の2次巻線は、一端が接触器20を介して単相コンバータ9の交流入力端(u相)に接続され、他端が単相コンバータ9の交流入力端(v相)に接続される。接触器20と並列に補助接触器7及び充電抵抗器8が接続される。なお変圧器5の入力側は上位で高電圧が印加されており、出力側は降圧されるため入力側より低い電圧が印加される。
【0012】
接触器20は、電力機器の起動及び停止のために電力回路を物理的に開閉し、接触器20より電位的に下位の機器を切り離す機器である。なお接触器20の高電位側を高圧A端、低電位側を低圧B端とする。また、フィルタコンデンサ10を充電するための補助接触器7及び充電電流を抑制する充電抵抗器8は直列に接続される。
【0013】
フィルタコンデンサ10が充電されると、接触器20は閉状態となり、単相コンバータ9及び3相インバータ11が鉄道車両を駆動させる電動機12の制御を開始する。なお、単相コンバータ9の直流出力端には、フィルタコンデンサ10及び3相インバータ11の直流入力端が接続される。また、3相インバータ11の交流出力端には電動機12が接続される。
【0014】
図2は、実施例1~3に係る接触器20の略式構造を示す概念図である。接触器20は、主接点23、操作部27及び電磁石30を備えて構成され、接触器20より電位的に下位の機器である単相コンバータ9、3相インバータ11及び電動機12を監視する制御部32からの情報に基づいて制御される。
【0015】
この制御部32は、電源31を介して電磁石30に所定値以上の電圧を印加する。電磁石30は所定値以上の電圧が印加されると、操作部27の可動鉄心26を吸引する。この可動鉄心26には絶縁継手25が延設され、それを介して主接点23を開閉操作するレバー状の操作部27が形成されている。操作部27は、電磁石30に吸引されて回動することで、主接点23を閉状態とする。
【0016】
接触器20は、主接点23が閉状態となると、高圧A端から低圧B端の方向、すなわち接触器20より電位的に下位の機器に電流を供給する。電磁石30に印加される電圧が、所定値より小さい場合、電磁石30の吸引力が弱まり、可動鉄心26に設けられた復帰用のバネにより主接点23は開状態となり、接触器20より電位的に下位の機器に電流は供給されない。
【0017】
主接点23は、内部が真空の真空インタラプタ22に封入された互いに対向する固定主接触子21及び可動主接触子24によって構成される。固定された固定主接触子21に操作部27と連動する可動主接触子24が接触することで、主接点23は閉状態となる。
【0018】
操作部27は、主接点23の開閉状態を電磁力で操作する機構の一部であって、絶縁継手25及び可動鉄心26から構成される。絶縁継手25は、例えばその表面がポリエステル樹脂で覆われており、高電圧が印加される主接点23側の回路と、低電圧が印加される電磁石30側の回路とを電気的に遮断する。可動鉄心26は絶縁継手25と一体動作するように接続されており、絶縁継手25を介して可動主接触子24と連動する。
【0019】
電磁石30は、円筒状のボビンにコイルが巻回された励磁コイル29及び励磁コイル29に固定された固定鉄心28から構成される。励磁コイル29は、電源31に接続され、励磁コイル29を介して電磁石30には電圧が印加される。励磁コイル29は、電圧が印加されると励磁し、固定鉄心28を介して、可動鉄心26を電磁力によって吸引する。
【0020】
接触器20は、絶縁材34に接触するように固定された温度センサ35を備えている。温度センサ35は、制御部32に接続されている。絶縁材34は、主接点23もしくは固定主接触子21、可動主接触子24の近傍の主回路導体33に、接触するように固定されている。絶縁材34は、例えばガラスエポキシ樹脂で構成されており、主回路導体33と温度センサ35を電気的に絶縁している。
【0021】
接触器20の内部で締結の緩みや、主接点23の摩耗といった異常が生じると、接触抵抗Rが増加するため、通電による発熱が増加し、主回路導体33の温度が上昇する。そのため、絶縁材34の温度が上昇し、温度センサ35の温度が上昇する。また、絶縁材34の熱伝導率は主回路導体33などの金属と比較して小さい。
【0022】
温度センサ35は温度検出部36と温度検知接点37、及び復帰ボタン38で構成されている。温度検出部36は、例えばバイメタル構造のものが好適である。バイメタルは、線膨張係数の異なる二種類の金属を接合して構成され、一定の温度以上に達すると金属の線膨張係数の差異によって変形する。
