(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】センサモジュール、ひずみ検出装置
(51)【国際特許分類】
G01B 7/16 20060101AFI20231124BHJP
G01K 7/16 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
G01B7/16 R
G01K7/16 Z
(21)【出願番号】P 2019161965
(22)【出願日】2019-09-05
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】戸田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】北村 厚
(72)【発明者】
【氏名】浅川 寿昭
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-80365(JP,A)
【文献】特開2018-200291(JP,A)
【文献】特開昭57-103002(JP,A)
【文献】特開2008-002591(JP,A)
【文献】特開2012-211868(JP,A)
【文献】特開2019-066311(JP,A)
【文献】社団法人 日本非破壊検査協会,非破壊検査技術シリーズ ひずみ測定I Strain Measurement,1998年04月30日,第15-17頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00-7/34
G01K 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1抵抗体を有する第1ひずみゲージと、
第2抵抗体を有する第2ひずみゲージと、
起歪体と、を有し、
前記第1ひずみゲージと前記第2ひずみゲージとは同一特性であり、
前記第1ひずみゲージ及び前記第2ひずみゲージは、互いに線膨張係数が異なる層を介して、前記起歪体の同一面側に配置されているセンサモジュール。
【請求項2】
前記第1ひずみゲージは、第1接着層を介して、前記起歪体上に配置され、
前記第2ひずみゲージは、第2接着層を介して、前記起歪体上に配置され、
前記互いに線膨張係数が異なる層は、前記第1接着層と前記第2接着層である請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項3】
前記第1ひずみゲージは、第1接着層及び第1感温層を介して、前記起歪体上に配置され、
前記第2ひずみゲージは、第2接着層及び第2感温層を介して、前記起歪体上に配置され、
前記第1接着層と前記第2接着層とは線膨張係数が同一であり、
前記互いに線膨張係数が異なる層は、前記第1感温層と前記第2感温層である請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項4】
前記第1ひずみゲージは、第1接着層及び第1感温層を介して、前記起歪体上に配置され、
前記第2ひずみゲージは、第2接着層及び第2感温層を介して、前記起歪体上に配置され、
前記互いに線膨張係数が異なる層は、前記第1接着層と前記第2接着層、及び前記第1感温層と前記第2感温層であり、
前記第2接着層の線膨張係数は前記第1接着層の線膨張係数よりも大きく、前記第2感温層の線膨張係数は前記第1感温層の線膨張係数よりも大きい請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項5】
前記第1抵抗体及び前記第2抵抗体は、Cr混相膜から形成されている請求項1乃至4の何れか一項に記載のセンサモジュール。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載のセンサモジュールと、
前記第1抵抗体の出力に基づいて第1ひずみ電圧を生成すると共に、前記第2抵抗体の出力に基づいて第2ひずみ電圧を生成する電圧生成部と、
前記第1ひずみ電圧から前記第2ひずみ電圧を減算し、差分電圧を生成する減算部と、
前記差分電圧を温度に換算する温度換算部と、を有するひずみ検出装置。
【請求項7】
前記温度換算部が換算した温度に基づいて、前記第1ひずみ電圧及び前記第2ひずみ電圧に温度補償を行い、前記起歪体のひずみを算出するひずみ算出部を有する請求項6に記載のひずみ検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサモジュール、ひずみ検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
