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特許7390118フィルム貼付装置、及びフィルム貼付方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】フィルム貼付装置、及びフィルム貼付方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/04 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
B29C63/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019102319
(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2020196154
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-05-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】藤野 隆由
(72)【発明者】
【氏名】太期 康之
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第99/17327(WO,A1)
【文献】特開2000-353472(JP,A)
【文献】特開昭55-77570(JP,A)
【文献】特開2001-40296(JP,A)
【文献】実開平7-19261(JP,U)
【文献】特開2010-217297(JP,A)
【文献】登録実用新案第3220260(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に対してフィルムを貼り付けるフィルム貼付装置であって、
上下方向と交差する第1の方向へ延びて、前記車両の上方に配置された前記フィルムを上側から押圧し、前記第1の方向及び前記上下方向と交差する第2の方向へ移動する第1のローラと、
前記第1の方向へ延びて、前記車両の上方に配置された前記フィルムを上側から押圧し、前記第2の方向へ移動する第2のローラと、を備え、
前記第2のローラは、前記第1のローラに対し、前記第2の方向における進行方向の上流側及び下流側の少なくとも一方に配置され、前記第1の方向における内側から外側へ進むに従って外周側に広がる第1の傾斜部と前記第1の方向における外側から内側へ進むに従って外周側に広がる第2の傾斜部とを備える拡径部によって、前記車両において部分的に凹凸形状が形成された箇所に対して前記フィルムを貼り付ける、フィルム貼付装置。
【請求項2】
前記第2のローラは、前記第1の方向に沿って硬さが異なる部分を含む、請求項1に記載のフィルム貼付装置。
【請求項3】
前記第2のローラのうち、前記硬さが異なる部分は、前記車両の凹凸形状の不連続部位に対応する箇所に形成され、その他の箇所の少なくとも一部より硬い、請求項2に記載のフィルム貼付装置。
【請求項4】
前記車両は凹凸形状を有し、前記凹凸形状の不連続部位に対応する前記第2のローラの箇所が、前記第1のローラよりも硬い、請求項1~3の何れか一項に記載のフィルム貼付装置。
【請求項5】
前記第2のローラは、前記上下方向について、前記第1のローラとの相対位置を変更可能である、請求項1~4の何れか一項に記載のフィルム貼付装置。
【請求項6】
前記第2のローラは、前記第1の方向に複数設けられる、請求項1~5の何れか一項に記載のフィルム貼付装置
【請求項7】
前記第2のローラは、径方向に互いに異なる材料によって形成される第1の層、及び外周側の第2の層を有する、請求項1~の何れか一項に記載のフィルム貼付装置。
【請求項8】
前記第2のローラの前記第1の層は、前記第1の方向における位置によって厚みが異なる、請求項に記載のフィルム貼付装置。
【請求項9】
前記第2のローラの前記第2の層は、前記第1の方向における位置によって、前記第1の層の外周面と前記第2の層の外周面との間の寸法で定められる厚みが異なる、請求項又はに記載のフィルム貼付装置
【請求項10】
前記フィルム貼付装置は、前記第2のローラを前記第1の方向に分割することで、少なくとも第1のローラユニット及び第2のローラユニットを有し、
前記第1のローラユニット及び前記第2のローラユニットのうち少なくとも一つは、前記第1の方向へ位置調整可能である、請求項1~9の何れか一項に記載のフィルム貼付装置。
【請求項11】
車両に対してフィルムを貼り付けるフィルム貼付方法であって、
上下方向と交差する第1の方向へ延びる第1のローラにて、前記車両の上方に配置された前記フィルムを上側から押圧し、前記第1の方向及び前記上下方向と交差する第2の方向へ移動させる第1の押圧移動工程と、
前記第1の方向へ延びる第2のローラにて、前記車両の上方に配置された前記フィルムを上側から押圧し、前記第2の方向へ移動させる第2の押圧移動工程と、を備え、
前記第2の押圧移動工程では、
前記第2のローラは、前記第1のローラに対し、前記第2の方向における進行方向の上流側及び下流側の少なくとも一方に配置され、前記第1の方向における内側から外側へ進むに従って外周側に広がる第1の傾斜部と前記第1の方向における外側から内側へ進むに従って外周側に広がる第2の傾斜部とを備える拡径部によって、前記車両において部分的に凹凸形状が形成された箇所に対して前記フィルムを貼り付け、
前記第2のローラを前記第1の方向に分割することで、少なくとも第1のローラユニット及び第2のローラユニットとし、
前記第1のローラユニット及び前記第2のローラユニットを、前記第1の方向へ位置調整する、フィルム貼付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム貼付装置、及びフィルム貼付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両などの対象物を複数の色で着色する場合があり、複数の色の内の少なくとも一色の着色を車体へのフィルムの貼り付けによって行う場合があった。このような技術として特許文献1に記載されているものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-120605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述のフィルムの貼り付けにおいては、車両の天井のように、略平坦で傾斜角度が緩やかな対象物に対するフィルムの貼り付けが行われていた。しかし、近年、種々の対象物にフィルムを貼り付ける際に、形状が緩やかに変化する箇所のみならず、部分的に凹凸形状を有する場合がある。