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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】鉗子装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/30 20160101AFI20231124BHJP
【FI】
A61B34/30
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023544775
(86)(22)【出願日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 JP2022001339
【審査請求日】2023-07-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515075692
【氏名又は名称】リバーフィールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122183
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】滝川 恭平
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】特許第6896317(JP,B1)
【文献】特表2018-538067(JP,A)
【文献】特開2004-301275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部と、
前記把持部を保持する支持体と、
前記支持体を回転可能に支持する第1の回転軸と、
前記第1の回転軸を保持するベース部品と、
前記把持部を動作させる駆動力を伝達する複数の把持部ワイヤと、
前記第1の回転軸と同軸に配置されており、前記把持部ワイヤが掛けられている第1のガイドプーリと、
前記第1のガイドプーリより上流側に配置されており、前記把持部ワイヤが掛けられている第2のガイドプーリと、
前記第2のガイドプーリより上流側に配置されており、前記把持部ワイヤが掛けられている第3のガイドプーリと、を備え、
前記第2のガイドプーリは、
(i)前記把持部の先端が上を向いた状態で前記第1の回転軸を軸方向から正面に見た場合に、前記第1のガイドプーリの真下よりも一方の側にずれて配置されており、かつ、
(ii)前記支持体が左右に回転していない中立位置の場合に、前記第1のガイドプーリへの前記把持部ワイヤの巻き付き角度γが65°以上になるように配置されており、
前記第3のガイドプーリは、
(i)前記把持部の先端が上を向いた状態で前記第1の回転軸を軸方向から正面に見た場合に、前記第1のガイドプーリの真下よりも一方の側にずれて配置されており、かつ、
(ii)前記把持部の先端が上を向いた状態で前記第1の回転軸を軸方向から正面に見た場合に、前記第2のガイドプーリの真下よりも他方の側にずれて配置されていることを特徴とする鉗子装置。
【請求項2】
前記巻き付き角度γが89°以上であることを特徴とする請求項1に記載の鉗子装置。
【請求項3】
前記第3のガイドプーリは、前記ベース部品の内壁の両側に一対設けられており、
一対の前記第3のガイドプーリは、前記ベース部品に保持された異なる軸にそれぞれが回転可能に支持されていることを特徴とする請求項又は2に記載の鉗子装置。
【請求項4】
前記ベース部品は、外径が7~9mmの筒状の部品であり、
前記第1のガイドプーリは、直径が3.0~3.6mmであり、
前記第2のガイドプーリは、直径が3.0~3.6mmであり、
前記第3のガイドプーリは、直径が3.0~3.6mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉗子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術用ロボットのマニピュレータに用いられる鉗子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、術者の負担軽減や、医療施設の省人化を図るためにロボット(マニピュレータ)を利用した医療処置の提案がされている。外科分野では、術者が遠隔操作可能な手術用マニピュレータを操作して患者の処置を行う、手術用マニピュレータシステムに関する提案が行われている。
【0003】
