(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】空気調和システム及び異常検出システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/38 20180101AFI20231124BHJP
F04D 27/00 20060101ALI20231124BHJP
F04D 29/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
F24F11/38
F04D27/00 H
F04D27/00 M
F04D27/00 F
F04D29/00 B
(21)【出願番号】P 2019132660
(22)【出願日】2019-07-18
【審査請求日】2022-06-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森 隼人
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴至
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-186306(JP,A)
【文献】特開2010-265828(JP,A)
【文献】実開昭56-079695(JP,U)
【文献】特開2004-251255(JP,A)
【文献】登録実用新案第3012908(JP,U)
【文献】特開2008-241187(JP,A)
【文献】特開2004-332606(JP,A)
【文献】特開平10-169570(JP,A)
【文献】特開昭50-100609(JP,A)
【文献】特開平04-128600(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0113908(US,A1)
【文献】特開平09-144688(JP,A)
【文献】実開昭61-092843(JP,U)
【文献】実開昭62-095270(JP,U)
【文献】特開平02-115595(JP,A)
【文献】実開昭63-110694(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00-13/32
F04D 27/00
F04D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機の回転体の回転中における、前記回転体の回転方向の所定位置との距離を検出する距離検出部と、
前記所定位置との前記距離の変化の周期と、予め設定された基準周期と、の差分が閾値以上である場合に、前記回転体の異常を検出する制御部と
を有
し、
前記制御部は、前記所定位置との前記距離の変化に応じた、前記回転体の回転速度が、起動ステージにおける回転速度の増加を示す回転速度プロファイルに示される回転速度から所定量ずれた場合に、前記回転体の前記異常を検出する空気調和システム。
【請求項2】
送風機の回転体の回転中における、前記回転体の回転方向の所定位置との距離を検出する距離検出部と、
前記所定位置との前記距離の変化の周期のばらつきの程度により、前記回転体の異常を検出する制御部と
を有
し、
前記制御部は、前記所定位置との前記距離の変化に応じた、前記回転体の回転速度が、起動ステージにおける回転速度の増加を示す回転速度プロファイルに示される回転速度から所定量ずれた場合に、前記回転体の前記異常を検出する空気調和システム。
【請求項3】
前記制御部が前記異常を検出した場合に、前記回転体の回転を停止させる請求項1又は2に記載の空気調和システム。
【請求項4】
前記回転体に配置された磁性部材をさらに有し、
前記距離検出部は、前記磁性部材の磁気を検出する磁気センサである請求項1乃至
3の何れか1項に記載の空気調和システム。
【請求項5】
前記距離検出部は、前記磁性部材から垂直方向に所定の距離、離れた位置に設けられている請求項
4に記載の空気調和システム。
【請求項6】
前記距離検出部は、前記磁性部材から水平方向に所定の距離、離れた位置に設けられている請求項
4又は5に記載の空気調和システム。
【請求項7】
前記磁性部材は、前記回転体のバランスウエイトとして設けられている請求項
4乃至6の何れか1項に記載の空気調和システム。
【請求項8】
前記磁性部材は、前記回転体の軸部に設けられている請求項
4乃至6の何れか1項に記載の空気調和システム。
【請求項9】
前記磁性部材は、前記回転体のボスに設けられている請求項
4乃至6の何れか1項に記載の空気調和システム。
【請求項10】
