(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】パンツ型吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/51 20060101AFI20231124BHJP
A61F 13/496 20060101ALI20231124BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
A61F13/51
A61F13/496
A61F13/49 410
A61F13/49 312Z
A61F13/49 315Z
A61F13/49 315A
(21)【出願番号】P 2019214701
(22)【出願日】2019-11-27
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 景
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/069279(WO,A1)
【文献】特開2011-062257(JP,A)
【文献】特開2011-130842(JP,A)
【文献】特開昭57-191303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部から前側ウエスト領域と前側胴回り領域とに区分される前側領域、上部から後側ウエスト領域と後側胴回り領域とに区分される後側領域、及びこれらの間に位置する股下領域を有する外装体と、液透過性のトップシート、液不透過性のバックシート、及びこれらの間に配置される吸収体を含む吸収性本体と、を備え
、前記外装体が前記吸収性本体の非肌側に重なるパンツ型吸収性物品であって、
前記前側領域の両側縁部と前記後側領域の両側縁部とをそれぞれ接合し、前記前側領域及び前記後側領域の上部にウエスト開口部、前記股下領域の左右両側に脚開口部をそれぞれ形成するサイドシール部と、
前記前側ウエスト領域及び前記後側ウエスト領域に幅方向に沿って設けられた複数のウエスト領域弾性伸縮部材と、
前記前側胴回り領域及び前記後側胴回り領域に幅方向に沿ってそれぞれ設けられ、前記パンツ型吸収性物品の厚み方向において前記吸収性本体と重複しないように配置された、複数の前側胴回り領域弾性伸縮部材及び複数の後側胴回り領域弾性伸縮部材と、
非肌側不織布、肌側不織布、及びこれらの間に配置された前記ウエスト領域弾性伸縮部材又は前記胴回り領域弾性伸縮部材を含む前記前側領域の外装体と、
前記非肌側不織布、前記肌側不織布、及びこれらの間に配置された前記ウエスト領域弾性伸縮部材又は前記胴回り領域弾性伸縮部材を含み、前記前側領域の外装体とは別体として設けられた前記後側領域の外装体と、
前記股下領域の全域に配置され、全方位に伸縮可能な軟質ポリウレタンフォームを含
むシートである軟質ポリウレタンフォームシートからなり、前記前側領域及び前記後側領域の各外装体に接合される前記股下領域
の外装体と、を備え、
前記脚開口部周縁及び前記股下領域に前記弾性伸縮部材が配置されていない領域を有する、パンツ型吸収性物品。
【請求項2】
前記股下領域
の外装体である
前記軟質ポリウレタンフォームシートの坪量が70g/m
2以上300g/m
2
以下である、請求項1に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項3】
前記股下領域
の外装体である
前記軟質ポリウレタンフォームシートの厚みが1.0mm以上4.0mm以下である、請求項1又は2に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項4】
前記股下領域
の外装体である
前記軟質ポリウレタンフォームシートのMIUが0.3以上1.0以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項5】
前記股下領域
の外装体である
前記軟質ポリウレタンフォームシートのMMDが0.01以上0.03以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項6】
前記股下領域
の外装体である
前記軟質ポリウレタンフォームシートの60mm伸長したときの伸長応力が3.0N以上4.5N以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツ型吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、幼児、成人及び病人の排泄物を吸収するため、パンツタイプの紙おむつ(以下、「パンツ型吸収性物品」とも称する)が使用されている。パンツ型吸収性物品は、ウエスト開口部と一対の脚開口部とを形成するとともに、排泄物を吸収する吸収性本体とその支持部材である外装体を有し、吸収性本体が前後から着用者の股間部を覆っている。そして、脚開口部に着用者の両足を入れ、紙おむつ本体を胴回りまで引っ張り上げて着用する。
【0003】
従来のパンツ型吸収性物品の外装体は、ウエスト開口部、胴回り、股下部に区分され、ウエスト開口部、胴回りには幅方向に伸縮する弾性伸縮部材が配置され、股下部には脚回り近傍に脚回りに沿って弾性伸縮部材が配置されている。各弾性伸縮部材は、それぞれ一方向にのみ伸縮する。しかしながら、排尿する場所である股下部では、身体とパンツ型吸収性物品との間に隙間が生じると、吸収性本体から尿が漏れ易くなる。そのため、吸収性本体には、尿等の体液を吸収した後でも、身体に適切に密着するフィット性が求められる。加えて、股下部での快適な着用感や、脚回りの動き易さ等も求められる。
【0004】
特許文献1には、外装体と、吸収性本体とからなり、外装体にウエスト開口部及び左右一対の脚開口部を形成したパンツ型吸収性物品において、外装体に、側部の右側縁部から股下領域を通って背側部の左側縁部に至る第一の弾性部材と、腹側部の左側縁部から股下領域を通って背側部の右縁部に至り、股下領域で第一の弾性部材と交差する第二の弾性部材と、左右の脚開口部と吸収性本体との間に位置し、両端部が第一及び第二の弾性部材と重なり合う第三の弾性部材と、を配置したパンツ型吸収性物品が開示されている。
【0005】
