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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】貯湯給湯装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/10 20220101AFI20231124BHJP
   F24H 1/00 20220101ALI20231124BHJP
   F24H 8/00 20220101ALI20231124BHJP
   F24H 15/258 20220101ALI20231124BHJP
   F24H 15/335 20220101ALI20231124BHJP
   F24H 15/36 20220101ALI20231124BHJP
【FI】
F24H15/10
F24H1/00 A
F24H8/00
F24H15/258
F24H15/335
F24H15/36
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019233912
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021103025
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】藤川 泰
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 向生
(72)【発明者】
【氏名】中野 晶夫
(72)【発明者】
【氏名】片山 真吾
(72)【発明者】
【氏名】松原 海
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-158324(JP,A)
【文献】特開2012-093062(JP,A)
【文献】特開2016-061536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00-15/493
F24D 1/00-19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯槽と、前記貯湯槽の下部に接続された給水通路と、前記貯湯槽の上部から給湯通路に接続された出湯通路と、潜熱回収用熱交換器を有する燃焼式の補助熱源機と、前記給水通路から分岐されて前記補助熱源機に接続された補助加熱通路と、前記補助熱源機から前記出湯通路に接続された補助熱源機出湯通路と、前記補助加熱通路に介装されたポンプと、前記出湯通路から分岐されて前記ポンプよりも上流側の前記補助加熱通路に接続された再加熱通路を備え、前記貯湯槽の湯水温度が低い場合に前記ポンプを駆動して前記補助熱源機で加熱して給湯する貯湯給湯装置において、
前記補助熱源機を使用する給湯運転を終了する際に、前記補助熱源機の燃焼を停止した後も前記ポンプを駆動し、前記潜熱回収用熱交換器内の高温の湯水を低温の湯水に置換した後に前記ポンプを停止させる熱交換器冷却運転を行うことを特徴とする貯湯給湯装置。
【請求項2】
外気温度が予め設定された基準外気温度以下の場合に前記熱交換器冷却運転を行うことを特徴とする請求項1に記載の貯湯給湯装置。
【請求項3】
前記熱交換器冷却運転により、前記補助熱源機内の高温の湯水が前記貯湯槽の上部に導入されることを特徴とする請求項1に記載の貯湯給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯給湯装置に関し、特に潜熱回収用熱交換器を備えた燃焼式の補助熱源機を有する貯湯給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱源機で加熱した湯水を貯湯槽に貯湯する貯湯運転を行い、貯湯された湯水を給湯等に使用する貯湯給湯装置が広く利用されている。貯湯給湯装置は、例えば混合弁等の混合手段備え、給湯運転では混合弁で貯湯された湯水に上水(低温水)が混合され、給湯設定温度に調整された湯水が給湯される。それ故、貯湯運転では給湯設定温度よりも高温の湯水が貯湯槽に貯湯される。
