(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】送り装置
(51)【国際特許分類】
F16H 25/20 20060101AFI20231124BHJP
F16H 19/02 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
F16H25/20 Z
F16H19/02 D
(21)【出願番号】P 2019203444
(22)【出願日】2019-11-08
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】504134759
【氏名又は名称】SKマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 純雄
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/167645(WO,A1)
【文献】特開2016-044757(JP,A)
【文献】実開昭60-047947(JP,U)
【文献】特許第4989061(JP,B2)
【文献】実開昭58-124065(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/20
F16H 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの出力軸に連結されたスプライン軸の回転軸と、
前記回転軸に対して一体に回転し且つ相対的に平行移動するように組み込まれたスプラインナットと、
前記スプラインナットと一体的に回転するように前記スプラインナットに直接的または間接的に取り付けられ、外周面にワイヤを巻き付ける巻き付け部を有し、内周面に雌ネジを有する回転ロータと、
前記モータと前記回転軸と前記スプラインナットと前記回転ロータを回転可能に支承する支承構造体と、
前記回転ロータの前記雌ネジと噛み合う送りネジを有する送りネジ部材と、
を有し、
前記送りネジ部材は、前記送りネジが前記回転ロータの前記雌ネジの一周に対して部分的に当接し噛み合うように前記支承構造体によって支持され、
前記回転ロータが一回転すると、前記回転ロータがワイヤの一巻き付けピッチ分前記回転軸に沿って平行移動するように構成された送り装置。
【請求項2】
請求項1に記載の送り装置であって、
前記送りネジ部材が複数設けられている、送り装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の送り装置であって、
前記送りネジ部材は、前記支承構造体に取り付ける構造を有する組付け部と、前記送りネジを有する送り部とを有する、送り装置。
【請求項4】
請求項3に記載の送り装置であって
前記送りネジ部材は、全体が丸棒の形状を有し、前記組付け部は外周面に前記支承構造体に螺着するネジを有し、前記送り部は外周面に前記送りネジを有する、送り装置。
【請求項5】
請求項3に記載の送り装置であって、
前記送りネジ部材は、前記組付け部が前記支承構造体に取り付けられる台座部、前記送り部が外周面の少なくとも一部に前記送りネジを有する棒状部をそれぞれ有している、送り装置。
【請求項6】
モータと、
前記モータの出力軸に連結されたスプライン軸の回転軸と、
前記回転軸に対して一体に回転し且つ相対的に平行移動するように組み込まれたスプラインナットと、
前記スプラインナットと一体的に回転するように前記スプラインナットに直接的または間接的に取り付けられ、外周面にワイヤを巻き付ける巻き付け部を有する回転ロータと、
前記スプラインナットに固定された外周面に雄ネジを有する雄ネジ部材と、
前記モータと前記回転軸と前記スプラインナットと前記回転ロータと前記雄ネジ部材を回転可能に支承する支承構造体と、
前記雄ネジ部材の前記雄ネジと噛み合う送りネジを有する送りネジ部材と、
を有し、
前記送りネジ部材は、前記送りネジが前記雄ネジ部材の前記雄ネジの一周に対して部分的に当接し噛み合うように前記支承構造体によって支持され、
前記回転ロータが一回転すると、前記回転ロータがワイヤの一巻き付けピッチ分前記回転軸に沿って平行移動するように構成された送り装置。
【請求項7】
請求項5に記載の送り装置であって、
前記送りネジ部材が複数設けられている、送り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、送り装置は、製造分野をはじめとして幅広い分野で使用されている。送り装置の駆動機構は、ベルトコンベア駆動、ボールネジ駆動、またはラックピニオン駆動のものなどがある。
【0003】