前記磁性部材は、前記ボスの内側に設けられている請求項
9に記載の空気調和システム。
【請求項11】
前記回転体は、プロペラファンである請求項1乃至
10の何れか1項に記載の空気調和システム。
【請求項12】
前記回転体は、シロッコファンである請求項1乃至
10の何れか1項に記載の空気調和システム。
【請求項13】
前記回転体は、ファンに接続されたプーリである請求項1乃至
10の何れか1項に記載の空気調和システム。
【請求項14】
空気調和装置の送風機の回転体の回転中における、前記回転体の回転方向の所定位置との距離を検出する距離検出部と、
前記所定位置との前記距離の変化の周期と、予め設定された基準周期と、の差分が閾値以上である場合に、前記回転体の異常を検出する制御部と
を有
し、
前記制御部は、前記所定位置との前記距離の変化に応じた、前記回転体の回転速度が、起動ステージにおける回転速度の増加を示す回転速度プロファイルに示される回転速度から所定量ずれた場合に、前記回転体の前記異常を検出する異常検出システム。
【請求項15】
空気調和機の送風機の回転体の回転中における、前記回転体の回転方向の所定位置との距離を検出する距離検出部と、
前記所定位置との前記距離の変化の周期のばらつきの程度により、前記回転体の異常を検出する制御部と
を有
し、
前記制御部は、前記所定位置との前記距離の変化に応じた、前記回転体の回転速度が、起動ステージにおける回転速度の増加を示す回転速度プロファイルに示される回転速度から所定量ずれた場合に、前記回転体の前記異常を検出する異常検出システム。
【請求項16】
前記制御部が前記異常を検出した場合に、異常が検出された旨の通知情報を出力する出力部をさらに有する請求項
14又は15に記載の異常検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和装置システム及び異常検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和装置の室外機においては、冬季に氷柱が落下したり、夏季に台風などにより異物が吹き飛ばされたりといったことにより、ファンに損傷が発生することがある。ファンの損傷により、回転体の重心位置が崩れた状態となると、室外機に大きな振動が発生し、最悪の場合、熱交換器や配管の破損に至る場合もある。このような状態になると、空気調和装置の継続運転が不可能となり、復旧にも多大な時間と費用を要することになる。特許文献1には、送風機の振動を加速度センサによって検出することで、送風機の異常を診断する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、加速度センサでは、比較的高周波な信号まで検出されるため、振動を検出しようとした場合には、フィルタ処理が必要になる。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたもので、従来に比べて簡単な処理で送風機の回転体の異常を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、空気調和システムであって、送風機の回転体の回転中における、前記回転体の回転方向の所定位置との距離を検出する距離検出部と、前記所定位置との前記距離の変化の周期と、予め設定された基準周期と、の差分が閾値以上である場合に、前記回転体の異常を検出する制御部とを有を有し、前記制御部は、前記所定位置との前記距離の変化に応じた、前記回転体の回転速度が、起動ステージにおける回転速度の増加を示す回転速度プロファイルに示される回転速度から所定量ずれた場合に、前記回転体の前記異常を検出する。
また、本発明の他の形態は、空気調和システムであって、送風機の回転体の回転中における、前記回転体の回転方向の所定位置との距離を検出する距離検出部と、前記所定位置との前記距離の変化の周期のばらつきの程度により、前記回転体の異常を検出する制御部とを有を有し、前記制御部は、前記所定位置との前記距離の変化に応じた、前記回転体の回転速度が、起動ステージにおける回転速度の増加を示す回転速度プロファイルに示される回転速度から所定量ずれた場合に、前記回転体の前記異常を検出する。
【0007】
本発明の他の形態は、異常検出システムであって、空気調和装置の送風機の回転体の回転中における、前記回転体の回転方向の所定位置との距離を検出する距離検出部と、前記所定位置との前記距離の変化の周期と、予め設定された基準周期と、の差分が閾値以上である場合に、前記回転体の異常を検出する制御部とを有を有し、前記制御部は、前記所定位置との前記距離の変化に応じた、前記回転体の回転速度が、起動ステージにおける回転速度の増加を示す回転速度プロファイルに示される回転速度から所定量ずれた場合に、前記回転体の前記異常を検出する。
