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特許7390204経路推定装置、経路推定方法、及びプログラム
<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】経路推定装置、経路推定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/30 20060101AFI20231124BHJP
   G01P 13/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
G01C21/30
G01P13/00 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020019751
(22)【出願日】2020-02-07
(65)【公開番号】P2021124456
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大和
(72)【発明者】
【氏名】山中 隆幸
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-286877(JP,A)
【文献】特開2017-126179(JP,A)
【文献】特開2013-088888(JP,A)
【文献】国際公開第2014/162797(WO,A1)
【文献】特開2005-222325(JP,A)
【文献】特開2001-195693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GNSSの測位情報に基づいて車両の現在位置を特定する位置特定部と、
前記現在位置が所定のノードエリアに属した際に、前記車両の走行状態を取得する走行状態取得部と、
複数のノードエリアそれぞれに接続されるリンクの情報を含む道路網データを予め記憶するデータ格納部と、
前記走行状態及び前記道路網データに基づいて、前記車両の前記ノードエリアからの移動先となる流出リンクを推定する流出リンク推定部と、
前記現在位置が所定のノードエリアに属した際に、前記車両の前記ノードエリアへの移動元となる流入リンクを特定する流入リンク特定部
を備え、
前記データ格納部は、前記車両が過去に属したノードエリアに関する情報を含む移動履歴を更に記憶し、
前記流入リンク特定部は、前記現在位置及び前記移動履歴に基づいて前記流入リンクを特定し、
前記流出リンク推定部は、前記ノードエリアに接続するリンクのうち前記流入リンクを除外して、前記流出リンクを推定する、
経路推定装置。
【請求項2】
前記走行状態取得部は、前記測位情報に基づいて前記車両が進行する方位を特定し、前記走行状態として取得する、
請求項に記載の経路推定装置。
【請求項3】
前記走行状態取得部は、前記測位情報に基づいて前記車両の走行速度を特定し、前記走行状態として取得する、
請求項1又は2に記載の経路推定装置。
【請求項4】
前記走行状態取得部は、前記測位情報に基づいて前記車両の前記ノードエリア内における走行位置を特定し、前記走行状態として取得する、
請求項1からの何れか一項に記載の経路推定装置。
【請求項5】
前記走行状態取得部は、前記車両のウィンカーの点灯状態を示す情報に基づく前記走行状態を取得する、
請求項1からの何れか一項に記載の経路推定装置。
【請求項6】
車両に搭載された経路推定装置が、GNSSの測位情報に基づいて前記車両の現在位置を特定するステップと、
前記経路推定装置が、前記現在位置が所定のノードエリアに属した際に、前記車両の走行状態を取得するステップと、
前記経路推定装置が、前記走行状態と、複数のノードエリアそれぞれに接続されるリンクの情報を含む道路網データとに基づいて、前記車両の前記ノードエリアからの移動先となる流出リンクを推定するステップと、
前記経路推定装置が、前記現在位置が所定のノードエリアに属した際に、前記車両の前記ノードエリアへの移動元となる流入リンクを特定するステップと、
前記経路推定装置が、前記車両が過去に属したノードエリアに関する情報を含む移動履歴を記憶するステップと、
を有し、
前記流入リンクを特定するステップは、前記現在位置及び前記移動履歴に基づいて前記流入リンクを特定し、
前記流出リンクを推定するステップは、前記ノードエリアに接続するリンクのうち前記流入リンクを除外して、前記流出リンクを推定する、
経路推定方法。
【請求項7】
GNSSの測位情報に基づいて車両の現在位置を特定するステップと、
前記現在位置が所定のノードエリアに属した際に、前記車両の走行状態を取得するステップと、
