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特許7389923カスケード型電力電子変圧器及びその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】カスケード型電力電子変圧器及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20231122BHJP
【FI】
H02M3/28 W
H02M3/28 Q
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022562772
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-24
(86)【国際出願番号】 CN2021095148
(87)【国際公開番号】W WO2022068222
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2022-10-14
(31)【優先権主張番号】202011069564.2
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515249628
【氏名又は名称】サングロー パワー サプライ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ドン ユエ
(72)【発明者】
【氏名】ジュアン ジアツァイ
(72)【発明者】
【氏名】シュー ジュン
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0153294(US,A1)
【文献】特表2015-508277(JP,A)
【文献】特開2017-077078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カスケード型電力電子変圧器の制御方法であって、前記カスケード型電力電子変圧器の各相は、n個の変圧器を含み、各変圧器は、m個の1次側巻線とr個の2次側巻線を有し、n≧2、m≧2、r≧1であり、各1次側巻線は、1つのDC/AC変換器と直列に接続され、各2次側巻線は、1つのAC/DC変換器と直列に接続され、n*m個の前記DC/AC変換器の直流側は、それぞれ1つの前段変換器を経た後、直列に接続されて、前記カスケード型電力電子変圧器の入力ポートを構成し、前記カスケード型電力電子変圧器は、1つ又は複数の出力ポートを有し、各前記出力ポートは、いずれも各変圧器の2次側からそれぞれ少なくとも1つのAC/DC変換器を選択し、そして、これらのAC/DC変換器の直流側を直並列することによって得られ、
前記カスケード型電力電子変圧器制御方法は、
s番目の変圧器の電気角θi1とθkps、及びj番目の変圧器の補償電気角θjを計算するステップであって、s=1、2、・・・、nであり、
ここで、同一変圧器において、i番目の1次側巻線が直列に接続されたDC/AC変換器をi番目の1次側変換器と略称し、k番目の2次側巻線が直列に接続されたAC/DC変換器をk番目の2次側変換器と略称し、1番目の1次側変換器のブリッジアーム電圧を基準電圧とし、i番目の1次側変換器ブリッジアーム電圧と前記基準電圧との間の電気角をθi1と表記し、i=2、3、・・・、mであり、k番目の2次側変換器のブリッジアーム電圧と前記基準電圧との間の電気角をθkpsと表記し、k=1、2、・・・、rであり、同相の各変圧器に対応する前記基準電圧は等しく、三相の同一位置にある変圧器に対応する前記基準電圧同士は電気角で2π/3ずれており、j番目の変圧器の1次側変換器のブリッジアーム電圧と2次側変換器のブリッジアーム電圧との間の補償角度をθjと表記し、j=2、3、・・・、nであると、s番目の変圧器のi番目の1次側巻線に対応するバランス制御電流ループは、s番目の変圧器のm個の1次側変換器の直流リンク電流の合計をmで割った値を、電流所定値とし、それをs番目の変圧器のi番目の1次側変換器の直流リンク電流Idcisと減算した後、第1のレギュレータによってs番目の変圧器の電気角θi1を計算して出力し、電気角θ1ps、θ2ps、・・・、θrpsを調整することによって同一出力ポートで異なる2次側巻線の間の電力バランスを実現する前提で、j番目の変圧器に対応する変圧器バランス制御電流ループは、各相m*n個の1次側変換器直流リンク電流の合計をnで割った値を電流所定値とし、それをj番目の変圧器のm個の1次側変換器直流リンク電流の合計と減算した後、第2のレギュレータによって補償電気角θjを計算して出力するステップと、
j番目の変圧器の電気角θkpsに補償電気角θjを重ね合わせて、補償後のj番目の変圧器の電気角θkpsを得るステップと、
補償後、s番目の変圧器の電気角θi1及び電気角θkpsに基づいて、s番目の変圧器の各1次側及び2次側変換器のブリッジアーム電圧方形波を計算するステップと、を含むことを特徴とするカスケード型電力電子変圧器制御方法。
【請求項2】
補償後、s番目の変圧器の電気角θi1及び電気角θkpsに基づいて、s番目の変圧器の各1次側及び2次側変換器のブリッジアーム電圧方形波を計算する前記ステップは、
補償後、s番目の変圧器の電気角θ11及び電気角θkpsに基づいて、s番目の変圧器の1番目の1次側変換器のデューティ比D1を計算し、s番目の変圧器の電気角θi1及び電気角θkpsに基づいて、s番目の変圧器のi番目の1次側変換器のデューティ比Diを計算するステップであって、θ11は、s番目の変圧器の1番目の1次側変換器ブリッジアーム電圧と自体との間の電気角を示し、即ち、ゼロであるステップと、
s番目の変圧器の電気角θ11及びデューティ比D1に基づいて、s番目の変圧器の1番目の1次側変換器のブリッジアーム電圧方形波を計算し、s番目の変圧器の電気角θi1及びデューティ比Diに基づいて、s番目の変圧器のi番目の1次側変換器のブリッジアーム電圧方形波を計算し、s番目の変圧器の補償後の電気角θkpsに基づいて、s番目の変圧器のk番目の2次側変換器のブリッジアーム電圧方形波を計算するステップと、を含むことを特徴とする請求項1に記載のカスケード型電力電子変圧器制御方法。
【請求項3】
s番目の変圧器の電気角θkpsを計算するステップは、
s番目の変圧器のi番目の1次側変換器に対応する直流リンク電圧ループを実行するステップと、
同一出力ポートでのg番目の並列分岐のh番目の直列分岐に対して設計された制御ループを実行するステップと、
前記直流リンク電圧ループの出力と前記制御ループの出力とを加算して、補償前の電気角θkpsを得るステップと、を含み、
s番目の変圧器のi番目の1次側変換器に対応する直流リンク電圧ループを実行する前記ステップは、具体的に、
全ての変圧器の1次側のDC/AC変換器の直流リンク電圧所定値Udcrefはいずれも等しく、s番目の変圧器のi番目の1次側変換器の直流リンク電圧ループが、直流リンク電圧所定値Udcrefを当該1次側変換器の直流リンク電圧Udcisと減算した後、第3のレギュレータによって計算して出力し、当該直流リンク電圧ループの出力とするステップを含み、
同一出力ポートでのg番目の並列分岐のh番目の直列分岐に対して設計された制御ループを実行するステップは、具体的に、
同一出力ポートで、当該出力ポートが定電圧出力を要求するかそれとも定電流出力を要求するかを判断するステップと、
定電圧出力を要求する場合、当該出力ポートの電圧所定値Uorefをqで割った値を各直列分岐の電圧所定値として、各直列分岐の均圧を実現し、各直列分岐の電圧所定値Uorefをqで割った後、電圧実際値uohと減算して、第4のレギュレータによって計算して出力し、出力結果に1/pを乗算して各並列分岐の電流所定値として、各並列分岐の均流を実現し、前記電流所定値をg番目の並列分岐のh番目の直列分岐の出力電流Ioghと比較し、その偏差値を第5のレギュレータによって計算して出力し、前記制御ループの出力とし、g=1、2、・・・、p、h=1、2、・・・、qであるステップと、
