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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】貯湯給湯装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/10 20220101AFI20231124BHJP
   F24H 1/00 20220101ALI20231124BHJP
   F24H 8/00 20220101ALI20231124BHJP
   F24H 15/258 20220101ALI20231124BHJP
【FI】
F24H15/10
F24H1/00 A
F24H8/00
F24H15/258
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019233911
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021103024
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】藤川 泰
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 向生
(72)【発明者】
【氏名】中野 晶夫
(72)【発明者】
【氏名】片山 真吾
(72)【発明者】
【氏名】松原 海
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-158324(JP,A)
【文献】特開2012-093062(JP,A)
【文献】特開2016-061536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00-15/493
F24D 1/00-19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯槽と、前記貯湯槽の下部に接続された給水通路と、前記貯湯槽の上部から給湯通路に接続された出湯通路と、潜熱回収用熱交換器を有する補助熱源機と、前記給水通路から分岐されて前記補助熱源機に接続された補助加熱通路と、前記補助熱源機から前記出湯通路に接続された補助熱源機出湯通路と、前記補助加熱通路に介装されたポンプと、前記出湯通路から分岐されて前記ポンプよりも上流側の前記補助加熱通路に接続された再加熱通路を備え、前記貯湯槽の湯水温度が低下した場合に前記ポンプを駆動して前記補助熱源機で加熱して給湯する貯湯給湯装置において、
前記補助熱源機を使用する給湯運転の際に、前記補助熱源機から出湯された高温水の一部を、前記再加熱通路を介して前記補助加熱通路に導入し、前記補助熱源機への入水温度を上昇させる予熱給湯運転を行うことを特徴とする貯湯給湯装置。
【請求項2】
外気温度が予め設定された基準外気温度以下の場合に前記予熱給湯運転を行うことを特徴とする請求項1に記載の貯湯給湯装置。
【請求項3】
前記補助熱源機を使用する給湯運転の終了後には、次の給湯に備えて前記補助熱源機で加熱されて出湯された高温水を、前記再加熱通路を介して前記補助加熱通路に導入し、前記補助熱源機への入水温度を上昇させる出湯準備運転を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の貯湯給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯給湯装置に関し、特に潜熱回収用熱交換器を備えた燃焼式の補助熱源機を有する貯湯給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱源機で加熱した湯水を貯湯槽に貯湯する貯湯運転を行い、貯湯された湯水を給湯等に使用する貯湯給湯装置が広く利用されている。貯湯給湯装置は、例えば混合弁等の混合手段を有し、給湯運転では混合弁で貯湯された湯水に上水(低温水)が混合され、給湯設定温度に調整された湯水が給湯される。それ故、貯湯運転では給湯設定温度よりも高温の湯水が貯湯槽に貯湯される。
