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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】断熱及び/又は防音のための遮断材料
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20231124BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20231124BHJP
   F16L 59/08 20060101ALI20231124BHJP
   E04B 1/90 20060101ALN20231124BHJP
【FI】
B32B27/00 N
B32B27/34
F16L59/08
E04B1/90 F
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019203036
(22)【出願日】2019-11-08
(65)【公開番号】P2020075507
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2022-08-01
(31)【優先権主張番号】18205261
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516077644
【氏名又は名称】アリアーネグループ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(72)【発明者】
【氏名】アルトゥス ヤスユケヴィクス
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0255642(US,A1)
【文献】特開2018-118488(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038779(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0287641(US,A1)
【文献】特開2019-183153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00、
E04B1/62-1/99、
F16L59/00-59/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱及び/又は防音のための遮断材料(10,10’,10’’,10’’’)であって、
反射コーティング(2a,2b,4a,4b,6a,6b,7a,7b)で、表面の一方又は両方が少なくとも部分的にコーティングされている1又は複数の可撓性のあるポリイミドエアロゲル膜を含む多数の層状シート(1,2,3,4,5,6,7,8)を有する遮断材料。
【請求項2】
前記1又は複数の可撓性のある、少なくとも部分的にコーティングされたポリイミドエアロゲル膜の少なくとも1つが、
-多くても1mm、及び/又は
-少なくとも8μm、
の平均厚さを有する、請求項1に記載の遮断材料。
【請求項3】
-1又は複数の可撓性のある、少なくとも部分的にコーティングされたポリイミドエアロゲル膜の少なくとも1つは、前記膜の範囲の少なくとも隅々まで本質的に均一な厚さを有し、及び/又は、
-前記1又は複数の可撓性のある、少なくとも部分的にコーティングされたポリイミドエアロゲル膜の少なくとも1つは、異なるそれぞれの平均厚さを有する少なくとも2つの範囲を有する、請求項1又は2に記載の遮断材料。
【請求項4】
-前記1又は複数の可撓性のある、少なくとも部分的にコーティングされたポリイミドエアロゲル膜の少なくとも1つは、それぞれのシートの一部の少なくとも隅々まで本質的に均一な多孔率を有し、及び/又は、
-前記1又は複数の可撓性のある、少なくとも部分的にコーティングされたポリイミドエアロゲル膜の少なくとも1つは、異なるそれぞれの多孔率を有する少なくとも2つの部分を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の遮断材料。
【請求項5】
前記遮断材料は、ポリイミドエアロゲルを有する2以上のシートを有し、