【0003】
また、貯湯給湯装置は、貯湯槽の湯水や低温水を加熱するための補助熱源機とポンプを備えている。これにより、給湯に使用できる温度の湯水が貯湯槽に無い場合に、補助熱源機によって加熱された高温水に、混合弁で低温水が混合されて、給湯設定温度に調整された湯水が給湯される。
【0004】
補助熱源機は、燃料を燃焼させて高温の燃焼ガスを発生させ、この高温の燃焼ガスとの熱交換によって湯水を加熱する燃焼式の熱源機である。補助熱源機の熱交換器は、燃焼ガスの熱を効率的に利用するために、燃焼ガスの顕熱を回収する顕熱回収用熱交換器と、顕熱が回収された燃焼ガスの潜熱を回収する潜熱回収用熱交換器によって構成されている。
【0005】
潜熱が回収された燃焼ガスは、排気口から外部に排気される。燃焼ガスに含まれていた水蒸気は、潜熱が回収されて凝縮し、酸性のドレンになる。このドレンが潜熱回収用熱交換器に水滴となって付着し、その一部がドレンパンに落下し中和器で中和されて排水される。外気温と水温が低い冬季には、補助熱源機に供給される低温水によって燃焼ガスが一層冷やされ、ドレンが発生し易い。
【0006】
補助熱源機の燃焼が停止されると、パージ動作により補助熱源機内の燃焼ガスが排気されて空気に置換される。このとき排気口から外気が吹き込まれると、燃焼ガスの排気が妨げられる。そして、パージ動作終了後に排気されずに残留している燃焼ガスが、外気の吹き込みによって逆流して燃焼部に到達し、燃焼ガス中の水蒸気が冷えた燃焼部で結露する。この結露によって燃焼部の燃料ノズルが閉塞されてしまい、次回の燃焼開始時に燃料供給が妨げられて着火不良が発生することが知られている。
【0007】
それ故、例えば特許文献1では、パージ動作における送風量を外気温度に基づいて設定し、送風時間を燃焼時間に基づいて設定して、燃焼ガスの残留を低減している。しかし、潜熱回収用熱交換器に付着したドレンは、パージ動作で除去されずに残留する。そして、燃焼停止前に温められた潜熱回収用熱交換器と顕熱回収用熱交換器の通路内の湯水によって、置換された空気が温められると共にドレンが蒸発して湿度が上昇し、外気よりも高温高湿になる。この状態で排気口から外気が吹き込まれると、高温高湿の空気が燃焼部に到達して結露し、燃料ノズルが閉塞される。
【0008】
そのため、例えば特許文献2では、外気温度等に基づいて給湯装置内で結露するか否か判定し、結露の虞がある場合には、非燃焼中にパージ動作を行って結露を蒸発させる、燃焼能力を下げて給湯装置内の温度上昇を抑制する等の結露対策を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2013-242096号公報
【文献】特許第3896910号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、結露が発生し易い低温時には、パージ動作によって結露を蒸発させることは時間がかかるので、長時間パージ動作を行う必要があり、エネルギー消費が増加すると共に、非燃焼中に排気が続くのでユーザに不信感を与える虞がある。また、燃焼能力を下げると、給湯流量を増やせない等の支障をきたす虞がある。それ故、このような不都合が生じない、結露による着火不良の新たな防止技術が要望されていた。
【0011】
本発明の目的は、潜熱回収用熱交換器を有する補助熱源機と貯湯槽を備え、結露による補助熱源機の着火不良を防止することができる貯湯給湯装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明の貯湯給湯装置は、貯湯槽と、前記貯湯槽の下部に接続された給水通路と、前記貯湯槽の上部から給湯通路に接続された出湯通路と、潜熱回収用熱交換器を有する燃焼式の補助熱源機と、前記給水通路から分岐されて前記補助熱源機に接続された補助加熱通路と、前記補助熱源機から前記出湯通路に接続された補助熱源機出湯通路と、前記補助加熱通路に介装されたポンプと、前記出湯通路から分岐されて前記ポンプよりも上流側の前記補助加熱通路に接続された再加熱通路を備え、前記貯湯槽の湯水温度が低い場合に前記ポンプを駆動して前記補助熱源機で加熱して給湯する貯湯給湯装置において、前記補助熱源機を使用する給湯運転を終了する際に、前記補助熱源機の燃焼を停止した後も前記ポンプを駆動し、前記潜熱回収用熱交換器内の高温の湯水を低温の湯水に置換した後に前記ポンプを停止させる熱交換器冷却運転を行うことを特徴としている。
