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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】軌跡データ分析システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/02 20100101AFI20231124BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019140843
(22)【出願日】2019-07-31
(65)【公開番号】P2021025775
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】刑部 好弘
(72)【発明者】
【氏名】淺原 彰規
(72)【発明者】
【氏名】北野 佑
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/093102(WO,A1)
【文献】特開平08-271625(JP,A)
【文献】特開2014-134971(JP,A)
【文献】WANG, Lei 外5名,“Articulation Points Guided Redundancy Elimination for Betweenness Centrality”,PROCEEDINGS OF THE 21ST ACM SIGPLAN SYMPOSIUM ON PRINCIPLES AND PRACTICE OF PARALLEL PROGRAMMING [PPoPP '16],2016年02月27日,Article 7, 13 Pages,<URL: https://doi.org/10.1145/2851141.2851154>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00 - G01S 5/14
G01S 19/00 - G01S 19/55
G06Q 30/02 - G06Q 30/0283
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌跡データ分析システムであって、
軌跡データを格納する1以上の記憶装置と、
1以上のプロセッサと、を含み、
前記軌跡データは、1以上の移動体の1以上の軌跡レコードを含み、
前記1以上の軌跡レコードは、複数の軌跡セグメントを含み、
前記軌跡セグメントは、開始位置及び終了位置を示す位置情報と、開始時刻及び終了時刻を示す時刻情報とを含み、
前記軌跡データは、前記1以上の移動体の位置及び時刻を示す複数測位レコードを含む測位データから生成されており、
前記1以上のプロセッサは、
前記軌跡データにおいて、前記開始時刻及び前記終了時刻の差が、前記測位データの取得周期より長い第1閾値以上の、軌跡セグメントを選択し、
選択した前記軌跡セグメントの分割許容レベルを、選択から外れた軌跡セグメントの分割許容レベルより低く決定し、
前記軌跡データを包含する分析全体域を決定して分析区画の初期値に設定し、
前記分析全体域において、最大の分析区画の選択及び分割を繰り返して、複数の分析区画を生成し、
前記分割は、
択した前記分析区画を分割する複数の仮分割線を決定し、
択した前記分析区画において、前記複数の仮分割線の各仮分割線と前記軌跡セグメントとの交差回数、及び、各仮分割線と交差する軌跡セグメントの分割許容レベル、に基づいて、各仮分割線の評価値を決定し、
前記評価値に基づいて、前記複数の仮分割線から実際の分割線を選択し、
前記1以上のプロセッサは、
前記軌跡セグメントが存在する分析区画毎に、前記軌跡セグメントの開始時刻と終了時刻との差に基づき、前記軌跡セグメントが位置情報及び時刻情報の計測不良セグメントであるか判定し、
前記計測不良セグメントと判定された軌跡セグメントの位置に基づき、前記軌跡データを分析する、軌跡データ分析システム。
【請求項2】
請求項1に記載の軌跡データ分析システムであって、
前記1以上のプロセッサは、
軌跡データが存在する分析区画それぞれの前記軌跡データを教師データとする機械学習により、前記分析区画それぞれの機械学習モデルを生成し、
前記教師データと異なる入力動線レコードを、前記複数の分析区画に分割し、
記機械学習モデルを適用した結果を統合することで、前記入力動線レコードに対する分析結果を得る、軌跡データ分析システム。
【請求項3】
軌跡データ分析システムによる軌跡データの分析方法であって、
前記軌跡データは、1以上の移動体の1以上の軌跡レコードを含み、
前記1以上の軌跡レコードは、複数の軌跡セグメントを含み、
前記軌跡セグメントは、開始位置及び終了位置を示す位置情報と、開始時刻及び終了時刻を示す時刻情報とを含み、
前記軌跡データは、前記1以上の移動体の位置及び時刻を示す複数測位レコードを含む測位データから生成されており、
前記分析方法は、
前記軌跡データ分析システムが、前記軌跡データにおいて、前記開始時刻及び前記終了時刻の差が、前記測位データの取得周期より長い第1閾値以上の、軌跡セグメントを選択し、
前記軌跡データ分析システムが、選択した前記軌跡セグメントの分割許容レベルを、選択から外れた軌跡セグメントの分割許容レベルより低く決定し、
前記軌跡データ分析システムが、前記軌跡データを包含する分析全体域を決定して分析区画の初期値に設定し、
前記軌跡データ分析システムが、前記分析全体域において、最大の分析区画の選択及び分割を繰り返して、複数の分析区画を生成し、
前記分割は、
択した前記分析区画を分割する複数の仮分割線を決定し、
択した前記分析区画において、前記複数の仮分割線の各仮分割線と前記軌跡セグメントとの交差回数、及び、各仮分割線と交差する軌跡セグメントの分割許容レベル、に基づいて、各仮分割線の評価値を決定し、
前記評価値に基づいて、前記複数の仮分割線から実際の分割線を選択し、
前記軌跡データ分析システムが、前記軌跡セグメントが存在する分析区画毎に、前記軌跡セグメントの開始時刻と終了時刻との差に基づき、前記軌跡セグメントが位置情報及び時刻情報の計測不良セグメントであるか判定し、
前記軌跡データ分析システムが、前記計測不良セグメントと判定された軌跡セグメントの位置に基づき、前記軌跡データを分析する、分析方法。
【請求項4】
請求項3に記載の分析方法であって、
前記軌跡データ分析システムが、
軌跡データが存在する分析区画それぞれの前記軌跡データを教師データとする機械学習により、前記分析区画それぞれの機械学習モデルを生成し、
前記教師データと異なる入力動線レコードを、前記複数の分析区画に分割し、
記機械学習モデルを適用した結果を統合することで、前記入力動線レコードに対する分析結果を得る、分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌跡データ分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信端末に付属するGPS(Global Positioning System)装置の測位データや、通信端末が接続している通信キャリアの基地局あるいはWi-Fiアクセスポイントの位置情報を使って、通信端末の位置情報を取得することができる。特に、物体がいつどこに存在したかを表す、時刻と結びつけられた位置情報を示すデータをここでは測位レコードと呼ぶ。
【0003】
対象物体の測位レコードは、カメラやレーザ計測器のような、単数または複数の計測装置によっても取得することができる。さらに、入退室管理システムや自動改札機など、ICタグ等何らかの個体識別装置の入退出ログによっても対象物体の測位レコードを取得することができる。
【0004】
測位レコードを取得した地理空間をここでは測位エリアと呼ぶ。地理空間は、2次元座標空間や、3次元座標空間である。