前記2以上の可撓性のある少なくとも部分的にコーティングされたポリイミドエアロゲル膜は、異なる平均シート厚さ及び/又は異なる平均多孔率を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の遮断材料。
【請求項6】
前記多数の層状シートは、ポリイミドエアロゲルを有する1又は複数のスペーサーシート(5,6)を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の遮断材料。
【請求項7】
前記1又は複数のスペーサーシート(6)の少なくとも1つは、その表面の一方又は両方にて反射コーティング(6a,6b)で少なくとも部分的に覆われており、
前記反射コーティングは凸凹な表面を有する少なくとも1つの領域を有する、請求項6に記載の遮断材料。
【請求項8】
前記1又は複数のスペーサーシート(5,6)は、多数の切り欠き(C)を有する格子として形成された少なくとも1つのシート(8)を有し、
前記切り欠きの全面積は、前記シートの全面積伸長の多くても1/3である、請求項6又は7に記載の遮断材料。
【請求項9】
可撓性のあるMLI材料として構成される、請求項1~8のいずれか一項に記載の遮断材料。
【請求項10】
本体を断熱する及び/又は防音する方法であって、
請求項1~9のいずれか一項に記載の遮断材料(10,10’,10’’,10’’’)で前記本体を少なくとも部分的に遮蔽し、覆い及び/又は包囲することを有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱及び/又は防音のための遮断材料に関し、その材料は多数の層状シートを有する。本発明はさらに、本体を熱的に及び/又は音響的に遮断する方法(断熱及び/又は防音する方法)に関する。
【背景技術】
【0002】
物理システムの間の熱エネルギーの交換は、熱伝導(粒子の微視的衝突から生じる)、熱放射(電磁放射である)及び対流(熱が移動する流体によって伝えられる)などのそれぞれの熱伝達モードを意味する様々な物理条件に依存する。
【0003】
遮断材料は、1又は2つのこのようなモード熱伝達を抑制するために考案される。特に高い遮断効率をもたらすために、材料は、それぞれのモードに従う熱伝達を抑制し又は軽減するように異なる特性を有する様々な層を有してもよい。
【0004】
例えば、多数の層状シートから成る多層断熱(MLI)材料は特に、熱放射を軽減するように特に適合される。これらの材料はしばしば、宇宙船や打ち上げ機の熱制御及び保護のために使用される。多数の層は、ポリエステルフィルムやポリイミドフィルムなどのプラスチックの薄膜を含む。これらの膜は一般に、銀やアルミニウムなどの金属でコーティングされる。コーティングのために、これらの層は大部分の熱を反射する一方、その一部だけがそれぞれの次の層に進む。
【0005】
このようなMLI材料は、他の材料に比べて軽量である。それらは現在、それらが多層放射性バリアとして作用する真空中で最良の性能(パフォーマンス)を示す。アプリケーションに依存して、MLI材料は、入ってくる放射性熱流束の99%以上を反射することができる。
【0006】
ポリイミド膜は熱機械安定性の観点で最良の性能を示し、また450℃までの温度で作動できる。このような膜は、しかしながら、製造に手間がかかり、ゆえに高価である。さらに、従来のMLI材料は通常、対流及び熱伝導が無視できる真空でのみ有効である。気体雰囲気において、それら材料は殆ど影響を有しない。加えて、ポリイミドフィルムを含有するMLI材料は「国際武器取引規則」(ITAR)を受けやすく、その用途と販売が複雑で、制限される。
【0007】
特許文献1は、その機械強度を改良するために繊維強化されたポリイミドベースのエアロゲル層を含む積層パネルを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】US2017/326849A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、前述の不都合を克服するように、別な遮断材料及び別な遮断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本目的は、請求項1に従う遮断材料及び請求項10に従う方法によって解決される。特定の複数の実施形態が、従属請求項、明細書及び図面に開示されている。