【0013】
上記構成によれば、貯湯槽の湯水が給湯に使用できない低温の場合に、ポンプを駆動して補助熱源機で加熱した湯水が給湯に使用される。この補助熱源機を使用する給湯運転を終了する際に、補助熱源機の燃焼を停止させた後もポンプの駆動により低温の湯水が補助熱源機に供給され、補助熱源機内の加熱された高温の湯水が低温の湯水に置換される。これにより、潜熱回収用熱交換器が冷却され、潜熱回収用熱交換器の空気の温度上昇が抑えられると共にドレンの蒸発が抑制される。従って、燃焼停止後に潜熱回収用熱交換器の空気が高温高湿にならず、この空気が外気の吹き込みによって燃焼部に到達しても、燃焼部での結露が抑制されるので、結露による補助熱源機の着火不良を防止することができる。
【0014】
請求項2の発明の貯湯給湯装置は、請求項1の発明において、外気温度が予め設定された基準外気温度以下の場合に前記熱交換器冷却運転を行うことを特徴としている。
上記構成によれば、外気温度が低い程、燃焼部が冷却されて結露が発生し易くなるので、外気温度が予め設定された基準外気温度以下の場合に熱交換器冷却運転を行って、ドレンの蒸発が抑制される。従って、燃焼停止後に潜熱回収用熱交換器の空気が高温高湿にならず、この空気が外気の吹き込みによって燃焼部に到達しても燃焼部での結露が抑制されるので、結露による補助熱源機の着火不良を防止することができる。そして、外気温度が低い場合にのみ熱交換器冷却運転を行うので、熱交換器冷却運転による出湯特性への影響を小さくすることができる。
【0015】
請求項3の発明の貯湯給湯装置は、請求項1の発明において、前記熱交換器冷却運転により、前記潜熱回収用熱交換器内の高温の湯水が前記貯湯槽の上部に導入されることを特徴としている。
上記構成によれば、燃焼停止後に補助熱源機に残っている高温の湯水が、熱交換器冷却運転によって貯湯槽の上部に貯湯される。従って、補助熱源機で加熱された湯水を無駄にせずに、次回の給湯に使用することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の貯湯給湯装置によれば、潜熱回収用熱交換器を有する補助熱源機の結露による着火不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例に係る貯湯給湯装置の構成図である。
図2】本発明の実施例に係る貯湯運転の運転状態を示す図である。
図3】本発明の実施例に係る給湯運転の開始と停止の制御のフローチャートである。
図4】本発明の実施例に係る給湯運転の実行制御のフローチャートである。
図5】本発明の実施例に係る補助熱源機で貯湯槽の湯水を加熱して給湯する運転状態を示す図である。
図6】本発明の実施例に係る補助熱源機で低温水を加熱して給湯する運転状態を示す図である。
図7】本発明の実施例に係る熱交換器冷却運転の制御のフローチャートである。
図8】本発明の実施例に係る熱交換器冷却運転の運転状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例
【0019】
図1に示すように貯湯給湯装置1は、湯水を貯湯するための貯湯槽2と、熱源機3と、補助熱源機4と、混合弁5を有する。貯湯槽2の湯水を熱源機3で加熱して貯湯槽2に貯湯するために、貯湯槽2の下部と熱源機3の湯水入口とが熱源機往き通路6によって接続され、熱源機3の湯水出口と貯湯槽2の上部とが熱源機戻り通路7によって接続されている。
【0020】
また、外部の給水配管(上水道)から貯湯槽2に低温水(上水)を供給するための給水通路8が貯湯槽2の下部に接続され、貯湯槽2の湯水を出湯するための出湯通路9が貯湯槽2の上部に接続されている。この出湯通路9は混合弁5の高温水入口に接続され、給水通路8から分岐された分岐通路10が混合弁5の低温水入口に接続されている。そして、混合弁5で混合された湯水を給湯するための給湯通路11が混合弁5の出口に接続されている。