前記走行状態と、複数のノードエリアそれぞれに接続されるリンクの情報を含む道路網データとに基づいて、前記車両の前記ノードエリアからの移動先となる流出リンクを推定するステップと、
前記現在位置が所定のノードエリアに属した際に、前記車両の前記ノードエリアへの移動元となる流入リンクを特定するステップと、
前記車両が過去に属したノードエリアに関する情報を含む移動履歴を記憶するステップと、
を経路推定装置のコンピュータに実行させ
前記流入リンクを特定するステップは、前記現在位置及び前記移動履歴に基づいて前記流入リンクを特定し、
前記流出リンクを推定するステップは、前記ノードエリアに接続するリンクのうち前記流入リンクを除外して、前記流出リンクを推定する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、経路推定装置、経路推定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、GNSS(Global Navigation Satellite System)を用いて車両が走行した経路(リンク)を特定するシステムが考えられている。また、車両が現在存在しているリンクと、前回存在していたリンクとに基づいて、車両の進行方向を特定する技術が考えられている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-122816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、車両が交差点(ノード)に接近したときに、当該ノードからどのリンクに向かって移動するかを、前もって予測することができない。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑みてなされたものであって、車両の将来の移動先となるリンクを推定することができる経路推定装置、経路推定方法、及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、経路推定装置は、GNSSの測位情報に基づいて車両の現在位置を特定する位置特定部と、前記現在位置が所定のノードエリアに属した際に、前記車両の走行状態を取得する走行状態取得部と、複数のノードエリアそれぞれに接続されるリンクの情報を含む道路網データが予め記憶されたデータ格納部と、前記走行状態及び前記道路網データに基づいて、前記車両の前記ノードエリアからの移動先となる流出リンクを推定する流出リンク推定部と、を備える。
【0007】
本開示の一態様によれば、経路推定方法は、GNSSの測位情報に基づいて車両の現在位置を特定するステップと、前記現在位置が所定のノードエリアに属した際に、前記車両の走行状態を取得するステップと、前記走行状態と、複数のノードエリアそれぞれに接続されるリンクの情報を含む道路網データとに基づいて、前記車両の前記ノードエリアからの移動先となる流出リンクを推定するステップと、を有する。
【0008】
本開示の一態様によれば、プログラムは、経路推定装置のコンピュータに、GNSSの測位情報に基づいて車両の現在位置を特定するステップと、前記現在位置が所定のノードエリアに属した際に、前記車両の走行状態を取得するステップと、前記走行状態と、複数のノードエリアそれぞれに接続されるリンクの情報を含む道路網データとに基づいて、前記車両の前記ノードエリアからの移動先となる流出リンクを推定するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る経路推定装置、経路推定方法、及びプログラムによれば、車両の将来の移動先となるリンクを推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態に係る経路推定システムの機能構成を示す図である。
図2】本開示の一実施形態に係る道路網の一例を示す図である。
図3】本開示の一実施形態に係るノードエリアの一例を示す図である。
図4】本開示の一実施形態に係る経路推定装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図5】本開示の一実施形態に係る道路網データの一例を示す図である。
図6】本開示の一実施形態に係る経路推定装置の機能を説明するための図である。
図7】本開示の一実施形態に係る経路推定装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図8】本開示の変形例に係る経路推定システムの機能構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態に係る経路推定システム1について、図を参照しながら説明する。
