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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】遠心分離装置
(51)【国際特許分類】
   B04B 1/20 20060101AFI20231124BHJP
   B04B 13/00 20060101ALI20231124BHJP
   B04B 11/02 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B04B1/20
B04B13/00
B04B11/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019183879
(22)【出願日】2019-10-04
(65)【公開番号】P2021058835
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(73)【特許権者】
【識別番号】000198352
【氏名又は名称】株式会社IHI回転機械エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100116920
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 光
(72)【発明者】
【氏名】山本 充俊
(72)【発明者】
【氏名】磯 良行
(72)【発明者】
【氏名】寺谷 直也
(72)【発明者】
【氏名】桐山 英哉
(72)【発明者】
【氏名】松見 優輝
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】小林 晃博
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-225588(JP,A)
【文献】実開昭57-181362(JP,U)
【文献】米国特許第05683343(US,A)
【文献】特開2019-051982(JP,A)
【文献】特開2007-203640(JP,A)
【文献】特開2017-105023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B 1/20
B04B 13/00
B04B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線を中心に回転する内胴及び外胴を有し、前記内胴と前記外胴の間に流体を供給し、前記流体を固体と液体に分離する遠心分離装置において、
前記内胴の外周面から径方向へ突出して設けられ管体である供給管と、
前記供給管の内部であり、前記内胴の内側からの前記流体を流通させて前記内胴と前記外胴の間に供給するための供給路と、
前記供給管の内部に設置され、前記供給路の断面を複数に分割する分割体と、
を備え
前記供給管は、前記内胴の軸方向に交差する軸線を有する円筒状の管体であり、
前記分割体は、
前記供給管の軸方向から見て断面十字型をなす分割板であり、
前記供給路の水力直径を前記供給管の水力直径よりも小さくし、前記供給路の前記流体の流れにおける前記分割体によって前記供給路の断面が複数に分割された部分のレイノルズ数を低下させ、前記流体の流れを層流化させる、遠心分離装置。
【請求項2】
前記供給路の流体の流れにおいて、前記分割体によって前記供給路の断面が複数に分割された部分のレイノルズ数が2300以下である、請求項1に記載の遠心分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遠心分離装置として、例えば、特開平10-128155号公報に記載されるように、シリンダの内部にスクリュウコンベアを有し、シリンダの内部に供給した原液である流体を回転により分離し、比重の小さい軽液と比重の大きい重液に遠心分離する装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-128155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような遠心分離装置において、分離効率が低下するおそれがある。例えば、シリンダに供給する流体の流れに乱れがあると、その乱流力の影響を受けることにより、流体(特に小さい固体粒子)を分離できず、分離効率が低下する場合がある。
【0005】
そこで、流体の分離効率の低下を抑制することができる遠心分離装置の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る遠心分離装置は、回転軸線を中心に回転する内胴及び外胴を有し、内胴と外胴の間に流体を供給し、流体を固体と液体に分離する遠心分離装置において、流体を流通させて内胴と外胴の間に供給するための供給路と、供給路に設けられ、供給路の断面を複数に分割する分割体とを備えて構成されている。この遠心分離装置によれば、供給路の断面を複数に分割することにより、供給路を流れる流体を層流化させることができる。このため、流体内の固体粒子が乱流力により乱されることが抑制される。これにより、流体の分離効率の低下を抑制することができる。
【0007】
また、本開示の一態様に係る遠心分離装置において、供給路は、供給管の内部に形成され、分割体は、供給管の断面を複数に分割する分割板であってもよい。この場合、供給管の内部に供給路を形成することができ、供給管の断面を分割板で分割することができる。
【0008】