【0021】
貯湯槽2には、貯湯槽2の湯水温度を検知する複数の貯湯温度センサ2a~2eが、高温の湯水の貯湯量も分かるように、貯湯槽2の高さ方向に所定の間隔を空けて配設されている。熱源機往き通路6には、熱源機3に導入される湯水の温度を検知する熱源機往き温度センサ6aが配設されている。また、熱源機戻り通路7には、熱源機3で加熱された湯水の温度を検知する熱源機戻り温度センサ7aが配設されている。
【0022】
熱源機3は、例えばヒートポンプ式熱源機や燃料電池等の発電時の熱を利用する熱源機である。この熱源機3を使用して、貯湯槽2の湯水を給湯設定温度よりも高温に加熱して貯湯する貯湯運転が行われる。
【0023】
給水通路8には低温水の温度を検知する給水温度センサ8aが配設されている。混合弁5の高温水入口近傍の出湯通路9には、混合弁5に供給される高温水の温度を検知する高温水入口温度センサ9aが配設されている。給湯通路11には、給湯流量を検知する給湯流量センサ11aと、給湯温度を検知する給湯温度センサ11bと、給湯流量を調整する給湯流量調整弁11c等が配設されている。
【0024】
給湯設定温度の給湯を行う給湯運転では、混合弁5において、出湯通路9から供給される高温水と分岐通路10から供給される低温水を混合して給湯設定温度に調整するために、混合弁5の混合比が調整される。混合弁5で混合された湯水は、給湯通路11を介して給湯栓12等から給湯される。また、給湯流量調整弁11cにおいて給湯通路11から注湯通路13が分岐され、注湯通路13を介して設定湯量の風呂の湯張りが可能に構成され、この風呂の湯張りも給湯運転に含まれる。
【0025】
補助熱源機4は、燃料を燃焼させて発生させた高温の燃焼ガスとの熱交換により湯水を加熱する燃焼式の熱源機である。この補助熱源機4は、燃焼部4aと送風機4bと、熱交換器として顕熱回収用熱交換器4cと潜熱回収用熱交換器4dと、燃焼部4a内の複数の燃料ノズル4eと、ドレンパン4fを有する。燃焼部4aでは、送風機4bから供給される燃焼用の空気を利用して、外部から複数の燃料ノズル4eに供給される燃料ガスが燃焼され、高温の燃焼ガスが発生する。送風機4bは、貯湯給湯装置1の図示外の給気口から導入される外気を燃焼用の空気として燃焼部4aに供給する。
【0026】
燃焼ガスは、顕熱回収用熱交換器4c、潜熱回収用熱交換器4dの順に通過するように流動される。そして、熱交換器で湯水の加熱に利用されて温度が下がった燃焼ガスが排気口1aから外部に排気される。このとき潜熱回収用熱交換器4dには、燃焼ガスに含まれる水蒸気が凝縮した酸性のドレンが水滴として付着し、ドレンパン4fに落下したドレンが中和器4gで中和されて排水される。
【0027】
この補助熱源機4は、貯湯槽2の湯水の温度が低いため給湯に使用できない場合に、貯湯槽2の湯水又は給水通路8の低温水を加熱して給湯に使用する。給水通路8の低温水を補助熱源機4に供給するために、給水通路8から補助加熱通路14が分岐されて補助熱源機4の入口に接続されている。
【0028】
補助加熱通路14には、補助熱源機4に湯水を加圧供給するポンプ15が介装されている。この補助加熱通路14には、補助熱源機4に供給される湯水の温度を検知する補助熱源機入口温度センサ14aと、補助熱源機4に供給される湯水の流量を検知する補助熱源機入口流量センサ14bが配設されている。
【0029】
また、貯湯槽2の湯水を補助熱源機4に供給するために、出湯通路9から分岐された再加熱通路16が補助加熱通路14のポンプ15よりも上流側に接続されている。再加熱通路16と補助加熱通路14の接続部には、湯水の通路を切り替えるための三方弁17が配設されている。ポンプ15を駆動させて、三方弁17が補助加熱通路14側に切り替えられると、補助加熱通路14を介して低温水が補助熱源機4に供給され、三方弁17が再加熱通路16側に切り替えられると、再加熱通路16を介して貯湯槽2の湯水が補助熱源機4に供給される。