特許文献2には、前側胴回り部から後側胴回り部に向かう長さ方向に略直交する幅方向に沿って前側胴回り部に複数設けられて、前側胴回り部を伸縮させるための前側胴回り伸縮材と、後側胴回り部の前記幅方向に沿って複数設けられて、後側胴回り部を伸縮させるための後側胴回り伸縮材と、を備え、複数の前側胴回り伸縮材の合計の伸長応力と複数の後側胴回り伸縮材の合計の伸長応力とが略等しくなり、かつ前側胴回り伸縮材の本数が後側胴回り伸縮材の本数よりも多くなるように、前側胴回り伸縮材及び後側胴回り伸縮材を配置した、パンツ型吸収性物品が開示されている。また、特許文献2には、複数の前側胴回り伸縮材の合計の伸長応力と複数の後側胴回り伸縮材の合計の伸長応力とが略等しくなるように、前側胴回り伸縮材及び後側胴回り伸縮材を配置することにより、着用者の背側と腹側とを均等に締め付けることができ、排泄後のパンツ型吸収性物品の重量が増加しても、前側胴回り部又は後側胴回り部の一方がずり落ちることを防止できると記載されている。
【0006】
特許文献3には、透液性のトップシート、不透液性のバックシート、及びこれらの間に配設された吸収体を含む吸収性本体と、バックシートの外面側に結合された外装シートと、を備えるパンツ型吸収性物品であって、該パンツ型吸収性物品は、着用者の背側に位置する背側胴回り部、幅方向両側に脚回り部を有する股下回り部及び着用者の腹側に位置する腹側胴回り部が長手方向に順次一体的に設けられ、背側胴回り部の幅方向の両側部と、腹側胴回り部の幅方向の両側部との接合により形成される、着用者の胴回りに位置する胴回り開口部及び着用者の脚回りに位置する一対の脚回り開口部と、胴回り開口部の縁部全周に亘って配設された胴回り用弾性部材と、幅方向に伸縮可能な複数の背側弾性部材と、幅方向に伸縮可能な複数の腹側弾性部材とを有し、背側胴回り部には長手方向に亘る背側弾性領域、及び腹側胴回り部には長手方向に亘る腹側弾性領域がそれぞれ形成され、背側弾性部材は腹側弾性部材よりも本数が多く、背側弾性部材とそれに最も近接する胴回り用弾性部材との間隔が、腹側弾性部材とそれに最も近接する胴回り用弾性部材との間隔と略等しい位置に背側弾性部材が配設され、背側弾性領域は腹側弾性領域よりも長手方向に幅広に形成され、吸収性本体が、腹側弾性領域と重ならずかつ背側弾性領域と重なる位置に配設されたパンツ型吸収性物品が開示されている。以上において、長手方向及び幅方向は、それぞれ、パンツ型吸収性物品の長手方向及び幅方向である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平09-313531号公報
【文献】特開2012-217553号公報
【文献】特許第4352003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1は、パンツ型吸収性物品の着用の際のずれ落ちの問題を、所定の弾性部材を配置することのみで解決しようとする発明である。したがって、この発明の構成を用いても、吸収性本体の股下域でのフィット性を向上させることは困難であり、また、ずれ落ちについても十分な効果は得られない。更に、胴回り部や脚部の弾性部材の張力が過剰になり、着用者にストレスや違和感を与える可能性がある。
【0009】
特許文献2は、パンツ型吸収性物品の股下領域、特に脚回りに弾性部材が配置され、股下部で交差する特許文献1と同様の構成であることから、特に吸収性本体の股下領域でのフィット性を向上させることはできない。
特許文献3は、吸収性本体の股下領域や脚回りでのフィット性を向上させようとするものではない。
【0010】
本発明の目的は、股下領域全体へのフィット性、及び体液の漏れ防止に優れ、良好な着用感を有するパンツ型吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、股下領域の外装体として、全方位に伸縮性を有する所定の素材を用いることにより、上記課題を解決したパンツ型吸収性物品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、好ましい実施形態として、下記(1)~(6)のパンツ型吸収性物品を提供する。
【0012】
(1)上部から前側ウエスト領域と前側胴回り領域とに区分される前側領域、上部から後側ウエスト領域と後側胴回り領域とに区分される後側領域、及びこれらの間に位置する股下領域を有する外装体と、液透過性のトップシート、液不透過性のバックシート、及びこれらの間に配置される吸収体を含む吸収性本体と、を備えるパンツ型吸収性物品であって、
前記前側領域の両側縁部と前記後側領域の両側縁部とをそれぞれ接合し、前記前側領域及び前記後側領域の上部にウエスト開口部、前記股下領域の左右両側に脚開口部をそれぞれ形成するサイドシール部と、
前記前側ウエスト領域及び前記後側ウエスト領域に幅方向に沿って設けられた複数のウエスト領域弾性伸縮部材と、
前記前側胴回り領域及び前記後側胴回り領域に幅方向に沿ってそれぞれ設けられ、前記パンツ型吸収性物品の厚み方向において前記吸収性本体と重複しないように配置された、複数の前側胴回り領域弾性伸縮部材及び複数の後側胴回り領域弾性伸縮部材と、
非肌側不織布、肌側不織布、及びこれらの間に配置された前記ウエスト領域弾性伸縮部材又は前記胴回り領域弾性伸縮部材を含む前記前側領域の外装体と、
前記非肌側不織布、前記肌側不織布、及びこれらの間に配置された前記ウエスト領域弾性伸縮部材又は前記胴回り領域弾性伸縮部材を含み、前記前側領域の外装体とは別体として設けられた前記後側領域の外装体と、
前記股下領域の全域に配置され、全方位に伸縮可能な軟質ポリウレタンフォームを含み、前記前側領域及び前記後側領域の各外装体に接合される前記股下領域外装体と、を備え、
前記脚開口部周縁及び前記股下領域に前記弾性伸縮部材が配置されていない領域を有する、パンツ型吸収性物品。
本明細書において、全方位に伸縮可能とは、一方向、一方向に対して略垂直な方向、及び一方向に対して45°傾いた方向のいずれの方向にも伸縮可能であり、好ましくは前記3つの方向のいずれの方向にも10mm以上100mm以下の範囲で伸縮可能であり、より好ましくは前記3つの方向のいずれの方向にも20mm以上80mm以下の範囲で伸縮可能であることを意味する。