定電流出力を要求する場合、当該出力ポートの出力電力所定値Porefをp*q*Uoで割って、各直列分岐の各並列分岐の電流所定値として、各並列分岐の均流を実現し、前記電流所定値をg番目の並列分岐のh番目の直列分岐の出力電流Ioghと減算した後、第6のレギュレータによって計算して出力し、同時に、q個の直列分岐電圧を合計した後qで割って各直列分岐の電圧所定値として、各直列分岐の均圧を実現し、前記電圧所定値をg番目の並列分岐のh番目の直列分岐の出力電圧Uoghと減算した後、第7のレギュレータによって計算して出力し、前記第6のレギュレータの出力との合計を前記制御ループの出力とするステップと、を含むことを特徴とする請求項1に記載のカスケード型電力電子変圧器制御方法。
【請求項4】
それぞれ各変圧器の各1次側変換器直流リンクに対して電力周波数の2次高調波抑制を行うステップをさらに含み、
単一の変圧器の単一の1次側変換器直流リンクに対して電力周波数の2次高調波抑制を行うことは、具体的に、1次側変換器の直流電流を100hzの2次帯域通過フィルタに通過させ、そのうちの電力周波数の2次高調波成分を抽出し、当該電力周波数の2次高調波成分をフィードバックし、0を所定値とし、両者を減算した後、共振周波数が100hzである比例共振コントローラによって計算して出力し、その出力結果を本変換器の補償前の電気角θkpsに重ね合わせることを特徴とする請求項1に記載のカスケード型電力電子変圧器制御方法。
【請求項5】
n≧2、且つ、m=1の場合、前記θi1に対する計算を省略することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のカスケード型電力電子変圧器制御方法。
【請求項6】
n=1、且つ、m≧2の場合、前記θjに対する計算を省略することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のカスケード型電力電子変圧器制御方法。
【請求項7】
主回路とコントローラとを含むカスケード型電力電子変圧器であって、前記主回路の各相は、n個の変圧器を含み、各変圧器は、m個の1次側巻線とr個の2次側巻線を有し、n≧2、m≧2、r≧1であり、各1次側巻線は、1つのDC/AC変換器と直列に接続され、各2次側巻線は、1つのAC/DC変換器と直列に接続され、n*m個の前記DC/AC変換器の直流側はそれぞれ1つの前段変換器を経た後、直列に接続されて、前記カスケード型電力電子変圧器の入力ポートを構成し、前記カスケード型電力電子変圧器は、1つ又は複数の出力ポートを有し、各前記出力ポートは、いずれも各変圧器の2次側からそれぞれ少なくとも1つのAC/DC変換器を選択し、そして、これらのAC/DC変換器の直流側を直並列することによって得られ、
前記コントローラは、プロセッサと、メモリと、メモリに記憶されプロセッサで実行されるプログラムとを含み、プロセッサは、プログラムを実行する場合、
s番目の変圧器の電気角θi1とθkps、及びj番目の変圧器の補償電気角θjを計算するステップであって、s=1、2、・・・、nであり、
ここで、同一変圧器において、i番目の1次側巻線が直列に接続されたDC/AC変換器をi番目の1次側変換器と略称し、k番目の2次側巻線が直列に接続されたAC/DC変換器をk番目の2次側変換器と略称し、1番目の1次側変換器のブリッジアーム電圧を基準電圧とし、i番目の1次側変換器ブリッジアーム電圧と前記基準電圧との間の電気角をθi1と表記し、i=2、3、・・・、mであり、k番目の2次側変換器のブリッジアーム電圧と前記基準電圧との間の電気角をθkpsと表記し、k=1、2、・・・、rであり、同相の各変圧器に対応する前記基準電圧は等しく、三相の同一位置にある変圧器に対応する前記基準電圧同士は電気角で2π/3ずれており、j番目の変圧器の1次側変換器のブリッジアーム電圧と2次側変換器のブリッジアーム電圧との間の補償角度をθjと表記し、j=2、3、・・・、nであると、s番目の変圧器のi番目の1次側巻線に対応するバランス制御電流ループは、s番目の変圧器のm個の1次側変換器の直流リンク電流の合計をmで割った値を、電流所定値とし、それをs番目の変圧器のi番目の1次側変換器の直流リンク電流Idcisと減算した後、第1のレギュレータによってs番目の変圧器の電気角θi1を計算して出力し、電気角θ1ps、θ2ps、・・・、θrpsを調整することによって同一出力ポートで異なる2次側巻線の間の電力バランスを実現する前提で、j番目の変圧器に対応する変圧器バランス制御電流ループは、各相m*n個の1次側変換器直流リンク電流の合計をnで割った値を電流所定値とし、それをj番目の変圧器のm個の1次側変換器直流リンク電流の合計と減算した後、第2のレギュレータによって補償電気角θjを計算して出力するステップと、
j番目の変圧器の電気角θkpsに補償電気角θjを重ね合わせて、補償後のj番目の変圧器の電気角θkpsを得るステップと、
補償後、s番目の変圧器の電気角θi1及び電気角θkpsに基づいて、s番目の変圧器の各1次側及び2次側変換器のブリッジアーム電圧方形波を計算するステップと、を実現することを特徴とするカスケード型電力電子変圧器。
【請求項8】
前記プロセッサにより実現される、補償後、s番目の変圧器の電気角θi1及び電気角θkpsに基づいて、s番目の変圧器の各1次側及び2次側変換器のブリッジアーム電圧方形波を計算するステップは、
補償後、s番目の変圧器の電気角θ11及び電気角θkpsに基づいて、s番目の変圧器の1番目の1次側変換器のデューティ比D1を計算し、s番目の変圧器の電気角θi1及び電気角θkpsに基づいて、s番目の変圧器のi番目の1次側変換器のデューティ比Diを計算するステップであって、θ11はs番目の変圧器の1番目の1次側変換器ブリッジアーム電圧と自体との間の電気角を示し、即ち、ゼロであるステップと、
s番目の変圧器の電気角θ11及びデューティ比D1に基づいて、s番目の変圧器の1番目の1次側変換器のブリッジアーム電圧方形波を計算し、s番目の変圧器の電気角θi1及びデューティ比Diに基づいて、s番目の変圧器のi番目の1次側変換器のブリッジアーム電圧方形波を計算し、そして、s番目の変圧器の補償後の電気角θkpsに基づいて、s番目の変圧器のk番目の2次側変換器のブリッジアーム電圧方形波を計算するステップと、を含むことを特徴とする請求項7に記載のカスケード型電力電子変圧器。
【請求項9】
前記プロセッサにより実現される、s番目の変圧器の電気角θkpsを計算するステップは、
s番目の変圧器のi番目の1次側変換器に対応する直流リンク電圧ループを実行するステップと、
同一出力ポートでのg番目の並列分岐のh番目の直列分岐に対して設計された制御ループを実行するステップと、
前記直流リンク電圧ループの出力と前記制御ループの出力とを加算して、補償前の電気角θkpsを得るステップとを含み、
s番目の変圧器のi番目の1次側変換器に対応する直流リンク電圧ループを実行する前記ステップは、具体的に、
全ての変圧器の1次側のDC/AC変換器の直流リンク電圧所定値Udcrefはいずれも等しく、s番目の変圧器のi番目の1次側変換器の直流リンク電圧ループが、直流リンク電圧所定値Udcrefを当該1次側変換器の直流リンク電圧Udcisと減算した後、第3のレギュレータによって計算して出力し、当該直流リンク電圧ループの出力とするステップを含み、
同一出力ポートでのg番目の並列分岐のh番目の直列分岐に対して設計された制御ループを実行する前記ステップは、具体的に、
同一出力ポートで、当該出力ポートが定電圧出力を要求するかそれとも定電流出力を要求するかを判断するステップと、