ベルトコンベア駆動は、輪状にした幅広のベルトを回転させ、その上に運搬物を載せて移動させる機構である。低価格で長距離搬送に向いている。しかし、搬送物の位置決め精度が良好ではなく、また搬送速度が遅い。
【0004】
ボールネジ駆動は、回転力を直線の動きに変換するものである。ボールネジの使用で搬送精度は良好である。搬送物の搬送速度については、中高速などの搬送も可能である。しかし、精密な研磨を行う研磨ボールネジを用いることで装置が高価になる。また、搬送距離が1~5メートル以内であり、長距離のものは製造上の観点から困難である。
【0005】
ラックピニオン駆動は、ピニオンとよばれる円形歯車が平板状の棒に歯切りをしたラック上を転がるものである。ラックピニオン駆動は比較的長距離搬送に対応できる。しかし、ピニオン側の駆動用モータのケーブルを牽引しなければならないため、ケーブルベアを必要とする。さらに高速で運転するとピニオンギアとラックギアのかみ合いから大きな騒音が出る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上述べたように種々の駆動機構の送り装置があるが、長距離搬送と高速搬送と静音と高精度を同時に満足するものではなかった。
【0008】
ここで、
図8を参照して特許第4989061号に係る送り装置について説明する。送り装置108は、ベースプレート11上に、モータ21を支持するモータ支持プレート12と、回転軸32を支えるベアリング24を保持する中間プレート13と、他方のベアリング25を保持するメインプレート14が組付けられている。
【0009】
ここで回転軸32はモータ21の回転でトルクを伝達するために、スプライン軸を採用している。
【0010】
フランジ33は、スプラインナット34と一体になっており、円板35にボルト36によって固定されている。スプラインナット34内には、回転軸32の軸方向に形成された横断面半円状の溝の上を転がりながら軸方向に移動する多数のボール(図示せず)が配列されているのが好ましい。このようなボールとスプラインによって回転と軸方向移動を実現する構造はボールスプラインと呼ばれ、回転軸32は好ましくはモータ21の回転トルクを伝達しやすいボールスプライン軸になっている。
【0011】
スプラインナット34の外周には、円筒状の雄ネジ部材41が圧入されているかネジ止めされている。これにより、雄ネジ部材41は、スプラインナット34と同体となって回転し、かつ、回転軸32上を移動することができるようになっている。
【0012】
雄ネジ部材41の外周には、円筒状の雌ネジ部材42が設けられている。雌ネジ部材42の内周面には雌ネジが設けられており、装着状態で、雌ネジ部材42の雌ネジと雄ネジ部材41の雄ネジは噛み合っている。雌ネジ部材42はボルト37によってメインプレート14に固定されている。
【0013】
さらに、円板35の外周部には、円筒状の回転ロータ43がボルト38によって固定されている。回転ロータ43の内周面と雌ネジ部材42の外周面の間には所定の隙間が存在し、相対的に回転できるようになっている。回転ロータ43の外周面にはワイヤ51がスパイラル状に巻きつけられている。
【0014】
以上の構成により、モータ21が回転すると、カップリング23を介してモータ21の出力軸22の回転が回転軸32の入力部31に伝達し、さらに、回転軸32、フランジ33、スプラインナット34、円板35、雄ネジ部材41、回転ロータ43の順番で伝達し、それら(以下便宜的に「一体回転部」という)が一体になって回転する。
【0015】
一体回転部は、一回転すると、雄ネジ部材41の雄ネジと雌ネジ部材42の雌ネジの噛み合いの一ピッチ分回転軸32の軸方向に平行移動する。
【0016】
ここで、上記雄ネジと雌ネジ噛み合いピッチをP1、回転ロータ43へのワイヤ51の巻き付けピッチをP2とすると、P1=P2とすれば、回転ロータ43の一回転に伴うワイヤ51の巻き付け部の長さの変化と回転ロータ43の軸方向の移動量が同じになり、ワイヤ51は整列巻に巻き取られる。
【0017】
回転ロータ43の外周面の両端部には、1本のワイヤ51の両端部が互いに反対方向に巻き付けられクランプで固定される。これにより、回転ロータ43の一方向の回転でワイヤ51の一方の端部側の巻き取り、他方の端部側の巻き出しを同時に行うことができる。
【0018】
回転ロータ43に上記のように巻き付けたワイヤ51は、回転ロータ43から送り出され、送り装置108から離れて配置されたプーリ(ワイヤ51の折り返し位置)を経由して、再び回転ロータ43に戻る。該プーリと回転ロータ43の間のワイヤ51に、図示しない移動体を結合すれば、モータ21の回転により移動体に対してワイヤ51の一方の端部側が巻き取られ、他方の端部側が巻き出され、モータ21をいずれの方向に回転しても、移動体は、送り装置に近づく方向または離れる方向に、スムーズに移動することができる。