また、本発明の他の形態は、空気調和機の送風機の回転体の回転中における、前記回転体の回転方向の所定位置との距離を検出する距離検出部と、前記所定位置との前記距離の変化の周期のばらつきの程度により、前記回転体の異常を検出する制御部とを有を有し、前記制御部は、前記所定位置との前記距離の変化に応じた、前記回転体の回転速度が、起動ステージにおける回転速度の増加を示す回転速度プロファイルに示される回転速度から所定量ずれた場合に、前記回転体の前記異常を検出する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来に比べて簡単な処理で送風機の回転体の異常を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】回転速度プロファイルの一例を示す図である。
【
図7】第1の変形例に係る磁性部材と磁場センサを示す図である。
【
図8】第2の変形例に係る磁性部材と磁場センサを示す図である。
【
図9】第3の変形例に係る磁性部材と磁場センサを示す図である。
【
図10】第2の実施形態に係る異常検出装置を示す図である。
【
図11】第3の実施形態に係る室内機の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、空気調和システムの室外機の概略断面図である。本実施形態の空気調和システム1は、室外機10と、不図示の室内機とが冷媒配管により接続されて冷凍サイクルを構成し、空気調和を行う。本実施形態の室外機10は、上吹き出しタイプで、屋外の基礎20に設置されている。
【0011】
室外機10の筐体110には、空冷式の熱交換器120と、この熱交換器120に通風するための送風機130が備えられている。送風機130は、ファン(プロペラファン)131、シュラウド132、モータ(ファンモータ)133及びモータ支持部材134等を有している。シュラウド132は、ファン131の外周に設けられ、ベルマウスやダクトとして機能する。モータ133は、ファン131を駆動する。モータ支持部材134は、モータ133を支持する。
【0012】
また、筐体110の内部には、圧縮機140、アキュムレータ150、制御品箱160等が設けられている。制御品箱160には、外気温度センサや、空気調和システム1を構成している冷凍サイクルの圧力センサなどの各種センサからの情報が入力され、圧縮機140や膨張弁(図示せず)などの冷凍サイクル部品を制御する制御部、送風機130を制御するためのインバータ装置などが収納されている。
【0013】
図2は、制御品箱160の主要構成を示す図である。制御品箱160には、制御部161と、記憶部162と、通信部163と、が設けられている。制御部161は、各種制御を行う。記憶部162は、各種プログラムや各種情報を記憶している。制御部161は、記憶部162に記憶されているプログラムを実行することにより、各種処理を行う。通信部163は有線又は無線により外部機器と通信を行う。制御部161は、圧縮機140、熱交換器120、膨張弁などを有する冷凍サイクル170の制御等を行う。制御部161はさらに、ファン131の異常を検出する。具体的には、ファン131の第1の軸部131aに磁性部材201が設けられ、これに対向する位置に磁気センサ202が設けられている。制御部161は、磁気センサ202による磁場の検出結果を取得し、検出結果に基づいて、ファン131の異常を検出する。制御部161は、異常を検出すると、異常が検出された旨の通知情報をリモコン180に設けられた表示部181に表示するよう制御する。
【0014】
図3は、送風機130をファン131の軸方向と垂直な方向から見た概略図である。ファン131の第1の軸部131aには、バランスウエイトとして、磁性部材201が設けられている。磁性部材201は、磁性体材料で形成された部材である。また、磁性部材201の垂直方向下側には、磁性部材201の磁場を検出する磁気センサ202が設けられている。磁気センサ202は、モータ133に設けられたセンサ支持部材203により、磁性部材201と物理的に接触しない位置に配置されている。なお、磁気センサ202は、ファン131の回転中において磁性部材201が磁気センサ202に近接したときに磁性部材201の磁場を検出可能な位置に設けられていればよい。
【0015】