【0011】
本発明に従う遮断材料は、断熱及び/又は防音を提供するよう機能する。それは、少なくとも1つの可撓性のある(すなわち、屈曲可能な)ポリイミドエアロゲル膜を含む多数の層状シートを有する。その点で、当該ポリイミドエアロゲル膜は、熱放射を反射するコーティングで少なくとも部分的に(すなわち、その(対向)表面の一方又は両方の少なくとも一部で)覆われている。以下では、この特性を「少なくとも部分的にコーティングされる」という表現によって省略する。
【0012】
有利な実施形態によれば、コーティングは、それぞれの表面積の少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%又は100%をも覆う。好ましくは、コーティングは、金属、特にアルミニウム、銀及び/又は金を有する。例えば、コーティングをもたらすために、それぞれの表面が金属化され(例えば、物理蒸着法を適用することで)、それによりポリイミドエアロゲルは金属化のための基体(サブストレート)として作用する。
【0013】
或る遮断材料に伝統的に含まれる従来の金属化ポリイミドフィルムのように、このような可撓性のある、少なくとも部分的にコーティングされたポリイミドエアロゲル膜は熱反射をもたらす。
【0014】
本発明に従う方法は、本体を断熱する又は防音するよう機能する。この文章では、用語「本体」は特に、対象物又は人などの生物を指す。本方法は、本発明の実施形態に従う遮断材料を用いて本体を部分的に又は全体的に遮蔽し、覆い及び/又は包囲することを含む。
【0015】
(従来の)ポリイミドフィルムに基づくMLI材料などの従来使用される断熱材料と比較して、ポリイミドエアロゲルは、極めて低い熱伝導率と小さい単位体積質量を呈する。結局、本発明は、断熱性能と質量の有利な比を示す断熱材料(遮断材料)を提供する。さらに、ポリイミドエアロゲルは吸音材として働く。
【0016】
特に、それぞれの多孔率を有するポリイミドエアロゲルを構成することで、本発明に従う断熱材料は、本発明の断熱材料と同じ又は劣る断熱性能を有する従来の断熱材料(従来のMLI材料など)より小さい質量を有するように構成でき、又は同じ又はより大きい質量を有する従来の断熱材料より良好な断熱性能を有するように構成できる。
【0017】
本発明に従う遮断材料は広範囲の適用性を有し、というのもそれが、ポリイミドエアロゲルが古典的な絶縁体(発泡体又はフェルトなど)として作用する気体雰囲気と、真空条件下の両方において効率的に遮断するからである。ゆえに、その様々な実施形態で、本発明に従う遮断材料が、例えば航空宇宙産業、航空機産業、土木工学及び自動車工学などの多種多様な分野で、並びに極低温物理学の分野と機能衣類の製造において利用できる。本発明の方法に従って断熱される本体は、当該分野の1又は複数に関連する構成部品であってもよい。
【0018】
例えば、好ましい実施形態によれば、本発明に従う遮断材料は、航空エンジン、極超音速機関の要素、自動車のエンジン、極低温容器(特に、宇宙船の燃料タンク)などの構成部品を少なくとも部分的に覆い又は包囲するために使用されるように構成される。本発明に従う方法のそれぞれの実施形態では、本体はこのような構成部品である。
【0019】
さらに、本発明に従う遮断材料は、宇宙服用及び/又は他の極限環境で使用される衣類用、例えば消防士の服用又は高山ギヤ用の材料として使用されてもよい。本発明に従う方法のそれぞれの実施形態では、本体は生物、特に人であってもよい。
【0020】
ポリイミドエアロゲルを含有する多数の層状シートに含まれるポリイミドは、イミドモノマーのポリマーであってもよい。多数のこのようなシートを有する実施形態では、それぞれに構成されるポリイミドエアロゲルは等しくてもよく、又はこれらシートの少なくとも2つが異なるポリイミドエアロゲルを含んでもよい。
【0021】
空気通路を作るために、多数の層状シートの少なくとも1つ、特にポリイミドエアロゲルを有する少なくとも1つのシート(1又は複数の少なくとも部分的にコーティングされたポリイミドエアロゲル膜など)又は、-場合によっては-従来のポリイミドフィルムを有する複数のシートは穿孔されてもよい。
【0022】
