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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】油圧ポンプモータ
(51)【国際特許分類】
   F04B 1/22 20060101AFI20231124BHJP
   F03C 1/253 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
F04B1/22
F03C1/253
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019183176
(22)【出願日】2019-10-03
(65)【公開番号】P2021059987
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 秀明
(72)【発明者】
【氏名】大久保 尚浩
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/037994(WO,A1)
【文献】特公昭47-033083(JP,B1)
【文献】特開2011-236847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 1/22
F03C 1/253
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸心の周囲に複数のシリンダボアが設けられたシリンダブロックと、
弁板を介して前記シリンダブロックの端面が回転可能に摺接するポートブロックと
を備え、
前記弁板には、前記シリンダブロックの回転軸心を中心とした円周上において前記回転軸心を含む仮想平面の一方側に高圧ポートが設けられ、かつ前記仮想平面の他方側に低圧ポートが設けられ、
前記ポートブロックには、前記高圧ポートに連通する吐出油路と、前記低圧ポートに連通する吸込油路とが設けられ、
前記シリンダブロックの回転に伴ってそれぞれのシリンダボアに配設されたピストンが往復移動し、前記吐出油路及び前記吸込油路を通じて油が流通されるアキシャル型の油圧ポンプモータであって、
前記弁板には、前記低圧ポートと前記高圧ポートとの間において前記シリンダボアに連通する下死点側の位置に再生ポートが設けられ、
前記ポートブロックの内部には、前記再生ポートと前記吐出油路との間を連通することにより、前記高圧ポートに連通する以前のシリンダボアに対して前記再生ポートを介して前記高圧ポートの圧力を伝達する再生油路が設けられ、
前記再生油路は、前記ポートブロックに設けられた前記吐出油路から前記ポートブロックにおいて前記仮想平面よりも前記高圧ポート側となる第1の領域を通過し、その後に前記仮想平面よりも前記低圧ポート側となる第2の領域を通過して前記再生ポートに至るように形成されていることを特徴とする油圧ポンプモータ。
【請求項2】
前記吐出油路は、前記ポートブロックの外表面において前記回転軸心の周囲に位置する第1の側面に吐出ポートが開口し、
前記吸込油路は、前記ポートブロックの外表面において前記回転軸心の周囲に位置し、かつ前記第1の側面に隣接する第2の側面に吸込ポートが開口したものであり、
前記第2の領域は、前記吐出油路と前記吸込油路とによって囲まれる部分に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の油圧ポンプモータ。
【請求項3】
前記第1の領域及び前記第2の領域の少なくとも一方の領域には、直線状に延在する複数の油路用孔を相互に接続することによって構成した一連の折り返し油路部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の油圧ポンプモータ。
【請求項4】