【0003】
また、貯湯給湯装置は、貯湯槽の湯水や低温水を加熱するための補助熱源機とポンプを備えている。これにより、給湯に使用できる温度の湯水が貯湯槽に無い場合に、補助熱源機によって加熱された高温水に、混合弁で低温水が混合されて、給湯設定温度に調整された湯水が給湯される。
【0004】
補助熱源機は、燃料を燃焼させて高温の燃焼ガスを発生させ、この高温の燃焼ガスとの熱交換によって湯水を加熱する燃焼式の熱源機である。補助熱源機の熱交換器は、燃焼ガスの熱を効率的に利用するために、燃焼ガスの顕熱を回収する顕熱回収用熱交換器と、顕熱が回収された燃焼ガスの潜熱を回収する潜熱回収用熱交換器によって構成されている。
【0005】
潜熱が回収された燃焼ガスは、排気口から外部に排気される。燃焼ガスに含まれていた水蒸気は、潜熱が回収されて凝縮し、酸性のドレンになる。このドレンが潜熱回収用熱交換器に水滴となって付着し、その一部がドレンパンに落下し中和器で中和されて排水される。外気温と水温が低い冬季には、補助熱源機に供給される低温水によって燃焼ガスが一層冷やされ、ドレンが発生し易い。
【0006】
補助熱源機の燃焼が停止されると、パージ動作により補助熱源機内の燃焼ガスが排気されて空気に置換されるが、潜熱回収用熱交換器に付着したドレンはそのまま残留する。そして、燃焼停止前に温められた潜熱回収用熱交換器と顕熱回収用熱交換器の通路内の湯水によって、置換された空気が温められると共にドレンが蒸発して湿度が上昇し、外気よりも高温高湿になる。
【0007】
このような状態で排気口から外気が吹き込まれると、高温高湿の空気が逆流して燃焼部に到達する。特に冬季は外気温度が低いので、冷却された燃焼部で高温高湿の空気が冷やされ結露し易い。この結露によって燃焼部の燃料ノズルが閉塞されてしまい、次回の燃焼開始時に燃料供給が妨げられて着火不良が発生することが知られている。
【0008】
それ故、例えば特許文献1では、結露による着火不良を防ぐために、着火前の燃料ノズルに燃料を加圧供給して水滴を吹き飛ばすことが記載されている。しかし、燃焼部の結露は、腐食等によって燃焼部の劣化を促進させる虞があり、好ましくない。そのため、燃焼中のドレンの発生を抑える技術として、例えば特許文献2のように、 入水温度等に基づいて熱交換器を通る湯水の流通経路を変更するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2017-101895号公報
【文献】特許第4609085号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2の技術は、ドレンの発生が抑制されるので、外気の吹き込みによってパージ動作後の空気が燃焼部に逆流しても結露しない。しかし、貯湯槽を有する貯湯給湯装置では、貯湯された湯水を再加熱して給湯に使用する際に、貯湯された湯水を使い切って補助熱源機への入水温度が急低下する場合がある。そして給湯中に、ドレンの発生を抑制するために特許文献2のように湯水の流通経路を変更することは、給湯温度がすぐには安定しない虞があって困難である。それ故、貯湯給湯装置の補助熱源機には、結露による着火不良の新たな防止技術が要望されていた。
【0011】
本発明の目的は、潜熱回収用熱交換器を有する補助熱源機と貯湯槽を備え、結露による補助熱源機の着火不良を防止することができる貯湯給湯装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明の貯湯給湯装置は、貯湯槽と、前記貯湯槽の下部に接続された給水通路と、前記貯湯槽の上部から給湯通路に接続された出湯通路と、潜熱回収用熱交換器を有する補助熱源機と、前記給水通路から分岐されて前記補助熱源機に接続された補助加熱通路と、前記補助熱源機から前記出湯通路に接続された補助熱源機出湯通路と、前記補助加熱通路に介装されたポンプと、前記出湯通路から分岐されて前記ポンプよりも上流側の前記補助加熱通路に接続された再加熱通路を備え、前記貯湯槽の湯水温度が低下した場合に前記ポンプを駆動して前記補助熱源機で加熱して給湯する貯湯給湯装置において、前記補助熱源機を使用する給湯運転の際に、前記補助熱源機から出湯された高温水の一部を、前記再加熱通路を介して前記補助加熱通路に導入し、前記補助熱源機への入水温度を上昇させる予熱給湯運転を行うことを特徴としている。