【0012】
(経路推定装置の機能構成)
図1は、本開示の一実施形態に係る経路推定システムの機能構成を示す図である。
図1に示すように、経路推定システム1は、車両に搭載された車載器10と、センタサーバ20と、経路推定装置30とを備えている。
【0013】
車載器10は、GNSSの衛星から信号を受信して、自機が搭載された車両の位置を特定するための衛星航法情報(測位情報)を取得する。車載器10が取得した測位情報は、ネットワークNWを通じてセンタサーバ20へ逐次、送信される。
【0014】
センタサーバ20は、車両の走行位置に応じた各種処理を実行する処理部21を有している。例えば、処理部21は、車両が有料道路上を走行している場合、当該車両の走行経路に応じた通行料金を課金する。また、処理部21は、車両が走行する道路に関する交通情報等を、ネットワークNWを通じて車載器10に配信する。この場合、車載器10は、センタサーバ20から受信した情報を出力するディスプレイ、スピーカ等を有していてもよい。
【0015】
経路推定装置30は、車載器10から受信した測位情報に基づいて、当該車載器10が搭載された車両の移動経路を推定する。
【0016】
図2は、本開示の一実施形態に係る道路網の一例を示す図である。
図2に示すように、本実施形態に係る道路網は、複数のノードN1、N2、N3、…(以下、総称して「ノードN」とも記載する。)と、複数のリンクL1、L2、L3、…(以下、総称して「リンクL」とも記載する。)とにより構成される。ノードNは、例えば交差点等である。リンクLは、2つのノードNを接続する道路である。また、図2の両矢印は、リンクLが上り車線及び下り車線を有していることを示している。
【0017】
図3は、本開示の一実施形態に係るノードエリアの一例を示す図である。
例えば、図3に示すように、ノードN4は交差点であり、ノードエリアRはノードN4を囲む領域である。また、ノードエリアRには、ノードN4に接続される複数のリンクL4、L5、L7、L8の一部が含まれる。なお、ノードエリアRの大きさは、ノードNに接続されるリンクLの大きさ(道路幅、車線数等)に応じて設定される。
【0018】
本実施形態に係る経路推定装置30は、車両Aが所定のノードエリアR内に移動したときに、当該車両AがノードエリアRに移動前に走行していたリンクL(流入リンク)を特定するとともに、当該車両AがノードエリアRからの移動先となるリンクL(流出リンク)を推定する。
【0019】
経路推定装置30は、車両Aの移動先を推定するための機能部として、図1に示すように、位置特定部301と、流入リンク特定部302と、走行状態取得部303と、流出リンク推定部304と、データ格納部305と、を備えている。
【0020】
位置特定部301は、車載器10から受信した測位情報に基づいて、車両Aの現在位置を特定する。
【0021】
流入リンク特定部302は、車両Aの現在位置、及び車両Aの移動履歴に基づいて、当該車両AのノードエリアRへの移動元となる流入リンクを特定する。車両Aの移動履歴は、車両Aが過去に属した(通過した)ノードエリア(ノードN)、リンクLの情報等が含まれる。
【0022】
走行状態取得部303は、車両Aの位置が所定のノードエリアRに属した際に、車両Aの走行状態を取得する。
【0023】
流出リンク推定部304は、車両Aの走行状態及び道路網データに基づいて、車両Aの走行状態に合致するノードエリアRの流出リンクを推定する。道路網データは、複数のノードエリアR(ノードN)それぞれに接続されるリンクの情報を含む情報であって、予めデータ格納部305に記憶されている。道路網データには、例えば、複数のノードNそれぞれに関する、ノードNの位置情報、ノードエリアRの範囲を示す情報、ノードNに接続されているリンクLの識別情報、リンク方位等の情報が含まれている。
【0024】
データ格納部305には、車載器10から受信した車両Aの測位情報、車両Aの移動履歴等が蓄積される。また、データ格納部305には、道路網データが予め記憶されている。
【0025】
(経路推定装置の処理フロー)
図4は、本開示の一実施形態に係る経路推定装置の処理の一例を示すフローチャートである。
以下、図4を参照しながら、経路推定装置30が車両Aの移動経路を推定する処理の流れについて説明する。
【0026】
まず、位置特定部301は、車載器10から受信した車両Aの測位情報に基づいて、車両Aの現在位置を特定する(ステップS1)。
【0027】
次に、流入リンク特定部302は、車両Aの現在位置が所定のノードエリアRに属しているか否かを判断する(ステップS2)。
【0028】
