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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】真空式温水機
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/36 20220101AFI20231124BHJP
   F24H 4/02 20220101ALI20231124BHJP
   F25B 30/02 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
F24H1/36
F24H4/02 E
F25B30/02 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019237449
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021105489
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】505229472
【氏名又は名称】株式会社日本サーモエナー
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【弁理士】
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】穂積 健一
(72)【発明者】
【氏名】山口 剛志
(72)【発明者】
【氏名】太田 裕
(72)【発明者】
【氏名】三浦 智郎
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-174056(JP,A)
【文献】特開昭59-180226(JP,A)
【文献】特開2015-206484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00-15/493
F25B 30/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が大気圧以下に保持された密閉状の缶体と、缶体内の下部に形成されて熱媒液を貯留する熱媒液槽と、缶体内の上部に形成された減圧蒸気室と、減圧蒸気室に配置されて減圧蒸気室内に発生した蒸気を水との熱交換により凝縮して液化させる温水熱交換器と、缶体内の熱媒液中に配置されて熱媒液を加熱蒸発させる加熱手段とを備えた真空式温水機であって、
前記加熱手段は、主加熱器と、前記主加熱器より出力が大きい補助用加熱装置とを備え、
媒液を前記主加熱器の周囲で流動させる流動装置を備え、
前記流動装置は、前記主加熱器の近傍と熱媒液槽内との間に設けた、循環ポンプを備える熱媒液路であることを特徴とする、真空式温水機。
【請求項2】
前記主加熱器は熱媒液槽内の液面近傍であって前記補助用加熱装置の上方に配置され、前記流動装置は前記主加熱器の近傍と熱媒液槽内の底部近傍との間で熱媒液を移動させる、請求項1に記載の真空式温水機。
【請求項3】
前記主加熱器前記補助加熱装置の下方であって熱媒液槽内の底部近傍に配置され、前記流動装置は前記主加熱器の近傍と熱媒液槽内の液面近傍との間で熱媒液を移動させる、請求項1に記載の真空式温水機。
【請求項4】
前記減圧蒸気室内において前記温水熱交換器の表面で凝縮した熱媒液を受けるとともに、熱媒液を熱媒液槽に排出する排出部を備える受液槽を更に備え、
前記主加熱器は前記受液槽内の熱媒液中に配置され、前記流動装置は前記主加熱器の近傍と熱媒液槽内の底部近傍との間で熱媒液を移動させる、請求項1に記載の真空式温水機。
【請求項5】
前記主加熱器は、前記缶体内の圧力下で熱媒液が沸騰する温度よりも高い温度の流体が内部を流通する配管を備えている、請求項1に記載の真空式温水機。
【請求項6】
前記高温の流体はヒートポンプの冷媒であり、前記主加熱器はヒートポンプの冷媒を冷却するための凝縮器である、請求項5に記載の真空式温水機。
【請求項7】