【0013】
上記構成によれば、貯湯槽の湯水温度が低いため、補助熱源機で加熱した湯水を給湯に使用する給湯運転の際に、補助熱源機で加熱された高温水の一部を、再加熱通路を介して補助加熱通路に導入させて、補助熱源機の入水温度を上昇させる予熱給湯運転を行う。これにより補助熱源機には、温度が上昇した湯水、即ち予熱された湯水が供給される。この予熱された湯水によって、潜熱回収用熱交換器における燃焼ガスからのドレンの発生が抑制される。そして、燃焼停止後に潜熱回収用熱交換器の空気の温度が上昇しても、蒸発するドレンが少ないので高湿にならない。この空気は、外気の吹き込みにより燃焼部に到達して冷やされても、水分を多く含んでいないので燃焼部での結露が抑制され、結露による補助熱源機の着火不良を防止することができる。
【0014】
請求項2の発明の貯湯給湯装置は、請求項1の発明において、外気温度が予め設定された基準外気温度以下の場合に前記予熱給湯運転を行うことを特徴としている。
上記構成によれば、外気温度が予め設定された基準外気温度以下の場合に予熱給湯運転を行う。燃焼部が冷却されるため結露し易くなる低い外気温度のときに、結露を予熱給湯運転によって効果的に抑制することができる。
【0015】
請求項3の発明の貯湯給湯装置は、請求項1又は2の発明において、前記補助熱源機を使用する給湯運転の終了後には、次の給湯に備えて前記補助熱源機で加熱されて出湯された高温水を、前記再加熱通路を介して前記補助加熱通路に導入し、前記補助熱源機への入水温度を上昇させる出湯準備運転を行うことを特徴としている。
上記構成によれば、補助熱源機の上流側及び下流側に高温水を準備しておくことができるので、次回の補助熱源機を使用する給湯運転の際に高温水をすぐに供給することができる。また、加熱された湯水が補助熱源機に供給されるので、潜熱回収用熱交換器でのドレンの発生が抑制される。従って、燃焼停止後に潜熱回収用熱交換器の空気の温度が上昇しても高湿にならない。この空気は、外気の吹き込みにより燃焼部に到達して冷やされても、水分を多く含んでいないので燃焼部での結露が抑制され、結露による補助熱源機の着火不良を防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の貯湯給湯装置によれば、潜熱回収用熱交換器を有する補助熱源機の結露による着火不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例に係る貯湯給湯装置の構成図である。
図2】本発明の実施例に係る貯湯運転の運転状態を示す図である。
図3】本発明の実施例に係る給湯運転の開始と停止の制御のフローチャートである。
図4】本発明の実施例に係る給湯運転の実行制御のフローチャートである。
図5】本発明の実施例に係る補助熱源機で貯湯槽の湯水を加熱して給湯する運転状態を示す図である。
図6】本発明の実施例に係る予熱給湯運転の運転状態を示す図である。
図7】本発明の実施例に係る出湯準備制御のフローチャートである。
図8】本発明の実施例に係る出湯準備運転の運転状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例
【0019】
図1に示すように貯湯給湯装置1は、湯水を貯湯するための貯湯槽2と、熱源機3と、補助熱源機4と、混合弁5を有する。貯湯槽2の湯水を熱源機3で加熱して貯湯槽2に貯湯するために、貯湯槽2の下部と熱源機3の湯水入口とが熱源機往き通路6によって接続され、熱源機3の湯水出口と貯湯槽2の上部とが熱源機戻り通路7によって接続されている。
【0020】
また、外部の給水配管(上水道)から貯湯槽2に低温水(上水)を供給するための給水通路8が貯湯槽2の下部に接続され、貯湯槽2の湯水を出湯するための出湯通路9が貯湯槽2の上部に接続されている。この出湯通路9は混合弁5の高温水入口に接続され、給水通路8から分岐された分岐通路10が混合弁5の低温水入口に接続されている。そして、混合弁5で混合された湯水を給湯するための給湯通路11が混合弁5の出口に接続されている。