起歪体のひずみを検出する様々なセンサモジュールが知られている。例えば、1枚のゲージベース上に、互いに順に45度の角度を隔てて線膨張係数の異なる第1、第2、第3のひずみゲージを形成したセンサモジュールが挙げられる。このセンサモジュールでは、線膨張係数が方向によって異なる異方性材料のひずみを検出できる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ひずみゲージを備えた従来のセンサモジュールでは、温度を測定することはできなかった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、ひずみゲージを備えたセンサモジュールにおいて、温度の測定を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本センサモジュールは、第1抵抗体を有する第1ひずみゲージと、第2抵抗体を有する第2ひずみゲージと、起歪体と、を有し、前記第1ひずみゲージと前記第2ひずみゲージとは同一特性であり、前記第1ひずみゲージ及び前記第2ひずみゲージは、互いに線膨張係数が異なる層を介して、前記起歪体の同一面側に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、ひずみゲージを備えたセンサモジュールにおいて、温度の測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係るセンサモジュールを例示する平面図である。
【
図2】第1実施形態に係るセンサモジュールを例示する断面図である。
【
図3】第1実施形態の変形例1に係るセンサモジュールを例示する断面図である。
【
図4】第1実施形態の変形例2に係るセンサモジュールを例示する断面図である。
【
図5】第2実施形態に係るひずみ検出装置を例示するブロック図である。
【
図6】第2実施形態に係る演算部のハードウェアブロック図の例である。
【
図7】第2実施形態に係る演算部の機能ブロック図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態に係るセンサモジュールを例示する平面図であり、センサモジュール1を起歪体100の上面100aの法線方向から視た様子を示している。
図2は、第1実施形態に係るセンサモジュールを例示する断面図であり、
図1のA-A線に沿う断面を示している。なお、
図1ではカバー層16の図示を簡略化し、一部のみを破線で示している。
【0011】
図1及び
図2を参照すると、センサモジュール1は、ひずみゲージ10Aと、ひずみゲージ10Bと、接着層20及び30と、起歪体100とを有している。
【0012】
ひずみゲージ10A及び10Bは、起歪体100の同一面側に配置されている。詳細には、ひずみゲージ10Aは、接着層20を介して、起歪体100の上面100aに固着されている。ひずみゲージ10Bは、接着層30を介して、起歪体100の上面100aに固着されている。
【0013】
ひずみゲージ10A及び10Bは、グリッド方向を同一方向に向けて配置されている。但し、ひずみゲージ10A及び10Bは、グリッド方向を同一方向に向けて配置されていれば、
図1の配置には限定されない。例えば、ひずみゲージ10Aとひずみゲージ10Bを紙面の上下方向に並べて配置してもよいし、斜め方向に並べて配置してもよい。なお、ひずみゲージ10A及び10Bが狭い範囲のひずみや温度を検出する場合には、ひずみゲージ10A及び10Bはなるべく近接して配置することが好ましい。
【0014】
ひずみゲージ10A及び10Bは、それぞれ、基材11と、機能層12と、抵抗体13と、端子部14と、カバー層16とを有している。つまり、ひずみゲージ10A及び10Bは、便宜上別符号としているが、同一特性のひずみゲージである。ここで、同一特性とは、同一の設計に基づいて製造された結果、ゲージ率、ゲージ率温度係数TCS、及び抵抗温度係数TCRがほとんど同一であることを示し、製造上の誤差程度は許容されることを意味する。
【0015】
なお、本実施形態では、便宜上、センサモジュール1において、ひずみゲージ10A及び10Bのカバー層16が設けられる側を上側又は一方の側、起歪体100側を下側又は他方の側とする。又、各部位のひずみゲージ10A及び10Bのカバー層16が設けられる側の面を一方の面又は上面、起歪体100側の面を他方の面又は下面とする。但し、センサモジュール1は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置できる。又、平面視とは対象物を起歪体100の上面100aの法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を起歪体100の上面100aの法線方向から視た形状を指すものとする。
【0016】
基材11は、抵抗体13等を形成するためのベース層となる部材であり、可撓性を有する。基材11の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、5μm~500μm程度とすることができる。特に、基材11の厚さが5μm~200μmであると、環境に対する寸法安定性の点で好ましく、10μm以上であると絶縁性の点で更に好ましい。
【0017】
基材11は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成できる。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、可撓性を有する部材を指す。
【0018】
ここで、『絶縁樹脂フィルムから形成する』とは、基材11が絶縁樹脂フィルム中にフィラーや不純物等を含有することを妨げるものではない。基材11は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成しても構わない。
【0019】