【0023】
温度センサ35が反応する温度は、温度検出部36が変形する温度に依存しており、温度センサ35を製造する際に任意の温度を設定できる。温度検出部36の膨張によって、温度検知接点37が1回だけ動作し、指定された閉状態又は開状態の何れか一方に変化したその状態を維持する。温度センサ35の温度検知接点37の開閉状態は、接続された制御部32が認識している。
【0024】
温度検出部36は、接触器20へ定格電流を通電した場合の正常な導電抵抗での発熱による温度上昇では反応せず、異常によってさらなる温度上昇が生じた場合のみ反応するように設定されている。温度検知接点37は、動作した後も接点の開閉状態を維持しており、復帰ボタン38を手動で押した場合にのみ動作前の状態に戻る。
【0025】
図3は、本発明の実施例1に係る接触器における制御部の機能構成を示す回路図である。接触器20は、主に、主回路51と、投入回路52、検知回路53で構成される。主回路51は、主接点23によって閉状態と開状態を切り替えられる。
【0026】
投入回路52には、励磁コイル29が接続されている。制御部32の指令によって、電源31を介して投入回路52に電流が流れ、励磁コイル29に電圧が印加される。励磁コイル29に電圧が印加されることで、主接点23が閉状態となる。
【0027】
検知回路53には、投入検知接点54と、温度検知接点37が直列に挿入されている。投入検知接点54は主接点23の動作と連動しており、主接点23が閉状態となると閉状態となるもの、又は主接点23が閉状態となると開状態となるもの、のどちらかが用いられる。
【0028】
実施例1の接触器20では、主接点23が閉状態のとき、閉状態となる投入検知接点54を用いる。したがって、駆動システム1が正常稼働時に、主接点23が閉状態であれば、主接点23に投入検知接点54が連動して閉状態である。そのとき、温度センサ35が高温を検知していない状態であれば、投入検知接点54及び温度検知接点37は、揃って閉状態である。
【0029】
つまり、実施例1の接触器20において、制御部32は、投入回路52が通電状態ならば、主接点23が閉状態となり、投入検知接点54も閉状態である。そのとき、温度検知接点37も閉状態であり、これらの全てに動作電流や検出電流が流れる状態であることを制御部32が検知する。その結果、制御部32は、駆動システム1が正常稼働時であると認識する。このように、平常時では、投入回路52に電流が流れているとき、検知回路53にも電流が流れる。
【0030】
一方、主接点23が閉状態で電流を通電している際に、接触器20の内部で何らかの異常が生じて温度検知接点37が開状態となると、投入検知接点54に電流が流れなくなる。このとき、制御部32は、異常を検知して投入回路52への通電を停止し、接触器20が開放する。
【0031】
このような故障検知の動作は、下記第1例に対応している。その第1例では、主接点23の磨耗劣化のみならず、接触器20の主回路51を構成する主回路導体33と、他の導電部材と、の電気的かつ機械的な接合部位の締結不良を原因とする接触抵抗Rの増加による温度異常も検出できる。
【0032】
ここで、接触器20に想定される故障の典型例をつぎの第1例~第4例に示す。
1)第1例は、部品磨耗、特に主接点23の劣化、又は接触器20を構成する導電部品どうしの締結不良による接触抵抗Rの増加が原因で温度異常が生じていた場合。
2)第2例は、主接点23が固渋して投入閉路できない場合。
3)第3例は、励磁コイル29が断線して主接点23を投入閉路できない場合。
4)第4例は、主接点23が溶着して開けない場合。
【0033】
上記第4例に示すように、主接点23が溶着した場合、投入回路52に電流を通電していなくても、主接点23は閉状態を維持し、投入検知接点54も閉状態となる。上記第2例に示すように、主接点23が固渋して投入できない場合、投入回路52に電流を通電しても、主接点23は開状態を維持し、投入検知接点54も開状態となる。これら第1例~第3例に示す故障に対応するように、制御部32が異常を検知し、投入回路52への通電を停止する。なお、第1例~第4例への個別対応については、明確な手順が用意されている。
【0034】