(2)前記股下領域外装体である軟質ポリウレタンフォームの坪量が70g/m2以上300g/m2以上以下である、上記(1)のパンツ型吸収性物品。
(3)前記股下領域外装体である軟質ポリウレタンフォームの厚みが1.0mm以上4.0mm以下である、上記(1)又は(2)のパンツ型吸収性物品。
(4)前記股下領域外装体である軟質ポリウレタンフォームのMIUが0.3以上1.0以下である、上記(1)~(3)のいずれかのパンツ型吸収性物品。
(5)前記股下領域外装体である軟質ポリウレタンフォームのMMDが0.01以上0.03以下である、上記(1)~(4)のいずれかのパンツ型吸収性物品。
(6)前記股下領域外装体である軟質ポリウレタンフォームの60mm伸長したときの伸長応力が3.0N以上4.5N以下である、上記(1)~(5)のいずれかのパンツ型吸収性物品。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、股下領域全体へのフィット性、及び体液の漏れ防止に優れ、良好な着用感を有するパンツ型吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第一実施形態であるパンツ型吸収性物品の外観構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すパンツ型吸収性物品の構成を模式的に示す展開平面図である。
【
図3】軟質ポリウレタンフォームからなる外装体の引張試験結果を示すグラフである。
【
図4】軟質ポリウレタンフォームからなる外装体、及び市販品の外装体の引張サイクル試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係るパンツ型吸収性物品1について説明する。なお、パンツ型吸収性物品1を着用したときに着用者の腹側となる位置を「前」又は「前側」と称し、着用者の背側となる位置を「後」又は「後側」と称する。パンツ型吸収性物品1を着用したときに着用者の肌側となる面を「内側」とも称する。パンツ型吸収性物品1を着用するときとは、体液の吸収前、吸収時、及び吸収後を問わず、パンツ型吸収性物品1を身体に装着した状態をいう。パンツ型吸収性物品1は、通常衣類の内部で身体に装着するものであるが、少なくとも一部が外部に露出するように身体に装着してもよい。パンツ型吸収性物品1、吸収性本体20及びこれらに備わる各構成部材の長手方向とは、パンツ吸収性物品1を身体に着用したときに着用者の股間部を介して身体の前後に亘る方向である。パンツ型吸収性物品1、吸収性本体20及びこれらに備わる各構成部材の幅方向とは、長手方向に対して直交する方向である。パンツ型吸収性物品1、吸収性本体20及びこれらに備わる各構成部材の厚み方向とは、各構成部材を積層する方向である。また、パンツ型吸収性物品1、吸収性本体20及びこれらに備わる各構成部材の肌側面(肌側表面)とは、パンツ型吸収性物品1を身体に着用したときに着用者の肌に当接する表面及び肌を臨む表面であり、非肌側面(非肌側表面)とは、パンツ型吸収性物品1を身体に着用したときに着用者の衣類に接触する表面又は衣類を臨む表面である。また、体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0016】
<パンツ型吸収性物品>
図1は、第一実施形態であるパンツ型吸収性物品1の外観構成を示す模式斜視図であり、
図2は、
図1に示すパンツ型吸収性物品1の模式展開平面図である。なお、各図は、パンツ型吸収性物品1の吸収性本体20や外装体30等の構成部材の寸法の大小関係を規定するものではなく、各構成部材の寸法は、パンツ型吸収性物品1の用途、使用対象とする着用者の年齢等に応じてそれぞれ広い範囲から適宜選択できる。
【0017】
パンツ型吸収性物品1は、着用者の股間部を前後から覆う前後方向に略帯状の形態を有する吸収性本体20と、吸収性本体20の外側に重なりつつ吸収性本体20の周囲に延びてパンツ型吸収性物品1の外形形状を構成する外装体30と、を備える。そして、
図1及び
図2に示すように、外装体30によりパンツ型吸収性物品1の外形形状が構成され、外装体30は、着用者の腹部に当接する前側領域13、着用者の背部に当接する後側領域15、及び吸収性本体20の一部又は全部が重なるように配置される股下領域14に区分される。
【0018】
弾性伸縮部材を配設する前のパンツ型吸収性物品1の展開時の長手方向の寸法は600mm以上1000mm以下、幅方向の寸法は450mm以上900mm以下であることが好ましい。弾性伸縮部材を配設する前のパンツ型吸収性物品1の展開時の寸法を上記の範囲とすることにより、Sサイズ、Mサイズ、Lサイズ等の各種サイズの成人用のパンツ型吸収性物品を提供することができる。
以下、本実施形態のパンツ型吸収性物品1を構成する吸収性本体20、及び外装体30について詳細に説明する。
【0019】
<吸収性本体>
図2に示すように、吸収性本体20は、液透過性のトップシート24と、液不透過性のバックシート25と、トップシート24及びバックシート25の間に配置される吸収体29とを含む。なお、上記と同様に、各種サイズの成人用のパンツ型吸収性物品を提供することができるようにするために、吸収性本体20の長手方向の寸法は300mm以上500mm以下、幅方向の寸法は100mm以上300mm以下であることが好ましい。
以下、吸収性本体20に含まれる各構成部材について詳細に説明する。
【0020】
(トップシート)
トップシート24は、体液が吸収体29へと移動するような液透過性を備えた基材から形成すればよく、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、サーマルボンド不織布とスパンボンド不織布との積層体である複合不織布等の親水性の不織布材料、感触が柔らかで肌に刺激を与えない不織布以外の材料等から構成される。また、トップシート24には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。エンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート24には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。さらに、強度及び加工性の点から、トップシート24の坪量は、18g/m2以上40g/m2以下であることが好ましい。トップシート24の形状としては特に制限はないが、漏れがないように体液を吸収体29へと誘導するために必要とされる、吸収体29を覆う形状であればよい。
