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  • 特許-生体情報処理装置およびその制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】生体情報処理装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
A61B5/02 310Z
A61B5/02 310A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019135409
(22)【出願日】2019-07-23
(65)【公開番号】P2021016702
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(72)【発明者】
【氏名】橋本 遼太朗
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 翔
(72)【発明者】
【氏名】木下 理美
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-176740(JP,A)
【文献】国際公開第2018/074145(WO,A1)
【文献】特開2013-184062(JP,A)
【文献】特開2016-221092(JP,A)
【文献】国際公開第2018/202521(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脈波信号を取得する取得手段と、
前記脈波信号に閾値を適用する適用手段と、
前記閾値を更新する更新手段と、を有し、
前記更新手段は、前記脈波信号のうち前記閾値を上回る区間における最大値と、前記閾値との重み付け加算によって、前記閾値を更新し、
前記適用手段は、前記更新手段により更新された閾値を適用する、
ことを繰り返し実行することを特徴とする生体情報処理装置。
【請求項2】
前記閾値に対する重みを、前記最大値に対する重みより大きくすることを特徴とする請求項に記載の生体情報処理装置。
【請求項3】
前記閾値に対する重みをa、前記最大値に対する重みをb、脈波信号の最大値に対する前記適用手段が適用する閾値の割合をc(0<c<1)としたとき、b=c×(1-a)を満たすように前記閾値に対する重みaおよび前記最大値に対する重みbを定めることを特徴とする請求項またはに記載の生体情報処理装置。
【請求項4】
前記更新手段は、前記脈波信号の1拍ごとに前記閾値の更新を行うことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の生体情報処理装置。
【請求項5】
前記脈波信号が、微分脈波信号であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の生体情報処理装置。
【請求項6】
前記取得手段は、赤色光または赤外光の反射光量または透過光量の変化に基づいて前記脈波信号を取得することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の生体情報処理装置。
【請求項7】
前記脈波信号のうち前記閾値を上回る直近の区間における前記最大値と、現区間における前記最大値との時間差から、瞬時脈拍数を算出する算出手段をさらに有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の生体情報処理装置。
【請求項8】
前記更新手段は、所定時間継続して前記脈波信号が前記閾値を超えない場合、前記閾値を予め定められた割合だけ低減させることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の生体情報処理装置。
【請求項9】
生体情報処理装置が有する制御手段が実行する、前記生体情報処理装置の制御方法であって、
脈波信号を取得する取得工程と、
前記脈波信号に閾値を適用する適用工程と、
前記閾値を更新する更新工程と、を有し、
前記更新工程では、前記脈波信号のうち前記閾値を上回る区間における最大値と、前記閾値との重み付け加算によって、前記閾値を更新し、
前記適用工程と前記更新工程とを繰り返し実行する、
ことを特徴とする生体情報処理装置の制御方法。
【請求項10】
コンピュータを、請求項1からのいずれか1項に記載の生体情報処理装置が有する各手段として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体情報処理装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脈波は心臓や血管に関する様々な情報を含む生体情報であり、計測が容易であることから、広く利用されている。脈波は様々な方法で計測することができるが、カフや圧力トランスデューサによって体表面で検出した圧力の変化や、指先で検出した人体組織の透過光量または反射光量の変化を、脈波として計測する方法が知られている。以下、トランスデューサ、カフ、および、発光および受光素子など、脈波の検出に用いるデバイスを脈波センサと呼ぶ。