【0021】
貯湯槽2には、貯湯槽2の湯水温度を検知する複数の貯湯温度センサ2a~2eが、高温の湯水の貯湯量も分かるように、貯湯槽2の高さ方向に所定の間隔を空けて配設されている。熱源機往き通路6には、熱源機3に導入される湯水の温度を検知する熱源機往き温度センサ6aが配設されている。また、熱源機戻り通路7には、熱源機3で加熱された湯水の温度を検知する熱源機戻り温度センサ7aが配設されている。
【0022】
熱源機3は、例えばヒートポンプ式熱源機や燃料電池等の発電時の熱を利用する熱源機である。この熱源機3を使用して、貯湯槽2の湯水を給湯設定温度よりも高温に加熱して貯湯する貯湯運転が行われる。
【0023】
給水通路8には低温水の温度を検知する給水温度センサ8aが配設されている。混合弁5の高温水入口近傍の出湯通路9には、混合弁5に供給される高温水の温度を検知する高温水入口温度センサ9aが配設されている。給湯通路11には、給湯流量を検知する給湯流量センサ11aと、給湯温度を検知する給湯温度センサ11bと、給湯流量を調整する給湯流量調整弁11c等が配設されている。
【0024】
給湯設定温度の給湯を行う給湯運転では、混合弁5において、出湯通路9から供給される高温水と分岐通路10から供給される低温水を混合して給湯設定温度に調整するために、混合弁5の混合比が調整される。混合弁5で混合された湯水は、給湯通路11を介して給湯栓12等から給湯される。また、給湯流量調整弁11cにおいて給湯通路11から注湯通路13が分岐され、注湯通路13を介して設定湯量の風呂の湯張りが可能に構成され、この風呂の湯張りも給湯運転に含まれる。
【0025】
補助熱源機4は、燃料を燃焼させて発生させた高温の燃焼ガスとの熱交換により湯水を加熱する燃焼式の熱源機である。この補助熱源機4は、燃焼部4aと送風機4bと、熱交換器として顕熱回収用熱交換器4cと潜熱回収用熱交換器4dと、燃焼部4a内の複数の燃料ノズル4eと、ドレンパン4fを有する。燃焼部4aでは、送風機4bから供給される燃焼用の空気を利用して、外部から複数の燃料ノズル4eに供給される燃料ガスが燃焼され、高温の燃焼ガスが発生する。送風機4bは、貯湯給湯装置1の図示外の給気口から導入される外気を燃焼用の空気として燃焼部4aに供給する。
【0026】
燃焼ガスは、顕熱回収用熱交換器4c、潜熱回収用熱交換器4dの順に通過するように流動される。そして、熱交換器で湯水の加熱に利用されて温度が下がった燃焼ガスが排気口1aから外部に排気される。このとき潜熱回収用熱交換器4dには、燃焼ガスに含まれる水蒸気が凝縮した酸性のドレンが水滴として付着し、ドレンパン4fに落下したドレンが中和器4gで中和されて排水される。
【0027】
この補助熱源機4は、貯湯槽2の湯水の温度が低いため給湯に使用できない場合に、貯湯槽2の湯水又は給水通路8の低温水を加熱して給湯に使用する。給水通路8の低温水を補助熱源機4に供給するために、給水通路8から補助加熱通路14が分岐されて補助熱源機4の入口に接続されている。
【0028】
補助加熱通路14には、補助熱源機4に湯水を加圧供給するポンプ15が介装されている。この補助加熱通路14には、補助熱源機4に供給される湯水の温度(補助熱源機入水温度)を検知する補助熱源機入口温度センサ14aと、補助熱源機4に供給される湯水の流量を検知する補助熱源機入口流量センサ14bが配設されている。
【0029】
また、貯湯槽2の湯水を補助熱源機4に供給するために、出湯通路9から分岐された再加熱通路16が補助加熱通路14のポンプ15よりも上流側に接続されている。再加熱通路16と補助加熱通路14の接続部には、湯水の通路を切り替えるための三方弁17が配設されている。ポンプ15を駆動させて、三方弁17が補助加熱通路14側に切り替えられると、補助加熱通路14を介して低温水が補助熱源機4に供給され、三方弁17が再加熱通路16側に切り替えられると、再加熱通路16を介して貯湯槽2の湯水が補助熱源機4に供給される。
【0030】