手術用マニピュレータの先端には各種の術具が装着されており、術具として手術の際に人体の組織を把持する鉗子が知られている。例えば、特許文献1には、把持部(101,104)を保持する支持体(107)を回転可能に支持する第1の回転軸(118)と、第1の回転軸を保持するベース部品(120)と、第1の回転軸と同軸に配置されている複数の第1ガイドプーリ(111,112,113,114)と、複数の第1ガイドプーリと把持部との間に他のプーリを介さずに掛かり、把持部を動作させる駆動力を伝達する複数の把持部ワイヤ(102,103,105,106)と、第1ガイドプーリより上流側に設けられている第2ガイドプーリを回転可能に支持する第2の回転軸(119)と、を備える鉗子装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】中国特許出願公開第107928792号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の鉗子装置は、第1のガイドプーリと第2のガイドプーリとが支持体の中心軸と平行に並んで配置されている。そのため、第1の回転軸と同軸の第1のガイドプーリに、把持部の可動範囲に応じて把持部ワイヤを巻き付けようとすると、第1のガイドプーリと第2のガイドプーリとを近づける必要がある。しかしながら、第1のガイドプーリと第2のガイドプーリとの距離を近づけた場合、巻き付けられた把持部ワイヤの曲率半径が小さくなるため、その状態で把持部ワイヤが繰り返し引っ張られると、把持部ワイヤの耐久性が著しく低下するおそれがある。また、前述の鉗子装置において把持部の把持力を増加させるために把持部ワイヤの張力を増加させると、第1の回転軸と支持体との摩擦力が増加し、把持部を含む支持体が第1の回転軸を中心として屈曲動作する際の制御性が悪化する。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的の一つは、ワイヤの耐久性又は鉗子装置における操作の制御性を向上する新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の鉗子装置は、把持部と、把持部を保持する支持体と、支持体を回転可能に支持する第1の回転軸と、第1の回転軸を保持するベース部品と、把持部を動作させる駆動力を伝達する複数の把持部ワイヤと、第1の回転軸と同軸に配置されており、把持部ワイヤが掛けられている第1のガイドプーリと、第1のガイドプーリより上流側に配置されており、把持部ワイヤが掛けられている第2のガイドプーリと、を備える。第2のガイドプーリは、(i)把持部の先端が上を向いた状態で第1の回転軸を軸方向から正面に見た場合に、第1のガイドプーリの真下よりも一方の側にずれて配置されており、かつ、(ii)支持体が左右に回転していない中立位置の場合に、第1のガイドプーリへの把持部ワイヤの巻き付き角度γが65°以上になるように配置されている。
【0008】
この態様によると、把持部を保持する支持体の回転角度が少なくとも±65°の範囲で違和感のない操作制御が可能となる。
【0009】
巻き付き角度γが89°以上であってもよい。これにより、把持部を保持する支持体の回転角度が少なくとも±89°の範囲で違和感のない操作制御が可能となる。
【0010】
第2のガイドプーリより上流側に配置されており、把持部ワイヤが掛けられている第3のガイドプーリを更に備えてもよい。第3のガイドプーリは、(i)把持部の先端が上を向いた状態で第1の回転軸を軸方向から正面に見た場合に、第1のガイドプーリの真下よりも一方の側にずれて配置されており、かつ、(ii)把持部の先端が上を向いた状態で第1の回転軸を軸方向から正面に見た場合に、第2のガイドプーリの真下よりも他方の側にずれて配置されていてもよい。これにより、第2のガイドプーリと第3のガイドプーリとの間に掛かる把持部ワイヤのS字カーブの曲率半径を大きくできる。また、把持部ワイヤのS字カーブの曲離半径を大きくすることで、把持部ワイヤに発生する曲げ応力が低下し、把持部の動作に伴う把持部ワイヤの耐久性が向上する。
【0011】
第3のガイドプーリは、ベース部品の内壁の両側に一対設けられており、一対の第3のガイドプーリは、ベース部品に保持された異なる軸にそれぞれが回転可能に支持されていてもよい。これにより、第3のガイドプーリ及び第2のガイドプーリを、第1のガイドプーリを正面から見て同じ側(右側又は左側)に配置できる。
【0012】
ベース部品は、外径が7~9mmの筒状の部品であり、第1のガイドプーリは、直径が3.0~3.6mmであり、第2のガイドプーリは、直径が3.0~3.6mmであり、第3のガイドプーリは、直径が3.0~3.6mmであってもよい。これにより、外径が非常に細い鉗子装置において、適切な巻き付き角度を実現しながら、S字カーブの曲率半径を大きくできる。
【0013】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、鉗子装置におけるワイヤの耐久性又は操作の制御性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施の形態に係る鉗子装置の斜視図である。
図2図1の鉗子装置をa方向から見た正面図である。
図3図1の鉗子装置をB方向から見た側面図である。
図4図1の鉗子装置をC方向から見た側面図である。
図5図3に示す鉗子装置のD-D断面図である。
図6】本実施の形態に係る支持体の斜視図である。
図7】本実施の形態に係る支持体の正面図である。
図8】本実施の形態に係る支持体の側面図である。
図9】本実施の形態に係る一対のジョー部品を向かい合わせに組み合わせる様子を示す斜視図である。
