(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】フロー電池
(51)【国際特許分類】
H01M 8/18 20060101AFI20231124BHJP
H01M 8/2455 20160101ALI20231124BHJP
H01M 8/2465 20160101ALI20231124BHJP
H01M 8/2484 20160101ALI20231124BHJP
H01M 8/2485 20160101ALI20231124BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20231124BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20231124BHJP
H01M 8/04186 20160101ALI20231124BHJP
H01M 8/04014 20160101ALI20231124BHJP
H01M 8/04276 20160101ALI20231124BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/2455
H01M8/2465
H01M8/2484
H01M8/2485
H01M8/249
H01M8/04 H
H01M8/04 M
H01M8/04 N
H01M8/04014
H01M8/04276
(21)【出願番号】P 2023550244
(86)(22)【出願日】2023-05-17
(86)【国際出願番号】 JP2023018496
【審査請求日】2023-08-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514147491
【氏名又は名称】ineova株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135965
【氏名又は名称】高橋 要泰
(74)【代理人】
【識別番号】100100169
【氏名又は名称】大塩 剛
(72)【発明者】
【氏名】猪口 正幸
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-532261(JP,A)
【文献】特表2016-503943(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112310456(CN,A)
【文献】実開昭57-014369(JP,U)
【文献】特表平11-505997(JP,A)
【文献】特開昭61-296659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/18
H01M 8/04
H01M 12/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N個(Nは1以上の整数)のセルカートリッジと、
N個以上の取り付けスペースを有し、前記セルカートリッジを該取り付けスペースに相互間に隙間を設けて併置状態に物理的に着脱自在に取り付けられるバックプレーンとを備え、
前記セルカートリッジは、複数個の積層したセルを有する、フロー電池。
【請求項2】
請求項1に記載するフロー電池において、更に、
前記バックプレーンに、各々の前記セルカートリッジと接続する正極液往路チャネル、正極液復路チャネル、及び各接続箇所に設けられたカプラと、
負極液往路チャネル、負極液復路チャネル、及び各接続箇所に設けられたカプラとを備え、
前記バックプレーンに取り付けた前記セルカートリッジに対する正負電解液の流通が確保されている、フロー電池。
【請求項3】
請求項1に記載するフロー電池において、更に、
ラックフレームを備え、
前記ラックフレームに対して、複数段の前記バックプレーンが夫々取り付けられ、
前記ラックフレームに取り付けられた正負電解液往路連結パイプ及び正負電解液復路連結パイプと、各々の前記バックプレーンに取り付けられた正負電解液往路チャネル及び正負電解液復路チャネルとは、カプラを介して夫々接続されて、各々の前記バックプレーンに対する正負電解液の流通が確保されている、フロー電池。
【請求項4】
請求項2又は3に記載するフロー電池において、
前記カプラは、電解液漏洩防止機能付きカプラであり、電解液の漏洩なく、前記バックプレーン又は前記セルカートリッジの交換が可能である、フロー電池。
【請求項5】
請求項1又は2に記載するフロー電池において
、
前記セルは、構成部品として、両電極板、セパレータ及び片電極板の内、少なくとも両電極板及び/又は片電極板と、1個のセパレータとが積層されて成り、
前記セルカートリッジ構成部品の一部又は全部が相互に固着されている、フロー電池。
【請求項6】
請求項1又は2に記載するフロー電池において、更に、
前記セルカートリッジの相互間の隙間に送風して熱交換する熱交換部品を備えた、フロー電池。
【請求項7】
請求項1又は2に記載するフロー電池において、更に、
前記バックプレーンに、各々の前記セルカートリッジに対して、該カートリッジの負極にアノード、正極にカソードとなるように並列接続されたダイオード機能部品を備え、稼働時に故障したセルカートリッジを抜き去る時に該バックプレーンに過大な逆電圧がかからないようにした、フロー電池。
【請求項8】
請求項1又は2に記載するフロー電池において、更に、
前記バックプレーンに、
前記セルカートリッジを構成する各々のセルの電圧および正負極液の流量、温度、圧力或いは酸化還元電位の内、少なくとも一つを計測できるセンサが組み込まれている、フロー電池。
【請求項9】
請求項2に記載するフロー電池において、更に、
前記バックプレーンの前記正極液往路チャネル及び前記負極液往路チャネルに、電解液流量調整弁が夫々組み込まれている、フロー電池。