【0021】
(バックシート)
バックシート25は、吸収体29が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成すればよく、通気性又は非通気性の樹脂フィルムから形成される。ここで、使用できる樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。強度及び加工性の点から、バックシート25の坪量は、15g/m2以上40g/m2以下であることが好ましい。また、装着時の蒸れを防止するため、通気性を有する樹脂フィルムをバックシート25として使用することが好ましい。バックシート25に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート25にエンボス加工を施してもよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。例えば樹脂にフィラーを配合してフィルム(又はシート)を成形し、フィラーを除去することにより、通気性の良好な多孔質樹脂フィルムを得ることができる。
【0022】
(吸収体)
吸収性本体20は、トップシート24及びバックシート25の間に配置される吸収体29を有している。吸収体29は、基材としての吸収性繊維と、高吸水性ポリマー(SAP)と、を含有する。吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンやおむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。斯かるフラッフパルプとしては、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。吸収体29の吸収性繊維は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、50g/m2以上800g/m2以下の坪量とすることが好ましい。
【0023】
吸収体29に使用される高吸水性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸塩系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量あたりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩系が好ましく、ポリアクリル酸ナトリウム系がより好ましい。吸収体29のSAP量は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、10g/m2以上500g/m2以下の坪量とすることが好ましく、15質量%以上50質量%以下の含有量とすることが好ましい。
【0024】
吸収体29における吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成した積層マットの形態であることが好ましい。繊維形態に成形したSAPを使用することもできる。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体29の形状の安定化の目的から、吸収体29をキャリアシートに包むことが好ましい。キャリアシートの基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。キャリアシートを複数備える場合は、キャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0025】
吸収体29は、2層以上の吸収体からなるものであってもよく、例えば、上層吸収体と下層吸収体とを積層してなるものであってもよい。この場合、上層吸収体と下層吸収体の長手方向及び幅方向の寸法は、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法より大きくてもよく、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法と同じであってもよく、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法より小さくてもよい。
【0026】
<外装体>
外装体30は、パンツ型吸収性物品1の外形形状を構成する部材であり、吸収性本体20のバックシート25側に積層され、その一部が不織布と弾性伸縮部材との積層体である。
図2に示すように、外装体30は、パンツ型吸収性物品1の上部(長手方向の一端)から前側ウエスト領域13Aと前側胴回り領域13Bとに区分される前側領域13、上部から後側ウエスト領域15Aと後側胴回り領域15Bとに区分される後側領域15、及び前側領域13と後側領域15との間に位置する股下領域14を含む。また、前側領域13、股下領域14、後側領域15は、後述するサイドシール部303を設ける領域(すなわち脚開口部12を形成しない領域)を、前側領域13又は後側領域15とし、サイドシール部303を設けない領域(すなわち、脚開口部12を形成する領域)を股下領域14と区分することもできる。
【0027】
前側領域13及び後側領域15の各外装体は、非肌側の外装不織布シート301と、肌側の内装不織布シート302と、これらの間に配置された弾性伸縮部材(不図示)と、を含む。股下領域14の外装体は股下領域14の全域に配置され、軟質ポリウレタンフォームを含むシートである。股下領域14の外装体は、長手方向の一端が前側領域13の外装体に接合され、長手方向の他端が後側領域15に接合され、前側領域13の外装体と、後側領域15の外装体とは互いに別体として設けられる。
【0028】