理解されるように、この明細書で使用される用語「多数の層状シートの少なくとも1つ」及び「1又は複数の可撓性のある、少なくとも部分的にコーティングされたポリイミドエアロゲル膜の少なくとも1つ」は、それぞれの組み合わせの実施形態において、それぞれの特性を有する異なる複数のシート/フィルム(膜)の各々又はそれぞれに記載された様々な特性を有する1つのシート/フィルム(膜)を指す。
【0023】
本発明の好ましい実施形態によれば、遮断材料は可撓性を有する。それは布状の断熱材(ブランケット)として構成されてもよい。したがって、遮断材料は簡単に取り扱え(例えば、折り曲げられ、寄せ集められ及び/又は縫製され)、要素を少なくとも部分的に包囲するためなどに利用できる。
【0024】
特に、遮断材料はMLI材料として構成されてもよい。実施形態によれば、遮断材料は、多くても100、多くても70又は多くても50の層状シートを有する。さらに又はそれに代えて、それは、少なくとも3、少なくとも6、少なくとも12又は少なくとも18枚のシートを有してもよい。
【0025】
本発明に従う遮断材料は、多数の層状シートの少なくとも1つとして、少なくとも部分的に金属化された(従来の)ポリイミド膜を有してもよい。この場合、それにより遮断材料は、ポリイミドエアロゲルを有する1又は複数の少なくとも部分的にコーティングされた可撓性膜と前記少なくとも1つの従来のポリイミド膜の両方を有する。これらの実施形態はそれぞれに意図されるアプリケーションに依存して有利である、と言うのもそれらがポリイミドエアロゲルの有利な特性を示すからである。それは特に小さい厚さを有してもよく及び/又は特に多量の層状シートを含んでもよい。
【0026】
さらに又はそれに代えて、本発明に従う遮断材料は、材料の一方の又は両方の表面の少なくとも一部を構成する最外層として、生地層又はフィルム層である保護カバーを有してもよい。保護カバーはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)及び/又はポリイミドから作られてもよく、及び/又はそれはセラミック繊維又はアラミド繊維を有してもよい。保護カバーは、それぞれのアプリケーションにおいて、微小隕石又は軌道デブリ(MMOD)との衝突による損傷などに対して遮断材料を保護するように構成されてもよい。
【0027】
遮断材料が、ポリイミドを有するこのような1又は複数の保護フィルムを有する場合、この(最外)層は、従来のポリイミド膜を含む遮断材料の唯一の層であってもよく、又は少なくとも1つの更なる従来のポリイミド膜が含まれてもよい。
【0028】
従来のポリイミド膜を有するこのような実施形態では、その厚さは好ましくは少なくとも8μmであり、これはこれら膜がITAR制限を現在受けないからである。
【0029】
別な有利な実施形態によれば、本発明の遮断材料は、どんな(従来の)ポリイミド膜も有しない。ITARはポリイミドエアロゲルをカバーしないので、その実施形態は、伝統的なMLI材料などの材料との、自由に適用可能な有利な選択(代替)を促進する。
【0030】
本発明に従う遮断材料は、多数の層状シートの1又は複数として、少なくとも1つのスペーサーシートを有してもよい。このようなスペーサーシートは、2つの別なシートの各々と隣接し(すなわち、隣であり)、当該別なシートの間に配置され、それは当該2つのシートの熱接触を抑制する。
【0031】
1又は複数のスペーサーシートの少なくとも1つが従来のスペーサーシートであってもよい。それは、ガーゼ及び/又はスクリムクロスなどの生地であってもよく、及び/又はそれは、ガラス繊維、プラスチック繊維、及び/又は天然繊維を含んでもよい。
【0032】
さらに又はそれに代えて、1又は複数のスペーサーシートの少なくとも1つはエアロゲルを有してもよい。それは、前記2つの隣接するシートの1つのコーティング領域に面する少なくとも表面領域においてコーティングされなくてもよく、又はそれは反射コーティングで少なくとも部分的に覆われてもよい。特に、前記少なくとも1つのスペーサーシートは、1又は複数の少なくとも部分的にコーティングされた可撓性のあるポリイミドエアロゲル膜のうちの1つであってもよい。コーティングは、例えばポリイミドエアロゲルの表面における高所及び/又は窪みを維持する凸凹な表面を有する少なくとも1つの領域を有してもよい。このような凸凹な表面は、スペーサーシートとそれぞれの隣接するシートの間の隙間をもたらし、熱接触を抑制し又は少なくとも軽減する。コーティングは、物理蒸着法により適用される金属(例えば、アルミニウム、銀及び/又は金)を有してもよい。(コーティングされた又はコーティングされていない)スペーサーシートは、多数の切り欠きを含む格子(グリッド)として形成されてもよく、その場合、切り欠きの全面積は好ましくは、スペーサーシートの全面積伸長の多くても1/3又は多くても1/2である。