補助熱源機4で加熱された湯水を出湯するために、補助熱源機4の出口に接続された補助熱源機出湯通路18が、出湯通路9の再加熱通路16の分岐部よりも混合弁5側で、出湯通路9に接続されている。この補助熱源機出湯通路18には、補助熱源機4で加熱された湯水の温度(補助熱源機出口温度)を検知する補助熱源機出口温度センサ18aと、出湯通路9に供給する湯水量を調整するための流量調整弁19が配設されている。補助熱源機4の燃焼能力は、補助熱源機4に供給される湯水の流量と温度に応じて調整され、所定の補助熱源機出湯設定温度(例えば80℃)の高温水が出湯通路9に供給される。
【0031】
流量調整弁19よりも上流側の補助熱源機出湯通路18から温水利用通路20が分岐され、三方弁17よりも上流側で補助加熱通路14に接続されている。この温水利用通路20には、補助熱源機4で加熱された高温水の供給が可能である。
【0032】
温水利用通路20には、供給された高温水を利用して、図示外の暖房機器に供給する暖房熱媒を加熱する暖房運転のための暖房用熱交換器20aと、図示外の風呂の湯水を加熱(追焚き)する風呂追焚運転のための風呂追焚用熱交換器20bが配設されている。また、温水利用通路20には、暖房運転時に開放される暖房電磁弁20cと風呂追焚運転時に開放される風呂追焚電磁弁20dが配設されている。
【0033】
貯湯給湯装置1は、給湯運転等の各種運転を制御するための制御部21を備えている。制御部21は、貯湯温度センサ2a等の各部に配設された温度センサの検知温度や、給湯流量センサ11aの検知流量等に基づいて、各種弁やポンプ15等の機器類を作動させる制御を行う。また、制御部21は、計時機能や給湯使用履歴を記憶する機能等を備えている。そして、貯湯給湯装置1の操作や給湯設定温度等の各種設定を行うための操作端末22と、外気温度を検知する外気温度センサ23が制御部21に接続されている。給湯設定温度は、ユーザが所定の範囲内で任意に設定でき、例えば40℃程度に設定されることが多い。
【0034】
次に、貯湯運転について説明する。
図2に示すように、貯湯運転では、熱源機往き通路6を介して貯湯槽2の下部から湯水が熱源機3に導入される。そして、熱源機3で高温に加熱された湯水が、熱源機戻り通路7を介して貯湯槽2の上部から貯湯される。尚、貯湯槽2と熱源機3の間で湯水を循環させる図示外の循環ポンプは、ここでは熱源機3が有しているが、熱源機往き通路6に配設されていてもよい。
【0035】
熱源機3が例えばヒートポンプ式熱源機の場合には、制御部21は、過去の給湯使用履歴に基づいて予測した貯湯熱量を予測した時刻までに貯湯するように貯湯運転を開始させて貯湯運転を制御する。また、熱源機3が燃料電池等の発電時の熱を利用する熱源機の場合には、制御部21は貯湯温度センサ2a~2eの検知温度に基づいて貯湯熱量を取得し、予め定まっている貯湯槽2の貯湯熱量の上限を超えないように放熱動作制御等を行う。
【0036】
次に、給湯運転について説明する。
給湯運転では、貯湯給湯装置1は、出湯通路9の高温水と、分岐通路10の低温水を混合弁5で混合して給湯通路11に供給し、給湯栓12等から給湯する。この給湯運転の制御部21による制御について、図3図8のフローチャートと運転状態を示す図に基づいて説明する。尚、図中のSi(i=1,2,・・・)はステップを表す。
【0037】
図3は、貯湯給湯装置1における給湯運転開始停止制御を示している。S1では給湯運転開始条件が成立したか否か判定する。例えば、給湯栓12の開栓によって給湯流量センサ11aが所定流量以上の流量を検知すると、給湯運転開始条件が成立する。S1の判定がYesの場合はS2に進んで給湯運転が実行される。一方、S1の判定がNoの場合にはS5に進み、S5において出湯準備制御を行ってリターンして、再び給湯運転開始停止制御がスタートされる。
【0038】
S2において給湯運転が実行されるとS3に進み、S3において給湯運転停止条件が成立したか否か判定する。例えば、給湯栓12の閉栓によって給湯流量センサ11aが所定流量以上の流量を検知しなくなると、給湯運転停止条件が成立する。S3の判定がYesの場合はS4に進んで給湯運転を停止してリターンして、再び給湯運転開始停止制御がスタートされる。S3の判定がNoの場合はS2に戻って給湯運転が継続実行される。