機能層12は、基材11の上面11aに抵抗体13の下層として形成されている。すなわち、機能層12の平面形状は、
図1に示す抵抗体13の平面形状と略同一である。機能層12の厚さは、例えば、1nm~100nm程度とすることができる。
【0020】
本願において、機能層とは、少なくとも上層である抵抗体13の結晶成長を促進する機能を有する層を指す。機能層12は、更に、基材11に含まれる酸素や水分による抵抗体13の酸化を防止する機能や、基材11と抵抗体13との密着性を向上する機能を備えていることが好ましい。機能層12は、更に、他の機能を備えていてもよい。
【0021】
基材11を構成する絶縁樹脂フィルムは酸素や水分を含むため、特に抵抗体13がCr(クロム)を含む場合、Crは自己酸化膜を形成するため、機能層12が抵抗体13の酸化を防止する機能を備えることは有効である。
【0022】
機能層12の材料は、少なくとも上層である抵抗体13の結晶成長を促進する機能を有する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、Cr(クロム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Ni(ニッケル)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Si(シリコン)、C(炭素)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Bi(ビスマス)、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)からなる群から選択される1種又は複数種の金属、この群の何れかの金属の合金、又は、この群の何れかの金属の化合物が挙げられる。
【0023】
上記の合金としては、例えば、FeCr、TiAl、FeNi、NiCr、CrCu等が挙げられる。又、上記の化合物としては、例えば、TiN、TaN、Si3N4、TiO2、Ta2O5、SiO2等が挙げられる。
【0024】
抵抗体13は、機能層12の上面に所定のパターンで形成された薄膜であり、ひずみを受けて抵抗変化を生じる受感部である。なお、
図1では、便宜上、抵抗体13を梨地模様で示している。
【0025】
抵抗体13は、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、又はCrとNiの両方を含む材料から形成できる。すなわち、抵抗体13は、CrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成できる。Crを含む材料としては、例えば、Cr混相膜が挙げられる。Niを含む材料としては、例えば、Cu-Ni(銅ニッケル)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni-Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。
【0026】
ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、Cr2N等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでもよい。又、Cr混相膜に、機能層12を構成する材料の一部が拡散されてもよい。この場合、機能層12を構成する材料と窒素とが化合物を形成する場合もある。例えば、機能層12がTiから形成されている場合、Cr混相膜にTiやTiN(窒化チタン)が含まれる場合がある。
【0027】
抵抗体13の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.05μm~2μm程度とすることができる。特に、抵抗体13の厚さが0.1μm以上であると、抵抗体13を構成する結晶の結晶性(例えば、α-Crの結晶性)が向上する点で好ましい。又、抵抗体13の厚さが1μm以下であると、抵抗体13を構成する膜の内部応力に起因する膜のクラックや基材11からの反りを低減できる点で更に好ましい。
【0028】
機能層12上に抵抗体13を形成することで、安定な結晶相により抵抗体13を形成できるため、ゲージ特性(ゲージ率、ゲージ率温度係数TCS、及び抵抗温度係数TCR)の安定性を向上できる。
【0029】
例えば、抵抗体13がCr混相膜である場合、機能層12を設けることで、α-Cr(アルファクロム)を主成分とする抵抗体13を形成できる。α-Crは安定な結晶相であるため、ゲージ特性の安定性を向上できる。
【0030】
ここで、主成分とは、対象物質が抵抗体を構成する全物質の50質量%以上を占めることを意味する。抵抗体13がCr混相膜である場合、ゲージ特性を向上する観点から、抵抗体13はα-Crを80重量%以上含むことが好ましい。なお、α-Crは、bcc構造(体心立方格子構造)のCrである。
【0031】
又、機能層12を構成する金属(例えば、Ti)がCr混相膜中に拡散することにより、ゲージ特性を向上できる。具体的には、ひずみゲージ10A及び10Bのゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。
【0032】