前記補助用加熱装置は、燃焼式バーナを備える、請求項に記載の真空式温水機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部が大気圧以下に保持された密閉状の缶体と、缶体内の下部に形成された熱媒液を貯留する熱媒液槽と、缶体内の上部に形成された減圧蒸気室と、減圧蒸気室に配置されて減圧蒸気室内に発生した蒸気を水との熱交換により凝縮して液化させる温水熱交換器と、缶体内の熱媒液中に配置されて熱媒液を加熱蒸発させる加熱手段とを備え、温水発生装置として用いられる真空式温水機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温水発生装置として用いられる真空式温水機としては、例えば、図6に示す構造のものが知られている(特許文献1参照、以下、従来技術1という。)。
【0003】
即ち、前記真空式温水機は、図6に示す如く、缶体51、バーナ52、燃焼室53、減圧蒸気室54、熱媒水55、温水熱交換器56、水管57、抽気ポンプ(図示省略)等を備えており、缶体51内を抽気ポンプにより大気圧以下に減圧して真空に近い状態とし、この状態でバーナ52により熱媒水55を加熱沸騰させて減圧蒸気室54内にそのときの熱媒水55と同じ温度の蒸気を発生させ、その蒸気が温水熱交換器56の表面で凝縮することで温水熱交換器56内の給水を加熱し、温水を作るようにしたものである。
この真空式温水機は、缶体51内が減圧されているため、温水熱交換器から多量の温水を取り出す高負荷運転時においても、要求される温度の温水を素早く負荷側へ供給できるメリットがある。
【0004】
しかし、従来技術1のように燃焼式バーナにより熱媒水を加熱している真空式温水機においては、熱効率が80%~95%程度までとなる問題点があり、さらに、缶体容量や使用燃料に応じたバーナの選定が必要となるため、多種類のバーナを用意しておく必要があるという問題点もある。
【0005】
上記の熱効率を高めるため、燃焼排ガス中に含まれる水蒸気の潜熱を回収する熱回収装置を付設することが提案されている(特許文献2参照、以下、従来技術2という。)。しかし従来技術2では、熱回収装置を別個に設けるため装置全体が大型化するうえ、燃焼排ガスが熱交換により低温となるため白煙が生じたり、燃焼排ガス中の水蒸気が凝縮するため発生する凝縮液の中和処理装置や腐食対策が必要になる問題点がある。
【0006】
また、熱効率を高めるため、ヒートポンプ給湯器などの高温水と補助用の燃焼式バーナとを用いる真空式温水機の発明がある(特許文献3参照、以下、従来技術3という。)。この従来技術3は前記高温水を主熱源としており、燃焼式バーナを補助的に使用しているため、缶体効率が高く、年間エネルギー消費量とランニングコストの低減及びCOの削減を図ることができる利点がある。しかし従来技術3では、熱媒液槽を燃焼式バーナのための熱媒液槽と、高温水用の熱媒液槽との二つの槽に区画していることから、装置が大型化する問題がある。さらに、前記温水熱交換器を低温側と高温側とに分け、低温側温水熱交換器の下方位置の高温水用熱媒液槽に温水熱交換器で凝縮した熱媒液を導く構造となっており、温水熱交換器を二つに分割するため装置が複雑化、大型化する問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-337002号公報
【文献】特開2012-102906号公報
【文献】特許6359321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、これらの問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、装置の複雑化と大型化を抑制しながら、熱効率が高く、年間エネルギー消費量とランニングコストの低減及びCOの削減等を図れるようにした真空式温水機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前記課題を解決するために、次のように構成したものである。