前記第1の領域及び前記第2の領域の少なくとも一方の領域には、前記再生油路に連通する蓄圧用孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の油圧ポンプモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキシャル型の油圧ポンプモータに関するもので、詳細には圧力脈動の発生を抑えるように構成された油圧ポンプモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アキシャル型の油圧ポンプモータでは、吸込行程を終了した後のシリンダボアが弁板の吐出側高圧ポートに連通した際に高圧ポートの油がシリンダボアに流入し、急激な圧力変動によって圧力脈動が生じることにより、振動や騒音を発生する場合がある。このため、この種の油圧ポンプモータでは、シリンダボアが高圧ポートに連通する以前にシリンダボアと高圧ポートとを連通させるように再生油路を設けるようにしたものが提供されている。この油圧ポンプモータによれば、高圧ポートに連通する以前にシリンダボアの圧力が高圧ポートと同等のなるまで上昇するため、シリンダボアが高圧ポートに連通した際に高圧ポートの油がシリンダボアに流入することがなくなり、上述の問題を防止することが可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第7585158号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の再生油路としては、油圧ポンプモータの回転周波数で決定される波長の1/4~1/2程度の経路長を確保する必要がある。例えば、中型の建設機械に搭載される95cc~240cc/rev程度の吐出量を有した中型ポンプでは、常用回転数を2000rpm、シリンダボアの数を9本とした場合、最低でも800mm程度の経路長を有した再生油路が必要となる。また、中型ポンプよりも大型の油圧ポンプでは、常用回転数が低くなり、回転周波数で決定される波長が長くなるため、さらに長大な経路長を有した再生油路が必要となる。
【0005】
再生油路は、ホースやチューブによって油圧ポンプモータの外部に付設することが可能である。しかしながら、ホースやチューブによって再生油路を設けた場合には、部品点数が増えるばかりでなく、長大なホースやチューブを収容する場積が必要となるため、設置スペースの点でも不利となる。一方、油圧ポンプモータを構成するポートブロックやケースに再生油路を設けることも可能である。しかしながら、ポートブロック等に長大な再生油路を単純に設けた場合には、外形寸法が大型化するのは否めない。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、大型化する事態を抑えた上で圧力脈動の発生を防止することのできる油圧ポンプモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る油圧ポンプモータは、回転軸心の周囲に複数のシリンダボアが設けられたシリンダブロックと、弁板を介して前記シリンダブロックの端面が回転可能に摺接するポートブロックとを備え、前記弁板には、前記シリンダブロックの回転軸心を中心とした円周上において前記回転軸心を含む仮想平面の一方側に高圧ポートが設けられ、かつ前記仮想平面の他方側に低圧ポートが設けられ、前記ポートブロックには、前記高圧ポートに連通する吐出油路と、前記低圧ポートに連通する吸込油路とが設けられ、前記シリンダブロックの回転に伴ってそれぞれのシリンダボアに配設されたピストンが往復移動し、前記吐出油路及び前記吸込油路を通じて油が流通されるアキシャル型の油圧ポンプモータであって、前記弁板には、前記低圧ポートと前記高圧ポートとの間において前記シリンダボアに連通する下死点側の位置に再生ポートが設けられ、前記ポートブロックの内部には、前記再生ポートと前記吐出油路との間を連通する再生油路が設けられ、前記再生油路は、前記吐出油路から前記再生ポートに至る間に、前記ポートブロックにおいて前記仮想平面よりも前記高圧ポート側となる第1の領域を通過し、さらに前記仮想平面よりも前記低圧ポート側となる第2の領域を通過していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポートブロックに設定した高圧ポート側の領域から低圧ポート側の領域を経由して吐出油路と再生ポートとの間を連通する再生油路を設けるようにしているため、外形寸法が大型化する事態を抑えた上で長大な再生油路を確保し、圧力脈動の発生を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施の形態である油圧ポンプモータの構造を示す外観一部破断図である。