【請求項10】
請求項1又は2に記載するフロー電池において、更に、
RF基幹ユニットと複数の正極液タンク及び複数の負極液タンクとを備え、
RF基幹ユニットに対して、前記バックプレーンが複数段と往路チャネル及び復路チャネルが取り付けられ、
正極液往路チャネル及び正極液復路チャネルの1組に対して、1組以上の漏洩防止機能付きカプラと、負極液往路チャネル及び負極液復路チャネルの1組に対して、1組以上の漏洩防止機能付きカプラを取り付けることにより、該カプラを介して任意個の電解液タンクと配管を接続或いは離脱し、充放電対象とする電解液の増減及び交換を可能とした、フロー電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロー電池、典型的にはレドックスフロー電池(Redox Flow Battery、以下「RF電池」という。)に関する。
【背景技術】
【0002】
フロー電池に関して、以下、RF電池を例にとって、説明する。
太陽光・風力等の再生可能エネルギーの利用が推進されている。太陽光発電・風力発電の出力は、昼夜、天候、環境によって左右され変動するため、電力系統へ導入されると電力系統を乱す問題(電力品質の低下)が生じる。
【0003】
そこで、電力系統安定化対策の要素技術である電力貯蔵用電池(二次電池)として、RF電池が注目されている。RF電池は、他の二次電池と比較して、長寿命、大容量化、安全性等の面で優れた特長を有する。
【0004】
図1は、従来のRF電池の基本構造を説明する図である。基本的に、RF電池100は、中央に位置するセルスタック101と、その両側に設置された、正極液タンク102t及び正極液送液ポンプ102p並びに負極液タンク103t及び負極液送液ポンプ103pとで構成される。正極液送液ポンプ102pは、正極液タンク102tに貯められている正極液を実線で示すように配管を通じて循環させる。同様に、負極液送液ポンプ103pは、負極液タンク103tに貯められている負極液を破線で示すように配管を通じて循環させる。
【0005】
セルスタック101は、多数の電池セル104を積層したセルスタック構造である。各電池セル104は、2枚のセルフレーム104sfを含み、両側を両極板104bpで挟まれている。2枚のセルフレーム104sfの間に、負電極104ne、セパレータ104se、及び正電極104peが配置されている。積層された電池セル104は、両側を電極板108で挟まれ、更に両側をエンドプレート105で挟まれている。両側のエンドプレート105は、その周辺に沿って、締結部材(ボルトとナット)106により強く緊縛されている。各電池セルの2枚のセルフレーム104sfの間にはセルフレーム端部に沿ってシール材107が配置され、電解液(正極液,負極液)が漏洩しないようにシールされている。セルスタック構造は、多数の電池セル104がエンドプレート105と締結部材106により緊縛され一体化されている。
【0006】
このようなセルスタック構造は、電池セルの単純な積層構造であり、電池セルへ電界液を送り・戻す機構も比較的単純である。その結果、セルスタック構造のRF電池は、部品点数が比較的少なく、材料コスト、製造コスト等は比較的安価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO 2020/218418 A1「双極板、電池セル、セルスタック、及びレドックスフロー電池」
【文献】特開2020-087836「電池用の双極板、電池用の双極板の製造方法、及びレドックスフロー電池」
【文献】特開2022-526449「多孔質シリコン膜材料、その製造、及びそれを組み込んだ電子機器」
【文献】特開2002-015762「レドックスフロー電池」
【文献】特開2020-184406「レドックスフロー電池の運用方法、及びレドックスフロー電池」
【文献】WO 2019/087377「レドックスフロー電池」
【文献】特許第5585311「電池管理システム」
【文献】特許第5916819「電力エネルギーの輸送システム」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
セルスタック構造のRF電池は、前述の利点がある反面、次のような欠点も有する。
(1)エンドプレート、締結部材等は、比較的重いので、セルスタック全体の重量が非常に重くなる。
(2)締結ボルトは比較的長いので、経時変化、温度変化等により延びて、電池セル間のシール材の効果が失われ、電解液が漏れ出るリスクがある。
(3)電池セルが故障した場合、一体化されたセルスタック構造から、現場で、故障した電池セルを取り出して修理・交換することが困難である。
【0009】
本発明は、これらセルスタック構造の欠点を考慮し、これを改良したフロー電池、典型的にはRF電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るフロー電池は、一面において、N個(Nは1以上の整数)のセルカートリッジと、N個以上の取り付けスペースを有し、前記セルカートリッジを該取り付けスペースに相互間に隙間を設けて併置状態に物理的に着脱自在に取り付けられるバックプレーンとを備えている。
【0011】
上記フロー電池において、更に、前記バックプレーンに、各々の前記セルカートリッジと接続する正極液往路チャネル、正極液復路チャネル、及び各接続箇所に設けられたカプラと、負極液往路チャネル、負極液復路チャネル、及び各接続箇所に設けられたカプラとを備え、前記バックプレーンに取り付けた前記セルカートリッジに対する正負電解液の流通が確保されていてもよい。
【0012】
