(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】断熱二重容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A47J 41/02 20060101AFI20231122BHJP
B65D 81/38 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
A47J41/02 102D
B65D81/38 E
(21)【出願番号】P 2023183365
(22)【出願日】2023-10-25
(62)【分割の表示】P 2022163112の分割
【原出願日】2022-10-11
【審査請求日】2023-10-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175766
【氏名又は名称】三恵技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】元岡 新也
(72)【発明者】
【氏名】野村 哲昭
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-238804(JP,A)
【文献】中国実用新案第211722678(CN,U)
【文献】特許第6978296(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 41/00 - 41/02
B65D 81/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略有底筒状で金属製の内容器と略有底筒状で金属製の外容器との間に断熱層が設けられ、
前記外容器の口部に、内側に折り返された折返部と、前記折返部の下端から底側に向かって漸次縮径するように延びる外容器テーパ部とが形成され、
前記内容器の口部の先端部に、前記内容器の口側に向かって漸次拡径するように延びる内容器テーパ部が形成され、
前記内容器テーパ部の先端が、前記外容器テーパ部の内側傾斜面に当接されて前記外容器テーパ部に周状に溶接されていることを特徴とする断熱二重容器。
【請求項2】
前記外容器テーパ部の内側傾斜面の容器軸方向からの傾斜角度が10°~80°に設定されていることを特徴とする請求項1記載の断熱二重容器。
【請求項3】
前記内容器テーパ部の外側傾斜面の容器軸方向からの傾斜角度が、前記外容器テーパ部の内側傾斜面の容器軸方向からの傾斜角度よりも5°以内の範囲で大きく設定され、
前記内容器テーパ部の外側傾斜面と前記外容器テーパ部の内側傾斜面が略倣うように配置されることを特徴とする請求項2記載の断熱二重容器。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載の断熱二重容器の製造方法であって、
前記外容器に、若しくは前記外容器の口部を構成する外容器構成部材に、口側から前記内容器を内挿し、前記内容器テーパ部の先端を前記外容器テーパ部の内側傾斜面に当接して係止することにより位置決めする第1工程と、
前記内容器テーパ部の先端を前記外容器テーパ部に周状に溶接する第2工程と、を備えることを特徴とする断熱二重容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば二重構造のマグカップ、スープカップ、ランチジャー、携帯用魔法瓶、卓上魔法瓶等の断熱二重容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、断熱二重容器として、外容器の口側から内容器を外容器に内挿して内容器と外容器を位置決めする特許文献1の断熱二重容器がある。この断熱二重容器は、外容器の口部に形成された内側に折り返された折返部の先端が、内容器の口部に形成された拡径部の根元に略当接する位置まで折返部が拡径部の内側に嵌合され、折返部の先端が内容器の内面に溶接して固定された断熱二重容器であり、 外容器構成部材に口側から内容器を内挿して、 外容器構成部材に形成された折返部を内容器の口部に形成された拡径部で外方に付勢しながら外容器構成部材に内容器を圧入する第1工程と、 