図2図2は、図1に示した油圧ポンプモータの弁板とシリンダポートとの位置関係を示す概念図である。
図3図3は、図1に示した油圧ポンプモータに適用するポートブロック及び弁板を前面側から見た図である。
図4図4は、図1に示した油圧ポンプモータに適用するポートブロックを前面側から見た図である。
図5図5は、図1に示した油圧ポンプモータに適用するポートブロックの左側面図である。
図6図6は、図1に示した油圧ポンプモータに適用するポートブロックの斜視図である。
図7図7は、図1に示した油圧ポンプモータに適用するポートブロックの斜視図である。
図8図8は、図5におけるI-I線断面図である。
図9図9は、図5におけるII-II線断面図である。
図10図10は、図4におけるIII-III線断面図である。
図11図11は、図4におけるIV-IV線断面図である。
図12図12は、図1に示した油圧ポンプモータの吐出油路及び再生油路を概念的に示す斜視図である。
図13図13は、図12に示した再生油路を簡略化して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る油圧ポンプモータの好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態である油圧ポンプモータを示したものである。ここで例示する油圧ポンプモータは、入出力軸に対して外部から動力が与えられた場合に油圧ポンプとして動作するアキシャル型のもので、ケース1とポートブロック2とによって構成されるポンプ本体3の内部にシリンダブロック4を備えている。シリンダブロック4は、中心部を貫通する入出力軸5を介してポンプ本体3に回転可能に配設したものである。シリンダブロック4と入出力軸5との間は、スプラインによって相対回転不可となる状態で連結してある。つまり、シリンダブロック4は、入出力軸5の軸心Cを回転軸心としてポンプ本体3の内部に回転可能に配設してある。
【0012】
シリンダブロック4には、入出力軸5の周囲に複数本のシリンダボア4aが設けてある。シリンダボア4aは、それぞれ入出力軸5の軸心Cに平行となるように形成した円柱状の空所であり、互いに周方向に沿って等間隔に配置してある。本実施の形態では、シリンダブロック4に9本のシリンダボア4aが設けてある。個々のシリンダボア4aは、一方の端部がシリンダブロック4の一方の端面に開口する一方、他方の端部が細径のシリンダポート4bを介してシリンダブロック4の他方の端面に開口している。シリンダボア4aのそれぞれには、ピストン6が配設してある。ピストン6は、シリンダボア4aの内部に移動可能に嵌合したもので、シリンダブロック4の一方の端面から突出する端部にピストンシュー7を備えている。ピストンシュー7は、図には明示していないが、ピストン6に対して傾動可能に配設したものである。このシリンダブロック4は、一方の端部がピストンシュー7を介して斜板8に摺動可能に当接し、かつ他方の端部が弁板9を介してポートブロック2の前面2aに摺動可能に当接している。
【0013】
斜板8は、入出力軸5に対して傾斜した傾斜面8aを有し、傾斜面8aを介してピストンシュー7に当接したものである。ピストンシュー7を介して斜板8の傾斜面8aに当接するピストン6は、シリンダブロック4が回転した場合に傾斜面8aの傾斜に従ってシリンダボア4aの内部を往復移動することになる。
【0014】
弁板9は、シリンダブロック4よりも大きな外径を有した円形状を成すものである。この弁板9には、図2に示すように、入出力軸5の軸心Cを中心とした円周上において入出力軸5の軸心Cを含む仮想平面αの一方側に高圧ポート9aが設けてあり、かつ仮想平面αの他方側に低圧ポート9bが設けてある。本実施の形態では便宜上、入出力軸5及び仮想平面αがほぼ水平に延在したものであり、前面2a(図1)から見た場合にシリンダブロック4が時計回りに回転し、かつ前面2aから見た場合に右側が上死点となるように斜板8が設けてある。従って、図示の例では仮想平面αよりも上方側が高圧ポート9aとなり、下方側が低圧ポート9bとなっている。また、図1は、仮想平面αに対して垂直に切断した断面となっている。
【0015】