図10図1に示す鉗子装置をH1方向から見た斜視図である。
図11図1に示す鉗子装置をH2方向から見た斜視図である。
図12図1に示す鉗子装置をH3方向から見た斜視図である。
図13図1に示す鉗子装置をH2方向と反対方向から見た斜視図である。
図14図3に示す鉗子装置のベース部品の図示を省略した図である。
図15図4に示す鉗子装置のベース部品の図示を省略した図である。
図16図1に示す鉗子装置のワイヤの図示を省略した図である。
図17】本実施の形態に係るベース部品の斜視図である。
図18図17に示すベース部品をJ1方向から見た上面図である。
図19】本実施の形態に係るストッパの正面図である。
図20】ベース部品に位置決めされたストッパを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述される全ての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0017】
(鉗子装置)
図1は、本実施の形態に係る鉗子装置の斜視図である。図2は、図1の鉗子装置をa方向から見た正面図である。図3は、図1の鉗子装置をB方向から見た側面図である。図4は、図1の鉗子装置をC方向から見た側面図である。
【0018】
各図に示す鉗子装置10は、一対の把持部12a,12bと、一対の把持部12a,12bを保持する支持体14と、支持体14を回転可能に支持する第1の回転軸16と、第1の回転軸16を保持するベース部品18と、第1の回転軸16と同軸に配置されている4つのガイドプーリ20と、一対の把持部12a,12bを回転可能に支持し、支持体14に保持される第2の回転軸22と、第2の回転軸22と同軸に保持される4つのジョープーリ24と、4つのガイドプーリ20と4つのジョープーリ24との間に掛けられた4本のワイヤ26,28,30,32と、支持体14を第1の回転軸16を中心に回転させるためのワイヤ38,40と、を備えている。
【0019】
(ガイドプーリ20)
図5は、図3に示す鉗子装置10のD-D断面図である。図5に示すように、ガイドプーリ20は、支持体14に装着されているベアリング15に挿入されている第1の回転軸16に回転可能に支持されている。本実施の形態に係るガイドプーリ20は、図5に示すように、支持体14を挟んで両側に2つずつ隣接して配置されている。
【0020】
(ベース部品)
次に、ベース部品18について説明する。本実施の形態に係るベース部品18は、図2図5に示すように、第1の回転軸16の両端を保持する一対のアーム18a,18bと、一対のアーム18a,18bに保持され、ガイドプーリ20よりも上流側にある4つのガイドプーリ34を回転可能に支持する第3の回転軸36とを有している。なお、本実施の形態に係る第3の回転軸36は、一対のアーム18a,18bのそれぞれに設けられている。また、2つの回転軸36は、互いの軸方向が平行且つずれるように配置されている。
【0021】
アーム18a,18bは、第3の回転軸36を保持する根本部分18cよりも第1の回転軸16を保持する先端部分18dの方が薄肉である。換言すると、先端部分18d同士の間隔は、根本部分18c同士の間隔よりも広い。これにより、図3に示すように、フリートアングルのあるワイヤ26,28が支持体14とともに第1の回転軸16を中心に屈曲(図3の矢印F方向)した場合であっても、アーム18a,18bと干渉しにくくなる。
【0022】
また、アーム18a(アーム18b)の先端部分18dの周方向の幅W1は、根本部分18cの周方向の幅W2よりも狭い。これにより、ワイヤとの干渉を考慮する必要のある先端部分18dにU字状の逃がし部を形成しつつ、先端部分18dの周方向の幅よりも根本部分18cの周方向の幅を大きくすることでアームの剛性の低下を抑えられる。
【0023】
また、図5に示すように、本実施の形態に係るジョープーリ24の外径G1は、一対のアーム18a,18bの根本部分18c同士の間隔G2より大きい。つまり、本実施の形態に係る鉗子装置10は、筒状のベース部品18の内径の大きさの割に外径の大きなジョープーリ24を採用することが可能となる。
【0024】
(支持体)
図6は、本実施の形態に係る支持体の斜視図である。図7は、本実施の形態に係る支持体の正面図である。図8は、本実施の形態に係る支持体の側面図である。図5に示すように、本実施の形態に係る鉗子装置10は、一対の把持部12a,12bと、一対の把持部12a,12bを保持する支持体14と、支持体14を回転可能に支持する第1の回転軸16と、第1の回転軸16を保持するベース部品18と、第1の回転軸16と同軸に配置されている複数のガイドプーリ20と、を備える。
【0025】
支持体14は、図7に示すように、軸受としてのベアリング15が装着される円形の貫通孔14a形成されている。そして、図6に示すように、支持体14に装着されたベアリング15に、支持体14を回転可能に支持する第1の回転軸16が挿入されている。複数のガイドプーリ20は、第1の回転軸16の外周に回転可能に支持されている。なお、回転軸とは、自身が回転するものだけではなく、支持する部材が回転する際の軸となるものであればよく、他の部材に対して固定されている軸であってもよい。