本実施形態に係る磁気センサ202は、ホール素子で形成されており、ファン131の回転に伴い磁性部材201との距離が変化することに応じた電圧を検出する。ここで、磁性部材201は、回転体としてのファン131の回転方向における所定位置に配置されており、磁気センサ202は、磁性部材201との距離を検出する距離検出部として機能する。
【0016】
図2を参照しつつ説明した制御部161は、磁気センサ202による磁場の検出結果に応じて、ファン131の異常を検出する。
図4は、制御部161による、異常検出処理を示すフローチャートである。異常検出処理は、ファン131の異常を検出する処理である。ファン131の異常としては、例えば、氷柱の落下によるファン131の欠損等が挙げられる。
【0017】
ステップS100において、制御部161は、室外機10の空調運転が開始されるまで待機し、空調運転を開始した場合には(ステップS100でYES)、処理をステップS102へ進める。ステップS102において、制御部161は、空調運転に応じてファン131の回転を開始するよう制御する。次に、ステップS104において、制御部161は、まずファン131が回転するか否かを判断する。制御部161は、ファン131が回転する場合には(ステップS104でYES)、処理をステップS106へ進める。制御部161は、ファン131が回転しない場合には(ステップS104でNO)、処理をステップS114へ進める。ステップS114において、制御部161は、異常時処理を行い、その後、異常検出処理を終了する。ここで、異常時処理とは、空調運転を停止し、表示部181に異常が検出された旨の通知情報の表示を行う処理である。なお、異常時処理は、少なくともファン131の回転を停止する処理を含めばよい。また、制御部161は、通知情報を表示部181に表示するのに変えて、または表示部181に表示するのに加えて、通知情報を他の装置等に送信してもよい。例えば、制御部161は、空気調和システム1を管理する集中管理装置と接続されている場合には、集中管理装置に通知情報を送信してもよい。ファン131が回転しない場合には、ファン131に異常が生じていると考えられる。そこで、本実施形態の室外機10は、このように、ファン131が回転しない場合に、異常時処理を行うものとする。
【0018】
また、ステップS106において、制御部161は、第1の条件を満たすか否かにより、ファン131の回転異常の有無を判定する。第1の条件とは、プロファイル通りに、ファン131の一定時間当たりの回転数、すなわち回転速度が上昇していることである。空気調和システム1は、所定の制御条件で空調運転を開始する。室外機10の記憶部162には、この制御条件に沿って空調運転を行った場合の、通常時のファン131の回転速度の変化が回転速度プロファイルとして予め格納されている。
【0019】
図5は、回転速度プロファイルの一例を示す図である。回転異常が生じていない、通常状態においては、空調運転を開始した場合、開始直後の起動ステージにおいては、回転速度は徐々に増加する。そして、所定の回転速度まで増加すると、ファン131の回転速度は一定の値となる。回転速度が一定の期間を安定ステージと称する。これに対し、ファン131が欠損していたり、ファン131の間等に異物が挟まっていたりする場合には、起動ステージにおいて、回転速度プロファイルに定められている回転速度まで、ファン131の回転速度が上がらないことが考えられる。そこで、起動ステージにおいては、制御部161は、ファン131の実際の回転速度が回転速度プロファイルに示される回転速度から所定量ずれた場合に、回転異常と判定する。なお、磁気センサ202は、ファン131の回転に応じた磁性部材201との間の距離の変化に応じて、一定期間に磁性部材201を検出する回数から、ファン131の回転速度を求めるものとする。
【0020】
また、他の例としては、制御部161は、回転速度がプロファイルに示される回転速度から所定割合ずれた場合に、回転異常と判定してもよい。このように、制御部161は、回転速度プロファイルに基づいて、回転異常か否かを判定すればよく、そのための具体的な処理は、実施形態に限定されるものではない。
【0021】
制御部161は、回転異常があると判定した場合には(ステップS106でYES)、処理をステップS114へ進める。制御部161は、回転異常がないと判定した場合には(S0106でNO)、処理をステップS108へ進める。ステップS108において、制御部161は、起動ステージが終了したか否かを判定する。本実施形態においては、制御部161は、所定の回転速度に到達した後、所定時間が経過した場合に、起動ステージが終了したと判定するものとする。制御部161は、起動ステージが終了したと判定した場合には(ステップS108でYES)、処理をステップS110へ進める。制御部161は、起動ステージが終了していないと判定した場合には(ステップS108でNO)、処理をステップS106へ進める。すなわち、起動ステージにおいては、制御部161は、ステップS106の処理を繰り返し行うことで、異常を検出する。