【0039】
図4は、貯湯給湯装置1における給湯運転の実行制御を示している。図3のS2で給湯運転が実行されると、S11において、貯湯槽2に貯湯されている湯水の温度(貯湯槽湯水温度)が、予め操作端末22から設定された給湯設定温度+所定温度(α[℃])以上か否か判定する。貯湯槽2に貯湯された湯水を高温水として出湯して給湯可能か否か判定するものである。
【0040】
所定温度は、貯湯給湯装置1やその設置環境等に応じて適宜設定され、例えば3℃に設定されている。貯湯槽湯水温度は、最も上側に配設された貯湯温度センサ2aの検知温度であるが、貯湯温度センサ2aに対応する貯湯量が少ない場合には、その下側の例えば貯湯温度センサ2bの検知温度としてもよい。
【0041】
S11の判定がNoの場合には、貯湯槽2の湯水の温度が低く給湯設定温度の給湯ができないため、S12に進む。そしてS12において、貯湯された湯水の熱も利用するために、三方弁17を再加熱通路16側に切り替え、ポンプ15を駆動させ、補助熱源機4の燃焼部4aで燃焼させ、補助熱源機4から出湯させてS13に進む。この補助熱源機4で加熱された湯水は、高温水として補助熱源機出湯通路18を介して出湯通路9に供給される(図5参照)。
【0042】
S13において、高温水入口温度センサ9aの検知温度(高温水の温度)と、給水温度センサ8aの検知温度(低温水の温度)と、給湯設定温度に基づいて、混合比を算出してS14に進む。そしてS14において、混合弁5の混合比を算出した混合比に設定してS15に進む。
【0043】
S15において、給湯流量センサ11aの検知流量(給湯流量)と設定した混合比に基づいて、給湯に必要とされる高温水の流量Qh(必要流量)を算出してS16に進む。そしてS16において、予熱給湯運転条件が成立したか否か判定する。予熱給湯運転では、補助熱源機4で加熱された湯水の大部分を給湯に使用し、残りの部分を貯湯槽2の湯水に混合して温度を上昇させた湯水、即ち予熱した湯水を補助熱源機4に供給する。外気温度が予め設定された基準外気温度(例えば10℃)以下の場合に、予熱給湯運転条件が成立する。
【0044】
S16の判定がYesの場合は、S17に進んでポンプ15の流量を必要流量から予熱相当分Qpだけ増加(例えば30%増加)させて予熱給湯運転(図6参照)を行ってリターンし、再び給湯運転実行制御をスタートさせる。一方、S16の判定がNoの場合は、S18に進んでポンプ15の流量を必要流量に設定して補助熱源機4を使用する通常の給湯運転(図5参照)を行ってリターンし、再び給湯運転実行制御をスタートさせる。
【0045】
何れの場合も設定された流量となるようにポンプ15が駆動されて補助熱源機4に湯水が供給され、補助熱源機4で加熱された湯水が出湯通路9に高温水として供給される。そして、混合弁5において設定された混合比で低温水と混合され、給湯通路11を介して給湯される。貯湯槽2には、出湯されて減った分だけ給水通路8から低温水が供給される。
【0046】
予熱給湯運転では、貯湯槽2の湯水よりも温度が高い湯水が補助熱源機4に供給されるので、熱交換効率が低下するが、潜熱交換用熱交換器4dでドレンが発生し難い。それ故、燃焼を停止してパージ動作によって置換された空気は、加熱された湯水によって温度が上昇するが、蒸発するドレンが殆ど無いので湿度が上昇しない。そのため、この空気が排気口1aからの外気の吹き込みによって燃焼部4aに到達して冷やされても結露しない。従って、結露によって燃焼部4aの燃料ノズル4eが閉塞されず、次回の補助熱源機4を使用する給湯運転又は出湯準備運転における着火不良が防止される。
【0047】
一方、S11の判定がYesの場合はS19に進み、S19において貯湯槽2から出湯してS20に進む。S20において、高温水入口温度センサ9aの検知温度(高温水の温度)と、給水温度センサ8aの検知温度(低温水の温度)と、給湯設定温度に基づいて、混合比を算出してS21に進む。そしてS21において、混合弁5の混合比を算出した混合比に設定してリターンし、給湯運転実行制御をスタートさせる。尚、貯湯槽2の湯水は給水通路8から貯湯槽2に供給される低温水の供給圧によって出湯通路9に供給される。