【0003】
生体情報モニタのような生体情報処理装置では、被検者に装着された脈波センサから得られる信号から情報を得るため、信号に閾値を適用することがある。例えば、特許文献1には、大動脈弁解放の時点を検出するために、脈波の微分信号に固定の閾値を適用することが開示されている。また、閾値は、脈波センサから(少なくとも周期的に)閾値を超える信号が入力されているか否かによって、被検者の脈が触れているか否か(有効な脈波信号が得られているか否か)を検出したり、脈波のピークを検出する信号区間を抽出したりするために用いられたりもする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-33615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
脈が触れているか否かの検出や、脈波のピークを検出する信号区間を抽出したりする際に脈波信号に対して適用する閾値は、ノイズなど、脈波以外の信号成分の影響を抑制するために用いられる。脈波と他の信号成分のピークに明確かつ安定した差がある場合には、固定の閾値を用いて脈波と他の信号成分とを分離することができる。しかしながら、脈波の最大振幅は被検者によって大きく異なり得るため、一般的な被検者を前提として定めた閾値を用いた場合、脈の弱い被検者について適切な検出ができないことが起こりうる。
【0006】
リアルタイムな検出が不要であれば、計測が終了してから脈波信号を解析し、計測された脈波信号に適した閾値を決定すればよい。しかし、リアルタイムに瞬時脈拍数を算出するような場合、動的に閾値を決定することが望ましい。また、一拍ごとに直近の所定時間分の脈波信号を解析して閾値を決定しようとすると、容量の大きなメモリや高性能のプロセッサが必要であり、コストや消費電力の観点から望ましくない。
【0007】
本発明はこのような従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、脈波信号に適用する閾値をリアルタイムに、かつ簡便な構成で決定することが可能な生体情報処理装置およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的は、脈波信号を取得する取得手段と、脈波信号に閾値を適用する適用手段と、閾値を更新する更新手段と、を有し、更新手段は、脈波信号のうち、閾値を上回る区間における最大値と、閾値との重み付け加算によって、閾値を更新し、適用手段は、更新手段が更新した閾値を適用する、ことを繰り返し実行することを特徴とする生体情報処理装置によって達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、脈波信号に適用する閾値をリアルタイムに、かつ簡便な構成で決定することが可能な生体情報処理装置およびその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る生体情報処理装置の一例としての動脈血酸素飽和度(SpO)計測装置の機能構成例を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る動脈血酸素飽和度(SpO)計測装置の動作に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明をその例示的な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は本発明をいかなる意味においても限定しない。また、実施形態で説明される構成の全てが本発明に必須とは限らない。また、明らかに不可能である場合や、それが否定されている場合を除き、異なる実施形態に含まれる構成を組み合わせたり、入れ替えたりしてもよい。また、重複した説明を省略するために、添付図面においては全体を通じて同一もしくは同様の構成要素には同一の参照番号を付してある。
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の例示的な実施形態について詳細に説明する。なお、ここでは本発明に係る生体情報処理装置の一例としての動脈血酸素飽和度(SpO)計測装置に関して説明する。しかし、本発明において動脈血酸素飽和度の計測は必須でない。本発明は、何らかの脈波センサを用いて脈波信号をリアルタイムに取得可能な任意の電子機器に適用可能である。このような電子機器には、生体情報モニタ、睡眠評価装置(睡眠ポリグラフィー)、血圧計、脈波計といった医療機器だけでなく、生体信号処理アプリケーションを実行可能な一般的なコンピュータ機器(スマートフォン、タブレット端末、メディアプレーヤ、スマートウォッチ、ゲーム機など)が含まれるが、これらに限定されない。