【0033】
このような実施形態は、特に低い面密度(表面積当たりの質量)を促進する。さらに、それら実施形態は特に低い熱伝達係数(HTC)を示す。スペーサーシートに含まれるポリイミドエアロゲルの緩衝効果のため、これら実施形態は、従来のMLI材料よりも微小隕石又は軌道デブリ(MMOD)に対するより良好な保護をもたらす。
【0034】
特に、遮断材料に含まれるどんなスペーサーも、このようなスペーサーシート(ポリイミドエアロゲルを有する)であってもよく、それにより遮断材料はどんな従来のスペーサーも有さず、又は遮断材料は両方のタイプのスペーサー(すなわち、少なくとも1つの従来のスペーサーシートと、ポリイミドエアロゲルを有する少なくとも1つのスペーサーシート)を含んでもよい。例えば、遮断材料は、少なくとも1つの第1シートと少なくとも1つの第2シートを含んでもよく、両方がスペーサーとして作用する。前記少なくとも1つの第1シートは、前記少なくとも1つの第2スペーサーシートよりも放射線が支配する遮断材料の側にもっと位置決めされてもよい。その際、前記少なくとも1つの第1シートは従来のものであってもよいが、前記少なくとも1つの第2シートはスペーサーシート(ポリイミドエアロゲルを有する)であるか、その逆であってもよい。したがって、遮断材料は、そのそれぞれの意図した利用の条件に特に適合されてもよい。
【0035】
本発明の好ましい実施形態によれば、1又は複数の可撓性のある、少なくとも部分的にコーティングされたポリイミドエアロゲル膜の少なくとも1つは、少なくとも8μm、少なくとも15μm、又は少なくとも35μmの平均厚さを有する。さらに又はそれに代えて、多数の層状シートの少なくとも1つは、多くても1mm、多くても0.7mm、多くても0.3mm、多くても75μm又は多くても60μmの平均厚さを有してもよい。用語「1又は複数の可撓性のある、少なくとも部分的にコーティングされたポリイミドエアロゲル膜の少なくとも1つ」に関して上で表現したように、それぞれの実施形態において、上述の範囲の平均厚さを有するシートは、特に、少なくとも1つの少なくとも部分的にコーティングされたエアロゲル膜及び/又は少なくとも1つのスペーサーシートであってもよい。
【0036】
当該範囲の平均厚さを有するとき、ポリイミドエアロゲルを有するシートは非常に低い熱伝導率を示し、特に軽量である。それぞれのアプリケーションに依存して、材料の全厚さがその厚さの前記上限により実現され得る或る最高値を超えない限り、非常に多数の層状シートが有利である。
【0037】
1又は複数の可撓性のある、少なくとも部分的にコーティングされたポリイミドエアロゲル膜の少なくとも1つは、シートの範囲の少なくとも隅々まで本質的に均一な厚さを有してもよい。このようなシートは製造するのが容易であり、更なるシートと組み合わせて遮断材料の均一な厚さをもたらす。
【0038】
さらに又はそれに代えて、1又は複数の可撓性のある、少なくとも部分的にコーティングされたポリイミドエアロゲル膜の少なくとも1つは、異なるそれぞれの(平均)厚さを有する少なくとも2つの範囲を有してもよい。厚さは、遮断材料のそれぞれのアプリケーションに従う、全体として同様に不均一な厚さを有する遮断材料を形成するように変化してもよい。さらに又はそれに代えて、前記少なくとも1つの膜は1又は複数の主範囲と、少なくとも1つの特に応力を加えられた領域では、それぞれの強化された範囲を含んでもよく、前記少なくとも1つの強化された範囲は主範囲よりも大きい(平均)厚さを有する。従って、遮断材料は特に強固である。
【0039】
好ましくは、このような複数の範囲はそれぞれ、少なくとも1cm、少なくとも25cm、少なくとも100cm又は少なくとも400cmの伸長を有する。
【0040】
1又は複数の少なくとも部分的にコーティングされた可撓性のあるポリイミドエアロゲル膜は、それぞれの膜の一部の少なくとも隅々まで本質的に均一な多孔率を有する。このようなシートは製造するのが簡単で、更なるシートと組み合わせて、遮断材料の均一な遮断特性をもたらす。