【0019】
このように構成することにより、ワイヤによる駆動はギアを使用していないため静音であり、高速運転に適している。また、回転ロータ43の外径増加または両端部間の長さ増加により、ワイヤ51の収納量が増加するため、長距離搬送にも適している。また、回転ロータ43の外周の加工精度を上げれば容易に高精度化が図れる。
【0020】
以上に述べたように、特許文献1の「特許第4989061」は動作上優れた特徴を持つが以下の問題点もある。
【0021】
すなわち、
図8の断面
図G―Gに示すように、スプライン軸32、スプラインナット34、雄ネジ部材41、雌ネジ部材42、回転ロータ43は全てが同心円状に組み合わされている。雄ネジと雌ネジの噛み合いを構成する一方の雄ネジ部材41は軸方向の移動部材であるスプラインナット34と一体になっており、他方の雌ネジ部材42は固定のメインプレート14に組付けられている。このため、送り装置としての機能を満足するためには、各部材の加工精度が高く、かつ、ベースプレート11やモータ支持プレート12や中間プレート13やメインプレート14の組み立て精度が高く、雄ネジ部材41と雌ネジ部材42が正確に芯出しされていることが重要な要素となる。
【0022】
(1)このため、全ての部材が高精度で加工され、高精度で組み立てられていることが必要となる。
【0023】
(2)また、従来技術の場合は部品点数も多く、かつそれぞれの部材が高精度で加工されていなければならないため、高コスト化が避けられないという課題がある。
【0024】
(3)さらに従来技術の場合は部品点数が多い上に部材を組付けるための組立作業にも高精度が要求されるため、組立作業の面でも高コスト化が避けられない課題がある。
【0025】
そこで、本発明は、上記従来の問題の少なくとも一つを解決すべく、ワイヤの巻き取り、巻き出しをスムーズに行うことができる送り装置であって、長距離搬送、高速搬送、静音および高精度を満足し、簡単な構造を有して高い組立精度を要さない送り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の一態様に係る送り装置は、たとえば、
モータと、
前記モータの出力軸に連結されたスプライン軸の回転軸と、
前記回転軸に対して一体に回転し且つ相対的に平行移動するように組み込まれたスプラインナットと、
前記スプラインナットと一体的に回転するように前記スプラインナットに直接的または間接的に取り付けられ、外周面にワイヤを巻き付ける巻き付け部を有し、内周面に雌ネジを有する回転ロータと、
前記モータと前記回転軸と前記スプラインナットと前記回転ロータを回転可能に支承する支承構造体と、
前記回転ロータの雌ネジと噛み合う送りネジを有する送りネジ部材と、
を有し、
前記送りネジ部材は、前記送りネジが前記回転ロータの雌ネジと噛み合うように前記支承構造体によって支持され、
前記回転ロータが一回転すると、前記回転ロータがワイヤの一巻き付けピッチ分前記回転軸に沿って平行移動するように構成されたことを特徴とする。
【0027】
前記送りネジ部材が複数設けられていてもよい。
【0028】
前記送りネジ部材は、前記支承構造体に取り付ける構造を有する組付け部と、前記送りネジを有する送り部とを有していてもよい。
【0029】
前記送りネジ部材は、全体が丸棒の形状を有し、前記組付け部は外周面に前記支承構造体に螺着するネジを有し、前記送り部は外周面に前記送りネジを有していてもよい。
【0030】
前記送りネジ部材は、前記組付け部が前記支承構造体に取り付けられる台座部、前記送り部が外周面の少なくとも一部に前記送りネジを有する棒状部をそれぞれ有していてもよい。
【0031】
本発明の他の態様に係る送り装置は、たとえば、
モータと、
前記モータの出力軸に連結されたスプライン軸の回転軸と、
前記回転軸に対して一体に回転し且つ相対的に平行移動するように組み込まれたスプラインナットと、
前記スプラインナットと一体的に回転するように前記スプラインナットに直接的または間接的に取り付けられ、外周面にワイヤを巻き付ける巻き付け部を有する回転ロータと、
前記スプラインナットに固定された外周面に雄ネジを有する雄ネジ部材と、
前記モータと前記回転軸と前記スプラインナットと前記回転ロータと前記雄ネジ部材を回転可能に支承する支承構造体と、
前記雄ネジ部材の前記雄ネジと噛み合う送りネジを有する送りネジ部材と、
を有し、
前記送りネジ部材は、前記送りネジが前記雄ネジ部材の前記雄ネジの一周に対して部分的に当接し噛み合うように前記支承構造体によって支持され、
前記回転ロータが一回転すると、前記回転ロータがワイヤの一巻き付けピッチ分前記回転軸に沿って平行移動するように構成されたことを特徴とする。
