(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】端子固定装置
(51)【国際特許分類】
H01R 9/22 20060101AFI20231124BHJP
H01R 4/48 20060101ALI20231124BHJP
H01R 4/50 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H01R9/22
H01R4/48 B
H01R4/50 A
(21)【出願番号】P 2019177357
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】岸 秀之
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07077711(US,B1)
【文献】特開2015-043299(JP,A)
【文献】特開2005-302608(JP,A)
【文献】実開昭59-074674(JP,U)
【文献】特開2015-046245(JP,A)
【文献】特開平05-226009(JP,A)
【文献】国際公開第2019/105825(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/48
H01R 4/50
H01R 9/00
H01R 9/15-9/28
H01R 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置された端子と電気的に接続される導電部材と、
前記端子が載置される載置面から第1の方向に沿って離れた位置にて回動可能に軸支された回動部材と、
を備え、
前記載置面に向って突出した前記回動部材の突部に、前記回動部材の回動に応じて前記載置面と対向し得る略曲面が設けられており、
前記突部は、前記端子が前記載置面に載置される際に、第1の付勢力に抗して第1の位置から第1の回動方向へ回動して第2の位置に至り、更に、前記第1の付勢力を利用して前記第2の位置から前記第1の回動方向とは反対の第2の回動方向へ回動して第3の位置に至り、前記第3の位置において、前記載置面に載置された前記端子のうち、前記
第1の方向と交差する第2の方向における前記突部との衝突側の少なくとも端部付近を、前記載置面と前記略曲面との間に形成される隙間に第2の付勢力を利用して挟み込んで前記端子を仮保持するように構成されている、ことを特徴とする端子固定装置。
【請求項2】
前記突部は更に、前記第3の位置から前記第2の回動方向へ回動して第4の位置に至り、前記第4の位置において、前記載置面に載置された前記端子のうち、前記第2の方向における中間部付近を、前記載置面と前記略曲面との間に形成される隙間に挟み込んで前記端子を固定する、請求項1に記載の端子固定装置。
【請求項3】
前記突部を前記第4の位置に保持する保持手段を有する、請求項2に記載の端子固定装置。
【請求項4】
前記保持手段は、前記第1の方向に沿って前記載置面から離れる方向に常時付勢されたスライド部材に設けた係止部と、前記回動部材に設けた、前記係止部と係止される対応係止部とを含む、請求項3に記載の端子固定装置。
【請求項5】
前記第1の付勢力は、前記回動部材に設けたカムと前記スライド部材の当接を通じて発生される、請求項4に記載の端子固定装置。
【請求項6】
前記カムに前記対応係止部が設けられている、請求項5に記載の端子固定装置。
【請求項7】
前記突部は、前
記第2の方向にて前記載置面に向って接近させた前記端子との衝突を通じて、前記第1の付勢力に抗して前記第1の位置から前記第2の位置に至り、
前記突部は更に、前記端子との前記衝突を解除されたときに、前記第1の付勢力を利用して前記第2の位置から前記第3の位置に至る、
請求項1
乃至6のいずれかに記載の端子固定装置。
【請求項8】
前記載置面に載置された前記端子を位置決めする位置決め手段が前記載置面に設けられている、請求項1乃至7のいずれかに記載の端子固定装置。
【請求項9】
前記位置決め手段は、凸状部又は凹状部と、前記凸状部又は凹状部に対応して設けた凹状部又は凸状部の組から成る、請求項8に記載の端子固定装置。
【請求項10】
前記導電部材は、前記載置面に載置された前記端子と相手端子とを電気的に接続させる、請求項1乃至9のいずれかに記載の端子固定装置。
【請求項11】
前記第1の方向と前記第2の方向によって形成される面に側面視略C字状のバネ部が設けられており、前記回動部材の軸部は、前記側面視略C字状のバネ部におけるC字の内壁に対して、少なくとも前記第1の方向に沿って前記載置面から離れる方向に付勢された状態で軸支される、請求項1乃至10のいずれかに記載の端子固定装置。
【請求項12】
前記回動部材は、請求項11に記載した前記バネ部を利用することによって少なくとも前記第1の方向に沿ってバネ性を発揮するように構成されている、請求項11に記載の端子固定装置。
【請求項13】
少なくとも前記第1の方向に沿って前記載置面から離れる方向に立設した、前記バネ部を有する立設部が、前記第1の方向と前記第2の方向の双方と交差する第3の方向にて対向配置され、
前記対向配置された立設部同士が、少なくとも前記第3の方向に沿って延びる連結部によって連結されている、請求項11
又は12に記載の端子固定装置。
【請求項14】
前記連結部は、前記載置面から離れる方向に凸状に折り曲げた曲げ部を有する、請求項
13に記載の端子固定装置。
【請求項15】
前記回動部材は、前記連結部を利用することによって少なくとも前記第1の方向に沿ってバネ性を発揮するように構成されている、請求項13又は14に記載の端子固定装置。
【請求項16】
前記第2の付勢力は、前記第1の付勢力を利用して発生される、及び/又は、請求項11乃至