【0005】
任意の物体の測位レコードを時系列に並べることで、その物体の移動履歴に関する情報を得ることができる。特に、ある物体の座標値を時系列順に並べたときに隣り合う二点間の移動軌跡を、ここでは軌跡セグメントと呼ぶ。ある物体について時系列的に並べられた軌跡セグメントの集合をここでは軌跡レコードと呼ぶ。さらに、複数の物体に関する軌跡レコードの集合を、ここでは軌跡レコード群と呼ぶ。
【0006】
近年、こうした軌跡レコード群を対象としたデータマイニング技術は、物体の移動傾向分析や行動予測などに応用されている。(非特許文献1)
【0007】
例えば、「学校構内」を測位エリアとして生徒の行動を分析対象とし、その行動予測をしようとした場合、運動場と教室では生徒の移動傾向は大きく異なることが容易に予想される。従って、行動予測精度を上げるためには、軌跡レコード群を運動場の軌跡レコード群と教室の軌跡レコード群とに分割し、それぞれに対して機械学習などの手法を適用し行動予測する必要がある。
【0008】
このように、分析に適した区画のサイズよりも測位エリアが大きい場合には、測位エリアを適切に分割して複数の分析区画を設定し、軌跡レコード群を分析区画ごとに分析する方法が一般的に採用される。ここで、分割された各軌跡レコード群を、分析区画内軌跡レコード群と呼ぶ。
【0009】
測位エリアの分割は、例えば、先ほど例に挙げた運動場や教室のような空間的機能に基づき設定される。しかし、都市全域などのように、空間的機能に関する情報が入手困難なケースもある。こうしたケースでは、例えば、測位エリアを、等しい大きさの矩形によってメッシュ状に分割する手法が採用される。
【0010】
このように、測位エリアを細かい分析区画に分割することは、より詳細な分析結果を得る効果と、分析一回あたりのデータ量を制限することで計算量を削減する効果がある。また、分析区画ごとの処理を並列化することにより、実行時間を削減する効果もある。
【0011】
さらに、分割後の分析区画に含まれる軌跡データが存在しない場合、その分析区画を分析対象から除外することでさらに分析工数を減らす手法が報告されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2018-112774号公報
【非特許文献】
【0013】
【文献】Y, Zheng, "Trajectory Data Mining: An Overview", ACM Transaction on Intelligent Systems and Technology, Vol.6, No.3, pp.29-41, 2015.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
軌跡レコード群をデータマイニングする際、分析区画は分析目的に応じて適切に設定することが重要である。ところが、測位エリアを一定サイズの矩形でメッシュ状に分割するような単純な分割方式は、測位エリアを必ずしも適切な分析区画に分割できない。
【0015】
例えば、地点Aから地点Bへの移動傾向を分析したいときには、地点Aと地点Bが同一の分析区画に含まれていなければならない。しかし、メッシュ状の分割は、両地点が別々の分析区画に分かれてしまうという状況を引き起こし得る。
【0016】
さらに、一般に測位レコードの取得頻度は一様ではなく、計測時のノイズや測位レコード送信時の電波障害など種々の要因により、データ取得漏れが発生することがある。軌跡レコードに欠損がある場合、その欠損が受信機故障などのデータ取得不良によるデータ取得漏れであるかもしれず、またはハッキング等の別の要因によるかもしれない。このような軌跡レコードの欠損の要因を機械学習アルゴリズム等によって判定するためには、欠損の前後の軌跡レコードを同一の分析区画内軌跡レコード群に含めて分析する必要がある。
【0017】
ところが、例えば、測位エリアを均等に分割する、または軌跡データの密度に合わせて単純に分割すると、欠損部分の前後の軌跡レコードが別々の分析区画内軌跡レコード群に分離される可能性がある。
【0018】
従って、分析目的に対して適切な結果を得るための分析区画を決定できる技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一態様の軌跡データ分析システムは、軌跡データを格納する1以上の記憶装置と、1以上のプロセッサと、を含む。前記軌跡データは、1以上の移動体の1以上の軌跡レコードを含む。前記1以上の軌跡レコードのそれぞれは、1以上の軌跡セグメントを含む。前記軌跡セグメントは、開始位置及び終了位置を示す位置情報と、開始時刻及び終了時刻を示す時刻情報とを含む。前記1以上のプロセッサは、前記軌跡データにおいて、前記軌跡セグメントそれぞれの分割許容レベルを、前記軌跡セグメントそれぞれの位置情報及び時刻情報の少なくとも一方に基づいて決定し、前記軌跡セグメントそれぞれの前記分割許容レベルに基づいて、前記軌跡データの複数の分析区画を決定し、前記軌跡データを前記複数の分析区画に分割し、前記複数の分析区画それぞれにおいて前記軌跡データの分析処理を行う。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、分析目的に対して適切な結果を得るための分析区画を決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例1に係る軌跡データ分析システムの論理構成の一例を示す。
図2】端末装置のハードウェア構成例を示す。
図3】分析区画決定装置のハードウェア構成例を示す。
図4】測位データの例を示す。
図5】測位データ処理部によって書き出される軌跡データベースの例を示す。
図6】測位データ処理部の動作手順を説明するフローチャートである。
図7】軌跡レコードによる軌跡の一部を可視化した例を示す
図8】状態分類部の動作手順を説明するフローチャートである。
図9】状態分類済み軌跡データベースの例を示す。
図10】部分軌跡抽出部の出力である、部分軌跡データベースの例を示す。
図11】部分軌跡抽出部の動作手順を説明するフローチャートである。
図12】状態分類済み軌跡データベースに記載された軌跡セグメントを可視化した例を示す。
図13】最適区画分割判定部の動作手順を説明するフローチャートである。
図14】最適区画分割判定部処理を詳細に説明するフローチャートである。
図15】エリア分割の例を示す。
図16】動線データ分析部の動作手順を説明するフローチャートである。
図17】クラスタリング処理後の分析結果表示部による表示画像例を示す。
図18】分割されたエリアの例を示す。
図19】実施例2において、動線データ分析部の処理の詳細を説明するフローチャートである。
図20】ドローンの飛行ルートの表示画像例を示す。
図21】実施例3において、動線データ分析部の処理の詳細を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の実施の形態においては、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0023】
本システムは、物理的な計算機システム(一つ以上の物理的な計算機)でもよいし、クラウド基盤のような計算リソース群(複数の計算リソース)上に構築されたシステムでもよい。計算機システムあるいは計算リソース群は、1以上のインタフェース装置(例えば通信装置及び入出力装置を含む)、1以上の記憶装置(例えば、メモリ(主記憶)及び補助記憶装置を含む)、及び、1以上のプロセッサを含む。
【0024】