図からも明らかなように、高圧ポート9a及び低圧ポート9bは、弁板9を貫通する切欠であり、複数のシリンダポート4bが連通可能となるように円弧状に延在したものである。高圧ポート9aと低圧ポート9bとの間には、一つのシリンダポート4bが高圧ポート9a及び低圧ポート9bの双方から遮断状態となるように上死点側スペース9c及び下死点側スペース9dが確保してある。また、弁板9には、下死点側スペース9dに再生ポート9eが設けてある。再生ポート9eは、シリンダブロック4の回転に伴って移動するシリンダボア4aのシリンダポート4bが低圧ポート9bとの連通状態を終了し、かつ高圧ポート9aとの連通が開始される以前までの位置においてシリンダボア4a(図1)に連通するように設けた小径の開口であり、弁板9を貫通するように設けてある。
【0016】
ポートブロック2は、図3図7に示すように、左右の幅が大きいメインブロック部2Aと、メインブロック部2Aの上部から上方に突出する左右の幅が小さいサブブロック部2Bとを一体に成形したものである。図3及び図4に示すように、上述の弁板9は、メインブロック部2Aの前面2aに設けられた弁板取付部2bに固定してある。メインブロック部2Aとサブブロック部2Bとは、互いに前面2aが同一の平面上に位置している。メインブロック部2Aの上面2c、下面2d及び左右の側面2e,2fと、サブブロック部2Bの上面2g及び左右の側面2h,2jとは、互いに隣接するものがほぼ直交し、かつそれぞれが前面2aに対してほぼ直交するように形成してある。
【0017】
図4に示すように、このポートブロック2の内部には、吸込油路10及び吐出油路11が設けてある。吸込油路10は、図3図4及び図8に示すように、弁板9の低圧ポート9bと、メインブロック部2Aに設けた吸込ポート10a(図8)との間を連通するものである。吸込ポート10aが開口するのは、メインブロック部2Aの外表面において軸心Cの周囲に位置する下面(第2の側面)2dである。吐出油路11は、図4及び図12に示すように、弁板9の高圧ポート9aと、メインブロック部2Aに設けた吐出ポート11aとの間を連通するもので、主油通路部11b及び3つの連絡油通路部11cを有している。吐出ポート11aが開口するのは、メインブロック部2Aの外表面において軸心Cの周囲に位置し、かつ下面2dに隣接する左側面(第1の側面)2eである。主油通路部11bは、吐出ポート11aから入出力軸5(図1)の軸心Cに向けて右方に延在した後、右方に向けて斜め上方に延在し、さらに弁板9の外周面に沿う態様で湾曲状に延在したもので、延在端部がメインブロック部2Aの内部で閉塞している。連絡油通路部11cは、主油通路部11bから弁板9の高圧ポート9aに向けて延在するものである。これら吸込油路10及び吐出油路11は、例えばポートブロック2を鋳造により成形する際に中子を設けることで同時に形成したものである。
【0018】
また、ポートブロック2の内部には、図2図12及び図13に示すように、吐出油路11の主油通路部11bと弁板9の再生ポート9eとの間を連通するように再生油路20が設けてある。再生油路20は、例えばポートブロック2を鋳造によって成形した後に孔加工を施すことによって複数の油路用孔21を形成し、これらの油路用孔21を相互に接続することによって一連に構成したものである。再生油路20には、仮想平面αよりも高圧ポート9a側となる第1の領域Xにおいて弁板9よりも外周側となる部分に8本の油路用孔21を設けることによって第1の折り返し油路部22が構成してある。また仮想平面αよりも低圧ポート9b側となる第2の領域Yにおいて弁板9よりも外周側となり、かつ吸込油路10及び吐出油路11によって囲まれる部分に3本の油路用孔21を設けることによって第2の折り返し油路部23が構成してある。これら第1の折り返し油路部22と第2の折り返し油路部23との間は、1本の油路用孔21によって相互に接続してある。第2折り返し油路部と再生ポート9eとの間は、3本の油路用孔21によって相互に接続してある。
【0019】
より具体的に説明すると、図8図13に示すように、第1の折り返し油路部22(図13)は、それぞれが直線状に延在し、かつ同一の内径を有した第1油路用孔21a、第2油路用孔21b、第3油路用孔21c、第4油路用孔21d、第5油路用孔21e、第6油路用孔21f、第7油路用孔21g、第8油路用孔21hによって構成してある。