15のいずれかに記載の前記バネ部のバネ性を利用して発生される、請求項1乃至15のいずれかに記載の端子固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子固定装置、更に言えば、導電部材と所定部材との間に端子を挟み込んで固定することができる端子固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2017-91729号公報(特許文献1)に、上記タイプの端子固定装置の一例が開示されている。
特許文献1に開示された端子固定装置、即ち、端子台は、挿入される端子と電気的に接続するベースと、ベースに向かって端子を付勢する板バネと、回転軸を中心に初期位置と待機位置との間で回転可能であると共に、初期位置から待機位置に移動するときに板バネを押し上げるレバーとを備える。
レバーが初期位置にあるとき、板バネの押付部はレバーの上面に当接しているため、丸型端子を挿入することはできない。一方、レバーが待機位置あるときには、板バネの押付部とベースとの間に端子を挿入可能な隙間が形成されるため、丸型端子を挿入することができる。
この結果、レバーを待機位置として、丸型端子を隙間に挿入した後、それを初期位置に戻すことにより、端子を導電部材であるベースと押付部との間に挟み込んで固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された従来の端子固定装置では、レバーを待機位置から初期位置に回動させるまで、丸型端子は、何ら支持されておらず、このため、隙間から抜け出してしまうおそれがある。特に、端子固定装置が壁面に垂直に取り付けられており、丸型端子を端子固定装置に対して垂直に取り付けなければならないような場合、従来の装置では、丸型端子を常に手で支持した状態で作業を行うことが必要となり、作業が煩雑となる。
本願発明はこのような従来技術における問題点を解決するためになされたものであり、端子を固定する前にそれを仮保持することができる端子固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様による端子固定装置は、載置された端子と電気的に接続される導電部材と、前記端子が載置される載置面から第1の方向に沿って離れた位置にて回動可能に軸支された回動部材と、を備え、前記載置面に向って突出した前記回動部材の突部に前記回動部材の回動に応じて前記載置面と対向し得る略曲面が設けられており、前記突部は、前記端子が前記載置面に載置される際に、第1の付勢力に抗して第1の位置から第1の回動方向へ回動して第2の位置に至り、更に、前記第1の付勢力を利用して前記第2の位置から前記第1の回動方向とは反対の第2の回動方向へ回動して第3の位置に至り、前記第3の位置において、前記載置面に載置された前記端子のうち、前記第2の方向における前記突部との衝突側の少なくとも端部付近を、前記載置面と前記略曲面との間に形成される隙間に第2の付勢力を利用して挟み込んで前記端子を仮保持するように構成されていることを特徴として有する。
この態様の端子固定装置によれば、端子を固定する前にそれを仮保持することができることから、端子の固定作業が容易となる。
【0006】
上記態様の端子固定装置において、前記突部は更に、前記第3の位置から前記第2の回動方向へ回動して第4の位置に至り、前記第4の位置において、前記載置面に載置された前記端子のうち、前記第2の方向における中間部付近を、前記載置面と前記略曲面との間に形成される隙間に挟み込んで前記端子を固定することができる。
【0007】
また、上記態様の端子固定装置において、前記突部は、前記第1の方向と交差する第2の方向にて前記載置面に向って接近させた前記端子との衝突を通じて、前記第1の付勢力に抗して前記第1の位置から前記第2の位置に至り、前記突部は更に、前記端子との前記衝突を解除されたときに、前記第1の付勢力を利用して前記第2の位置から前記第3の位置に至るのが好ましい。
この構成によれば、端子を仮保持するための第1の付勢力を、端子を載置する際の動作によって、更に詳細には、端子を載置する際にそれを回動部材の所定部分に衝突させることによって得ることができ、従って、仮保持を行う作業を簡易化することができる。
【0008】
更に、上記態様の端子固定装置において、前記突部を前記第4の位置に保持する保持手段を有するのが好ましい。
前記保持手段は、前記第1の方向に沿って前記載置面から離れる方向に常時付勢されたスライド部材に設けた係止部と、前記回動部材に設けた、前記係止部と係止される対応係止部とを含むものであってもよい。
【0009】
更にまた、上記態様の端子固定装置において、前記第1の付勢力は、前記回動部材に設けたカムと前記スライド部材の当接を通じて発生されてもよい。
また、前記カムに前記対応係止部が設けられていてもよい。
【0010】
また、上記態様の端子固定装置において、前記載置面に載置された前記端子を位置決めする位置決め手段が前記載置面に設けられているのが好ましい。
前記位置決め手段は、凸状部又は凹状部と、前記凸状部又は凹状部に対応して設けた凹状部又は凸状部の組から成っていてもよい。
【0011】
また、上記態様の端子固定装置において、前記導電部材は、前記載置面に載置された前記端子と相手端子とを電気的に接続させるものであるのが好ましい。
【0012】
更に、上記態様の端子固定装置において、前記第1の方向と前記第2の方向によって形成される面に側面視略C字状のバネ部が設けられており、前記回動部材の軸部は、前記側面視略C字状のバネ部におけるC字の内壁に対して、少なくとも前記第1の方向に沿って前記載置面から離れる方向に付勢された状態で軸支されるのが好ましい。
【0013】
更に、上記態様の端子固定装置において、少なくとも前記第1の方向に沿って前記載置面から離れる方向に立設した、前記バネ部を有する立設部が、前記第1の方向と前記第2の方向の双方と交差する第3の方向にて対向配置され、前記対向配置された立設部同士が、少なくとも前記第3の方向に沿って延びる連結部によって連結されていてもよい。