また、本開示の一態様に係る遠心分離装置において、供給路の流体の流れにおいてレイノルズ数が2300以下であってもよい。この場合、供給路の流体の流れにおいてレイノルズ数が2300以下とされることにより、流体が層流として流れることとなる。このため、流体内の固体粒子が乱流力により乱されることが抑制される。これにより、流体を固体と液体に分離する分離効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る発明によれば、流体の分離効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態に係る遠心分離装置の概要を示す斜視図である。
図2図1の遠心分離装置の概要を示す断面図である。
図3図1の遠心分離装置における供給管を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、本開示の実施形態に係る遠心分離装置1の構成概要を示した斜視図である。図2は、遠心分離装置1の構成概要を示した縦断面図である。説明の便宜上、図1では、主たる内部構造も示している。
【0013】
遠心分離装置1は、スクリュウデカンタ型の遠心分離装置に適用したものであり、供給される流体Fを固体Sと液体Lに分離する。この遠心分離装置1は、例えば、食品、飲料水、薬品、化学製品、鉄鋼製品等の製造プロセスや、屎尿処理、下水処理、スラリ処理、工場排水処理等の水処理といった様々な分野において、固液分離に用いることができる。
【0014】
遠心分離装置1は、回転筒2を備えている。回転筒2は、固体と液体を混合した流体Fを供給され、その流体Fを固体Sと液体Lに分離する。回転筒2は、例えば、ケーシング3内に収容され、水平方向に向けた回転軸線Cを中心に回転する。回転筒2は、内外多重に設けられる外胴4及び内胴5を有している。
【0015】
外胴4は、回転軸線Cを中心に回転する円筒体である。外胴4の一方の端部には軸部41が取り付けられている。外胴4の一方の端部は、軸部41により閉塞されている。外胴4の一方の端部は、軸部41を介して軸受42により回転可能に軸支されている。外胴4の他方の端部には軸部43が取り付けられている。外胴4の他方の端部は、軸部43に取り付けられる板体44により閉塞されている。板体44は、環状の部材であって、軸部43の外周側に取り付けられている。外胴4の他方の端部は、軸部43を介して軸受45により回転可能に軸支されている。外胴4は、モータ46の動力により回転する。すなわち、モータ46の動力は、例えば、軸部41を介して外胴4に伝達される。これにより、外胴4が一定の方向に回転する。
【0016】
内胴5は、回転軸線Cを中心に回転する円筒状の回転体である。内胴5は、外胴4の内側(中心側)に配置され、外胴4と同心状に設けられている。内胴5の周面には、流体Fが供給される。内胴5の一方の端部は、軸部41により軸受けされている。内胴5の他方の端部は、軸部43に軸受けされている。内胴5は、モータ51の動力により回転する。すなわち、モータ51の動力は、例えば、遊星歯車機構などを通じて内胴5に伝達される。これにより、内胴5が外胴4と同一の方向に回転する。
【0017】
内胴5には、羽根6が取り付けられている。すなわち、内胴5の周面には、羽根6が設けられている。羽根6は、内胴5の回転と共に回転する。羽根6は、内胴5の周方向に沿って螺旋状に形成されている。羽根6は、いわゆるスクリュウ羽根である。羽根6及び内胴5は、スクリュウコンベアを構成する。すなわち、羽根6は、流体Fから分離された固体Sを軸方向に向けて移送する。
【0018】
内胴5の内側には、フィードパイプ52が設けられている。フィードパイプ52は、流体Fを供給するための管体である。フィードパイプ52は、軸部41の内側を通って内胴5の内側へ延びている。フィードパイプ52により内胴5の内側へ移送された流体Fは、供給口53から内胴5と外胴4の間へ吐出される。つまり、供給口53を通じて、内胴5の周面に流体Fが供給される。供給口53は、例えば、供給管54における端部の開口である。また、供給口53は、例えば、内胴5の周方向に沿って複数形成される。図2では、二つの供給口53が図示されているが、二つ以上の供給口53が形成されていてもよい。
【0019】
図3は、供給管54の斜視図である。図3に示すように、遠心分離装置1には、供給管54を備えている。供給管54は、内胴5の内側の流体Fを内胴5と外胴4との間に供給するための管体である。供給管54の内部は、流体Fを流通させるための供給路55になっている。また、供給管54の先端の開口は、流体Fを吐出するための供給口53となっている。供給管54は、内胴5の外周面から径方向へ突出して設けられている。このように供給管54を突出して設けることにより、液体Lの液面の近くに流体Fを吐出することが可能となる。
【0020】
供給路55には、分割板56が設けられている。分割板56は、供給路55の断面を複数に分割する分割体である。分割板56は、例えば、供給管54の内部に設置され、供給路55の断面を複数の小さい断面に分割している。流体Fは、分割された小さい断面の供給路55を流通し、供給口53から吐出される。分割板56としては、例えば、断面十字型とされる。また、分割板56としては、供給路55の断面を複数の小さい断面に分割できるものであれば、断面十字型以外の形状であってもよい。例えば、分割板56の断面形状は、格子状であってもよいし、メッシュ状などであってもよい。分割板56は、供給路55の全長に亘って設置されてもよいし、供給路55の一部に設置されていてもよい。
【0021】
分割された供給路55の流体Fの流れにおいて、レイノルズ数が2300以下とされている。例えば、レイノルズ数をReとすると、レイノルズ数Reは、次の式(1)で表される。
【0022】
Re=V・d/ν・・・(1)
【0023】
この式(1)において、Vは流体Fの平均速度[m/s]、dは水力直径[m]、νは動粘性係数[m/s]である。水力直径は、分割された供給路55の断面が円形の場合にはその直径であり、円形でない場合には供給路55の断面と等価な円断面の等価直径である。
【0024】