前側領域13及び後側領域15の外装体に用いられる外装不織布シート301は、股下領域14の幅方向に延びる中心線を中心として長手方向に略対称な前側領域13と後側領域15とを有し、吸収性本体20も上記中心線を中心として長手方向に略対称に配置される。吸収性本体20が内側となるように外装不織布シート301が上記中心線で二つ折りにされている。サイドシール部303は、前側領域13の幅方向の両側縁部と後側領域15の幅方向の両側縁部とをそれぞれ接合し、伸縮性を有するウエスト開口部11と、一対の脚開口部12とを形成し、パンツ型吸収性物品1を全体として着脱可能なパンツ状に構成する。本実施形態では、こうして形成された一対の脚開口部12の周縁、及び股下領域14には弾性収縮部材は配置されていない。なお、脚開口部12の周縁は、脚開口部12の縁辺及びその近傍領域ともいうことができる。
【0029】
外装不織布シート301の内側には、弾性伸縮部材を介して内装不織布シート302が積層されており、例えば、外装体30の強度を高めている。また、外装体30には、外装不織布シート301、弾性伸縮部材及び内装不織布シート302に加えて、吸収性本体20の周縁を覆う補助シート(不図示)を含んでもよい。補助シートを内装不織布シート302に積層してもよい。外装不織布シート301及び内装不織布シート302には、サーマルボンド不織布、エアースルー不織布、スパンボンド不織布等の不織布、好ましくはエアースルー不織布又はスパンボンド不織布であって、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなる不織布を使用できる。これらの不織布の坪量は、例えば、15m2以上40g/m2以下である。
【0030】
本実施形態では、股下領域14の外装体として、所定の特性を有する軟質ポリウレタンフォームを含むシートを使用し、好ましくは所定の特性を有する軟質ポリウレタンフォームからなるシートを使用する。軟質ポリウレタンフォームを含むシートとしては、軟質ポリウレタンフォームからなる粒子、繊維等を他の合成樹脂中に分散させてシート状に成形したもの、繊維から構成される布(不織布、編物、織物等)に軟質ポリウレタンフォームの粒子や繊維を混在させたもの等が挙げられる。以下、これらを、「軟質ポリウレタンフォームシート」と総称することがある。なお、本実施形態では、股下領域14には、弾性伸縮部材は配置されていない。
【0031】
本実施形態の軟質ポリウレタンフォームシートは、全方位に伸縮可能であり、一方向だけでなく、一方向に対して略垂直な方向、及び一方向に対して45°傾斜した方向にも伸縮する。これは、例えば、
図3に示す引張試験の結果から自明である。
図3によれば、本実施形態の軟質ポリウレタンフォームシートは、一つの方向(タテ)、一つの方向に対して略垂直な方向(ヨコ)、及び一つの方向に対して所定角度傾いた方向(45°)の全ての方向において、好ましくは10mm以上100mm以下、より好ましくは20mm以上80mm以下の範囲で伸縮する。このように、少なくとも3つ以上の複数の異なる方向に伸縮可能なことを、全方位に伸縮可能であるという。なお、引張試験の詳細は後述する。このような軟質ポリウレタンフォームは、例えば、特開2019-127537号公報に記載されている。
【0032】
本実施形態の軟質ポリウレタンフォームとして、シート状に成形したときに、例えば
図3及び
図4に示すような全方位に伸縮可能な特性を有する軟質ポリウレタンフォームを使用できるが、本実施形態の軟質ポリウレタンフォームは、伸縮性以外にも種々の特性を有している。例えば、本実施形態の軟質ポリウレタンフォームは好ましくは連続気泡体である。連続気泡体に代えて独立気泡体を用いると、着用者の股間部へのフィット性が低下する傾向がある。なお、連続気泡体であることは、軟質ポリウレタンフォームを切断し、切断面を顕微鏡観察することにより容易に確認できる。また、見掛け密度は好ましくは0.01g/cm
3以上0.3g/cm
3である。発泡倍率は好ましくは10倍以上60倍以下である。見掛け密度及び/又は発泡倍率を前記範囲内にすることにより、全方位に伸縮可能な材料となり易い。発泡倍率が10倍未満及び/又は見掛け密度が0.3g/cm
3を超えると、伸縮性が不十分になり、股間領域14の全域が着用者の股間部にフィットし難くなる傾向がある。発泡倍率が60倍を超えるか及び/又は見掛け密度が0.01g/cm
3未満では、軟質ポリウレタンフォームの強度が低下し、体液を吸収した後の吸収性本体20のずり落ちが起こりやすくなる傾向がある。また、軟質ポリウレタンフォームは、例えば原料化合物を適宜選択することにより、その骨格表面を疎水性にも親水性にも調整可能であるが、本実施形態では疎水性であることが好ましい。
【0033】
本実施形態の軟質ポリウレタンフォームは、公知の製造方法に従って、例えば、ポリオール、ポリイソシアネート等の原料化合物、発泡剤、整泡剤、触媒等の添加剤等を混合し、得られた混合物を加熱して発泡させることにより得ることができる。また、原料化合物を加熱下に反応させつつ、気体系の発泡剤を注入してもよい。原料化合物の種類、添加剤の種類と添加量、発泡時の加熱温度、発泡時間、発泡時の加圧力といった反応条件を適宜選択することにより、軟質ポリウレタンフォームの発泡倍率、見掛け密度、引張強度、引張破断伸び、伸長応力、MIU、MMDといった各特性を調整できる。
【0034】
軟質ポリウレタンフォームシートは、軟質ポリウレタンフォームの坪量が70g/m2以上300g/m2以下であることが好ましく、100g/m2以上250g/m2以下であることがより好ましい。坪量が70g/m2未満では、体液の漏れが発生し易くなる傾向があり、300g/m2を超えると通気性が低下し、蒸れ等が発生し易くなる傾向がある。また、軟質ポリウレタンフォームシートの厚みは1.0mm以上4.0mm以下であることが好ましく、1.5mm以上3.2mm以下であることがより好ましい。1.0mm未満では該シートが破断し易くなる傾向があり、4.0mmを超えると、該シートが嵩高になり、また、硬くなる傾向があり、パンツ型吸収性物品1の着用感を低下させるおそれがある。厚みはハイトゲージ(株式会社ミツトヨ製)を用いて、無荷重条件下で測定する。
【0035】
本実施形態の軟質ポリウレタンフォームシートは、引張強度、引張破断伸び、伸長応力、MIU、MMDの少なくとも1つを、以下に示す範囲内で有することが好ましい。