【0030】
補助熱源機4で加熱された湯水を出湯するために、補助熱源機4の出口に接続された補助熱源機出湯通路18が、出湯通路9の再加熱通路16の分岐部よりも混合弁5側で、出湯通路9に接続されている。この補助熱源機出湯通路18には、補助熱源機4で加熱された湯水の温度を検知する補助熱源機出口温度センサ18aと、出湯通路9に供給する湯水量を調整するための流量調整弁19が配設されている。補助熱源機4の燃焼能力は、補助熱源機4に供給される湯水の流量と温度に応じて調整され、所定の補助熱源機出湯設定温度(例えば80℃)の高温水が出湯通路9に供給される。
【0031】
流量調整弁19よりも上流側の補助熱源機出湯通路18から温水利用通路20が分岐され、三方弁17よりも上流側で補助加熱通路14に接続されている。この温水利用通路20には、補助熱源機4で加熱された高温水の供給が可能である。
【0032】
温水利用通路20には、供給された高温水を利用して、図示外の暖房機器に供給する暖房熱媒を加熱する暖房運転のための暖房用熱交換器20aと、図示外の風呂の湯水を加熱(追焚き)する風呂追焚運転のための風呂追焚用熱交換器20bが配設されている。また、温水利用通路20には、暖房運転時に開放される暖房電磁弁20cと風呂追焚運転時に開放される風呂追焚電磁弁20dが配設されている。
【0033】
貯湯給湯装置1は、給湯運転等の各種運転を制御するための制御部21を備えている。制御部21は、貯湯温度センサ2a等の各部に配設された温度センサの検知温度や、給湯流量センサ11aの検知流量等に基づいて、各種弁やポンプ15等の機器類を作動させる制御を行う。また、制御部21は、計時機能や給湯使用履歴を記憶する機能等を備えている。そして、貯湯給湯装置1の操作や給湯設定温度等の各種設定を行うための操作端末22と、外気温度を検知する外気温度センサ23が制御部21に接続されている。給湯設定温度は、ユーザが所定の範囲内で任意に設定でき、例えば40℃程度に設定されることが多い。
【0034】
次に、貯湯運転について説明する。
図2に示すように、貯湯運転では、熱源機往き通路6を介して貯湯槽2の下部から湯水が熱源機3に導入される。そして、熱源機3で高温に加熱された湯水が、熱源機戻り通路7を介して貯湯槽2の上部から貯湯される。尚、貯湯槽2と熱源機3の間で湯水を循環させる図示外の循環ポンプは、ここでは熱源機3が有しているが、熱源機往き通路6に配設されていてもよい。
【0035】
熱源機3が例えばヒートポンプ式熱源機の場合には、制御部21は、過去の給湯使用履歴に基づいて予測した貯湯熱量を予測した時刻までに貯湯するように貯湯運転を開始させて貯湯運転を制御する。また、熱源機3が燃料電池等の発電時の熱を利用する熱源機の場合には、制御部21は貯湯温度センサ2a~2eの検知温度に基づいて貯湯熱量を取得し、予め定まっている貯湯槽2の貯湯熱量の上限を超えないように放熱動作制御等を行う。
【0036】
次に、給湯運転について説明する。
給湯運転では、貯湯給湯装置1は、出湯通路9の高温水と、分岐通路10の低温水を混合弁5で混合して給湯通路11に供給し、給湯栓12等から給湯する。この給湯運転の制御部21による制御について、図3図8のフローチャートと運転状態を示す図に基づいて説明する。尚、図中のSi(i=1,2,・・・)はステップを表す。
【0037】
図3は、貯湯給湯装置1における給湯運転開始停止制御を示している。S1では給湯運転開始条件が成立したか否か判定する。例えば、給湯栓12の開栓によって給湯流量センサ11aが所定流量以上の流量を検知すると、給湯運転開始条件が成立する。S1の判定がYesの場合はS2に進んで給湯運転が実行される。一方、S1の判定がNoの場合には運転待機の状態でリターンして、給湯運転開始停止制御がスタートされる。
【0038】
S2において給湯運転が実行されるとS3に進み、S3において給湯運転停止条件が成立したか否か判定する。例えば、給湯栓12の閉栓によって給湯流量センサ11aが所定流量以上の流量を検知しなくなると、給湯運転停止条件が成立する。S3の判定がYesの場合はS4に進んで給湯運転を停止してリターンして、再び給湯運転開始停止制御がスタートされる。S3の判定がNoの場合はS2に戻って給湯運転が継続実行される。