【0026】
このように構成された鉗子装置10において、第1の回転軸16の外周に複数のガイドプーリ20が支持された状態の支持体14は、ベース部品18に対して第1の回転軸16を介して保持される。そのため、支持体14が直接ベース部品18に保持される場合と比較して、組立性の改善を図りやすい。
【0027】
また、本実施の形態に係るベース部品18は、対向する一対のアーム18a,18bを有している。また、第1の回転軸16は、軸方向の両端が一対のアーム18a,18bに対して圧入嵌合されることで強固に固定されている。これにより、自由端となり得る一対のアーム18a,18bの先端部同士が回転軸で固定されるため、ベース部品18全体の剛性が増す。
【0028】
また、ワイヤ26,28,30,32のそれぞれは、把持部12aや把持部12bを動作させる駆動力を伝達するためのものである。具体的には、ワイヤ26及びワイヤ32は、把持部12bのジョープーリ24に掛かっており、把持部12bは、ワイヤ26が引かれると開く方向に動き、ワイヤ32が引かれると閉じる方向に動く。また、ワイヤ28及びワイヤ30は、把持部12aのジョープーリ24に掛かっており、把持部12aは、ワイヤ28が引かれると閉じる方向に動き、ワイヤ30が引かれると開く方向に動く。
【0029】
また、4つのガイドプーリ20のそれぞれは、対応するワイヤ26,28,30,32が掛かっている。ワイヤ26,28,30,32は、図2に示すように、対応するガイドプーリ20とガイドプーリ34との間を通り、ガイドプーリ20の下側(第1の回転軸16を挟んで把持部12a,12bと反対側)から掛かっている。
【0030】
また、支持体14の一部には、支持体を第1の回転軸16を中心に回転させる駆動力を伝達するワイヤ38,40が掛かる支持体プーリ42が一体的に形成されている。支持体プーリ42は、第1の回転軸16と同軸に設けられている。そのため、ワイヤ38,40の一方を引っ張ることで支持体14を回転させようとすると、支持体プーリ42に掛かっているワイヤ38,40の張力によって、支持体14が第1の回転軸16側に押し付けられる。その際に、第1の回転軸16から支持体14が受ける垂直抗力が発生し、摩擦力の増大の一因となる。あるいは、ワイヤ26,28,30,32のいずれかを引っ張ることで把持部12a,12bを回転させようとすると、ワイヤ26,28,30,32の張力がジョープーリ24を介して第2の回転軸22にかかる。そして、第2の回転軸22を支持するための支持体14の貫通孔の内周にかかる力がベアリング15が装着される円形の貫通孔14aに伝わり、支持体14が第1の回転軸16側に押し付けられる。この場合も、第1の回転軸16から支持体14が受ける垂直抗力が発生し、摩擦力の増大の一因となる。
【0031】
しかしながら、本実施の形態に係る鉗子装置10においては、支持体14と第1の回転軸16との間に軸受を設けているため、第1の回転軸16と支持体14との間の摩擦力を低減できる。なお、軸受を転がり軸受であるベアリング15にすることで、第1の回転軸16と支持体14との間の摩擦力を更に低減できる。その結果、把持部12a,12bの動作がスムーズとなり鉗子装置10の制御性が良化する。なお、軸受は滑り軸受であってもよい。本実施の形態に係るベアリング15は、直径が3.6~4.5mmであり、ガイドプーリ20は、直径が3.0~3.6mmであってもよい。ベアリング15の直径は、ガイドプーリ20の直径より大きくてもよい。
【0032】
(把持部)
次に、本実施の形態に係る把持部を構成するジョー部品について詳述する。図9は、本実施の形態に係る一対のジョー部品を向かい合わせに組み合わせる様子を示す斜視図である。図9に示すジョー部品50A,50Bは、互いにほぼ同じ形状の部品である。ジョー部品50A,50Bは、互いが相対的に動くことで対象物を把持する把持部12a及び把持部12bを有している。把持部12aは、二股に形成されているジョープーリ24a(第1の把持部プーリ)及びジョープーリ24b(第2の把持部プーリ)と連なり、一体的にジョー部品50Aを構成する。また、把持部12bは、二股に形成されているジョープーリ24c(第3の把持部プーリ)及びジョープーリ24d(第4の把持部プーリ)と連なり、一体的にジョー部品50Bを構成する。
【0033】
図10は、図1に示す鉗子装置10をH1方向から見た斜視図である。図11は、図1に示す鉗子装置10をH2方向から見た斜視図である。図12は、図1に示す鉗子装置10をH3方向から見た斜視図である。図13は、図1に示す鉗子装置10をH2方向と反対方向から見た斜視図である。なお、H1方向からH3方向は、第1の回転軸16を含む水平面H内にある方向である。また、図10乃至図13の各図においてはベース部品18の図示を省略している。
【0034】