端子部14は、抵抗体13の両端部から延在しており、平面視において、抵抗体13よりも拡幅して略矩形状に形成されている。端子部14は、ひずみにより生じる抵抗体13の抵抗値の変化を外部に出力するための一対の電極であり、例えば、外部接続用のリード線等が接合される。抵抗体13は、例えば、端子部14の一方からジグザグに折り返しながら延在して他方の端子部14に接続されている。端子部14の上面を、端子部14よりもはんだ付け性が良好な金属で被覆してもよい。なお、抵抗体13と端子部14とは便宜上別符号としているが、両者は同一工程において同一材料により一体に形成できる。
【0033】
カバー層16は、抵抗体13を被覆し端子部14を露出するように基材11の上面11aに設けられた絶縁樹脂層である。カバー層16を設けることで、抵抗体13に機械的な損傷等が生じることを防止できる。又、カバー層16を設けることで、抵抗体13を湿気等から保護できる。
【0034】
カバー層16は、例えば、PI樹脂、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、複合樹脂(例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂)等の絶縁樹脂から形成できる。カバー層16は、フィラーや顔料を含有しても構わない。カバー層16の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、2μm~30μm程度とすることができる。なお、ひずみゲージ10A及び10Bにおいて、カバー層16は必要に応じて設ければよい。
【0035】
接着層20は、起歪体100の上面100aとひずみゲージ10Aの基材11の下面11bとの間に配置されている。又、接着層30は、起歪体100の上面100aとひずみゲージ10Bの基材11の下面11bとの間に配置されている。接着層20と接着層30の各々の厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm~500μm程度である。
【0036】
接着層20と接着層30とは、互いに線膨張係数が異なる層である。つまり、温度が変化したときに、接着層20に生じる膨張と接着層30に生じる膨張とが異なる。ひずみゲージ10Aは接着層20に生じる膨張をひずみゲージ10Aの抵抗体13の抵抗値の変化として検出でき、ひずみゲージ10Bは接着層30に生じる膨張をひずみゲージ10Bの抵抗体13の抵抗値の変化として検出できる。
【0037】
ひずみゲージ10Aの検出値とひずみゲージ10Bの検出値との差分は、センサモジュール1の周囲温度に依存して変化する。そのため、センサモジュール1を外部回路と接続し、外部回路により、ひずみゲージ10Aの検出値とひずみゲージ10Bの検出値との差分をとることで、センサモジュール1の周囲温度を知ることができる。すなわち、センサモジュール1は、ひずみセンサとしての機能に加え、温度センサとしての機能を有する。
【0038】
なお、起歪体100のひずみについては、ひずみゲージ10Aとひずみゲージ10Bで同じ値が検出されるため、起歪体100が歪んでいる場合も、ひずみゲージ10Aの検出値とひずみゲージ10Bの検出値との差分を温度に換算できる。
【0039】
接着層20と接着層30の材料の組合せの例としては、例えば、エポキシ系接着剤(線膨張係数20~100ppm/K)とシリコーン系接着剤(線膨張係数300~500ppm/K)、エポキシ系接着剤(線膨張係数20~100ppm/K)とシアノアクリレート(線膨張係数90~200ppm/K)、エポキシ系接着剤(線膨張係数20~100ppm/K)とウレタン系接着剤(線膨張係数100~200ppm/K)等が挙げられる。
【0040】
ひずみゲージ10Aを製造するためには、まず、基材11を準備し、基材11の上面11aに機能層12を形成する。基材11及び機能層12の材料や厚さは、前述の通りである。但し、機能層12は、必要に応じて設ければよい。
【0041】
機能層12は、例えば、機能層12を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にAr(アルゴン)ガスを導入したコンベンショナルスパッタ法により真空成膜できる。コンベンショナルスパッタ法を用いることにより、基材11の上面11aをArでエッチングしながら機能層12が成膜されるため、機能層12の成膜量を最小限にして密着性改善効果を得ることができる。
【0042】
但し、これは、機能層12の成膜方法の一例であり、他の方法により機能層12を成膜してもよい。例えば、機能層12の成膜の前にAr等を用いたプラズマ処理等により基材11の上面11aを活性化することで密着性改善効果を獲得し、その後マグネトロンスパッタ法により機能層12を真空成膜する方法を用いてもよい。
【0043】
次に、機能層12の上面全体に抵抗体13及び端子部14となる金属層を形成後、フォトリソグラフィによって機能層12並びに抵抗体13及び端子部14を
図1に示す平面形状にパターニングする。抵抗体13及び端子部14の材料や厚さは、前述の通りである。抵抗体13及び端子部14は、同一材料により一体に形成できる。抵抗体13及び端子部14は、例えば、抵抗体13及び端子部14を形成可能な原料をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により成膜できる。抵抗体13及び端子部14は、マグネトロンスパッタ法に代えて、反応性スパッタ法や蒸着法、アークイオンプレーティング法、パルスレーザー堆積法等を用いて成膜してもよい。
