(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】原子炉および原子炉の制御方法
(51)【国際特許分類】
G21C 5/00 20060101AFI20231124BHJP
G21C 7/00 20060101ALI20231124BHJP
G21C 7/22 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
G21C5/00 A
G21C7/00 300
G21C7/22
(21)【出願番号】P 2020033419
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中里 道
(72)【発明者】
【氏名】池田 秀晃
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 喬
(72)【発明者】
【氏名】村上 望
(72)【発明者】
【氏名】淀 忠勝
(72)【発明者】
【氏名】大槻 昇平
(72)【発明者】
【氏名】蒲原 覚
(72)【発明者】
【氏名】小林 翔太
(72)【発明者】
【氏名】原井 康考
(72)【発明者】
【氏名】田中 豊
(72)【発明者】
【氏名】野田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】坂田 英之
(72)【発明者】
【氏名】野口 浩徳
(72)【発明者】
【氏名】工藤 秀行
(72)【発明者】
【氏名】石黒 達男
【審査官】関口 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-093141(JP,A)
【文献】特開2014-119429(JP,A)
【文献】特開2012-168100(JP,A)
【文献】特開昭55-070792(JP,A)
【文献】T.A. Taiwo、R.N. Hill、R.N. Hill,A Feasibility Study of Reactor-Based Deep-Burn Concepts,[オンライン],T.K. Kim,2005年08月31日,R.N. Hill、37-38,インターネット:<URL:https://www.semanticscholar.org/paper/A-feasibility-study-of-reactor-based-deep-burn-Kim-Taiwo/b82d0137213a490a57681a461309b5582f2211cc>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C1/00-1/32
5/00-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核燃料を有する炉心と、
前記炉心の周囲を覆い放射線を遮へいする遮へい部と、
前記炉心で発生した熱を前記遮へい部の外部に伝える熱伝導部と、
を含み、
運転期間中は、前記核燃料の温度が所定値まで上昇すると共鳴領域での中性子の捕獲に伴う核分裂反応の低下に則った運転サイクルを継続させ、前記運転サイクルは、前記核燃料の温度が所定値まで低下した時点とする、原子炉。
【請求項2】
運転期間中において、前記核燃料の核分裂性物質の重量密度を5wt%以上とし、炉心温度を350℃以上とし、前記核分裂性物質の減損量が運転開始時の1/3を下回らないように熱出力および運転期間を制限する、請求項1に記載の原子炉。
【請求項3】
中性子吸収体を前記炉心に対して接近または離隔可能に設けられた制御部を含み、
運転停止した後の運転開始時において前の前記運転期間よりも前記中性子吸収体を前記炉心から離隔させる、請求項
1または2に記載の原子炉。
【請求項4】
前記熱伝導部は、固体熱伝導により前記核燃料の熱を前記遮へい部の外部に伝える、請求項1から3のいずれか1つに記載の原子炉。
【請求項5】
前記遮へい部は、放射線を反射する反射機能を含む、請求項1から4のいずれか1つに記載の原子炉。
【請求項6】
前記炉心は、前記核燃料の周囲を覆う減速材を含む、請求項1から5のいずれか1つに記載の原子炉。
【請求項7】
中性子吸収体を前記炉心に対して接近または離隔可能に設けられた制御部を含み、
運転期間中は
前記制御部による制御を実施しない、請求項1から6のいずれか1つに記載の原子炉。
【請求項8】
核燃料を有する炉心と、
前記炉心の周囲を覆い放射線を遮へいする遮へい部と、
前記炉心で発生した熱を前記遮へい部の外部に伝える熱伝導部と、
を含む原子炉の制御方法であって、
運転期間中は、前記核燃料の温度が所定値まで上昇すると共鳴領域での中性子の捕獲に伴う核分裂反応の低下に則った運転サイクルを継続させ、前記運転サイクルは、前記核燃料の温度が所定値まで低下した時点とする、原子炉の制御方法。
【請求項9】
中性子吸収体を前記炉心に対して接近または離隔可能に設け、
運転停止した後の運転開始時において前の前記運転期間よりも前記中性子吸収体を前記炉心から離隔させる、請求項8に記載の原子炉の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉および原子炉の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核燃料を用い、核反応の熱を利用して発電を行う原子力発電システムでは、原子炉で生じた熱を冷却材が循環することで回収し、回収した熱で蒸気を発生させ、蒸気でタービンを回転させて発電を行う。なお、特許文献1,2には、原子炉で生じた熱をヒートパイプで回収することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第2016/0027536号明細書
【文献】特表2019-531472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