【0041】
さらに又はそれに代えて、1又は複数の少なくとも部分的にコーティングされた可撓性のあるポリイミドエアロゲル膜の少なくとも1つは、構成されるポリイミドエアロゲルのそれぞれの多孔率によって互いに異なる少なくとも2つの部分/領域を含んでもよい。例えば、多孔率は、遮断材料のそれぞれのアプリケーションに従う、不均一な遮断特性を有する遮断材料を形成するように変化してもよい。
【0042】
好ましくは、このような複数の領域はそれぞれ、少なくとも1cm、少なくとも25cm、少なくとも100cm又は少なくとも400cmの伸長を有する。
【0043】
遮断材料に含まれる、1又は複数の少なくとも部分的にコーティングされた可撓性のあるポリイミドエアロゲル膜は、全て、同じ平均厚さ及び/又は多孔率を本質的に有してもよい。これは、遮断材料の簡単な製作とその汎用性をもたらす。
【0044】
本発明の有利な実施形態によれば、2以上の少なくとも部分的にコーティングされた可撓性のあるポリイミドエアロゲル膜は、それらのそれぞれの平均厚さ及び/又は(それぞれに構成されるポリイミドエアロゲルの)多孔率に関して互いに異なる。
【0045】
例えば、遮断材料は、上述したようなポリイミドエアロゲルを有する少なくとも2つのスペーサーシートを有してもよく、スペーサーシートの第1のシートは、第2のシートとは別な平均厚さ及び/又は多孔率を有する。同様に、遮断材料は(さらに又はそれに代えて)、異なる平均厚さ及び/又は穿孔率を有する2以上の少なくとも部分的にコーティングされた可撓性のあるポリイミドエアロゲル膜を有してもよい。更なる可能性として、遮断材料は、少なくとも1つのスペーサーシートと1又は複数の少なくとも部分的にコーティングされた可撓性のあるポリイミドエアロゲル膜を含んでもよく、スペーサーシートは、前記少なくとも部分的にコーティングされた可撓性のあるシートとは別の平均厚さ及び/又は多孔率を有する。
【0046】
それによって、遮断材料の密度を変えるコンセプトは容易に実施できる。異なる厚さ及び/又は多孔率のシートは、そのそれぞれのアプリケーションに従って遮断材料に配置されてもよい。
【0047】
例えば、遮断材料は、少なくとも1つの第1の少なくとも部分的にコーティングされた可撓性のあるポリイミドエアロゲル膜と少なくとも1つの第2の少なくとも部分的にコーティングされた可撓性のあるポリイミドエアロゲル膜を含んでもよい。前記少なくとも1つの第1の少なくとも部分的にコーティングされた可撓性のあるポリイミドエアロゲル膜は、(アプリケーションにおいて)放射線が支配する遮断材料の側に位置決めされてもよい一方で、前記少なくとも1つの第2の少なくとも部分的にコーティングされた可撓性のあるポリイミドエアロゲル膜は、(アプリケーションにおいて)伝導が支配する側に配置されてもよい。更なる質量最適化を可能にするために、当該少なくとも1つの第1の膜は当該少なくとも1つの第2の膜よりも薄くてもよい。それに代えて、例えば多層遮断材料が、熱力学的負荷の増大が生じる打ち上げ機用の外断熱として機能する場合、少なくとも1つの第1の膜が好ましくは少なくとも1つの第2の膜より厚くてもよい。さらに又はそれに代えて、第1の膜に含まれるポリイミドエアロゲルは第2の膜に含まれるポリイミドエアロゲルより低い又は高い平均多孔率を有してもよい。
【0048】
以下では、本発明の好ましい実施形態を付属の図面に関して説明する。理解されるように、様々な要素及び構成部品が例としてのみ描かれ、選択的であり及び/又は描かれたものとは異なる方法で組み合わされてもよい。関連する要素のための参照番号は包括的に使用され、それぞれの図面のために再び定められない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本発明に従う遮断材料の第1の例示実施形態の一部を示す図である。
図2】本発明に従う遮断材料の第2の例示実施形態の一部を示す図である。
図3】本発明に従う遮断材料の第3の例示実施形態の一部を示す図である。
図4】本発明に従う遮断材料の第4の例示実施形態の一部を示す図である。
