(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】オステオカルシン抽出原料の製造方法およびオステオカルシン含有組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07K 14/52 20060101AFI20231124BHJP
C07K 1/14 20060101ALI20231124BHJP
A61K 35/32 20150101ALN20231124BHJP
A61K 38/22 20060101ALN20231124BHJP
A61K 8/98 20060101ALN20231124BHJP
A61P 3/00 20060101ALN20231124BHJP
【FI】
C07K14/52
C07K1/14
A61K35/32
A61K38/22
A61K8/98
A61P3/00
(21)【出願番号】P 2019194189
(22)【出願日】2019-10-25
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】505108557
【氏名又は名称】山下 泰寿
(74)【代理人】
【識別番号】100180921
【氏名又は名称】峰 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【氏名又は名称】宇野 智也
(73)【特許権者】
【識別番号】598038773
【氏名又は名称】陣内 和彦
(73)【特許権者】
【識別番号】519383016
【氏名又は名称】張 世平
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【氏名又は名称】宇野 智也
(73)【特許権者】
【識別番号】522149027
【氏名又は名称】南 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100180921
【氏名又は名称】峰 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】山下 泰寿
【審査官】平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/108395(WO,A1)
【文献】特開2009-159942(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102871124(CN,A)
【文献】特開2017-039652(JP,A)
【文献】日環セ所報,1986年,Nos.12,13,pp.120-126
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱水処理された骨材料を加熱乾燥し、乾燥骨材料を得る工程(a)と、
前記乾燥骨材料を分級し、粗骨粒材料を得る工程(b)と、
前記粗骨粒材料を洗浄
してオステオカルシン抽出原料を製造する工程(c)と、
前記オステオカルシン抽出原料からオステオカルシンを溶媒抽出する工程(A)とを有
し、
前記工程(b)は、前記乾燥骨材料をふるいにかけるふるい工程を含み、
前記ふるい工程において、
用いられる前記ふるいは、メッシュの目開きが2~5mmであり、
前記メッシュを通過しない大きさの粗骨粒を前記粗骨粒材料とする、オステオカルシン
含有組成物の製造方法。
【請求項2】
前記熱水処理された骨材料が、豚骨ガラである、請求項1に記載のオステオカルシン
含有組成物の製造方法。
【請求項3】
前記工程(A)で得られたオステオカルシン含有抽出液を中和する工程(B)と、
前記工程(B)で得られたオステオカルシン含有中和液を濃縮する工程(C)と、を有する、請求項
1又は2に記載のオステオカルシン含有組成物の製造方法。
【請求項4】
前記工程(C)で得られたオステオカルシン含有濃縮液を噴霧乾燥する工程(D1)を有する、請求項
3に記載のオステオカルシン含有組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オステオカルシン抽出原料の製造方法に関する。また、前記オステオカルシン抽出原料の製造方法にて得られたオステオカルシン抽出原料を用いたオステオカルシン含有組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オステオカルシン(OC)は骨中に約0.4%の割合で存在する非コラーゲン性たんぱく質の一つであり、骨形成細胞である骨芽細胞によって分泌されるたんぱく質である。
また、オステオカルシンは、糖・エネルギー代謝活性作用をもつことが知られている。近年、オステオカルシンは経口摂取でも代謝機能を改善できることが明らかになっている(特許文献1、非特許文献1など)。
【0003】
オステオカルシンの製造方法として、大腸菌培養による菌産出方法や、骨からオステオカルシンを抽出する方法が知られている。