【0036】
(引張強度)
10.0N以上15.0N以下であることが好ましい。10.0N未満では、パンツ型吸収性物品1を着用したときの締め付けが弱くなり、ずり落ちてしまう傾向がある。15.0Nを超えると、着用するときに伸びにくくなり、履きづらくなる傾向がある。引張強度、及び後述の引張破断伸びは、JIS P8113、及びJIS P8111(温湿度条件)に基づき、23±1℃、50±2%RHの温湿度条件下で平衡状態に保持した後に、長さ70mm、幅25mmの試料を、未伸長時のテンシロン引張試験機のチャック間距離50mmに設定し、クロスヘッド移動速度300mm/minの条件で250%伸長させ、250%伸長したときの値として求めた。
(引張破断伸び)
200mm以上300mm以下であることが好ましい。引張破断伸びが200mm未満では、着用するときに破れ易くなる傾向があり、300mmを超えると、履きにくくなり、かつ通気性が低下して蒸れ易くなる傾向がある。
【0037】
(60mm伸長したときの伸長応力)
3.0N以上4.5N以下であることが好ましく、3.5N以上4.2N以下であることがより好ましい。伸長応力が3.0N未満では、パンツ型吸収性物品1を着用したときの締め付けが弱くなり、ずり落ちてしまう傾向がある。伸長応力が4.5Nを超えると、着用するときに伸びにくくなり、履きづらくなる傾向がある。この伸長応力は、伸長長さを250%から220%に変更する以外は、前述の引張強度及び引張破断伸びの測定方法と同様にして測定した。そして、60mm(220%)伸長させたあとに、元の状態に戻るまでの、1サイクルのSS曲線(横軸は伸びmm、縦軸は荷重N)を作成する。無伸長状態の試料を60mm伸長させた後に、無伸長状態の寸法のチャック間距離50mmまで戻した時点の、SS曲線上の数値を伸長応力とする。
図4には、本実施形態の軟質ポリウレタンフォームシートの1サイクルのSS曲線とともに、比較のために、パンツ型吸収性物品の、不織布と糸状弾性伸縮部材と不織布との積層体からなる胴回り領域の外装体から70mm×25mmの試料(糸状弾性伸縮部材の伸縮方向に長い)を切り出して用い、1サイクルのSS曲線を示した。
図4によれば、本実施形態の軟質ポリウレタンフォームシートの方が、不織布と糸状弾性伸縮部材と不織布との積層体に比べて、伸縮性に富むことが明らかである。
【0038】
(MIU)
0.3以上1.0以下であることが好ましく、0.4以上0.6以下であることがより好ましい。MIUが0.3未満では、着用するときに滑り易くなり、また、ずれ落ちる傾向がある。MIUが1.0を超えると、滑りにくく、履き心地が悪くなる傾向がある。平均摩擦係数MIUは、数値が高いほど、すべりにくいことを示す。摩擦係数MIU及び平均摩擦係数の平均偏差MMDは、摩擦感テスターKES-SE(カトーテック(株)製)を用い、試料を平滑な金属平面上に置き、試料上の幅0.5cm、長さ2cmの領域に対して、速度0.1cm/秒の一定速度で接触子を水平に移動させながら測定される。接触子には0.5mmのピアノワイヤを10本並べたものを使用し、接触子に加える荷重は、50gfとする。
(MMD)
0.01以上0.03以下であることが好ましい。MMDが0.01未満では、平滑すぎてずり落ち易くなる傾向があり、0.03を超えると表面がざらついて、着用感が悪くなる傾向がある。平均摩擦係数の平均偏差MMDは、数値が高いほど、滑らかさが低く、ざらつきが大きいことを示す。
【0039】
本実施形態の軟質ポリウレタンシートの一例、及び
図4に示す試験で用いた外装体(不織布と糸状弾性伸縮部材と不織布との積層体)の、MIU、及びMMDを表1に示す。表1から、本実施形態の軟質ポリウレタンシートは滑り難く、かつざらつきが比較的小さく、実用上支障のない素材であることがわかる。
【0040】
【0041】
(前側胴回り領域、及び後側胴回り領域)
本実施形態では、前述したように、前側領域13は、上部から前側ウエスト領域13Aと前側胴回り領域13Bに区分され、後側領域15は、上部から後側ウエスト領域15Aと後側胴回り領域15Bに区分される。前側胴回り領域13B、及び後側胴回り領域15Bは、本実施形態のパンツ型吸収性物品1を着用したときに、腸骨付近に触れる領域である。前側ウエスト領域13A、及び後側ウエスト領域15Aは、それぞれ前側胴回り領域13B、及び後側胴回り領域15Bよりも上部方向の領域である。
【0042】
前側ウエスト領域13A及び後側ウエスト領域15Aは、それぞれ、複数のウエスト領域弾性伸縮部材311が幅方向に沿って配された領域である。前側ウエスト領域13A、及び後側ウエスト領域15Aは、より具体的には、例えば、ウエスト開口部11を形成する辺(すなわち、
図2において長手方向両端部に位置する辺)から、股下領域14の方向に向かって20~60mm程度までの領域である。前側胴回り領域13Bは、前側領域13内において、前側ウエスト領域13Aを除く領域をいい、後側胴回り領域15Bは、後側領域15内において、後側ウエスト領域15Aを除く領域をいう。ウエスト領域弾性伸縮部材311の本数は特に限定されないが、側ウエスト領域13A及び後側ウエスト領域15Aともに、好ましくは4本以上12本以下である。
【0043】
前側ウエスト領域13Aと後側ウエスト領域15Aには、幅方向に沿って複数のウエスト領域弾性伸縮部材311が設けられるものの、股下領域14及び一対の脚開口部12周縁には弾性伸縮部材は設けられていない。また、本実施形態では、前側領域13及び後側領域15の外装体としては、従来と同様に、2つの不織布の間に弾性伸縮部材を配置した積層体が用いられているが、股下領域14の外装体としては従来とは異なり、軟質ポリウレタンフォームシートが用いられ、この軟質ポリウレタンフォームシートは長手方向の一端及び他端が前側領域13及び後側領域15の各外装体と接合されている。このような構成を採ることで、本実施形態では、股下領域14及び一対の脚開口部12周縁に弾性伸縮部材が配されていないにもかかわらず、軟質ポリウレタンフォームシートの自在の伸政縮力により、股下領域14が適度に締め付けられつつ、吸収性本体20による体液吸収の前後を問わず、着用者の股間部にぴったりフィットする。その結果、着用者の股間部とパンツ型吸収性物品1との間に隙間が発生せず、体液の漏れが非常に生じにくくなる。また、本実施形態のパンツ型吸収性物品1は、股下領域14の外装体である軟質ポリウレタンフォームシートが伸縮性や柔軟性に富むことから、着用者の股間部に対するフィット性だけでなく、着用感にも優れる。さらに、股下領域14及び一対の脚開口部12周縁に弾性伸縮部材は設けられていないことにより、着用者の股間部を締め付けることがなく、脚回りの可動域が広がって、着用者が自在に脚を動かすことができ、着用感が顕著に向上する。