このような対象物に対しても貼付を行うことが要請されていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一形態に係るフィルム貼付装置は、対象物に対してフィルムを貼り付けるフィルム貼付装置であって、上下方向と交差する第1の方向へ延びて、対象物の上方に配置されたフィルムを上側から押圧し、第1の方向及び上下方向と交差する第2の方向へ移動する第1のローラと、第1の方向へ延びて、対象物の上方に配置されたフィルムを上側から押圧し、第2の方向へ移動する第2のローラと、を備え、第2のローラは、第1のローラに対し、第2の方向における進行方向の上流側及び下流側の少なくとも一方に配置される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、部分的に凹凸形状を有する対象物にフィルムを貼り付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本実施形態に係るフィルム貼付装置を用いてフィルムの貼り付けがなされた車両の一部を示す斜視図である。
図2図2は、本実施形態に係るフィルム貼付装置を示す側面図である。
図3図3は、本実施形態に係るフィルム貼付装置を示す正面図である。
図4図4は、前後方向フィルム貼付部の第1のローラの詳細な構成を示す概略図である。
図5図5は、幅方向フィルム貼付部の詳細な構成を示す概略図である。
図6図6は、天井に対してフィルムを貼り付けるときの貼付態様を示す概略平面図である。
図7図7は、第2のローラを示す正面図である。
図8図8は、第2のローラの部分拡大図である。
図9図9は、第2のローラの内部構成を示す概略断面図である。
図10図10は、変形例に係る第2のローラの内部構成を示す概略断面図である。
図11図11は、変形例に係る第2のローラの内部構成を示す概略断面図である。
図12図12は、変形例に係る第2のローラの内部構成を示す概略断面図である。
図13図13は、変形例に係る第2のローラの内部構成を示す概略断面図である。
図14図14は、車両の天井のビードの他の例を示す図である。
図15図15は、変形例に係る第2のローラの周辺の構成を示す概略構成図である。
図16図16は、変形例に係る第2のローラの周辺の構成を示す概略構成図である。
図17図17は、変形例に係る第2のローラを用いたフィルムの貼付の様子を示す概略図である。
図18図18は、変形例に係る第2のローラの周辺の構成を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
図1は、本実施形態に係るフィルム貼付装置を用いてフィルムの貼り付けがなされた車両の一部を示す斜視図である。図1に示すように、フィルム貼付の対象物となる車両100は、側壁101及び天井102を有する。フィルムWは、車両100のうち、比較的傾斜角が穏やかな天井102及び少なくとも一部の傾斜角が大きい側壁101の上端側の被覆領域CPを被覆する。なお、ここで、「傾斜角」とは、水平面とフィルムを貼り付ける対象面との角度をいう。図1においては、車両100のうち、フィルムWで被覆された部分をハッチングで示す。
【0010】
図2は、本実施形態に係るフィルム貼付装置を示す側面図である。図3は、本実施形態に係るフィルム貼付装置を示す正面図である。図2及び図3に示すように、フィルム貼付装置1は、前後方向フィルム貼付部2と、幅方向フィルム貼付部3A,3Bと、フィルム支持部4と、フィルム供給部6と、を備えている。フィルム貼付時における車両100は、各種機構を支持するための支持フレーム200内に配置される。支持フレーム200は、四隅の柱部201と、柱部201の上端に設けられた天井部202と、を備える。なお、本明細書では、フィルム貼付時の車両100の姿勢を基準とした場合に、水平方向のうち車両100の幅方向をX軸方向(第1の方向)とし、水平方向のうち車両100の前後方向をY軸方向(第2の方向)とし、上下方向をZ軸方向とする。車両100の幅方向における一方(図3の紙面右側)をX軸方向における正側とし、他方(図3の紙面左側)をX軸方向における負側とする。車両100の後側をY軸方向における正側とし、前側をY軸方向における負側とする。
【0011】
前後方向フィルム貼付部2は、第1のローラ10と、第2のローラ70と、を備える。第2のローラ70は、第1のローラ10に対し、Y軸方向における進行方向の下流側に配置される。本実施形態では、前後方向フィルム貼付部2は、Y軸方向の正側へ向かって進行する。従って、第2のローラ70は、第1のローラ10に対してY軸方向の負側に配置される。なお、第2のローラ70の詳細な構成については後述する。
【0012】
図4は、前後方向フィルム貼付部2の第1のローラ10の詳細な構成を示す概略図である。図4(a)に示すように、前後方向フィルム貼付部2は、第1のローラ10と、張力付与部11と、移動部12と、押圧部13と、を備えている。張力付与部11、移動部12、及び押圧部13は、X軸方向に延びる棒状の支持部材14によって支持されている。
【0013】
第1のローラ10は、X軸方向へ延びて、車両100の上方に配置されたフィルムWを上側から押圧すると共に、車両100の形状に追従して変形し、且つY軸方向へ移動する。すなわち、第1のローラ10は、図4(b)に示すように、車両100の形状に合わせて変形するフレキシブルな構成を有している。第1のローラ10は、X軸方向へ延びる芯部16と、芯部16の外周側に配置された貼付部17と、を備えている。芯部16はX軸方向に延びる円柱状部材である。
【0014】
芯部16は、ショアA硬さ60~90の部材を使用することが望ましい。すなわち、芯部16のショアA硬さは、60以上、もしくは70以上が好ましい。これにより、芯部16は、張力付与部により張力が与えられた際に、第1のローラ10が一定形状を維持できる程度の剛性を有することができる。一方、芯部16のショアA硬さは、90以下、もしくは80以下が好ましい。これにより、第1のローラ10には、車両100の形状に追従して変形可能な程度のフレキシブル性が付与できる。例えばこのようなショアA硬さを持つ材質としては、クロロプレン(CR)、ニトリル(NBR)等のゴム材が挙げられ、それらを芯部16として採用可能である。芯部16の直径は、6mm~30mm程度としてよい。芯部16の直径を6mm以上とすることで、ジョイント部の機械設計を容易化するとともに、30mm以下とすることで、第1のローラ10のフレキシブル性を確保することができる。貼付部17は、芯部16の外周側に配置され、少なくとも芯部16よりも硬度が低い。貼付部17は、フィルムWの貼付時において、フィルムWと接触する部分である。