【0022】
一方、起動ステージが終了した場合、すなわち、安定ステージに移行した場合には、制御部161は、ステップS110において、第2の条件を満たすか否かにより、ファン131の回転異常の有無を判定する。ここで、第2の条件は、2つの条件を含んでいる。1つ目の条件は、ファン131の実際の回転速度と、
図5に示すような安定ステージにおける回転速度プロファイルに示される回転速度と、の差分が、閾値未満であることである。ファン131の欠損等が生じた場合には、ファン131の実際の回転速度がプロファイルから大きく外れると考えられるためである。なお、閾値は、絶対値で定められてもよく、回転速度プロファイルに定められている回転速度に対する割合で定められてもよい。
【0023】
2つ目の条件は、磁気センサ202による距離の検出周期と、予め設定されている基準周期の差分が閾値以上であることである。ファン131が正常に回転している場合には、ファン131は一定速度で回転する。このため、
図6に示すように、磁性部材201と磁気センサ202の間の距離の変化の周期に応じた、磁気センサ202による電圧の検出周期は一定となる。しかしながら、ファン131の欠損等が生じた場合には、ファン131の重心位置がずれ、振動が生じることにより、検出周期が乱れ、一定値からずれた値となる。2つ目の条件によれば、検出周期から、このようなファン131の振動を検出できる。
【0024】
制御部161は、1つ目の条件及び2つ目の条件のうち少なくとも1つを満たす場合に、回転異常があると判定する。すなわち、制御部161は、ファン131の実際の回転速度とプロファイルに示される回転速度の差分が閾値以上である場合に、回転異常があると判定する。また、制御部161は、ファン131の回転に応じて磁気センサ202が検出する検出周期と、基準周期のずれが閾値以上である場合に、回転異常があると判定する。ここで、閾値は、絶対値で定められてもよく、基準周期に対する割合で定められてもよい。
【0025】
なお、第2の条件のうち、1つ目の条件は、ファン131の実際の回転速度に基づくものであればよく、具体的な条件は実施形態に限定されるものではない。他の例としては、プロファイルに替えて、比較対象となる基準回転速度が記憶部162に記憶されており、制御部161は、この基準回転速度と実際の回転速度との比較結果から回転異常の有無を判定してもよい。
【0026】
また、第2の条件のうち2つ目の条件は、ファン131の回転に応じて磁気センサ202が検出する検出周期に基づくものであればよく、具体的な条件は実施形態に限定されるものではない。他の例としては、制御部161は、基準周期との比較を行うことなく、検出により得られた複数の検出周期のばらつきの程度に応じて回転異常の有無を判定してもよい。例えば、制御部161は、検出周期の標準偏差が閾値以上の場合に回転異常と判定してもよい。また、他の例としては、制御部161は、各周期における波形の乱れに基づいて、回転異常の有無を判定してもよい。
【0027】
制御部161は、第2の条件を満たす場合、すなわち回転異常があると判定した場合には(ステップS110でYES)、処理をステップS114へ進める。また、制御部161は、第2の条件を満たさない場合、すなわち回転異常がないと判定した場合には(ステップS110でNO)、処理をステップS112へ進める。ステップS112において、制御部161は、空調運転が終了したか否かを判定する。制御部161は、空調運転が終了した場合には(ステップS112でYES)、処理を終了する。制御部161は、空調運転が終了していない場合には(ステップS112でNO)、処理をステップS110へ進める。すなわち、安定ステージにおいては、制御部161は、ステップS110の処理を繰り返し行うことで、異常を検出する。
【0028】
また、本実施形態の制御部161は、空気調和システム1の室外機10の設置直後に、予め設定された初期運転を行う。そして、制御部161は、この初期運転の際に、起動ステージ及び安定ステージにおける回転速度を計測し、これらに基づいて、プロファイルを作成し、これを記憶部162に格納するものとする。さらに、制御部161は、初期運転の安定ステージにおいて、検出周期を計測し、これを基準周期として記憶部162に格納するものとする。このように、制御部161は、初期運転時にプロファイル及び基準周期を自動的に設定することができる。