拡径部が折返部を乗り越えるまで外容器構成部材に内容器を内挿し、折返部を内方に、拡径部の周壁を外方にそれぞれスプリングバックさせる第2工程と、外容器構成部材の口側へ内容器を後退する戻り動作によって折返部の先端が拡径部の根元に略当接するまで折返部を拡径部の内側に嵌合する第3工程により、内容器と外容器を位置決めするようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の断熱二重容器の製造工程のように、外容器構成部材に口側から内容器を内挿し、外容器構成部材の口側へ内容器を後退する戻り動作によって位置決めする方法では、内容器を保持する治具等の製造設備が複雑化し、製造コストが高くなるという問題がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、外容器と内容器を正確な位置に簡単に位置決めすることができると共に、製造設備の簡略化、製造コストの低減を図ることができる断熱二重容器及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の断熱二重容器は、略有底筒状で金属製の内容器と略有底筒状で金属製の外容器との間に断熱層が設けられ、前記外容器の口部に、内側に折り返された折返部と、前記折返部の下端から底側に向かって漸次縮径するように延びる外容器テーパ部とが形成され、前記内容器の口部の先端部に、前記内容器の口側に向かって漸次拡径するように延びる内容器テーパ部が形成され、前記内容器テーパ部の先端が、前記外容器テーパ部の内側傾斜面に当接されて前記外容器テーパ部に周状に溶接されていることを特徴とする。
これによれば、外容器の口側から内容器を外容器若しくは外容器構成部材に挿入し、内容器テーパ部の先端を外容器テーパ部の内側傾斜面に当接することにより、外容器と内容器を正確な位置に簡単に位置決めすることができる。また、複雑な製造設備を必要とする内容器を後退させる戻り動作が不要であるから、断熱二重容器の製造設備を簡略化することができ、製造コストの低減を図ることができる。また、内容器テーパ部の先端は折返部よりも容器内側に配置される外容器テーパ部の内側傾斜面に当接して溶接されることから、使用者が容器から飲料を直接飲む場合に溶接部が使用者の口に当たることを防止することができる。また、当接される内容器テーパ部の先端と外容器テーパ部の内側傾斜面との溶接は、広い溶接角度で行うことが可能であり、必要に応じて溶接角度を調整しながら溶接部の綺麗な仕上がりを実現することができる。
【0007】
本発明の断熱二重容器は、前記外容器テーパ部の内側傾斜面の容器軸方向からの傾斜角度が10°~80°に設定されていることを特徴とする。
これによれば、好適な層厚の断熱層の形成を確保しつつ、外容器若しくは外容器構成部材の口側から内容器を外容器若しくは外容器構成部材に挿入する動作で内容器の全体が外容器若しくは外容器構成部材の内部に落ち込むリスクを無くすことができると共に、外容器と内容器との位置決めをより確実に行うことが可能となる。
【0008】
本発明の断熱二重容器は、前記内容器テーパ部の外側傾斜面の容器軸方向からの傾斜角度が、前記外容器テーパ部の内側傾斜面の容器軸方向からの傾斜角度よりも5°以内の範囲で大きく設定され、前記内容器テーパ部の外側傾斜面と前記外容器テーパ部の内側傾斜面が略倣うように配置されることを特徴とする。
これによれば、内容器テーパ部の外側傾斜面の傾斜角度を、外容器テーパ部の内側傾斜面の傾斜角度よりも大きく設定することにより、内容器テーパ部の先端を外容器テーパ部の内側傾斜面に隙間なく密接して当接させ、内容器テーパ部の先端と外容器テーパ部との一層確実な溶接を実現することができる。また、内容器テーパ部の外側傾斜面と外容器テーパ部の内側傾斜面と略倣うように配置することにより、内容器テーパ部と外容器テーパ部を略積層するようにして配置することが可能となり、この略積層配置により、外容器と内容器を正確な位置により簡単且つより確実に位置決めすることができる。
【0009】
本発明の断熱二重容器の製造方法は、本発明の断熱二重容器を製造する方法であって、前記外容器に、若しくは前記外容器の口部を構成する外容器構成部材に、口側から前記内容器を内挿し、前記内容器テーパ部の先端を前記外容器テーパ部の内側傾斜面に当接して係止することにより位置決めする第1工程と、前記内容器テーパ部の先端を前記外容器テーパ部に周状に溶接する第2工程とを備えることを特徴とする。
これによれば、外容器若しくは外容器構成部材と内容器を正確な位置に非常に簡単に位置決めして断熱二重容器を製造することができる。
【0010】
本発明の断熱二重容器は、略有底筒状で金属製の内容器と略有底筒状で金属製の外容器との間に断熱層が設けられ、前記内容器の口部に、外側に折り返された折返部と、前記折返部の下端から底側に向かって漸次拡径するように延びる内容器テーパ部とが形成され、前記外容器の口部の先端部に、前記外容器の口側に向かって漸次縮径するように延びる外容器テーパ部が形成され、前記内容器テーパ部の先端が、前記外容器テーパ部の外側傾斜面に当接されて前記外容器テーパ部に周状に溶接されていることを特徴とする。