前記回動部材は、前記バネ部を利用することによって、及び/又は、前記連結部を利用することによって少なくとも前記第1の方向に沿ってバネ性を発揮するように構成されているのが好ましい。
【0014】
また、上記態様の端子固定装置において、前記載置面から離れる方向に凸状に折り曲げた曲げ部を有するのが好ましい。
更に、上記態様の端子固定装置において、前記第2の付勢力は、前記第1の付勢力を利用した発生されてもよいし、前記バネ部のバネ性を利用して発生されてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本願発明によれば、上記従来技術における問題点を解決した端子固定装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明による例示的な端子固定装置を周辺部材とともに示した斜視図である。
【
図2】重複要素を一部省略して示した端子固定装置の分解斜視図である。
【
図3】重複要素を一部省略して示した端子固定装置の分解斜視図である。
【
図5】回動部材が定位置にあるときの端子固定装置の状態を説明するための概略側面図である。
【
図6】回動部材が変位位置にあるときの端子固定装置の状態を説明するための概略側面図である。
【
図7】回動部材が固定位置にあるときの端子固定装置の状態を説明するための概略側面図である。
【
図8】回動部材が定位置にあるときの状態を示した斜視図及び側面図である。
【
図9】回動部材が変位位置にあるときの状態を示した斜視図及び側面図である。
【
図10】回動部材が仮保持位置にあるときの状態を示した斜視図及び側面図である。
【
図12】仮保持された端子を固定するまでの途中経過を示す斜視図及び側面図である。
【
図13】仮保持された端子を固定するまでの途中経過を示す斜視図及び側面図である。
【
図14】回動部材が固定位置にあるときの状態を示した斜視図及び側面図である。
【
図15】保持状態を解除する際の動作を示した斜視図及び側面図である。
【
図16】保持状態を解除する際の動作を示した斜視図及び側面図である。
【
図17】端子固定装置から端子を取り外す際の状態を示した斜視図及び側面図である。
【
図18】回動部材が定位置にあるときの端子固定装置の正面図である。
【
図19】回動部材が固定位置にあるときの端子固定装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の例示的な実施形態を説明する。説明の便宜のため好適な実施形態のみを示すが、勿論、これによって本発明を限定しようとするものではない。
【0018】
図1に、本発明による例示的な端子固定装置1を、周辺部材とともに斜視図で示す。周辺部材として、ここでは、ケーブル4A、4B、及び、一端3A、3Bにてそれぞれ圧着固定された丸端子2A、2Bを示している。これら端子固定装置1と周辺部材2、3は、共に、長さ方向「α」に沿う中央線「k」を境に略線対称の構成を有し、この結果、これら端子固定装置1及び周辺部材2、3の一部の要素は重複したものとなっている。
【0019】
図2、
図3に、端子固定装置1の分解斜視図を、重複要素を一部省略した形で示す。これらの図は、互いに向きが相違するだけで、含まれる構成要素は同じである。尚、端子固定装置1や周辺部材2、4は、必ずしも対称形状である必要はなく、例えば、中央線「k」を境にした一方側の構成要素のみを設けてもよい。
【0020】
便宜上、以下の説明では、端子固定装置1及び周辺部材2、4のうち、中央線「k」を境とした一方側の構成要素のみを主として説明し、他方側の構成要素ついての説明は基本的に省略する。また、これら一方側の構成要素と他方側の構成要素とを区別することが便宜である場合には、上述した丸端子2A、2Bやケーブル4A、4Bと同様に、参照番号に「A」又は「B」の文字を適宜付して、それらを区別することにする。
【0021】
ケーブル4A、4Bの一端に接続された丸端子2A、2Bは、それぞれ、端子固定装置1の長さ方向「α」における各両端側に、「α」方向に沿う「α1」又は「α2」方向に沿って接続される。丸端子2A、2Bに限らず、例えば、角型その他様々な形状の端子を用いることもできる。また、これらの端子2A、2Bは、ケーブルに接続される必要もない。以下の説明から明らかなように、端子は、回動部材30(30A)と載置面10aとの間に挟み込んで保持され得る形状、好ましくは、薄い板状の部分を有していれば足りる。
【0022】
端子固定装置1は、少なくとも、導電部材の一例としてのバスバー10と、回動部材30A、30Bを備える。端子固定装置1は、更に、実施形態に示すように、ハウジング部材(20、60A、60B)と、ハウジング部材に対してスライド可能に設けられたスライド部材70A、70Bを有するものであってもよい。ハウジング部材(20、60A、60B)は、バスバー10及び回動部材30A、30Bに加え、更に、バネ部材50A、50B(「50B」については図示されていない)を支持、収容する。
【0023】
バスバー10は、長さ方向「α」に沿って延びる金属製の板状部材である。バスバー10の一方の面には、丸端子2A、2Bが載置される載置面10aが形成されている。丸端子2A、2Bはそれぞれ、載置面10aの、バスバー10の長さ方向「α」における各端部に載置される。載置された丸端子2A、2Bは、バスバー10を通じて、互いに電気的に接続され得る。
【0024】