上記フロー電池において、更に、ラックフレームを備え、前記ラックフレームに対して、複数段の前記バックプレーンが夫々取り付けられ、前記ラックフレームに取り付けられた正負電解液往路連結パイプ及び正負電解液復路連結パイプと、各々の前記バックプレーンに取り付けられた正負電解液往路チャネル及び正負電解液復路チャネルとは、カプラを介して夫々接続されて、各々の前記バックプレーンに対する正負電解液の流通が確保されていてもよい。
【0013】
上記フロー電池において、前記カプラは、電解液漏洩防止機能付きカプラであり、電解液の漏洩なく、前記バックプレーン又は前記セルカートリッジの交換が可能であってよい。
【0014】
上記フロー電池において、前記セルカートリッジは、任意所望の個数の積層したセルを有し、前記セルは、構成部品として、両電極板、セパレータ及び片電極板の内、少なくとも両電極板及び/又は片電極板と、1個のセパレータとが積層されて成り、前記セルカートリッジ構成部品の一部又は全部が相互に固着されていてもよい。
【0015】
上記フロー電池において、更に、前記複数個のセルカートリッジの相互間の隙間に送風して熱交換する熱交換部品を備えていてもよい。
【0016】
上記フロー電池において、更に、前記バックプレーンに、各々の前記セルカートリッジに対して、該カートリッジの負極にアノード、正極にカソードとなるように並列接続されたダイオード機能部品を備え、稼働時に故障したセルカートリッジを抜き去る時に該バックプレーンに過大な逆電圧がかからないようにしてもよい。
【0017】
上記フロー電池において、更に、前記バックプレーンに、前記セルカートリッジを構成する各々のセルの電圧を計測できるセンサが組み込まれていてもよい。
【0018】
上記フロー電池において、更に、前記バックプレーンに、セルカートリッジを構成する各々のセルの電圧および正負極液の流量、温度、圧力或いは酸化還元電位の内、少なくとも一つを計測できるセンサが組み込まれていてもよい。
【0019】
上記フロー電池において、更に、前記バックプレーンの前記正極液往路チャネル及び前記負極液往路チャネルに、電解液流量調整弁が夫々組み込まれていてもよい。
【0020】
上記フロー電池において、更に、RF基幹ユニットと複数の正極液タンク及び複数の負極液タンクとを備え、RF基幹ユニットに対して、前記バックプレーンが複数段と往路チャネル及び復路チャネルが取り付けられ、正極液往路チャネル及び正極液復路チャネルの1組に対して、1組以上の漏洩防止機能付きカプラと、負極液往路チャネル及び負極液復路チャネルの1組に対して、1組以上の漏洩防止機能付きカプラを取り付けることにより、該カプラを介して任意個の電解液タンクと配管を接続或いは離脱し、充放電対象とする電解液の増減及び充電後の電解液と放電後の電解液との交換を可能としてもよい。
【0021】
本発明に係るフロー電池は、一面において、電池部は、任意個のセルを有するスタックを備え、該セルは、構成部品として、両電極板、セパレータ及び片電極板の内、少なくとも両電極板及び/又は片電極板と、1個のセパレータとが適宜積層され、両電極板又は片電極板は固着(接着又は溶着)されて一体化されている、もしくは、隣接する該構成部品は、相互に固着(接着又は溶着)されて一体化されている。
【0022】
上記フロー電池において、スタックは、隣接するセルが相互に固着(接着又は溶着)されて一体化されていてもよい。
【0023】
上記フロー電池において、前記セルは、セルスタック構造の電池セル及び前記セルカートリッジ-バックプレーン構造のセル電池のいずれに適用してもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、セルスタック構造の欠点を補い、これを改良したフロー電池、典型的にはRF電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、従来のRF電池の基本構造を説明する図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るRF電池を構成するセルカートリッジ・モジュールの例を示す。
【
図3】
図3は、セルカートリッジ・モジュールを上下に4段、ラックフレームに取り付けた図である。
【
図6】
図6は、片電極板と両電極板によりセルカートリッジを作成した例である。
【
図7】
図7は、導電不透過シートにより実現した両電極板の構成例を示す。
【
図9】
図9は、バックプレーンとセルカートリッジの電気関連の構造と配線図を示す。
【
図10】
図10は、カートリッジ・モジュールにモジュールの管理や制御に必要な機能をバックプレーンへ組込んだ例を示す図である。
【
図11】
図11は、バックプレーンへ組込まれたマルチセンス制御通信基板のブロック図である。
【
図12】
図12は、RF電池において、負極液タンク及び正極液タンクを分離可能なシステムの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係るフロー電池の実施形態を、RF電池を例にとって、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図面において、同じ要素に対しては同じ参照符号を付して、重複した説明を省略する。
【0027】
[第1実施形態]
図2は、第1実施形態に係るRF電池10(
図5A参照)を構成するセルカートリッジ・モジュール12の例を示す。(a)はセルカートリッジ・モジュールの正面図であり、(b)はそのA-A断面図である。
【0028】
第1実施形態に係るRF電池10は、実装形態に関して、
図1に示すRF電池のセルスタック101のスタック構造に代えてセルカートリッジ-バックプレーン構造(セルカートリッジ・モジュール12の構造)を採用している。各セルカートリッジ11は、相互に隙間を空けて実装されている。
【0029】