【0032】
前記送りネジ部材が複数設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、ワイヤの巻き取り、巻き出しをスムーズに行い、長距離搬送、高速搬送、静音および高精度を満足する送り装置であって、簡単な構造を有し、高い加工精度および組立精度を要さない廉価な送り装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の一実施形態による送り装置の軸方向の縦断面図(a)および軸方向縦断面図(a)の矢印A-A方向に見た横断方向の縦断面図(b)である。
【
図2】
図1の実施形態の変形例による送り装置の軸方向の縦断面図(a)および軸方向縦断面図(a)の矢印B-B方向に見た横断方向の縦断面図(b)である。
【
図3】本発明の一実施形態による送り装置の軸方向の縦断面図(a)および軸方向縦断面図(a)の矢印C-C方向に見た横断方向の縦断面図(b)である。
【
図4】
図3の実施形態の変形例による送り装置の軸方向の縦断面図(a)および軸方向縦断面図(a)の矢印D-D方向に見た横断方向の縦断面図(b)である。
【
図5】本発明の一実施形態による送り装置の軸方向の縦断面図(a)および軸方向縦断面図(a)の矢印E-E方向に見た横断方向の縦断面図(b)である。
【
図6】
図5の実施形態の変形例による送り装置の軸方向の縦断面図(a)および軸方向縦断面図(a)の矢印F-F方向に見た横断方向の縦断面図(b)である。
【
図7】本発明の実施形態の送りネジ部材の斜視図(a),(b)である。
【
図8】従来の送り装置の軸方向の縦断面図(a)および軸方向縦断面図(a)の矢印G-G方向に見た横断方向の縦断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に実施形態を説明する。
【0036】
図1は一実施形態による送り装置101の軸方向の縦断面図(a)および軸方向縦断面図(a)の矢印A-A方向に見た横断方向の縦断面図(b)を示している。
【0037】
送り装置101は、ベースプレート111上に、モータ121を支持するモータ支持プレート112と、回転軸132を支えるベアリング124を保持する中間プレート113と、他方のベアリング125を保持するメインプレート114が組付けられている。
【0038】
回転軸132はモータ121の回転トルクを伝達するスプライン軸になっている。
【0039】
一体に形成されたフランジ133とスプラインナット134は、円板135にボルト136によって固定されている。
【0040】
スプラインナット134は、内部に転がりボール(図示せず)を有し、回転軸132とボールスプライン構造をなしている。このため、モータ121の回転トルクを伝達しやすく、かつ、スプラインナット134が回転軸132に沿って移動しやすいようになっている。
【0041】
円板135の外周部には、円筒状の回転ロータ143がボルト138によって固定されている。回転ロータ143の内周面には雌ネジ144が設けられている。回転ロータ143の外周面にはワイヤガイドまたは溝が設けられ、そこにワイヤ151が巻き付けられている。すなわち、回転ロータ143の外周面はワイヤを巻き付ける、巻き付け部になっている。上述したとおり、1本のワイヤ151は、その両端部が、互いに反対方向に巻き付けられクランプで固定されている。
【0042】
上記構造により、モータ121が回転すると、モータ121の出力軸122、カップリング123、回転軸132の入力部131、回転軸132、フランジ133とスプラインナット134、円板135、回転ロータ143の順番で回転トルクが伝達し、上述した部材が一体になって回転する。
【0043】
図1(a)に示すように、メインプレート114には、送りネジ部材200が立設されて、その先端部が回転ロータ143の内側に挿入されている。
図7(a)の斜視図に示すように、送りネジ部材200は、メインプレート114に組み付けるための組付け部203と、送りネジ201を有する送り部204を有している。
【0044】
本実施形態では、送りネジ部材200は、全体が丸棒の形状を有し、組付け部203は外周面にネジ205を有し、送り部204は外周面に送りネジ201を有している。組付け部203はメインプレート114の貫通孔に挿入してナット202によって固定するようになっている。
【0045】
一方、送りネジ部材200の送り部204の送りネジ201は、回転ロータ143の内周面の雌ネジ144の一周に対して部分的に当接し噛み合う雄ネジになっている。回転ロータ143が一回転すると、送りネジ201と雌ネジ144の噛み合いの一ピッチ分だけ、回転ロータ143が回転軸132の軸方向に移動する。