貼付部17は、フィルムWを対象面に貼り付けるための面を有すればよく、その断面形状は限定されないが、芯部16が真ん中に配置された円筒状の部材が使用できる。貼付部17は、ショアB硬さ20~50のスポンジ状の部材を使用されることが望ましい。すなわち、貼付部17のショアB硬さは、50以下もしくは40以下が好ましい。それにより、車両100の形状への貼付部17の良効な追従性を確保できる。一方、貼付部17のショアB硬さは20以上、もしくは30以上が好ましい。それにより、第1の押圧ローラ23による第1のローラ10の動作コントロールが可能な程度の弾性を維持できる。このようなショアB硬さを持つ材質としては、多孔質のEPDMまたはCRゴム等のスポンジゴムが挙げられる。貼付部17の外径は、50mmから100mmが好ましい。貼付部17の外径は、芯部16の径より大きくするため50mm以上とすることが望ましい。一方、100mmより大きい径のゴムは製造上の問題で入手が困難であるため、貼付部17の外径は100mm以下とすることが好ましい。芯部16及び貼付部17のX軸方向における長さは、車両100のX軸方向における大きさより長くてよい。芯部16は、貼付部17より長い。貼付部17の両端部から芯部16の一部が露出している。
【0015】
張力付与部11は、第1のローラ10のX軸方向における少なくとも一端側に対し、X軸方向の外側へ向かう張力を付与する。本実施形態では、第1のローラ10の両端側に対して、それぞれ張力付与部11が設けられる。張力付与部11は、第1のローラ10の端部を支持する支持部18と、支持部18をX軸方向へ移動させることができる駆動部19と、駆動部19と支持部18とを連結する連結部21と、を備える。
【0016】
支持部18は、第1のローラ10のX軸方向の外側に、第1のローラ10の先端部と対向するように配置される。支持部18と第1のローラ10とは、ユニバーサルジョイント22を介して接続される。ユニバーサルジョイント22は、2つの部材の角度が自由に変化する継手である。これにより、第1のローラ10は、支持部18に支持された状態にて、自由に変形することができる。
【0017】
駆動部19は、支持部材14に設けられており、当該支持部材14に沿って支持部18及び連結部21をX軸方向に移動させることができる。駆動部19は、サーボモータ等によって構成される。これにより、駆動部19が支持部18をX軸方向へ移動させることにより、第1のローラ10の端部の位置も移動する。すなわち、駆動部19が支持部18を第1のローラ10に対してX軸方向における外側へ移動させると、第1のローラ10に付与される張力が増加する。一方、駆動部19が支持部18を第1のローラ10に対してX軸方向における内側へ移動させると、第1のローラ10に付与される張力が減少する。
【0018】
移動部12は、第1のローラ10を上下方向に移動させる。本実施形態では、移動部12は、支持部材14のX軸方向における中央位置において、支持部材14の上面側に設けられたサーボモータによって構成される。移動部12は、支持フレーム200のガイドレール203に接続されている。移動部12は、支持部材14を上下方向に移動させることで、張力付与部11及び第1のローラ10全体を上下方向に移動させることができる。これにより、移動部12は、第1のローラ10の上下方向の位置を調整し、第1のローラ10を車両100の天井102及び側壁101に対応する形状に変形させることができる。なお、移動部12は、第1のローラ10全体を上下方向に移動可能でなくともよく、例えば、第1のローラ10の端部のみ移動可能であってもよい。また、移動部12は、ガイドレール203に沿って支持部材14全体をY軸方向に移動させることができる。これにより、移動部12は、第1のローラ10、張力付与部11、及び押圧部13をY軸方向へ移動させることができる。
【0019】
押圧部13は、第1の押圧ローラ23と、シリンダ24と、を備える。第1の押圧ローラ23は、第1のローラ10を車両100に対して押圧しながら、第1のローラ10と共に移動する。シリンダ24は、上端が支持部材14に接続されて、下端が第1のローラ10に接続されている。従って、シリンダ24が伸縮することによって、第1の押圧ローラ23の押圧力が調整される。押圧部13は、X軸方向に沿って一定間隔で複数個設けられている。ここで、複数の押圧部13のうち、X軸方向における両端側の押圧部13は、第1の押圧ローラ23及びシリンダ24をX軸方向へ移動させる駆動部25が設けられている。これにより、両端側の押圧部13は、第1の押圧ローラ23が常にレーザーウェルド110の上を押圧できるように、X軸方向の位置調整を行うことができる。その他の押圧部13は駆動部25を有していなくてよい。
【0020】
図5は、幅方向フィルム貼付部3Bの詳細な構成を示す概略図である。図5(a)に示すように、幅方向フィルム貼付部3Bは、ローラ30と、張力付与部31と、移動部32と、押圧部33と、を備えている。張力付与部31、移動部32、及び押圧部33は、Y軸方向に延びる棒状の支持部材34によって支持されている。
【0021】
ローラ30は、Y軸方向へ延びて、車両100の上方に配置されたフィルムWを上側から押圧すると共に、車両100の形状に追従して変形し、且つX軸方向へ移動する。すなわち、ローラ30は、図5(b)に示すように、車両100の形状に合わせて変形するフレキシブルな構成を有している。ローラ30は、Y軸方向へ延びる芯部36と、芯部36の外周側に配置された貼付部37と、を備えている。なお、ローラ30は、延びる方向以外は第1のローラ10と同趣旨の構成を有しているため、詳細な説明を省略する。
【0022】
張力付与部31は、ローラ30のY軸方向における少なくとも一端側に対し、Y軸方向の外側へ向かう張力を付与する。本実施形態では、ローラ30の両端側に対して、それぞれ張力付与部31が設けられる。張力付与部31は、ローラ30の端部を支持する支持部38と、支持部38をY軸方向へ移動させることができる駆動部39と、駆動部39と支持部38とを連結する連結部41と、を備える。張力付与部31は、張力を付与する方向以外、張力付与部11と同趣旨の構成を有しているので、詳細な説明を省略する。
【0023】
支持部38は、ローラ30のX軸方向の外側に、ローラ30の先端部と対向するように配置される。支持部38とローラ30とは、ユニバーサルジョイント42を介して接続される。ユニバーサルジョイント42は、2つの部材の角度が自由に変化する継手である。これにより、ローラ30は、支持部38に支持された状態にて、自由に変形することができる。
【0024】