以下に、セルカートリッジ-バックプレーン構造を実現したセルカートリッジ・モジュールの構造と、セルカートリッジの詳細な構造、及びセルカートリッジ・モジュールにより実現したRF電池全体の構成とについて説明する。
【0030】
(セルカートリッジ・モジュールの構造)
図2の(a)の正面図に示すように、セルカートリッジ・モジュール12には、3個のセルカートリッジ11が、カートリッジ固定ボルト151を用いてバックプレーン13に取り付けられている。バックプレーン13は、バックプレーン固定ボルト152を用いて水平角パイプ14に対して取り付けられている。水平角パイプ14は、予めラックフレーム15(
図3参照)へ固定されている。バックプレーン13に取り付けるセルカートリッジ11の個数は、
図2では3個であるが、任意所望の個数であってよい。バックプレーン13の取り付けエリアは、実際のセルカートリッジ11の個数以上用意されていてもよい。
【0031】
各セルカートリッジ11には、電解液が流入する入口と出口に電解液カプラ33,34が夫々に設けられている。各セルカートリッジ11の内部を通過する電解液は、正極用ルートと負極用ルートとは分離されている。そのため、正極用ルートの要素には参照符号に「p」を付し、負極用ルートの要素には「n」を付して区別する。
【0032】
タンク36t(
図5A参照)から供給された正極液(実線で示す。)は、正極液往路チャネル17pからセルカートリッジ単位で設けられた電解液カプラ33pで分流され、セルカートリッジを構成するセルの正電極1045へ供給される。正電極1045で反応した電解液は、電解液カプラ34pから正極液復路チャネル19pで合流し、タンク36tへ還流される。負極液(破線で示す。)も同様である。
【0033】
電解液カプラ33pには、セルカートリッジ11側に凸型の挿抜カプラ(以下、「プラグ」という。)331pが設けられており、バックプレーン側に凹型の受けカプラ(以下、「ソケット」という)332pが設けられている。プラグとソケットは、Oリング333pを介して接続している。電解液カプラ34pの(プラグ、ソケット、及びOリングの)機構も同様である。プラグ331pとソケット332pの機構により挿抜が可能である。負極用ルートの電解液カプラ33n及び電解液カプラ34nの機構も同様である。
【0034】
セルカートリッジ11は、電解液カプラを介してバックプレーン側と接続されている。電解液カプラを液漏れ防止機能付きカプラにすると、運転中にセルカートリッジ11をバックプレーンに取り付け・取り外ししても電解液の漏洩は生じない。このような電解液カプラの液漏れ防止機構に関しては、
図8A及び
図8Bを参照しながら、詳細に説明する。
【0035】
図1に示す一体化セルスタック構造と比較して、
図2に示すセルカートリッジ・モジュール12は、セルカートリッジ間に隙間(好ましくは、1~50mmの空間)があり、バックプレーン13への取り付け・取り外しが可能である。この結果、セルカートリッジ11は、セルカートリッジ単位で取り扱いが可能となる。即ち、セルカートリッジ単位は小型・軽量であるため、運搬、設置、交換、保守等が容易になる。更に、各セルカートリッジ11で発生する熱は、相互間の隙間を利用して強制空冷により外部へ効率よく放出することができる。必要に応じて、この隙間に温風を送り、各セルカートリッジ11を加温することもできる。
【0036】
図3は、セルカートリッジ・モジュール12を上下に4段、ラックフレーム15に取り付けた図である。(a)は正面パネルを取り外した状態の正面図であり、(b)はA-A断面図である。
【0037】
ラックフレーム15の上段に、冷却用ファン22が設置されている。また、ラックフレーム15に対して、予め、上下2本の水平角パイプ14が4組取り付けられており、4組のセルカートリッジ・モジュール12を固定することができる。
【0038】
(b)に示す記号は、次の通りである。PF:往路正極液、PR:復路正極液、NF:往路負極液、NR:復路負極液。
【0039】
ラックフレーム下部の正極液往路連結パイプ18pからの正極液PFは、4つのセルカートリッジ・モジュール12の正極液往路チャネル17pへ分流する。セルカートリッジ・モジュールの正極液復路チャネル19pからの正極液PRは、一つに纏められてラックフレーム上部の正極液復路連結パイプ20pへ合流する。負極液も同様に、負極液往路連結パイプ18nからの負極液NFは、各セルカートリッジ・モジュールの負極液往路チャネル17nへ分流し、セルカートリッジ・モジュールの負極液復路チャネル19nからの負極液NRは、負極液復路連結パイプ20nへ合流する。
【0040】
上記ラックフレームは、連結して、コンテナ等大型の筐体にも容易に設置することができる。
【0041】
(セルカートリッジの詳細な構造)
図4は、セルカートリッジ11を示す図である。ここで、(a)はセルカートリッジ11の正面図、(b)は左側面図、(c)はA-A断面図である。
【0042】
セルカートリッジ11は、任意の個数のセル28を積層して構成することができる。図示の例では、(b)に示すように、2個のセル28から構成されている。このセルカートリッジ11は、1つの両電極板121を挟んで2枚のセパレータ122と2枚の片電極板123とで構成され、締結部材(絶縁ブッシュ124と締結ネジ125)で緊縛されている。一般に、セルカートリッジ11は、任意の個数Nのセルを積層することができ、この場合、N-1個の両電極板、N枚のセパレータ、2枚の片電極板とで構成される。
【0043】
セルカートリッジ11には、(a)及び(b)に示すように、セル本体の上下に2個の電解液カプラ33,34が備えられている。下の電解液カプラ33は、バックプレーン13の正極液往路チャネル17pと負極液往路チャネル17nとに結合する突起部(プラグ)を備えており、上の電解液カプラ34は、バックプレーン13の正極液復路チャネル19pと負極液復路チャネル19nとに結合する突起部(プラグ)を備えており、セルカートリッジをバックプレーンに取り付けることにより、電解液の流通が確保される。