【0013】
また、ここでは透過もしくは反射光量の変化を脈波として検出する脈波センサを用いる構成について説明するが、カフや圧力トランスデューサなど、圧力の変化を脈波として検出する脈波センサを用いる構成についても同様に実施可能である。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係るSpO計測装置の機能構成例を示すブロック図である。
センサ部100は、第1の波長の光を発する第1発光部101と、第2の波長の光を発する第2発光部102と、受光量に応じた電気信号を出力する受光部103とを有する。受光部103は第1発光部101が発した光および第2発光部102が発した光の透過光または反射光を受光するように配置されている。
【0015】
第1および第2発光部101、102としては、SpO計測装置では一般的に赤色光と赤外光とを発するLEDが用いられる。ただし、波長や光源の種類についてはこれらに限定されず、波長λ1、λ2における酸化ヘモグロビンの吸光度をa1λ1、a1λ2、還元ヘモグロビンの吸光度をa2λ1、a2λ2とすると、a1λ1とa1λ2、a2λ1とa2λ2がそれぞれ有意に異なる任意の波長λ1、λ2の光を発生する任意の光源を用いることができる。本実施形態では一例として、第1発光部101に波長660nmの赤色光を発生するLEDを、第2発光部102に波長900nmの赤外光を発生するLEDを用いるものとする。
【0016】
透過光量を検出する構成の場合、測定部位(耳朶や指尖など)を挟んで第1および第2発光部101、102と対向する位置に受光部103が配置される。また、反射光量を検出する構成の場合、第1発光部101、と受光部103、第2発光部102が近接して配置される。なお、透過光量を検出するか反射光量を検出するかによらず、第1および第2発光部101、102は近接して配置され、また受光部103は第1および第2発光部から同様の条件(例えば距離や角度)で透過光または反射光を受光するように配置される。
【0017】
受光部103は、第1発光部101および第2発光部102が発した光の透過光または反射光を受光し、受光量に応じた電気信号を出力する。受光部103は、検出する透過光または反射光の波長を感度波長とする受光センサ、例えばフォトダイオードやフォトトランジスタであってよい。受光部103により、第1および第2の波長の光についての、計測部位による透過光量あるいは反射光量の変化として、第1および第2の脈波信号が検出される。
【0018】
制御部110は例えばプログラマブルプロセッサ、不揮発性メモリ(ROM)、および揮発性メモリ(RAM)を有し、ROMに記憶されたプログラムをRAMに読み込んで実行することによって各部を制御し、SpO計測装置の機能を実現する。なお、制御部110の動作のうち少なくとも一部はプログラマブルロジックアレイなどのハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0019】
駆動部120は制御部110の指令による発光量および発光タイミングに従い、第1および第2発光部101、102を駆動する。制御部110は、1つの受光部103を用いて2つの波長についての透過光量または反射光量を検出するため、第1発光部101と第2発光部102とを交互に所定時間ずつ発光させるように発光タイミングを制御する。
【0020】
信号処理部130は、受光部103が出力する信号に増幅やA/D変換などの信号処理を適用し、脈波信号として制御部110に出力する。信号処理部130は、第1発光部101と第2発光部102の発光タイミングに従って、受光部103が出力信号を、第1発光部101が発した光の透過または反射光量を示す第1脈波信号と、第2発光部102が発した光の透過または反射光量を示す第2脈波信号として出力する。
【0021】
なお、第1発光部101と第2発光部102とは同時に発光しないため、厳密には第1脈波信号と第2脈波信号の取得タイミングは異なる。しかし、第1発光部101と第2発光部102の発光周波数を脈波の周波数成分よりも十分高くすることで、第1脈波信号および第2脈波信号を同じタイミングでサンプリングされた計測値群として取り扱うことができる。従って、以下では第1脈波信号および第2脈波信号を同じタイミングで取得したものとして説明する。
【0022】
制御部110は第1脈波信号および第2脈波信号の少なくとも一方に対して閾値を適用する。制御部110は、例えば脈波信号が閾値を上回る区間を有することを検出すると、脈波が入力されていると判定する。また、制御部110は、脈波信号が閾値を上回る区間ごとにピーク値(最大値)と、ピーク値が得られたサンプルを特定する情報を保存する。そして、制御部110は、今回用いた閾値と、検出したピーク値とを用いて閾値を更新する。