【0044】
さらに、前側胴回り領域13Bには、パンツ型吸収性物品1の厚み方向において吸収性本体20と重複しない位置に、複数の前側胴回り領域弾性伸縮部材312が幅方向に沿って配置されている。また、後側胴回り領域15Bには、パンツ型吸収性物品1の厚み方向において吸収性本体20と重複しない位置に、複数の後側胴回り領域弾性伸縮部材313が、幅方向に沿って配置されている。これにより、着用者の腰回り(着用者の腸骨領域に相当する位置)におけるパンツ型吸収性物品1のフィット性が付与される。なお、吸収性本体20と、前側胴回り領域弾性伸縮部材312又は後側胴回り領域弾性伸縮部材313とが、パンツ型吸収性物品1の厚み方向において重複すると、その領域では吸収性本体20が収縮し変形してしまうため、吸収性が低下し漏れが生じやすくなる。本実施形態では、主に、前側胴回り領域13B及び後側胴回り領域15Bの態様を工夫することにより、パンツ型吸収性物品1の、下腹部の圧迫感を緩和し、後側(背側)からのずれ落ち防止性を向上させることができる。
【0045】
本実施形態では、パンツ型吸収性物品1を、円周800mmの円筒の外側に、円筒の底面がウエスト開口部11から深さ150mmの位置と一致するように装着させた際の、前側胴回り領域13Bのサイドシール部303間の円弧の寸法が、後側胴回り領域15Bのサイドシール部303間の円弧の寸法よりも、40mm以上大きくなるように調整してもよい。これにより、着用時の下腹部の圧迫感を十分に抑制することができ、特に、下腹部が突出した高齢者が着用した場合に、下腹部の圧迫感を効果的に軽減することができる。なお、上記の条件で試験した場合に、前側胴回り領域13Bのサイドシール部303間の円弧の寸法が、後側胴回り領域15Bのサイドシール部303間の円弧の寸法よりも、40mm以上150mm以下であることが好ましい。当該数値が150mmを超えると、着用時に前側からずれ落ちやすくなる。さらに、上記の数値範囲は55mm以上100mm以下であることがより好ましい。
【0046】
本実施形態では、前側胴回り領域13B、及び後側胴回り領域15Bに関し、次の関係を持たせてもよい。後側胴回り領域15Bを、伸長前の後側胴回り領域15Bの幅方向の寸法の2.0倍まで幅方向に伸長させた後、伸長前の後側胴回り領域15Bの幅方向の寸法の1.5倍まで戻した時点での、後側胴回り領域15Bの幅方向の伸長応力を応力Xとする。前側胴回り領域13Bを、伸長前の前側胴回り領域13Bの幅方向の寸法の2.0倍まで幅方向に伸長させた後、伸長前の前側胴回り領域13Bの幅方向の寸法の1.5倍まで戻した時点での、前側胴回り領域13Bの幅方向の伸長応力を応力Yとする。このとき、応力Xは応力Yに対して、好ましくは1.3倍以上、より好ましくは1.3倍以上2.5倍以下、さらに好ましくは1.5倍以上2.0倍以下である。
【0047】
また、パンツ型吸収性物品1を、円周800mmの円筒の外側に、円筒の底面がウエスト開口部11から深さ150mmの位置と一致するように装着させた際の、後側胴回り領域15Bの着圧が前側胴回り領域13Bの着圧に対して好ましくは1.2倍以上、より好ましくは1.2倍以上2.0倍以下、さらに好ましくは1.3倍以上1.7倍以下である。この範囲とすることにより、下腹部が突出した体型である高齢者が前傾姿勢になった際の、着用者の前後の腰回り(着用者の腸骨領域に相当する位置)の着圧差が小さくなるため、下腹部の圧迫感を抑えつつ、前傾姿勢になった際の後側(背側)からのずれ落ちを抑制することができる。
【0048】
上記の着圧の測定には、エイエムアイ・テクノ社製のエアパック式接触圧測定器を用いる。円周800mmの円周の測定位置にエアパックを貼り付け、パンツ型吸収性物品1を、当該円筒の外側に、円筒の底面がウエスト開口部11から深さ150mmの位置と一致するように装着させ、装着前後のエアパックの圧力差を読み取り着圧とし、後側胴回り領域15Bと前側胴回り領域13Bそれぞれの幅方向中心線上の着圧を読み取り、各領域の着圧として採用する。
【0049】
後側胴回り領域弾性伸縮部材313の本数は、前側胴回り領域弾性伸縮部材312の本数に対して、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは1.5倍以上3.0倍以下、さらに好ましくは1.7倍以上2.5倍以下である。このように調整することにより、下腹部の圧迫感を抑えつつ、前傾姿勢になった際の後側(背側)からのずれ落ちをより効果的に抑制することができる。後側胴回り領域弾性伸縮部材313の本数は8本以上20本以下であることが好ましい。
【0050】
後側胴回り領域13Bの伸長率は、前側胴回り領域15Bの伸長率に対して、好ましくは1.3倍以上、より好ましくは1.3倍以上2.0倍以下、さらに好ましくは1.3倍以上1.5倍以下である。このように調整することで、下腹部の圧迫感を抑えつつ、前傾姿勢になった際の後側からのずれ落ちをより効果的に抑制することができる。伸張率(%)は、静置状態の後側胴回り領域又は前側胴回り領域それぞれの長さに対する、それぞれの最大伸張時の長さ(%)を示す。また、当該数値が大きくなりすぎると、パンツ型吸収性物品1の製造工程において、前側領域13の両側縁部と後側領域15の両側縁部を、それぞれサイドシール部303を介して接合する際の効率の低下が抑制される。
【0051】