【0044】
(a),(b)に示すように、往路チャネル17p/17nから送られた正極液/負極液は、下の電解液カプラ33へ供給され、セルカートリッジに搭載されているセルの正電極/負電極に分流され、夫々正電極/負電極を通り、上の電解液カプラ34で合流して、復路チャネル19p/19nへ排出される。セルカートリッジ11は、電解液カプラ33,34により、バックプレーンへの取り付け・取り外しが可能になる。
【0045】
(RF電池全体の構成)
図5A及び
図5Bは、本実施形態に係るRF電池の全体図である。
図5Aは電池部である。
図5Bの(a)は制御部であり、(b)は電力変換部である。
【0046】
図5Aに示すように、負極液タンク35t内の負極液は、負極液ポンプ35pにより送出され、往路配管35fを通過してカートリッジ・モジュール12に供給され、セルカートリッジ11内を経由して復路配管35rを通過してタンク35tへ戻される。同様に、正極液タンク36t内の正極液は、正極液ポンプ36pにより送出され、往路配管36fを通過してカートリッジ・モジュール12に供給され、セルカートリッジ11内を経由して復路配管36rを通過してタンク36tへ戻される。
【0047】
図5Bの(a)の制御部は、RF電池の動作を制御するシステムコントローラ40により構成されている。(b)の電力変換部は、電池部の出力を系統(交流100Vあるいは200V)へ変換するインバータ(直流→交流変換器)41と系統から電池を充電する充電器(交流→直流変換器)42で構成されている。
【0048】
システムコントローラ40は、デマンドに応じて、電力系統からRF電池へ充電したり、RF電池から電力系統へ電力を供給したりできるように、インバータ41及び充電器42を制御する。このような制御は、電力系統電力の平準化や無停電電源などに応用することができる。
【0049】
この他に、システムコントローラ40は、各信号を監視し、種々の制御を行う。例えば、充電・放電の際は、各セルが、過電流、過充電状態、又は過放電状態にならないように、充電器42若しくはインバータ41を制御する。入力監視信号としては、各電池セルの電圧(v0~vN)401、正極液レベル計値402、正極液酸化還元電位計値403、負極液レベル計値404、負極液酸化還元電位計値405、正極液温度計値406、負極液温度計値407等がある。出力制御信号としては、正極液ポンプ制御出力408、負極液ポンプ制御出力409、冷却ファン回転制御出力410、インバータ制御出力411、充電器制御出力412、アラーム発信出力413等がある。
【0050】
第1実施形態係るRF電池で説明した技術的事項は、第2実施形態以降においても共通する技術的事項である。
【0051】
[第2実施形態]
(構成)
第2実施形態では、セルカートリッジ11の具体例を説明する。
図6は、片電極板と両電極板により構成したセルカートリッジ11である。(a)に片電極板123と、(b)に両電極板121の構成、及び(c)に組み立てたセルカートリッジ11を示す。ここでは、電解液カプラ33,34は図示を省略している。
【0052】
(a)に示すように、片電極板123は、フランジの付いた導電板1231、導電シール材1232、高耐薬品性の導電接着剤1233、反応電極材1234、及び樹脂枠板1235から構成されている。
【0053】
導電板1231は、導電率が高い金属(銅、アルミニウム等)から形成される。導電シール材1232は、電解液を通さず耐薬品性の高い導電性の高い材料(カーボンシート等)から形成される。反応電極材1234は、炭素繊維でできたフェルト、布等が用いられる。樹脂枠板1235は、耐薬品性の高い樹脂(塩化ビニール、ポリエチレン、ポリプロピレン等)が用いられる。樹脂枠板1235は、図示するように反応電極材が入る部分がくり抜かれた額縁状の形状をしており、上部に電解液復路溝1217、下部に電解液往路溝1216が形成されている。導電シール材1232、反応電極材1234及び樹脂枠板1235は、圧接され導電接着剤1233により接着されている。
【0054】
(b)に示すように、両電極板121は、導電板1211を中央に、導電シール材1212、高耐薬品性の導電接着剤1213、反応電極材1234及び樹脂枠板1215から構成されている。夫々の材料は前記と同じであるが、樹脂枠板1215は、片電極の樹脂枠板1235に加えて、図示するようにOリング溝1236が掘られている。片電極板123同様に、両電極板121において、導電シール材1212、反応電極材1234及び樹脂枠板1215は、圧接され導電接着剤1213により接着されている。
【0055】
(c)に示すように、セルカートリッジ11の構成は、1枚の両電極板121、2枚の片電極板123、2枚のセパレータ122及び2個のOリング126で構成され、締結ネジ127、絶縁ブッシュ128、ワッシャ129及びナット130により緊縛される。セパレータ122には、典型的にはイオン透過膜が使用される。
【0056】
(動作)
セルカートリッジ11を構成する片電極板123と両電極板121の間はOリング126によりシールされている。このため、電解液往路口1216から供給された電解液は、セル28の外部へ漏洩することなく、全てが電解液復路口1217から排出される。セルカートリッジ11は、比較的少ない数のセル28で緊縛されているため、経時変化や温度変化によるネジの緩みや伸びの影響が少なく、それ故にセルから電解液が漏洩するリスクを低減することができる。
【0057】