【0039】
図4は、貯湯給湯装置1における給湯運転の実行制御を示している。図3のS2で給湯運転が実行されると、S11において、貯湯槽2に貯湯されている湯水の温度(貯湯槽湯水温度)が、予め操作端末22から設定された給湯設定温度+所定温度(α[℃])以上か否か判定する。貯湯槽2に貯湯された湯水を高温水として出湯して給湯可能か否か判定するものである。
【0040】
所定温度は、貯湯給湯装置1やその設置環境等に応じて適宜設定され、例えば3℃に設定されている。貯湯槽湯水温度は、最も上側に配設された貯湯温度センサ2aの検知温度であるが、貯湯温度センサ2aに対応する貯湯量が少ない場合には、その下側の例えば貯湯温度センサ2bの検知温度としてもよい。S11の判定がNoの場合には、貯湯槽2の湯水の温度が低く給湯設定温度の給湯ができないので、補助熱源機4を使用する給湯運転を行うためにS12に進む。
【0041】
S12において、貯湯槽湯水温度が予め設定された再加熱基準温度(β[℃])以下か否か判定する。再加熱基準温度は、加熱されて貯湯槽2に貯湯された湯水の熱を予熱として利用できるように、給湯設定温度よりも低温の例えば30℃に設定されている。
【0042】
S12の判定がNoの場合はS13に進む。そしてS13において、貯湯された湯水の熱も利用するために、三方弁17を再加熱通路16側に切り替え、ポンプ15を駆動させ、補助熱源機4の燃焼部4aで燃焼させ、補助熱源機4で加熱された湯水を出湯させてS15に進む(図5参照)。
【0043】
一方、S12の判定がYesの場合はS14に進む。そしてS14において、三方弁17を補助加熱通路14側に切り替え、ポンプ15を駆動させ、補助熱源機4の燃焼部4aで燃焼させ、補助熱源機4で加熱された湯水を出湯させてS15に進む(図6参照)。
【0044】
S15において、高温水入口温度センサ9aの検知温度(高温水の温度)と、給水温度センサ8aの検知温度(低温水の温度)と、給湯設定温度に基づいて、混合比を算出してS16に進む。そしてS16において、混合弁5の混合比を算出した混合比に設定してS17に進む。
【0045】
S17において、給湯流量センサ11aの検知流量(給湯流量)と設定した混合比に基づいて、給湯に必要とされる高温水の流量(必要流量)を算出してS18に進む。そしてS18において、ポンプ15の流量を必要流量に設定してリターンし、図3の給湯運転開始停止制御に戻る。設定された流量となるようにポンプ15が駆動されて補助熱源機4に湯水が供給され、補助熱源機4で加熱された湯水が補助熱源機出湯通路18を介して出湯通路9に供給される。そして、混合弁5で設定された混合比で高温水と低温水が混合され、給湯通路11を介して給湯される。
【0046】
一方、S11の判定がYesの場合は、貯湯槽2の湯水によって給湯運転を行うためにS19に進み、S19において貯湯槽2から出湯させてS20に進む。S20において、高温水入口温度センサ9aの検知温度(高温水の温度)と、給水温度センサ8aの検知温度(低温水の温度)と、給湯設定温度に基づいて、混合比を算出してS21に進む。そしてS21において、混合弁5の混合比を算出した混合比に設定してリターンし、図3の給湯運転開始停止制御に戻る。尚、貯湯槽2の湯水は給水通路8から貯湯槽2に供給される低温水の供給圧によって出湯通路9に供給される。
【0047】
図7は、貯湯給湯装置1における給湯運転を停止する際の熱交換器冷却運転の制御を示している。図3のS4で給湯運転が停止される際にこの熱交換器冷却運転制御が開始され、S31において、貯湯槽2に貯湯されている湯水の温度が、給湯設定温度+所定温度(α[℃])以上か否か判定する。停止される給湯運転が、補助熱源機4を使用する給湯運転であるか否かを判定するものである。例えば給湯運転時の補助熱源機4の燃焼状態等に基づいて同様の判定することも可能である。S31の判定がNoの場合はS32に進み、S31の判定がYesの場合は補助熱源機4を使用する給湯運転ではないので、この制御を終了する。