【0029】
以上のように、本実施形態の空気調和システム1の室外機10は、磁性部材201と、磁気センサ202と、の簡単な構成により、ファン131の振動を検出することで、ファン131の異常を検出することができる。
【0030】
加速度センサを用いてファンの振動を検出する従来技術があるが、磁性部材201及び磁気センサ202は、加速度センサに比べて安価なので、本実施形態によれば、加速度センサを用いた構成に比べてコストを低く抑えることができる。また、加速度センサにおいては、低周波数の信号だけでなく、比較的高い周波数の信号まで検出する。このため、振動を検出するためには、フィルタが必要になる。これに対し、本実施形態の磁性部材201と磁気センサ202の構成によれば、600rpm程度の比較的低い周波数の信号のみを検出することができる。すなわち、本実施形態の室外機10は、加速度センサを用いた従来技術に比べて、より簡単な構成により、送風機の回転体の異常を検出することができる。また、磁性部材201は、バランスウエイトとしての機能も備える。すなわち、既存のファン131に対し、容易に磁性部材201を設けることができる。
【0031】
第1の実施形態の第1の変形例について説明する。磁性部材201は、第1の軸部131aに配置されればよく、バランスウエイトに限定されるものではない。他の例としては、第1の軸部131aの、ファン131の回転方向における所定位置に磁性材料を塗布することにより、磁性部材201を配置してもよい。また、他の例としては、第1の軸部131aのうち磁性部材201の部分を切り欠きとして成形し、切り欠き部に対応した磁性材料を射出成型することにより、磁性部材201を配置してもよい。また、他の例としては、
図7に示すように、磁性部材201は、第1の軸部131aの補強用の金属ボス135の内側に配置されてもよい。この場合も、組み立て工程を変更することなく、磁性部材201を配置することができる。また、金属ボス135の内側に磁性部材201を設けることで、磁気センサ202を第1の軸部131aの内側に配置することができるので、磁気センサ202に氷などの異物がぶつかり破損する可能性を低減することができる。
【0032】
また、第2の変形例としては、
図8に示すように、第1の軸部131aの回転方向において、全面に渡って、複数の磁性部材201をN極、S極、N極、というように交互に配置してもよい。これにより、より高精度に回転異常を検出することができる。
【0033】
また、第3の変形例としては、室外機10は、水平方向の磁気を検出してもよい。
図9は、第3の変形例に係る磁性部材201と、磁気センサ202の構成例を示す図である。ファン131の第1の軸部131aから下に伸びる第2の軸部131bに磁性部材201が設けられている。磁気センサ202は、磁性部材201から水平方向に所定距離だけ離れた位置に配置される。この場合にも、ファン131の振動に起因し、ファン131の回転に応じて、磁気センサ202と磁性部材201の距離がわずかにずれる。磁気センサ202は、この距離のずれに起因した磁場を検出することができる。そこで、この場合も、制御部161は、磁場に応じてファン131の異常を検出することができる。このように、制御部161は、垂直方向の距離変化及び水平方向の距離変化の少なくとも一方に基づいて、ファン131の異常を検出すればよい。
【0034】
また、第4の変形例としては、
図4を参照しつつ説明した異常検出処理の主体は、室外機10の制御部161に限定されるものではない。他の例としては、不図示の室内機の制御部が異常検出処理を実行してもよい。また、複数の室外機や複数の空気調和装置を管理する集中管理装置により室外機10が管理されている場合には、集中管理装置が異常検出処理を実行する空気調和システムとして構成されてもよい。
【0035】
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態に係る異常検出システム30を示す図である。ここでは、異常検出システム30について、第1の実施形態に係る空気調和システム1と異なる点を主に説明する。異常検出システム30は、
図4を参照しつつ説明した異常検出処理を実行する制御装置300と、磁性部材311と、磁場センサ312とを備えていえる。異常検出システム30は、既存の、例えばすでに所定の空間に設置された空気調和装置4における回転体410の異常を検出する。