図5】スペーサーシートの可能な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1では、本発明の第1の例示実施形態に従う遮断材料10が断面図で描かれている。遮断材料10(及び、同様に、図2,3,4に示される及び以下に記載する遮断材料10’,10’’,10’’’)は、それが包囲する、遮蔽する及び/又は覆うそれぞれの本体を断熱する及び/又は防音するよう機能する。それは、多数の層状シートから成るMLI材料として構成される。
【0051】
シートのうちの最外シートは保護カバー1である。保護カバー1は、PET,PEEK及び/又はポリイミドを有する膜であってもよく、又はそれはセラミック繊維及び/又はガラス繊維、アラミド繊維又はアプリケーションに適する任意の他の生地又はコーティングであってもよい。それは、遮断材料を保護するよう機能し、及び幾つかのアプリケーションのために好ましい熱光学特性をもたらすよう機能する。好ましくは、保護カバーは、アプリケーションにおいて、包囲された、遮蔽された及び/又は覆われた本体の外部環境に面するよう構成される。本発明の方法の好ましい実施形態によれば、遮断材料10は対応的に配置され、カバー生地1は外側に面している。
【0052】
遮断材料10はさらに、交互に積み重ねて配置された2種類の多数の層状シート2及び3を有する。3枚のシート2及び3がそれぞれ描かれており、垂直に配置された点で図内に示されるように、別なシートが含まれてもよい。
【0053】
シート2は、可撓性のあるポリイミドエアロゲル膜である。図示の例では、少なくとも描かれた部分において、それぞれのシート2は均一な厚さを有し、全てのシート2は同じ厚さを有する。この厚さは好ましくは、少なくとも8μm、少なくとも15μm又は少なくとも35μmであってもよく、及び/又は、多くても1mm、多くても0.7mm、多くても0.3mm、多くても75μm又は多くても60μmであってもよい。
【0054】
それらのそれぞれの反対側の表面の両方で、シート2は、金属(特にアルミニウム、銀及び/又は金)などの、熱放射を反射するコーティング2a,2bを有する。コーティングは、例えば、物理蒸着法によって適用されてもよい。
【0055】
遮断材料10にさらに含まれるシート3は、隣接するシート2の熱接触を抑制するために、特にそれぞれのシート3に面するそれぞれの対応するシート2のコーティング2a,2bの物理的接触を抑制するために構成された従来のスペーサーである。
【0056】
従来のMLI材料と比べて、ポリイミドエアロゲル膜を有するシート2が、従来のPET,PEEK、ポリイミド又は他の膜に取って代わる。結局、遮断材料10は、同じ数の層を有する従来のMLI材料より軽量且つ低い熱伝達係数で構成できる。
【0057】
保護カバー1と反対側の表面には、遮断材料10は、保護膜(例えば、PET,PEEK又はポリイミドを有する)である別な保護カバー(不図示)を有してもよい。このような保護カバーは、その表面の一方又は両方を反射コーティングで少なくとも部分的にコーティングされてもよい。
【0058】
図2では、本発明の別な実施形態に従う遮断材料10’が示されており、それは同様に、多数の層状シートから成るMLI材料として構成されている。それは保護カバー1を含み、保護カバーは図1に関して上述したように使用され、その特性を有してもよい。
【0059】
さらに、遮断材料10’はポリイミド膜4である従来の複数のシートを有する。ポリイミド膜は、例えばアルミニウム、銀及び/又は金で及び/又は物理蒸着法の適用によって少なくとも部分的にコーティングされ、好ましくは金属化される。
【0060】
さらには、遮断材料10’は、図1に関して記載したように、可撓性のある、少なくとも部分的にコーティングされたポリイミドエアロゲル膜である少なくとも1つのシート2を有する。
【0061】
図2に示す例示実施形態では、複数のシート5がポリイミドエアロゲルを有し(又はから成り)、それらシートは隣接するシート4の熱接触を抑制するスペーサーとして作用し、特にそれぞれのシート5に面するそれぞれのシート4,2のコーティング4a,4b,2bの物理的接触を抑制する。
【0062】
本ケースでは、スペーサーシート5は(示した部分では)それぞれ均一な厚さを有し、全てのシート5は同じ厚さを有する。この厚さは好ましくは、少なくとも8μm、少なくとも15μm又は少なくとも35μmであってもよく、及び/又は、多くても1mm、多くても0.7mm、多くても0.3mm、多くても75μm又は多くても60μmであってもよい。