【0023】
このように、現在の拍についての脈波信号の最大値と、現在の閾値とを用いて閾値を更新するため、次の拍については更新された閾値が適用される。制御部110は例えば直近に検出したピーク値と、今回検出したピーク値との時間差により、1拍ごとに瞬時脈拍数を算出することができる。時間差は、ピーク値間のサンプル数とサンプリング周期とから求めることができる。閾値の更新方法の詳細については後述する。
【0024】
制御部110は、第1および第2脈波信号を記録部140に記録する。記録部140は例えば不揮発性メモリであり、また、メモリカードのような着脱可能な記録媒体であってもよい。
表示部150は例えば液晶ディスプレイであり、制御部110の制御に従い、SpO計測値および、SpO計測装置の動作状態や設定メニュー画面などを表示する。
【0025】
操作部160はユーザがSpO計測装置に指示を入力するためのボタン、スイッチ、キーなどを含む。表示部150がタッチディスプレイの場合、タッチパネル部分は操作部160に含まれる。
外部インタフェース(I/F)170は外部機器と有線または無線によって通信するための通信インタフェースである。
【0026】
SpO計測装置は、例えばLambert-Beerの法則を用いて、血液中のヘモグロビン(酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビン)のモル吸光係数と、ヘモグロビンによる吸光度の異なる2波長の光の透過光量とからSpOを計測することができる。なお、これらのパラメータに基づくSpOの計測方法は公知であるため、その詳細についての説明は省略する。
【0027】
次に、本実施形態において、脈波信号に適用する閾値の決定および更新方法について説明する。閾値は、脈波センサ(ここでは発光センサと受光センサの組み合わせ)によって検出される脈波信号から、一拍ごとにピーク位置を含んだ区間(ピーク区間)を検出することができ、かつノイズによるピークを誤検出しない値とすることが望ましい。ここで、ピーク位置はサンプル値が正の最大値(=ピーク値)となる位置である。さらに、被検者の個体差や計測状態の変化などによる脈波信号の振幅の変化に応じた値に動的に更新できることが望ましい。また、閾値の決定や更新に要する計算が単純であることが望ましい。
【0028】
このような観点から、本実施形態では以下のように閾値を決定・更新する。
新閾値=a×現在の閾値+b×現在の拍の脈波信号のピーク値 (1)
ここで、a,bはそれぞれ0より大きく1より小さい係数であり、予め、例えば実験的に決定することができる。
【0029】
このように、現在の拍に用いた閾値と、現在の拍のピーク値(最大値)との重み付け加算によって次の拍の脈波信号に用いる新たな閾値を決定することにより、脈波信号の振幅の増減に追従した閾値を決定することができる。また、脈波信号の現在の拍のピーク値だけでなく、現在の閾値を考慮することで、現在の拍の脈波信号に大振幅の信号が過渡的に混入した場合であっても、閾値の極端な変動を抑制することができる。
【0030】
また、係数aを係数bよりも大きく(a>b)することで、脈波信号の現在の拍のピーク値が新閾値に対して寄与する割合を、現在の閾値が寄与する割合よりも小さくすることができる。これにより、閾値が急激に増加することを一層効果的に抑制することができる。
【0031】
また、式(1)によって得られる新閾値は、脈波信号のピーク値が一定であれば一定の値となる。つまり、安定した脈波信号が得られている場合、閾値はほぼ一定の値を維持する。したがって、安定した脈波信号が得られている場合の閾値を、ピーク値に対して特定の割合c(0<c<1)と定めたい場合には、b=c×(1-a)の関係を満たすように係数a,bの値を定めればよい。
【0032】
例えば、cを0.5、すなわちピーク値の50%としたい場合、b/(1-a)=1/2の関係を満たすように係数a,bの値を決定すればよい。なお、閾値の初期値は予め定めておくことができる。
【0033】
本実施形態による動的な閾値決定方法は、式(1)のような単純な算出により閾値を決定することができるため、演算コストが非常に小さい。また、ピーク値の検出は、閾値を超える信号区間における最大サンプル値の検出であるため、最大でも1拍分の脈波信号を蓄積できればよく、また実施も容易である。したがって、連続して入力される脈波信号に対して、閾値の適用と更新とを例えば一拍ごとに繰り返し実行しても負荷は小さい。
【0034】
図2は、本実施形態の閾値更新方法を瞬時脈拍数算出処理中に行う一例に関するフローチャートである。