このように、制御部32は、駆動システム1の状態が正常であるか否かについて、ある程度の場合分けしながら判別し、適宜に警報を発令し、動作停止の指令を出せるようなプログラムを備えている。あるいは、上述のプログラムに匹敵する論理動作を実行できるように構成された電子回路を制御部32に備えても良い。つぎに上記第3例の場合にも、より的確に対応できるような実施例2について説明する。
【実施例2】
【0035】
実施例2に係る接触器20(共通符号)について、その概略を
図1~
図2に示し、詳細部については、実態と異なる
図3を便宜的に参照しながら説明する。実施例2の接触器20は、主接点23が閉状態のとき開状態となる投入検知接点54と、高温を検知していないとき開状態となる温度検知接点37と、を用いる。この場合、投入検知接点54と、温度検知接点37と、を並列に接続し、接触器20の内部で検知回路53に挿入する。
【0036】
より具体的に、温度検知接点37は、これによる検出結果を検知回路53から独立して制御部32へ通知可能な通知経路を備える。このような構成の接触器20において、温度検知接点37と、投入検知接点54と、より取得された個別の事象は、独立経路により制御部32へ通知される。このような故障検知方法(本検知方法)において、主接点23を閉路できない場合、上記第2例又は第3例に該当することが論理的に判明される。
【0037】
このとき、上記第2例と第3例の何れであるかは、投入回路52に電流が流れているか否かについて、制御部32で認識できるならば判別可能である。すなわち、投入回路52に電流が流れていれば、上記第2例の主接点23の固渋と制御部32が判明する。また、投入回路52に電流が流れていなければ、上記第3例であり、励磁コイル29の断線と制御部32が判明する。
【0038】
例えば、本検知方法を交流鉄道車両に適用した場合、制御部32は、異常を検知したとき、上記第1例~第4例の何れに該当するかを判別して、運転台に警報表示することも可能である。その結果、運転士は、1編成の列車に複数系列の駆動システム1が具備されていれば、故障した動力系統のみを停止して、他の正常な動力系統を生かして運行を継続する操作も可能である。
【実施例3】
【0039】
実施例3に係る接触器20(共通符号)について、その概略を
図1~
図2に示し、詳細部については、実態とは僅かに異なる
図3を便宜的に参照しながら説明する。実施例3の接触器20は、温度センサ35の温度検出部36及び温度検知接点37の代替として、温度ヒューズを用いることもできる。温度ヒューズは平常時、導通状態となっている。接触器20内部で異常が生じ、温度が上昇すると、温度ヒューズが不可逆的に溶断するため、検知回路53に電流が流れなくなり、制御部32が異常を検知する。温度ヒューズは交換した場合にのみ導通状態となる。なお、温度ヒューズの溶断温度は最適に設定できる。
【0040】
つぎに、前提技術にない実施例1~3の特徴について説明する。
図1に示した前提技術に係る接触器20(実施例1~3と同一符号)は、温度を検知する機能を有しない制御部32と、励磁コイル29が挿入された投入回路52と、投入検知接点54のみが挿入された検知回路と、を備える。
【0041】
これに対し、実施例1に係る接触器20(前提技術と同一符号)は、特に
図3に明示したように、検知回路53における投入検知接点54に温度検知接点37が直列挿入される。このように
図3の接触器20は、オプション追加される温度検知接点37のために新しい回路を設けることなく、制御部32に温度異常を通知できるようにする機能を追加できる。また、制御部32においても、正常の範囲か否かについて、検知温度の特性を分析して論理判定を行う機能を追加することなく、温度異常を検知する機能を確立できる。
【0042】
ここで、温度センサ35が温度上昇を検知した後、温度が低下した際に温度検知接点37の開閉状態が検知前に戻るような可逆動作する構造であるとつぎの不具合が生じる。この場合、温度異常によって接触器20が開放された後、主回路51の通電停止に伴って温度が低下すると、制御部32は異常を検知しないため、接触器20は再び投入可能な状態となる。
【0043】
このように、通電停止後、再び投入可能な構成である場合、接触器20の焼損等の事故に繋がる恐れがある。すなわち、再投入された接触器20は、それを構成する導通部品どうしの締結不良や部品磨耗、特に主接点23の損耗による接触抵抗Rの増加が原因で温度異常が生じ、再び温度が過昇する。