これによれば、外容器の口側から内容器を外容器若しくは外容器構成部材に挿入し、内容器テーパ部の先端を外容器テーパ部の外側傾斜面に当接することにより、外容器と内容器を正確な位置に簡単に位置決めすることができる。また、複雑な製造設備を必要とする内容器を後退させる戻り動作が不要であるから、断熱二重容器の製造設備を簡略化することができ、製造コストの低減を図ることができる。また、内容器テーパ部の先端は折返部よりも容器外側に配置される外容器テーパ部の外側傾斜面に当接して溶接されることから、使用者が容器から飲料を直接飲む場合に溶接部が使用者の口に当たることを防止することができる。また、当接される内容器テーパ部の先端と外容器テーパ部の外側傾斜面との溶接は、広い溶接角度で行うことが可能であり、必要に応じて溶接角度を調整しながら溶接部の綺麗な仕上がりを実現することができる。
【0011】
本発明の断熱二重容器は、前記内容器テーパ部の内側傾斜面の容器軸方向からの傾斜角度が、前記外容器テーパ部の外側傾斜面の容器軸方向からの傾斜角度よりも5°以内の範囲で小さく設定され、前記内容器テーパ部の内側傾斜面と前記外容器テーパ部の外側傾斜面が略倣うように配置されることを特徴とする。
これによれば、内容器テーパ部の内側傾斜面の傾斜角度を、外容器テーパ部の外側傾斜面の傾斜角度よりも小さく設定することにより、内容器テーパ部の先端を外容器テーパ部の外側傾斜面に隙間なく密接して当接させ、内容器テーパ部の先端と外容器テーパ部との一層確実な溶接を実現することができる。また、内容器テーパ部の内側傾斜面と外容器テーパ部の外側傾斜面と略倣うように配置することにより、内容器テーパ部と外容器テーパ部を略積層するようにして配置することが可能となり、この略積層配置により、外容器と内容器を正確な位置により簡単且つより確実に位置決めすることができる。
【0012】
本発明の断熱二重容器の製造方法は、本発明の断熱二重容器を製造する方法であって、前記外容器に、若しくは前記外容器の口部を構成する外容器構成部材に、口側から前記内容器を内挿すると共に、前記内容器テーパ部を前記外容器テーパ部の外側に配置し、前記内容器テーパ部の先端を前記外容器テーパ部の外側傾斜面に当接して係止することにより位置決めする第1工程と、前記内容器テーパ部の先端を前記外容器テーパ部に周状に溶接する第2工程とを備えることを特徴とする。
これによれば、外容器若しくは外容器構成部材と内容器を正確な位置に非常に簡単に位置決めして断熱二重容器を製造することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、断熱二重容器の外容器と内容器を正確な位置に簡単に位置決めすることができると共に、製造設備の簡略化、製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明による第1実施形態の断熱二重容器を示す平面図。
【
図4】第1実施形態の断熱二重容器の製造工程における内容器を外容器に挿入する工程を説明する工程説明図。
【
図5】本発明による第2実施形態の断熱二重容器の
図3に相当する部分の拡大断面図。
【
図6】第2実施形態の断熱二重容器の製造工程における内容器を外容器に挿入する工程を説明する工程説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1実施形態の断熱二重容器及びその製造方法〕
本発明による第1実施形態の断熱二重容器1は、
図1~
図4に示すように、略有底筒状でステンレス等の金属製の内容器2と略有底筒状でステンレス等の金属製の外容器3を有し、内容器2と外容器3との間に空間が設けられ、この空間が断熱層4になっている。本実施形態における断熱層4は、内容器2と外容器3との間の空間を大気圧の状態にした空気層の断熱層としているが、内容器2と外容器3との間の空間を真空状態或いは減圧状態にした真空断熱層や、内容器2と外容器3との間の空間に真空断熱材を設けた断熱層としても良好である。尚、図示例の断熱二重容器1は回転ハンドル付きのマグカップである。
【0016】
内容器2は、周側壁21と、底部22と、周側壁21の上側に周側壁21と一体形成で設けられている口部23とから構成され、口部23側で開口している。内容器2の口部23の先端部には、内容器2の口側に向かって漸次拡径するように延びる内容器テーパ部231が形成されており、内容器テーパ部231は周状に設けられている。鉛直方向に延びる内容器2の周側壁21の上端部と、内容器テーパ部231の根元との間には、口部23を構成する略く字状に曲がった屈曲部232が周状に形成されている。口部23を構成する内容器テーパ部231と屈曲部232は、例えば有底筒状の内容器構成部材の開口側にスピニング加工を施して形成すると良好である。
【0017】