即ち本発明に係る真空式温水機は、内部が大気圧以下に保持された密閉状の缶体と、缶体内の下部に形成されて熱媒液を貯留する熱媒液槽と、缶体内の上部に形成された減圧蒸気室と、減圧蒸気室に配置されて減圧蒸気室内に発生した蒸気を水との熱交換により凝縮して液化させる温水熱交換器と、缶体内の熱媒液を加熱蒸発させる加熱手段とを備えた真空式温水機であって、前記熱媒液槽内の熱媒液を前記加熱手段の周囲で流動させる流動装置を備えることを特徴とする。
【0010】
前記流動装置は、熱媒液を前記加熱手段の周囲で流動させることから、加熱手段の伝熱面上で熱媒液が移動し、熱媒液が効率よく加熱される。しかも、加熱手段で加熱された熱媒液は流動装置により熱媒液槽内を流動するので、熱媒液槽全体の熱媒液が加熱されることとなり、熱媒液への蓄熱量が多くなる。
【0011】
前記加熱手段により加熱された周囲の熱媒液は蒸発し、熱媒液蒸気となる。この熱媒液蒸気は前記温水熱交換器の表面で、温水熱交換器に供給される水との熱交換により冷却されて凝縮し、液滴となって前記熱媒液槽に落下し、加熱手段により再び加熱される。
【0012】
前記流動装置は、例えば熱媒液槽内に配置された撹拌機等であってもよいが、前記加熱手段の近傍と熱媒液槽内との間に設けた、循環ポンプを備える熱媒液路であると、簡単な構造であり、熱媒液槽を大型化することがなく、真空式温水機をコンパクトに構成できて好ましい。
【0013】
前記加熱手段は、缶体内に配置されて熱媒液を加熱蒸発させることができればよく、特定の装置や配置に制限されない。一方、前記流動装置は、加熱手段の配置に応じて熱媒液を流動させると好ましい。例えば、前記加熱手段が熱媒液槽内の液面近傍または前記減圧蒸気室内に配置された主加熱器を備えている場合は、前記流動装置が前記主加熱器の近傍と熱媒液槽内の底部近傍との間で熱媒液を移動させると好ましい。この場合、熱媒液槽の底部の熱媒液は低温であるので、加熱手段の周囲に低温の熱媒液が供給されることとなり、加熱手段の伝熱面との温度差が大きくなるため、熱媒液が効率よく加熱される。なお、前記主加熱器が減圧蒸気室内に配置される場合とは、例えば減圧蒸気室内に設けられた受液槽内に主加熱器が配置される場合をいう。
【0014】
また、前記加熱手段が熱媒液槽内の底部近傍に配置された主加熱器を備えている場合は、前記流動装置が前記主加熱器の近傍と熱媒液槽内の液面近傍との間で熱媒液を移動させると好ましい。この場合、主加熱器は熱媒液槽の底部近傍に配置されるので、周囲の熱媒液は低温となっており、伝熱面上で低温の熱媒液が移動するため、主加熱器により周囲の熱媒液が効率よく加熱される。しかも、加熱により上昇する熱媒液が、流動装置による流動と相俟って良好に熱媒液槽内を上方へ移動するため、熱媒液槽全体の熱媒液が良好に加熱され、熱媒液への蓄熱量が多くなる。
【0015】
前記主加熱器は、前記缶体内に配置されて熱媒液を加熱する装置であればよく、特定の加熱装置に限定されない。例えば、主加熱器は電気ヒータなどであっても良い。しかし前記主加熱器は、前記缶体内の圧力下で熱媒液が沸騰する温度よりも高い温度の流体が内部を流通する配管を備えていると、熱媒液と効率よく熱交換できて好ましい。
【0016】
特に、前記高温の流体がヒートポンプの冷媒であり、前記主加熱器が、ヒートポンプの冷媒を冷却するための冷媒熱交換器、すなわち凝縮器であると、例えば凝縮器を用いた温水設備などを別途必要とせず、簡単でコンパクトな構成にできるうえ、ヒートポンプで発生する熱量が直接的に利用されるので、熱媒液が効率よく加熱されて好ましい。
【0017】
また前記流体としては、燃焼式バーナから排出される排ガスなどの高温ガスであってもよいが、ヒートポンプの冷媒のほか、高温水が好ましく用いられる。なお、前記高温水とは、具体的には例えば、ヒートポンプ給湯機により得られた高温水、コージェネレーションシステムのエンジン冷却水、太陽熱温水器により得られた高温水、温泉水、その他の高温水などをいう。
【0018】