【0063】
従来のMLI材料と比較して、遮断材料10’は低めの面密度で構成されてもよい。スペーサーシート5の緩衝効果のために、微小隕石及び軌道デブリ(MMOD)に対するより良好な保護が得られる。さらに、スペーサーシート5の低い熱伝導率のために、それは、同じ数の層状シートを有する伝統的なMLI材料よりも低い熱伝達係数を示す。
【0064】
図1に関して上述したように、再び、保護カバー1と反対側の表面では、遮断材料10’は、別な保護カバー(不図示)を有してもよい。
【0065】
図3では、本発明の遮断材料10’’の第3の実施形態の一部が示されている。(図1に関して上述したように使用され、その特性を有してもよい)保護カバー1に加えて、遮断材料10’’は上述した複数のシート2,5を有し、それらシートは交互に積み重なっている。それぞれのタイプの3枚のシートが描かれ、垂直に配置された点で図中に示されるように、別なシートが含まれてもよい。
【0066】
図4は、本発明の例示実施形態である別な遮断材料10’’’を示す。遮断材料10’’’は、図1に関して上述したように保護カバー1と多数の少なくとも部分的にコーティングされた可撓性のあるポリイミドエアロゲル膜2を有する。
【0067】
保護カバー1と反対側の表面では、遮断材料10’’’は別な保護カバー7を有し、それは描かれたケースでは(例えば、PET,PEEK又はポリイミドの)保護膜である。保護カバー7は、その表面の両方で反射コーティング7a,7bで少なくとも部分的にコーティングされている。
【0068】
遮断材料10’’’はさらに、ポリイミドエアロゲルを有する少なくとも1つのスペーサーシート6と反射コーティング6a,6bを有する。そこで、コーティング6a,6bは凸凹な表面を有し、凸凹な表面はそれらが覆うポリイミドエアロゲルの表面における高所及び/又は窪みを少なくとも部分的に維持するそれらコーティングから生じる。凸凹は、スペーサーシート6とそれぞれの隣接するシート2の間の隙間をもたらし、隙間は熱接触を抑制し又は少なくとも軽減する。
【0069】
コーティング6a,6b,7a,7bはそれぞれ、アルミニウム、銀及び/又は金などの金属を有してもよい。好ましくは、それらは物理蒸着法により塗布されている。
【0070】
図5は、ポリイミドエアロゲルを有する可能なスペーサーシート8の平面図を示す。スペーサーシート8は多数の切り欠きを有し、そのうちの3つが参照番号Cで例示で識別されている。描かれた例示実施形態では、切り欠きは正方形として成形されている。理解されるように、スペーサーシートは、ディスクなどの1又は複数の他の幾何学形状を備えた切り欠きを、さらに又はそれに代えて有してもよい。好ましくは、切り欠きの全面積は、(切り欠きを含む)シート8の全面積伸長の多くても1/3又は多くても1/2である。切り欠きは、隣接するシート間の隙間をもたらし、それによって熱接触の改良された減少をもたらす。
【0071】
スペーサーシート8は、上述したスペーサーシート5及び6のそれぞれとして構成されてもよい。特に、それはコーティングされなくてもよく又は上述した反射コーティングで少なくとも部分的に覆われてもよい。
【0072】
開示されているのは、断熱及び/又は防音のための遮断材料である。遮断材料は、その表面の一方又は両方にて反射コーティングで少なくとも部分的に覆われている1又は複数の可撓性のあるポリイミドエアロゲル膜を含む多数の層状シートを有する。
【0073】
さらに開示されているのは、本体を断熱する及び/又は防音する方法である。当該方法は、本発明の実施形態に従う遮断材料で本体を少なくとも部分的に遮蔽し、覆い及び/又は包囲することを有する。
【符号の説明】
【0074】
1 保護カバー
2 少なくとも部分的にコーティングされた可撓性のあるポリイミドエアロゲル膜
2a,2b シート2のコーティング
3 従来のスペーサー
4 従来のポリイミド膜
4a,4b シート4のコーティング
5 ポリイミドエアロゲルを有するスペーサーシート
6 ポリイミドエアロゲルを有するスペーサーシート
6a,6b シート4のコーティング
7 保護カバー
7a,7b シート7のコーティング
8 スペーサーシート
10,10’,10’’,10’’’ 遮断材料
C スペーサーシート8における複数の切欠
図1
図2
図3
図4
図5