プログラムがプロセッサによって実行されることで機能が実現される場合、定められた処理が、適宜に記憶装置及び/またはインタフェース装置等を用いながら行われるため、機能はプロセッサの少なくとも一部とされてもよい。機能を主語として説明された処理は、プロセッサあるいはそのプロセッサを有するシステムが行う処理としてもよい。プログラムは、プログラムソースからインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布計算機または計算機が読み取り可能な記録媒体(例えば非一過性の記録媒体)であってもよい。各機能の説明は一例であり、複数の機能が一つの機能にまとめられたり、一つの機能が複数の機能に分割されたりしてもよい。
【0025】
以下において、データ分析技術及びデータマイニング技術を開示する。特に、分析目的と軌跡データに基づき分析区画を決定する技術が開示される。以下の説明において、測位レコードは、物体がいつどこに存在したかを表す、時刻と結びつけられた位置情報を示すデータである。測位エリアは、測位レコードを取得した地理空間である。地理空間は、一般的に、2次元座標空間または3次元座標空間である。
軌跡セグメントは、物体の座標値を時系列順に並べたときに隣り合う二点間の移動軌跡である。軌跡レコードは、ある物体について時系列的に並べられた1以上の軌跡セグメントからなる。軌跡レコード群は、複数の物体に関する軌跡レコードの集合である。分析区画内軌跡レコード群は、軌跡レコード群を分析区画ごとに分析する場合の各分析区画内の軌跡レコード群である。
【実施例1】
【0026】
図1に実施例1に係る軌跡データ分析システムの論理構成の一例を示す。本システムは、端末装置M10、分析区画決定装置M11、動線データ分析装置M12、分析結果表示装置M13を含む。実施例1に係る端末装置M10は、分析対象となる物体の位置を計測及び記録することができ、取得した測位レコードを分析区画決定装置M11に送信する。
【0027】
実施例1に係る分析区画決定装置M11は、測位データ処理部P01、状態分類部P10、部分軌跡抽出部P20、及び最適区画分割判定部P30を含む。これらはプログラムである。
【0028】
測位データ処理部P01は、端末装置M10から受信した測位レコードを測位データDB10に格納し、さらに測位レコードに適切な処理を施して後述する軌跡セグメントを表すレコードを作成し、軌跡データベースDB11に格納する。状態分類部P10は、軌跡データベースDB11の軌跡セグメントの状態を分類する。具体的には、状態分類部P10は、軌跡セグメントを、分割非推奨な状態の軌跡セグメントとそれ以外の状態の軌跡セグメントとに分類する。このように、軌跡セグメントの状態は、軌跡セグメントの分割許容レベルを示す。
【0029】
部分軌跡抽出部P20は、軌跡データベースDB11から、単一または連続する分割非推奨状態の軌跡セグメントからなる部分軌跡を抽出する。最適区画分割判定部P30は、部分軌跡を分割する回数が少なくなるように分析区画を決定する。
【0030】
分析区画決定装置M11は、さらに、測位データDB10、軌跡データベースDB11、状態分類パラメータDB12、状態分類済み軌跡データベースDB13、部分軌跡データベースDB14、及び分析区画データベースDB15を含む。
【0031】
測位データDB10は、端末装置M10から受信した測位レコードを格納する。軌跡データベースDB11は、軌跡データを格納する。軌跡データは1以上の移動体の1以上の軌跡レコードを含む。軌跡データベースDB11は、対象物体の移動履歴を意味するよう測位データDB10のデータを変換したデータを格納している。状態分類パラメータDB12は、軌跡セグメントの状態の分類に関する条件を示す。状態分類済み軌跡データベースDB13は、状態分類が施された軌跡データベースDB11のデータを格納している。
【0032】
部分軌跡データベースDB14は、部分軌跡抽出部P20の出力を格納している。分析区画データベースDB15は、最適区画分割判定部P30の出力である、本装置によって決定された分析区画データを格納している。
【0033】
動線データ分析装置M12は、動線データ分析部P40を含む。動線データ分析部P40は、分析区画ごとに軌跡データ(1または複数の軌跡レコード)を分析するプログラムである。
【0034】
動線データ分析装置M12は、動線データベースDB21、分析区画データベースDB22、及び分析結果データDB23を含む。動線データベースDB21は、状態分類済み軌跡データベースDB13と同じデータを格納する。分析区画データベースDB22は、分析区画データベースDB15と同じデータを格納する。分析結果データDB23は、動線データ分析部P40の分析結果を格納する。分析結果表示装置M13は、分析結果を表示するプログラムである、分析結果表示部P50を含む。
【0035】
図2は、端末装置M10のハードウェア構成例を示す。端末装置M10は、対象物体の位置情報と位置情報を取得した時刻とを取得する測位データ取得装置U101と、端末装置M10の制御を行う制御装置U102と、測位データ(1または複数の測位レコード)を送信する通信装置M103と、を含む。
【0036】
測位データ取得装置U101が取得する位置情報は、例えば緯度・経度・標高によって表現されていてもよいし、任意の座標系に基づく座標値として表現されていてもよく、その表現形式は限定されない。
【0037】
測位データ取得装置U101がもつ機能は、端末装置M10に付随する機能に限定するものではない。図示は省略するが、単数または複数の端末装置M10と分析区画決定装置M11とを仲介するサーバが、上記測位データ取得機能を有していてもよいし、ネットワークを介して接続された他の何らかのプロセッサによってこの機能が実現されてもよい。
【0038】
例えば、単数または複数のカメラによって測位データを取得してもよいし、単数または複数のRFIDリーダを空間内に設置し、対象物体の通過ログを得ることによって測位データを取得してもよい。何らかの装置またはシステムによって測位データが取得され分析区画決定装置M11に入力されていれば、測位データの任意の取得手段及び分析区画決定装置M11への任意の入力手段を使用できる。
【0039】
図3は、分析区画決定装置M11のハードウェア構成例を示す。分析区画決定装置M11は、演算性能を有するプロセッサU111と、プロセッサU111が実行するプログラム及びデータを格納する揮発性一時記憶領域を与えるDRAMU112と、を含む。
【0040】
分析区画決定装置M11は、さらに、端末装置M10や本システムにおける他の装置とデータ通信をおこなう通信装置U113と、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどを利用した永続的な情報記憶領域を与える補助記憶装置U114と、を含む。また、分析区画決定装置M11は、ユーザからの操作を受け付ける入力装置U115と、各プロセスでの出力結果をユーザに提示するモニタU116(出力装置の例)と、を含む。
【0041】
なお、動線データ分析装置M12、及び分析結果表示装置M13を構成するハードウェア要素は、分析区画決定装置M11と同様でよい。また、複数の装置に分かれている機能を一つの装置に統合してもよく、上記複数の装置機能をさらに多くの装置に分散してもよい。このように、軌跡データ分析システムは、1以上の記憶装置及び1以上のプロセッサを含む。
【0042】
以下においては、観光客の移動履歴を対象としたデータマイニングについて説明する。この分析により、観光資源の発掘や新たなサービスの提案を支援するためのデータ分析結果を得ることができる。
【0043】
実施例1に係る本システムにおける軌跡データベースDB11は、観光客の移動履歴データを格納している。本システムにおける分析区画決定装置M11は、端末装置M10、例えば各観光客自身が所有するスマートフォンから送信された測位レコードを受信し、測位データDB10に格納する。そののち、測位データ処理部P01が、測位データDB10のデータに後述の処理を施して、軌跡データベースDB11に書き出す。