載置面10aにおける丸端子2の位置を安定させるため、丸端子2を載置面10aの所定位置に位置決めするのが好ましい。位置決め手段として、例えば、丸端子2A、2Bの中心に設けた穴2aと、これに対応して載置面10aに設けた突起12A、12Bの組み合わせを利用することができる。突起12A、12Bは、載置面10aと直交する高さ方向(第1の方向)「β」に沿って載置面10aから離れる方向「β1」に突出している。突起12を丸端子2の貫通穴2aに貫通させるようにして、丸端子2を載置面10aの所定位置に容易に位置決めした状態で載置することができる。
【0025】
但し、これらの穴2a及び突起12は、丸端子2を載置面10aに位置決めするための一例にすぎず、「β」方向に沿って載置面に設けた凸状部又は凹状部と、これら凸状部又は凹状部に対応して端子の側に設けた凹状部又は凸状部との間の、その他の組み合わせを用いることもできる。例えば、凹状部として載置面10aに設けた窪みと、凸状部としての丸端子2それ自体との組み合わせとしてもよい。この場合、丸端子2は、その外縁を、載置面10aに設けた窪みに嵌め込むようにして位置決めすることができる。また、本実施形態では、突起12をバスバー10の一部として形成したが、これに限定されるものではなく、例えば、ハウジング部材を構成する底部カバー部材(20)の一部として突起を設け、この突起に対応してバスバーに貫通孔を設ける構成とすることもできる。
【0026】
図1乃至
図3に加え、
図4をも参照して、回動部材30の構成をより詳細に説明する。
図4の(a)は、回動部材30の側面図、
図4の(b)は、回動部材30を底面側から見た斜視図である。
【0027】
回動部材30は、主に、軸部31a、31b、突部33、及びカム40a、40bを含む。
軸部31a、31bは、長さ方向「α」及び高さ方向「β」の双方と直交する幅方向「γ」の両端に位置する円柱状の部材であって、それぞれ、側方に突出した状態で設けられている。回動部材30は、これらの軸部31a、31bを利用して、軸部31a、31b同士を結ぶ軸線「p」を中心に回動可能に軸支される。軸線「p」は、載置面10aから「β」方向に沿って所定距離だけ離して位置付けられている。
【0028】
突部33は、載置面10aに向って突出した、側面視略1/4部分円から成る扇状32の部材であって、軸部31a、31bの間において幅方向「γ」に沿って延びている。側面視扇状32の円弧部には、略曲面33aが幅方向「γ」に沿って所定の長さに亘って設けられている。この略曲面33aは、回動部材30の回動に応じて、その所定部分にて載置面10aと対向し得るように構成されており、これにより、載置面10aとの間に隙間が形成される。丸端子2は、この隙間を利用して仮保持又は固定される。例えば、仮保持の際、略曲面33aは、側面視扇状32の一方の半径部分に形成された、幅方向「γ」に沿って延びる「m1」部分を利用して、載置面10aとの間に隙間(後述する
図11の(b)に示した隙間「t1’」)を形成する。一方、固定の際、略曲面33aは、側面視扇状32の一方の半径部分よりも他方の半径部分側に寄った位置に形成された、幅方向「γ」に沿って延びる「m3」部分を利用して、載置面10aとの間に隙間(後述する
図19に示した隙間「t2」)を形成する。「m1」部分と「m2」部分との間は、切り欠いて略平坦面「n」を形成するのが好ましい。これにより、回動部材30の回動時に、更に詳細には、回動部材30が仮保持位置から固定位置へ回動する際に、略曲面33aと丸端子2とが衝突する衝突面を減少させて、回動部材30の回動操作をスムーズにすることができるとともに、「m2」部分を超える際に、クリック感を与えることも可能となる。
【0029】
「m1」部分を設けた側面視扇状32の一方の半径部分に、丸端子2の所定部分と衝突させることができる衝突面33cが、幅方向「γ」に沿って所定の長さに亘って設けられている。更に、この半径部分には、幅方向「γ」において衝突面33cと相隣り合う位置に、回動部材30を回動させた際に載置面10aに設けた突起12との衝突を避けるための略U字状の切り欠き33bが設けられている。
【0030】
カム40a、40bは、軸部31aの一部に周状に設けた、幅方向「γ」に所定の厚みを有する板状の部材である。カム40a、40bは、突部33の幅方向「γ」における外側に設けられている。カム40a、40bは、後述するスライド部材70と協働して、突部33の回動を制御する。回動操作を容易にするため、突部33と連結させた操作部材を、一例としてここではレバー35を設けている。レバー35は、衝突面33c及び切り欠き33bを設けた側面視扇状32の一方の半径部分と連続させた状態で、ハウジング部材(20、60A、60B)の外部に突き出ている。実施形態に示すように、レバー35は、大きな力を受けることが多い切り欠き33b付近から延出させるのが好ましい。
【0031】
図1乃至
図3を再び参照すれば、ハウジング部材は、端子固定装置1の最底部を形成する底部カバー部材20と、底部カバー部材20と組み合わされて端子固定装置1の外側壁を形成する2つの側部カバー部材60A、60Bを含む。これら底部カバー部材20と側部カバー部材60A、60Bによって形成される収容空間には、バスバー10が固定され、また、回動部材30が回動可能に軸支される。収容空間には更に、バネ部材50A、50Bが収容される。
【0032】
底部カバー部材20は、略長方形状の板状の基部21と、基部21の長さ方向「α」における端部にそれぞれ幅方向「γ」に設けた棒状の載置部22A、22Bと、更に、基部21の長さ方向における中間部に幅方向「γ」に設けた棒状の載置部24を含む。載置部22A、22Bそれぞれの幅方向「γ」における端部は外方に突出しており、側部カバー部材60A、60Bを底部カバー部材20と組み合わせて取り付ける際に使用する取り付け部22bを構成している。
【0033】
載置部22A、22Bにはそれぞれ、中間載置部24の側、及び、上側において開放された、側面視略L字状の溝22aが設けられている。これらの溝22aにバスバー10の端縁を嵌め込むことにより、底部カバー部材20の所定位置にバスバー10を位置決めすることができる。