【0044】
これに対し、実施例1の接触器20において、
図2に示すように、温度センサ35は手動復帰型である。つまり手動で復帰ボタン38を押すまで開閉状態を維持する温度検知接点37を有する。したがって、異常検知後の制御部32は、接触器20に対策を施してから、手動で復帰ボタン38を押すまで、異常を検知し続けることができる。対策とは、接触器20内の部品の締結の緩みや部品の磨耗について、点検や、再締結、また異常な部品の交換を意味する。
【0045】
接触器20の主回路導体33の温度が平常時より上昇する原因は、平常時より主接点23に大きな電流が流れるため、又は、接触器20内部の異常によって接触抵抗Rが大きくなるためである。接触器20内部の異常の一例として、接触器20の主回路51を構成する導体どうしを締結したボルトのゆるみも検出可能である。
【0046】
主接点23に流れる電流は、鉄道車両の走行状態によって変化するため、平常時より大きな電流が流れる状態は一時的である。一方、接触器20の異常によって接触抵抗Rが増加した場合、平常時の走行状態に加えて発熱が大きくなる。
【0047】
接触器20は、温度センサ35と主回路導体33の間には絶縁材34を設けている。主接点23に流れる電流が急激に増減した場合、主回路導体33の温度も急激に上昇したり低下したりするが、絶縁材34の熱容量Cによって、温度センサ35の温度は比較的緩やかに上昇し、同様に低下する。そのため、短時間の電流増加では、温度センサ35の温度が上昇する前に主回路導体33の温度が低下するため、温度センサ35は反応しない。
【0048】
このように、実施例1~3に係る接触器20は、所定の熱容量Cを有する絶縁材34を温度センサ35と主回路導体33の間に介在させた特徴的構成である。この特徴的構成によって、主接点23の導通電流Iが急激に増減した場合でも、温度センサ35の温度変化は比較的緩慢である。そのため、短時間の電流増加では、温度センサ35は反応しない。つまり、平常時の発熱量qは、熱伝導性の高い主回路導体33の温度を急激に上下させる。この主回路導体33に取り付けられた熱伝導性の低い絶縁材34の熱容量Cに、発熱量qも、ある程度吸収される。
【0049】
一方、接触器20の異常によって接触抵抗Rが増加した場合、平常時の走行状態に加えて主回路導体33の発熱が大きくなる。その増大した発熱量Qは、所定の熱容量Cを有する絶縁材34に蓄熱されて温度を上昇させる。その結果、温度上昇した絶縁材34に取り付けられた温度センサ35が反応する。
【0050】
実施例1~3に係る接触器20は、絶縁材34を主回路導体33と温度センサ35の間に介在させたことにより、平常時の電流による発熱量qと、接触器20に異常が生じた場合の比較的大きい発熱量Qと、を判別できる。すなわち、接触器20の温度センサ35は、平常時には反応せず、異常時にのみ反応する。
【0051】
本発明によれば、制御部32が接触器20の異常を検知することで、保護のために接触器20を開放することや、接触器20の異常を記録することができる。すなわち、主接点23の発熱影響下の主回路51上に配置した温度検出部36の警報信号を制御部32が受けて焼損保護するほか、適切な管理に寄与できる。例えば、状態を記録するほか、損耗部品の交換時期を知らせる等の対応も可能である。
【0052】
本接触器20は交流鉄道車両に好適である。例えば、1編成の列車において、接触器20と1対1でオンオフ管理されるインバータ11が5組あるとする。その5組のうち1組が故障しても、残りの4組を生かして運行継続できるので、列車の可用性を高められる。
【0053】
本発明の実施形態に係る接触器(本接触器)20は、以下のように総括できる。
[1]本接触器20は、主回路導体33と、主接点23と、を備える。主回路導体33は、高圧A端と低圧B端の間に主接点23を介在して開閉可能な主回路51を構成する。主接点23は、制御部32により開閉制御され、電源と負荷とを適切に開閉接続する。
【0054】
主回路導体33は、ゼロオームに近い良導体であるとしても、主接点23の劣化に伴って接触抵抗Rが生じるので、導通電流Iに応じて生じたP=I2Rの電力損失が時間Tに比例した発熱量Q=P×Tを周囲に波及させる。主回路導体33に所定の熱容量Cを有する絶縁材34を介して付設された温度検出部36の温度上昇△K=発熱量Q/熱容量Cである。