【0048】
S32において、補助熱源機4の燃焼部4aの燃焼とポンプ15を停止させて湯水の加熱を停止し、送風機4bを作動させてパージ動作を実行して、S33に進む。そしてS33において、外気温度センサ23の検知温度(外気温度)が基準外気温度(γ[℃])以下か否か判定する。外気温度が低い程、燃焼部4aが冷えて結露し易いため、結露の虞があるか否かを判定するものであり、基準外気温度は例えば10℃に設定されている。S33の判定がYesの場合はS34に進み、S33の判定がNoの場合はS38に進む。
【0049】
S34において、貯湯槽2の湯水温度が再加熱基準温度(β[℃])以下か否か判定する。補助加熱通路14を介して給水通路8から供給される低温水を補助熱源機4で加熱して給湯に使用(図6参照)していたか否か判定するものであり、例えば三方弁17における通路の切り替え状態に基づいて同様の判定を行うこともできる。S34の判定がYesの場合は、補助熱源機4で低温水が加熱されていたので、ドレンの発生量が多いと考えられるためS35に進む。S34の判定がNoの場合は、再加熱基準温度よりも高温の湯水が加熱されていたのでドレンが発生し難い状態であり、バージ動作によって置換された空気の温度が上昇しても高湿にならないと考えられるため、S38に進む。
【0050】
S35において、熱交換器冷却運転を実行してS36に進む。熱交換器冷却運転は、燃焼部4aの燃焼を停止させた状態で、ポンプ15を駆動して低温の湯水を補助熱源機4に供給する(図8参照)。給湯栓12が閉栓されているので、補助熱源機出湯通路18の湯水は出湯通路9を介して貯湯槽2の上部に導入され、貯湯槽2の下部の低温の湯水が補助加熱通路14に供給される。尚、S33,S34の判定に時間はかからないので、S32で停止させたポンプ15をS35で駆動してポンプ15の駆動が実質的に継続される。
【0051】
こうして補助熱源機4と貯湯槽2の間で湯水が循環するように流動され、低温の湯水によって補助熱源機4の潜熱回収用熱交換器4dと顕熱回収湯熱交換器4cが冷却され、貯湯槽2の上部に高温の湯水が貯湯される。この貯湯された高温の湯水は、次回の給湯に使用することができる。尚、給湯停止時に貯湯運転が実行されている場合等、高温の湯水を貯湯槽2に貯湯しないことが好ましい場合には、貯湯槽2の代わりに温水利用通路20に高温の湯水を流入させることもできる。
【0052】
S36において、補助熱源機出口温度センサ18aの検知温度(補助熱源機出口温度)が補助熱源機入口温度センサ14aの検知温度(補助熱源機入口温度)に等しい、又は略等しいか否か判定する。補助熱源機4の熱交換器の冷却が終わったか否か判定するものであり、数度程度の温度差は許容可能である。S36の判定がYesの場合はS37に進む。S36の判定がNoの場合は、S35に戻ることにより熱交換器の冷却が終わるまで熱交換器冷却運転を実行する。
【0053】
S37においてポンプ15を停止させて熱交換器冷却運転を停止し、S38に進む。そしてS38において、十分なパージを行うことができる一定時間(例えば1分間)パージ動作が行われたら、送風機4bを停止させてパージ動作を終了させ、この制御を終了する。
【0054】
再加熱通路16を介して供給される貯湯槽2の湯水を給湯に使用する場合には、補助熱源機4に給水温度よりも温度が高い湯水が供給されるので、潜熱交換用熱交換器4dにドレンが発生し難い。それ故、この給湯運転の停止の際のパージ動作によって置換された潜熱回収用熱交換器4dの空気は、加熱された湯水によって温度が上昇するが、蒸発するドレンが殆ど無いので湿度が上昇しない。そのため、この空気が、排気口1aからの外気の吹き込みによって燃焼部4aに到達して冷やされても、結露しない。従って、結露によって燃焼部4aの燃料ノズル4eが閉塞されることがないので、次回の補助熱源機4を使用する給湯運転等における着火不良が防止される。
【0055】