外容器3は、周側壁31と、底部32と、周側壁31の上側に周側壁31と一体形成で設けられている口部33とから構成され、口部33側で開口している。外容器3の口部33には、内側に略弧状に折り返された折返部331と、折返部331の下端から底側に向かって漸次縮径するように延びる外容器テーパ部332とが形成され、折返部331と外容器テーパ部332はそれぞれ周状に形成されている。口部33を構成する折返部331と外容器テーパ部332は、例えば有底筒状の外容器構成部材の開口側にスピニング加工を施して形成すると良好である。
【0018】
本実施形態における外容器テーパ部332の内側傾斜面3321は、容器軸方向からの傾斜角度α1を10°~80°に設定して形成されている。断熱二重容器1が収容する液体等の容量確保の観点からは、外容器テーパ部332の内側傾斜面3321の容器軸方向からの傾斜角度α1は10°~60°に設定するとより好適である。また、本実施形態における内容器テーパ部231の外側傾斜面2311の容器軸方向からの傾斜角度β1は、外容器テーパ部332の内側傾斜面3321の容器軸方向からの傾斜角度α1よりも5°以内の範囲で大きく設定され、より好適には外容器テーパ部332の内側傾斜面3321の容器軸方向からの傾斜角度α1よりも3°以内の範囲で大きく設定されている。そして、内容器テーパ部231の外側傾斜面2311と外容器テーパ部332の内側傾斜面3321が略倣うように配置され、略積層状態で配置されている。
【0019】
内容器テーパ部231の先端2312は、外容器テーパ部332の内側傾斜面3321に当接され、当接箇所に設けられたレーザー溶接等による溶接部5で外容器テーパ部332に周状に溶接されている。本実施形態では、内容器テーパ部231の断面視で略直線状に延びる外側傾斜面2311の傾斜角度β1が、外容器テーパ部332の断面視で略直線状に延びる内側傾斜面3321の傾斜角度α1よりも大きく設定されていることから、内容器テーパ部231の先端2312が外容器テーパ部332の内側傾斜面3321に隙間なく密接して当接され、この密接性の確保により、内容器テーパ部231の先端2312と外容器テーパ部332との溶接部5による確実な溶接が可能となる。
【0020】
第1実施形態の断熱二重容器1を製造する際には、
図4に示すように、外容器3に、又は例えば外容器3の口部33と周側壁31の部分から構成される部材など外容器3の口部33を構成する外容器構成部材に、口側から内容器2を内挿し(
図4(a)の太線矢印参照)、内容器2の内容器テーパ部231の先端2312を外容器テーパ部332の内側傾斜面3321に当接して係止することにより位置決めする。そして、位置決めした内容器テーパ部231の先端2312を外容器テーパ部332に周状に溶接することにより、断熱二重容器1を製造する。
【0021】
第1実施形態の断熱二重容器1によれば、外容器3の口側から内容器2を外容器3若しくは外容器構成部材に挿入し、内容器テーパ部231の先端2312を外容器テーパ部332の内側傾斜面3321に当接することにより、外容器3と内容器2を正確な位置に簡単に位置決めすることができる。また、複雑な製造設備を必要とする内容器2を後退させる戻り動作が不要であるから、断熱二重容器1の製造設備を簡略化することができ、製造コストの低減を図ることができる。また、内容器テーパ部231の先端2312は折返部331よりも容器内側に配置される外容器テーパ部332の内側傾斜面3321に当接して溶接されることから、使用者が容器から飲料を直接飲む場合に溶接部5が使用者の口に当たることを防止することができる。また、当接される内容器テーパ部231の先端2312と外容器テーパ部332の内側傾斜面3321との溶接は、広い溶接角度で行うことが可能であり、必要に応じて溶接角度を調整しながら溶接部5の綺麗な仕上がりを実現することができる。
【0022】
また、外容器テーパ部332の内側傾斜面3321の容器軸方向からの傾斜角度α1を10°~80°に設定することにより、好適な層厚の断熱層の形成を確保しつつ、外容器3若しくは外容器構成部材の口側から内容器2を外容器3若しくは外容器構成部材に挿入する動作で内容器2の全体が外容器3若しくは外容器構成部材の内部に落ち込むリスクを無くすことができると共に、外容器3と内容器2との位置決めをより確実に行うことが可能となる。
【0023】
また、内容器テーパ部231の外側傾斜面2311の傾斜角度β1を、外容器テーパ部332の内側傾斜面3321の傾斜角度α1よりも大きく設定することにより、内容器テーパ部231の先端2312を外容器テーパ部332の内側傾斜面3321に隙間なく密接して当接させ、内容器テーパ部231の先端2312と外容器テーパ部332との一層確実な溶接を実現することができる。また、内容器テーパ部231の外側傾斜面2311と外容器テーパ部332の内側傾斜面3321と略倣うように配置することにより、内容器テーパ部231と外容器テーパ部332を略積層するようにして配置することが可能となり、この略積層配置により、外容器3と内容器2を正確な位置により簡単且つより確実に位置決めすることができる。