図5は、本開示の一実施形態に係る道路網データの一例を示す図である。
例えば、図5に示すように、データ格納部305には、複数のノードNそれぞれについて、ノードエリアRの範囲を示す情報、及び、接続されているリンクLに関する情報を含む道路網データTが予め記憶されている。また、リンクLに関する情報には、リンクLの識別情報(リンクID)と、リンクの方位角等が含まれている。流入リンク特定部302は、この道路網データTを参照し、車両Aの現在位置を示す緯度及び経度が、何れかのノードエリアRの範囲に含まれているか否かを判断する。
【0029】
流入リンク特定部302は、車両Aの現在位置がノードエリアRに属していない場合(ステップS2:NO)、ステップS1に戻る。
【0030】
一方、流入リンク特定部302は、車両Aの現在位置が、例えば図3のようにノードN4のノードエリアRに属している場合(ステップS2:YES)、車両Aの流入リンクを特定する(ステップS3)。具体的には、流入リンク特定部302は、車両Aが前回通過したノードNに基づいて、流入リンクを特定する。例えば、データ格納部305には、車両Aの移動履歴として、前回通過したノードがノードN2(図2)であることが記憶されていたとする。この場合、流入リンク特定部302は、ノードN2とノードN4とを接続するリンクL4を、流入リンクとして特定する。
【0031】
次に、走行状態取得部303は、車両Aの測位情報に基づいて、車両Aの走行状態を取得する(ステップS4)。
【0032】
図6は、本開示の一実施形態に係る経路推定装置の機能を説明するための図である。
具体的には、走行状態取得部303は、今回取得した測位情報が示す位置P1と、前回取得した測位情報が示す位置P0とに基づいて、車両Aの進行方位を特定し、これを車両Aの走行状態として取得する。なお、車両Aの進行方位は、例えば特定の方位(例えば北)を基準とした方位角θ1で表される。
【0033】
また、走行状態取得部303は、前回取得した測位情報が示す位置P0から今回取得した測位情報が示す位置P1までの距離と、これら二つの測位情報の測位時刻の差とに基づいて、位置P1における車両Aの走行速度V1を特定し、これを車両Aの走行状態として更に取得してもよい。また、走行状態取得部303は、測位情報に基づいて車両AのノードエリアR内における走行位置を特定し、これを車両Aの走行状態として更に取得してもよい。なお、測位情報には、車載器10のGNSS受信機(不図示)において特定された車両の進行方位及び速度が含まれていてもよい。この場合、走行状態取得部303は、今回取得した測位情報に含まれる進行方位及び速度を、車両Aの走行状態として取得してもよい。
【0034】
次に、流出リンク推定部304は、車両Aの走行状態に基づいて、車両Aの移動先となる流出リンクを推定する(ステップS5)。具体的には、流出リンク推定部304は、まず、ノードN4に接続されているリンクL4、L5、L7、L8のうち、流入リンクであると特定されたリンクL4を除外する。そして、流出リンク推定部304は、リンクL5、L7、L8それぞれの方位角を道路網データT(図5)から読み出して、現在位置における車両Aの進行方位(方位角)と合致するリンクLを、流出リンクであると推定する。
【0035】
なお、流出リンク推定部304は、例えば、車両Aの方位角と最も近い方位角を有するリンクLを、車両Aの方位角に合致するリンクLであると推定する。図6の位置P1の時点では、車両Aの方位角θ1はリンクL8の方位角(直進方向)に最も近い。このため、流出リンク推定部304は、位置P1の時点では、車両Aの流出リンクはリンクL8であると推定する。
【0036】
また、リンクLそれぞれには、リンクLの方位角に応じた推定用の角度範囲(第1の角度範囲)が予め設定されていてもよい。図6のリンクL5、L7、L8の角度範囲は、それぞれの方位角から±X1度、±X2度、±X3度の範囲に設定されているとする。このとき、流出リンク推定部304は、位置P1において、車両Aの方位角θ1がリンクL8の角度範囲以内である場合、車両Aの流出リンクはリンクL8であると推定する。また、流出リンク推定部304は、位置P2において、車両Aの方位角θ2がリンクL8の角度範囲を超えているが、リンクL7の角度範囲以内である場合、車両Aの流出リンクはL7であると推定する。流出リンク推定部304は、このように、車両Aの方位角がどのリンクLの角度範囲に含まれるかを判断して、流出リンクを推定してもよい。
【0037】