【0044】
機能層12の材料と抵抗体13及び端子部14の材料との組合せは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、機能層12としてTiを用い、抵抗体13及び端子部14としてα-Cr(アルファクロム)を主成分とするCr混相膜を成膜可能である。
【0045】
この場合、例えば、Cr混相膜を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にArガスを導入したマグネトロンスパッタ法により、抵抗体13及び端子部14を成膜できる。或いは、純Crをターゲットとし、チャンバ内にArガスと共に適量の窒素ガスを導入し、反応性スパッタ法により、抵抗体13及び端子部14を成膜してもよい。
【0046】
これらの方法では、Tiからなる機能層12がきっかけでCr混相膜の成長面が規定され、安定な結晶構造であるα-Crを主成分とするCr混相膜を成膜できる。又、機能層12を構成するTiがCr混相膜中に拡散することにより、ゲージ特性が向上する。例えば、ひずみゲージ10Aのゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。
【0047】
なお、抵抗体13がCr混相膜から形成されている場合、Tiからなる機能層12は、抵抗体13の結晶成長を促進する機能、基材11に含まれる酸素や水分による抵抗体13の酸化を防止する機能、及び基材11と抵抗体13との密着性を向上する機能の全てを備えている。機能層12として、Tiに代えてTa、Si、Al、Feを用いた場合も同様である。
【0048】
その後、必要に応じ、基材11の上面11aに、抵抗体13を被覆し端子部14を露出するカバー層16を設けることで、ひずみゲージ10Aが完成する。カバー層16は、例えば、基材11の上面11aに、抵抗体13を被覆し端子部14を露出するように半硬化状態の熱硬化性の絶縁樹脂フィルムをラミネートし、加熱して硬化させて作製できる。カバー層16は、基材11の上面11aに、抵抗体13を被覆し端子部14を露出するように液状又はペースト状の熱硬化性の絶縁樹脂を塗布し、加熱して硬化させて作製してもよい。
【0049】
このように、抵抗体13の下層に機能層12を設けることにより、抵抗体13の結晶成長を促進可能となり、安定な結晶相からなる抵抗体13を作製できる。その結果、ひずみゲージ10Aにおいて、ゲージ特性の安定性を向上できる。又、機能層12を構成する材料が抵抗体13に拡散することにより、ひずみゲージ10Aにおいて、ゲージ特性を向上できる。なお、ひずみゲージ10Bは、ひずみゲージ10Aと同様の方法により製造できる。
【0050】
センサモジュール1を作製するには、上記の方法で製造したひずみゲージ10Aを接着層20を介して起歪体100の上面100aに固着し、ひずみゲージ10Bを接着層30を介して起歪体100の上面100aに固着すればよい。
【0051】
このように、センサモジュール1は、起歪体100のひずみを検出する機能に加え、周囲温度を検出する機能を有する。なお、ひずみゲージ10A及び10Bにおいて抵抗体13がCr混相膜から形成されている場合は、高感度化(従来比500%以上)かつ、小型化(従来比1/10以下)を実現できる。例えば、従来のひずみゲージの出力が0.04mV/2V程度であったのに対して、ひずみゲージ10A及び10Bでは0.3mV/2V以上の出力が得られる。又、従来のひずみゲージの大きさ(ゲージ長×ゲージ幅)が3mm×3mm程度であったのに対して、ひずみゲージ10A及び10Bの大きさ(ゲージ長×ゲージ幅)は各々0.3mm×0.3mm程度に小型化できる。
【0052】
このように、抵抗体13の材料としてCr混相膜を用いたひずみゲージ10A及び10Bは小型であるため、センサモジュール1全体としても小型にできる。そのため、今まで使用できなかった微細な測定箇所への設置が可能となる。又、抵抗体13の材料としてCr混相膜を用いたひずみゲージ10A及び10Bは高感度であり、小さい変位を検出できるため、従来は検出が困難であった微小なひずみを検出可能である。すなわち、抵抗体13の材料としてCr混相膜を用いたひずみゲージ10A及び10Bを有することにより、ひずみを精度よく検出可能なセンサモジュール1を実現できる。これにより、センサモジュール1は、温度も高精度で検出できる。
【0053】
〈第1実施形態の変形例1〉
第1実施形態の変形例1では、ひずみゲージ10A及び10Bと起歪体との間に配置される層の構成が異なるセンサモジュールの例を示す。なお、第1実施形態の変形例1において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0054】
図3は、第1実施形態の変形例1に係るセンサモジュールを例示する断面図であり、
図1のA-A線に相当する断面を示している。なお、平面形状は
図1と同一であるため、平面図の図示は省略する。
【0055】
図3を参照すると、センサモジュール2は、ひずみゲージ10Aの下方に感温層40が追加され、ひずみゲージ10Bの下方に感温層50が追加された点が、センサモジュール1(