定電圧出力を要求する場合、当該出力ポートの電圧所定値Uorefをqで割った値を各直列分岐の電圧所定値として、各直列分岐の均圧を実現し、各直列分岐の電圧所定値Uorefをqで割った後、電圧実際値uohと減算して、第4のレギュレータによって計算して出力し、出力結果に1/pを乗算して各並列分岐の電流所定値として、各並列分岐の均流を実現し、前記電流所定値をg番目の並列分岐のh番目の直列分岐の出力電流Ioghと比較し、その偏差値を第5のレギュレータによって計算して出力し、前記制御ループの出力とし、g=1、2、・・・、p、h=1、2、・・・、qであるステップと、
定電流出力を要求する場合、当該出力ポートの出力電力所定値Porefをp*q*Uoで割って、各直列分岐の各並列分岐の電流所定値として、各並列分岐の均流を実現し、前記電流所定値をg番目の並列分岐のh番目の直列分岐の出力電流Ioghと減算した後、第6のレギュレータによって計算して出力し、同時に、q個の直列分岐電圧を合計した後qで割って各直列分岐の電圧所定値として、各直列分岐の均圧を実現し、前記電圧所定値をg番目の並列分岐のh番目の直列分岐の出力電圧Uoghと減算した後、第7のレギュレータによって計算して出力し、前記第6のレギュレータの出力との合計を前記制御ループの出力とするステップと、を含むことを特徴とする請求項7に記載のカスケード型電力電子変圧器。
【請求項10】
前記プロセッサは、各変圧器の各1次側変換器直流リンクに電力周波数の2次高調波抑制を行うステップも実現し、
単一の変圧器の単一の1次側変換器直流リンクに対して電力周波数の2次高調波抑制を行うことは、具体的に、
1次側変換器の直流電流を100hzの2次帯域通過フィルタに通過させ、そのうちの電力周波数の2次高調波成分を抽出し、当該電力周波数の2次高調波成分をフィードバックし、0を所定値とし、両者を減算した後、共振周波数が100hzである比例共振コントローラによって計算して出力し、その出力結果を補償前の電気角θkpsに重ね合わせることを含む、ことを特徴とする請求項7に記載のカスケード型電力電子変圧器。
【請求項11】
n≧2、且つ、m=1の場合、前記プロセッサによって実行されるプログラムから前記θi1に対する計算を省略することを特徴とする請求項7から10のいずれか1項に記載のカスケード型電力電子変圧器。
【請求項12】
n=1、且つ、m≧2の場合、前記プロセッサによって実行されるプログラムから前記θjに対する計算を省略することを特徴とする請求項7から10のいずれか1項に記載のカスケード型電力電子変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年09月30日に中国専利局に提出した、出願番号が202011069564.2であって、発明の名称が「カスケード型電力電子変圧器及びその制御方法」である中国特許出願の優先権を主張し、その全内容が援用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、電力電子技術分野に関し、より具体的に、カスケード型電力電子変圧器及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0003】
図1は、カスケード型電力電子変圧器を示し、その単相トポロジ構造は、以下のとおりであり、各相は、n個の変圧器を含み、各変圧器がm個の1次側巻線とr個の2次側巻線を有し、n+m≧3であり、r≧1であり、各1次側巻線は、1つのDC/AC変換器と直列に接続され、各2次側巻線は、1つのAC/DC変換器と直列に接続され、n*m個の前記DC/AC変換器の直流側はそれぞれ1つの前段変換器を経た後、直列に接続されて、前記カスケード型電力電子変圧器の入力ポートを得て、前記カスケード型電力電子変圧器は、1つ又は複数の出力ポートを有し、各前記出力ポートはいずれも各変圧器の2次側から少なくとも1つのAC/DC変換器を選択し、これらのAC/DC変換器の直流側を直並列することによって得られる。
【0004】
しかしながら、現在、前記カスケード型電力電子変圧器内の異なる1次側巻線の間の電力バランス制御を実現できる制御方式はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに鑑みて、本出願は、カスケード型電力電子変圧器及びその制御方法を提供し、前記カスケード型電力電子変圧器内の異なる1次側巻線の間の電力バランス制御を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
カスケード型電力電子変圧器制御方法であって、前記カスケード型電力電子変圧器の各相は、n個の変圧器を含み、各変圧器は、m個の1次側巻線とr個の2次側巻線を有し、n≧2、m≧2、r≧1であり、各1次側巻線は、1つのDC/AC変換器と直列に接続され、各2次側巻線は、1つのAC/DC変換器と直列に接続され、n*m個の前記DC/AC変換器の直流側は、それぞれ1つの前段変換器を経た後、直列に接続されて、前記カスケード型電力電子変圧器の入力ポートを構成し、前記カスケード型電力電子変圧器は、1つ又は複数の出力ポートを有し、各前記出力ポートは、いずれも各変圧器の2次側からそれぞれ少なくとも1つのAC/DC変換器を選択し、そして、これらのAC/DC変換器の直流側を直並列することによって得られ、
前記カスケード型電力電子変圧器制御方法は、
s番目の変圧器の電気角θi1とθkps、及びj番目の変圧器の補償電気角θjを計算するステップであって、s=1、2、・・・、nであり、
ここで、同一変圧器において、i番目の1次側巻線が直列に接続されたDC/AC変換器をi番目の1次側変換器と略称し、k番目の2次側巻線が直列に接続されたAC/DC変換器をk番目の2次側変換器と略称し、1番目の1次側変換器のブリッジアーム電圧を基準電圧とし、i番目の1次側変換器ブリッジアーム電圧と前記基準電圧との間の電気角をθi1と表記し、i=2、3、・・・、mであり、k番目の2次側変換器のブリッジアーム電圧と前記基準電圧との間の電気角をθkpsと表記し、k=1、2、・・・、rであり、同相の各変圧器に対応する前記基準電圧は等しく、三相の同一位置にある変圧器に対応する前記基準電圧同士は電気角で2π/3ずれており、j番目の変圧器の1次側変換器のブリッジアーム電圧と2次側変換器のブリッジアーム電圧との間の補償角度をθjと表記し、j=2、3、・・・、nであると、s番目の変圧器のi番目の1次側巻線に対応するバランス制御電流ループは、s番目の変圧器のm個の1次側変換器の直流リンク電流の合計をmで割った値を、電流所定値とし、それをs番目の変圧器のi番目の1次側変換器の直流リンク電流Idcisと減算した後、第1のレギュレータによってs番目の変圧器の電気角θi1を計算して出力し、電気角θ1ps、θ2ps、・・・、θrpsを調整することによって同一出力ポートで異なる2次側巻線の間の電力バランスを実現する前提で、j番目の変圧器に対応する変圧器バランス制御電流ループは、各相m*n個の1次側変換器直流リンク電流の合計をnで割った値を電流所定値とし、それをj番目の変圧器のm個の1次側変換器直流リンク電流の合計と減算した後、第2のレギュレータによって補償電気角θjを計算して出力するステップと、
j番目の変圧器の電気角θkpsに補償電気角θjを重ね合わせて、補償後のj番目の変圧器の電気角θkpsを得るステップと、
補償後、s番目の変圧器の電気角θi1及び電気角θkpsに基づいて、s番目の変圧器の各1次側及び2次側変換器のブリッジアーム電圧方形波を計算するステップと、を含む。
【0007】
任意選択で、上記に開示したいずれかのカスケード型電力電子変圧器制御方法において、補償後、s番目の変圧器の電気角θi1及び電気角θkpsに基づいて、s番目の変圧器の各1次側及び2次側変換器のブリッジアーム電圧方形波を計算する前記ステップは、