真空式温水機から多量の温水が取り出されるなど、温水熱交換器での負荷が大きくなると、温水熱交換器で冷却され凝縮して滴下する熱媒液が増加し、熱媒液槽の熱媒液温度が低下する。そこで、前記加熱手段は、前記主加熱器に加えて、主加熱器より出力が大きい補助用加熱装置を備えると好ましい。なお、前記補助用加熱装置の出力が主加熱器よりも大きいとは、補助用加熱装置が主加熱器よりも、多量の熱媒液を速やかに加熱できる高い加熱能力を備えていることをいう。
【0019】
この場合、温水熱交換器での負荷が大きくなり、熱媒液槽の熱媒液温度が設定温度以下になると、前記補助用加熱装置が駆動される。補助用加熱装置はその出力が主加熱器よりも大きいため、熱媒液槽内の熱媒液が急速に加熱され蒸発する。この結果、多量に発生した熱媒液蒸気により前記温水熱交換器内を流通する水が速やかに加熱され、真空式温水機から多量の温水が取り出される。一方、温水熱交換器での負荷が低下すると、温水熱交換器の表面から滴下する凝縮熱媒液が少なくなり、熱媒液槽の熱媒液温度が上昇する。そして、熱媒液温度が設定温度を超えると、前記補助用加熱装置の駆動が停止される。即ち、出力の大きい前記補助用加熱装置は、温水負荷が高いときや、真空式温水機の起動時に熱媒液を早急に昇温させたいときなど、多量の熱媒液を急速に加熱するときにのみ駆動されるので、全体として缶体効率の向上、年間エネルギー消費量とランニングコストの低減及びCOの削減を図ることができる。
【0020】
前記補助用加熱装置は、前記主加熱器よりも出力が大きければよく、例えば電気ヒータやエンジン排ガスなどを用いる装置であっても良い。しかし、補助用加熱装置が燃焼式バーナを備えると、火力が強く、多量の熱媒液を速やかに加熱できるので好ましい。なお、燃焼式バーナを備える補助用加熱装置とは、燃焼式バーナのほか、火炉、排ガスが周囲を通過する水管群、煙管路など備える装置をいい、これらのいずれかあるいは複数が、熱媒液槽内の熱媒液中に配置される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の真空式温水機は、上記のように構成され作用するので、次の効果を奏する。
(1)熱媒液槽内の熱媒液を加熱手段の周囲で流動させる流動装置を備えることから、加熱手段の伝熱面上で熱媒液が移動し、これにより、加熱手段の周囲の熱媒液を効率よく加熱することができる。この結果、真空式温水機の熱効率を高くでき、年間エネルギー消費量とランニングコストの低減及びCOの削減等を図ることができる。
(2)流動装置を設けることにより、加熱手段が周囲の熱媒液を効率よく加熱できるので、加熱手段を過剰に大型化する必要がなく、真空式温水機の大型化、複雑化を抑制できる。
(3)加熱手段で加熱された熱媒液は流動装置により熱媒液槽内を流動するので、熱媒液槽全体の熱媒液を加熱することができ、熱媒液への蓄熱量を多くできる。これにより、温水熱交換器から多量の温水を供給する場合も、速やかに対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る真空式温水機を示す、真空式温水機の一部を省略した縦断正面図である。
図2】本発明の他の実施形態に係る真空式温水機を示す、真空式温水機の一部を省略した縦断正面図である。
図3】本発明の更に他の実施形態に係る真空式温水機を示す、真空式温水機の一部を省略した縦断正面図である。
図4】本発明の実施形態の変形例1に係る真空式温水機を示す、真空式温水機の一部を省略した縦断側面図である。
図5】本発明の実施形態の変形例2に係る真空式温水機を示す、真空式温水機の一部を省略した縦断側面図である。
図6】従来の真空式温水機の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る真空式温水機を示し、当該真空式温水機1は、内部が大気圧以下に保持された密閉状の缶体2と、缶体2内の下部に形成され、熱媒液3(例えば、水)を貯留する熱媒液槽4と、缶体2内の上部に形成され抽気ポンプ(図示省略)により減圧された減圧蒸気室5と、減圧蒸気室5に配置され、減圧蒸気室5内に発生した蒸気を水との熱交換により凝縮して液化させる温水熱交換器6と、缶体2内の熱媒液3を加熱蒸発させる加熱手段7とを備えており、さらに、前記熱媒液槽4内の熱媒液3を前記加熱手段7の周囲で流動させる流動装置25を備える。