図1及び
図2参照)と相違する。又、センサモジュール2は、接着層20及び30に代えて、互いに線膨張係数が同一である接着層20を用いている点が、センサモジュール1(
図1及び
図2参照)と相違する。
【0056】
ひずみゲージ10Aは、接着層20及び感温層40を介して、起歪体100の上面100aに配置されている。又、ひずみゲージ10Bは、接着層20及び感温層50を介して、起歪体100の上面100aに配置されている。
【0057】
感温層40は、一方の接着層20とひずみゲージ10Aの基材11の下面11bとの間に配置されている。又、感温層50は、他方の接着層20とひずみゲージ10Bの基材11の下面11bとの間に配置されている。感温層40と感温層50の各々の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.1μm~500μm程度である。
【0058】
感温層40と感温層50とは、互いに線膨張係数が異なる層である。つまり、温度が変化したときに、感温層40に生じる膨張と感温層50に生じる膨張とが異なる。ひずみゲージ10Aは感温層40に生じる膨張をひずみゲージ10Aの抵抗体13の抵抗値の変化として検出でき、ひずみゲージ10Bは感温層50に生じる膨張をひずみゲージ10Bの抵抗体13の抵抗値の変化として検出できる。
【0059】
ひずみゲージ10Aの検出値とひずみゲージ10Bの検出値との差分は、センサモジュール2の周囲温度に依存して変化する。そのため、センサモジュール2を外部回路と接続し、外部回路により、ひずみゲージ10Aの検出値とひずみゲージ10Bの検出値との差分をとることで、センサモジュール2の周囲温度を知ることができる。すなわち、センサモジュール2は、センサモジュール1と同様に、温度センサとしての機能を有する。
【0060】
なお、起歪体100のひずみについては、ひずみゲージ10Aとひずみゲージ10Bで同じ値が検出されるため、起歪体100が歪んでいる場合も、ひずみゲージ10Aの検出値とひずみゲージ10Bの検出値との差分を温度に換算できる。
【0061】
感温層40と感温層50の材料の組合せの例としては、例えば、ガラス(線膨張係数0.6~9ppm/K)とアルミニウム(線膨張係数23.8ppm/K)、酸化アルミニウム(線膨張係数7.2ppm/K)と鉄(線膨張係数11ppm/K)、クロム(線膨張係数8.2ppm/K)と銅(線膨張係数16.5ppm/K)等が挙げられ、それ以外の遷移金属や半導体、それらの化合物を適宜選択できる。
【0062】
センサモジュール2を作製するには、上記の方法で製造したひずみゲージ10Aを接着層20及び感温層40を介して起歪体100の上面100aに固着し、ひずみゲージ10Bを接着層20及び感温層50を介して起歪体100の上面100aに固着すればよい。なお、ひずみゲージ10Aを固着する接着層20と、ひずみゲージ10Bを固着する接着層20とは線膨張係数が同一であればよく、接着層20の材料は第1実施形態で接着層20の材料として例示した材料には限定されない。
【0063】
このように、センサモジュール2は、起歪体100のひずみを検出する機能に加え、周囲温度を検出する機能を有する。なお、ひずみゲージ10A及び10Bにおいて抵抗体13がCr混相膜から形成されていると好適な点に関しては、第1実施形態と同様である。
【0064】
〈第1実施形態の変形例2〉
第1実施形態の変形例2では、ひずみゲージ10A及び10Bと起歪体との間に配置される層の構成が異なるセンサモジュールの他の例を示す。なお、第1実施形態の変形例2において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0065】
図4は、第1実施形態の変形例2に係るセンサモジュールを例示する断面図であり、
図1のA-A線に相当する断面を示している。なお、平面形状は
図1と同一であるため、平面図の図示は省略する。
【0066】
図4を参照すると、センサモジュール3は、ひずみゲージ10Aを固着する接着層と、ひずみゲージ10Bを固着する接着層とが互いに線膨張係数が異なる点が、センサモジュール2(
図3参照)と相違する。
【0067】
ひずみゲージ10Aは、接着層20及び感温層40を介して、起歪体100の上面100aに配置されている。又、ひずみゲージ10Bは、接着層30及び感温層50を介して、起歪体100の上面100aに配置されている。接着層20と接着層30とは、第1実施形態と同様に、互いに線膨張係数が異なる層である。
【0068】
すなわち、センサモジュール3では、接着層20と接着層30とは互いに線膨張係数が異なる層であり、かつ、感温層40と感温層50とは互いに線膨張係数が異なる層である。例えば、接着層30の線膨張係数は接着層20の線膨張係数よりも大きく、感温層50の線膨張係数は感温層40の線膨張係数よりも大きい。
【0069】
これにより、センサモジュール3では、同一温度におけるひずみゲージ10Aの検出値とひずみゲージ10Bの検出値との差分は、センサモジュール1やセンサモジュール2よりも大きくなる。その結果、温度をより高精度に検出できる。なお、ひずみゲージ10A及び10Bにおいて抵抗体13がCr混相膜から形成されていると好適な点に関しては、第1実施形態及び変形例1と同様である。