【0020】
図10に示すように、第1油路用孔21aは、サブブロック部2Bの上面2gから下方に向けて形成し、吐出油路11の主油通路部11bに連通するものである。第2油路用孔21bは、サブブロック部2Bの前面2aから後方に向けて形成し、第1油路用孔21aに連通するものである。この第2油路用孔21bは、第1油路用孔21aを通過して延在し、延在端部がサブブロック部2Bの内部で閉塞している。第3油路用孔21cは、サブブロック部2Bの上面2gにおいて第1油路用孔21aよりも後方となる部分から下方に向けて形成し、第2油路用孔21bに連通するものである。この第3油路用孔21cは、第2油路用孔21bを通過して延在し、延在端部がサブブロック部2Bの内部で閉塞している。第4油路用孔21dは、サブブロック部2Bの左側面2hにおいて第2油路用孔21bよりも下方となる部分から右方に向けて形成し、第3油路用孔21cに連通するものである。図8及び図10に示すように、この第4油路用孔21dは、第3油路用孔21cを通過して延在し、延在端部がサブブロック部2Bの内部で閉塞している。第5油路用孔21eは、サブブロック部2Bの上面2gにおいて第3油路用孔21cよりも右方となる部分から下方に向けて形成し、第4油路用孔21dに連通するものである。この第5油路用孔21eは、第4油路用孔21dに連通した部分においてサブブロック部2Bの内部で閉塞している。第6油路用孔21fは、サブブロック部2Bの右側面2jにおいて第2油路用孔21bよりも上方となる部分から左方に向けて形成し、第5油路用孔21eに連通するものである。この第6油路用孔21fは、第5油路用孔21eに連通した部分においてサブブロック部2Bの内部で閉塞している。第7油路用孔21gは、サブブロック部2Bの上面2gにおいて第5油路用孔21eよりも右方となる部分から下方に向けて形成し、第6油路用孔21fに連通するものである。この第7油路用孔21gは、第6油路用孔21fを通過して延在し、延在端部がメインブロック部2Aの内部において閉塞している。第8油路用孔21hは、メインブロック部2Aの左側面2eにおいて吐出油路11よりも上方となる部分から右方に向けて形成し、第7油路用孔21gの延在端部に連通するものである。この第8油路用孔21hは、第7油路用孔21gに連通した部分においてメインブロック部2Aの内部で閉塞している。これら第1油路用孔21a、第2油路用孔21b、第3油路用孔21c、第4油路用孔21d、第5油路用孔21e、第6油路用孔21f、第7油路用孔21g、第8油路用孔21hは、それぞれの開口端部に栓部材21xを設けることによって開口端が閉塞してある。
【0021】
図8図11及び図12に示すように、第2の折り返し油路部23は、それぞれが直線状に延在し、かつ第1油路用孔21aと同一の内径を有した第9油路用孔21j、第10油路用孔21k、第11油路用孔21mによって構成してある。
【0022】
第9油路用孔21jは、メインブロック部2Aの左側面2eにおいて吐出油路11よりも下方となる部分から右方に向けて形成したものである。第9油路用孔21jの延在端部は、メインブロック部2Aの内部で閉塞している。第10油路用孔21kは、メインブロック部2Aの下面2dから上方に向けて形成し、第9油路用孔21jに連通するものである。この第10油路用孔21kは、第9油路用孔21jを通過して延在し、延在端部がメインブロック部2Aの内部で閉塞している。第11油路用孔21mは、メインブロック部2Aの前面2aにおいて第9油路用孔21jよりも上方となる部分から後方に向けて形成し、第10油路用孔21kに連通するものである。この第11油路用孔21mは、第10油路用孔21kに連通した部分においてメインブロック部2Aの内部で閉塞している。これら第9油路用孔21j、第10油路用孔21k、第11油路用孔21mは、それぞれの開口端部に栓部材21xを設けることによって開口端が閉塞してある。
【0023】
図8図9及び図11に示すように、上述した第1の折り返し油路部22及び第2の折り返し油路部23は、第12油路用孔21nによって相互に接続してあり、第2の折り返し油路部23と再生ポート9eとの間は、第13油路用孔21p、第14油路用孔21q、第15油路用孔21rによって相互に接続してある。第12油路用孔21n、第13油路用孔21p、第14油路用孔21q、第15油路用孔21rは、それぞれが直線状に延在し、かつ第1油路用孔21aと同一の内径を有するものである。