【0046】
送りネジ201のピッチをP3、回転ロータ143の雌ネジ144のピッチをP4とすると、P3=P4とすれば、送りネジ201と雌ネジ144は互いにスムーズに噛み合うことができる。さらにワイヤ151の巻き付けピッチをP2とすると、P2=P3=P4とすれば、回転ロータ143の1回転で回転ロータ143はワイヤ151の巻き付けピッチP2分だけ軸方向に正確に移動する。このようにすることにより、回転ロータ143が一回転すると、回転ロータ143はワイヤ巻き付けピッチP2だけ軸方向に移動し、ワイヤ151は1巻き分だけ巻き取りと巻き出しを行うことができる。これにより、ワイヤ151の巻取り、巻出しがスムーズに行われ、高精度で静音な送り動作が可能となる。
【0047】
さらに、回転ロータ143の径の増大または軸方向の長さの増大により、ワイヤ151の収納量が増加するため、長距離搬送が可能となる。さらに、モータ121の出力を上昇して回転速度を上昇すれば回転ロータ143も高速回転するため高速搬送が可能となる。
【0048】
なお、上記ベースプレート111とモータ支持プレート112と中間プレート113とメインプレート114は、例示的な構造であり、モータ121と回転軸132とフランジ133とスプラインナット134と円板135と回転ロータ143を回転可能に支承することができれば、公知の技術で可能な任意の支承構造体とすることができる。
【0049】
また、上記実施形態では、回転ロータ143は円板135に固定されているが、回転ロータ143は直接的または間接的にスプラインナット134に固定されればよい。
【0050】
本実施形態によれば、
図8の従来技術の雄ネジ部材41と雌ネジ部材42が送りネジ部材200に置き換えられ、従来技術の雄ネジ部材41が省略される得る。
【0051】
図8の従来技術の雌ネジ部材42と雄ネジ部材41は全周的に噛み合うため、高精度な機械加工を必要とするが、本実施形態の簡素化された送りネジ部材200は鋳造、ロストワックス等の成形品で済むので部品費の大幅な削減が図れると共に組付も容易である。また、組付工数の低減も図れる。
【0052】
なお、本実施形態による送りネジ部材200の取り付けは、組付け部203をナット202でメインプレート114に仮り組み付けし、回転ロータ143を手動で回転して噛み合いがスムーズな位置でナット202を本締めすれば良い。
また、ワイヤ151は、1本で構成しても良いし、2本で構成しても良い。2本で構成する場合は、例えば、一方のワイヤを回転ロータ143の一方の端部に固定し、他方のワイヤを、回転ロータ143の他方の端部に固定し、互いに反対方向に巻き付けるようにする。そして、それぞれのワイヤの端部が移動体に固定される。
【0053】
図2は、
図1の送り装置101の変形例による送り装置102の軸方向の縦断面図(a)および軸方向縦断面図(a)の矢印B-B方向に見た横断方向の縦断面図(b)を示している。
【0054】
送り装置102は、送りネジ部材200を上下に設けた他は、
図1と同じ構造を有している。
図1と同一部分については同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0055】
本変形例によれば、ワイヤ151に対する負荷が重い場合または回転が速い場合にそれぞれ回転ロータ143に対するバックアップおよびネジ部の面圧低下効果が期待される。
【0056】
送りネジ部材200は用途に応じて本数、単数、複数を適宜決定すれば良い。
【0057】
図3は、他の実施形態による送り装置103の軸方向の縦断面図(a)および軸方向縦断面図(a)の矢印C-C方向に見た横断方向の縦断面図(b)を示している。
【0058】
本実施形態は、送りネジ部材300が
図1の送りネジ部材200と異なる他は、
図1の送り装置101と共通である。
【0059】
図7(b)の斜視図に示すように、送りネジ部材300は、組付け部301が台座部、送り部302が棒状部になっている。組付け部301の台座部は、固定部303と取付け穴304を有している。メインプレート114の貫通孔に送り部302と組付け部301の一部を挿入し、取付け穴304にネジを挿入して固定部303をメインプレート114に緊結することにより、送りネジ部材300を固定することができる。送り部302は、棒状または板状の部材からなり、外周面の少なくとも一部に送りネジ305を有している。ただし、送りネジ305は、回転ロータ143の雌ネジ144と噛み合う部分に設けられている。
【0060】