例えば、特許文献2には、加熱処理した骨から溶媒抽出する工程を包含することを特徴とする活性型オステオカルシン含有抽出物の製造方法が開示されている。詳しくは、生豚骨からエキスを加圧熱水抽出した残渣(煮骨)をミキサーで粉砕したものに、各抽出溶媒を添加し、抽出を行い、抽出液と残渣を分離した後、抽出液を中和し、透析により脱塩を行うことで、活性型オステオカルシンを抽出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-039652号公報
【文献】国際公開第2008/108395号
【非特許文献】
【0005】
【文献】Akiko Mizokami, Yu Yasutake, Sen Higashi, Tomoyo Kawakubo-Yasukochi, Sakura Chishaki, Ichiro Takahashi, Hiroshi Takeuchi, Masato Hirata, Oral administration of osteocalcin improves glucose utilization by stimulating glucagon-like peptide-1 secretion, BONE, 69, 68-79, 2014.12,
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の通り、オステオカルシンは経口摂取でも代謝機能を改善することができるため、機能性食品の原材料の一つとして期待される。しかし、現在、オステオカルシンは、大腸菌培養による菌産出方法により製造されたものが試薬として販売されている程度である。大腸菌培養による菌産出方法は大量生産が困難であり、製造されたオステオカルシンは高額であり、食品用途等への展開を妨げる原因となっている。そこで、オステオカルシンを安価で製造できる製造方法が求められている。
【0007】
また、本発明者らは、特許文献2のように、煮骨の粉砕物を溶媒抽出し、膜処理により濃縮等を行う方法では、膜処理時に膜トラブルが生じやすいという問題があり、大量生産に適用することが困難となっているということを発見した。さらに、特許文献2に記載の製造方法で得られる活性型オステオカルシン抽出物は、添加剤として食品に添加されているが、単独で錠剤化した場合には動物臭を感じるものとなりやすいという問題があることを見出した。
【0008】
かかる状況下、本発明の目的は、オステオカルシン含有組成物を得るための原料として好適なオステオカルシン抽出原料の製造方法を提供することである。さらに、本発明の目的は、大量生産が可能であり、動物臭の低減されたオステオカルシン含有組成物を得ることのできるオステオカルシン含有組成物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 熱水処理された骨材料を加熱乾燥し、乾燥骨材料を得る工程(a)と、前記乾燥骨材料を分級し、粗骨粒材料を得る工程(b)と、前記粗骨粒材料を洗浄する工程(c)と、を有するオステオカルシン抽出原料の製造方法。
<2> 前記熱水処理された骨材料が、豚骨ガラである、前記<1>に記載のオステオカルシン抽出原料の製造方法。
<3> 前記<1>または<2>に記載のオステオカルシン抽出原料の製造方法で得られたオステオカルシン抽出原料からオステオカルシンを溶媒抽出する工程(A)を有する、オステオカルシン含有組成物の製造方法。
<4> 前記工程(A)で得られたオステオカルシン含有抽出液を中和する工程(B)と、前記工程(B)で得られたオステオカルシン含有中和液を濃縮する工程(C)と、を有する、前記<3>に記載のオステオカルシン含有組成物の製造方法。
<5> 前記工程(C)で得られたオステオカルシン含有濃縮液を噴霧乾燥する工程(D1)を有する、前記<4>に記載のオステオカルシン含有組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のオステオカルシン抽出原料の製造方法によれば、オステオカルシン含有組成物を得るための原料として好適なオステオカルシン抽出原料が得られる。
本発明のオステオカルシン含有組成物の製造方法によれば、濃縮時に膜トラブルが発生しにくく、オステオカルシン含有組成物の大量生産が可能である。また、得られるオステオカルシン含有組成物は、動物臭が低減されており、単独での錠剤化もしやすいものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
【0013】
<オステオカルシン抽出原料の製造方法>
本発明は、熱水処理された骨材料を加熱乾燥し、乾燥骨材料を得る工程(a)と、前記乾燥骨材料を分級し、粗骨粒材料を得る工程(b)と、前記粗骨粒材料を洗浄する工程(c)と、を有するオステオカルシン抽出原料の製造方法(以下、「本発明の抽出原料の製造方法」と記載する場合がある。)に関するものである。
【0014】