また、流出リンク推定部304は、車両Aの現在位置における進行方位及び走行速度に基づいて、右左折の有無を推定してもよい。例えば、流出リンク推定部304は、位置P2における走行速度V2が前回の走行速度V1よりも所定以上低下している場合、車両Aが右折又は左折のために減速したと推定する。この場合、流出リンク推定部304は、リンクL4から右折方向又は左折方向にあるリンクL5又はリンクL7が流出リンクであると推定する。一方、流出リンク推定部304は、走行速度V2と走行速度V1との差が所定未満であった場合、車両Aが直進のため速度を維持していると推定する。この場合、流出リンク推定部304は、流入リンクL4から直進方向にあるリンクL8が流出リンクであると推定する。
【0038】
なお、流出リンク推定部304は、車両の方位角と、走行速度とを組み合わせて右左折の有無を推定してもよい。流出リンク推定部304は、例えば図6の位置P2における方位角θ2が前回の方位角θ1よりも所定以上、リンクL7側に変化しており、且つ、走行速度V2が前回の走行速度V1よりも所定以上低下している場合、左折のために減速したと推定する。この場合、流出リンク推定部304は、流入リンクL4から左折方向に位置するリンクL7が流出リンクであると推定する。このようにすることで、流出リンク推定部304は、右左折のための減速と、混雑等による減速とを区別することができる。
【0039】
また、流出リンク推定部304は、車両Aの走行位置に基づいて、流出リンクを推定してもよい。更に、流出リンク推定部304は、車両Aの方位角と、走行速度と、走行位置とを組み合わせて流出リンクを推定してもよい。
【0040】
なお、車両Aは、ノードエリアRに進入してからしばらく直進し、その後、右左折を行う場合がある。このため、流出リンク推定部304は、車両Aの流出リンクが確定したか否かを判断する(ステップS6)。
【0041】
例えば、リンクLそれぞれには、リンクLの方位角に応じた判定用の角度範囲(第2の角度範囲)が予め設定されていてもよい。なお、この判定用の角度範囲は、推定用の角度範囲(第1の角度範囲)より狭い範囲が設定される。流出リンク推定部304は、図6の位置P2における車両Aの方位角θ2が、流出リンクであると推定されたリンクL7の判定用の角度範囲に含まれていない場合、流出リンクが確定していないと判断する(ステップS6:NO)。この場合、流出リンク推定部304は、ステップS4に戻り、再度、車両Aの流出リンクの推定を行う。一方、流出リンク推定部304は、図6の位置P3における車両Aの方位角θ3が、流出リンクであると推定されたリンクL7の判定用の角度範囲以内である場合、流出リンクはリンクL7で確定であると判断する(ステップS6:YES)。この場合、流出リンク推定部304は、センタサーバ20の処理部21に、車両AのノードN4における流出リンク(リンクL7)を通知する(ステップS7)。また、流出リンク推定部304は、車両Aが通行したノードN4と、当該ノードN4における流入リンクL4及び流出リンクL7とを、データ格納部305の車両Aの移動履歴に追加して記憶する。
【0042】
また、流出リンク推定部304は、車両AのノードエリアR内の走行位置に基づいて、流出リンクが確定したか否かを判断してもよい。例えば、図6に示すように、道路網データTにおいて、ノードエリアR内のリンクL(L5、L7、L8)それぞれに対応する判定エリアD(D5、D7、D8)が予め規定されているとする。位置P1の時点では、車両Aはどの判定エリアDにも属していない。この場合、流出リンク推定部304は、車両Aの流出リンクは確定していないと判断する(ステップS6:NO)。
【0043】
一方、位置P3の時点では、車両AはリンクL7の判定エリアD7に属している(ステップS6:YES)。この場合、流出リンク推定部304は、流出リンクはリンクL7で確定であると判断する(ステップS6:YES)。
【0044】
経路推定装置30は、図4の一連の処理を繰り返し実行することにより、各ノードNにおける車両Aの進行方向(流出リンク)を推定し、センタサーバ20の処理部21に通知する。処理部21は、例えば、車両Aの流出リンクから車両Aの走行経路を特定し、当該車両Aの車載器10を通じて、走行経路に応じた通行料金の課金処理、交通情報の配信等を行う。そうすると、車両Aの搭乗者は、移動先となる道路の通行料金、交通情報等を早い段階で知ることができる。このとき、処理部21は、経路推定装置30により推定された流出リンクから、車両AがリンクLの上り車線及び下り車線のうち、何れを走行しているかを知ることができる。このため、処理部21は、例えばリンクL7の上り車線のみに関連する交通情報がある場合は、リンクL7の上り車線に向かっていると推定された車両Aのみに当該交通情報を配信することが可能となる。また、処理部21は、複数の車両Aの流出リンクから、各リンクLの混雑度を予測する処理を行ってもよい。更に、処理部21は、混雑度が高い、或いは、高くなることが予測されるリンクLについて信号制御を行うことにより、混雑を低減又は抑制するようにしてもよい。