【0055】
特に、正常時において、まれな通電時にのみ少ない時間tだけ通電する負荷の性質であれば、少ない時間tだけ電力損失Pを生じても、P×t=発熱量qと少ない。しかし、接触抵抗R増加時の発熱量Qは、間欠的であっても絶縁材34を緩慢に温度上昇させて蓄熱される。このため、正常時の発熱量q<異常時の発熱量Qである。これらの発熱量q,Qは、絶縁材34の熱容量Cによってある程度吸収される。したがって、温度検出部36の温度上昇は、正常時の温度上昇△k<異常時の温度上昇△Kである。
【0056】
正常時の温度上昇△kと、異常時の温度上昇△Kと、を区別できるように、両者による到達温度の中間を目標に制限温度が設定される。温度検出部36は、設定された制限温度を超えたことによる検出結果を制御部32に通知する。接触器20の主回路導体33の温度が温度上昇する原因は、主回路51に流れる電流Iが平常時より大きくなったか、又は主回路51の導通抵抗Rが上昇したかの何れかである。
【0057】
特に、主回路51を流れる電流が平常どおりであるにも関わらず、継続的な温度上昇があれば、接触器20を構成する主回路51の導電部どうしの接触箇所で導通抵抗Rが上昇したものと推定できる。なお、制限温度の設定値は、温度検出部36の検出閾値を上げるか、又は熱容量Cを大きくすることで高められ、その逆にも設定できる。
【0058】
本接触器20は、主回路51の導通抵抗Rが上昇したことにより、設定された制限温度を超えたことを簡素な構成の温度検出部36が制御部32に通知できる。制御部32は、該当する故障を認識して、適切に対応することも可能である。例えば、検出した故障内容を外部に伝達することも可能である。なお、故障内容の典型例は、上記第1例~第4例に列挙したとおりである。
【0059】
[2]上記[1]の接触器20において、投入回路52と、開閉駆動部と、をさらに備えると良い。制御部32は、通知された検出結果に応じて投入回路52の制御電圧を制御する。投入回路52は、制御部32の制御に応じて生成された制御電圧を開閉駆動部に供給することにより、主接点23を開閉操作する。
【0060】
温度検出部36の検出結果に応じて論理演算(判定)する制御部32と、例えば数百Aの大電流を開閉する主接点23と、では取り扱う電圧や電流が違い過ぎるので直接操作できない。したがって、両者の間に投入回路52及び開閉駆動部を介在し、主回路51に印加される電圧や電流よりも、はるかに小さな制御電圧や電流によって、制御部32が主接点23を開閉制御する。
【0061】
[3]上記[2]の接触器20において、温度検出部36は、検出結果に応じて、警報状態を意味する開閉状態に切り換えて維持し、警報状態から通常状態へと手動操作で復帰させられる温度検知接点37をさらに備えると良い。温度検知接点37は、感温スイッチの一種であり、キーを押すたびに二つの状態が入れ替わるトグル(toggle)もしくはトグルボタン(toggle button)の機能を備えていることが好ましい。さらに、温度検知接点37は、所定温度で不可逆的に溶断する温度ヒューズで構成しても良い。この接触器20は、一度警報状態に遷移すると、その状態が維持されて、人が故障対応した後でなければ解除しない規定にしておけば、より安全を確保し易い。
【0062】
[4]上記[3]の接触器20において、投入検知接点54と、検知回路53と、をさらに有していると良い。投入検知接点54の開閉動作は、主接点23の開閉動作と連動している。両者の開閉動作の関係は、相関関係が明確で投入検知接点54が主接点23をモニターする機能であれば良く、正相関と逆相関の何れでも構わない。
【0063】
検知回路53は、投入検知接点54の開閉状態に基づいて主接点23の開閉状態を検知して制御部32に通知する。検知回路53、及び投入検知接点54は、主回路51に印加される電圧や電流より、はるかに小さな制御電圧や電流によって、主接点23の開閉動作を検知して制御部32へ通知する。
【0064】
このような検知回路53そのものは、本接触器20に類似する従来製品にも既設されていることがある。ただし、投入検知接点54のみが接続された既存の検知回路53は、専ら主接点23の開閉動作を検知して制御部32へ通知するのみであった。
【0065】
既存の検知回路53に対し、本接触器20では、