【0044】
図4は、測位データDB10の例を示す。UserID(T0C1)は、測位データ送信源である端末装置M10の識別子を示す。SendTime(T0C2)は、送信時の時刻を示す。測位座標T0C3は、測位時の位置情報を示す。
【0045】
図5は、測位データ処理部P01によって書き出される軌跡データベースDB11の例を示す。行番号T1C0は、軌跡データベースDB11全体の通し番号を示す。各行は軌跡セグメント単位のレコードである。時刻情報であるStartTime(T1C2)及びEndTime(T1C3)は、軌跡セグメントの開始時刻及び終了時刻を示す。開始時刻及び終了時刻により時間幅が決まる。移動軌跡T1C5は、軌跡セグメントの移動軌跡を格納しており、軌跡セグメントの開始位置及び終了位置(位置情報)を示す。
【0046】
識別子UserID(T1C1)は、各軌跡セグメントの移動体の識別子を示し、これらは測位データDB10のUserID(T0C1)が示す識別子と同様である。軌跡セグメントID(T1C4)は、各軌跡セグメントの識別子を示す。データ収集方法及びデータ分析目的次第では、図5に示した情報T1C0~T1C5以外の情報を示すカラムが含まれていてもよい。
【0047】
測位座標T0C3及び移動軌跡T1C5などの時空間情報は、どのようなデータ形式を有してもよいが、本実施例では、OpenGIS仕様に基づくWell-Knownテキスト(WKT)形式を有するものとする。
【0048】
図6は実施例1に係る本システムにおいて、測位データ処理部P01の動作手順を説明するフローチャートである。本実施例1における測位データ処理部P01は、測位データDB10に対して、以下に示すステップS001~S008の処理を実行する。
【0049】
ステップS001において、測位データ処理部P01は、測位データDB10を読み込む。それに続いて、ステップS002において、測位データ処理部P01は、UserID(T0C1)ごとに、測位データDB10の測位レコードを分割する。
【0050】
測位データ処理部P01は、分離されたUserID(T0C1)ごとの測位レコードに対して、ステップS003からステップS006を実行する。ステップS003において、測位データ処理部P01は、測位レコードを、SendTime(T0C2)に従って、降順にソートする。
【0051】
ステップS004において、測位データ処理部P01は、測位レコードにおけるn行目の測位座標T0C3が示す座標を始点、(n+1)行目の測位座標T0C3を終点とする線分を、n行目の測位レコードに対する軌跡セグメントと決定する。
【0052】
ステップS005において、測位データ処理部P01は、n行目の測位レコードのUserID(T0C1)を、対応する軌跡セグメントのUserID(T1C1)として、軌跡データベースDB11に書き出す。測位データ処理部P01は、n行目の測位レコードのSendTime(T0C2)を、対応する軌跡セグメントのStartTime(T1C2)として、軌跡データベースDB11に書き出す。測位データ処理部P01は、(n+1)行目の測位レコードのSendTime(T0C2)を、対応する軌跡セグメントのEndTime(T1C3)として、軌跡データベースDB11に書き出す。
【0053】
測位データ処理部P01は、さらに、n行目の測位レコードと(n+1)行目の測位レコードを用いてステップS004で算出した軌跡セグメントを、対応する軌跡セグメントの移動軌跡T1C5として、軌跡データベースDB11に書き出す。測位データ処理部P01は、対象のUserIDに対する軌跡セグメントの識別子を、対応する軌跡セグメントの軌跡セグメントIDT1C4として、軌跡データベースDB11に書き出す。 次に、ステップS006において、測位データ処理部P01は、現在のUserIDの全ての測位レコードに対して、ステップS004~S005が終了したかを判定する。ステップS004~S005が終了していなかった場合(S006:NO)、測位データ処理部P01は、ステップS004に戻り次行の測位レコードを対象にステップS004~S005を継続する。ステップS004~S005が終了していた場合(S006:YES)、測位データ処理部P01は、次のステップS007に進む。
【0054】
ステップS007において、測位データ処理部P01は、分離した全てのUserID(T0C1)ごとの測位レコードに対してステップS003~S006が終了しているかを判定する。終了していないと判定された場合(S007:NO)、測位データ処理部P01は、ステップS003に戻って処理を継続し、終了していると判定された場合(S007:YES)、測位データ処理部P01は、次のステップS008に進む。
【0055】
ステップS008において、測位データ処理部P01は、書き出された軌跡データベースに行番号T1C0を付して通し番号を振る。ステップS008に実行により、測位データ処理部P01での処理は終了する。
【0056】
軌跡データベースDB11により与えられたデータを、UserID(T1C1)毎に整理し、StartTime(T1C2)順に降順で並び変えると、各観光客の軌跡レコードが得られる。図7は、軌跡レコードによる軌跡の一部を可視化した例を示す。図7において、破線SEG1~SEG5は、軌跡セグメントを示す。図7に示す軌跡の例は、移動軌跡T1C5において時系列的に連続した5行で構成されている。データ取得時に異常がない限り、時系列的に連続した軌跡セグメントを繋いで構成した軌跡レコードは、一本の線を示す。
【0057】
図8は実施例1に係る本システムにおいて、状態分類部P10の動作手順を説明するフローチャートである。まず、ステップS100において、状態分類部P10は、状態分類パラメータDB12を読み込む。次に、ステップS101において、状態分類部P10は、軌跡データベースDB11を読み込む。
【0058】
次に、ステップS102において、状態分類部P10は、軌跡データベースDB11を構成する軌跡セグメントそれぞれが、状態分類パラメータDB12で与えられる条件に基づき、非分割推奨状態に分類されるかを決定する。次に、ステップS103において、状態分類部P10は、決定された状態を軌跡セグメントそれぞれに付与して、軌跡データベースDB11のコードと付与した状態とを同一レコードに含めて、状態分類済み軌跡データベースDB13に書き出す。
【0059】
ここで、状態分類パラメータDB12と、それを用いた状態分類ステップS102とを、具体例を使用して説明する。状態分類パラメータDB12は、各軌跡セグメントに割り当てる状態を指定する際に参照されるパラメータである。本例では、主要な観光地を周遊する観光客の移動傾向を分析するために、なるべく長期間の移動履歴をひとまとまりの軌跡として取り扱う必要がある。この場合、観光地間の移動に相当する軌跡データは分割しない方がよい。
【0060】
状態分類部P10は、軌跡データベースDB11に対して、DBSCAN法などの、密度に基づくクラスタリング処理を行うことで、観光客が滞留しているエリアを特定する。このとき、滞留ポイントは軌跡セグメントのクラスタとして表現されるため、クラスタ中心からの距離によって、軌跡セグメントが観光地内での移動を意味するか、観光地間の移動を意味しているのかを選別することができる。
【0061】
従って、本例において、状態分類パラメータDB12は、軌跡セグメントの各クラスタ中心からの離心距離の閾値θsplit1である。閾値θsplit1は、例えば、5kmである。状態分類部P10は、その全ての部分がクラスタ中心から5km範囲内の軌跡セグメントには分割可能という状態を割り当て、少なくとも一部が5km範囲外の軌跡セグメントには分割非推奨という状態を割り当てる。