S201で制御部110は、脈波信号の取得を開始する。
S203で制御部110は、A/D変換されてサンプル列に変換された脈波信号のサンプルを取得する。
S205で制御部110は、取得したサンプルの値が閾値を超えているか否かを判定し、超えていると判定されればS207へ処理を進め、判定されなければS203へ処理を戻す。
【0035】
S207で制御部110は、取得したサンプルの値が保存されている最大値より大きいか否かを判定し、大きいと判定されればS209へ、判定されなければS210へ処理を進める。
S209で制御部110は、保存されている最大値を、取得したサンプルの値で更新し、処理をS211に進める。
S211で制御部110は、次のサンプルを取得して処理をS207に戻す。
S210で制御部110は、取得したサンプルの値が閾値を下回ったか否かを判定し、下回ったと判定されればS213へ、判定されなければS211へ処理を進める。
【0036】
このように、サンプル値が閾値を超えた場合には、その後、サンプル値が閾値を下回るまでの区間(すなわち、現在の拍のピーク区間)のサンプル値について最大値を検出する。S210でサンプル値が閾値を下回ったと判定された場合、S213で制御部110は、上述したようにして閾値を更新し、次の拍のピーク区間の検出に用いるために保存する。
【0037】
S215で制御部110は、現在の拍のピーク区間で検出した最大値のサンプルと、前の拍のピーク区間で検出した最大値のサンプルとの時間差から、瞬時脈拍数(拍/分)を算出する。制御部110は算出した瞬時脈拍数を例えば表示部150に表示する。制御部110は、現在の拍の最大値を初期化して処理をS203に戻す。
【0038】
なお、S205においてサンプル値が閾値を超えるとの判定が所定時間継続してなされない場合には、現在の閾値を所定割合(例えば20%)ずつ低減するようにしてもよい。例えば小振幅の脈波信号が入力された場合、初期値として用いる閾値でピーク区間が検出できないことが起こりうる。このような場合、閾値を低減することにより、ピーク区間を検出することが可能になる。S205の判定結果に基づく閾値の低減は、サンプル値が閾値を超えるとの判定がなされるまで繰り返し実行することができる。なお、低減の実行により閾値が所定値未満になった場合には、メッセージなどを表示部150に表示するなどして、ユーザにセンサの取り付け状態の確認を求めてもよい。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、次の拍の脈波信号に適用する閾値を、現在の閾値と、現在の拍の脈波信号の最大値とに基づいて動的に決定するようにした。そのため、簡便な構成により、脈波信号の振幅の変動に追従し、かつノイズのような過渡的な信号の混入の影響を受けづらい閾値を得ることができる。
【0040】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、説明及び理解を容易にするため、センサ部100から得られる脈波信号に対して閾値を適用する構成について説明した。しかし、微分脈波信号(速度脈波信号)など、特定の前処理を行った脈波信号に対して閾値を適用してもよい。この場合、上述した閾値の更新処理についても、微分脈波信号を用いて実施する。微分脈波信号は、センサ部から得られる脈波信号を所定の時定数を有する微分回路に入力したり、隣接するサンプル間の差分とサンプル周期とを用いて単位時間当たりの変化量を示すデータに変換したりして、公知の手法で例えば信号処理部130や制御部110で生成することができる。
【0041】
なお、本発明に係る生体情報処理装置は、一般的に入手可能な、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末のようなプログラムを実行可能な電子機器にセンサ部100を接続した構成でも実現できる。このような場合、電子機器が有するプロセッサで、上述した閾値更新処理や図2に示したフローチャートの動作を実行することによっても本発明に係る生体情報処理装置を実現できる。したがって、脈波信号をリアルタイムに取得可能な電子機器が有するプロセッサを、制御部110として機能させるプログラム(アプリケーションソフトウェア)および、プログラムを格納した記憶媒体(CD-ROM、DVD-ROM等の光学記録媒体や、磁気ディスクのような磁気記録媒体、半導体メモリカードなど)もまた本発明を構成する。
【0042】
本発明は上述した実施形態の内容に制限されず、発明の精神および範囲から離脱することなく様々な変更及び変形が可能である。したがって、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0043】
100…センサ部、110…制御部、120…駆動部、130…信号処理部
図1
図2