本発明の抽出原料の製造方法のように、熱水処理された骨材料を加熱乾燥した後、乾燥骨材料を分級し、さらに、得られた粗骨粒材料を洗浄することで、骨材料に含まれる油脂分や動物臭の原因となる有機物が低減された、多孔質構造の抽出原料を得ることができる。また、得られる抽出原料は、肉粉等に由来する微粉末が少ないものにできる。
このように本発明の抽出原料の製造方法により製造される抽出原料(以下、「本発明の抽出原料」と記載する場合がある。)は、油脂分が低減されており、多孔質構造のため、骨内部まで抽出溶媒が浸透しやすく、抽出効率が高いものとなる。また、分級することで、得られる抽出原料に含まれる微粉末が少なく、このような抽出原料を用いてオステオカルシンを溶媒抽出し膜処理する際には目詰まり等の膜トラブルが発生しにくいものにできる。さらに、本発明の抽出原料は、動物臭の原因となる有機物が低減されている。そのため、本発明の抽出原料を用いて溶媒抽出することにより得られるオステオカルシン含有組成物は動物臭が低減されたものとなり、単独での錠剤化も可能である。このように、本発明の抽出原料の製造方法で得られる抽出原料は、オステオカルシン含有組成物を得るための好適な原料となる。
【0015】
[工程(a)]
工程(a)は、熱水処理された骨材料を加熱乾燥し、乾燥骨材料を得る工程である。加熱乾燥処理を行うことで、熱水処理された骨材料中の油脂分や動物臭の原因となる有機物を低減させることができる。また、工程(b)において、乾燥骨材料中に含まれる肉粉等の微粉末を分離しやすくなる。
【0016】
本発明の抽出原料の製造方法では、原料として、熱水処理された骨材料が用いられる。骨材料は、オステオカルシンを含むものであればよく、哺乳類、鳥類、魚類等の脊椎動物の骨を用いることができる。骨の部位も特に限定されず、頭部の骨、体幹部の骨、上肢の骨、下肢の骨等を用いることができる。形状も特に限定されず、粉砕物や細断物であってもよい。また、使用される骨は骨を主成分とするものであればよく、骨膜や骨髄、軟骨等を含んでもよい。さらに、豚骨や牛骨、鶏骨等は、骨に除去しきれない肉がわずかに付着した状態で市販されているものも多い。本発明の抽出原料の製造方法では、このような一般的に市販されている豚骨や牛骨、鶏骨等を熱水処理したものを使用することもできる。熱水処理された骨材料を用いることで、熱水処理前の骨材料(生骨)に比べて油脂分が少なくなり、さらに骨が多孔質化するため、抽出処理時に骨材料の内部への溶媒の浸透性が向上し、オステオカルシンの抽出効率を向上させることができる。
【0017】
具体的には、ブタ、ウシ、ニワトリ等の家畜の骨や魚の骨などの骨材料を熱水と一定時間接触させた後、工程(a)の骨材料として使用できる。熱水処理の条件は、特に限定はなく、例えば、70℃~130℃や80℃~120℃、90℃~100℃の温度で、15分~24時間や1時間~24時間、1時間~12時間熱水処理されたものなどを使用できる。また、常圧下熱水処理された骨材料も、加圧下で熱水処理された骨材料も使用できる。
【0018】
中でも、熱水処理された骨材料としては、熱水処理された豚骨が好ましい。牛骨は、食用等の用途において安全上の懸念があり、鶏骨は、骨が小さく抽出効率が低いため、安価及び大量生産が困難である。
【0019】
特に、熱水処理された骨材料として、ラーメン屋や豚骨スープ工場などの食品工場から排出される豚骨ガラが好適である。豚骨ガラは、熱水中で長時間煮込み、豚骨からスープを抽出した後の残渣であり、油脂分の多くが除去されていることや、長時間煮込んだことで多孔質構造となっているため、抽出対象面積を大幅に拡大することができる。また、現在、豚骨ガラは、産業廃棄処理物として大量に廃棄されており、豚骨ガラを原料として使用することで、豚骨ガラを有効活用でき、産業廃棄処理物の排出量を低減できるという利点もある。
豚骨ガラは、適当な大きさに切り分けられているため、粉砕等を行わずそのまま用いることができる。粉砕によって生じた微粉末がオステオカルシン抽出原料中に多く残存すると、オステオカルシン抽出後のろ過操作において膜トラブルが発生しやすくなる。
【0020】
熱水処理された骨材料の加熱乾燥の方法としては、特に限定されず、熱風乾燥や蒸気乾燥、加圧乾燥、減圧乾燥等が挙げられる。例えば、過熱蒸気乾燥は、骨材料が焦げないように精密な制御が求められるが、水蒸気によって効率的に骨材料中の油脂分や動物臭の原因となる有機物を吸着・分解することができる。熱風乾燥は、骨材料に焦げが生じにくい乾燥方法であり、より簡単な操作で熱水処理された骨材料の乾燥を行うことができる。
【0021】
加熱乾燥の時間は、加熱処理された骨材料の量や加熱方法、加熱乾燥温度等によって適宜設定される。乾燥時間が短すぎると、油脂分や動物臭の原因となる有機物の除去が不十分となり、抽出効率が低下したり、得られるオステオカルシン含有組成物に動物臭が残存したりする場合もある。そのため、加熱乾燥時間は、1時間以上が好ましく、3時間以上がより好ましく、6時間以上がさらに好ましい。また、加熱乾燥時間の上限は特に限定されないが、一定時間以上では油脂分や動物臭の原因となる有機物の除去効果が飽和する傾向にあるため、上限を設定してもよい。例えば、加熱乾燥時間は、20時間以下や、15時間以下、10時間以下などとすることができる。