【0024】
図8に示すように、第12油路用孔21nは、メインブロック部2Aの下面2dから上方に向けて形成し、第9油路形成孔の延在端部に連通し、さらに第9油路形成孔を通過して上方に延在し、延在端部が第8油路用孔21hに連通するものである。この第12油路用孔21nは、第8油路用孔21hに連通した部分においてメインブロック部2Aの内部で閉塞している。図9及び図11に示すように、第13油路用孔21pは、メインブロック部2Aの下面2dにおいて第9油路用孔21jよりも前方となる部分から上方に向けて形成し、第11油路用孔21mに連通するものである。この第13油路用孔21pは、第11油路用孔21mを通過して延在し、延在端部が弁板9の再生ポート9eとほぼ同じ高さとなる位置においてメインブロック部2Aの内部で閉塞している。第14油路用孔21qは、メインブロック部2Aの左側面2eから右方に向けて形成し、第13油路用孔21pの延在端部に連通するものである。図3図4及び図9に示すように、この第14油路用孔21qは、第13油路用孔21pを通過して延在し、延在端部が弁板9の再生ポート9eの延長上となる位置においてメインブロック部2Aの内部で閉塞している。第15油路用孔21rは、メインブロック部2Aの前面2aにおいて弁板9の再生ポート9eに対向する部分から後方に向けて形成し、第14油路用孔21qの延在端部に連通するものである。この第15油路用孔21rは、第14油路用孔21qに連通した部分においてメインブロック部2Aの内部で閉塞している。これら第12油路用孔21n、第13油路用孔21p、第14油路用孔21qは、それぞれの開口端部に栓部材21xを設けることによって開口端が閉塞してある。第15油路用孔21rの開口端部は、ポートブロック2の前面2aに弁板9を取り付けた場合に再生ポート9eに接続されることになる。
【0025】
上述した第1折り返し油路部22及び第2折り返し油路部23は、互いの間を連通する第12油路用孔21n及び、第2の折り返し油路部23と再生ポート9eとの間を連通する第13油路用孔21p、第14油路用孔21q、第15油路用孔21rとの合計長さが油圧ポンプモータの回転周波数で決定される波長の1/4に相当する経路長となっている。具体的には、95cc~240cc/rev程度の吐出量を有し、常用回転数が2000rpmに設定されている場合に800mm程度の経路長となるように形成してある。ここで、ポートブロック2の外径寸法としては、左右の幅が340mm、高さが280mm、前後奥行きが150mm程度のものである。このポートブロック2に対して第12油路用孔21nが180mm(油通路としての有効長さ)、第8油路用孔21hが120mm、第14油路用孔21qが115mm、第13油路用孔21pが80mm、第7油路用孔21gが56mm、第11油路用孔21mが45mm程度の経路長(合計≒600mm)を確保することができ、残り9本の油路用孔21によって800mmの経路長を十分に確保することが可能となる。
【0026】
さらに、図11図13に示すように、再生油路20には、連絡油路24によって相互に連通するアキュムレータ(蓄圧用孔)25が設けてある。アキュムレータ25は、メインブロック部2Aの下面2dにおいて第13油路用孔21pよりも右方、かつ第10油路用孔21kと第13油路用孔21pとの間となる部分から上方に向けて加工孔を形成することによって構成したものである。アキュムレータ25は、油路用孔21よりも内径が大きく、延在端部がメインブロック部2Aの内部で閉塞し、かつ開口端が栓部材21xによって閉塞してある。連絡油路24は、第16油路用孔21s、第17油路用孔21tによって構成したものである。第16油路用孔21sは、メインブロック部2Aの下面2dにおいて第10油路用孔21kと第13油路用孔21pとの間となる部分から上方に向けて形成し、第11油路用孔21mに連通するものである。この第16油路用孔21sは、第11油路用孔21mに連通した部分においてメインブロック部2Aの内部で閉塞している。第17油路用孔21tは、メインブロック部2Aの左側面2eにおいて第11油路用孔21mよりも下方となる部分から右方に向けて形成し、第16油路用孔21sに連通するものである。この第17油路用孔21tは、第16油路用孔21sを通過して延在し、延在端部がアキュムレータ25に連通している。これら第16油路用孔21s、第17油路用孔21tは、それぞれの開口端部に栓部材21xを設けることによって開口端が閉塞してある。