【0024】
前記温水熱交換器6は、減圧蒸気室5に水平姿勢で配置されており、缶体2の側壁面に水の入口6aとその上方の温水の出口6bとが形成され、水入口6aが折返部6cを経て温水出口6bに接続してある。
【0025】
前記加熱手段7は、前記熱媒液槽4内の液面近傍に配置された主加熱器8と、主加熱器8の鉛直方向下方に配置されている補助用加熱装置9とを備えている。補助用加熱装置9の出力は、主加熱器8の出力よりも大きく、多量の熱媒液3を速やかに加熱できる高い加熱能力を備えている。なお、前記補助用加熱装置9の高い加熱能力とは、適用される缶体2の容量などによっても異なるので、具体的に数値を限定することはできないが、例えば、補助用加熱装置9の交換熱量が主加熱器8の交換熱量の10倍程度以上である場合などをいう。
【0026】
具体的に、前記主加熱器8には、ヒートポンプ11の冷媒を冷却するための冷媒熱交換器である凝縮器が用いてある。即ち、前記主加熱器8の冷媒入口8bにはヒートポンプ11の圧縮機12からの導入配管13が接続してあり、主加熱器8の冷媒出口8cにヒートポンプ11の膨張弁14への導出配管15が接続してある。
【0027】
前記ヒートポンプ11の冷媒は、圧縮機12により、前記缶体2内の圧力下で熱媒液3が沸騰する温度(以下、熱媒液3の飽和温度という)よりも高い温度に加熱されたのち、導入配管13を経て前記主加熱器8の冷媒入口8bに送られる。この高い温度の冷媒は主加熱器8の配管内を流通し、周囲の熱媒液3と熱交換されて冷却される。そしてこの冷却された冷媒は、冷媒出口8cから導出配管15を経てヒートポンプ11に戻され、膨張弁14と蒸発器16と圧縮機12を順に経て加熱され、再び主加熱器8の冷媒入口8bへ送られる。
【0028】
一方、前記補助用加熱装置9は、熱源である燃焼式バーナ21と、燃焼室である火炉22と、水管23群と、排気筒24とを備えている。火炉22と水管23群は前記熱媒液槽4内の熱媒液3に水没されており、火炉22が前記主加熱器8の鉛直方向下方に配置されている。火炉22の周面や水管23の内面が熱媒液3と接しており、熱媒液3への伝熱面9aとなっている。
【0029】
前記一方の加熱手段7である主加熱器8が配置された熱媒液槽4の液面近傍と、熱媒液槽4内の底部近傍との間には、循環ポンプ26を備える熱媒液路27が設けてあり、この循環ポンプ26を備えた熱媒液路27が前記流動装置25を構成している。前記熱媒液槽4には液温検出器19が付設してあり、前記補助用加熱装置9が停止している状態で、液温検出器19により検出される熱媒液3の温度が設定温度以下になると、前記循環ポンプ26が制御装置20により駆動される。この循環ポンプ26の駆動により、熱媒液槽4の底部近傍の熱媒液3が前記主加熱器8の近傍へ移動される。
【0030】
前記熱媒液槽4内の熱媒液3は、前記主加熱器8により加熱される。即ち、主加熱器8の伝熱面8aは、前記ヒートポンプ11の加熱された冷媒により熱媒液3の飽和温度よりも高い温度に加熱されるので、周囲の熱媒液3は加熱されて熱媒液蒸気となる。このとき、前記冷媒により加熱される伝熱面8aの温度は、前記飽和温度よりも高いものの、熱媒液3の飽和温度との差である過熱度は低く、前記伝熱面8aでは、沸騰気泡がごく少数みられる程度の部分的な核沸騰状態となっている。しかし、ヒートポンプ11の冷媒を用いた主加熱器8の加熱は、ヒートポンプ11で発生する熱量が直接的に利用されるので、主加熱器8の周囲の熱媒液3は効率よく加熱されて蒸発する。
【0031】
前記主加熱器8の周囲には、前記循環ポンプ26の駆動により、熱媒液槽4の底部の熱媒液3が熱媒液路27を経て熱媒液槽4の液面に供給される。この熱媒液3の供給により、主加熱器8の周囲の熱媒液3が流動することから、伝熱面8aで熱媒液3が効率よく加熱される。また、熱媒液槽4の底部の熱媒液3が主加熱器8の周囲へ移動することから、主加熱器8で加熱された熱媒液3が、熱媒液槽4の底部へ向かうこととなり、これにより、熱媒液槽4全体の熱媒液3が加熱されて蓄熱量が多くなる。
【0032】