各図に示すように、ジョープーリ24a、ジョープーリ24c、ジョープーリ24b及びジョープーリ24dは、この順で第2の回転軸22に回転可能に支持されている。また、ガイドプーリ20A、ガイドプーリ20B、ガイドプーリ20C及びガイドプーリ20Dは、この順で第1の回転軸16に回転可能に支持されている。把持部12a,12bを開閉動作させる駆動力を伝達する把持部ワイヤとしてのワイヤ26,28,30,32は、複数のガイドプーリ20A~20Dと把持部12a,12bとの間に他のプーリを介さずに掛かっている。なお、駆動力は鉗子装置10の外部にあるアクチュエータユニットから入力される。これにより、図10等に示すように、第1の回転軸16と第2の回転軸22との距離を短くできるため、把持部12a,12bによるトルク(操作力)を増加できる。その結果、把持部12a,12bの制御性が良好な鉗子装置10を提供できる。
【0035】
(各種プーリへのワイヤの掛かり方)
次に、本実施の形態に係るワイヤ26,28,30,32の各プーリへの掛かり方について詳述する。ワイヤ26は、ガイドプーリ20Aとジョープーリ24cとの間に掛けられている。ワイヤ28は、ガイドプーリ20Bとジョープーリ24aとの間に掛けられている。ワイヤ30は、ガイドプーリ20Dとジョープーリ24bとの間に掛けられている。ワイヤ32は、ガイドプーリ20Cとジョープーリ24dとの間に掛けられている。
【0036】
図14は、図3に示す鉗子装置10のベース部品18の図示を省略した図である。図15は、図4に示す鉗子装置10のベース部品の図示を省略した図である。
【0037】
図10図11及び図14に示すように、ワイヤ26は、第1の回転軸16を含み第2の回転軸22と直交する鉛直断面Vを基準に、ガイドプーリ20Aの一方の側S1に掛けられた後に、鉛直断面Vの一方の側S1にあるジョープーリ24cに固定されている。ワイヤ28は、鉛直断面Vを基準に、ガイドプーリ20Bの一方の側S1に掛けられた後に、鉛直断面Vの一方の側S1にあるジョープーリ24aに固定されている。
【0038】
また、図12図13及び図15に示すように、ワイヤ30は、鉛直断面Vを基準に、ガイドプーリ20Dの他方の側S2に掛けられた後に、鉛直断面Vの他方の側にあるジョープーリ24bに固定されている。ワイヤ32は、鉛直断面Vを基準に、ガイドプーリ20Cの他方の側S2に掛けられた後に、鉛直断面Vの他方の側S2にあるジョープーリ24dに固定されている。これにより、4つの把持部ワイヤがそれぞれ交差することなく、対応する4つの把持部プーリに固定される。
【0039】
また、鉗子装置10は、ガイドプーリ20Aの上流側(把持部と反対側)であって鉛直断面Vの他方の側S2にあるガイドプーリ34aと、ガイドプーリ20Bの上流側であって鉛直断面Vの他方の側S2にあるガイドプーリ34bと、ガイドプーリ20Cの上流側であって鉛直断面Vの一方の側S1にあるガイドプーリ34cと、ガイドプーリ20Dの上流側であって鉛直断面Vの一方の側S1にあるガイドプーリ34dと、を備えている。
【0040】
これにより、第1の回転軸16を中心に支持体14がどちらの方向に曲がっても、ガイドプーリ20A~20Dのいずれかにワイヤ26,28,30,32のいずれかが接触するようになり、支持体14を回転させる際の制御性が安定する。より詳述すると、図14に示す状態から支持体14を他方の側S2に向けて曲げると、ワイヤ26,28は、ガイドプーリ20A,20Bにそれぞれ接触する。また、図15に示す状態から支持体14を一方の側S1に向けて曲げると、ワイヤ30,32は、ガイドプーリ20C,20Dにそれぞれ接触する。つまり、いずれの場合も、全てのワイヤがガイドプーリ20A~20Dと非接触(ガイドプーリ20A~20Dに巻き付かない)という状態が回避される。これにより、第1の回転軸16を中心に支持体14を屈曲させる際の制御性が安定する。
【0041】
(ベース部品における封止)
本実施の形態に係る鉗子装置10は、把持部12a,12bが患者の腹腔内で動作するため、大気圧よりも高めた腹腔内の気圧が低下しないように、把持部12a,12b側のガスが鉗子装置10を介して外部へ漏れ出ないようにする工夫が必要である。そこで、本実施の形態では、ベース部品18を含む領域で封止を行っている。
【0042】
図16は、図1に示す鉗子装置のワイヤの図示を省略した図である。図16に示すように、鉗子装置10は、一対の把持部12a,12bと、一対の把持部12a,12bを保持する支持体14と、支持体14を回転可能に支持する第1の回転軸16と、第1の回転軸16を保持するベース部品18と、一対の把持部12a,12bを動作させる駆動力を伝達する複数のワイヤ26,28,30,32(図16では不図示。図2参照)と、ワイヤ26をガイドするガイドプーリ52aと、ワイヤ30をガイドするガイドプーリ52bと、ガイドプーリ52a,52bを回転可能に支持する支持軸54a,54bと、を備える。ベース部品18は、鉗子装置10における把持部12a,12bとシャフト100との間に設けられている。
【0043】
図17は、本実施の形態に係るベース部品の斜視図である。図18は、図17に示すベース部品をJ1方向から見た上面図である。
【0044】