また、従来は、反応電極材と導電シール材及び導電板を低接触抵抗で面接続するために緊縛する方法が用いられていた。しかし、本実施形態では、これらが低抵抗の高耐薬品性導電接着剤を用いて加圧接着されているため、セル28を強い圧力で緊縛する必要がない。片電極板123は、金属製導電板により支持されているため、セルカートリッジ11は電解液の圧力変動や振動などに対して十分な強度を維持することができる。
【0058】
また、図示していないが、導電板1231には、熱交換効率を高めるために、フィンを設けることができる。
【0059】
[第3実施形態]
(構成)
第3実施形態では、セルカートリッジ11の他の具体例を説明する。
図7は、導電不透過シート431により実現した両電極板43の構成例を示す。(a)は両電極板43の外観図であり、(b)は両電極板43の構成図、(c)は両電極板43によるセルカートリッジの作成例である。(b)に図示するように、両電極板43は、導電不透過シート431、2枚の反応電極材433及び2枚の樹脂枠シート432で構成されている。図示していないが、片電極板は、導電不透過シート431、1枚の反応電極材433及び1枚の樹脂枠シート432で容易に構成することができる。(c)のセルカートリッジ11は、両電極板43の間にセパレータを挟んで積層し、樹脂枠シート間はボンドや溶着等により接着されている。図示の例では、セルカートリッジ11は、両電極板43のみで実現されている。
【0060】
(動作)
図7の(a)に示した両電極板43は、導電不透過シート431を用いて、(b)に示す構成により実現できる。導電不透過シート431は、高い導電性を維持しつつ電解液の透過を防止し機械的な強度を持つシートである。例えば、導電不透過シートは、シート状に加工された低抵抗のCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)で作成することができる。
【0061】
CFRPの樹脂には、低抵抗とするため、良導電性のフィラーを混練りした高耐薬品樹脂を使用することが望ましい。また、CFRPシートの反応電極接合部は、電解液の流れを良くするために波板形状、穴あきパイプ形状、穴あきダンボール形状等の任意の形状としてもよい。
【0062】
導電不透過シート431を使用することにより、反応電極間の接合抵抗を低く抑え、長期間電解液に対する耐腐蝕性を有する両電極板や片電極板を作成することができる。
【0063】
本実施形態によれば、両電極板は、
図6の(b)で示した両電極板121より更に簡単な構成となり、部品数を削減でき、樹脂枠板をシート状にできるため軽量化することができる。また、導電不透過シート作成時に同時に反応電極を接着することができるため、製造工程を簡略化することができる。更に、樹脂枠シートの周囲を接着することにより、
図6の(b)で使用していたOリングやネジ類を削除することができる。
【0064】
[第4実施形態]
(構成)
電解液カプラ33,34において、セルカートリッジ11のプラグとバックプレーン13のソケットを、漏洩防止バルブ付き電解液カプラを介して接続することにより、電解液の漏洩なしで、セルカートリッジ11をバックプレーン13へ挿抜できる構造とすることができる。(
図2参照)
図8A及び
図8Bは、漏洩防止バルブ付き電解液カプラの一例を示す図である。バックプレーン側にソケット441を組み込み、セルカートリッジ側にプラグ442を組み込んでいる。
【0065】
(動作)
図8A及び
図8Bを参照しながら、漏洩防止バルブ付き電解液カプラの機能を説明する。ここでは、電解液の流れを太い線で表す。また、太い線の先端の黒丸は、電解液の流れを堰き止められている状態を表す。
【0066】
図8の(a)は、セルカートリッジ12を挿入する前の状態である。ソケット441及びプラグ442の両者のコイルスプリング443,444の押圧力により、往路チャネル内の電解液及びセルカートリッジ内の電解液は、いずれも漏洩防止Oリング126で堰き止められており、漏洩することはない。セルカートリッジを図の矢印の方向にバックプレーン13へ押し込む過程で、(b)に示すように、未だ両者の中央部にあるロッド(突起部)441p,442pが接触する前までは、(a)と同様に電解液は漏洩することはない。
(c)に示すように、セルカートリッジ11のプラグ442の突起部442pがチャネルの漏洩防止バルブの突起部441pに接触するが両本体部は離れている場合は、プラグもしくはソケットのOリング126が開く(図はプラグ442のOリング126が開いた状態)が、結合シール用Oリング127により漏洩が阻止されている。
【0067】
(d)に示すように、両本体部が接触するまで挿入された場合、挿入力が両者のコイルスプリング443,444の押圧力に打ち勝ち、プラグ442とソケット441の両方のOリング126が開くため、往路チャネル内の電解液はセルカートリッジへ送出される。
【0068】
反対に、セルカートリッジをバックプレーン13から引き抜く場合、逆に、(d)→(c)→(b)→(a)の順に作動する。この時も、電解液が漏洩することは無い。
【0069】
この電解液カプラの機構を備えたセルカートリッジ・モジュールでは、セルカートリッジは、電解液が循環中であっても、電解液の漏出なくバックプレーン13へ挿抜することが可能となる。
【0070】
[第5実施形態]
(構成)
第4実施形態で、稼働中のRF電池であっても、セルカートリッジ11は、バックプレーン13へ挿抜することが可能であると説明した。
【0071】
図9は、バックプレーン13とセルカートリッジ11の電気関連の構造と配線図を示す。バックプレーン13には、3個のセルカートリッジ11-1,11-2,11-3を取り付けることができる。バックプレーン13は、(a)の左側面図に示すように、ベース板46の上に絶縁板45が取り付けられ、絶縁板45の上に電極連結板(銅板)47が取り付けられている。V0~V6はバックプレーン上の端子パターンであり、V0,V2,V4,V6は電極連結板47に接続されている。更に、V0~V6の各電位は、電圧計測通信基板49を介して、システムコントローラ40に送られる。