【0048】
図7は、貯湯給湯装置1における出湯準備制御のフローチャートである。図3のS1における給湯運転開始条件が不成立の場合に、S5において出湯準備制御が開始される。そしてS31において、前回の給湯運転の停止から所定時間が経過したか否か判定する。一般的に、給湯が断続的に複数回行われることが多い時間帯と、給湯が長時間行われない時間帯がある。それ故、前回の給湯終了から所定時間が経過したら、給湯が長時間行われない時間帯に入っていると判定する。所定時間は、例えば30分に設定されているが適宜設定可能であり、0分に設定して出湯準備運転を行わないようにすることもできる。
【0049】
所定時間以上の時間が経過して、S31の判定がYesの場合は、出湯準備運転を実行せずにリターンして、図3の給湯運転開始停止制御に戻る。S31の判定がNoの場合は、S32に進む。
【0050】
S32において、貯湯槽2の湯水温度が給湯設定温度+所定温度(α[℃])以上か否か判定する。S32の判定がYesの場合は、貯湯運転によって貯湯槽2に給湯可能な湯水が貯湯されており、補助熱源機4による加熱が不要なので、出湯準備運転を実行せずリターンし、図3の給湯運転開始停止制御に戻る。S32の判定がNoの場合は、次回の給湯運転が補助熱源機4を使用する給湯運転になることが予想されるので、その準備のためにS33に進む。
【0051】
S33において、補助熱源機出口温度センサ18aの検知温度(補助熱源機出口温度)が予め設定された出湯準備温度以上か否か判定する。出湯準備温度は、例えば50℃に設定され、給湯設定温度+所定温度(α[℃])のように給湯設定温度に応じて適宜設定されてもよい。
【0052】
前回の給湯運転の停止後、補助熱源機4の入り口から出湯通路9までの加熱された湯水の温度は自然に低下するので、次回の給湯運転においてすぐに高温の湯水を出湯通路9に供給することは困難になる。そのため、出湯準備温度未満に温度が低下した場合、即ちS33の判定がNoの場合に、出湯準備運転を行って高温の湯水を出湯通路9に供給できるようにS34に進む。一方、補助熱源機出口温度が出湯準備温度以上でS33の判定がYesの場合には、出湯準備運転を実行せずにリターンし、図3の給湯運転開始停止制御に戻る。
【0053】
S34において、出湯準備運転を実行してS35に進む。出湯準備運転では、ポンプ15を駆動し、補助熱源機4の燃焼部4aで燃焼させる。補助熱源機4で加熱された湯水は、補助熱源機出湯通路18と出湯通路9を介して再加熱通路16に導入され、再加熱通路16から補助熱源機加熱通路14を介して補助熱源機4に供給される(図8参照)。
【0054】
S35において、補助熱源機入口温度センサ14aの検知温度(補助熱源機入水温度)が補助熱源機出口温度センサ18aの検知温度(補助熱源機出口温度)と等しく又は略等しくなったか否か判定する。出湯準備運転で準備される湯水が十分に加熱されたか否かを判定するものであり、数度程度の温度差は許容可能である。
【0055】
例えば補助熱源機出口温度が80℃のときに、補助熱源機入水温度が75℃以上であれば十分に加熱されたと判定され、即ちS35の判定がYesになって、S36に進む。そして、S36において、出湯準備運転を停止してリターンし、図3の給湯運転開始停止制御に戻る。一方、S35の判定がNoの場合はS34に戻り、十分に加熱されるまで出湯準備運転が実行される。
【0056】
出湯準備運転では、補助熱源機4で加熱された高温の湯水が補助熱源機4に供給されるので、潜熱交換用熱交換器4dにドレンが発生し難い。それ故、出湯準備運転を停止してパージ動作によって置換された空気は、加熱された湯水によって温度が上昇するが、蒸発するドレンが殆ど無いので湿度が上昇しない。そのため、この空気が、排気口1aからの外気の吹き込みによって燃焼部4aに到達して冷やされても、結露しない。従って、結露によって燃焼部4aの燃料ノズル4eが閉塞されず、次回の補助熱源機4を使用する給湯運転又は出湯準備運転における着火不良が防止される。