補償後、s番目の変圧器の電気角θ11及び電気角θkpsに基づいて、s番目の変圧器の1番目の1次側変換器のデューティ比D1を計算し、s番目の変圧器の電気角θi1及び電気角θkpsに基づいて、s番目の変圧器のi番目の1次側変換器のデューティ比Diを計算するステップであって、θ11は、s番目の変圧器の1番目の1次側変換器ブリッジアーム電圧と自体との間の電気角を示し、即ち、ゼロであるステップと、
s番目の変圧器の電気角θ11及びデューティ比D1に基づいて、s番目の変圧器の1番目の1次側変換器のブリッジアーム電圧方形波を計算し、s番目の変圧器の電気角θi1及びデューティ比Diに基づいて、s番目の変圧器のi番目の1次側変換器のブリッジアーム電圧方形波を計算し、s番目の変圧器の補償後の電気角θkpsに基づいて、s番目の変圧器のk番目の2次側変換器のブリッジアーム電圧方形波を計算するステップと、を含む。
【0008】
任意選択で、上記に開示したいずれかのカスケード型電力電子変圧器制御方法において、s番目の変圧器の電気角θkpsを計算するステップは、
s番目の変圧器のi番目の1次側変換器に対応する直流リンク電圧ループを実行するステップと、
同一出力ポートでのg番目の並列分岐のh番目の直列分岐に対して設計された制御ループを実行するステップと、
前記直流リンク電圧ループの出力と前記制御ループの出力とを加算して、補償前の電気角θkpsを得るステップと、を含み、
s番目の変圧器のi番目の1次側変換器に対応する直流リンク電圧ループを実行する前記ステップは、具体的に、
全ての変圧器の1次側のDC/AC変換器の直流リンク電圧所定値Udcrefはいずれも等しく、s番目の変圧器のi番目の1次側変換器の直流リンク電圧ループが、直流リンク電圧所定値Udcrefを当該1次側変換器の直流リンク電圧Udcisと減算した後、第3のレギュレータによって計算して出力し、当該直流リンク電圧ループの出力とするステップを含み、
同一出力ポートでのg番目の並列分岐のh番目の直列分岐に対して設計された制御ループを実行するステップは、具体的に、
同一出力ポートで、当該出力ポートが定電圧出力を要求するかそれとも定電流出力を要求するかを判断するステップと、
定電圧出力を要求する場合、当該出力ポートの電圧所定値Uorefをqで割った値を各直列分岐の電圧所定値として、各直列分岐の均圧を実現し、各直列分岐の電圧所定値Uorefをqで割った後、電圧実際値uohと減算して、第4のレギュレータによって計算して出力し、出力結果に1/pを乗算して各並列分岐の電流所定値として、各並列分岐の均流を実現し、前記電流所定値をg番目の並列分岐のh番目の直列分岐の出力電流Ioghと比較し、その偏差値を第5のレギュレータによって計算して出力し、前記制御ループの出力とし、g=1、2、・・・、p、h=1、2、・・・、qであるステップと、
定電流出力を要求する場合、当該出力ポートの出力電力所定値Porefをp*q*Uoで割って、各直列分岐の各並列分岐の電流所定値として、各並列分岐の均流を実現し、前記電流所定値をg番目の並列分岐のh番目の直列分岐の出力電流Ioghと減算した後、第6のレギュレータによって計算して出力し、同時に、q個の直列分岐電圧を合計した後qで割って各直列分岐の電圧所定値として、各直列分岐の均圧を実現し、前記電圧所定値をg番目の並列分岐のh番目の直列分岐の出力電圧Uoghと減算した後、第7のレギュレータによって計算して出力し、前記第6のレギュレータの出力との合計を前記制御ループの出力とするステップと、を含む。
【0009】
任意選択で、上記に開示したいずれかのカスケード型電力電子変圧器制御方法において、前記カスケード型電力電子変圧器制御方法は、
それぞれ各変圧器の各1次側変換器直流リンクに対して電力周波数の2次高調波抑制を行うステップをさらに含み、
単一の変圧器の単一の1次側変換器直流リンクに対して電力周波数の2次高調波抑制を行うことは、具体的に、1次側変換器の直流電流を100hzの2次帯域通過フィルタに通過させ、そのうちの電力周波数の2次高調波成分を抽出し、当該電力周波数の2次高調波成分をフィードバックし、0を所定値とし、両者を減算した後、共振周波数が100hzである比例共振コントローラによって計算して出力され、その出力結果を本変換器の補償前の電気角θkpsに重ね合わせる。
【0010】
任意選択で、上記に開示したいずれかのカスケード型電力電子変圧器制御方法において、n≧2且つm=1の場合、上記のθi1に対する計算を省略する。
【0011】
又は、上記に開示したいずれかのカスケード型電力電子変圧器制御方法において、n=1且つm≧2の場合、上記のθjに対する計算を省略する。
【0012】
主回路とコントローラとを含むカスケード型電力電子変圧器であって、前記主回路の各相は、n個の変圧器を含み、各変圧器は、m個の1次側巻線とr個の2次側巻線を有し、n≧2、m≧2、r≧1であり、各1次側巻線は、1つのDC/AC変換器と直列に接続され、各2次側巻線は、1つのAC/DC変換器と直列に接続され、n*m個の前記DC/AC変換器の直流側はそれぞれ1つの前段変換器を経た後、直列に接続されて、前記カスケード型電力電子変圧器の入力ポートを構成し、前記カスケード型電力電子変圧器は、1つ又は複数の出力ポートを有し、各前記出力ポートは、いずれも各変圧器の2次側からそれぞれ少なくとも1つのAC/DC変換器を選択し、そして、これらのAC/DC変換器の直流側を直並列することによって得られ、
前記コントローラは、プロセッサと、メモリと、メモリに記憶されプロセッサで実行されるプログラムとを含み、プロセッサは、プログラムを実行する場合、
s番目の変圧器の電気角θi1とθkps、及びj番目の変圧器の補償電気角θjを計算するステップであって、s=1、2、・・・、nであり、
ここで、同一変圧器において、i番目の1次側巻線が直列に接続されたDC/AC変換器をi番目の1次側変換器と略称し、k番目の2次側巻線が直列に接続されたAC/DC変換器をk番目の2次側変換器と略称し、1番目の1次側変換器のブリッジアーム電圧を基準電圧とし、i番目の1次側変換器ブリッジアーム電圧と前記基準電圧との間の電気角をθi1と表記し、i=2、3、・・・、mであり、k番目の2次側変換器のブリッジアーム電圧と前記基準電圧との間の電気角をθkpsと表記し、k=1、2、・・・、rであり、同相の各変圧器に対応する前記基準電圧は等しく、三相の同一位置にある変圧器に対応する前記基準電圧同士は電気角で2π/3ずれており、j番目の変圧器の1次側変換器のブリッジアーム電圧と2次側変換器のブリッジアーム電圧との間の補償角度をθjと表記し、j=2、3、・・・、nであると、s番目の変圧器のi番目の1次側巻線に対応するバランス制御電流ループは、s番目の変圧器のm個の1次側変換器の直流リンク電流の合計をmで割った値を、電流所定値とし、それをs番目の変圧器のi番目の1次側変換器の直流リンク電流Idcisと減算した後、第1のレギュレータによってs番目の変圧器の電気角θi1を計算して出力し、電気角θ1ps、θ2ps、・・・、θrpsを調整することによって同一出力ポートで異なる2次側巻線の間の電力バランスを実現する前提で、j番目の変圧器に対応する変圧器バランス制御電流ループは、各相m*n個の1次側変換器直流リンク電流の合計をnで割った値を電流所定値とし、それをj番目の変圧器のm個の1次側変換器直流リンク電流の合計と減算した後、第2のレギュレータによって補償電気角θjを計算して出力するステップと、
j番目の変圧器の電気角θkpsに補償電気角θjを重ね合わせて、補償後のj番目の変圧器の電気角θkpsを得るステップと、
補償後、s番目の変圧器の電気角θi1及び電気角θkpsに基づいて、s番目の変圧器の各1次側及び2次側変換器のブリッジアーム電圧方形波を計算するステップと、を実現する。
【0013】