【0062】
図9は、状態分類済み軌跡データベースDB13の例を示す。状態分類済み軌跡データベースDB13は、軌跡データベースDB11のカラムT1C0~T1C5と同一のカラムT2C0~T2C5に加え、決定された状態を格納したカラムT2C6をさらに含む。図9の例において、「1」が分割非推奨状態を表し、「0」がそれ以外の状態を意味している。本例では分類された状態は二値であるが、分割禁止・分割非推奨・分割可能の三種類のように、多値で状態を定義してもよい。
【0063】
図10は、部分軌跡抽出部P20の出力である、部分軌跡データベースDB14の例を示す。部分軌跡データベースDB14は、行番号T3C0、UserID(T3C1)、StartTime(T3C2)、EndTime(T3C3)、部分軌跡の識別子である部分軌跡ID(T3C4)、部分軌跡の座標情報である部分軌跡T3C5、各部分軌跡に付与されている状態T3C6、のカラムを有する。
【0064】
図11は、実施例1に係る本システムにおいて、部分軌跡抽出部P20の動作手順を説明するフローチャートである。
【0065】
ステップS200において、部分軌跡抽出部P20は、状態分類済み軌跡データベースDB13を読み込む。次に、ステップS201において、部分軌跡抽出部P20は、状態T2C6が「1」(分割非推奨状態)の連続する軌跡セグメントT2C5の集合を、部分軌跡として抽出する。次に、ステップS202において、部分軌跡抽出部P20は、抽出した部分軌跡を部分軌跡データベースDB14に書き出すと、を有する。
【0066】
例えば、図9に示す状態分類済み軌跡データベースDB13の行番号T2C0の31行目から34行目までに記載された軌跡セグメントT2C5は、図12に示す軌跡のように可視化できる。図12は、分割非推奨状態の軌跡セグメントを実線、それ以外の状態の軌跡セグメントは破線で示している。
【0067】
図9に示す状態分類済み軌跡データベースDB13中の状態T2C6の情報から、IDが「#h98z652-S00032」および「#h98z652-S00033」の軌跡セグメントは、分割非推奨状態の連続した軌跡セグメントからなる部分軌跡に相当すると判定できる。この部分軌跡の情報は、例えば、図10に示す部分軌跡データベースDB14の21行目の通り格納される。
【0068】
部分軌跡のStartTimeは、時系列的に最初の軌跡セグメントのStartTimeと一致し、部分軌跡のEndTimeは、時系列的に最後の軌跡セグメントのEndTimeと一致する。本実施例では、部分軌跡の識別子は新たに割り当てられる。図10に示す部分軌跡データベースDB14の21行目の部分軌跡に対して、「#h98z652-T00001」が割り当てられている。
【0069】
以上の手順により、部分軌跡抽出部P20は、分割非推奨状態が連続する部分軌跡を抽出する。
【0070】
図13は実施例1に係る本システムにおいて、最適区画分割判定部P30の動作手順を説明するフローチャートである。ステップS300-01において、最適区画分割判定部P30は、軌跡データベースDB11を読み込む。
【0071】
次に、ステップS300-02において、最適区画分割判定部P30は、軌跡データベースDB11に含まれる軌跡セグメントの存在する緯度及び経度の最大値と最小値を取得する。軌跡セグメントの緯度及び軽度は、例えば、移動軌跡T1C5に含まれている最適区画分割判定部P30は、取得した緯度及び経度の最大値と最小値によって画定される矩形エリアを分析エリア全域と決定する。最適区画分割判定部P30は、その矩形エリアを、分析区画の初期値として設定する。なお、緯度及び経度と異なる情報に基づく位置情報を用いても構わない。
【0072】
次に、ステップS301において、最適区画分割判定部P30は、部分軌跡データベースDB14を読み込む。次に、ステップS302-01において、最適区画分割判定部P30は、分析区画のサイズが閾値θsize以上の区画において最も大きい区画を選択する。
【0073】
次に、ステップS303において、最適区画分割判定部P30は、ステップS302-01で選択された分析区画に対して仮分割線をN本生成する。
【0074】
次に、ステップS304において、最適区画分割判定部P30は、仮分割線に対する評価値を算出する。評価値の詳細は後述する。次に、ステップS305において、最適区画分割判定部P30は、その評価値に基づき仮分割線の中から正式な分割線を決定する。
【0075】
次のステップS302-02において、最適区画分割判定部P30は、ステップS302-01で選択された全ての分析区画に対してステップS303~S305が実行されたか判定する。全ての分析区画に対して処理が終了していた場合(S302-02:YES)、最適区画分割判定部P30は、ステップS306に進み、そうでない場合(S302-02:NO)、最適区画分割判定部P30は、未処理の分析区画から一つを選択してステップS303に戻る。
【0076】
ステップS302-02によって終了判定がなされた後、ステップS306において、最適区画分割判定部P30は、上記の正式な分割線によって構成される分析区画の総数が閾値θ#area以上かを判定する。次に、ステップS307において、最適区画分割判定部P30は、分割線によって構成される分析区画を画定する閉曲線(分析区画を画定するデータ)それぞれを分析区画データベースDB15に書き出す。
【0077】
仮分割数N、閾値θsize及びθ#areaはパラメータであり、その設定方法は限定しない。すなわち、事前にシステム内に設定されていてもよく、分析者が入力端末を介して本システムに都度直接入力して設定するようにしてもよい。
【0078】
閾値θsizeは、広すぎる分析区画を分割するために設定されるパラメータであり、本実施例では分析区画の許容する最大サイズを指定する。閾値θ#areaは、分割数を制御するためのパラメータであり、実施例1では目安となる最大の分析区画数を指定する。
【0079】
原理的には、一つの分析区画に含まれる軌跡セグメントの数が1となるまで分割することができるが、必要以上に分割しすぎると分析結果に悪影響が出てしまう。そこで、最適区画分割判定部P30は、ステップS306で分析区画総数を評価し、分析区画数が閾値θ#area以上である場合に、分割処理を終了し、続くステップS307に進む。一方、分割数が不足している場合には、最適区画分割判定部P30は、ステップS302に戻り処理を継続する。
【0080】
図14を用いてステップS303~S305の処理を詳細に説明する。エリアA1は、ステップS302で選択された分析区画の例である。図14は、エリアA1において、分割非推奨状態の軌跡セグメントを実線で、それ以外の状態の軌跡セグメントを破線で、それぞれ図示している。エリアA1内には、部分軌跡T1、T2が存在する。
【0081】
ここではパラメータNが3として与えられたとき、このエリアA1を経度方向に分割することを考える。最適区画分割判定部P30は、まず、ステップS303に基づき、3本の仮分割線GX1~GX3を用意する。ここでは、エリアを等距離で四分割するよう仮分割線を引くが、仮分割線の決定方法は本方法に限定されない。例えば、軌跡セグメントの密度に従って決定しても良いし、軌跡セグメントの座標値の任意の内分点によって決定してもよい。
【0082】
続くステップS304では、最適区画分割判定部P30は、仮分割線を評価するための指標値である評価値を計算する。本例は、仮分割線と部分軌跡との総交差回数を評価値として採用する。ここでは、仮分割線GX1と部分軌跡T1、T2との交差回数は1回、仮分割線GX2と部分軌跡T1、T2との交差回数は2回、仮分割線GX3と部分軌跡T1、T2との交差回数は0回とカウントされる。なお、一つの仮分割線と一つの部分軌跡との交差回数は、1以上の値を取り得る。