移動部32は、ローラ30を上下方向に移動させる。また、移動部32は、ガイドレール204に沿って支持部材34全体をX軸方向に移動させることができる。移動部32は、ローラ30を車両100の天井102の縁部及び側壁101の位置にて移動させる。移動部32は、移動方向以外は移動部12と同趣旨の構成を有しているので、詳細な説明を省略する。
【0025】
押圧部33は、第2の押圧ローラ43と、シリンダ44と、を備える。第2の押圧ローラ43は、ローラ30を車両100に対して押圧しながら、ローラ30と共に移動する。シリンダ44は、上端が支持部材34に接続されて、下端がローラ30に接続されている。従って、シリンダ44が伸縮することによって、第2の押圧ローラ43の押圧力が調整される。押圧部33は、Y軸方向に沿って一定間隔で複数個設けられている。
【0026】
図2及び図3に示すように、フィルム支持部4は、車両100の上方にフィルムWを配置する機構である。フィルム支持部4は、車両100よりも外周側の位置で、フィルムWの周縁を支持するフレーム体50と、当該フレーム体50を駆動させる駆動部51,52と、を有する。具体的には、フレーム体50は、車両100に対してX軸方向の両側に配置される一対の板状部材53と、車両100に対してY軸方向の両側に配置される一対の板状部材(不図示)と、を備える。なお、図3及びそれに対応する図面では、Y軸方向の両側に配置される板状部材、及び駆動部は省略されている。板状部材53は、車両100の天井102付近の高さ位置において、XY平面に広がると共に、Y軸方向に沿って延びている。板状部材53は、厚み1mm~3mmのステンレス等の金属板等の可撓性を有する材料によって構成される。
【0027】
駆動部51は、板状部材53を上下方向に駆動させる機構である。駆動部51は、上下方向に延びるシリンダによって構成される。駆動部51の上端は、板状部材53のX軸方向の外側の縁部における下面に固定され、駆動部51の下端は、支持フレーム200の台座部206に固定される。また、一枚の板状部材53に対して、複数の駆動部51が設けられる。例えば三本の駆動部51が設けられる場合は、Y軸方向に所定の間隔をあけて互いに離間するように配置される。一本目の駆動部51が板状部材53の前端部に配置され、二本目の駆動部51が板状部材53のY軸方向の略中央位置に配置され、三本目の駆動部51が板状部材53の後端部に配置される。ただし、駆動部51の本数及び位置は特に限定されない。すなわち、駆動部51の数は3本より多くてもよく、例えば5本などであってもよい。それぞれの駆動部51は、互いに独立して伸縮可能である。従って、板状部材53は、それぞれの駆動部51が設けられた箇所において、部分的に上下に移動する。従って、フレーム体50は、フィルムWの貼付開始時において、フィルムWと車両100との間の距離を調整可能である。また、フレーム体50は、車両100の湾曲形状に対応して湾曲可能である。更に、第1のローラ10でフィルムWを車両100に貼り付けている時に、フレーム体50は、貼付箇所における車両100の湾曲形状に追従して変形することができる。
【0028】
駆動部52(図2では不図示)は、板状部材53をX軸方向に駆動させる機構である。駆動部52は、上方へ向かってX軸方向の内側へ傾斜するように延びるシリンダによって構成される。駆動部52の上端は駆動部51に連結された連結部材54に固定され、駆動部52の下端は台座部206に固定される。一枚の板状部材53に対する駆動部52の本数は特に限定されない。また、駆動部52は傾斜しなくとも、X軸方向に真っ直ぐに延びるように配置されてもよい。駆動部52が縮むことによって、板状部材53がX軸方向の外側へ引っ張られる。これにより、フレーム体50は、フィルムWに平面方向外側へ向かう張力を付与することができる。なお、フィルムWに張力を付与する際は、Y軸方向に対向する板状部材(不図示)も、フィルムWをY軸方向の外側へフィルムWを引っ張ることができる。
【0029】
図2に示すように、フィルム供給部6は、フレーム体50に対してフィルムWを供給する機構である。フィルム供給部6は、ロール部60と、複数のガイドロール61と、保護シート回収ロール62,63と、位置合わせ部64と、を備える。ロール部60は、ロール状に巻かれたフィルムWを繰り出す。複数のガイドロール61は、ロール部60から繰り出されたフィルムWを案内する。保護シート回収ロール62は、繰り出されたフィルムWの上面から剥離した保護シートS1を巻き取る。保護シート回収ロール63は、繰り出されたフィルムWの下面から剥離した保護シートS2を巻き取る。位置合わせ部64は、フレーム体50の手前で、フィルムWの位置合わせを行う。また、位置合わせ部64から供給されたフィルムWの先端部は、図示されない把持機構によって把持されながら、Y軸方向の負側へ移動する。フィルムWの先端部が、フレーム体50のY軸方向の負側の端部へ至ったら、フィルムWの両縁部がフレーム体50の両側の板状部材53の上面に貼り付けられる。また、フレーム体50のY軸方向の正側の位置にてフィルムWが切断される。
【0030】
次に、図6図9を参照して、第2のローラ70について詳細に説明する。図6は、天井102に対してフィルムWを貼り付けるときの貼付態様を示す概略平面図である。図7は、第2のローラ70を示す正面図である。図8は、第2のローラ70の部分拡大図である。図9は、第2のローラ70の内部構成を示す概略断面図である。
【0031】
図6に示すように、第2のローラ70は、天井102にビード120A,120Bが形成されている場合に、当該ビード120A,120B付近にフィルムWを良好に貼り付けるために用いられる。ビード120A,120Bは、天井102の後側の領域に形成されている。ビード120A,120Bは、車幅方向に互いに離間して平行な状態で前後方向に延びている。図7に示すように、ビード120A,120Bは、X軸方向における内側から外側へ向かうに従って上側へ向かうように傾斜する傾斜部121を有している。天井102のうち、ビード120Aの傾斜部121とビード120Bの傾斜部121との間の本体部122は、XY平面と略平行をなすように広がりながら滑らかに湾曲する。天井102のうち、ビード120A,120Bの傾斜部121のX軸方向における外側の本体部123は、XY平面と略平行をなすように広がりながら滑らかに湾曲する。本体部122と傾斜部121との連結部分は、天井102の凹凸形状のうち、形状が急激に変化する部位である。このような部位は、連続的に広がっている本体部122の形状、及び所定角度で連続的に傾斜している傾斜部121の形状が、不連続となる部位である。当該部位を天井102の凹凸形状の不連続部位124とする。また、本体部123と傾斜部121との連結部を不連続部位126とする。
【0032】