図3に示すように、投入検知接点54と直列に温度検知接点37が接続される。これにより、温度検知接点37による検出結果は、検知回路53を兼用利用して制御部32に通知される。このように、オプションで後付けされた温度検知接点37は、既存の構成に大掛かりな変更を要することなく、上記[1]の効果が得られる本接触器20を形成することが可能である。
【0066】
[5]上記[4]の接触器20において、開閉駆動部は、少なくとも励磁コイル29及び可動鉄心26を有する電磁駆動部である。制御部32は、励磁コイル29に制御電圧を印加し、励磁電流を流して励磁することにより可動鉄心26を吸引する。可動鉄心26には絶縁継手25が延設され、それを介して主接点23を開閉操作する操作部27が形成される。
【0067】
主接点23を閉じた状態のとき、接触器20の高圧A端の電源が低圧B端の負荷に接続され、その負荷は稼働中である。接触器20は、主接点23を閉じた状態のとき、温度検知接点37が開である場合、制御部32は温度異常が発生したと判断する。
【0068】
ただし、接触器20は、稼働中の正常時に温度検出部36の温度上昇△k以下であれば、温度検知接点37が閉となるので、制御部32は温度異常が発生していないと判断する。逆に、接触器20は、主接点23の損耗や接触不良、又は導電部の締結不良等により接触抵抗Rが増加し、温度検出部36の温度上昇△K以上であれば、温度検知接点37が開となった検出結果を制御部32に通知する。換言すれば、投入回路52が通電中に、温度センサ35の接点開なら、温度異常が発生したと判断する。
【0069】
[6]上記[1]の本接触器20では、
図3に示すように、投入検知接点54と直列に接続された温度検知接点37による検出結果は、検知回路53を兼用利用して制御部32に通知される。したがって、検知回路53が制御部32に通知する情報は一系統でまとめられる。
【0070】
しかし、上記[1]の本接触器20において、温度検知接点37は、検知回路53から独立して制御部32へ検出結果を通知可能な通知経路を備えても良い。そうすることにより、温度検知接点37と、投入検知接点54と、個別の事象を独立して制御部32へ通知できるようになる。
【0071】
具体例として、上記第3例に示すように、励磁コイル29が断線すると、主接点23は閉路できず、その現象をモニター報知する投入検知接点54も開路状態となる。この現象について、例えば、交流鉄道車両の運転台からノッチオン操作中の運転士にとって、主接点23が閉路できず力行に支障ある場合に、その原因を特定することは容易でなかった。
【0072】
しかし、温度検知接点37が閉状態である事象と、投入検知接点54が開状態である事象を、独立して制御部32へ通知可能であれば、他に原因が無い限り、励磁コイル29の断線であることを論理的に究明できる。なお、他の原因として、上記第2例に示す主接点23の固渋による投入不可といった現象もある。その場合も、制御部32は、上記第2例と上記第3例とを識別して、その旨を運転台に表示させることも可能である。
【0073】
[7]本発明の実施形態に係る接触器の故障検知方法(本検知方法)は、つぎのように総括できる。本検知方法は、主回路51を構成する主回路導体33と、主回路導体33に接続された主接点23と、を備えた接触器20の故障検知方法である。
【0074】
本検知方法では、所定の熱容量Cを有する絶縁材34を介して主回路導体33に付設された温度検出部36を用いる。主回路導体33が通常利用とは異なる発熱原因により温度上昇した結果、温度検出部36が制限温度を超えたならば、その検出結果を温度検出部36から、主接点23を開閉制御する制御部32へ通知して故障検知する。制御部32は、故障検知結果を警報、表示、記録、又は主接点23の開制御、その他適宜に利用可能である。
【0075】
[8]上記[7]の本検知方法において、操作者が駆動システム1を起動、又は駆動力を増強する等のため主接点23を閉じるように操作すると、その操作に基づく制御に応じて生成された制御電圧が投入回路52より開閉駆動部へ供給される。その結果、開閉駆動部が主接点23を閉じて、本接触器20の低圧B端に接続された負荷を通常使用状態にする。
【0076】
この通常使用状態において、温度検出部36が制限温度を超えたならば、その検出結果が制御部32に通知される。そうすると、制御部32は、故障を認知するとともに、制御電圧を制御して主接点23を開く。その結果、本検知方法によれば、安全確保し易い。