【0034】
また、中間載置部24と載置部22Aとの間に形成されたスペース25A、及び、中間載置部24と載置部22Bとの間に形成されたスペース25Bに、それぞれ、バネ部材50A、50Bそれぞれの底面(連結部56)を挟み込むことにより、底部カバー部材20の所定位置にバネ部材50A、50Bを位置決めすることができる。
【0035】
側部カバー部材60A、60Bは、底部カバー部材20の幅方向「γ」における各側に対向配置された略長方形状の板状の部材である。側部カバー部材60A、60Bは、それぞれの内壁60aの底側に設けた窪み65bに、底部カバー部材20の載置部22A、22Bに設けた取り付け部22bを嵌め込むことによって底部カバー部材20に対して固定される。側部カバー部材60A、60Bと底部カバー部材20を互いに組み合わせた後も、長さ方向「α」における前側及び後側、及び、高さ方向「β」における底部カバー部材20とは反対側の上側は、それぞれ開放された状態にある。このため、側部カバー部材60A、60Bを、底部カバー部材20に取り付けた後も、バスバー10の載置面10aに対する丸端子2の載置が妨げられることはなく、また、回動部材30のレバー35の操作が妨げられることはない。
【0036】
側部カバー部材60は、幅方向「γ」に所定の厚みを有する。この厚みを利用して、側部カバー部材60の内壁60aには、回動部材30の軸部31が遊嵌される軸受け用の窪み65が形成されている。回動部材30の軸部31をこれらの窪み65に遊嵌させることにより、回動部材30は、側部カバー部材60の実質的に所定位置に位置決めされた状態で、端子固定装置1に対して回動可能に軸支される。
【0037】
側部カバー部材60の内壁60aには、また、スライド部材70の一部(73a)と、弾性手段の一例としての巻バネ78が収容される空間61が設けられている。側部カバー部材60の上側は一部63切り欠かかれており、スライド部材70を取り付けることによって補完された状態となる。
【0038】
スライド部材70は、略直方形状の所定の厚みを有する板状の部材である。スライド部材70の上部の一部は、鍔状の操作部73として形成されており、スライド部材70が側部カバー部材60に取り付けられた際に、側部カバー部材60の上側の一部63に張り出して切り欠きを補完する。操作部73は、スライド部材70を、側部カバー部材60に対して「β2」方向に移動させる際の押し釦として使用することができる。
【0039】
操作部73の下側部分73aは、載置面10aに向って突出している。スライド部材70を側部カバー部材60に取り付けた際、この下側部分73aは、側部カバー部材60の内壁60aに設けた空間61に収容され、この結果、空間61に収容されている巻バネ78と当接する。下側部分73aにおいて当接させた巻バネ78の働きにより、スライド部材70は、載置面10aから離れる方向「β1」に常時付勢された状態となる。
【0040】
スライド部材70は、中心付近に貫通孔71を有し、その周辺部に薄肉部70b(
図3参照)を有する。貫通孔71には、回動部材30の軸部31を貫通させるとともに、回動部材30のカム40がその板厚方向「γ」において配置される。一方、薄肉部70bには、回動部材30の側面視扇状32の部分が、「α-β」方向にてスライド可能に面接触させた状態で突き合わされる。この結果、スライド部材70を回動部材30に対してスライド移動させたときに、カム40の板厚部分によって形成された外周面(当接面41a、41b、43a、43b)と、スライド部材70の板厚部分によって形成された内周面(対応当接面76a、76a)が、所定の部分で当接することとなり、回動部材30の回動状態をカムの働きによって制御することができる。
回動部材30を一時的に所定位置(例えば、固定位置)に保持するため、スライド部材70に係止部を設けてもよい。例えば、スライド部材70に係止部としての凹状の窪み75を、これに対応して、カム40に対応係止部としての係止突部43を、それぞれ設けて、回動部材30が固定位置にあるときに、係止突部43を窪み75に係止させることにより、回動部材30をスライド部材70に対して係止することもできる。
【0041】
例えば操作部73を利用することによって、ユーザは、巻バネ78による付勢力(第1の付勢力)に抗して、スライド部材70をスライド移動させることができる。スライド部材70をスライド移動させることにより、回動部材30のカム40の板厚部分によって形成される外周面と、スライド部材70の板厚部分によって形成される内周面の間の当接状態が変化し、この結果、回動部材30の回動が制御される。このように、巻バネ78は、スライド部材70と回動部材30との当接を通じて、スライド部材70のみならず、回動部材30の回動にも付勢力を与えるものとなっている。
【0042】
バネ部材50は、1枚の薄い金属板を打ち抜き、折り曲げ等することによって製造されている。バネ部材50は、載置面10aから離れる方向「β1」に立設された2つの立設部51a、51bと、幅方向「γ」に沿って延びる連結部56を含む。立設部51a、51bは、幅方向「γ」にて対向配置されており、これら立設部51a、51bは、それらの底部にて、連結部56によって互いに連結されている。
【0043】
立設部51は、長さ方向「α」に沿って延びる基部52a、52bと、長さ方向「α」と高さ方向「β」によって形成される面に拡がる側面視略C字状のバネ部54a、54bと、基部52とバネ部54a、54bを構成しているそれぞれのC字の一端とを繋ぐ繋ぎ部53a、53bを含む。立設部51は、全体として略Z形状を成しており、このような形状を有することによって、少なくとも高さ方向「β」に沿ってバネ性を発揮させるように構成されている。立設部51によって発揮されるこのバネ性は、金属板を面方向に変位させる際に生ずる抵抗を利用するものであることから、金属板を厚み方向に変位させる際に生ずる抵抗を利用するものより大きなものとなっている。このバネ部54a、54bを構成するC字の上部内壁54cに対し、回動部材30の軸部31は、巻バネ78によって「β1」方向に常時付勢されたスライド部材70の働きによって、「β1」方向に常時付勢された状態で支持される。