第2のローラ70は、ビード120A,120Bに対応する箇所、及びビード120A,120Bとの間の領域で延びている。図6(a)~(c)に示すように、第2のローラ70は、第1のローラ10に対して進行方向の下流側に配置された状態で、第1のローラ10と共に移動する。第1のローラ10が天井102の前側から後側へ向かってフィルムWをX軸方向において全体的に押圧した後、第2のローラ70は、ビード120A,120B付近に対応する箇所にてフィルムWを押圧する。
【0033】
図7に示すように、第2のローラ70は、シリンダ71、及び支持フレーム72を介して支持部材14によって支持されている。シリンダ71は、上端が支持部材14に接続されて、下端が支持フレーム72に接続されている。従って、シリンダ71が伸縮することによって、第2のローラ70の押圧力が調整される。シリンダ71はX軸方向に離間した状態で一対設けられているが、数量は特に限定されない。支持フレーム72は、第2のローラ70のX軸方向における両端部において、第2のローラ70を軸支する一対の支持部72aと、一対の支持部72aを上端部で支持するフレーム本体部72bと、を備える。支持部72aは、第2のローラ70を回転可能に支持する。
【0034】
シリンダ71は、第2のローラ70を支持部材14に対して上下方向に移動させることができる。従って、第2のローラ70は、上下方向について、第1のローラ10との相対位置を変更可能である。
【0035】
第2のローラ70は、本体部75と、拡径部76A,76Bを有する。本体部75は、天井102の形状に合わせて滑らかに径が変化する部分である。拡径部76A,76Bは、X軸方向の一部において局所的に直径が拡大する部分であり、ビード120A,120Bに対応する箇所に形成される。
【0036】
図8は、拡径部76Aを示す。なお、拡径部76Bは、拡径部76Aと左右対称な形状を有しているため、説明を省略する。図8に示すように、拡径部76Aは、頂部761、傾斜部762,763を備える。頂部761は、最も径が大きくなる箇所である。傾斜部762は、頂部761に対してX軸方向における内側に形成される。傾斜部762は、X軸方向における内側から外側へ進むに従って外周側に広がる。傾斜部763は、頂部761に対してX軸方向における外側に形成される。傾斜部763は、X軸方向における外側から内側へ進むに従って外周側に広がる。傾斜部762のX軸に対する傾斜角度は、緩やかに傾斜する本体部75の傾斜角度に比して大きい。傾斜部763のX軸に対する傾斜角度は、緩やかに傾斜する本体部75の外側端部75aの傾斜角度に比して大きい。
【0037】
第2のローラ70のうち、頂部761は不連続部位124を押圧し、傾斜部763は傾斜部121を押圧し、傾斜部763及び本体部75は本体部122を押圧し、本体部75の外側端部75aは本体部123を押圧する。
【0038】
図9を参照して、第2のローラ70の断面構造について説明する。なお、図9では、拡径部76Bのみが示されているが、拡径部76Aも同趣旨の構成を有するため、説明を省略する。また、理解を容易とするため、図9では、天井102は厚みを省略し、被着面の形状のみを示している。また、頂部761は、角部として示されている。図10図13においても同様である。図9(a)に示すように、第2のローラ70は、径方向に互いに異なる材料によって形成される第1の層81、及び外周側の第2の層82を有する。第1の層81は、第2のローラ70の軸部80の外周面に支持される。第2の層82の外周面は、第2のローラ70の外周面を構成する。よって、第2の層82の外周面の形状は、上述の第2のローラ70の外周面と同様な形状となる。第1の層81は、第2の層82よりも硬い材料によって構成される。第1の層81の硬さは、ショアA硬さ又はショアB硬さで20~90、発泡体の場合はショアB硬さで60~90が好ましい。第2の層82の硬さは、ショアA硬さ又はショアB硬さで10~45、発泡体の場合はショアB硬さで10~35が好ましい。第1の層81及び第2の層82の材料として、シリコーン、ウレタン、ブチルゴムなどを採用してよい。また、第1の層81と軸部80とは一体物であってもよい。この場合、第1の層81の材料は、金属または樹脂となる。
【0039】
第2のローラ70の第1の層81は、X軸方向における位置によって厚みが異なる。具体的に、第1の層81の外周面は、本体部75に対応する部分では、当該本体部75の外周面と略平行となるような形状となる。なお、軸部80の外周面は、本体部75の外周面と略平行な形状となっていなくともよく、X軸方向に一定な径を有する形状となっていてもよい。第1の層81は、拡径部76Bに対応して径が大きくなるように構成されている。すなわち、第1の層81は、傾斜部762に対応する箇所では、当該傾斜部762と共にX軸方向における内側から外側に向かって径が大きくなる。第1の層81は、傾斜部763に対応する箇所では、当該傾斜部763と共にX軸方向における外側から内側に向かって径が大きくなる。第1の層81は、頂部761に対応する箇所では、頂部761と共に最も径が大きくなる。
【0040】
第2のローラ70の第2の層82は、X軸方向における位置によって、第1の層81の外周面と第2の層82の外周面との間の寸法で定められる厚みが異なる。なお、第1の層81の外周面と第2の層82の内周面は同様な形状を有している。第2の層82の厚みは、本体部75では略一定の厚みとなる。拡径部76Bでは、第2の層82の厚みは、頂部761にて最も薄くなる。また、傾斜部762,763では、第2の層82の厚みは、頂部761に近づくに従って徐々に薄くなる。
【0041】
以上のような構成により、第2のローラ70は、X軸方向に沿って硬さが異なる部分を含む。具体的に、第2のローラ70のうち、硬さが異なる部分は、天井102の凹凸形状の不連続部位124に対応する箇所に形成され、その他の箇所の少なくとも一部より硬い。ここで、「硬さが異なる部分」とは、拡径部76Bである。拡径部76Bは、本体部75よりも硬い。また、凹凸形状の不連続部位124に対応する第2のローラ70の箇所、すなわち拡径部76Bが、第1のローラ10よりも硬い。
【0042】
ここで、本明細書における「硬さ」について説明する。ここでの硬さとは、第2のローラ70の外周面だけの硬さを示しているものではなく、軸部80、第1の層81、及び第2の層82を合わせた硬さである。第2のローラ70の頂部761における硬さは、本体部75における硬さと比較した場合、ショアA硬さ又はショアB硬さの絶対値の差で5以上、より好ましくは10以上であることがより好ましい。
【0043】
次に、本実施形態に係るフィルム貼付装置1の作用・効果について説明する。
【0044】