【0070】
〈第2実施形態〉
第2実施形態では、センサモジュール1を用いたひずみ検出装置の例を示す。なお、第2実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0071】
図5は、第2実施形態に係るひずみ検出装置を例示するブロック図である。
図5を参照すると、ひずみ検出装置200は、センサモジュール1と、アナログフロントエンド部210a及び210bと、演算部220とを有する。
【0072】
ひずみ検出装置200において、センサモジュール1のひずみゲージ10Aの一対の端子部14は、例えば、フレキシブル基板やリード線等を用いて、アナログフロントエンド部210aに接続されている。
【0073】
アナログフロントエンド部210aは、例えば、ブリッジ回路211、増幅回路212、A/D変換回路(アナログ/デジタル変換回路)213、インターフェイス214等を備えており、抵抗体13の出力に基づいて、第1ひずみ電圧を生成する。アナログフロントエンド部210aは、IC化されていてもよいし、個別部品により構成されていてもよい。
【0074】
アナログフロントエンド部210aでは、例えば、ひずみゲージ10Aの一対の端子部14は、ブリッジ回路211に接続される。すなわち、ブリッジ回路211の1辺が一対の端子部14間の抵抗体13で構成され、他の3辺が固定抵抗で構成される。これにより、ブリッジ回路211の出力として、抵抗体13の抵抗値に対応した第1ひずみ電圧(アナログ信号)を得ることができる。なお、アナログフロントエンド部210aは、本発明に係る電圧生成部の代表的な一例である。
【0075】
アナログフロントエンド部210aにおいて、ブリッジ回路211から出力された第1ひずみ電圧は、増幅回路212で増幅された後、A/D変換回路213によりデジタル信号に変換され、インターフェイス214を介して、例えばI2C等のシリアル通信により演算部220に出力される。
【0076】
センサモジュール1のひずみゲージ10Bの一対の端子部14は、例えば、フレキシブル基板やリード線等を用いて、アナログフロントエンド部210bに接続されている。
【0077】
アナログフロントエンド部210bは、アナログフロントエンド部210aと同様の機能を備えており、ひずみゲージ10Bの抵抗体13の出力に基づいて、第2ひずみ電圧を生成する。アナログフロントエンド部210bは、アナログフロントエンド部210aと合わせて1つのICとしてもよい。
【0078】
アナログフロントエンド部210bでは、例えば、ひずみゲージ10Bの一対の端子部14は、ブリッジ回路211に接続される。すなわち、ブリッジ回路211の1辺が一対の端子部14間の抵抗体13で構成され、他の3辺が固定抵抗で構成される。これにより、ブリッジ回路211の出力として、ひずみゲージ10Bの抵抗体13の抵抗値に対応した第2ひずみ電圧(アナログ信号)を得ることができる。なお、アナログフロントエンド部210bは、本発明に係る電圧生成部の代表的な一例である。
【0079】
アナログフロントエンド部210bにおいて、ブリッジ回路211から出力された第2ひずみ電圧は、増幅回路212で増幅された後、A/D変換回路213によりデジタル信号に変換され、インターフェイス214を介して、例えばI2C等のシリアル通信により演算部220に出力される。
【0080】
演算部220は、アナログフロントエンド部210a及び210bから送られたデジタル化された第1及び第2ひずみ電圧に演算処理を行い、センサモジュール1の周囲温度を検出する。又、演算部220は、アナログフロントエンド部210a及び210bから送られたデジタル化された第1及び第2ひずみ電圧に演算処理を行い、起歪体100のひずみを検出する。
【0081】
図6は、第2実施形態に係る演算部のハードウェアブロック図の例である。
図6に示すように、演算部220は、主要な構成要素として、CPU(Central Processing Unit)221と、ROM(Read Only Memory)222と、RAM(Random Access Memory)223と、I/F(Interface)224と、バスライン225とを有している。CPU221、ROM222、RAM223、及びI/F224は、バスライン225を介して相互に接続されている。演算部220は、必要に応じ、他のハードウェアブロックを有しても構わない。
【0082】
CPU221は、演算部220の各機能を制御する。記憶手段であるROM222は、CPU221が演算部220の各機能を制御するために実行するプログラムや、各種情報を記憶している。記憶手段であるRAM223は、CPU221のワークエリア等として使用される。又、RAM223は、所定の情報を一時的に記憶できる。I/F224は、他の機器等と接続するためのインターフェイスであり、例えば、アナログフロントエンド部210a及び210bや外部ネットワーク等と接続される。
【0083】
演算部220は、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、所定の機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SOC(System On a Chip)、又はGPU(Graphics Processing Unit)であってもよい。又、演算部220は、回路モジュール等であってもよい。