【0044】
連結部56にバネ性を与えるため、連結部56の一部に曲げ部56aが設けられている。曲げ部56aは、例えば、図示実施形態に示すように、連結部56の幅方向「γ」における中心付近を、載置面10aから離れる方向「β1」に凸状に折り曲げることによって形成されている。曲げ部56aを設けることにより、バネ部54a、54bと同様に、連結部56にも、バネ性を発揮させることができる。曲げ部56aは、載置面10aから離れる方向「β1」に凸状に折り曲げられていれば足りる。従って、例えば、高さ方向「β」において段差を有する段部(図示していない)を利用することによってこれを形成してもよい。この曲げ部56aによって発揮されるバネ性は、金属板を厚み方向に変位させる際に生ずる抵抗を利用するものあることから、バネ部54a、54bによって生じさせることができるバネ性よりも小さなものとなっている。従って、曲げ部56aとバネ部54a、54bに同時に力が加えられた場合には、先に、主として曲げ部56aによってバネ性が発揮され、続いて、バネ部54a、54bによってバネ性が発揮されることになる。
【0045】
図5乃至
図7を参照して、スライド部材70による回動部材30の回動制御、言い換えれば、回動部材30に設けたカム40とスライド部材70の係合関係を説明する。
図5乃至
図7は全て、端子固定装置1の側面構造を同様の方法で示す図であって、
図5は、回動部材30が定位置(第1の位置)にあるとき、言い換えれば、回動部材30に何らの力も加えられていないときの係合関係を、
図6は、回動部材30が変位位置(第2の位置)にあるとき、即ち、丸端子2を載置面10aに載置するとき又はそこから取り除くときの係合関係を、
図7は、回動部材30が固定位置(第4の位置)にあるとき、即ち、丸端子2を回動部材30の略曲面33aと載置面10aによって形成された隙間に固定するときのカム40とスライド部材70の係合関係を、それぞれ示している。
【0046】
後述するように、これらの位置に加えて、回動部材30は、少なくとも、
図6と
図7の間の中間位置において、丸端子2を回動部材30の略曲面33aと載置面10aによって形成された隙間に仮保持する仮保持位置(第3の位置)を採ることができる。
【0047】
図5の定位置にあるとき、スライド部材70は、巻バネ78の働きにより、載置面10aから離れる方向「β1」に常時付勢された状態にある。このため、回動部材30は、カム40の前部当接面41aとスライド部材70の前部対応当接面76aとの当接を通じて、及び、カム40に設けた係止突部43の前部当接面43aとスライド部材70の後部対応当接面76bとの当接を通じて、安定した状態とされている。この定位置は、回動部材30に何らかの力を加えない限り維持される。
【0048】
図5に示す状態において、例えばレバー35を利用して、巻バネ78による付勢力に抗して回動部材30を第1の回動方向「θ1」へ回動させると、カム40の前部当接面41aと、スライド部材70の前部対応当接面76aとの当接を通じて、スライド部材70は「β2」方向へスライドし、この結果、回動部材30は、
図6の変位位置を採る。この変位位置は、載置面10aに丸端子2を載置する際に、又は、載置面10aから丸端子2を取り除く際に、一時的に採り得る位置である。回動部材30が変位位置にあるとき、回動部材30には、巻バネ78によって第1の回動方向「θ1」とは反対方向、即ち、第2の回動方向「θ2」へ戻ろうとする力が常に生じるため、この位置は、回動部材30に、外部から何らかの力が加えられているときにのみ生じ得ることになる。
【0049】
図5に示す状態において、逆に、巻バネ78による付勢力に抗して回動部材30を第2の回動方向「θ2」へ回動させると、カム40に設けた係止突部43の前部当接面43aと、スライド部材70の後部対応当接面76bとの当接を通じて、スライド部材70は「β2」方向へスライドする。第2の回動方向「θ2」への回動が更に進むと、カム40に設けた係止突部43が、スライド部材70の係止窪み75に嵌って、スライド部材70は、「β1」方向へと瞬時にスライドし、カム40の後部当接面41bと、スライド部材70の後部対応当接面76bとが当接した状態となる。この結果、回動部材30は、
図7に示すような固定位置に維持される。この固定位置は、回動部材30の略曲面33aと載置面10aによって形成された隙間に丸端子2を固定する際に採り得る位置である。
【0050】
既に説明したように、スライド部材70は、巻バネ78の働きにより、載置面10aから離れる方向「β1」に常時付勢された状態にあることから、固定位置にあるときにも、回動部材30には、巻バネ78による力、更に言えば、第2の回動方向「θ2」とは反対方向の第1の回動方向「θ1」へ戻ろうとする力が生じている。しかしながら、係止突部43と係止窪み75の組み合わせから成る保持手段を用いることにより、回動部材30を固定位置に安定的に保持することができる。
【0051】
係止突部43と係止窪み75による保持状態を解除するには、スライド部材70を巻バネ78による付勢力に抗して「β2」方向へ押し下げて、カム40とスライド部材70の係止状態を解除する必要がある。スライド部材70を回動部材30に対して押し下げることにより、係止突部43が係止窪み75から外れ、回動部材30を操作可能となる。この状態において、回動部材30を第1の回動方向「θ1」へ回動させることで、
図5の定位置に戻ることになる。
【0052】
次いで、
図8乃至