本実施形態に係るフィルム貼付装置1は、対象物に対してフィルムを貼り付けるフィルム貼付装置であって、上下方向と交差する第1の方向へ延びて、対象物の上方に配置されたフィルムを上側から押圧し、第1の方向及び上下方向と交差する第2の方向へ移動する第1のローラと、第1の方向へ延びて、対象物の上方に配置されたフィルムを上側から押圧し、第2の方向へ移動する第2のローラと、を備え、第2のローラは、第1のローラに対し、第2の方向における進行方向の下流側に配置される。
【0045】
このフィルム貼付装置1は、第1のローラ10に加えて、第2のローラ70を有している。この場合、第1のローラ10が対象物全体にフィルムを貼り付けるのに対し、第2のローラ70は、ビード120A,120Bのように、部分的に凹凸形状が形成された箇所に対して良好に貼り付けできるような押圧態様とすることができる。以上より、フィルム貼付装置1は、部分的に凹凸形状を有する対象物にフィルムを貼り付けることができる。
【0046】
第2のローラ70は、X軸方向に沿って硬さが異なる部分を含む。この場合、第2のローラ70のうちビード120A,120Bに対応する箇所において、第2のローラ70の硬さがフィルムWを貼り付けやすいような硬さに設定可能となる。
【0047】
ここで、図12に示す第2のローラ170について説明する。図12の第2のローラ170は、軸部180及び第2の層182によって構成され、第2の層182は、ビード120Bに対応する拡径部を有していない。この場合、図12(b)(c)に示すように、不連続部位124付近でのフィルムWの貼付が不十分となる可能性がある。この場合、図12(d)~(f)に示すように、小型のローラ175を用いて部分的にビード120Bの不連続部位124へフィルムWを押圧する必要が生じる。ただし、小型のローラ175は、広範囲を押圧することができず、不連続部位124周囲のフィルムWの貼り付けが不十分となる可能性がある。
【0048】
図11に示す第2のローラ70は、拡径部76Bを有するが、第2の層182のみによって構成されている。この場合、図11(b)(c)に示すように、拡径部76BがフィルムWを不連続部位124に押圧することで、ビード120Bの深い位置までフィルムWを押し付けることができる。しかしながら、頂部761付近の押し付け力が不連続部位124付近でのフィルムWのテンションに負けてしまう可能性がある。この場合、フィルムWが不連続部位124に到達する前に、頂部761の変形量が大きくなり、フィルムWを不連続部位124に良好に貼り付けられない可能性がある。
【0049】
これに対し、図9(b)(c)に示すように、本実施形態に係る第2のローラ70は、拡径部76Bにて硬くなっている。従って、頂部761付近の押し付け力が不連続部位124付近でのフィルムWのテンションに打ち勝つことで、フィルムWを不連続部位124に貼り付けることができる。
【0050】
以上のように、第2のローラ70のうち、硬さが異なる部分(拡径部76A,76B)は、天井102の凹凸形状の不連続部位124に対応する箇所に形成され、その他の箇所(本体部75)の少なくとも一部より硬い。また、天井102は凹凸形状を有し、凹凸形状の不連続部位124に対応する第2のローラ70の箇所(拡径部76A,76B)が、第1のローラ10よりも硬い。これにより、第2のローラ70は、図9(b)(c)に示すように、硬い部分である拡径部76A,76BでフィルムWを押圧することで、不連続部位124に良好に貼り付けることができる。
【0051】
第2のローラ70は、上下方向について、第1のローラ10との相対位置を変更可能である。この場合、第2のローラ70は、ビード120A,120BにフィルムWを貼り付けるのに適切な押圧力でフィルムWを貼り付けることができる。
【0052】
第2のローラ70は、X軸方向の一部において直径が拡大する拡径部76A,76Bを有する。この場合、下側へ凹状となる不連続部位124に対してフィルムWを良好に押し付けることができる。
【0053】
第2のローラ70は、径方向に互いに異なる材料によって形成される第1の層81、及び外周側の第2の層82を有する。この場合、一つの材料のみで硬さの調整を行う場合に比して、第2のローラ70の硬さの調整を行い易くなる。
【0054】
第2のローラ70の第1の層81は、X軸方向における位置によって厚みが異なる。この場合、第1の層81の厚みを調整することで、第2のローラ70の硬さの調整を容易に行うことができる。具体的には、硬い第1の層81が、ビード120A、120Bに対応する形状を形作り、その外周面に第2の層82を形成することで、容易に第2のローラ70の硬さの調整を行うことができる。
【0055】
第2のローラ70の第2の層82は、X軸方向における位置によって、第1の層81の外周面と第2の層82の外周面との間の寸法で定められる厚みが異なる。これにより、厚みを調整することで、容易に第2のローラ70の硬さを調整することができる。具体的には、頂部761付近において、柔らかい材料である第2の層82を薄くすることで、容易に拡径部76A,76Bの硬さを硬くすることができる。
【0056】
第2のローラ70は、第1のローラ10に対し、Y軸方向における進行方向の下流側に配置される。この場合、第1のローラ10で天井102のX軸方向全体に対するフィルムWの貼り付けを行っておき、第2のローラ70が、ビード120A,120Bに対応する部分に対し、適切な押圧態様にて、フィルムWを押圧することができる。これにより、天井102に対して全域にわたって良好にフィルムWを貼り付けることができる。
【0057】
第2のローラ70の形状は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、図10に示すように、第2の層82の厚みが、拡径部76A,76Bにおいて一定であってもよい。当該場合であっても、頂部761付近では、硬い第1の層81の厚みが大きいため、本体部75に比して硬くなる。従って、図10(a)(b)に示すように、頂部761付近の押し付け力が不連続部位124付近でのフィルムWのテンションに打ち勝つことで、フィルムWを不連続部位124に貼り付けることができる。
【0058】
なお、図11及び図12に示すような第2のローラの構成も、本発明から排除されるものではない。
【0059】
また、ビードの形状に応じて、第2のローラの形状を適宜変更してもよい。例えば、図13に示すように、天井102に上方へ向かって凸となるビード130が形成されてもよい。この場合、第2のローラ270が、ビード130に対応する箇所に凹部を有してもよい。例えば、第2のローラ270は、一定形状の外周面を有する軸部280及び第1の層281を備えると共に、部分的に径が小さくなった小径部271が形成された第2の層282を備える。小径部271は、柔らかい材料である第2の層282が薄いため、他の部分より硬くなる。この場合、図13(b)に示すように、小径部271が、ビード130に対した形状で当該ビード130に対してフィルムWを貼り付けることができる。