【0027】
図5図8及び図9からも明らかなように、本実施の形態では、第3油路用孔21c、第4油路用孔21d、第5油路用孔21e、第6油路用孔21f、第7油路用孔21g、第8油路用孔21h、第9油路用孔21j、第11油路用孔21m、第12油路用孔21nが前面2aに平行となる同一の第1加工基準面B1上に位置し、かつ第13油路用孔21p、第14油路用孔21qが前面2aに平行となる同一の第2加工基準面B2上に位置している。また、図4及び図11に示すように、第10油路用孔21k、第11油路用孔21m、第13油路用孔21p、第16油路用孔21sが左側面2eに平行となる同一の第3加工基準面B3上に位置している。
【0028】
上記のように構成した油圧ポンプモータでは、シリンダブロックの回転に伴ってそれぞれのシリンダボアに配設したピストンが往復移動し、例えば吸込油路10に接続された油タンクの油が吐出油路11から所望の油圧機器に供給されることになる。この間、この油圧ポンプモータによれば、高圧ポート9aに連通する以前のシリンダボア4aに対して再生油路20から再生ポート9eを介して高圧ポート9aの圧力が伝達される。これにより、シリンダボア4aが高圧ポート9aと同等の圧力まで上昇した後に、シリンダボア4aが高圧ポート9aに連通することになり、高圧ポート9aの油がシリンダボア4aに流入することがなくなるため、急激な圧力変動による圧力脈動の発生を防止し、振動や騒音の問題を生じるおそれがなくなる。しかも、再生油路20としては、ポートブロック2の内部に複数の油路用孔21を設けることによって構成しているため、別途ホースやチューブ等の部品が必要となることがない。さらに、ポートブロック2に設定した高圧ポート9a側の第1の領域Xから低圧ポート9b側の第2の領域Yを経由して吐出油路11と再生ポート9eとの間に再生油路20を設けるようにしているため、ポートブロック2の外形寸法が大型化する事態を抑えた上でその内部に長大な長さの再生油路20を確保することが可能となる。
【0029】
なお、上述した実施の形態では、9本のシリンダボアを有したシリンダブロックを備える油圧ポンプモータを例示しているが、シリンダボアの数はこれに限定されない。また、斜板によってピストンを往復移動させるものを例示しているが、斜軸式のものにも適用することは可能である。さらに、油圧ポンプモータとしては、斜板や車軸の傾斜角度を変更することにより、油の流通量を変更できるように構成した可変容量側のものであっても構わない。
【0030】
また、上述した実施の形態では、ポートブロックにのみ再生油路を設けるようにしているが、例えばケースを通過するように再生油路を設けるようにしても良い。なお、再生油路として折り返し油路部を有したものを例示しているが、必ずしも再生油路が折り返し油路部を有している必要はない。折り返し油路部を有して再生油路を構成する場合に上述した実施の形態では、再生油路の2箇所に折り返し油路部を設けているが、折り返し油路部の数は実施のものに限らない。さらに、第1折り返し油路部として8本の油路用孔からなるものを例示し、第2折り返し油路部として3本の油路用孔からなるものを例示しているが、折り返し油路部を構成する油路用孔の数は実施の形態のものに限らない。
【符号の説明】
【0031】
2 ポートブロック
2d 下面
2e 左側面
4 シリンダブロック
4a シリンダボア
6 ピストン
9 弁板
9a 高圧ポート
9b 低圧ポート
9e 再生ポート
10 吸込油路
10a 吸込ポート
11 吐出油路
11a 吐出ポート
20 再生油路
21 油路用孔
22 第1の折り返し油路部
23 第2の折り返し油路部
25 アキュムレータ
C 軸心
X 第1の領域
Y 第2の領域
α 仮想平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13