図18を参照して、端子固定装置1に丸端子2を固定する際、又は、端子固定装置1から丸端子2を取り外す際の動作を説明する。
【0053】
図8は、
図5に相当する図であって、端子固定装置1に丸端子2を固定する前の状態、言い換えれば、回動部材30が定位置にあるときの状態を示したものである。
図8の(a)は、そのような状態にある端子固定装置の斜視図、(b)は、その側面図を、それぞれ示す。定位置については、
図5を参照して既に説明したとおりであるから、ここでは詳細な説明は省略する。
【0054】
図9は、
図6に相当する図であって、端子固定装置1に丸端子2を固定する際の状態、言い換えれば、回動部材30が変位位置にあるときの状態を示したものである。
図9の(a)は、そのような状態にある端子固定装置の斜視図、(b)は、その側面図を、それぞれ示す。
図8に示す状態において、例えば、「α1」方向にて丸端子2を載置面10aに向って接近させて、その端部2b付近を回動部材30に設けた衝突面33c(
図8等参照)と衝突させることにより、カム40の前部当接面41aと、スライド部材70の前部対応当接面76aが当接し、この結果、巻バネ78による付勢力に抗して、回動部材30を、
図8に示す定位置から第1の回動方向「θ1」へ回動させることができる。このように、丸端子2と回動部材30の衝突を通じて、回動部材30を「θ1」方向に回動させることにより、回動部材30の略曲面33aと載置面10aとの間に、丸端子2が入り込むスペースを形成することができ、このスペースを利用して、載置面10aに設けた突起12に、丸端子2に設けた穴2aを貫通させて、丸端子2を、載置面10aの所定位置に位置決めすることができる。尚、これら一連の作業においては、レバー35の操作は不要であるから、ユーザは、片手で、これらの作業を行うことができる。勿論、丸端子2と回動部材30の衝突に代えて、又は、このような衝突と共に、レバー35を「θ1」方向に操作することによって、スペースを確保してもよい。
【0055】
図10、
図11は、端子固定装置1に丸端子2が仮保持された状態、言い換えれば、回動部材30が仮保持位置にあるときの状態を示したものである。
図10の(a)は、そのような状態にある端子固定装置の斜視図を、
図10の(b)は、その側面図を、それぞれ示し、更に、
図11の(a)は、そのような状態にある端子固定装置の平面図を、
図11の(b)は、
図11の(a)のA-A線断面図を、それぞれ示す。この状態にあるとき、丸端子2は、回動部材30の略曲面33aと載置面10aによって形成された隙間「t1’」に、主として巻バネ78によって発生される付勢力を利用して仮保持される。ここで、
図9に示す状態において、丸端子2が載置面10aの所定位置に位置決めされたとき、丸端子2と回動部材30の衝突は解除され、衝突を解除された回動部材30は、巻バネ78による付勢力(第1の付勢力)を利用して、変位位置から第1の回動方向「θ1」とは反対の第2の回動方向「θ2」へ回動し、
図10、
図11に示す仮保持位置を採る。仮保持位置では、載置面10aに載置された丸端子2Aのうち、長さ方向「α」における突部33との衝突側の少なくとも端部2b付近が、回動部材30の略曲面33aと載置面10aとの間に形成される隙間「t1’」に挟み込まれた状態となる。このとき、端子固定装置1に丸端子2を固定する前の、
図9に示した変位位置と同様に、回動部材30には、第2の回動方向「θ2」へ戻ろうとする力が生じているため、この付勢力(第1の付勢力)を利用して、丸端子2Aを隙間「t1’」に仮保持することができる。
【0056】
図12、
図13は、仮保持された丸端子2が固定されるまでの途中経過を示す図、
図14は、
図7に相当する図であって、端子固定装置1に丸端子2を固定した状態、言い換えれば、回動部材30が固定位置にあるときの状態を示したものである。
図12乃至
図14の(a)は、それらの状態にある端子固定装置の斜視図を、
図12乃至
図14の(b)は、それらの側面図を、それぞれ示す。
【0057】
図12、
図13に示すように、仮保持位置にある回動部材30を第2の回動方向「θ2」へ回動させると、カム40に設けた係止突部43の前部当接面43aと、スライド部材70の後部対応当接面76bとの衝突を通じて、巻バネ78の付勢力に抗して、スライド部材70は「β2」方向へと押し下げられる。
【0058】
その後、カム40の係止突部43が、スライド部材70の後部対応当接面76bを完全に乗り越えたときに、
図14に示すように、スライド部材70は、巻バネ78の付勢力によって「β1」方向へ押し上げられ、この結果、係止突部43が係止窪み75に嵌り、カム40はスライド部材70に係止される。この場合、仮にレバー35を「θ1」方向に操作しようしても、カム40に設けた係止突部43の後部当接面43bと、スライド部材70に設けた係止窪み75の後部当接面75bとが当接しているため、そのような操作をすることはできず、また、仮にレバー35を「θ2」方向に操作しようしても、カム40の後部当接面41bと、スライド部材70の後部対応当接面76bとが当接しているため、そのような操作をすることはできず、従って、回動部材30は、係止突部43と係止窪み75から成る保持手段によって固定位置に保持される。固定位置にあるとき、載置面10aに載置された丸端子2Aのうち、長さ方向「α」における中間部2c付近は、回動部材30の略曲面33aと載置面10aとの間に形成された隙間に挟持され丸端子2Aは固定された状態となる。
【0059】
図15、
図16に、保持状態を解除して、回動部材30を「θ1」方向へ回動させるための動作を示す。保持状態を解除するには、保持手段であるカム40とスライド部材70の係止状態を解除する必要がある。例えば、スライド部材70を巻バネ78による付勢力に抗して「β2」方向へ押し下げることによって、容易にこれを解除することができる。その後、例えば一方の手で、スライド部材70を「β2」方向へ押し下げたままの状態としつつ、例えば他方の手でレバー35を操作して、回動部材30を「θ1」方向へと回動させることにより、