【0022】
加熱乾燥の温度は、加熱処理された骨材料の量や加熱方法、加熱乾燥時間等によって適宜設定される。加熱乾燥の温度は低すぎると、油脂分や動物臭の原因となる有機物が除去できない場合がある。また、油脂分や動物臭の原因となる有機物の除去効率が低下するため加熱乾燥に時間を要する傾向となる。そのため、加熱乾燥の温度は80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。加熱乾燥の温度の上限は、加熱方法によって設定温度とするために特殊な設計が必要になる場合もあるため、加熱方法に応じて設定することができる。熱風乾燥の場合は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、100℃以下がさらに好ましい。過熱蒸気乾燥の場合は、500℃以下などとすることもできるが、加熱乾燥の温度が高すぎると、加熱乾燥の時間によっては焦げが生じる場合があるため、400℃以下が好ましく、350℃以下がより好ましい。
【0023】
[工程(b)]
工程(b)は、工程(a)で得られた乾燥骨材料を分級し、粗骨粒材料を得る工程である。乾燥骨材料を分級することで、肉粉等の微粉末の大部分が除去された粗骨粒材料が得られるので、オステオカルシン含有組成物を製造する際の膜処理において膜トラブルが発生しにくい抽出原料とできる。また、肉粉の大部分が除去されることで、得られるオステオカルシン含有組成物の動物臭が低減されたものとなる。
【0024】
分級方法は特に限定されないが、分級を効率的に行えるため、ふるい分けが好ましい。工程(a)で得られた乾燥骨材料をふるい分けすることで、肉粉や骨の微粉砕物などの大部分を除去することができ、ふるいのメッシュを通過しない所定の大きさの粗骨粒が主成分の粗骨粒材料が得られる。ふるい分けには、メッシュの目開きが、例えば、1mm~10mm程度や2~5mm程度のものを使用できる。
【0025】
また、大きすぎる粗骨粒は、オステオカルシンを抽出するときの抽出効率が低いものとなる傾向がある。そのため、分級後に、大きな粗骨粒の破砕等を行ってもよい。例えば、大きな粗骨粒は破砕等行い、30mmや25mm、20mmの目開きのメッシュを通過できる大きさとしたものを粗骨粒材料として用いることができる。
【0026】
[工程(c)]
工程(c)は、工程(b)で得られた粗骨粒材料を洗浄する工程である。粗骨粒材料を洗浄することで、工程(b)では除去しきれなかった、骨の表面に付着した細かい肉粉等の微粒子を洗い落とすことができる。これにより、得られる本発明の抽出原料は、オステオカルシン抽出後の濃縮などの際に、膜トラブルがより発生しにくいものとなる。また、油脂分や動物臭の原因となる有機物をさらに低減することができる。このとき、粗骨粒材料は、肉粉等の微粒子の大部分が除去されているため、骨から油脂分や動物臭の原因となる有機物がより効率的に除去される。
【0027】
洗浄は、洗浄溶媒中に浸漬したり、洗浄溶媒をかけ流したりすることで行うことができる。骨表面に付着した細かな肉粉(微粉末)を効率的に除去するためには、洗浄溶媒中で一定時間撹拌することが好ましい。
使用される洗浄溶媒は、オステオカルシン抽出原料の使用用途等に応じて決定すればよい。医療用途や食品用途にも安全に使用することができるため、水で洗浄することが好ましい。
【0028】
油脂分や動物臭の原因となる有機物の除去効果を高めるためには、洗浄は加熱しながら行うことが好ましい。具体的には、洗浄温度は、35℃以上が好ましく、40℃以上や、50℃以上、60℃以上としてもよい。また、洗浄温度は、100℃以下や90℃以下、80℃以下とできる。
【0029】
特に、豚骨を用いる場合は、豚骨の油脂の溶解温度は35℃程度なので、35℃以上の温水を使用することで、油脂分の除去効率を高めることができる。
【0030】
洗浄時間は洗浄温度等によって適宜選択される。洗浄時間は短すぎると、微粉末を十分に除去できなかったり、油脂分や動物臭の原因となる有機物の除去効果を十分に得ることができなかったりする場合がある。そのため、30分以上が好ましく、45分以上がより好ましい。また、洗浄時間の上限は特に限定されないが、一定時間以上になると、油脂分や動物臭の原因となる有機物の除去効果は飽和する傾向にあるため、300分以下や120分以下、90分以下など上限を設定してもよい。
【0031】
洗浄後に、ろ過やデカンテーション等により固液分離することで、洗浄骨を回収することができる。得られた洗浄骨は、特に乾燥等を行わずにそのままオステオカルシンの抽出原料として用いてもよく、洗浄溶媒を乾燥させた後にオステオカルシンの抽出原料として用いてもよい。
【0032】
<オステオカルシン含有組成物の製造方法>
本発明は、本発明のオステオカルシン抽出原料の製造方法で得られたオステオカルシン抽出原料からオステオカルシンを溶媒抽出する工程(A)を有する、オステオカルシン含有組成物の製造方法(以下、「本発明のオステオカルシン含有組成物の製造方法」と記載する場合がある。)に関する。