任意選択で、上記に開示したいずれかのカスケード型電力電子変圧器において、前記プロセッサにより実現される、補償後、s番目の変圧器の電気角θi1及び電気角θkpsに基づいて、s番目の変圧器の各1次側及び2次側変換器のブリッジアーム電圧方形波を計算するステップは、
補償後、s番目の変圧器の電気角θ11及び電気角θkpsに基づいて、s番目の変圧器の1番目の1次側変換器のデューティ比D1を計算し、s番目の変圧器の電気角θi1及び電気角θkpsに基づいて、s番目の変圧器のi番目の1次側変換器のデューティ比Diを計算するステップであって、θ11は、s番目の変圧器の1番目の1次側変換器ブリッジアーム電圧と自体との間の電気角を示し、即ち、ゼロであるステップと、
s番目の変圧器の電気角θ11及びデューティ比D1に基づいて、s番目の変圧器の1番目の1次側変換器のブリッジアーム電圧方形波を計算し、s番目の変圧器の電気角θi1及びデューティ比Diに基づいて、s番目の変圧器のi番目の1次側変換器のブリッジアーム電圧方形波を計算し、s番目の変圧器の補償後の電気角θkpsに基づいて、s番目の変圧器のk番目の2次側変換器のブリッジアーム電圧方形波を計算するステップと、を含む。
【0014】
任意選択で、上記に開示したいずれかのカスケード型電力電子変圧器において、前記プロセッサにより実現される、s番目の変圧器の電気角θkpsを計算するステップは、
s番目の変圧器のi番目の1次側変換器に対応する直流リンク電圧ループを実行するステップと、
同一出力ポートでのg番目の並列分岐のh番目の直列分岐に対して設計された制御ループを実行するステップと、
前記直流リンク電圧ループの出力と前記制御ループの出力とを加算して、補償前の電気角θkpsを得るステップとを含み、
s番目の変圧器のi番目の1次側変換器に対応する直流リンク電圧ループを実行する前記ステップは、具体的に、
全ての変圧器の1次側のDC/AC変換器の直流リンク電圧所定値Udcrefはいずれも等しく、s番目の変圧器のi番目の1次側変換器の直流リンク電圧ループが、直流リンク電圧所定値Udcrefを当該1次側変換器の直流リンク電圧Udcisと減算した後、第3のレギュレータによって計算して出力し、当該直流リンク電圧ループの出力とするステップを含み、
同一出力ポートでのg番目の並列分岐のh番目の直列分岐に対して設計された制御ループを実行する前記ステップは、具体的に、
同一出力ポートで、当該出力ポートが定電圧出力を要求するかそれとも定電流出力を要求するかを判断するステップと、
定電圧出力を要求する場合、当該出力ポートの電圧所定値Uorefをqで割った値を各直列分岐の電圧所定値として、各直列分岐の均圧を実現し、各直列分岐の電圧所定値Uorefをqで割った後、電圧実際値uohと減算して、第4のレギュレータによって計算して出力し、出力結果に1/pを乗算して各並列分岐の電流所定値として、各並列分岐の均流を実現し、前記電流所定値をg番目の並列分岐のh番目の直列分岐の出力電流Ioghと比較し、その偏差値を第5のレギュレータによって計算して出力し、前記制御ループの出力とし、g=1、2、・・・、p、h=1、2、・・・、qであるステップと、
定電流出力を要求する場合、当該出力ポートの出力電力所定値Porefをp*q*Uoで割って、各直列分岐の各並列分岐の電流所定値として、各並列分岐の均流を実現し、前記電流所定値をg番目の並列分岐のh番目の直列分岐の出力電流Ioghと減算した後、第6のレギュレータによって計算して出力し、同時に、q個の直列分岐電圧を合計した後、qで割って各直列分岐の電圧所定値として、各直列分岐の均圧を実現し、前記電圧所定値をg番目の並列分岐のh番目の直列分岐の出力電圧Uoghと減算した後、第7のレギュレータによって計算して出力し、前記第6のレギュレータの出力との合計を前記制御ループの出力とするステップと、を含む。
【0015】
任意選択で、上記に開示したいずれかのカスケード型電力電子変圧器において、前記プロセッサは、各変圧器の1次側変換器直流リンクごとに電力周波数の2次高調波の抑制を行うステップも実現し、
単一の変圧器の単一の1次側変換器直流リンクに対して電力周波数の2次高調波抑制を行うことは、具体的に、
1次側変換器の直流電流を100hzの2次帯域通過フィルタに通過させ、そのうちの電力周波数の2次高調波成分を抽出し、この電力周波数の2次高調波成分をフィードバックし、0を所定値とし、両者を減算した後、共振周波数が100hzである比例共振コントローラによって計算して出力され、その出力結果を補償前の電気角θkpsに重ね合わせることを含む。
【0016】
任意選択で、上記に開示したいずれかのカスケード型電力電子変圧器において、n≧2且つm=1の場合、前記プロセッサにより実行されるプログラムから上記のθi1に対する計算を省略する。
【0017】
任意選択で、上記に開示したいずれかのカスケード型電力電子変圧器において、n=1且つm≧2の場合、前記プロセッサにより実行されるプログラムから上記のθjに対する計算を省略する。
【0018】
上記の技術案から分かるように、同一変圧器内の各1次側巻線の間はDC/AC変換器及び前段変換器を介して電気的接続を形成するため、本出願は、電気角θ21、θ31、・・・、θm1を調整することによって同一変圧器内の異なる1次側巻線の間の電力流れを実現し、さらに、同一変圧器内の異なる1次側巻線の間の電力バランスを実現する。カスケード型電力電子変圧器のいずれかの出力ポートについて、各変圧器内にいずれも少なくとも1つの2次側巻線がAC/DC変換器を介して電気的接続を形成するため、本出願は、電気角θ1ps、θ2ps、・・・、θrpsを調整することによって、同一出力ポートでの異なる2次側巻線の間の電力流れを実現し、さらに、同一出力ポートでの異なる2次側変換器の間の電力バランスを実現し、そして、本出願は、異なる変圧器の1次側変換器ブリッジアーム電圧と2次側変換器ブリッジアーム電圧との間の電気角に補償電気角θ2、θ3、・・・、θnを重ね合わせることにより、異なる変圧器の間のバランス制御を実現する。本出願が同一変圧器内の異なる1次側巻線の間、異なる変圧器の間の電力バランスを実現した場合、カスケード型電力電子変圧器全体の異なる1次側巻線の間の電力バランスを実現した。
本出願の実施例又は従来技術における技術案をより明確に説明するために、以下、実施例又は従来技術の説明に必要な図面について簡単に説明する。以下で説明される図面は本発明のいくつかの実施例であり、当業者にとっては、創造的な労力を要することなく、これらの図面から他の図面を得ることができることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】カスケード型電力電子変圧器の構造概略図である。
図2】本出願の実施例に開示されるカスケード型電力電子変圧器制御方法のフローチャートである。
図3】本出願の実施例に開示されるカスケード型電力電子変圧器の制御ブロック図である。
図4】デューティ比Diを計算する制御ブロック図である。
図5】電気角θi1、デューティ比Di、電気角θkpsと変換器との対応関係のブロック図である。
図6】同一変圧器における各異なる巻線間の電圧タイミング図である。
図7】本出願の実施例に開示されるs番目の変圧器の電気角θkpsを計算する方法フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本出願の実施例における図面を併せて、本出願の実施例における技術案を明確かつ完全に説明し、説明される実施例は本出願の実施例の一部に過ぎず、全ての実施例ではないことは自明である。本出願における実施例に基づいて、当業者が創造的な労力をしない前提で取得した全ての他の実施例は、いずれも本出願の保護範囲に属する。
【0021】
