(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】地下街往来者に対する避難誘導方法
(51)【国際特許分類】
G01C 21/26 20060101AFI20231124BHJP
G08G 1/005 20060101ALI20231124BHJP
G08B 27/00 20060101ALI20231124BHJP
G08B 5/00 20060101ALI20231124BHJP
E01F 9/00 20160101ALI20231124BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20231124BHJP
A62B 3/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
G01C21/26 P
G08G1/005
G08B27/00 A
G08B5/00 C
E01F9/00
G09B29/10 A
A62B3/00 B
(21)【出願番号】P 2019147091
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】513116335
【氏名又は名称】株式会社あおい興産
(74)【代理人】
【識別番号】100149836
【氏名又は名称】森定 勇二
(72)【発明者】
【氏名】石丸 誠一
【審査官】佐藤 吉信
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-020562(JP,A)
【文献】特開2006-163837(JP,A)
【文献】特開2004-012155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 1/00ー 5/00
35/00-99/00
B60R 21/00-21/13
21/34-21/38
E01F 9/00-11/00
G01C 21/00-21/36
G06Q 10/00-10/10
30/00-30/08
50/00-50/20
50/26ー99/00
G08B 1/00ー 9/20
23/00-31/00
G08G 1/00-99/00
G09B 19/00-29/14
G16Z 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下街に存在する所定の交差点(B)に設置した表示装置(E)に表示する現在位置表示及び目的地表示
を利用した避難誘導方法であって、
通路誘導灯(D100)を点滅又は点灯させて交差点へ誘導するステップと、
当該交差点に設置した表示装置に表示する現在位置及び目的地を取得させるステップと、
により地下街のいかなる場所からも目的地までの誘導を可能とする地下往来者に対する避難誘導方法。
【請求項2】
さらに、各種情報収集元の機器(S100など)で取得した各所状況データを情報処理装置に送信するステップと、
前記各所状況データを受信した前記情報処理装置が判断し、2次災害情報、通行注意情報又は混雑情報のいずれかの表示データを
前記交差点に設置した表示装置
(E)に送信するステップ
と、
を包含し、当該交差点に設置した表示装置(E)に表示する情報に、2次災害情報、通行注意情報又は混雑情報のいずれかの情報を付加し、地下街のいかなる場所からも目的地までのより最適な誘導を可能とする請求項1の地下往来者に対する避難誘導方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、地下街往来者に対する避難誘導方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
国土交通省都市局街路交通施設課策定の「地下街の安心避難対策ガイドライン」を基本にして、地下街からの初期避難誘導対応を検討した。前述のガイドラインの資料編「避難シミュレーション事例」には、避難誘導を行った方が早く避難できることがわかっている。
【0003】
何らの初期避難誘導対策を行っていない地下街で震度5強以上の地震が発生した場合を想定してみる。
【0004】
地上へ通じる階段を探し、地下街を闇雲に移動する地下街往来者が少なからずあらわれるものと考える。また、その不安からパニックに陥る人があらわれるかもしれない。
【0005】
前述のような事態は、極力避けたいものである。落ち着いて避難行動をとろうとする地下街往来者の妨げにもなるからである。
【0006】
どのような状況になれば前述のような事態になり難いものかと検討を行い、以下の様な結果に辿り着いた。
【0007】
それは、より多くの地下街往来者が、現在位置を知りそして目的地である階段の位置を知ることが容易にできれば、落ち着いた行動がとれるのではないかという結果である。
【0008】
しかしながら、地下街では、GPSが機能し難く(電波が届かない、途切れる、誤動作するなど)、カーナビゲーションシステムのようにGPSを利用して現在位置を知ることが困難となっている。
【0009】
ところで、GPSを必ずしも使用することなく、目的地へ向けわかりやすく案内できる道路案内システムの発明が存在する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【非特許文献】
【0011】
【文献】国土交通省都市局街路交通施設課策定 「地下街の安心避難対策ガイドライン」 平成26年4月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述した道路案内システムは、交差点を起点にすることにより、GPSを必ずしも使用することなく目的地へ向けわかりやすく案内できる道路案内システムであるが、地下街に適したものではないと考える。
【0013】
そこで、地下街往来者に対する避難誘導方法を検討した。
【0014】