【0072】
この例では、(b)の正面図に示すように、電極連結板47は、カートリッジ11を直列に接続するように配置されている。なお、電極連結板47による配線は、並列に配線してもよい。バックプレーン13の外側の電極連結板47には、モジュール連結用の電極連結ネジ穴471が設けられており、カートリッジ・モジュールを直列/並列接続するためのケーブルをネジ留めするために使用される。
【0073】
また、絶縁板45の上には板バネコンタクト48が取り付けられており、セルカートリッジ11がバックプレーン13に取り付けられ、カートリッジ固定ボルト(ネジ穴472)で締め付けられると、板バネコンタクト48がセルカートリッジの両電極板の、
図6の(b)の導電板1211や
図7の(b)の導電不透過シート431と接触し、電極の電位を検出できる構造となっている。
【0074】
図示するように、バックプレーン13には、V0-V2,V2-V4,V4-V6の間に、D1,D2,D3のダイオードが夫々接続されている。
【0075】
(動作)
セルカートリッジ11をバックプレーン13に差し込み、導電板フランジをカートリッジ固定ボルト151でバックプレーン13のカートリッジ固定穴472へ締結すると、セルカートリッジ11の片電極板の導電板1231が電極連結板47と結合され、板バネコンタクト48がセルカートリッジの両電極板の導電板1211又は導電不透過シート431と接触する。これにより、カートリッジ・モジュールに搭載されたセルカートリッジ1~3を構成する全てのセルの端子をバックプレーン上のV0~V6端子パターンへ接続し、セルカートリッジ1~3を直列に接続することができる。
【0076】
ダイオードD1~D3は、各セルに並列に設置されている。ここでは、全てのカートリッジの図の左側が負、右側が正となるように電解液が満たされているとすると、夫々のカートリッジにおいて、セルの負極がダイオードのアノードに、セルの正極がダイオードのカソードに接続される。この状態では、ダイオードには逆電圧が印加されるため、電流は極僅かな漏洩電流しか流れない。
【0077】
稼働中に、故障した1個のセルカートリッジを引き抜いた場合、ダイオードが無い場合には、それに対応するバックプレーン端子に過大な逆電圧がかかるおそれがある。D1~D3があると、このような逆電圧がかかった場合、ダイオードには順方向電流が流れるため、数V程度しか端子間にかからない。これにより、セルカートリッジの挿抜が、安全に行える。但し、大型セルでは、稼働中に挿抜すると数百Aの電流が流れ火花の発生、端子の溶着若しくはダイオードの破壊を生じる可能性がある。セルの発電が停止した状態で挿抜することが望ましい。ダイオードの特性改善のために理想ダイオードを使用することもできる。
【0078】
[第6実施形態]
第6実施形態は、更に、稼働中のRF電池の稼働を適切に維持し、安全性を高める例を説明する図である。
【0079】
(構成)
図10は、RF電池10にモジュールの管理や制御に必要な機能をバックプレーン13へ組込んだ例を示す。この例では、電解液の管理をするための制御器として、正極/負極毎に電解液流量調節弁53,54、電解液流量計55,56、電解液圧力計57,58、電解液温度計59,61が設置されている。これらの計測・制御を行うため、マルチセンス制御通信基板51が設置されている。
【0080】
また、製造やメンテナンスの作業性を高めるため、電解液の往路/復路の接続箇所に接続ニップル(雄ネジと雌ネジ切りがしてある一対の接続継手)或いはカプラ60が取り付けられている。接続ニップル/カプラ60からホース等により、
図3のように、ラックの電解液往路/復路連結パイプ18p,18n/20p,20nへ接続される。
【0081】
(動作)
図11は、バックプレーン13へ組込まれたマルチセンス制御通信基板のブロック図である。マルチセンス制御通信基板51は、マイクロプロセッサ52により、バックプレーン内の全てのセル電圧及び上記センサの信号を読み取る機能と、正極/負極液流量調整弁を制御する機能と、絶縁された通信回路54により上位のホストコンピュータと通信を行う機能とを備えている。
【0082】
マイクロプロセッサ52に対する入力信号としては、各電池セルの電圧(v0~vN)521、正極液圧力計値522、正極液流量計値523、正極液温度計値524、負極液圧力計値525、負極液流量計値526、負極液温度計値527、電源532から絶縁電源529を介しての駆動電源528等がある。出力信号としては、正極液流量調整弁制御出力530、負極液流量調整弁制御出力531等がある。これにより、マイクロプロセッサ52は、電池セル内の負極/正極液流量を適切に維持し、負極、正極の電解液の圧力を計測・管理し、電解液の温度を一定となるように制御している。また、故障したセルカートリッジの交換に当たっては、正極/負極液流量調整弁53,54を閉じることにより、モジュール全体を停止させることができるので、セルカートリッジを安全に交換することが可能となる。
【0083】
このマイクロプロセッサ52は、バックプレーン単位の管理・制御を行い、上位のホストコンピュータは、複数のバックプレーンの管理・制御を行う。
【0084】
[第7実施形態]
(構成)
図12は、RF電池10において、RF基幹ユニット62を用いて、RF基幹ユニット62から負極液タンク35t及び正極液タンク36tを分離可能としたシステムの例を示す。RF基幹ユニット62は、複数のカートリッジ・モジュール若しくは複数のラックフレーム、送液ポンプ、配管等で構成されており、電気エネルギーと化学エネルギーを相互に変換する機能を持つユニットである。
【0085】