【0057】
本発明の貯湯給湯装置1の作用、効果について説明する。
貯湯給湯装置1は、貯湯槽2の湯水温度が低い場合にポンプ15を駆動して、補助熱源機4で加熱した湯水を出湯して給湯に使用する。この補助熱源機4を使用する給湯運転の際に、補助熱源機4から出湯された高温水の一部を、再加熱通路16を介して補助加熱通路14に導入して、補助熱源機4の入水温度を上昇させる予熱給湯運転を行う。これにより補助熱源機4には、貯湯槽2の湯水よりも温度が高い予熱された湯水が供給される。
【0058】
潜熱回収用熱交換器4dでは、予熱された湯水との熱交換によって燃焼ガスが冷却されても、貯湯槽2の湯水や低温水と熱交換する場合よりもドレンの発生が抑制される。これにより燃焼停止後に蒸発するドレンが少なくなるので、パージ動作によって置換された空気は、温度が上昇しても高湿にならない。従って、この空気が排気口1aからの外気の吹き込みによって燃焼部4aに到達して冷やされても、水分を多く含んでいないので燃焼部4aでの結露が抑制され、結露による補助熱源機4の着火不良を防止することができる。
【0059】
また、外気温度が予め設定された基準外気温度以下の場合に予熱給湯運転を行う。燃焼部4aが冷却されて結露し易くなる基準外気温度以下の低い外気温度のときに、予熱給湯運転によって結露を効果的に抑制することができる。また、これ以外のときには、予熱給湯運転を行わないので、補助熱源機4の入水温度が高くなる程低下する熱交換効率の低下が抑えられる。
【0060】
補助熱源機4を使用する給湯運転の終了後には、次の給湯に備えて補助熱源機4で加熱された高温水を、再加熱通路16を介して補助加熱通路14に導入し、補助熱源機4の入水温度を上昇させる出湯準備運転を行う。補助熱源機4の上流側及び下流側に高温水を準備しておくことができるので、次回の補助熱源機4を使用する給湯運転の際に、すぐに出湯通路9に高温水を供給できる。
【0061】
また、加熱された湯水を補助熱源機4に供給するので、潜熱回収用熱交換器4dにおけるドレンの発生が抑制される。それ故、燃焼停止後のパージ動作で潜熱回収用熱交換器4dの置換された空気は、加熱された湯水によって温度が上昇するが、蒸発するドレンが少ないので高湿にならない。従って、排気口1aから外気が吹き込んで、潜熱回収用熱交換器4dの空気が燃焼部4aに到達して冷やされても、水分を多く含んでいないので結露が抑制され、結露による補助熱源機4の着火不良を防止することができる。
【0062】
補助熱源機4を使用して設定湯量の風呂の湯張りを行う場合には、通常の給湯運転の態様で途中まで湯張りを行った後、発生したドレンを蒸発させるように予熱給湯運転の態様で設定湯量まで湯張りを行ってもよい。この場合、熱交換効率の低下が湯張りの一部だけに抑えられると共に、次回の補助熱源機4の使用時に結露による着火不良を防ぐことができる。その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、上記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0063】
1 :貯湯給湯装置
1a :排気口
2 :貯湯槽
2a~2e:貯湯温度センサ
3 :熱源機
4 :補助熱源機
4a :燃焼部
4b :送風機
4c :顕熱回収用熱交換器
4d :潜熱回収用熱交換器
4e :燃料ノズル
4f :ドレンパン
4g :中和器
5 :混合弁
8 :給水通路
8a :給水温度センサ
9 :出湯通路
9a :高温水入口温度センサ
10 :分岐通路
11 :給湯通路
11a :給湯流量センサ
11b :給湯温度センサ
12 :給湯栓
13 :注湯通路
14 :補助加熱通路
14a :補助熱源機入口温度センサ
14b :補助熱源機入口流量センサ
15 :ポンプ
16 :再加熱通路
17 :三方弁
18 :補助熱源機出湯通路
18a :補助熱源機出口温度センサ
20 :温水利用通路
21 :制御部
22 :操作端末
23 :外気温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8