上記の通り、本発明の抽出原料を使用することで、動物臭が低減された、オステオカルシンを含む組成物を得ることができる。また、濃縮等を行う場合にも、膜トラブルが発生しにくく、生産性の高いものとなり、大量生産にも適用できる。
【0033】
[工程(A)]
工程(A)は、上記した本発明のオステオカルシン抽出原料の製造方法で得られたオステオカルシン抽出原料からオステオカルシンを溶媒抽出する工程である。
【0034】
抽出溶媒は、特に制限はなく、使用用途等を考慮して適宜決定される。医療用途や食品用途にも安全に使用することができるため、抽出溶媒は、水系溶媒が好ましい。水系溶媒としては、塩酸水溶液、酢酸水溶液、リン酸水溶液、乳酸水溶液、クエン酸水溶液、ギ酸水溶液、アスコルビン酸水溶液などの酸性水溶液;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸アンモニウム等の炭酸塩水溶液、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム等の重炭酸塩水溶液、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ水酸化物水溶液などのアルカリ性水溶液などが挙げられる。また、これらの酸性水溶液やアルカリ性水溶液の塩を含む緩衝液としてもよく、炭酸-重炭酸緩衝液、ホウ酸カリウム緩衝液、ホウ酸ナトリウム緩衝液、グリシン-水酸化ナトリウム緩衝液、酢酸-エタノールアミン緩衝液などが挙げられる。
【0035】
より抽出効率を高めるためには、アルカリ性条件下で抽出処理することが好ましい。すなわち、抽出溶媒はアルカリ性であることが好ましい。抽出溶媒のpHは、7超13以下であることが好ましく、8~12であることがより好ましく、9~11であることがさらに好ましい。例えば、炭酸塩および/または重炭酸塩の水溶液、ホウ酸塩の水溶液(緩衝液)、グリシン-水酸化ナトリウム緩衝液、酢酸エタノールアミン緩衝液などアルカリ性水溶液が好ましい。
アルカリ性水溶液中の塩濃度は、設定したpHの水溶液となるように調製をすればよい。例えば、0.001M以上とすることができ、0.05~3Mが好ましく、0.1~1Mがより好ましい。塩濃度が高すぎると脱塩処理が煩雑になる場合がある。
【0036】
抽出時間は、抽出溶媒や抽出温度等に応じて適宜設定すればよい。抽出時間が短すぎると、抽出原料からオステオカルシンが十分に抽出されない場合があるため、1時間以上が好ましく、6時間以上がより好ましく、12時間以上がさらに好ましい。また、抽出時間の上限は特に限定されないが、一定時間以上を超えると抽出量が大きく変化しないため、48時間以下や30時間以下、25時間以下などとすることができる。
【0037】
抽出温度は、抽出溶媒や抽出時間等に応じて適宜設定すればよい。抽出温度が低すぎると抽出効率が低下するため、抽出温度は4℃以上とすることが好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上がさらに好ましい。また、抽出温度が高すぎると抽出されたオステオカルシンが分解する場合があるため、120℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、40℃以下がさらに好ましい。
【0038】
抽出溶媒の重量に対する抽出原料の重量の比(抽出原料の重量/抽出溶媒の重量)は、生産性や抽出効率等を考慮して、0.01~1.0が好ましく、0.05~0.5がより好ましい。
【0039】
溶媒抽出後に、固液分離して抽出残渣を取り除くことで、オステオカルシン含有抽出液を得ることができる。固液分離は、ろ過やデカンテーション等により行うことができる。ろ過やデカンテーションの前に、遠心分離等で積極的に抽出残渣を沈降させてもよい。
【0040】
なお、従来のオステオカルシン含有組成物の製造方法では、抽出残渣は臭気が強く、他用途への利用が困難であったため、抽出残渣が汚泥となり、残渣処理が必要であった。本発明のオステオカルシン含有組成物の製造方法では、抽出残渣においても、臭気が抑えられ、オステオカルシン及びI型コラーゲンが豊富に含まれているので、ペットフードなどに再利用することができる。また、有機リン酸肥料の骨粒として再利用することもできる。
【0041】
本発明のオステオカルシンの製造方法は、さらに、オステオカルシン含有抽出液の中和や濃縮、乾燥などを行う工程を有してよい。中和、濃縮を行うことで、オステオカルシンの含有量を高めたり、不純物を低減したりすることができる。抽出液の中和と濃縮はどちらを先に行ってもよい。
【0042】
操作性などの観点から、本発明のオステオカルシンの製造方法は、工程(A)で得られたオステオカルシン含有抽出液を中和する工程(B)と、工程(B)で得られたオステオカルシン含有中和液を濃縮する工程(C)と、を有することが好ましい。また、抽出液の液量等によっては、抽出液をある程度濃縮した後、中和を行い、さらに濃縮を行ってもよい。後述するように、膜濃縮法により濃縮することで、濃縮と同時に脱塩も行えるため、中和の後に膜濃縮を行うことが好ましい。