【0024】
〔第2実施形態の断熱二重容器及びその製造方法〕
本発明による第2実施形態の断熱二重容器1aは、内容器2aの口部23aと外容器3aの口部33aの構造が、第1実施形態の断熱二重容器1と内容器2の口部23と外容器3の口部33の構造と異なっており、それ以外は第1実施形態の断熱二重容器1の構成と同一である。
【0025】
第2実施形態の断熱二重容器1aにおける内容器2aの口部23aは、
図5に示すように、周側壁21の上側に周側壁21と一体形成で設けられている。口部23aには、外側に略弧状に折り返された折返部231aと、折返部231aの下端から底側に向かって漸次拡径するように延びる内容器テーパ部232aとが形成され、折返部231aと内容器テーパ部232aはそれぞれ周状に形成されている。口部23aを構成する折返部231aと内容器テーパ部232aは、例えば有底筒状の内容器構成部材の開口側にスピニング加工を施して形成すると良好である。
【0026】
外容器3aの口部33aは、周側壁31の上側に周側壁31と一体形成で設けられている。外容器3aの口部33aの先端部には、外容器3aの口側に向かって漸次縮径するように延びる外容器テーパ部331aが形成されており、外容器テーパ部331aは周状に設けられている。口部33aを構成する外容器テーパ部331aは、例えば有底筒状の外容器構成材の開口側にスピニング加工を施して形成すると良好である。
【0027】
本実施形態における外容器テーパ部331aの外側傾斜面331a1は、容器軸方向からの傾斜角度α2を10°~80°に設定して形成されている。また、本実施形態における内容器テーパ部232aの内側傾斜面232a1の容器軸方向からの傾斜角度β2は、外容器テーパ部331aの外側傾斜面331a1の容器軸方向からの傾斜角度α2よりも5°以内の範囲で小さく設定され、より好適には外容器テーパ部331aの外側傾斜面331a1の容器軸方向からの傾斜角度α2よりも3°以内の範囲で小さく設定されている。そして、内容器テーパ部232aの内側傾斜面232a1と外容器テーパ部331aの外側傾斜面331a1が略倣うように配置され、略積層状態で配置されている。
【0028】
内容器テーパ部232aの先端232a2は、外容器テーパ部331aの外側傾斜面331a1に当接され、当接箇所に設けられたレーザー溶接等による溶接部5aで外容器テーパ部331aに周状に溶接されている。本実施形態では、内容器テーパ部232aの断面視で略直線状に延びる内側傾斜面232a1の傾斜角度β2が、外容器テーパ部331aの断面視で略直線状に延びる外側傾斜面331a1の傾斜角度α2よりも大きく設定されていることから、内容器テーパ部232aの先端232a2が外容器テーパ部331aの外側傾斜面331a1に隙間なく密接して当接され、この密接性の確保により、内容器テーパ部232aの先端232a2と外容器テーパ部331aとの溶接部5aによる確実な溶接が可能となる。
【0029】
第2実施形態の断熱二重容器1aを製造する際には、
図6に示すように、外容器3aに、又は例えば外容器3の口部33aと周側壁31の部分から構成される部材など外容器3aの口部33aを構成する外容器構成部材に、口側から内容器2aを内挿する(
図6(a)の太線矢印参照)と共に、内容器2aの内容器テーパ部232aを外容器テーパ部331aに被せるようにして外容器テーパ部331aの外側に配置し、内容器テーパ部232aの先端232a2を外容器テーパ部331aの外側傾斜面331a1に当接して係止することにより位置決めする。そして、位置決めした内容器テーパ部232aの先端232a2を外容器テーパ部331aに周状に溶接することにより、断熱二重容器1aを製造する。
【0030】
第2実施形態の断熱二重容器1aによれば、外容器3aの口側から内容器2aを外容器3a若しくは外容器構成部材に挿入し、内容器テーパ部232aの先端232a2を外容器テーパ部331aの外側傾斜面331a1に当接することにより、外容器3aと内容器2aを正確な位置に簡単に位置決めすることができる。また、複雑な製造設備を必要とする内容器2aを後退させる戻り動作が不要であるから、断熱二重容器1aの製造設備を簡略化することができ、製造コストの低減を図ることができる。また、内容器テーパ部232aの先端232a2は折返部231aよりも容器外側に配置される外容器テーパ部331aの外側傾斜面331a1に当接して溶接されることから、使用者が容器から飲料を直接飲む場合に溶接部5aが使用者の口に当たることを防止することができる。また、当接される内容器テーパ部232aの先端232a2と外容器テーパ部331aの外側傾斜面331a1との溶接は、広い溶接角度で行うことが可能であり、必要に応じて溶接角度を調整しながら溶接部5aの綺麗な仕上がりを実現することができる。