【0045】
なお、図4では、経路推定装置30の流出リンク推定部304がステップS7において確定した流出リンクを処理部21に通知する例について説明したが、これに限られることはない。流出リンク推定部304は、ステップS5において推定した流出リンクを処理部21に通知するようにしてもよい。
【0046】
(経路推定装置のハードウェア構成)
図7は、本開示の一実施形態に係る経路推定装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
以下、図7を参照しながら、本実施形態に係る経路推定装置30のハードウェア構成について説明する。
【0047】
コンピュータ900は、プロセッサ901、主記憶装置902、補助記憶装置903、インタフェース904を備える。
【0048】
上述の経路推定装置30は、一つ又は複数のコンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。プロセッサ901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ901は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域を主記憶装置902に確保する。プロセッサ901の例としては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、マイクロプロセッサなどが挙げられる。
【0049】
プログラムは、コンピュータ900に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、補助記憶装置903に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータ900は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ901によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。このような集積回路も、プロセッサの一例に含まれる。
【0050】
補助記憶装置903の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。補助記憶装置903は、コンピュータ900のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース904または通信回線を介してコンピュータ900に接続される外部記憶装置910であってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、補助記憶装置903は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0051】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能を補助記憶装置903に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0052】
(作用、効果)
以上のように、本実施形態に係る経路推定装置30は、GNSSの測位情報に基づいて車両Aの現在位置を特定する位置特定部301と、現在位置が所定のノードエリアRに属した際に、測位情報に基づく車両Aの走行状態を取得する走行状態取得部303と、走行状態に基づいて、車両AのノードエリアRからの移動先となる流出リンクを推定する流出リンク推定部304と、を備える。
このようにすることで、経路推定装置30は、車両Aの将来の移動先となる流出リンクを迅速に推定することができる。
また、経路推定装置30が推定した流出リンクは、センタサーバ20に通知されてもよい。これにより、センタサーバ20は、車両AがノードエリアRを退出する前に、車両Aの流出リンクを知ることができるので、車両Aに対する各種処理(課金処理、交通情報の配信等)を早い段階で準備、実行することができる。
【0053】
また、経路推定装置30は、現在位置が所定のノードエリアRに属した際に、現在位置に基づいて、車両AのノードエリアRへの移動元となる流入リンクを特定する流入リンク特定部302を更に備える。流出リンク推定部304は、ノードエリアRに接続するリンクLのうち流入リンクを除外して、流出リンクを推定する。
このようにすることで、経路推定装置30は、推定対象となるリンクの数を削減して、流出リンクを推定する処理を高速化することができる。