【0043】
[工程(B)]
工程(B)は、工程(A)で得られたオステオカルシン含有抽出液を中和する工程である。工程(B)を行うことで、オステオカルシン含有中和液が得られる。
【0044】
中和処理は、抽出溶媒としてアルカリ性水溶液を用いた場合には酸が用いられ、抽出溶媒として酸性水溶液を用いた場合にはアルカリが用いられる。酸水溶液またはアルカリ水溶液は、pH7前後(pH6.5~7.5程度)となるようにオステオカルシン含有抽出液に加えられる。中和に用いる酸水溶液やアルカリ水溶液の濃度は、用いる酸またはアルカリの種類に応じて、析出する塩の溶解性等を考慮して適宜設定すればよい。
【0045】
中和に用いる酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、アジピン酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、ギ酸、酢酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、アスコルビン酸等の有機酸、陽イオン交換樹脂、陽イオン交換繊維、陽イオン交換膜などが挙げられる。中でも、クエン酸が好ましい。
中和に用いるアルカリとしては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、アミン類、含窒素複素環、陰イオン交換樹脂等が挙げられる。
【0046】
[工程(C)]
工程(C)は、工程(B)で得られたオステオカルシン含有抽出液を濃縮する工程である。工程(C)を行うことで、オステオカルシン含有濃縮液が得られる。
【0047】
濃縮は、減圧や加熱などにより抽出液から溶媒を蒸発させる蒸発法や、限外ろ過、ゲル濾過、イオン交換樹脂等の膜を用いた膜濃縮法で行うことができる。
【0048】
本発明の抽出原料は、肉粉などの微粉末が除去されており、膜濃縮法で処理しても、目詰まり等の膜トラブルが生じにくく、膜濃縮法は蒸発法よりもエネルギーコストの観点からも有利であるため、膜濃縮法が好ましい。膜濃縮法により濃縮することで、脱塩も同時に行うことができる。また、膜濃縮は、同一または異なる膜を用いて、2回以上行ってもよい。
【0049】
中でも、より短時間で処理でき、大量生産にも適応しやすいため、限外ろ過処理による濃縮がより好ましい。限外ろ過に用いられるろ過膜は、1000Da以上や、2000Da以上、3000Da以上の分画分子量の膜を用いることができる。また、10000Da以下や、6000Da以下、5000Da以下の分画分子量の膜を用いることができる。
【0050】
また、膜濃縮の前に、オステオカルシン含有中和液を前処理してもよい。膜濃縮の前の前処理としては、遠心分離、デカンテーション、ろ過などを挙げることができ、これらは組み合わせて行ってもよい。例えば、遠心分離やデカンテーションを行うことで、中和により生じた中和塩を効率的に除去することができる。また、オステオカルシン含有中和液を粗ろ過して用いることで、100μm以上や120μm以上、200μm以上の比較的大きな粉末の大部分を除去することができ、膜トラブルがより生じにくいものとなる。また、精密ろ過を行うことで、滅菌等を行うことができる。
【0051】
限外ろ過や、粗ろ過、精密ろ過に用いられるろ過膜の材質は特に限定されず、高分子膜やセラミック膜などを用いることができる。
【0052】
本発明のオステオカルシン含有組成物の製造方法で得られるオステオカルシン含有組成物(以下、「本発明のオステオカルシン含有組成物」と記載する場合がある。)の形状は、目的等に応じて適宜選択すればよく、液状であっても、固体状であってもよい。
例えば、オステオカルシン含有濃縮液を、液状の本発明のオステオカルシン含有組成物としてもよいし、これらの液を水やアルコール等で希釈したり、任意成分と組み合わせたりしたものを、液状の本発明のオステオカルシン含有組成物としてもよい。用途によっては、オステオカルシン含有抽出液やオステオカルシン含有中和液を液状の本発明のオステオカルシン含有組成物としてもよい。また、オステオカルシン含有抽出液やオステオカルシン含有中和液、オステオカルシン含有濃縮液を乾燥させて、固形状とすることもできる。
【0053】
[工程(D)]
本発明のオステオカルシンの製造方法は、工程(C)で得られたオステオカルシン含有濃縮液を乾燥する工程(D)を有することが好ましい。
乾燥方法としては、噴霧乾燥、凍結乾燥、自然乾燥、通風乾燥などが挙げられる。
【0054】
中でも、噴霧乾燥が好ましく、工程(D)は、工程(C)で得られたオステオカルシン含有濃縮液を噴霧乾燥する工程(D1)とすることが好ましい。凍結乾燥は、得られるオステオカルシン含有組成物にべたつきが生じる場合がある。また、抽出されたオステオカルシンは高温に長時間晒されると分解したり、品質が低下したりする傾向がある。噴霧乾燥は、短時間で乾燥し粉末化でき、得られるオステオカルシン含有組成物のべたつきも抑えられるため、好ましい。