なお、この実施形態では、前記循環ポンプ26が熱媒液槽4の底部近傍の熱媒液3を熱媒液槽4の液面近傍に案内しているので、より低温の熱媒液3が主加熱器8の周囲に供給され、効率よく加熱されるので好ましい。しかし本発明では、循環ポンプ26が熱媒液槽4の液面近傍の熱媒液3を熱媒液槽4の底部近傍に案内するものであってもよく、この場合も、主加熱器8の周囲に熱媒液3の流動を生じるうえ、熱媒液槽4内の熱媒液3全体を加熱できる点で、この実施形態と同様の効果を奏することができる。また、この実施形態では、循環ポンプ26を備えた熱媒液路27で流動装置25を構成したが、本発明に用いる流動装置25は、熱媒液槽4内の熱媒液3を主加熱器8の近傍と熱媒液槽4の底部との間で流動させる装置であればよく、例えば熱媒液槽内に配置された撹拌機等であってもよい。
【0033】
前記主加熱器8の加熱により発生した熱媒液蒸気は、前記減圧蒸気室5内の前記温水熱交換器6の表面で、温水熱交換器6に供給される水との熱交換により冷却されて凝縮し、液滴となって前記熱媒液槽4に落下する。一方、温水熱交換器6に供給された水は、前記熱媒液蒸気との熱交換により加熱され、これにより、所望の温度の温水が温水熱交換器6から取り出される。
【0034】
前記真空式温水機1の温水熱交換器6から多量の温水が取り出されるなど、温水熱交換器6での負荷が主加熱器8の加熱能力よりも大きくなる、いわゆる高負荷運転になると、温水熱交換器6で冷却され凝縮して滴下する熱媒液3が増加し、熱媒液槽4内の熱媒液3の温度が低下する。そこで、熱媒液槽4に付設された液温検出器19により検出される熱媒液3の温度が設定温度以下になると、前記補助用加熱装置9が制御装置20により駆動される。なお、高負荷運転時であるか否かは、熱媒液3の温度による判断に代えて、例えば温水熱交換器6から取り出さる湯量に基づいて負荷の大きさを判断し、補助用加熱装置9の駆動を制御してもよい。
【0035】
燃焼式バーナ21が制御装置20により駆動されると、燃焼式バーナ21の強い火力により、補助用加熱装置9の伝熱面9aが加熱される。しかも、熱媒液槽4の熱媒液3は、前記主加熱器8と流動装置25の作用により蓄熱量が多い。この結果、火炉22の周囲の熱媒液3と水管23内を流通する熱媒液3が速やかに加熱され、増加した温水負荷に対して不足する主加熱器8の加熱能力が良好に補われる。
【0036】
前記補助用加熱装置9の燃焼式バーナ21が駆動されると、伝熱面9aは前記飽和温度よりもかなり高い温度に加熱されるため、周囲の熱媒液3は激しく沸騰する発達した核沸騰状態となる。そして、伝熱面9a上で形成された大きな気泡は、次々と離脱して上昇するので、補助用加熱装置9の上方に熱媒液3の上昇流が生じる。補助用加熱装置9の上方には前記主加熱器8が配置してあるので、前記上昇流が生じると、前記主加熱器8では伝熱面8aの周囲の熱媒液3が流動し、主加熱器8の熱伝達率が著しく向上する。そして、この主加熱器8と補助用加熱装置9により効率よく加熱され蒸発した熱媒液3の蒸気により、前記温水熱交換器6内を流通する水が加熱され、温水出口6bから多量の温水が取り出される。
【0037】
なお、前記補助用加熱装置9の加熱によりその伝熱面9aから熱媒液3蒸気の気泡が多数発生し、上方の液面が揺動するおそれがある。しかし、補助用加熱装置9の上方に配置された主加熱器8は、熱媒液槽4の液面近傍に位置しているので、この主加熱器8があたかもバッフルのように作用して液面の遊動が抑制されている。この結果、補助用加熱装置9が駆動されている間においても、沸騰した熱媒液3の飛沫が上方の温水熱交換器6の表面に降りかかることが軽減され、熱媒液蒸気の凝縮熱が温水熱交換器6の表面に効率よく伝達される。
【0038】
温水熱交換器6での負荷が低下して主加熱器8の加熱能力よりも小さくなると、温水熱交換器6の表面から滴下する凝縮熱媒液3が少なくなり、熱媒液槽4内の熱媒液3の温度が上昇する。そして、熱媒液3の温度が設定温度を超えたことを前記液温検出器19が検出すると、制御装置20は前記補助用加熱装置9の駆動を停止する。この結果、燃焼式バーナ21を用いる補助用加熱装置9は、温水負荷が高いときや、真空式温水機1の起動時に熱媒液3を早急に昇温させたいときなど、多量の熱媒液3を急速に加熱するときにのみ駆動されるので、缶体効率の向上、年間エネルギー消費量とランニングコストの低減及びCOの削減を図ることができる。