なお、地下街の通路について、地上の道路と異なり建築構造上その位置が変更されることはほぼない(通路幅の変更は例外的にあり得る)。そのため、地下街の通路と通路が交差する交差点の位置は一度地下街が建設されると変動しない。前述した状況を踏まえ、地下街における地下街往来者に対する避難誘導方法を検討した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明は、地下街に存在する所定の交差点に設置した表示装置に表示する現在位置表示及び目的地表示を利用した避難誘導方法であって、通路誘導灯を点滅又は点灯させて交差点へ誘導するステップと、当該交差点に設置した表示装置に表示する現在位置及び目的地を取得させるステップと、により地下街のいかなる場所からも目的地までの誘導を可能とする地下往来者に対する避難誘導方法を提供する。
【0016】
本願発明は、さらに、各種情報収集元の機器で取得した各所状況データを情報処理装置に送信するステップと、前記各所状況データを受信した前記情報処理装置が判断し、2次災害情報、通行注意情報又は混雑情報のいずれかの表示データを前記交差点に設置した表示装置に送信するステップと、を包含し、当該交差点に設置した表示装置に表示する情報に、2次災害情報、通行注意情報又は混雑情報のいずれかの情報を付加し、地下街のいかなる場所からも目的地までのより最適な誘導を可能とする地下往来者に対する避難誘導方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本願発明は、地下街に存在する所定の交差点に設置した表示装置に表示する現在位置表示及び目的地表示を利用した避難誘導方法であって、通路誘導灯を点滅又は点灯させて交差点へ誘導するステップと、当該交差点に設置した表示装置に表示する現在位置及び目的地を取得させるステップと、により地下街のいかなる場所からも目的地までの誘導を可能とする地下往来者に対する避難誘導方法であるため、GPSが機能し難い地下街であっても、交差点に設けられた表示装置の内容で、すべてのあるいはより多くの地下往往来者に、現在位置、目的地及び「経路」を取得させることが可能となり、また、地下街のいかなる場所からでも避難誘導可能となる。
【0018】
また、本願発明は、さらに、各種情報収集元の機器で取得した各所状況データを情報処理装置に送信するステップと、前記各所状況データを受信した前記情報処理装置が判断し、2次災害情報、通行注意情報又は混雑情報のいずれかの表示データを前記交差点に設置した表示装置に送信するステップと、を包含し、当該交差点に設置した表示装置に表示する情報に、2次災害情報、通行注意情報又は混雑情報のいずれかの情報を付加し、地下街のいかなる場所からも目的地までのより最適な誘導を可能とする地下往来者に対する避難誘導方法であるため、一部の階段が2次災害あるいは混雑などにより使えなくなったとしてもその事情を短時間で伝達することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は地下街に存在する階段、通路、交差点の位置関係を示した平面図(配置図)である。
【
図2】
図2は交差点及び通路の設備を示した平面図である。
【
図3】
図3は通路誘導灯の設置イメージを示した想定イメージ図である。
【
図4】
図4は現在位置及び階段位置を表示した表示装置を示した想定イメージ図である。
【
図5】
図5は付加表示も含めて表示をした表示装置を示した想定イメージ図である。
【
図6】
図6は情報収集元の機器、情報処理装置、表示装置及び通路避難灯のデータの流れ示したシステム概念図である。
【
図7】
図7は避難誘導作動(通路から交差点)を示した想定イメージ図である。
【
図8】
図8は避難誘導作動(交差点での表示装置表示)を示した想定イメージ図である。
【
図9】
図9は2次災害が生じた場合の避難誘導作動(通路から交差点)を示した想定イメージ図である。
【
図10】
図10は2次災害が生じた場合の避難誘導作動(交差点での表示装置表示)を示した想定イメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
地下街で被災に遭遇したいずれかの場所から階段までを誘導する避難誘導方法として実施する。
【実施例1】
【0021】
まずは、地下街の設備及び情報処理装置並びにデータの流れについて、
図1から
図6に従い説明する。
【0022】
地下街には、多くの通路(A1からA13)が存在し、地上へつながる階段(C1からC8)が設けられている(
図1)。
【0023】
前記各通路(A8など)には、通路誘導灯(D100)を設けている(
図1)。
【0024】
前記通路誘導灯(D100)は、中央管理室に設置する情報処理装置(F)からの指示により点滅、点灯及び消灯することによって適正方向に誘導する(
図1)。なお、前記中央管理室を設ける場所について、地下街近隣、堅固なビルの地上10メートル以上の階などを想定している。
【0025】
また、地下街には、交差点(B1からB7)も存在している(
図1)。
【0026】
前記各交差点(B1など)には、交差点誘導灯(D200)及び表示装置(E)を設けている(
図2)。
【0027】
本願において「交差点」とは、前記通路が相互に交差する箇所及び前記通路と前記階段が交差する箇所を示す。
【0028】
前記通路誘導灯(D100)を設ける間隔及び箇所について、5メートル間隔で各々の通路の床部及び天井空間に設けることが好ましい(
図3)。
【0029】
本願における「表示装置(E)」には、ディスプレイの他、電子看板なども含まれるものとする。
【0030】
前記表示装置(E)の設置に関し、すべての交差点に設置することが好ましい。すべての交差点で現在位置地及び目的地までの経路などを取得できるからである。
【0031】
また、前記表示装置(E)の設置に関し、各交差点に複数の表示装置を設置することが好ましい(
図2)。混雑を緩和でき、バックアップにもなるからである。
【0032】