ここで、等価直径をd1とすると、等価直径d1は、次の式(2)で表される。
【0025】
d1=4・A/S・・・(2)
【0026】
この式(2)において、Aは分割された供給路55の断面積[mm]、Sは供給路55の縁の長さ[mm]である。図3に示すように、供給路55を四分割した場合、レイノルズ数Re(等価直径d1)を56パーセント低下させることができる。
【0027】
流体Fのレイノルズ数Reの調整は、例えば、以下のように行えばよい。まず、供給路55に分割板56を設置して、分割された供給路55の断面が小さくされ、流体Fの動粘性係数が確認される。そして、供給路55の水力直径及び流体Fの動粘性係数に応じて、流体Fのレイノルズ数Reが2300以下になるように、流体Fの流れる速度を調整すればよい。
【0028】
このレイノルズ数Reが2300以下とされることにより、流体Fが層流となって供給路55を流れることとなる。このため、流体Fに含まれる固体粒子が乱れて流れることが抑制される。これにより、流体Fにおける固体Sと液体Lの分離効率を高めることができる。
【0029】
次に、本実施形態に係る遠心分離装置1の動作について説明する。
【0030】
図2に示すように、まず、遠心分離装置1において、外胴4、内胴5及び羽根6が回転させられる。そして、フィードパイプ52を通じて流体Fが内胴5の内側へ供給される。そして、流体Fは、供給路55を通じて供給口53から内胴5の外側へ吐出され、内胴5の外周面の周囲へ供給される。
【0031】
このとき、図3に示すように、供給路55は、分割板56により分割されており、複数の小さい断面の流路となっている。このため、供給路55の水力直径は、供給管54の円形の断面より小さくなっており、流体Fの流れが層流化される。従って、流体F内の固体粒子が乱流力により乱されることが抑制される。これにより、流体Fを固体Sと液体Lに分離しやすくなり、流体Fの分離効率の低下を抑制することができる。
【0032】
また、このときに、供給路55の流体Fの流れのレイノルズ数が2300以下とされる。これにより、流体Fが層流として供給路55を流れることとなる。このため、流体F内の固体粒子が乱流力により乱されることが抑制される。従って、流体Fを固体Sと液体Lに分離する際、その分離効率を高めることが可能となる。
【0033】
そして、図2において、内胴5と外胴4の間に流出した流体Fは、回転筒2の回転によって遠心分離される。すなわち、流体Fは、液体Lと固体Sに分離される。固体Sは、羽根6により一方の端部に向けて移送されて回転筒2から排出される。一方、液体Lは、他方の端部において回転筒2から排出される。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係る遠心分離装置1によれば、供給路55の断面を複数に分割することにより、分割された供給路55を流れる流体Fを層流化させることができる。このため、流体F内の固体粒子が乱流力により乱されることが抑制される。これにより、流体Fを固体Sと液体Lに分離するにあたり、その分離効率の低下を抑制することができる。
【0035】
例えば、仮に、供給路55を分割せず、供給路55を流れる流体Fを層流化させるために、流体Fの流れる速度を遅くすることが考えられる。この場合、流体Fの処理量が低下してしまう。これに対し、本実施形態に係る遠心分離装置1では、供給路55の断面を複数に分割することにより、流体Fの流れる速度を遅くしなくても、供給路55を流れる流体Fを層流化しやすくなる。従って、流体Fの処理量が低下せず、流体Fの分離効率が低下することを抑制することができる。
【0036】
また、本実施形態に係る遠心分離装置1によれば、供給路55が供給管54の内部に形成され、分割板56が供給管54の断面を複数に分割している。このため、供給管54に分割板56を設置することにより、供給路55を流れる流体Fを層流化させることが可能となる。従って、供給管54の直径や供給管54の設置本数を変更することなく、流体Fの層流化が図れる。つまり、既存の遠心分離装置に分割板56を設置することにより、容易に流体Fの分離効率を高めることができる。
【0037】
また、本実施形態に係る遠心分離装置1によれば、供給路55の流体Fの流れにおいてレイノルズ数Reが2300以下とされる。このため、流体Fが層流として供給路55を流れることとなる。従って、流体F内の固体粒子が乱流力により乱されることが抑制される。これにより、流体Fの分離効率を高めることができる。
【0038】
以上のように、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述した各実施形態に限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲の記載の要旨を逸脱しない範囲で様々な変形態様で実施することができる。
【0039】
例えば、上述した実施形態においては、図3に示すように、供給管54に分割板56を設けて、供給路55の断面を分割している。これに対し、供給管54を設けずに、供給路55の断面を分割してもよい。例えば、内胴5の内周面と外周面の間の孔の部分を供給路55とし、その孔の部分に分割板56を設けてもよい。この場合であっても、供給管54に分割板56を設けて、供給路55の断面を分割することが可能となる。従って、上述した実施形態と同様な作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0040】
1 遠心分離装置
2 回転筒
3 ケーシング
4 外胴
5 内胴
6 羽根
41 軸部
42 軸受
43 軸部
44 板体
45 軸受
46 モータ
51 モータ
52 フィードパイプ
53 供給口
54 供給管
55 供給路
56 分割板(分割体)
C 回転軸線
F 流体
L 液体
S 固体
図1
図2
図3