送りネジ部材300は組付け部301と送り部302で構成されており、組付け部301は取付け穴304にネジを挿入して固定すればよいので、送りネジ部材200に比べてメインプレート114への取付けが容易となっている。また製造するにあたり、送りネジ部材300はより鋳造、ロストワックス等の成形品を利用し易くなり、一層のコスト低減を図れる。
【0061】
ここで、
図3に戻って説明を続けると、本実施形態では、送りネジ部材300以外は
図1と共通である。送りネジ部材300は回転ロータ143の雌ネジ144と同一ピッチであり、スムーズな噛み合いが行われることは
図1と同じである。
【0062】
図4は、
図3の送り装置103の変形例による送り装置104の軸方向の縦断面図(a)および軸方向縦断面図(a)の矢印D-D方向に見た横断方向の縦断面図(b)を示している。
【0063】
送り装置104は、送りネジ部材300を上下に設けた他は、
図3と同じ構造を有しているため、
図3と同一部分については同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0064】
本変形例によれば、ワイヤ151に対する負荷が重い場合または回転が速い場合にそれぞれ回転ロータ143に対するバックアップおよびネジ部の面圧低下効果が期待される。
【0065】
図5は一実施形態による送り装置105の軸方向の縦断面図(a)および軸方向縦断面図(a)の矢印E-E方向に見た横断方向の縦断面図(b)を示している。
【0066】
送り装置105は、
図8の雌ネジ部材42が送りネジ部材300になっている他は、
図8の送り装置108と同じ構造を有している。すなわち、送りネジ部材300は、送りネジ305が回転ロータ43内の雄ネジ部材41の外周面の雄ネジの一周に対して部分的に当接し噛み合うように取り付けられている。
【0067】
送りネジ部材300を採用することにより、
図8の雌ネジ部材42に比して部品コストを低減することができ、かつ、困難な芯出しがないため組付工数の低減を図ることができる。
【0068】
また、
図5と
図3を比較すると分かるように、
図3の送り装置103の雌ネジと送りネジの噛み合い部の有効径D1と、
図5の送り装置105の雄ネジと送りネジの噛み合い部の有効径D2は、
図5の送りネジ305が内側になっているため、明らかにD1>D2の関係になっている。このため、高速運転でネジかみ合い部の周速を下げたい場合、あるいはより高速運転が必要な場合は、
図5の構造を好適に採用することができる。
【0069】
なお、送りネジ201と305の材質としては強度が高く耐摩耗性の高い材質が適している。逆に相手方となる
図3における回転ロータ143の内周の雌ネジ144や
図5における雄ネジ部材41は耐磨耗を主体としたものが好ましい。
【0070】
図6は、
図5の実施形態の変形例による送り装置106の軸方向の縦断面図(a)および軸方向縦断面図(a)の矢印F-F方向に見た横断方向の縦断面図(b)を示している。
【0071】
送り装置106は、送りネジ部材300を上下に設けた他は、
図5と同じ構造を有している。
図5と同一部分については同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0072】
本変形例によれば、ワイヤ151に対する負荷が重い場合または回転が速い場合にそれぞれ回転ロータ43に対するバックアップおよびネジ部の面圧低下効果が期待される。
【0073】
送りネジ部材300は送り装置106の用途に応じて本数、単数、複数を適宜決定すれば良いことは
図2,4の場合と同じである。
【0074】
以上述べたように、以上の実施形態による送り装置101-106は従来技術の送り装置108の利点を全て継承した上で、部品費の低減、組立工数の低減を図ることができるので、産業界への一層の普及を図ることが可能となる。
【0075】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0076】
11、111:ベースプレート
12、112:モータ支持プレート
13、113:中間プレート
14、114:メインプレート
21、121:モータ
22、122:出力軸
23、123:カップリング
24、25、124、125:ベアリング
31、131:入力部
32、132:回転軸
33、133:フランジ
34、134:スプラインナット
35、135:円板
36、37、38、136、138:ボルト
41:雄ネジ部材
42:雌ネジ部材
43、143:回転ロータ
51、151:ワイヤ
101、102、103、104、105、106、108:送り装置
144:雌ネジ
200、300:送りネジ部材
201、305:送りネジ
202:ナット
203、301:組付け部
204、302:送り部
205:ネジ
303:固定部
304:取付け穴