【0084】
図7は、第2実施形態に係る演算部の機能ブロック図の例である。
図7に示すように、演算部220は、主要な機能ブロックとして、減算部2201と、温度換算部2202と、ひずみ算出部2203とを備えている。演算部220は、必要に応じ、他の機能ブロックを有しても構わない。
【0085】
減算部2201は、デジタル化された第1ひずみ電圧から第2ひずみ電圧を減算し、第1ひずみ電圧と第2ひずみ電圧の差分電圧(絶対値)を生成する機能を有する。温度換算部2202は、減算部2201が生成した差分電圧を温度に換算する機能を有する。
【0086】
例えば、予め、シミュレーションや実験により、減算部2201が生成する差分電圧と温度との換算表を作成し、不揮発性メモリ等に記憶しておく。この場合、温度換算部2202は、不揮発性メモリ等に記憶された換算表を参照することで、減算部2201が生成した差分電圧を温度に換算できる。温度換算部2202は、必要に応じ、換算した温度のデータを外部に出力してもよい。
【0087】
ひずみ算出部2203は、温度換算部2202が換算した温度に基づいて、第1ひずみ電圧及び第2ひずみ電圧に温度補償を行う機能を有する。起歪体100が歪んでいる場合、第1ひずみ電圧及び第2ひずみ電圧は、接着層20及び30の膨張で生じたひずみと、起歪体100のひずみの情報を含んでいる。
【0088】
上記のように、接着層20及び30の線膨張係数、及び温度が既知であるため、ひずみ算出部2203は、第1ひずみ電圧及び第2ひずみ電圧に含まれる接着層20及び30の膨張で生じたひずみを算出できる。その結果、ひずみ算出部2203は、第1ひずみ電圧及び第2ひずみ電圧に含まれる起歪体100のひずみも算出できる。
【0089】
又、センサモジュール1は温度変化と起歪体で発生したひずみの両方を測定可能であるため、ひずみ算出部2203は、算出した起歪体100のひずみに温度補償を行うことができる。すなわち、ひずみゲージ10Aの抵抗体13とひずみゲージ10Bの抵抗体13の抵抗温度係数に依存して生じた起歪体100のひずみの誤差を補正し、本来検出すべき起歪体100のひずみを高精度で得ることができる。以下に計算の一例を示す。
【0090】
ここでは、一例として、単素子のブリッジ回路を考えると、一般に、次の式(1)~(3)の関係が成り立つ。
【0091】
e/E=1/4×k・ε・・・(1)
TCR=ΔR/R×1/ΔT×106・・・(2)
ΔR/R=k・ε・・・(3)
式(1)~(3)において、Eはブリッジ回路の印加電圧、eはひずみ電圧(出力電圧)、kはゲージ率、εはひずみ、である。
【0092】
又、センサモジュール1において、温度変化ΔTの場合に、ひずみゲージ10Aで検出したひずみをε1、ひずみゲージ10Bで検出したひずみをε2とすると、ε1及びε2は式(1)~(3)を考慮して、次の式(4)及び(5)で表すことができる。
【0093】
ε1=ε0+εT1=ε0+ΔT×TCR1・・・(4)
ε2=ε0+εT2=ε0+ΔT×TCR2・・・(5)
式(4)及び(5)において、ε0は起歪体で発生したひずみ、εT1は温度変化ΔTによってひずみゲージ10Aに発生したひずみ、εT2は温度変化ΔTによってひずみゲージ10Bに発生したひずみ、TCR1はひずみゲージ10Aの抵抗温度係数、TCR2はひずみゲージ10Bの抵抗温度係数である。
【0094】
式(1)を考慮して式(4)及び(5)を変形すると、次の式(6)及び(7)が得られる。
【0095】
e1/E=1/4×k1(ε0+ΔT×TCR1)・・・(6)
e2/E=1/4×k2(ε0+ΔT×TCR2)・・・(7)
式(6)及び(7)において、e1はひずみゲージ10Aの出力電圧、e2はひずみゲージ10Bの出力電圧、k1はひずみゲージ10Aのゲージ率、k2はひずみゲージ10Bのゲージ率である。
【0096】
ここで、e1、e2、E、k1、k2、TCR1、及びTCR2は既知であるため、次の式(8)及び(9)が得られる。
【0097】
ΔT=(4/k1・k2)×(e1・k2/E-e2・k1/E)/(TCR1-TCR2)・・・(8)
ε0=(4/k1・k2)×(e2・TCR1・k1/E-e1・TCR2・k2/E)/(TCR1-TCR2)・・・(9)
すなわち、センサモジュール1を用いると、温度変化ΔTと起歪体で発生したひずみε0の両方を測定可能である。従って、ひずみ算出部2203は、算出した起歪体100のひずみε0に温度補償を行うことができる。
【0098】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0099】
1、2、3 センサモジュール、10A、10B ひずみゲージ、11 基材、11a 上面、11b 下面、12 機能層、13 抵抗体、14 端子部、16 カバー層、20、30 接着層、40、50 感温層、100 起歪体、200 ひずみ検出装置、210a、210b アナログフロントエンド部、211 ブリッジ回路、212 増幅回路、213 A/D変換回路、214 インターフェイス、220 演算部、2201 減算部、2202 温度換算部、2203 ひずみ算出部