本出願の実施例は、カスケード型電力電子変圧器制御方法を開示し、図1に示すカスケード型電力電子変圧器に適用する。n≧2、且つ、m≧2の場合、図2を参照して、前記カスケード型電力電子変圧器制御方法は、以下のステップを含む。
ステップS01:s番目の変圧器の電気角θi1とθkps、及びj番目の変圧器の補償電気角θjを計算し、s=1、2、・・・、nである。
ステップS02:j番目の変圧器の電気角θkpsに補償電気角θjを重ね合わせて、補償後のj番目の変圧器の電気角θkpsを得る。
【0022】
具体的に、説明の便宜上、カスケード型電力電子変圧器の単相トポロジ構造では、s番目の変圧器のi番目の1次側巻線が直列に接続されたDC/AC変換器をs番目の変圧器のi番目の1次側変換器と略称し、s番目の変圧器のk番目の2次側巻線が直列に接続されたAC/DC変換器をs番目の変圧器のk番目の2次側変換器と略称する。
【0023】
同一変圧器内の各1次側巻線の間は、DC/AC変換器及び前段変換器を介して電気的接続を形成するため、同一変圧器内の異なる1次側変換器ブリッジアーム電圧の間の電気角を調整することによって同一変圧器内の異なる1次側巻線の間の電力流れを実現し、さらに、同一変圧器内の異なる1次側巻線の間の電力バランスを実現することができる。
【0024】
また、カスケード型電力電子変圧器のいずれかの出力ポートについて、各変圧器内にいずれも少なくとも1つの2次側巻線がAC/DC変換器を介して電気的接続を形成するため、同一出力ポートでの異なる2次側変換器ブリッジアーム電圧の間の電気角を調整することによって同一出力ポートでの異なる2次側巻線の間の電力流れを実現し、さらに、同一出力ポートで異なる2次側巻線の間の電力バランスを実現することができる。
【0025】
カスケード型電力電子変圧器の単相トポロジ構造における各変圧器について、本出願の実施例は、同一変圧器において、1番目の1次側変換器のブリッジアーム電圧を基準電圧とし、(同相の各変圧器に対応する前記基準電圧は等しく、三相の同一位置にある変圧器に対応する前記基準電圧同士は電気角で2π/3ずれており)、i番目の1次側変換器ブリッジアーム電圧と前記基準電圧との間の電気角をθi1と表記し、i=2、3、・・・、mであり、k番目の2次側変換器のブリッジアーム電圧と前記基準電圧との間の電気角をθkpsと表記し、k=1、2、・・・、rであると、同一変圧器内の異なる1次側変換器のブリッジアーム電圧の間の電気角を調整する上記の過程は、電気角θ21、θ31、・・・、θm1を調整することによって同一変圧器内の異なる1次側巻線の間のバランス制御を行うことであり、同一出力ポートで異なる2次側変換器のブリッジアーム電圧の間の電気角を調整する上記の過程は、電気角θ1ps、θ2ps、・・・、θrpsを調整することによって同一出力ポートで異なる2次側巻線の間のバランス制御を行うことである。
【0026】
異なる変圧器の線路パラメータの違いにより、異なる変圧器は1次側変換器のブリッジアーム電圧と2次側変換器のブリッジアーム電圧の間に同じ電気角を印加する場合、電力不均衡につながる可能性があるため、電気角θ1ps、θ2ps、・・・、θrpsを調整することによって同一出力ポートで異なる2次側巻線の間のバランス制御を行う場合、1番目の変圧器を基準とし、残りのn-1変圧器の電気角θ1ps、θ2ps、・・・、θrpsに1つの補償電気角を重ね合わせ(同一変圧器で対応する電気角θ1ps、θ2ps、・・・、θrpsに重ね合わせる補償電気角は等しく、異なる変圧器で対応する電気角θ1ps、θ2ps、・・・、θrpsに重ね合わせる補償電気角は、当該変圧器自体の電力オフセット程度に応じて決定される)、これにより、異なる変圧器の間の電力バランスを実現する。説明の便宜上、以下、j番目の変圧器の1次側変換器のブリッジアーム電圧と2次側変換器のブリッジアーム電圧との間の補償電気角をθjと表記し、j=2、3、・・・、nである。
【0027】
同一変圧器内の異なる1次側巻線の間、異なる変圧器の間の電力バランスを実現した場合、カスケード型電力電子変圧器全体内の異なる1次側巻線の間の電力バランスを実現した。
【0028】
以上の説明に基づき、本出願の実施例では、各変圧器におけるm-1個の1次側巻線に対して1つの1次側巻線バランス制御電流ループをそれぞれ設計し(図3における符号100を参照)、電気角θ1ps、θ2ps、・・・、θrpsを調整することによって同一出力ポートで異なる2次側巻線の間の電力バランスを実現する前提で、各相におけるn-1個の変圧器に対して1つの変圧器バランス制御電流ループをそれぞれ設計する(図3における符号200を参照)。以下、図3に基づいてその動作原理を説明する。
【0029】
s番目の変圧器のi番目の1次側巻線に対応するバランス制御電流ループはs番目の変圧器のm個の1次側変換器の直流リンク電流の合計をmで割った値を、電流所定値とし、それをs番目の変圧器のi番目の1次側変換器の直流リンク電流Idcisと減算した後、第1のレギュレータ(例えば、PIレギュレータ)によってs番目の変圧器の電気角θi1を計算して出力する。
【0030】
j番目の変圧器に対応する変圧器バランス制御電流ループは、各相m*n個の1次側変換器直流リンク電流の合計をnで割った値を電流所定値とし、それをj番目の変圧器のm個の1次側変換器直流リンク電流の合計と減算した後、第2のレギュレータ(例えばPIレギュレータ)によって電気角θjを計算して出力する。そして、j番目の変圧器の電気角θkpsに補償電気角θjを重ね合わせることで、補償後のj番目の変圧器の電気角θkpsを得ることができる。
【0031】
ステップS03:補償後、s番目の変圧器の電気角θi1及び電気角θkpsに基づいて、s番目の変圧器の各1次側及び2次側変換器のブリッジアーム電圧方形波を計算する。
【0032】
具体的に、ステップS03で与えられる方式に従って、ステップS01~ステップS02で計算したs番目の変圧器の電気角θi1、1番目の変圧器の電気角θkps、及びj番目の変圧器の補償後の電気角θkpsを使用に投入し、カスケード型電力電子変圧器に対する実行制御を完了する。この時、同一変圧器内の異なる1次側巻線の間、異なる変圧器の間の電力バランス制御を実現することができる。
【0033】
補償後、s番目の変圧器の電気角θi1及び電気角θkpsに基づいて、s番目の変圧器の各1次側及び2次側変換器のブリッジアーム電圧方形波を計算する前記ステップは、具体的に、
補償後、s番目の変圧器の電気角θ11(θ11は、s番目の変圧器の1番目の1次側変換器ブリッジアーム電圧と自体との間の電気角を示し、即ち、ゼロである)、及び電気角θkpsに基づいて、s番目の変圧器の1番目の1次側変換器のデューティ比D1を計算し、s番目の変圧器の電気角θi1及び電気角θkpsに基づいて、s番目の変圧器のi番目の1次側変換器のデューティ比Diを計算し、対応する制御ブロック図が図4に示し、そして、s番目の変圧器の電気角θ11及びデューティ比D1に基づいて、s番目の変圧器の1番目の1次側変換器のブリッジアーム電圧方形波を計算し、s番目の変圧器の電気角θi1及びデューティ比Diに基づいて、s番目の変圧器のi番目の1次側変換器のブリッジアーム電圧方形波を計算し、s番目の変圧器の電気角θkpsに基づいて、s番目の変圧器のk番目の2次側変換器のブリッジアーム電圧方形波を計算し、対応する制御ブロック図が図5に示すことを含む。
【0034】
同一変圧器における各異なる巻線の間の電圧タイミングは、図6に示すように、上から順に、1番目の1次側変換器ブリッジアーム電圧波形、1番目の2次側変換器ブリッジアーム電圧波形、i番目の1次側変換器ブリッジアーム電圧波形、k番目の2次側変換器ブリッジアーム電圧波形である。
【0035】