【0083】
仮分割線を定量的に評価することができれば、評価値としてどのような指標を用いてもよい。また、評価方法(アルゴリズム)も特に限定するものではない。例えば、分割原則禁止・分割非推奨・分割可能、の異なる分割許容レベルを示す三種類に軌跡セグメントを分類するケースでは、分割原則禁止な軌跡セグメントからなる部分軌跡と交差する場合と、分割非推奨な軌跡セグメントからなる部分軌跡と交差する場合との間で、評価値を算出するための演算が異なっていてもよい。
【0084】
例えば、付与された状態に応じた重み付きの交差回数を評価値として採用してもよい。例えば、分割原則禁止にαd1、分割非推奨にαd2、分割可能にαd3という重みを割り当てる。例えば、重みαd1、αd2、αd3を、αd1>αd2>αd3関係が成立するように選択してもよい。重みは、全てまたは一部の状態に対して同一でもよく、一部の状態の部分軌跡と分割線との交差は禁止されていてもよい。例えば、分割禁止・分割非推奨・分割可能の状態が定義され、分割禁止の部分軌跡と分割線の交差が禁止されていてもよい。
【0085】
他の例として、各部分軌跡を構成する軌跡セグメントの位置並びに時刻情報から算出される移動速度の平均値を、さらにαd1~αd3に乗じ、その値を最終的な重みαd1~αd3として採用してもよい。移動速度などを考慮することによって、仮分割線の評価に移動の指向性を反映させることができる。
【0086】
ある仮分割線と異なる状態が割り当てられた部分軌跡との交差回数をnd1回、nd2回、nd3回とすると、この仮分割線の評価値は、αd1×nd1+αd2×nd2+αd3×nd3によって算出することができる。
【0087】
上記いくつかの例に示すように、最適区画分割判定部P30は、仮分割線と軌跡セグメントとの交差回数、及び、仮分割線と交差する軌跡セグメントの状態に基づいて、仮分割線の評価値を決定する。これにより、分析区画を適切に決定することができる。
【0088】
ステップS305では、最適区画分割判定部P30は、ステップS304で算出した評価値に従って仮分割線GX1~GX3を評価する。本分析では、部分軌跡として分割非推奨状態の軌跡を抽出しているため、仮分割線と部分軌跡との交差回数は小さい方が望ましい。従って、仮分割線GX3が最適な分割線と決定される。本例は仮分割線の中から1つの分割線を選択するが、評価値に基づき複数の分割線を同時に選択してもよい。
【0089】
以上の手順きにより、分析区画エリアA1は、図15に示すエリアA11とエリアA12の2つに分割することができる。
【0090】
以上の処理を経て、分析区画決定装置M11は、装置内部に保有するデータベースを、動線データ分析装置M12に送信し格納する。状態分類済み軌跡データベースDB13は動線データベースDB21として、分析区画データベースDB15は分析区画データベースDB22として、それぞれ動線データ分析装置M12内に格納される。
【0091】
図16は実施例1に係る本システムにおいて、動線データ分析部P40の動作手順を説明するフローチャートである。ステップS400において、動線データ分析部P40は、分析区画データベースDB22を読み込む。次に、ステップS401において、動線データ分析部P40は、動線データベースDB21を読み込む。次に、ステップS402において、動線データ分析部P40は、分析区画データベースDB22が示す分析区画ごとに、動線データベースDB21を分割する。
【0092】
次に、ステップS403において、動線データ分析部P40は、動線データベースDB21の各分析区画について、所定のデータ分析を実行する。次に、ステップS404において、動線データ分析部P40は、ステップS403でのデータ分析により得られた結果を、分析結果データDB23を書き出す。
【0093】
ステップS403で実行されるデータ分析は統計処理であってもよいし、機械学習など何らかのアルゴリズムに基づく処理であってもよい。動線データ分析部P40の最終出力である分析結果データDB23は、分析結果表示装置M13に送信され、分析結果表示部P50によりユーザに提示される。
【0094】
動線データ分析部P40で実現される分析内容と分析結果表示部P50での表示内容の例を以下に説明する。軌跡セグメントをクラスタリング処理することによって、滞留ポイントを抽出できるようになる。この滞留は、観光客が観光地に来訪しとどまっていることを意味する。従って、滞留ポイント間の移動情報を分析することで、観光客がどのような順序で観光地を周遊する傾向にあるのかを分析することができる。
【0095】
図17は、クラスタリング処理後の分析結果表示部P50による表示画像例を示す。エリアA11に含まれる軌跡セグメントをクラスタリングすることにより、ポイントL1~L3のような滞留ポイントを発見することができる。クラスタリング手法としては、密度に応じて座標集合を分割することのできるDBSCANなどの手法を用いることができる。この滞留ポイントと実際の地図とを照らし合わせることで、どこに観光客が注目する観光資源が潜在しているかを発見することができる。
【0096】
さらに、マルコフ連鎖を用いて滞留ポイント間の遷移をモデル化することができる。これにより、観光客がどういった場所をどういう順序で訪れるかを予測することができる。また、その訪問順序にはどういう条件が強く影響しているかを分析することもできる。こうした分析は、観光客にとって魅力的な周遊ツアーの企画立案に活用できる。
【0097】
こうしたデータ分析が可能なのは、滞留ポイントL1~L3がすべて同一の分析区画に含まれているからである。例えば、図14に示すエリアA1を中点で分割する仮分割線GX2を採用した場合、エリアA1は、図18のエリアA21とエリアA22とに分割される。このケースでは、滞留ポイントL1とL2は同一区画に含まれるが、滞留ポイントL3はもう一方の分析区画に含まる。さらに、エリアA21に滞留ポイントL1とL2の両方が含まれてはいるが、部分軌跡T1とT2が分断されているため滞留ポイントL1から滞留ポイントL2への遷移は、連続する移動として認識されることがない。
【0098】
また、観光客の移動履歴を教師データとしてガウス過程モデルなどの機械学習モデルに入力し訓練することで、どのような場所にどれくらいの確率で観光客が訪れるかを予測することができる。
【0099】
分析区画ごとに集計された軌跡レコードを教師データとすることにより、分析区画ごとに個別の機械学習モデルを得ることができる。このとき、所定時間分集計された測位レコードから、現在移動中の特定の観光客についての軌跡レコードを得ることができる。この軌跡レコードを、現在地までの移動履歴を表す動線レコードとして動線データ分析部P40に入力すると、ステップS400~S403が実行される。
【0100】
この結果、動線レコードに対する分析区画ごとの分析結果を得ることができる。さらに、前述のマルコフ連鎖を用いて、各分析区画における移動経路の分析結果を得ることによって、いま注目している観光客の次に移動する分析区画、さらに、次の分析区画内の移動経路を予測することができる。このように、分析区画ごとの分析結果及びそれらの統合結果により、予測経路途中の観光資源を分析者または分析者を介するなどして観光客自身に提示することで、より豊かな観光サービスを提供することができる。
【0101】
以上のように、本実施例は、軌跡セグメントそれぞれの位置情報に基づいて、軌跡セグメントそれぞれの状態を決定し、軌跡セグメントそれぞれの状態に基づいて、分析区画を決定する。分析目的、及び分析対象である軌跡データ群に含まれる軌跡データの傾向に応じて、動的に適切な分析区画を決定することができ、分析目的に対して適切な分析結果を得ることができる。なお、部分軌跡を特定することなく、分割非推奨の軌跡セグメントと仮分割線との交差回数から、実際の分割線を決定してもよい。