【0077】
[9]上記[8]の本検知方法において、温度検出部36は、所定の温度特性に基づいて動作する温度検知接点37を備える。この温度検知接点37は、検出結果に応じて、警報状態を意味する開閉状態に切り換えて維持する一方で、警報状態から通常状態へと手動操作で復帰させることも可能である。このように、温度検知接点37を自動復帰させず、故障対策後に手動操作で復帰させるといった管理規則が適用され易いので、より安全である。
【0078】
[10]本検知方法の適用以前の類似装置において、既存の投入検知接点54の開閉状態に基づいて主接点23の開閉状態がモニターされていた。これに対し、本検知方法の特徴として、上記[9]の本検知方法において、主接点23の開閉動作に連動する投入検知接点54に、温度検知接点37が直列接続されて検知回路53を形成する。これにより、温度検知接点37による検出結果は、検知回路53を兼用利用するように、検知回路53を経由し、主接点23の開閉状態についての検知内容と共に、制御部32へ通知される。このように、本検知方法によれば、既存の構成に大掛かりな変更を要することなく、上記[1],[7]の効果が得られる。
【0079】
[11]上記[10]の本検知方法において、開閉駆動部は、少なくとも励磁コイル29及び可動鉄心26を有する電磁駆動部である。制御部32は、励磁コイル29に制御電圧を印加して励磁することにより可動鉄心26を吸引して主接点23を閉じた状態のとき、温度検知接点37が接点開である場合に、温度異常が発生したと判断する。
【0080】
[12]上記[7]の本検知方法において、温度検知接点37及び投入検知接点54から、それぞれ取得された個別の事象を独立経路で制御部32へ通知しても良い。本検知方法において、主接点23の閉路できない場合、他に原因が無い限り、励磁コイル29の断線であることを論理的に判明できる。また、他に原因があっても、それを分析するような機能が具備されている制御部32によれば、論理的に判明できる。
【0081】
[13]本発明の実施形態に係る接触器20の製造方法(本製造方法)は、つぎのように総括できる。本製造方法は、主回路51を構成する主回路導体33と、主回路導体33に接続された主接点23と、を備えた接触器20の製造方法である。
【0082】
すなわち、本製造方法は、つぎの要件を有する。第1に、主回路51を構成する何れかで発生する温度異常を検知するための温度検出部36を設定(用意)する。温度検出部36として、例えば、反応温度を適切に設定されたバイメタル等が好ましい。第2に、温度検出部36は、所定の熱容量Cを有する絶縁材34を介して主回路導体33に付設する。絶縁材34として、例えば、ガラスエポキシ樹脂板をネジ止め等の方法により主回路導体33に固定する。第3に、温度検出部36が、制限温度を超えたことによる検出結果を制御部32へ通知するための電気回路を配線する。この電気配線として、例えば、温度検出部36がバイメタル構造の温度検知接点37を有するならば、既存の検知回路53を兼用利用するように、投入検知接点54に、温度検知接点37を直列接続すれば良い。
【0083】
本製造方法は、接触器20における消耗品である真空インタラプタ22及びその付設部品等の交換方法と考えても良い。この交換方法は、例えは、温度検出部36であれば、主回路導体33にネジ止めする程度であり、汎用オプション機能として有益である。また、真空インタラプタ22の交換時期を決定する方法は、該当する故障を認識して適切に対応できる制御部32があれば、その機能の一部と考えても良い。さらに、その一部として、検出した故障内容を外部に伝達する方法も考えられる。これらは、上記[7]の本検知方法にも示している。
【符号の説明】
【0084】
1…駆動システム、2…架線、3…集電装置、4…遮断器、5…変圧器、6…接地ブラシ、7…補助接触器、8…充電抵抗器、9…単相コンバータ、10…フィルタコンデンサ、11…3相インバータ、12…電動機、20…接触器、21…固定主接触子、22…真空インタラプタ、23…主接点、24…可動主接触子、25…絶縁継手、26…可動鉄心、27…操作部、28…固定鉄心、29…励磁コイル、30…電磁石、31…電源、32…制御部、33…主回路導体、34…絶縁材、35…温度センサ、36…温度検出部、37…温度検知接点、38…復帰ボタン、51…主回路、52…投入回路、53…検知回路、54…投入検知接点