図16に示す空気調和装置4は、回転体410としてのファンを備えた室外機と、制御品箱460と、冷凍サイクル470と、リモコン480と、不図示の室内機と、を備えている。
【0036】
管理者等が磁性部材311を既存の空気調和装置4の回転体410に設置し、さらに、対応する位置に磁場センサ312を設置する。制御装置300は、
図2を参照しつつ説明した制御品箱160と同様に、制御部301と、記憶部302と、通信部303とを備えている。通信部303は、空気調和装置4の制御品箱460と通信可能に接続される。制御部301は、磁場センサ312により検出された、磁性部材311との距離に応じた電圧の時間変化に応じて、回転体410の異常を検出する。通信部303は、異常が検出された場合に、異常が検出された旨の通知情報を空気調和装置4、すなわち制御品箱460に送信する。ここで、通信部303は、通知情報を出力する出力部の一例である。制御品箱460の不図示の制御部は、異常検出システム30から通知情報を受信すると、通知情報をリモコン480の表示部481に表示する。このように、異常検出システム30を、既存の空気調和装置4に設置することにより、既存の空気調和装置4についても、異常検出を行うことができる。
【0037】
なお、通知情報の出力先は、実施形態に限定されるものではない。他の例としては、異常検出システム30は、空気調和装置4の表示部481と別に表示部を備え、制御部301は、表示部に通知情報を表示してもよい。また、異常検出システム30は、スピーカを備え、制御部301は、スピーカに通知情報に対応した警報音を出力させてもよい。また、他の例としては、異常検出システム30は、集中管理装置に通知情報を送信してもよい。
【0038】
(第3の実施形態)
図11は、第3の実施形態に係る空気調和装置5の室内機50の概略図である。
図11(a)は、室内機50の正面の概略図である。ここでは、空気調和装置5について、第1の実施形態に係る空気調和システム1と異なる点を主に説明する。室内機50は、筐体501内に、熱交換器502と、送風機503と、モータ504と、を備えている。
図11(b)は、送風機503の側面の概略図である。送風機503は、ファンランナと、ファンランナを覆うケーシングとを含んでいる。送風機503と、モータ504の間には、送風機側プーリ505と、モータ側プーリ506が設けられている。送風機側プーリ505とモータ側プーリ506に掛けられたベルト507を介して、モータ504の電力が送風機503へ伝達される。また、熱交換器502の側面には、液側冷媒配管508と、ガス側冷媒配管509が配されている。また、空気吸い込み口510は、正面下側に配され、空気吹き出し口511は、正面上側に配されている。
【0039】
第3の実施形態においては、送風機側プーリ505に磁性部材521が配置されている。さらに、磁性部材521に対向する位置に磁場センサ522が配置されている。本実施形態においては、室内機50の制御装置530が異常検出処理を行う。なお、制御装置530の構成は、制御品箱160の構成と同様である。以上のように、第3の実施形態に係る空気調和装置5においては、室内機50における送風機503の異常を検出することができる。
【0040】
また、既存の室内機の送風機の異常を検出するために、第2の実施形態において説明したような異常検出装置を室内機に設置してもよい。
【0041】
また、上記実施形態においては、回転体との距離を検出するための距離検出部として、磁場センサを用いる場合を例に説明したが、距離検出部は、磁場センサに限定されるものではない。距離検出部の他の例としては、レーザ変位計、物理的な接触を検出するスイッチ、スリットLEDとフォトダイオードの組み合わせ等があげられる。
【0042】
また、異常検出処理における異常検出の対象は、空気調和装置の送風機の回転体であればよく、上記実施形態に限定されるものではない。他の例としては、空気調和装置は、シロッコファンを対象として、異常検出を行ってもよい。
【0043】
なお、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、例えばある実施形態の変形例を他の実施形態に適用するなど、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1、4 空気調和システム
2 室内機
3 異常検出システム
10 室外機
131 ファン
131a 第1の軸部
131b 第2の軸部
133 モータ
201 磁性部材
202 磁場センサ
203 センサ支持部材