【0055】
乾燥物は、そのまま本発明のオステオカルシン含有組成物としてもよく、任意成分と組み合わせて本発明のオステオカルシン含有組成物としてもよい。また、乾燥物を粉砕したり、デキストリン等の公知の賦形剤を添加して造粒したりすることで、任意の形状や大きさとすることもできる。噴霧乾燥で乾燥させることで、乾燥とあわせて任意の形状への造粒も行いやすい。
【0056】
本発明のオステオカルシン含有組成物の製造方法では、オステオカルシンの含有量が高い組成物を得ることができる。例えば、オステオカルシン含有量が、2.0重量%以上や3.0重量%以上、3.5重量%以上であるオステオカルシン含有組成物を得ることもできる。例えば、本発明のオステオカルシン含有組成物は、本発明のオステオカルシン含有組成物中のオステオカルシンの含有量が、0.5~10重量%や、2.0~8.0重量%、3.5~6.0重量%のものとすることができる。なお、本発明のオステオカルシン含有組成物に含まれるオステオカルシンは、Gla-OC(γ-カルボキシル化オステオカルシン)および/またはGlu-OC(非または低カルボキシル化オステオカルシン)を含むものである。また、本発明のオステオカルシン含有組成物は、I型コラーゲンも含んでいるため、美容や健康に対してより高い効果が期待できる。
【0057】
<オステオカルシン含有組成物の用途>
本発明のオステオカルシン含有組成物は、医薬組成物(医薬品のみならず医薬部外品も含む)や化粧料組成物、飲食品などに応用することができる。
【0058】
本発明のオステオカルシン含有組成物は、単独または薬学的に許容される基材等の任意の成分と配合して、医薬組成物として用いることができる。医薬組成物における本発明のオステオカルシン含有組成物の含有量は、製造のしやすさや形態などに応じて適宜設計することができる。例えば、医薬組成物における本発明のオステオカルシン含有組成物の含有量は、0.01~100重量%や、1~95重量%、10~90重量%などとすることができる。
本発明のオステオカルシン含有組成物を含む医薬組成物は、どのような形態の薬剤であっても構わない。医薬組成物の形態としては、錠剤、丸剤、顆粒剤、散剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、又はカプセル剤等の剤型がある。投与方法としては、経口又は非経口であってもよい。
【0059】
本発明のオステオカルシン含有組成物は、単独または任意の成分と組み合わせて飲食品として用いることができる。飲食品における本発明のオステオカルシン含有組成物の含有量は、製造のしやすさや形態などに応じて適宜設計することができる。例えば、飲食品における本発明のオステオカルシン含有組成物の含有量は、0.01~100重量%や、1~95重量%、10~90重量%などとすることができる。飲食品の用途のうち、具体例としては、サプリメント、機能性食品、食品添加剤等が挙げられる。
【0060】
本発明のオステオカルシン含有組成物を含有するサプリメントの形態は、特に制限されず、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、糖衣錠、フィルム剤、トローチ剤、チュアブル剤、溶液、乳濁液、懸濁液等の任意の形態でよい。特に、本発明のオステオカルシン含有組成物は、動物臭が低減されているので、製品中に含まれる本発明のオステオカルシン含有組成物の割合を高くしても、動物臭を感じにくいものとなる。そのため、本発明のオステオカルシン含有組成物を充填したカプセル剤などは好適な態様である。
【0061】
本発明のサプリメントは、本発明のオステオカルシン含有組成物以外に、サプリメントとして通常使用される任意の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、例えば、アミノ酸、ペプチド;ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンB、葉酸等のビタミン類;ミネラル類;糖類;無機塩類;クエン酸またはその塩;茶エキス;油脂;プロポリス、ローヤルゼリー、タウリン等の滋養強壮成分;ショウガエキス、高麗人参エキス等の生薬エキス;ハーブ類;コラーゲン等が挙げられる。
【0062】
本発明のオステオカルシン含有組成物は、日常的に経口摂取しやすいように、各種の食品、飲料と混ぜて機能性食品とすることで、長期的に摂取することも容易である。
ここでいう「機能性食品」とは、一般食品に加えて、健康の維持の目的で摂取する食品および/または飲料を意味し、保健機能食品である特定保健用食品や栄養機能食品や、健康食品、栄養補助食品、栄養保険食品、機能性表示食品等を含む概念である。この中でも保健機能食品である特定保健用食品や栄養機能食品、機能性表示食品が好ましい機能性食品の態様である。なお、機能性食品として製品化する場合には、食品に用いられる様々な添加剤、具体的には、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、漂白剤、防菌防黴剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料等を添加していてもよい。