図15に示すように係止突部43を係止窪み75から外し、且つ、
図16に示すように、回動部材30を「θ1」へ回動させることができる。このような2アクションで回動部材30を保持状態から回動させることにより、例えば、レバー35とスライド部材70との間に手が挟み込まれるようなこともなく、安全に作業を行うことできる。
【0060】
丸端子2を端子固定装置1から取り外す場合、
図17に示すように、レバー35を、巻バネ78による付勢力に抗して、更に第1の回動方向「θ1」へ回動させる。これにより、丸端子2を抜き取るスペースを確保することができる。
【0061】
最後に、
図18、
図19とともに、
図4及び
図8乃至14をも参照して、巻バネ78とバネ部材50の働きを詳細に説明する。
図18は、正確には、
図8に示した状態、即ち、回動部材30が定位置にあるときの端子固定装置1の正面図を示したものである。しかしながら、以下の記載から明らかなように、この図は、
図10、
図11に示した状態、即ち、回動部材30が仮保持位置にあるときの端子固定装置1の正面図をも、実質的に示していると理解してよい。
一方、
図19は、
図14に示した状態、即ち、回動部材30が固定位置あるときの端子固定装置1の正面図を示したものである。
【0062】
図18に示すように、回動部材30が定位置にあるとき、載置面10aと、略曲面33a、特に、略曲面33aの「m1」部分との間には、
図18に示すように、隙間「t1」が形成される。尚、この定位置は、
図5を参照して既に説明したように、回動部材30に何らかの力を加えない限り維持される。
一方、回動部材30が仮保持位置にあるとき、
図10、
図11等を参照して説明したように、回動部材30は、巻バネ78の付勢力に抗して、定位置と比較して僅かに「θ1」方向に回動された状態にある。従って、載置面10aと、略曲面33aの「m1」部分との間には、「t1」よりも若干大きな隙間「t1’」が形成される。また、このとき、回動部材30には、当接面41aと対応当接面76aとの当接によって少なくとも巻バネ78による付勢力(第1の付勢力)が付加されており、第2の回動方向「θ2」へ戻ろうとする力が働いているから、丸端子2は、この隙間「t1’」において軽く挟み込まれた状態となっている。このように、仮保持に必要な付勢力は、主として、巻バネ78より生じさせることができる。
【0063】
一方、
図19に示すように、回動部材30が固定位置にあるとき、巻バネ78には、実質的に何らの力も加わっておらず、従って、巻バネ78は、何らのバネ性も発揮していない。これに対し、バネ部材50は、以下に説明するように、曲げ部56a、及び、バネ部54a、54bともに、大きなバネ性を発揮した状態にある。
図10、
図11に示す仮保持位置から、
図14に示す固定位置に至る際、即ち、
図12、
図13に示す状態において、丸端子2は、「θ2」方向への回動部材30の回動に伴って、略曲面33aから「β2」方向への力を受ける。この結果、先ず、バネ性の比較的弱い曲げ部56aが、そのバネ性を発揮させた状態で、「β2」方向へ押しつぶされつつ変形する。曲げ部56aが略平坦に変形してもなお、「β2」方向への力を受けた場合には、次いで、回動部材30の軸部31と、バネ部54a、54bにおけるC字の内壁54cとの衝突を通じて、回動部材30が「β1」方向へと押し上げられ、バネ部54a、54bにより、これを抑制する力が発揮される。この結果、
図19に示すように、丸端子2はその中間部2c付近において、載置面10aと、略曲面33a、特に、略曲面33aの「m3」部分との間に形成される隙間「t2」に固定された状態となる。このように、丸端子2の固定に必要な付勢力は、主として、バネ部50により生じさせることができる。また、バネ部50には、板厚方向への変形を利用したバネ性の比較的弱い曲げ部56aと、板厚方向と直交する板面方向への変形を利用したバネ性の比較的強いバネ部54a、54bとが設けられていることから、十分な力で丸端子2を載置面10aに押し付けることができ、丸端子2とバスバー10との電気的接触を確実に確保することができる。
【0064】
尚、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態では、仮保持のための付勢力は、全て、回動部材30に設けたカム40と係合するスライド部材70を通じて巻バネによって発生されるものとしたが、スライド部材70とは別に付勢力を生ずる手段を設けて、付勢力を生じさせてもよい。
また、本実施形態では、仮保持に必要な付勢力は、主として、巻バネ78より生じさせるもの、また、固定に必要な付勢力は、主として、バネ部50により生じさせるものとしたが、巻バネ78とバネ部50の材質や厚み等を調整することによって、仮保持に必要な付勢力を、バネ部50によって生じさせることもできる。
【0065】
以上の説明は、好ましい実施形態に関するものであり、物品を単に代表するものであることを理解すべきである。異なる実施形態の変形及び修正が上述の教示に照らして当業者に容易に明らかになることを認めることができる。従って、例示的実施形態並びに代替的な実施形態は、添付の特許請求の範囲で説明する物品の精神から逸脱することなく行うことができる。
【符号の説明】
【0066】
α 長さ方向(第2の方向)
β 高さ方向(第1の方向)
γ 幅方向(第3の方向)
θ1 第1の回動方向
θ2 第2の回動方向
1 端子固定装置
2A、2B 丸端子
10 バスバー(導電部材)
10a 載置面
30A、30B 回動部材
33 突部
33a 略曲面
33c 衝突面
40 カム部材
50 軸支部材
70A、70B スライド部材
78 巻バネ