【実施例2】
【0102】
実施例2では、ドローンを用いた物資自動配送におけるドローンの移動履歴を対象としたデータマイニングについて説明する。本実施例2のシステム構成ならびにハードウェア構成の図示は省略するが、実施例1で示した図1から図3に示す構成と同様であり、同じ符号を用いて説明する。
【0103】
通常時のドローンは、操縦者端末または管制システムからの制御信号に従って目的地まで飛行し、物資を運搬する。飛行中の位置情報は、ドローンに搭載した端末装置M10によって5分ごとに定期的に送信される。例示は省略するが、図5に示す軌跡データベースDB11の例に準じるドローンの軌跡データベースDB11が、分析区画決定装置M11の測位データ処理部P01により生成される。ただし本実施例2では、図5に示す軌跡データベースDB11の例のUserID(T1C1)に相当する移動体識別子として、Drone IDなる識別子が割り当てられているものとする。
【0104】
ドローンのような小型の飛行物体の場合は、ビルの合間など遮蔽物が多い場所では位置情報の取得が難しく、また、ドローンから発信される信号が微弱になって正しく受信できない場合が多い。このような測位データの取得漏れがある場合、軌跡セグメントに対応するStartTimeとEndTimeとの間の差のばらつきが大きくなる。
【0105】
また、物資運搬中のドローンに対し、悪意ある第三者からの遠隔操作または直接操作によってドローンがハッキングされ、物資が略奪されるケースがある。本実施例2では、位置計測の信頼度を用いたドローンのハッキングリスク分析を例として説明する。
【0106】
実施例1と同様に、ドローンの移動履歴に対しても分析区画決定装置M11は、測位データ処理部P01により測位データDB10を適切に軌跡データベースDB11に書き出したものとし、説明を省略する。
【0107】
実施例2における本システムの状態分類部P10は、軌跡セグメントの状態を、軌跡セグメントの開始時刻と終了時刻との差に基づき決定する。具体的には、状態分類部P10は、状態分類パラメータDB12として、計測漏れ区間に分割非推奨状態を付与するよう、軌跡セグメントを構成するStartTimeとEndTimeとの間の差に対する閾値θsplit2が与えられている。本実施例2でのデータ取得は5分毎あり、一例として、閾値θsplit2は15分である。状態分類部P10は、StartTimeとEndTimeの差が15分以上になる軌跡セグメントに対して分割非推奨状態を付与し、実施例1の時と同様に状態分類済み軌跡データベースDB13に書き出す。
【0108】
次に実行される部分軌跡抽出部P20と最適区画分割判定部P30の処理は、実施例1と同様であるため説明を省略する。以上の手順によって部分軌跡データベースDB14と分析区画データベースDB15が得られ、分析区画決定装置M11での処理は終了する。また、動線データ分析装置M12は、動線データベースDB21と分析区画データベースDB22を保有しているものとする。
【0109】
図6を参照して、実施例2における本システムの動線データ分析部P40による処理を具体的に説明する。ステップS400において、動線データ分析部P40は、分析区画データベースDB22を読み込む。次に、ステップS401において、動線データ分析部P40は、動線データベースDB21を読み込む。次に、ステップS402において、動線データ分析部P40は、上記分析区画に基づいて動線データベースDB21を分割する。次に、ステップS403において、動線データ分析部P40は、分析区画ごとに分割された動線データベースDB21に対して分析を行う。
【0110】
ステップS403において各分析区画に対して実行される分析処理について、図19のフローチャートを用いて詳細に説明する。ステップS403-01において、動線データ分析部P40は、分割後の動線データベースDB21における分析区画内の全ての軌跡セグメントについて、それぞれStartTimeとEndTimeとの間の差であるDeltaTimeを算出する。
【0111】
次に、ステップS403-02において、動線データ分析部P40は、動線データベースDB21にDeltaTimeを格納するカラムを新しく追加し、そのカラムにおいて対応する軌跡セグメントと同一の行に、算出したDeltaTime値を書き出す。次に、ステップS403-03において、動線データ分析部P40は、動線データベースDB21のDeltaTimeカラムに格納された全行のデータを、外れ値検出部に入力する。
【0112】
本実施例2では、外れ値検出部として、1class-サポートベクターマシン(1class-SVM)が実行される。外れ値検出部の出力は、各軌跡セグメントが入力データ全体に対する外れ値か否かの判定結果である。外れ値検出部は、入力されたDeltaTime値が外れ値であれば「Outlier」を、外れ値でなければ「Normal」の文字列を返す。
【0113】
次に、ステップS403-04において、動線データ分析部P40は、外れ値検出部からの出力が「Outlier」である軌跡セグメントを、動線データベースDB21から抽出する。この軌跡セグメントは、測位レコードの予期しないデータ取得漏れが発生している計測不良セグメントと推定される。全ての分析区画に対してステップS403-01~S403-04が終了すると、ステップS403の全ての処理が終了する。
【0114】
次に、ステップS404において、動線データ分析部P40は、ステップS403-04で抽出された情報を分析結果データDB23に書き出す。以上により、動線データ分析装置M12での全ての処理が終了する。
【0115】
実施例2における本システムの分析結果表示部P50は、各分析区画に対して、分析結果データDB23に含まれる軌跡セグメントが有するDroneIDを取得する。取得された識別子をもつドローンは、分析区画内において1以上の「Outlier」の軌跡セグメントを有しており、当該分析区画においてデータ取得漏れ頻度が著しく高いドローンである。データ取得漏れ頻度が著しく高いドローンの位置計測の信頼度は低い。分析結果表示部P50は、動線データベースDB21から当該識別子を持つドローンの移動履歴を参照し、当該分析区画の地図とともにその飛行ルートをユーザに表示する。
【0116】
図20は、ドローンの飛行ルートの表示画像例を示す。分析区画の一つがMAP01として表示されており、ドローンの飛行経路を表す動線TD01~TD03が、軌跡セグメントの集合により図示されている。動線TD03は、本システムによって外れ値判定を受けた軌跡セグメントを含み、当該軌跡セグメントは点線によって示されている。本表示内容により、ユーザは河川敷付近でドローンがハッキングされた可能性が高いという情報を得る。
【0117】
動線TD01及びTD02は、データ取得漏れによりDeltaTimeが15分以上の軌跡セグメントを含み、それら軌跡セグメントは破線によって示されている。しかし、この程度の取得漏れはデータ全体の傾向からして十分起こり得るデータ取得漏れ(「Normal」)である。
【0118】
本システムを用いることにより、どの場所でドローンが明らかに平常時とは異なる時間間隔で測位データの取得漏れを起こしたかを自動的に判定することができ、ハッキング等のドローンに起きた異変及びそのリスクについての情報を得ることができる。
【実施例3】
【0119】
本実施例3では、複数エレベータの協調運行システムを対象としたデータマイニングについて説明する。本実施例3のシステム構成及びハードウェア構成の図示は省略するが、実施例1で示した図1から図3に示す構成と同様であり、同じ符号を用いて説明する。