ベース部品18は、ワイヤ26,28,30,32のそれぞれが通る複数の把持部ワイヤ用穴56,58,60,62が形成された仕切り部18gと、仕切り部18gの外縁から把持部(図17の上方)に向かって延び、支持軸54a,54bが固定される一対のアーム18a,18bと、を備える。アーム18a,18bは、一対のガイドプーリ52a,52bを回転可能に支持する支持軸54a,54bの一端部が嵌合する嵌合穴55a,55bが形成されている。
【0045】
仕切り部18gは、円筒状の筒部18hと一対のアーム18a,18bとの間に形成された隔壁である。把持部ワイヤ用穴56,58は、互いに最も隣接する一対の把持部ワイヤ用穴であり、把持部ワイヤ用穴60,62は、互いに最も隣接する一対の把持部ワイヤ用穴である。
【0046】
ワイヤ26,28は、図10に示すように、ガイドプーリ34a,34bにガイドされている状態では並んでいる。そのため、ワイヤ26,28をそのままの状態で仕切り部18gを通そうとすると、ワイヤが2本通る大きな穴を仕切り部18gに形成するか、ワイヤが1本通る小さな穴を2つ隣接して仕切り部18gに形成する必要がある。大きな穴の場合、後述する封止樹脂で封止した場合の気密性が低下するおそれがある。また、小さな穴を2つ隣接して形成する場合、穴同士の壁が薄くなるため、ベース部品18の穴が形成される領域の強度が低下するおそれがある。
【0047】
そこで、本実施の形態に係る鉗子装置10は、ガイドプーリ52aによってワイヤ26をガイドし、ワイヤ26がワイヤ28から離れるようにガイドする。同様に、ガイドプーリ52bによってワイヤ30をガイドし、ワイヤ30がワイヤ32から離れるようにガイドする。これにより、ワイヤ26が通る把持部ワイヤ用穴56とワイヤ28が通る把持部ワイヤ用穴58とを離すことができる。同様に、ワイヤ30が通る把持部ワイヤ用穴60とワイヤ32が通る把持部ワイヤ用穴62とを離すことができる。
【0048】
また、ベース部品18は、仕切り部18gの一方の側(把持部12a,12bがある側の反対側)に、弾力性のある封止部材(デュロメータータイプAの硬さが30~70)が配置されている。封止部材は、例えば、膜状のシリコーン樹脂であり、膜厚は0.5~2mm程度である。
【0049】
封止部材は、複数の把持部ワイヤ用穴56,58,60,62に対応した位置に形成された複数の封止用穴が形成されている。これにより、ベース部品18の仕切り部18gにワイヤ26,28,30,32を通しつつ封止部材による封止が可能となる。ワイヤの線径φは0.4~0.5mmであり、把持部ワイヤ用穴の直径はワイヤの線径よりもわずかに大きいとよい。
【0050】
封止用穴の直径は、把持部ワイヤ用穴の直径より小さく、かつ、把持部ワイヤの直径(線径φ)よりも小さい。これにより、把持部ワイヤ用穴と把持部ワイヤとの間に隙間があっても、封止用穴と把持部ワイヤとが密着することで、把持部側の気体がベース部品18を介して鉗子装置10の外部へ漏れることを低減できる。
【0051】
本実施の形態に係る4つの把持部ワイヤ用穴は、各図に示すように、互いにある程度離れて仕切り部18gに形成されている。そのため、把持部ワイヤ用穴に対応する位置に形成される封止用穴も、隣接する他の封止用穴から離れている。
【0052】
また、本実施の形態に係る鉗子装置10は、把持部ワイヤであるワイヤ26,28,30,32とは別に、支持体14を第1の回転軸16を中心に回転させるための一対のワイヤ38,40を備えている。そのため、ベース部品18の仕切り部18gには、ワイヤ38,40のそれぞれが通る支持体ワイヤ用穴74,76が形成されている。支持体ワイヤ用穴74,76は、仕切り部18gの中心Z(筒部18hの中心軸)に対して点対称の位置に形成されている。
【0053】
また、封止部材は、複数の支持体ワイヤ用穴74,76に対応した位置に形成された複数の封止用穴が形成されている。これにより、ベース部品18の仕切り部18gにワイヤ38,40を通しつつ封止部材による封止が可能となる。支持体ワイヤ用穴の直径はワイヤの線径よりもわずかに大きいとよい。また、本実施の形態に係る鉗子装置10が備える各プーリの配置を工夫することで、ベース部品18の仕切り部18gに形成されるワイヤ用の複数の穴を互いに適度に離して設けることができる。そのため、ワイヤ用の穴が複数形成された封止部材を成形する際に、穴同士が繋がるといった不具合を低減できる。
【0054】
(回転規制機構)
図2に示す鉗子装置10において、ワイヤ38,40を介して支持体14を回転させる駆動力が伝達された状態においては、支持体14の一部と把持部ワイヤ26,28,30,32とが干渉しないような制御範囲角度(本実施の形態では±80°)で把持部12a,12bを屈曲させている。しかしながら、鉗子装置10を動力源やロボット本体から取り外された状態では、支持体14が制御範囲角度を超えて自由に回転できるため、図2に示す支持体の一部領域Rが把持部ワイヤ26,28,30,32と接触する可能性がある。
【0055】