補助加熱通路14を介して供給される上水を加熱して給湯に使用する場合には、補助熱源機4に低温水が供給されるので、潜熱交換用熱交換器4dにドレンが発生し、水滴として付着する。この給湯運転の停止の際にパージ動作と熱交換器冷却運転を行い、顕熱回収用熱交換器4c、潜熱回収用熱交換器4dを冷却する。これにより、パージ動作によって置換された潜熱回収用熱交換器4dの空気は温度が上昇せず、水滴が蒸発し難いので湿度も上昇しない。そのため、この空気が、排気口1aからの外気の吹き込みによって燃焼部4aに到達しても結露しない。従って、結露によって燃焼部4aの燃料ノズル4eが閉塞されることがないので、次回の補助熱源機4を使用する給湯運転等における着火不良が防止される。
【0056】
本発明の貯湯給湯装置1の作用、効果について説明する。
貯湯給湯装置1は、貯湯槽2の湯水が給湯に使用できない低温の場合に、ポンプ15を駆動して補助熱源機4で加熱した湯水を給湯に使用する。この補助熱源機4を使用する給湯運転を終了する際に、補助熱源機4の燃焼を停止した後もポンプ15を駆動して低温の湯水を補助熱源機4に供給し、潜熱回収用熱交換器4dの高温の湯水を低温の湯水に置換した後、ポンプ15を停止させる熱交換器冷却運転を行う。
【0057】
これにより、顕熱回収用熱交換器4cと潜熱回収用熱交換器4dが冷却され、パージ動作により置換された潜熱回収用熱交換器4dの空気の温度上昇が抑えられると共に、ドレンの蒸発が抑えられる。従って、潜熱回収用熱交換器4dの空気は、燃焼停止後に高温高湿にならず、この空気が排気口1aからの外気の吹き込みによって燃焼部4aに到達しても燃焼部4aの結露を抑制することができるので、結露による補助熱源機4の着火不良を防止することができる。
【0058】
また、外気温度が低い程、燃焼部4aが冷却されて燃焼部4aで結露し易くなるので、外気温度が予め設定された基準外気温度(γ[℃])以下の場合に、熱交換器冷却運転を行って、ドレンの蒸発を抑制する。従って、潜熱回収用熱交換器4dの空気は、燃焼停止後に高温高湿にならず、この空気が外気の吹き込みにより燃焼部4aに到達しても、燃焼部4aの結露を抑制することができるので、結露による補助熱源機4の着火不良を防止することができる。さらに、結露し易い外気温度が低い場合にのみ熱交換器冷却運転を行うので、熱交換器冷却運転のために例えば高温水の出湯が遅くなる等、出湯特性への影響を小さくすることができる。
【0059】
熱交換器冷却運転により、潜熱回収用熱交換器4dの高温の湯水が貯湯槽2の上部に導入され貯湯される。従って、補助熱源機4で加熱された湯水を無駄にせずに、次回の給湯に使用することができる。
【0060】
貯湯槽2の湯水温度が再加熱基準温度(β[℃])以下であっても、図5のように貯湯槽2の湯水を補助熱源機4で加熱して給湯に使用し、給湯運転停止の際には、図8のように三方弁17を補助加熱通路14側に切り替えて熱交換機冷却運転を行うようにしてもよい。その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、上記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0061】
1 :貯湯給湯装置
1a :排気口
2 :貯湯槽
2a~2e:貯湯温度センサ
3 :熱源機
4 :補助熱源機
4a :燃焼部
4b :送風機
4c :顕熱回収用熱交換器
4d :潜熱回収用熱交換器
4e :燃料ノズル
4f :ドレンパン
4g :中和器
5 :混合弁
8 :給水通路
8a :給水温度センサ
9 :出湯通路
9a :高温水入口温度センサ
10 :分岐通路
11 :給湯通路
11a :給湯流量センサ
11b :給湯温度センサ
12 :給湯栓
13 :注湯通路
14 :補助加熱通路
14a :補助熱源機入口温度センサ
14b :補助熱源機入口流量センサ
15 :ポンプ
16 :再加熱通路
17 :三方弁
18 :補助熱源機出湯通路
18a :補助熱源機出口温度センサ
19 :流量調整弁
20 :温水利用通路
21 :制御部
22 :操作端末
23 :外気温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8