【0039】
前記加熱手段7は、熱媒液槽4の熱媒液3を効率よく加熱できるうえ、熱媒液3の蒸気は温水熱交換器6の表面で効率よく熱交換される。しかも、主加熱器8と補助用加熱装置9は、熱媒液槽4中に上下に配置されており、前記流動装置25は循環ポンプ26を備える熱媒液路27という簡単な構成であるので、真空式温水機1の設置面積を拡げたり熱媒液槽4を複数に分割したりする必要がない。この結果、真空式温水機1は、大型化、複雑化することが抑制され、コンパクトに形成されている。
【0040】
図2は本発明の他の実施形態に係る真空式温水機を示し、当該真空式温水機1の加熱手段7は、前記熱媒液槽4内の底部近傍に配置された主加熱器8と、主加熱器8の上方に配置されている補助用加熱装置9とを備えている。そして、主加熱器8が配置された熱媒液槽4の液面近傍と、熱媒液槽4内の底部近傍との間に、循環ポンプ26を備える熱媒液路27が流動装置25として設けてある。その他の構成は図1に示す真空式温水機と同様構造に構成され、同様の作用効果を奏することができるため、図1に示す真空式温水機と同じ部位・部材には同一の参照番号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0041】
前記主加熱器8が配置されている、補助用加熱装置9よりも下方の、熱媒液槽4の底部は、熱媒液3の温度が低いため、主加熱器8の伝熱面8aと周囲の熱媒液3との温度差は大きく、この主加熱器8により周囲の熱媒液3が効率よく加熱される。しかも、前記循環ポンプ26が駆動されると、熱媒液槽4の液面近傍の熱媒液3が前記主加熱器8の近傍へ供給され、この熱媒液3の供給により、主加熱器8の周囲の熱媒液3が流動することから、伝熱面8aで熱媒液3が一層、効率よく加熱される。
【0042】
しかも、前記循環ポンプ26の駆動により、熱媒液槽4の液面近傍の熱媒液3が前記主加熱器8の近傍へ供給されることから、熱媒液槽4の底部で主加熱器8により加熱された熱媒液3が、流動装置25による流動により熱媒液槽4内を上方へ移動する。この結果、熱媒液槽4全体の熱媒液3が良好に加熱され、熱媒液3への蓄熱量が多くなる。
【0043】
なお、この実施形態において、前記循環ポンプ26は熱媒液槽4の液面近傍の熱媒液3を熱媒液槽4の底部近傍に案内している。しかし本発明では、主加熱器8が熱媒液槽4の底部に配置されているこの実施形態においても、循環ポンプ26は熱媒液槽4の底部近傍の熱媒液3を熱媒液槽4の液面近傍に案内するものであってもよく、この場合も、主加熱器8の周囲に熱媒液3の流動を生じるうえ、熱媒液槽4内の熱媒液3全体を加熱できる点で、この実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0044】
図3は本発明の更に他の実施形態に係る真空式温水機を示し、当該真空式温水機1の前記減圧蒸気室5内には、前記温水熱交換器6の下方に受液槽10が付設してあり、加熱手段7は、この受液槽10内に配置された主加熱器8と、前記熱媒液槽4内に配置された補助用加熱装置9とを備えている。そして、主加熱器8が配置された受液槽10の近傍と、熱媒液槽4内の底部近傍との間に、循環ポンプ26を備える熱媒液路27が流動装置25として設けてある。その他の構成は図1に示す真空式温水機と同様構造に構成され、同様の作用効果を奏することができるため、図1に示す真空式温水機と同じ部位・部材には同一の参照番号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0045】
前記受液槽10は前記温水熱交換器6の真下で温水熱交換器6の下方全体を覆う状態に、温水熱交換器6に沿って略水平姿勢に配置してある。この受液槽10は、前記水入口6aの下方位置にある基端10a側が缶体2の内面に固定されており、基端10aとは反対側の端部に排出部10bが形成してある。
【0046】