そこで、本実施の形態に係る鉗子装置10は、回転した支持体14が把持部ワイヤ26,28,30,32と接触しないように支持体の回転を規制する回転規制機構を備えている。回転規制機構は、回転した支持体の一部が当接する被当接面を有するストッパを備えている。図19は、本実施の形態に係るストッパの正面図である。図20は、ベース部品18に位置決めされたストッパを説明するための図である。
【0056】
ストッパ82は、ブロック状の直方体部品であり、支持体14と対向する平坦面82aが被当接面として機能する。この平坦面82aに支持体14の当接面14b(図2図7乃至図9参照)が当接することで、支持体14のそれ以上の回転が規制される。これにより、簡易な部品で回転規制機構を実現できる。また、支持体14が把持部ワイヤ26,28,30,32と接触することが防止されるため、把持部ワイヤの耐久性を向上でき、ひいては鉗子装置10の製品寿命を延ばすことができる。
【0057】
このように、本実施の形態に係る回転規制機構は、支持体14とストッパ82とが直接接触することで、支持体と把持部ワイヤとの接触をより確実に防止できる。
【0058】
また、図7に示すように、支持体14の外縁部に形成されている当接面14bは、左右に回転していない中立位置(例えば図3に示す状態)においてベース部品18の中心軸Ax(図18に示す中心Zを通る軸)に対して傾斜している平面である。そして、支持体14は、中立位置からの回転角度が所定の制御範囲角度αを超えた当接角度β(α<β)でストッパ82に当接するように構成されている。これにより、支持体14の所定の制御範囲角度の回転は許容しつつ、当接角度βより大きな回転は防止されるため、ストッパ82によって支持体14の回転制御が妨げられることが抑止される。
【0059】
なお、当接角度βは、70°以上がよく、90°より大きくてもよい。これにより、支持体の回転を少なくとも70°まで制御することが可能となる。一方、当接角度βが大きすぎると、支持体14がストッパ82に当接する前に把持部ワイヤに接触する可能性がある。そこで、当接角度βは、支持体14が把持部ワイヤに接触する回転角度より小さければよい。具体的には、当接角度βは、110°より小さくてもよく、100°より小さくてもよい。
【0060】
なお、当接角度βがずれると、支持体14が把持部ワイヤと意図せず接触する可能性があるため、ストッパ82の位置決めが重要である。本実施の形態に係るストッパ82は、ベース部品18に対して位置決めされている。これにより、支持体14もストッパ82もベース部品18に対して所定の位置に設けられており、支持体14及びストッパ82の互いの相対位置の精度が向上する。
【0061】
本実施の形態における具体的な位置決めについて説明する。図19に示すように、ストッパ82の側面には貫通孔82bが形成されている。そして、図20に示すように、ベース部品18の一対のアーム18a,18bは、ストッパ82の貫通孔82bに挿入され貫通した位置決めピン84を保持している。これにより、ベース部品18の中心軸Ax方向に対するストッパ82の位置決めを精度良くできる。また、一対のアーム18a,18bで位置決めピン84を保持するため、アームの強度が増す。
【0062】
また、ベース部品18のアーム18a、18bの基部にある仕切り部18gには、ストッパ82の位置決めに用いられる複数の突起86a,86b,88が設けられている。突起86a,86bは、ストッパ82の対向する一対の側面82cに当接することで、中心軸Axと交差する方向Ayの位置決めを行うように形状や配置が設定されている。また、突起88は、ストッパ82の下部に形成されている溝82dに嵌まることで、中心軸Ax及び方向Ayと交差する方向Azの位置決めを行うように形状や配置が設定されている。これにより、ベース部品18の軸方向Axと交差する方向Ay,Azに対するストッパ82の位置決めを精度良くできる。
【0063】
また、図10図18に示すように、ストッパ82は、複数の把持部ワイヤ及び支持体ワイヤに囲まれた領域に配置されている。これにより、複数のワイヤに囲まれた領域がストッパ82で埋められるため、ストッパがない場合と比較して、異物が鉗子装置10の内部(ワイヤに囲まれた領域)に溜まることが抑制される。
【0064】
(各プーリの配置)
本実施の形態に係る鉗子装置10では、ワイヤの巻付け角度をある程度確保しつつワイヤの耐久性を向上するために、各プーリの配置を工夫している。具体的には、図14に示すように、ガイドプーリ34a,34bは、把持部12a,12bの先端が上を向いた状態で第1の回転軸16を軸方向から正面に見た場合に、ガイドプーリ20A,20Bの真下よりも一方の側(S2側)にずれて配置されている。また、ガイドプーリ34a,34bは、支持体14が左右に回転していない中立位置の場合に、ガイドプーリ20A,20Bへの把持部ワイヤ26,28の巻き付き角度γが65°以上になるように配置されている。
【0065】
これにより、把持部12a,12bを保持する支持体14の回転角度が少なくとも±65°の範囲で違和感のない操作制御が可能となる。なお、巻き付き角度γが89°以上であってもよい。これにより、把持部12a,12bを保持する支持体の回転角度が少なくとも±89°の範囲で違和感のない操作制御が可能となる。