1本の後側胴回り領域弾性伸縮部材313を、伸長前のその寸法の3.0倍まで伸長させ、伸長前のその寸法の2.0倍まで戻した時点での、1本の後側胴回り領域弾性伸縮部材313の伸縮応力を応力Aとする。1本の前側胴回り領域弾性伸縮部材312を、伸長前のその寸法の3.0倍まで伸長させ、伸長前のその寸法の2.0倍まで戻した時点での、1本の前側胴回り領域弾性伸縮部材312の伸縮応力を応力Bとする。応力Aは応力Bに対して、1.2倍以上であることが好ましい。このように調整することにより、下腹部の圧迫感を抑えつつ、前傾姿勢になった際の後側からのずれ落ちをより効果的に抑制することができる。このような性質を有する弾性伸縮部材312、313を用いることにより、上記した前側胴回り領域13Bと後側胴回り領域15Bとの伸縮応力及び着圧の関係を調整しやすくなる。
【0052】
1本の後側胴回り領域弾性伸縮部材313両端部を、テンシロン引張試験機のチャックにそれぞれ取り付け、1本の後側胴回り領域弾性伸縮部材313両端部がチャックに挟まれた測定サンプルを、クロスヘッド移動速度300mm/minの条件で、伸長を開始させ、伸長前の後側胴回り領域の寸法の3.0倍まで伸長させたあとに、元の状態に戻すまでの、SS曲線を作成し、伸長前の後側胴回り領域弾性伸縮部材313の寸法の3.0倍まで伸長させた後に、伸長前の寸法の2.0倍まで戻した時点における、SS曲線上の数値を読み取り、伸長応力とする。1本の前側胴回り領域弾性伸縮部材312についても同様に測定する。
【0053】
上記した各弾性伸縮部材311、312、313は、外装不織布シート301及び内装不織布シート302に接合されている。なお、内装不織布シート302と各弾性伸縮部材311、312、313とは、各弾性伸縮部材にのみ介在するホットメルト接着剤を介して互いに接着されていることが好ましい。
弾性伸縮部材としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等の糸状、紐状、平型形状のものを適宜使用することができ、その太さは、300dtex以上1500dtex以下であることが好ましい。
【0054】
[パンツ型吸収性物品の製造方法]
パンツ型吸収性物品1の製造方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができ、例えば、吸収体29をトップシート24とバックシート25との間に挟持し、トップシート24とバックシート25を接合して吸収性本体20を作製する工程と、前側ウエスト領域13A、前側胴回り領域13B、後側ウエスト領域15A、後側胴回り領域15Bにおいて、外装不織布シート301及び内装不織布シート302に、上記した各弾性伸縮部材311、312、313を配置し、外装不織布シート301及び内装不織布シート302に接合してそれぞれ前側領域13及び後側領域15の各外装体を形成する工程と、前側領域13及び後側領域15の各外装体を股下領域14の外装体(軟質ポリウレタンフォームシート)を介して長手方向に接合する工程と、外装体30の身体側に吸収性本体20を配設する工程と、前側領域13の両側縁部と後側領域15の両側縁部を、それぞれサイドシール部303を介して接合する工程と、をこの順で実施する製造方法により、本実施形態のパンツ型吸収性物品1を得ることができる。
【0055】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0056】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0057】
まず、フラッフパルプ及びSAPを混合して、吸収体を準備し、吸収体をトップシート(サーマルボンド不織布)とバックシート(通気性ポリエチレンフィルム)との間に挟持し、トップシートとバックシートの全周に亘ってホットメルト接着剤を用いて固定し、吸収性本体を作製した。
【0058】
前側ウエスト領域、及び後側ウエスト領域には、各々スパンボンド不織布である外装不織布シートと内装不織布シートとの間に糸状合成ゴム(弾性伸縮部材、太さ1240detx)を幅方向に沿って6本(6mm間隔)ずつ配置し、また、前側胴回り領域、及び後側胴回り領域には、各々スパンボンド不織布である外装不織布シートと内装不織布シートとの間に糸状合成ゴム(弾性伸縮部材、太さ620detx)を幅方向に沿って14本(7mm間隔)ずつ配置し、外装不織布シートと内装不織布シートとを接合し、前側領域及び後側領域の外装体を形成した。次いで、股下領域の外装体としての所定寸法の軟質ポリウレタンフォームシートを介して前側領域及び後側領域の外装体を長手方向に接合し、パンツ型吸収性物品の外装体を作製した。その後、外装体の身体側に吸収性本体を配設し、前側領域及び後側領域の両側縁部を、サイドシール部を介して接続し、各弾性伸縮部材を配設する前のパンツ型吸収性物品の展開時の長手方向の寸法を780mm、幅方向の寸法を560mm(成人用のMサイズに相当)になるように調整し、パンツ型吸収性物品を作製した。
【0059】
本実施例では、見掛け密度0.06g/cm
3で、厚み2.26mm、坪量138.8g/m
2、引張強度12.5N、引張破断伸び245.4mm、60mm伸長したときの伸長応力4.1N、MIUが0.524、及びMMDが0.021であり、
図3及び
図4に示す伸縮挙動を示す、発泡ポリウレタンフォームからなるシートを用いた。また、該シートを切断し、切断面を顕微鏡観察したところ、該シートが連続気泡体であることが確認された。
【0060】
得られたパンツ型吸収性物品は、特に股下領域の外装体として伸縮性に富む発泡ポリウレタンフォームシートを用いることにより、着用者の股間部全体に良好にフィット(密着)し、該股間部との間に隙間を生じさせないことから、体液の漏れ防止にも有効であった。また、股下領域の外装体が伸縮性に富むことから、良好な着用感が得られ、着用していても全く違和感のない履き心地であった。
【符号の説明】
【0061】
1 パンツ型吸収性物品
11 ウエスト開口部
12 脚開口部
13 前側領域
13A 前側ウエスト領域
13B 前側胴回り領域
14 股下領域
15 後側領域
15A 後側ウエスト領域
15B 後側胴回り領域
20 吸収性本体
24 トップシート
25 バックシート
29 吸収体
30 外装体
301 外装不織布シート
302 内装不織布シート
303 サイドシール部
311 ウエスト領域弾性伸縮部材
312 前側胴回り領域弾性伸縮部材
313 後側胴回り領域弾性伸縮部材
314 脚回り弾性伸縮部材