受液槽10内の熱媒液3は、主加熱器8により加熱されて蒸発し、温水熱交換器6の表面で、温水熱交換器6内を流通する水と熱交換され、温水熱交換器6の表面で凝縮し滴下して、下方の受液槽10に受け止められる。そして、温水熱交換器6の負荷が主加熱器8の加熱能力よりも高くなると、前記補助用加熱装置9が駆動され、減圧蒸気室5内の熱媒液蒸気が増加し、温水熱交換器6の表面から滴下する熱媒液3が増加する。これにより、受液槽10内の増加した熱媒液3が排出部10bから下方の熱媒液槽4へ排出される。
【0047】
一方、真空式温水機1の待機時など負荷が低いときにおいては、補助用加熱装置9が停止されており、熱媒液槽4内の熱媒液3の温度が低下する。また、温水熱交換器6への負荷が低いので、温水熱交換器6との熱交換により冷却されて滴下する凝縮熱媒液3が少なくなり、受液槽10内に貯留される熱媒液3が少なくなる。そこで、受液槽10内の熱媒液3が設定液量を下回るとともに、熱媒液槽4内の熱媒液3が設定温度以下になったときに、前記循環ポンプ26が駆動され、熱媒液槽4内の底部近傍の熱媒液3が熱媒液路27を介して受液槽10に供給される。
【0048】
流動装置25により受液槽10内へ供給される熱媒液3は低温であるうえ、この熱媒液3が主加熱器8伝熱面を移動するので、主加熱器8により、周囲の熱媒液3が効率よく加熱される。そして、この加熱された熱媒液3は、受液槽10の排出部10bから下方の熱媒液槽4へ排出されるので、熱媒液槽4全体の熱媒液3が良好に加熱され、熱媒液3への蓄熱量が多くなる。
【0049】
本発明は、上記の各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
【0050】
例えば、上記の各実施形態においては、主加熱器8としてヒートポンプの凝縮器を用いた。しかし本発明で用いる主加熱器は、熱媒液槽内に配置されて熱媒液を加熱する装置であればよく、特定の加熱装置に限定されない。例えば、内部を高温水や高温ガスなどの流体が流通する配管や、電気ヒータなどを用いることも可能である。主加熱器に用いることができる高温水とは、例えば、ヒートポンプ給湯機により得られた高温水、コージェネレーションシステムのエンジン冷却水、太陽熱温水器により得られた高温水、温泉水、その他の高温水などを挙げることができる。
【0051】
また、上記の各実施形態においては、補助用加熱装置9として燃焼式バーナ21と、熱媒液槽4内の熱媒液3に水没されている火炉22と水管23群を備える装置を用いた。しかし本発明で用いる補助用加熱装置は、多量の熱媒液を速やかに加熱できる装置であればよく、例えば電気ヒータやエンジン排ガスなどであっても良い。
【0052】
また、上記の図1に示す実施形態と図2に示す別の実施形態では、主加熱器8を補助用加熱装置9の火炉22の上方または下方に配置した。しかし、本発明の主加熱器は、熱媒液槽内に配置する場合に液面近傍または底部近傍に配置してあればよい。ただし、主加熱器が補助用加熱装置の一部または全部の鉛直方向上方または鉛直方向下方に配置されていると、真空式温水機全体の設置面積が一層小形に済み、好ましい。例えば、図4に示す変形例1のように、補助用加熱装置9の水管23群の鉛直方向下方に主加熱器8を配置してもよく、あるいは、図5に示す変形例2のように、補助用加熱装置9の火炉22と煙管路28の鉛直方向下方に主加熱器8を配置したものであってもよい。
【0053】
また、上記の各実施形態では、加熱手段が主加熱器と補助用加熱装置とを備える場合について説明した。しかし本発明は、加熱手段が主加熱器のみを備える場合であってもよく、あるいは主加熱器と補助用加熱装置に加えて、さらに第3の加熱装置を備える場合であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…真空式温水機
2…缶体
3…熱媒液
4…熱媒液槽
5…減圧蒸気室
6…温水熱交換器
7…加熱手段
8…主加熱器
9…補助用加熱装置
11…ヒートポンプ
21…燃焼式バーナ
25…流動装置
26…循環ポンプ
27…熱媒液路
図1
図2
図3
図4
図5
図6