【0066】
ガイドプーリ52aは、ガイドプーリ34a,34bより上流側に配置されており、把持部ワイヤ26が掛けられている。ガイドプーリ52aは、把持部12a,12bの先端が上を向いた状態で第1の回転軸16を軸方向から正面に見た場合に、ガイドプーリ20A,20Bの真下よりも一方の側(S2側)にずれて配置されており、かつ、ガイドプーリ34a,34bの真下よりも他方の側(S1側)にずれて配置されている。これにより、ガイドプーリ34aとガイドプーリ52aとの間に掛かる把持部ワイヤ26のS字カーブの曲率半径を大きくできる。また、把持部ワイヤ26のS字カーブの曲率半径を大きくすることで、把持部ワイヤ26に発生する曲げ応力が低下し、把持部12a,12bの開閉動作に伴う把持部ワイヤの耐久性が向上する。
【0067】
同様に、図15に示すように、ガイドプーリ34d,34cは、把持部12a,12bの先端が上を向いた状態で第1の回転軸16を軸方向から正面に見た場合に、ガイドプーリ20D,20Cの真下よりも一方の側(S1側)にずれて配置されている。また、ガイドプーリ34d,34cは、支持体14が左右に回転していない中立位置の場合に、ガイドプーリ20D,20Cへの把持部ワイヤ30,32の巻き付き角度γが65°以上になるように配置されている。
【0068】
ガイドプーリ52bは、ガイドプーリ34d,34cより上流側に配置されており、把持部ワイヤ30が掛けられている。ガイドプーリ52bは、把持部12a,12bの先端が上を向いた状態で第1の回転軸16を軸方向から正面に見た場合に、ガイドプーリ20D,20Cの真下よりも一方の側(S1側)にずれて配置されており、かつ、ガイドプーリ34d,34cの真下よりも他方の側(S2側)にずれて配置されている。これにより、ガイドプーリ34dとガイドプーリ52aとの間に掛かる把持部ワイヤ30のS字カーブの曲率半径を大きくできる。また、把持部ワイヤ30のS字カーブの曲率半径を大きくすることで、把持部ワイヤ30に発生する曲げ応力が低下し、把持部12a,12bの開閉動作に伴う把持部ワイヤの耐久性が向上する。
【0069】
なお、ガイドプーリ52a,52bは、図16に示すように、ベース部品18の内壁の両側にそれぞれ設けられている。また、ガイドプーリ52a,52bは、ベース部品18に保持された異なる支持軸54a,54bにそれぞれが回転可能に支持されている。これにより、ガイドプーリ52a及びガイドプーリ34a,34bを、ガイドプーリ20Aを正面から見て同じ側(本実施の形態では左側)に配置できる。同様に、ガイドプーリ52b及びガイドプーリ34c,34dを、ガイドプーリ20Dを正面から見て同じ側(本実施の形態では左側)に配置できる。
【0070】
なお、本実施の形態に係るベース部品18は、外径が7~9mmの筒状の部品である。また、ガイドプーリ20A~20Dは、直径が3.0~3.6mmであり、ガイドプーリ34a~34dは、直径が3.0~3.6mmであり、ガイドプーリ52a,52bは、直径が3.0~3.6mmである。これにより、外径が非常に細い鉗子装置において、適切な巻き付き角度を実現しながら、S字カーブの曲率半径を大きくできる。
【0071】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、手術用ロボットのマニピュレータに利用できる。
【符号の説明】
【0073】
10 鉗子装置、 12a 把持部、 12b 把持部、 14 支持体、 14a 貫通孔、 14b 当接面、 15 ベアリング、 16 第1の回転軸、 18 ベース部品、 18a アーム、 18b アーム、 18g 仕切り部、 20 ガイドプーリ、 22 第2の回転軸、 24 ジョープーリ、 26,28,30,32 把持部ワイヤ、 34 ガイドプーリ、 36 第3の回転軸、 52a,52b ガイドプーリ、 82 ストッパ、 82a 平坦面、 82b 貫通孔、 82c 側面、 82d 溝、 84 位置決めピン、 86a,86b 突起、 88 突起。
【要約】
鉗子装置は、把持部12a,12bを保持する支持体14と、支持体を回転可能に支持する第1の回転軸16と、把持部を動作させる駆動力を伝達する複数の把持部ワイヤ26,28,30,32と、第1の回転軸と同軸に配置されており、把持部ワイヤが掛けられているガイドプーリ20Aと、ガイドプーリ20Aより上流側に配置されており、把持部ワイヤが掛けられているガイドプーリ34aと、を備える。ガイドプーリ34aは、(i)把持部の先端が上を向いた状態で第1の回転軸を軸方向から正面に見た場合に、第1のガイドプーリの真下よりも一方の側にずれて配置されており、かつ、(ii)支持体が左右に回転していない中立位置の場合に、ガイドプーリ20Aへの把持部ワイヤの巻き付き角度γが65°以上になるように配置されている。
図1
図2
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図10
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