以上の本出願の実施例の技術案への全ての説明から分かるように、同一変圧器内の各1次側巻線の間はDC/AC変換器及び前段変換器を介して電気的接続を形成しているため、本出願の実施例では、電気角θ21、θ31、・・・、θm1を調整することによって同一変圧器内の異なる1次側巻線の間の電力流れを実現し、さらに、同一変圧器内の異なる1次側巻線の間の電力バランスを実現することが分かる。カスケード型電力電子変圧器のいずれかの出力ポートについて、各変圧器内にいずれも少なくとも1つの2次側巻線がAC/DC変換器を介して電気的接続を形成しているため、本出願の実施例では、さらに、電気角θ1ps、θ2ps、・・・、θrpsを調整することによって同一出力ポートでの異なる2次側巻線の間の電力流れを実現し、さらに、同一出力ポートでの異なる2次側変換器の間の電力バランスを実現する。そして、本出願の実施例では、異なる変圧器の1次側変換器ブリッジアーム電圧と2次側変換器ブリッジアーム電圧との間の電気角に補償電気角θ2、θ3、・・・、θnを重ね合わせることによって、異なる変圧器の間のバランス制御を実現する。本出願の実施例が同一変圧器内の異なる1次側巻線の間、異なる変圧器の間の電力バランスを実現した場合、カスケード型電力電子変圧器全体の異なる1次側巻線の間の電力バランスを実現した。
【0036】
なお、s番目の変圧器の電気角θkpsを計算する方式、つまり、電気角θ1ps、θ2ps、・・・、θrpsを調整することによって、同一出力ポートでの異なる2次側巻線の間の電力バランスを実現する方式は、従来の計算方式を直接採用して実現することができる。
【0037】
同一出力ポートで全てのAC/DC変換器が直並列結合によってp個の並列分岐及びq個の直列分岐を得て、p≧1、q≧1であると仮定すると、同一出力ポートでのp個の並列分岐の均流とq個の直列分岐の均圧を実現する必要がある場合、次のような計算方式を採用してj番目の変圧器の電気角θkpsを計算することができる。図7に示すように、次のステップを含む。
【0038】
ステップS011:s番目の変圧器のi番目の1次側変換器に対応する直流リンク電圧ループを実行する。
具体的に、全ての変圧器の1次側のDC/AC変換器の直流リンク電圧所定値Udcrefはいずれも等しい。s番目の変圧器のi番目の1次側変換器の直流リンク電圧ループ(対応する制御ブロック図について、図3における符号300参照)は、直流リンク電圧所定値Udcrefを当該1次側変換器の直流リンク電圧Udcisと減算した後、第3のレギュレータ(例えば、PIレギュレータ)によって計算して出力し、当該直流リンク電圧ループの出力とする。
【0039】
ステップS012:同一出力ポートでのg番目の並列分岐のh番目の直列分岐に対して設計された制御ループを実行する。
具体的に、同一出力ポートで、当該出力ポートが定電圧出力を要求するかそれとも定電流出力を要求するかを判断し、定電圧出力下の対応する前記制御ループの制御ブロック図について、図3における符号400を参照し、定電流出力下の対応する前記制御ループの制御ブロック図について、図3における符号500を参照する。
【0040】
定電圧出力(即ち、電圧モード)を要求すると、当該出力ポートの電圧所定値Uorefをqで割った値を各直列分岐の電圧所定値として、各直列分岐の均圧を実現し、各直列分岐の電圧所定値Uorefをqで割った後、電圧実際値uohと減算し、第4のレギュレータ(例えば、PIレギュレータ)によって計算して出力し、出力結果に1/pを乗算して各並列分岐の電流所定値として、各並列分岐の均流を実現し、前記電流所定値をg番目の並列分岐のh番目の直列分岐の出力電流Ioghと比較すると、その偏差値を第5のレギュレータ(例えば、PIレギュレータ)によって計算して出力し、前記制御ループの出力とし、g=1、2、・・・、p、h=1、2、・・・、qである。
【0041】
定電流出力(即ち、電流モード)を要求すると、当該出力ポートの出力電力所定値Porefをp*q*Uoで割って各直列分岐の各並列分岐の電流所定値として、各並列分岐の均流を実現し、前記電流所定値をg番目の並列分岐のh番目の直列分岐の出力電流Ioghと減算した後、第6のレギュレータ(例えば、PIレギュレータ)によって計算して出力し、同時に、q個の直列分岐電圧を合計した後、qで割って各直列分岐の電圧所定値として、各直列分岐の均圧を実現し、前記電圧所定値をg番目の並列分岐のh番目の直列分岐の出力電圧Uoghと減算した後、第7のレギュレータ(例えば、PIレギュレータ)によって計算して出力し、前記第6のレギュレータの出力との合計を前記制御ループの出力とする。
【0042】
ステップS013:前記直流リンク電圧ループの出力と前記制御ループの出力とを加算して、補償前の電気角θkpsを得る。
任意選択で、上記に開示した実施例のいずれかにおいて、前記制御方法は、各変圧器の1次側変換器直流リンクごとに電力周波数の2次高調波抑制を行うことをさらに含む(対応する制御ブロック図について、図3における符号600参照)。さらに、単一の変圧器の単一の1次側変換器直流リンクに対して電力周波数の2次高調波抑制を行うことは、具体的に、
1次側変換器の直流電流を100hzの2次帯域通過フィルタに通過させ、そのうちの電力周波数の2次高調波成分を抽出し、当該電力周波数の2次高調波成分をフィードバックし、0を所定値とし、両者を減算した後、共振周波数が100hzである比例共振コントローラによって計算して出力し、その出力結果を当該変換器の補償前の電気角θkpsに重ね合わせることである。
【0043】
上記のいずれかの実施例は、いずれもn≧2、且つ、m≧2の場合に提案される。n≧2、且つ、m=1の場合、上記のθi1に対する計算を直接省略すればよい。n=1、且つ、m≧2の場合、上記のθjに対する計算を直接省略すればよい。
【0044】
上記の方法の実施例に対応して、本出願の実施例は、主回路とコントローラとを含むカスケード型電力電子変圧器をさらに開示する。前記主回路の各相は、n個の変圧器を含み、各変圧器は、m個の1次側巻線とr個の2次側巻線を有し、n≧2、m≧2、r≧1であり、各1次側巻線は、1つのDC/AC変換器と直列に接続され、各2次側巻線は、1つのAC/DC変換器と直列に接続され、n*m個の前記DC/AC変換器の直流側はそれぞれ1つの前段変換器を経た後、直列に接続されて、前記カスケード型電力電子変圧器の入力ポートを構成し、前記カスケード型電力電子変圧器は、1つ又は複数の出力ポートを有し、各前記出力ポートは、いずれも各変圧器の2次側からそれぞれ少なくとも1つのAC/DC変換器を選択し、そして、これらのAC/DC変換器の直流側を直並列することによって得られ、
前記コントローラは、プロセッサと、メモリと、メモリに記憶されプロセッサで実行されるプログラムとを含み、プロセッサは、プログラムを実行する場合、
s番目の変圧器の電気角θi1とθkps、及びj番目の変圧器の補償電気角θjを計算するステップであって、s=1、2、・・・、nであり、
ここで、同一変圧器において、i番目の1次側巻線が直列に接続されたDC/AC変換器をi番目の1次側変換器と略称し、k番目の2次側巻線が直列に接続されたAC/DC変換器をk番目の2次側変換器と略称し、1番目の1次側変換器のブリッジアーム電圧を基準電圧とし、i番目の1次側変換器ブリッジアーム電圧と前記基準電圧との間の電気角をθi1と表記し、i=2、3、・・・、mであり、k番目の2次側変換器のブリッジアーム電圧と前記基準電圧との間の電気角をθkpsと表記し、k=1、2、・・・、rであり、同相の各変圧器に対応する前記基準電圧は等しく、三相の同一位置にある変圧器に対応する前記基準電圧同士は電気角で2π/3ずれており、j番目の変圧器の1次側変換器のブリッジアーム電圧と2次側変換器のブリッジアーム電圧との間の補償角度をθjと表記し、j=2、3、・・・、nであると、s番目の変圧器のi番目の1次側巻線に対応するバランス制御電流ループは、s番目の変圧器のm個の1次側変換器の直流リンク電流の合計をmで割った値を、電流所定値とし、それをs番目の変圧器のi番目の1次側変換器の直流リンク電流Idcisと減算した後、第1のレギュレータによってs番目の変圧器の電気角θi1を計算して出力し、電気角θ1ps、θ2ps、・・・、θrpsを調整することによって同一出力ポートで異なる2次側巻線の間の電力バランスを実現する前提で、j番目の変圧器に対応する変圧器バランス制御電流ループは、各相m*n個の1次側変換器直流リンク電流の合計をnで割った値を電流所定値とし、それをj番目の変圧器のm個の1次側変換器直流リンク電流の合計と減算した後、第2のレギュレータによって補償電気角θjを計算して出力するステップと、