【0060】
また、図14に示すような車両100の天井102に対して、フィルムWを貼り付けてもよい。図14では、本体部210から上側へ凸となる(図14(b)参照)ビード220,230が形成される。ビード220,230は、X軸方向に複数(ここでは4つ)並べられている。また、ビード220と、ビード230とは、Y軸方向において互いに離間するように形成されている(図14(a))。ビード220,230は、Y軸方向の両側の先端部において、先細りとなるような形状を有する。また、天井102には、X軸方向の両側の縁部に沿って、Y軸方向に延びるビード235が形成されている。なお、図15(a)に示すように、ビード230は、本体部210よりも高い位置にて略平面状に広がる平面部234と、本体部210から平面部234へ向かって傾斜する一対の傾斜部235と、を備える。また、連続的に広がっている本体部210の形状、及び所定角度で連続的に傾斜している傾斜部235の形状が、不連続部位231にて不連続となる。連続的に広がっている平面部234の形状、及び所定角度で連続的に傾斜している傾斜部235の形状が、不連続部位232にて不連続となる。
【0061】
この場合、図15図17に示すような第2のローラ370を採用してよい。当該変形例に係る第2のローラ370は、図15(a)及び図17に示すように、X軸方向に複数設けられる。また、図16及び図17に示すように、第2のローラ370は、第1のローラ10に対し、Y軸方向における進行方向の上流側に配置される。また、図15(a)に示すように、フィルム貼付装置1は、第2のローラ370をX軸方向に分割することで、第1のローラユニット370A及び第2のローラユニット370Bを有する。そして、第1のローラユニット370A及び第2のローラユニット370Bは、X軸方向へ位置調整可能である。
【0062】
なお、図15図17では、一つ当たりの第2のローラ370は概略的に示されているが、図9図11に示す第2のローラ70のような拡径部76を有する形状が採用されてよい。この場合、頂部761がビード230の不連続部位231を押圧し、傾斜部763が傾斜部235を押圧し、傾斜部763と外側端部75aとの間の部分で不連続部位232を押圧し、本体部75の外側端部75aが平面部234を押圧してよい。なお、第2のローラ370は、図12に示す第2のローラ170の構成を有していてもよい。
【0063】
図15及び図16を参照して、第1のローラユニット370A及び第2のローラユニット370Bの構成について説明する。なお、図15(a)に示すように、X軸方向の正側のビード230をビード230Aと称し、X軸方向の負側のビード230をビード230Bと称する場合がある。
【0064】
図15(a)に示すように、第1のローラ機構250Aは、第2のローラ機構250BよりもX軸方向の正側に配置されている。第1のローラ機構250Aは、ビード230AのX軸方向の正側の不連続部位231付近を一方の第2のローラ370で押圧し、ビード230BのX軸方向の正側の不連続部位231付近を他方の第2のローラ370で押圧することができる。このような一対の第2のローラ370によって、第1のローラユニット370Aが構成される。第2のローラ機構250Bは、第1のローラ機構250AよりもX軸方向の負側に配置されている。第2のローラ機構250Bは、ビード230AのX軸方向の負側の不連続部位231付近を一方の第2のローラ370で押圧し、ビード230BのX軸方向の負側の不連続部位231付近を他方の第2のローラ370で押圧することができる。このような一対の第2のローラ370によって、第2のローラユニット370Bが構成される。
【0065】
図15(b)に示すように、第1のローラ機構250Aは、一対の第2のローラ370をX軸方向に離間した状態で支持する支持フレーム252と、支持フレーム252を上下方向へ移動させるシリンダ254と、シリンダ254をX軸方向へ移動させるシリンダ256と、を備える。シリンダ256は、シリンダ254に対してX軸方向の負側に設けられた状態で、支持部材14に取り付けられる(図15(a)参照)。支持フレーム252は、シリンダ254に支持された状態でX軸方向へ延びるフレーム本体部252aと、フレーム本体部252aの両端側から下方へ延びる一対の支持部252bと、を備える。支持部252bの下端部には、第2のローラ370が支持されている。なお、支持部252bには、第2のローラ370の押圧によって伸縮するスプリング部253が形成される。図15(c)に示すように、第2のローラ機構250Bは、Y軸方向から見て、第1のローラ機構250AをYZ平面を基準として対称にした構成を有している。
【0066】
図16に示すように、第1のローラ機構250Aと第2のローラ機構250Bは、X軸方向に伸びているシリンダ256同士が干渉し合わないように、互いにY軸方向にシフトした状態で配置される。第1のローラ機構250AがY軸方向の負側に配置され、第2のローラ機構250BがY軸方向の正側に配置される。なお、第1のローラ機構250Aの第2のローラ370と、第2のローラ機構250Bの第2のローラ370は、X軸方向から見て、互いに重なり合うように同軸上に配置される。第1のローラ機構250Aのフレーム本体部252aと、第2のローラ機構250Bのフレーム本体部252aとは、Y軸方向に互いに離間した状態で配置される。第1のローラ機構250Aの支持部252b及び第2のローラ370がY軸方向の正側へシフトし、第2のローラ機構250Bの支持部252b及び第2のローラ370がY軸方向の負側へシフトする。
【0067】
以上のような構成により、ビード230A,230BのX軸方向の正側の不連続部位231に対して第2のローラ370のX軸方向における位置調整を行う場合は、第1のローラ機構250Aのシリンダ256を駆動させる。ビード230A,230BのX軸方向の負側の不連続部位231に対して第2のローラ370のX軸方向における位置調整を行う場合は、第2のローラ機構250Bのシリンダ256を駆動させる。
【0068】
図17を参照して、ローラ10,370によるフィルムWの貼り付け手順について説明する。図17では、ローラ10,370の位置が四段階で示されている。位置PAでは、ローラ10,370による貼付開始の様子が示されている。位置PBでは、ビード220へ到達する前のローラ10,370の様子が示されている。位置PCでは、ビード220の先細り部分を押圧しているローラ10,370の様子が示されている。位置PDでは、ビード220が真っ直ぐに延びる部分を押圧しているローラ10,370の様子が示されている。