【0120】
複数企業の拠点となっているような大型・高層のオフィスビルでは、通勤時間帯や昼食時間帯にエレベータホールが非常に混雑する。待機時間を短縮して快適かつ効率よくエレベータを運用するために、複数台のエレベータを協調運行させることで、総体としてのエレベータ待機平均時間を短縮するシステムを構築することができる。
【0121】
こうしたシステムを構築するためには、どの階床でどの曜日、どの時間帯にエレベータ需要がどのように高まるのかを分析し、エレベータの利用頻度または利用者数の変動を明らかにすることが重要である。ただし、例えば通勤時間帯、昼食時間帯、退勤時間帯では、それぞれ利用頻度が大きく異なるため、時間軸に対して分析区画(時間帯)を設け、分析区画別に分析をする必要がある。
【0122】
ところが、オフィスビルごとに入居企業の昼食時間帯の開始終了時刻が異なるなどの理由により、一律に時間帯を区切ってしまうと、あるビルは一つの分析区画にピーク時間帯の全体が含まれている一方で、別のビルではピーク時間帯の途中で分析区画が分割される、という状況が生じうる。従って、それぞれのビルごとに、利用状況に合わせて時間的な分析区画を動的に変更しなくてはならない。
【0123】
本実施例3では、地上30階建てのオフィスビルを対象とする。このビルでは、社員証などのIDカードの入退出記録により、誰がいつエレベータホールに向かったかという記録を取得できるものとする。さらに、各エレベータホール及び各エレベータ内に設置されたカメラ及び非接触型IDカードリーダによって、各従業員のエレベータ昇降記録が測位レコードとして取得される。
【0124】
測位レコードは、各企業のオフィスエリアへの入退室の時と、エレベータホールに到着あるいは退出した時と、エレベータに乗り降りする時と、他の乗客の乗降のために乗っている途中でエレベータが各階で停まった時と、オフィスビルから入退出した時と、でそれぞれ取得される。以上の測位レコードを測位データ処理部P01が処理することで、誰がいつエレベータに乗り、何階から何階まで、どの階で停まりつつ移動したかを示す移動履歴を、軌跡セグメントに変換することができ、図5に示す軌跡データベースDB11と同様の軌跡データベースを得る。
【0125】
状態分類部P10は、一つの混雑時間帯を別々の分析区画に分割することのないよう、次のように軌跡セグメントの状態を分類する。図8を参照して、ステップS100において、状態分類部P10は、状態分類パラメータDB12を読み込む。本実施例3では、状態分類パラメータDB12として、単位時間当たりに含まれる軌跡セグメントの総数Nseg totalに対する閾値θsplit3を設定する。従って、ステップS101において、状態分類部P10は、軌跡データベースDB11を読み込む。
【0126】
ステップS102において、状態分類部P10は、1分ごとの軌跡セグメント総数Nseg totalを集計する。状態分類部P10は、さらに、連続する10分間のNseg totalの平均値が閾値θsplit3を上回っている間は、その時間帯に含まれる端点を一つ以上有する軌跡セグメントを分割非推奨状態に分類し、それ以外の軌跡セグメントを分割可能状態に分類する。このように、状態分類部P10は、軌跡セグメントの時間軸における密度と軌跡セグメントそれぞれの時間情報とに基づいて、軌跡セグメントそれぞれの状態を決定する。
【0127】
本実施例3では、各階で15名ずつ待機していたら混雑しているとみなし、15名×30階という計算式から閾値θsplit3を450に設定する。状態分類部P10は、このようにして軌跡セグメントの状態を分類し、実施例1と同様に状態分類済み軌跡データベースDB13に書き出す。
【0128】
次に実行される部分軌跡抽出部P20と最適区画分割判定部P30の処理は実施例1と同様であるため説明を省略する。なお、上述のように、分析区画は、時間軸上で決定される。以上の手順によって部分軌跡データベースDB14と分析区画データベースDB15が得られ、分析区画決定装置M11での処理は終了する。また、動線データ分析装置M12は動線データベースDB21と分析区画データベースDB22を保有しているものとする。
【0129】
図6を参照して、実施例3における本システムの動線データ分析部P40による処理を具体的に説明する。ステップS400において、動線データ分析部P40は、分析区画データベースDB22を読み込む。次に、ステップS401において、動線データ分析部P40は、動線データベースDB21を読み込む。次に、ステップS402において、動線データ分析部P40は、上記分析区画に基づいて動線データベースDB21を分割する。
【0130】
次に、ステップS403において、動線データ分析部P40は、分析区画ごとに分割された動線データベースDB21に対して分析を行う。ステップS403において各分析区画に対して実行される分析処理について、図21のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0131】
まず、ステップS403-03-01において、動線データ分析部P40は、当該分析区画内の全軌跡セグメントのヒストグラムを作成する。次に、ステップS403-03-02において、動線データ分析部P40は、上記ヒストグラムを混合ガウス分布モデルによってモデル化する。全ての分析区画に対してステップS403-03-01及びS403-03-02が終了すると、ステップS403の全ての処理が終了する。
【0132】
次に、ステップS404において、動線データ分析部P40は、ステップS403で生成された分析区間ごとの混合ガウス分布モデルに関する情報を分析結果データDB23に書き出す。以上により、動線データ分析装置M12での全ての処理が終了する。
【0133】
本分析システムによって得られた混合ガウス分布モデルを用いることで、分析者は分析対象のオフィスビルについて利用者数推定などの業務を容易に遂行できる。このことにより、エレベータ待機平均時間を短縮するための効率よい複数エレベータ協調運行システムを構築することができるようになる。
【0134】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0135】
また、上記の各構成・機能・処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード等の記録媒体に置くことができる。
【0136】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆どすべての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0137】
A1、A11、A12、A21、A22 エリア、DB10 測位データ、DB11 軌跡データベース、DB12 状態分類パラメータ、DB13 軌跡データベース、DB14 部分軌跡データベース、DB15 分析区画データベース、DB21 動線データベース、DB22 分析区画データベース、DB23 分析結果データ、GX1~GX3 仮分割線、L1~L3 滞留ポイント、M10 端末装置、M103 通信装置、M11 分析区画決定装置、M12 動線データ分析装置、M13 分析結果表示装置、P01 測位データ処理部、P10 状態分類部、P20 部分軌跡抽出部、P30 最適区画分割判定部、P40 動線データ分析部、P50 分析結果表示部、SEG1~SEG5 軌跡セグメント、U101 測位データ取得装置、U102 制御装置、U111 プロセッサ、U113 通信装置、U114 補助記憶装置、U115 入力装置、U116 モニタ
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