RF基幹ユニット62と、負極液タンク35t及び正極液タンク36tとは、夫々、正電解液及び負電解液の1組又は2組以上の漏洩防止バルブ付きカプラ44(
図8A及び
図8B参照)で着脱自在に接続されている。更に、異常時に電解液の流出を防止するための遮断バルブ50を設置してもよい。2組以上の漏洩防止バルブ付きカプラを設けることにより、稼働中であっても、充放電動作を止めずに電解液タンクを交換することができる。
【0086】
RF基幹ユニット62から、負極液タンク35t及び正極液タンク36tを分離できる構造とすることにより、電解液の交換や輸送、電解液容量の増減が可能になる。また、RF基幹ユニット62の増減により入出力電力の変更も容易になる。
【0087】
従来は、RF電池は、予め決まった電力出力(W)と最大蓄電容量(Wh)のシステムしか構築できなかった。しかし、本実施形態では、RF基幹ユニット機構により、需要に応じて出力と蓄電容量を適宜増減したり、システム間で融通したり、システム全体を止めずに保守したりすることが可能となった。多数のRF基幹ユニット62及び多数のタンク35t,36tを駐機することにより、巨大な容量の電池へ拡張することも容易である。
【0088】
[本実施形態の利点・効果]
本実施形態に係るセルカートリッジ-バックプレーン構造及びRF基幹ユニット機構のRF電池によれば、設計、設置、保守、交換等の作業がセルカートリッジ、カートリッジ・モジュール、RF基幹ユニット、電解液タンク単位で行うことができるため、以下のような利点・効果が期待できる。
【0089】
(1)セルカートリッジ構造により、従来のスタック構造よりも、軽量化、部品削減、製造工程削減が実現でき、この結果ライフサイクルにおける下記効果が期待できる。
(a)設計時において、RF電池の所望の電力条件(出力電圧、出力電力、蓄電容量等)を満たすため、必要なセルカートリッジの台数やカートリッジ・モジュールの数、RF基幹ユニット及び電解液の量や電解液タンクの数量を容易に決定できる。
(b)製造時において、セルカートリッジは規格化できるため、大量生産及び自動化により製造コストを削減することができる。また、大規模なRF電池であっても、RF基幹ユニットや電解液タンクのプレファブリケーションにより、コスト削減、工期短縮が可能である。
(c)検査工程において、セルカートリッジ単位での試験や評価を容易に実施でき、従来生じていたスタック不良時の大きな出戻り(分解、改修、組立、再検査)を回避できる。
(d)設置時において、カートリッジ・モジュール単位での設置が可能であり、狭小スペースへの設置も容易である。
(e)保守部品としてセルカートリッジをストックしておくことにより、故障時に迅速にセルカートリッジの交換が可能となる。
【0090】
(2)複数組の漏洩防止バルブ付きカプラが付いたRF基幹ユニットによれば、稼働中に於いて電解液タンクの交換、電解液タンクの増減、輸送等が容易となる。
【0091】
[変形例・その他]
本実施形態に係るRF電池は、各種のレドックスフロー電池だけでなく、スタック形態のセルを備える装置(例えば、燃料電池や電気分解素子)にも適用可能である。
【0092】
例えば、スタック形態のセルを備える装置において、スタックは、任意の個数のセルを備え、前記セルは、構成部品として、両電極板、セパレータ、及び片電極板を有し、隣接する該構成部品は、一部又は全部が相互に固着(接着又は溶着)されて一体化されている装置に適用できる。更に、セル間は、固着(接着又は溶着)されていても良い。
【0093】
また、正極液、負極液の片方しか使用しない、フロー電池にも適用することができる。
【0094】
当業者が容易になし得る本実施形態に関する追加・削除・変更・改良は、本発明の範囲内である。本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の範囲の記載によって定められる。
【符号の説明】
【0095】
10:RF電池、 11:セルカートリッジ、 12:セルカートリッジ・モジュール、 13:バックプレーン、 15:ラックフレーム、 33、34:電解液カプラ、 40:システムコントローラ、 41:インバータ、 42:充電器、 44:漏洩防止カプラ、 62:基幹ユニット、 100:RF電池、 101:セルスタック、 104:各電池セル、 121:両電極板、 122:セパレータ、 123:片電極板、 124:絶縁ブッシュ、 125:締結ネジ、 126:Oリング、 127:締結ネジ、 431:導電不透過シート、 432:樹脂枠シート、 433:反応電極材、 441:ソケット、 442:プラグ、 1211:導電板、 1212:導電シール材、 1213:導電接着剤、 1215:樹脂枠板、 1216:電解液往路口/往路溝、 1217:電解液復路口/復路溝、 1231:導電板、 1232:導電シール材、 1233:導電接着剤、 1234:反応電極材、 1235:樹脂枠板、 1236:Oリング溝
【要約】
【課題】本発明は、従来のセルスタック構造の欠点を考慮し、これを改良したフロー電池、典型的にはRF電池を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るフロー電池は、セルスタックを複数個の挿抜可能なセルカートリッジで構築するものであり、セルカートリッジは複数個のセルで構成され、各セルは小さな緊縛力により、電極間が低抵抗で接続され、かつ、電解液の漏洩が防止されている。また、本発明に係るフロー電池は、複数個の前記セルカートリッジと、前記複数個のセルカートリッジを相互間に隙間を設けて併置状態に物理的に挿抜自在に取り付けたバックプレーンを備えており、前記バックプレーンを複数個実装したラックやユニットを備え、着脱自在の電解液タンクを備えることにより、フロー電池の出力及び容量をデマンドに応じて自在に設計、変更可能とする。
【選択図】
図2