【0069】
フィルム貼付方法は、第1の押圧移動工程と、第2の押圧移動工程と、を備える。第1の押圧移動工程は、X軸方向へ延びる第1のローラ10にて、天井102の上方に配置されたフィルムWを上側から押圧し、Y軸方向へ移動させる工程である。第2の押圧移動工程は、X軸方向へ延びる第2のローラ370にて、天井102の上方に配置されたフィルムWを上側から押圧し、Y軸方向へ移動させる工程である。第2の押圧移動工程では、第2のローラ370は、第1のローラ10に対し、Y軸方向における進行方向の上流側に配置されている。また、第2のローラ370をX軸方向に分割することで、第1のローラユニット370A及び第2のローラユニット370Bとしている(図15参照)。そして、第1のローラユニット370A及び第2のローラユニット370Bを、X軸方向へ位置調整する。
【0070】
具体的には、位置PAに示すように、ローラ10,370は、天井102の前端部の手前側にセットされる。次に、位置PBに示すように、進行方向の上流側で両端部の一対の第2のローラ370が、ビード235に対してフィルムWを押圧する。そして、進行方向の下流側では、ローラ370が、フィルムW全体を押圧する。次に、位置PCに示すように、進行方向の上流側では、第1のローラユニット370A及び第2のローラユニット370Bの位置調整が行われることで、各第2のローラ370が、ビード220の先細り部の縁部に対してフィルムWを押圧する。ビード220の先細り部の縁部は、Y軸方向の正側の位置に変化するに従って、X軸方向に変位している。従って、各ローラユニット370A,370Bは、Y軸方向の正側へ進行するに伴って、ビード220の縁部の変位に追従するように、X軸方向に移動する。そして、進行方向の下流側では、ローラ370が、フィルムW全体を押圧する。次に、位置PDに示すように、進行方向の上流側では、第1のローラユニット370A及び第2のローラユニット370Bの位置調整が行われることで、各第2のローラ370が、ビード220が真っ直ぐに延びる部分の縁部に対してフィルムWを押圧する。そして、進行方向の下流側では、ローラ370が、フィルムW全体を押圧する。なお、ローラ10,370は、ビード230に対しても、ビード220と同様な動作によって押圧を行う。
【0071】
以上のように、図15図17に示す第2のローラ370は、X軸方向に複数設けられる。この場合、第2のローラ370は、押圧対象となる位置を部分的に押圧することができる。すなわち、第2のローラ370は、ビード220,230の縁部付近を部分的に押圧できるため、当該箇所に適した押圧態様にて押圧を行うことができる。例えば、天井102の広域にわたって一括で第2のローラ370で押圧する際は、押圧箇所によっては圧力が過剰になる可能性があるが、第2のローラ370は、対象箇所にとって必要な圧力で押圧を行うことができる。
【0072】
また、第2のローラ370は、第1のローラ10に対し、Y軸方向における進行方向の上流側に配置される。図6に示すビード120A,120Bとは異なり、ビード220とビード230は、Y軸方向において途中で途切れたような配置となっている。この場合は、ビード220とビード230との間の領域で、貼付時にフィルムWと天井102との間にエアーが貯まりやすくなる。これに対し、第2のローラ370が進行方向の上流側に配置されている場合、第2のローラ370が第1のローラ10に先行してビード220,230に対して貼付を行っておくことで、第1のローラ10が天井102の全体に対してフィルムWを貼り付けるときに、エアーが貯まることを抑制できる。
【0073】
また、フィルム貼付装置1は、第2のローラ370をX軸方向に分割することで、第1のローラユニット370A及び第2のローラユニット370Bを有する。そして、第1のローラユニット370A及び第2のローラユニット370Bは、X軸方向へ位置調整可能である。この場合、ビード220,230の先細り部の縁部のように、Y軸方向の位置が変化するに従ってX軸方向に変位する場合、フィルム貼付装置1は、各ローラユニット370A,370BをX軸方向に位置調整しながら貼付を行うことで、ビード220,230のX軸方向の変位に追従することができる。
【0074】
また、フィルム貼付方法は、第1の押圧移動工程と、第2の押圧移動工程と、を備える。第1の押圧移動工程は、X軸方向へ延びる第1のローラ10にて、天井102の上方に配置されたフィルムWを上側から押圧し、Y軸方向へ移動させる工程である。第2の押圧移動工程は、X軸方向へ延びる第2のローラ370にて、天井102の上方に配置されたフィルムWを上側から押圧し、Y軸方向へ移動させる工程である。第2の押圧移動工程では、第2のローラ370は、第1のローラ10に対し、Y軸方向における進行方向の上流側に配置されている。また、第2のローラ370をX軸方向に分割することで、第1のローラユニット370A及び第2のローラユニット370Bとしている(図15参照)。そして、第1のローラユニット370A及び第2のローラユニット370Bを、X軸方向へ位置調整する。この場合、上述のフィルム貼付装置1と同様に、各ローラユニット370A,370BをX軸方向に位置調整しながら貼付を行うことで、ビード220,230のX軸方向の変位に追従することができる。
【0075】
なお、図18に示すように、第2のローラ470が、一対のビード230間の本体部210を押圧し、第2のローラ470のX軸方向の両端部で各ビード230の縁部を押圧するような構成であってもよい。
【0076】
なお、第1のローラユニット370A及び第2のローラユニット370Bの両方がX軸方向に位置調整可能であったが、いずれか一方のみが位置調整可能でもよい。
【0077】
フィルム貼付装置は、少なくとも第1のローラ及び第2のローラを有していればよく、幅方向フィルム貼付部3A,3Bを省略してもよい。
【0078】
なお、上述の実施形態では、フィルム貼り付けの対象物として車両が例示されていた。しかし、車両に限らず、どのようなものをフィルム施工の対象物としてもよい。例えば、電車、飛行体、家具、電化製品等であってよい。
【符号の説明】
【0079】
1…フィルム貼付装置、10…第1のローラ、70,170,270,370,470…第2のローラ、76A,76B…拡径部、81…第1の層、82…第2の層、124,126,231,232…不連続部位、W…フィルム。
図1
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