【0031】
また、内容器テーパ部232aの内側傾斜面232a1の傾斜角度β2を、外容器テーパ部331aの外側傾斜面331a1の傾斜角度α2よりも小さく設定することにより、内容器テーパ部232aの先端232a2を外容器テーパ部331aの外側傾斜面331a1に隙間なく密接して当接させ、内容器テーパ部232aの先端232a2と外容器テーパ部331aとの一層確実な溶接を実現することができる。また、内容器テーパ部232aの内側傾斜面232a1と外容器テーパ部331aの外側傾斜面331a1と略倣うように配置することにより、内容器テーパ部232aと外容器テーパ部331aを略積層するようにして配置することが可能となり、この略積層配置により、外容器3aと内容器2aを正確な位置により簡単且つより確実に位置決めすることができる。
【0032】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、各実施形態及びその変形例の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記変形例や追記した内容も含まれる。
【0033】
本発明の断熱二重容器には、内容器の内容器テーパ部の先端が外容器の外容器テーパ部の内側傾斜面に当接されて外容器テーパ部に周状に溶接される適宜の構成の断熱二重容器が包含され、例えば第1実施形態の断熱二重容器1において、内容器テーパ部231の外側傾斜面2311の容器軸方向からの傾斜角度β1と、外容器テーパ部332の内側傾斜面3321の容器軸方向からの傾斜角度α1とが同一角度に設定され、内容器テーパ部231の先端2312が外容器テーパ部332の内側傾斜面3321に当接される構成とすることも可能である。
【0034】
また、本発明の断熱二重容器には、内容器の内容器テーパ部の先端が外容器の外容器テーパ部の外側傾斜面に当接されて外容器テーパ部に周状に溶接される適宜の構成の断熱二重容器が包含され、例えば第2実施形態の断熱二重容器1aにおいて、内容器テーパ部232aの内側傾斜面232a1の容器軸方向からの傾斜角度β2と、外容器テーパ部331aの外側傾斜面331a1の容器軸方向からの傾斜角度α2とが同一角度に設定され、内容器テーパ部232aの先端232a2が外容器テーパ部331aの外側傾斜面331a1に当接される構成とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、例えば二重構造のマグカップ、スープカップ、ランチジャー、携帯用魔法瓶、卓上魔法瓶等の断熱二重容器に利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1、1a…断熱二重容器 2、2a…内容器 21…周側壁 22…底部 23、23a…口部 231…内容器テーパ部 2311…内容器テーパ部の外側傾斜面 2312…内容器テーパ部の先端 232…屈曲部 231a…折返部 232a…内容器テーパ部 232a1…内容器テーパ部の内側傾斜面 232a2…内容器テーパ部の先端 3、3a…外容器 31…周側壁 32…底部 33、33a…口部 331…折返部 332…外容器テーパ部 3321…外容器テーパ部の内側傾斜面 331a…外容器テーパ部 331a1…外容器テーパ部の外側傾斜面 4…断熱層 5、5a…溶接部 α1…外容器テーパ部の内側傾斜面の容器軸方向からの傾斜角度 β1…内容器テーパ部の外側傾斜面の容器軸方向からの傾斜角度 α2…外容器テーパ部の外側傾斜面の容器軸方向からの傾斜角度 β2…内容器テーパ部の内側傾斜面の容器軸方向からの傾斜角度
【要約】
【課題】外容器と内容器を正確な位置に簡単に位置決めすることができると共に、製造設備の簡略化、製造コストの低減を図ることができる。
【解決手段】略有底筒状で金属製の内容器2と略有底筒状で金属製の外容器3との間に断熱層4が設けられ、外容器3の口部33に、内側に折り返された折返部331と、折返部331の下端から底側に向かって漸次縮径するように延びる外容器テーパ部332とが形成され、内容器2の口部23の先端部に、内容器2の口側に向かって漸次拡径するように延びる内容器テーパ部231が形成され、内容器テーパ部231の先端2312が、外容器テーパ部332の内側傾斜面3321に当接されて外容器テーパ部332に周状に溶接されている断熱二重容器1。
【選択図】
図3