j番目の変圧器の電気角θkpsに補償電気角θjを重ね合わせて、補償後のj番目の変圧器の電気角θkpsを得るステップと、
補償後、s番目の変圧器の電気角θi1及び電気角θkpsに基づいて、s番目の変圧器の各1次側及び2次側変換器のブリッジアーム電圧方形波を計算するステップと、を実現する。
【0045】
任意選択で、上記に開示したいずれかのカスケード型電力電子変圧器において、前記プロセッサにより実現される、補償後、s番目の変圧器の電気角θi1及び電気角θkpsに基づいて、s番目の変圧器の各1次側及び2次側変換器のブリッジアーム電圧方形波を計算するステップは、
補償後、s番目の変圧器の電気角θ11及び電気角θkpsに基づいて、s番目の変圧器の1番目の1次側変換器のデューティ比D1を計算し、s番目の変圧器の電気角θi1及び電気角θkpsに基づいて、s番目の変圧器のi番目の1次側変換器のデューティ比Diを計算するステップであって、θ11は、s番目の変圧器の1番目の1次側変換器ブリッジアーム電圧と自体との間の電気角を示し、即ち、ゼロであるステップと、
s番目の変圧器の電気角θ11及びデューティ比D1に基づいて、s番目の変圧器の1番目の1次側変換器のブリッジアーム電圧方形波を計算し、s番目の変圧器の電気角θi1及びデューティ比Diに基づいて、s番目の変圧器のi番目の1次側変換器のブリッジアーム電圧方形波を計算し、s番目の変圧器の補償後の電気角θkpsに基づいて、s番目の変圧器のk番目の2次側変換器のブリッジアーム電圧方形波を計算するステップと、を含む。
【0046】
任意選択で、上記に開示したいずれかのカスケード型電力電子変圧器において、前記プロセッサにより実現される、s番目の変圧器の電気角θkpsを計算するステップは、
s番目の変圧器のi番目の1次側変換器に対応する直流リンク電圧ループを実行するステップと、
同一出力ポートでのg番目の並列分岐のh番目の直列分岐に対して設計された制御ループを実行するステップと、
前記直流リンク電圧ループの出力と前記制御ループの出力とを加算して、補償前の電気角θkpsを得るステップとを含み、
s番目の変圧器のi番目の1次側変換器に対応する直流リンク電圧ループを実行する前記ステップは、具体的に、
全ての変圧器の1次側のDC/AC変換器の直流リンク電圧所定値Udcrefはいずれも等しく、s番目の変圧器のi番目の1次側変換器の直流リンク電圧ループが、直流リンク電圧所定値Udcrefを当該1次側変換器の直流リンク電圧Udcisと減算した後、第3のレギュレータによって計算して出力し、当該直流リンク電圧ループの出力とするステップを含み、
同一出力ポートでのg番目の並列分岐のh番目の直列分岐に対して設計された制御ループを実行する前記ステップは、具体的に、
同一出力ポートで、当該出力ポートが定電圧出力を要求するかそれとも定電流出力を要求するかを判断するステップと、
定電圧出力を要求する場合、当該出力ポートの電圧所定値Uorefをqで割った値を各直列分岐の電圧所定値として、各直列分岐の均圧を実現し、各直列分岐の電圧所定値Uorefをqで割った後、電圧実際値uohと減算して、第4のレギュレータによって計算して出力し、出力結果に1/pを乗算して各並列分岐の電流所定値として、各並列分岐の均流を実現し、前記電流所定値をg番目の並列分岐のh番目の直列分岐の出力電流Ioghと比較し、その偏差値を第5のレギュレータによって計算して出力し、前記制御ループの出力とし、g=1、2、・・・、p、h=1、2、・・・、qであるステップと、
定電流出力を要求する場合、当該出力ポートの出力電力所定値Porefをp*q*Uoで割って、各直列分岐の各並列分岐の電流所定値として、各並列分岐の均流を実現し、前記電流所定値をg番目の並列分岐のh番目の直列分岐の出力電流Ioghと減算した後、第6のレギュレータによって計算して出力し、同時に、q個の直列分岐電圧を合計した後qで割って各直列分岐の電圧所定値として、各直列分岐の均圧を実現し、前記電圧所定値をg番目の並列分岐のh番目の直列分岐の出力電圧Uoghと減算した後、第7のレギュレータによって計算して出力し、前記第6のレギュレータの出力との合計を前記制御ループの出力とするステップと、を含む。
【0047】
任意選択で、上記に開示したいずれかのカスケード型電力電子変圧器において、前記プロセッサは、各変圧器の1次側変換器直流リンクごとに電力周波数の2次高調波の抑制を行うステップも実現し、
単一の変圧器の単一の1次側変換器直流リンクに対して電力周波数の2次高調波抑制を行うステップは、具体的に、
1次側変換器の直流電流を100hzの2次帯域通過フィルタに通過させ、そのうちの電力周波数の2次高調波成分を抽出し、当該電力周波数の2次高調波成分をフィードバックし、0を所定値とし、両者を減算した後、共振周波数が100hzである比例共振コントローラによって計算して出力し、その出力結果を補償前の電気角θkpsに重ね合わせることを含む。
【0048】
任意選択で、上記に開示したいずれかのカスケード型電力電子変圧器において、n≧2、且つ、m=1の場合、前記プロセッサにより実行されるプログラムから上記のθi1に対する計算を省略する。
【0049】
任意選択で、上記に開示したいずれかのカスケード型電力電子変圧器において、n=1、且つ、m≧2の場合、前記プロセッサにより実行されるプログラムから上記のθjに対する計算を省略する。
【0050】
本明細書における各実施例は、漸進の方式を採用して説明され、各実施例の重点的に説明するのは、他の実施例との相違点であり、各実施例の間の同じ又は類似部分については、互いに参照すればよい。実施例に開示したカスケード型電力電子変圧器の実施例について、それは、実施例に開示した方法に対応するため、説明は比較的簡単であり、関連する箇所は、方法部分の説明を参照すればよい。
【0051】
本出願の明細書、特許請求の範囲及び図面における「第1」、「第2」などの用語は、異なる対象を区別するためのものであり、特定の順序や前後順序を説明するためのものではない。また、「含む」及び「有する」という用語及びそれらの任意の変形は、排他的でないものをカバーすることを意図していることで、一連の要素の過程、方法、製品又は装置は、それらの要素だけでなく、明確に列挙されていない他の要素をさらに含み、又は、このような過程、方法、製品、又はデバイスに固有の要素をさらに含む。それ以上の制限がない場合、「1つの・・・を含む」という語句によって限定される要素は、その要素を含む過程、方法、製品、又はデバイスに別の同じ要素がさらに存在することを排除するものではない。
【0052】
開示した実施例に対する上記の説明は、当業者が本出願を実現又は使用することを可能にする。これらの実施例に対する様々な修正は、当業者にとって明らかであり、本明細書で定義された一般的な原理は、本出願の実施例の精神又は範囲から逸脱することなく、他の実施例で実現することができる。従って、本出願の実施例は、本明細書に示すこれらの実施例に限定されず、本明細書に開示される原理及び新規の特徴と一致する最も広い範囲が与えられるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7