【0054】
また、走行状態取得部303は、測位情報に基づいて車両Aが進行する方位を特定し、走行状態として取得する。
このようにすることで、経路推定装置30は、車両Aが進行する方位に基づいて、より正確に流出リンクを推定することができる。
【0055】
また、走行状態取得部303は、測位情報に基づいて車両Aの走行速度を特定し、走行状態として取得してもよい。
このようにすることで、経路推定装置30は、車両Aの走行速度が変化したか否かに応じて、車両Aが右左折しようとしているか、或いは直進しようとしているかを判断することができる。これにより、経路推定装置30は、車両Aの流出リンクを更に精度よく推定することができる。
【0056】
また、走行状態取得部303は、測位情報に基づいて車両AのノードエリアR内における走行位置を特定し、走行状態として取得する。
このようにすることで、経路推定装置30は、車両Aの走行位置からより正確に流出リンクを推定することができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく、多少の設計変更等も可能である。
【0058】
上述の実施形態において、走行状態取得部303が最新の測位情報と、前回の測位情報との二つの測位情報に基づいて、車両Aの走行状態(方位角、走行速度)を取得する例について説明したが、これに限られることはない。他の実施形態では、走行状態取得部303は、現在から所定時間過去までの複数の走行状態に基づいて、車両Aの走行状態を取得してもよい。このようにすることで、走行状態取得部303は、測位情報に誤差が含まれていた場合であっても、この誤差の影響を低減させることができる。
【0059】
また、上述の実施形態において、走行状態取得部303が車載器10から受信した測位情報に基づく車両Aの走行状態を取得する例について説明したが、これに限られることはない。他の実施形態では、走行状態取得部303は、車載器10を通じて、車両Aのウィンカーの点灯状態を示す情報を更に取得してもよい。走行状態取得部303は、ウィンカーが点灯状態である場合は、車両Aの走行状態は右折中、又は左折中である(ウィンカーが点灯している側へ進行している)と判断する。また、走行状態取得部303は、ウィンカーが無灯状態である場合は、車両Aの走行状態は直進中であると判断する。例えば、図6の位置P1において、走行状態取得部303は、ウィンカーの点灯状態から車両Aの走行状態が左折中であると判断したとする。このとき、流出リンク推定部304は、流入リンクL4から左折方向にあるリンクL7が流出リンクであると推定する。経路推定装置30は、このように車両Aのウィンカーの点灯状態を更に考慮することにより、車両Aの流出リンクをより正確に推定することができる。なお、走行状態取得部303は、車載器10を通じて、車両Aの舵角、車速等、他の車載センサのセンサ値を走行状態として取得してもよい。
【0060】
また、上述の実施形態において、流出リンク推定部304が複数のリンクLのうち何れか一つを流出リンクであると推定する例について説明したが、これに限られることはない。他の実施形態では、流出リンク推定部304は、複数のリンクLそれぞれについて、流出リンクである否かを示す指標を計算して、処理部21に通知するようにしてもよい。例えば、流出リンク推定部304は、車両Aの方位角と、リンクL5、L7、L8(図6)の方位角との差をそれぞれ求め、この差が小さいリンクLのスコアを、差が大きいリンクLのスコアよりも高くする。流出リンク推定部304は、リンクL5、L7、L8それぞれのスコアを処理部21に通知する。これにより、処理部21は、車両Aが最も高いスコアを有するリンクLから流出する可能性が高いと判断することができる。また、流出リンク推定部304は、スコアに基づいて、車両AがリンクL5、L7、L8それぞれから流出リンクする可能性(%)を計算して、処理部21に通知してもよい。
【0061】
図8は、本開示の変形例に係る経路推定システムの機能構成を示す図である。
上述の実施形態において、経路推定装置30がセンタサーバ20に設けられる例について説明したが、これに限られることはない。図8に示す変形例のように、経路推定装置30は、車載器10に設けられていてもよい。このようにすることで、車載器10は、例えば、課金処理等を車載器10が有する処理部(不図示)で実行する場合であっても、センタサーバ20と逐次、通信を行うことなく、経路推定装置30が推定した流出リンクに基づいて、処理を実行することができる。これにより、車載器10における処理を高速化することが可能となる。
【0062】
<付記>