また、地下街には、監視カメラ(S100)、サーモグラフィ(S200)、重量計マット(S300)、浸水深観測装置(S400)、ガス検出器(S500)、温度計(S600)、その他の計測器など(例えば、人流センサー)を、2次災害の発生、通行状況、混雑状況を取得するための情報収集元の機器として、必要各所に設ける方が好ましい(
図2)。
【0033】
前記表示装置(E)に表示する内容について、少なくとも、現在位置と前記階段(C1など)は表示する必要がある(
図4)。
【0034】
前記表示装置(E)に表示する内容について、上記に加えさらに、2次災害情報、通行注意情報、階段付近の混雑情報(例えば、C4)を付加して表示することが好ましい(
図5)。
【0035】
前記表示装置(E)の付加表示について、2次災害、通行注意又は混雑が発生している箇所に注意喚起記号を付加して表示をしたり、着色(赤、黄、ピンクなど)するなどして表示する(
図5)。
【0036】
前記監視カメラ(S100)の役割について、地下街往来者の往来状況(人数を含む。)、浸水状況又は発煙状況などを映像情報として収集し、前記情報処理装置(F)へ送信する(
図6)。
【0037】
前記重量計マット(S300)の役割について、地下街往来者の集中程度(混雑状況)や落下物・障害物などを重量情報として収集し、前記情報処理装置(F)へ送信する(
図6)。
【0038】
前記監視カメラ(S100)及び前記重量計マット(S300)から前記情報処理装置(F)へのデータ送信は、有線で行うことを想定しているが、無線に変更することもあり得る。
【0039】
また、前記サーモグラフィ(S200)、前記浸水深観測装置(S400)、前記ガス検出器(S500)及び前記温度計(S600)から前記情報処理装置(F)へのデータ送信も同様である(
図6)。
【0040】
前記各情報収集元の機器(S100からS600)で収集され前記情報処理装置(F)に送信されたデータについて、前記情報処理装置などで種々の判断が行なわれ、前記表示装置(E)の付加表示内容あるいは前記通路誘導灯(D100)への表示方向指示として出力される(
図6)。また、必要な集計が行なわれる。
【0041】
本願における「地下街」とは、公共の様に供される地下歩道(地下駅の改札口外の通路、コンコース等を含む)と当該地下歩道に面して設けられる店舗、事務所その他これらに類する施設とが一体となった地下施設であって、公共の用に供されている道路又は駅前広場の区域に係るものを指すものとする。
【0042】
次に、通路6(A6)、通路8(A8)、通路9(A9)及び通路11(A11)に囲まれた店舗の内部で被災した人を避難誘導する場合を例にとって
図1及び
図7及び
図8に従い説明する。
【0043】
前記店舗内に設置してある避難誘導手段(図示せず)に従いまずは前記店舗に隣接する通路8(A8)に出る(
図1及び
図7)。
【0044】
前記通路8(A8)の通路誘導灯(D100)を視認し、点滅により指示している方向(
図7で示す下方向)に従って歩行する(
図7)。前記通路誘導灯の方向指示作動について、点灯でも良いが好ましくは点滅の方が誘導性に優れるものと考える。
【0045】
交差点5(B5)に到達した後は、当該交差点に設けられている表示装置(E)の表示内容を視認し、現在位置及び階段の位置(C6など)を取得(確認)する(
図8)。
【0046】
前記表示装置(E)に表示された内容から、最適な階段までの避難経路を決定し、その経路に従って階段まで歩行を行う。
【0047】
次に、階段6(C6)付近に設置している温度計(S600)から取得した温度データが非常に高温であり、それを受信した情報処理装置が異常(2次災害)と判断した場合を例にとって、
図1、
図9及び
図10に従い説明する。
【0048】
店舗内に設置してある避難誘導手段(図示せず)に従いまずは前記店舗に隣接する通路8(A8)に出る(
図1及び
図7)。
【0049】
前記温度計(S600)で取得したデータを受信した前記情報処理装置が、前記温度計が設置してある場所に異常があると判断し、階段6(C6)から遠ざけるように通路誘導灯(D100)の指示方向を制御する。
【0050】
前記店舗から出た地下街往来者は、前記通路8(A8)の通路誘導灯(D100)を視認し、指示している方向(
図9で示す上方向)に従って歩行する(
図9)。
【0051】
交差点3(B3)に到達した後は、当該交差点に設けられている表示装置(E)の表示内容を視認し、現在位置及び階段の位置(C4など)を取得(確認)する(
図10)。
【0052】
前記表示装置(E)に表示された内容から、最適な階段までの避難経路を決定し、その経路に従って階段まで歩行を行う。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本願の地下街往来者に対する避難誘導方法などは、震度5強以上の地震が発生した際を想定した地下街に適した避難誘導方法などであるから産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0054】
A1 通路1
A2 通路2
A3 通路3
A4 通路4
A5 通路5
A6 通路6
A7 通路7
A8 通路8
A9 通路9
A10 通路10
A11 通路11
A12 通路12
A13 通路13
B1 交差点1
B2 交差点2
B3 交差点3
B4 交差点4
B5 交差点5
B6 交差点6
B7 交差点7
C1 階段1
C2 階段2
C3 階段3
C4 階段4
C5 階段5
C6 階段6
C7 階段7
C8 階段8
D100 通路誘導灯
D200 交差点誘導灯
E 表示装置
F 情報処理装置
S100 監視カメラ(情報収集元の機器)
S200 サーモグラフィ(情報収集元の機器)
S300 重量計マット(情報収集元の機器)
S400 浸水深観測装置(情報収集元の機器)
S500 ガス検出器(情報収集元の機器)
S600 温度計(情報収集元の機器)