【0063】
本発明の機能性食品の対象となる、食品、飲料は特に限定されるものではない。例えば、食品として、ソーセージ、ハム、魚介加工品、ゼリー、キャンディー、チューインガムなどの食品類が挙げられる。また、飲料としては、各種の茶類、清涼飲料水、酒類、栄養ドリンクなどが挙げられる。
【0064】
また、本発明のオステオカルシン含有組成物は、それ自体またはこれに他の成分を添加して食品添加剤として使用することも可能である。他の成分は、飲食品添加剤として使用可能であるならば特に制限はない。食品添加剤の添加対象となる飲料、食品についても任意であり、特に制限はない。
【0065】
本発明のオステオカルシン含有組成物は、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。そのため、ペットフード等の動物用のサプリメントや機能性食品へ添加することもできる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
[実施例1]:オステオカルシン抽出原料の製造
ラーメン店等から回収した豚骨ガラ(煮骨)60kg(湿重量)を撹拌乾燥装置に投入して、90~100℃で6~10時間熱風乾燥した(工程(a))。
次いで、熱風乾燥後の豚骨ガラ(乾燥骨材料)を、振るい分別装置を用いて、白い粗骨粒材料と茶色い肉骨粉とを分離した(工程(b))。
振るい分別した粗骨粒材料を60~80℃の温水中で1時間程度撹拌することで脱脂洗浄した(工程(c))。
脱脂洗浄後、デカンテーションして、オステオカルシン抽出原料30kg(湿重量)を得た。
【0068】
[実施例2]:オステオカルシン含有組成物の製造
実施例1で得られたオステオカルシン抽出原料30kg(湿重量)と、抽出溶媒である0.2M炭酸-重炭酸緩衝液(pH9.5,100L)とを撹拌抽出釜に加えて、室温で24時間抽出処理した(工程(A))。
反応液を静置した後、デカンテーションにより上澄み液(抽出液)を回収し、抽出残渣汚泥を除去した。実施例1で得られたオステオカルシン抽出原料を使用することで、粘度が低く、臭気が少ない抽出液が得られた。
得られた抽出液に、クエン酸を加えてpH7に中和し、中和液を得た(工程(B))。
中和液を簡易的な120メッシュにて粗ろ過を行った。中和して粗ろ過を行った後の溶液を、セラミックろ過後、UF膜ろ過(分画、3000~5000Da)で処理することで、pH調整で使用した塩が除去されたオステオカルシンを含む濃縮液25Lを得た(工程(C))。
スプレードライ装置を用いて、得られた濃縮液をスプレードライ(噴霧乾燥)し、オステオカルシンを含む粉末300gを得た(工程(D1))。
【0069】
得られた粉末300g中には15gのオステオカルシンが含まれていた。また、得られた粉末は、動物臭がほとんどしなかった。
【0070】
[比較例1]
ラーメン店等から回収した豚骨ガラ(煮骨)をミキサーで粉砕した。なお、煮骨の粉砕物には、肉粉や骨の髄が残っていた。
得られた粉砕物30kg(湿重量)と、抽出溶媒である0.2M炭酸-重炭酸緩衝液(pH9.5)150Lとを撹拌抽出釜に加えて、室温で24時間抽出処理した。
反応液を静置した後、デカンテーションにより上澄み液(抽出液)を回収し、抽出残渣を除去した。
抽出液にクエン酸水溶液を加えて中和した。
中和した後の溶液(pH7.1)を、セラミック膜ろ過、珪藻土ろ過、無菌ろ過、限外ろ過、無菌ろ過を順次行い、オステオカルシンを含む濃縮液36Lを得た。なお、限外ろ過時に、煮骨の粉砕により生じた微粉砕物(肉粉や骨の髄など)が付着したため、ろ過膜を複数回取り換える必要があった。
得られた濃縮液を、凍結乾燥で凍結させた後、オステオカルシンを含む粉末410gを得た。
【0071】
得られた粉末410g中には1.7gのオステオカルシンが含まれていた。なお、得られた粉末は、べたつきがあった。また、得られた粉末は、動物臭が感じられた。
【0072】
実施例2と比較例1との比較からわかるように、実施例1で得られたオステオカルシン抽出原料を用いることで、ろ過工程(濃縮工程)が簡略化できた。また、実施例2は、目詰まり等の膜トラブルがなく、ろ過膜を取り換える必要がなく、操作性に優れていた。
また、実施例2の製造方法とすることで、比較例1と比べて、オステオカルシンの含有量が高く、動物臭の感じられない粉末が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のオステオカルシン抽出原料の製造方法および本発明のオステオカルシン含有組成物の製造方法は、代謝機能を改善することのできるオステオカルシンを含有するオステオカルシン含有組成物の大量生産を可能にするため、産業上有用である。