上述の実施形態に記載の経路推定装置、経路推定方法、及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0063】
本開示の第1の態様によれば、経路推定装置(30)は、GNSSの測位情報に基づいて車両の現在位置を特定する位置特定部(301)と、前記現在位置が所定のノードエリアに属した際に、前記車両の走行状態を取得する走行状態取得部(303)と、複数のノードエリアそれぞれに接続されるリンクの情報を含む道路網データを予め記憶するデータ格納部(305)と、前記走行状態及び前記道路網データに基づいて、前記車両の前記ノードエリアからの移動先となる流出リンクを推定する流出リンク推定部(304)と、を備える。
このようにすることで、経路推定装置は、車両の将来の移動先となる流出リンクを迅速に推定することができる。
【0064】
本開示の第2の態様によれば、第1の態様に係る経路推定装置(30)は、前記現在位置が所定のノードエリアに属した際に、前記車両の前記ノードエリアへの移動元となる流入リンクを特定する流入リンク特定部(302)を更に備え、前記データ格納部(305)は、前記車両が過去に属したノードエリアに関する情報を含む移動履歴を更に記憶し、前記流入リンク特定部(302)は、前記現在位置及び前記移動履歴に基づいて前記流入リンクを特定し、前記流出リンク推定部(304)は、前記ノードエリアに接続するリンクのうち前記流入リンクを除外して、前記流出リンクを推定する。
このようにすることで、経路推定装置は、推定対象となるリンクの数を削減して、流出リンクを推定する処理を高速化することができる。
【0065】
本開示の第3の態様によれば、第1又は第2の態様に係る経路推定装置(30)において、前記走行状態取得部(303)は、前記測位情報に基づいて前記車両が進行する方位を特定し、前記走行状態として取得する。
このようにすることで、経路推定装置は、車両が進行する方位に基づいて、より正確に流出リンクを推定することができる。
【0066】
本開示の第4の態様によれば、第1から第3の何れか一の態様に係る経路推定装置(30)において、前記走行状態取得部(303)は、前記測位情報に基づいて前記車両の走行速度を特定し、前記走行状態として取得する。
このようにすることで、経路推定装置は、車両の走行速度が変化したか否かに応じて、車両が右左折しようとしているか、或いは直進しようとしているかを判断することができる。これにより、経路推定装置は、車両の流出リンクを更に精度よく推定することができる。
【0067】
本開示の第5の態様によれば、第1から第4の何れか一の態様に係る経路推定装置(30)において、前記走行状態取得部(303)は、前記測位情報に基づいて前記車両の前記ノードエリア内における走行位置を特定し、前記走行状態として取得する。
このようにすることで、経路推定装置は、車両の走行位置からより正確に流出リンクを推定することができる。
【0068】
本開示の第6の態様によれば、第1から第5の何れか一の態様に係る経路推定装置(30)において、前記走行状態取得部(303)は、前記車両のウィンカーの点灯状態を示す情報に基づく前記走行状態を取得する。
経路推定装置は、このように車両のウィンカーの点灯状態を更に考慮することにより、車両の流出リンクをより正確に推定することができる。
【0069】
本開示の第7の態様によれば、経路推定方法は、GNSSの測位情報に基づいて車両の現在位置を特定するステップと、前記現在位置が所定のノードエリアに属した際に、前記車両の走行状態を取得するステップと、前記走行状態と、複数のノードエリアそれぞれに接続されるリンクの情報を含む道路網データとに基づいて、前記車両の前記ノードエリアからの移動先となる流出リンクを推定するステップと、を有する。
【0070】
本開示の第8の態様によれば、プログラムは、経路推定装置(30)のコンピュータ(900)に、GNSSの測位情報に基づいて車両の現在位置を特定するステップと、前記現在位置が所定のノードエリアに属した際に、前記車両の走行状態を取得するステップと、前記走行状態と、複数のノードエリアそれぞれに接続されるリンクの情報を含む道路網データとに基づいて、前記車両の前記ノードエリアからの移動先となる流出リンクを推定するステップと、を実行させる。
【符号の説明】
【0071】
1 経路推定システム
10 車載器
20 センタサーバ
21 処理部
30 経路推定装置
301 位置特定部
302 流入リンク特定部
303 走行状態取得部
304 流出リンク推定部
305 データ格納部
900 コンピュータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8