中性子の減速材に軽水を用いる軽水炉では、出力が高く運転に伴う反応度低下を抑えるため、制御棒やほう素などの添加物により原子炉の臨界を制御しつつ熱を取り出すようにしている。即ち、軽水炉は、安定して熱を取り出すために様々な制御を要している。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、容易な臨界制御にて安定して熱を取り出すことのできる原子炉および原子炉の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本開示の一態様に係る原子炉は、核燃料を有する炉心と、前記炉心の周囲を覆い放射線を遮へいする遮へい部と、前記炉心で発生した熱を前記遮へい部の外部に伝える熱伝導部と、を含み、運転期間中において、前記核燃料の核分裂性物質の重量密度を5wt%以上とする。
【0007】
上述の目的を達成するために、本開示の一態様に係る原子炉は、核燃料を有する炉心と、前記炉心の周囲を覆い放射線を遮へいする遮へい部と、前記炉心で発生した熱を前記遮へい部の外部に伝える熱伝導部と、を含み、運転期間中は、前記核燃料の温度が所定値まで上昇すると共鳴領域での中性子の捕獲に伴う核分裂反応の低下に則った運転サイクルを継続させ、前記運転サイクルは、前記核燃料の温度が所定値まで低下した時点とする。
【0008】
上述の目的を達成するために、本開示の一態様に係る原子炉は、運転期間中はドップラー効果による炉心温度低下のみで臨界制御を行う。
【0009】
上述の目的を達成するために、本開示の一態様に係る原子炉の制御方法は、核燃料を有する炉心の炉心温度を下げることにより臨界性を一定に保つように制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、容易な臨界制御にて安定して熱を取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態に係る原子炉を用いた原子力発電システムの模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る原子炉を示す模式図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る原子炉の断面模式図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る原子炉の一部切取拡大模式図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る原子炉の一部切取拡大模式図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る原子炉の制御を示すタイムチャート図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る原子炉の制御を示すフローチャート図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る原子炉の制御を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0013】
図1は、実施形態に係る原子炉を用いた原子力発電システムの模式図である。
図1に示すように、原子力発電システム50は、原子炉容器51と、熱交換器52と、熱伝導部53と、冷媒循環手段54と、タービン55と、発電機56と、冷却器57と、圧縮機58と、を有する。
【0014】
原子炉容器51は、後述する本実施形態の原子炉11を有する。原子炉容器51は、内部に原子炉11が格納されている。原子炉容器51は、原子炉11を密閉状態で格納する。原子炉容器51は、内部に載置する原子炉11が格納または取り出せるように、例えば蓋である開閉部が設けられている。原子炉容器51は、原子炉11において核反応がおき、内部が高温、高圧になった場合でも、密閉状態を維持することができる。原子炉容器51は、中性子線の遮へい性能を備える材料である例えばコンクリートで形成され、内部で生じた中性子線が外部に漏えいしない厚みで形成されている。原子炉容器51は、材料においてボロン等の遮へい性の高い元素を含めてもよい。
【0015】
熱交換器52は、原子炉11との間で熱交換を行う。本実施形態の熱交換器52は、原子炉容器51の内部に一部配置された熱伝導部53の固体の高熱伝導材料を介して原子炉11の熱を回収する。なお、
図1で示している熱伝導部53は、後述する熱伝導部3を模式的に示したものである。
【0016】
冷媒循環手段54は、冷媒を循環させる経路であり、熱交換器52と、タービン55と、冷却器57と、圧縮機58と、が接続されている。冷媒循環手段54を流れる冷媒は、熱交換器52、タービン55、冷却器57、圧縮機58の順で流れ、圧縮機58を通過した冷媒は、熱交換器52に供給される。従って、熱交換器52は、熱伝導部53の固体の高熱伝導材料と、冷媒循環手段54を流れる冷媒との間で熱交換を行う。
【0017】
タービン55は、熱交換器52を通過した冷媒が流入する。タービン55は、加熱された冷媒のエネルギーにより回転される。つまりタービン55は、冷媒のエネルギーを回転エネルギーに変換して、冷媒からエネルギーを吸収する。
【0018】
発電機56は、タービン55と連結されており、タービン55と一体で回転する。発電機56は、タービン55と回転することで発電する。
【0019】
冷却器57は、タービン55を通過した冷媒を冷却する。冷却器57は、チラーや冷媒を一時的に液化する場合、復水器等である。
【0020】
圧縮機58は、冷媒を加圧するポンプである。
【0021】
原子力発電システム50は、原子炉11の核燃料(1A)の反応で生じた熱を熱伝導部53で熱交換器52に伝える。原子力発電システム50は、熱交換器52において、熱伝導部53の高熱伝導材料の熱で、冷媒循環手段54を流れる冷媒を加熱する。つまり、冷媒は、熱交換器52において熱を吸収する。これにより、原子炉11で発生した熱は、冷媒で回収される。冷媒は、圧縮機58で圧縮された後、熱交換器52の通過時に加熱され、圧縮し加熱されたエネルギーでタービン55を回転させる。冷媒は、その後、冷却器57で基準状態まで冷却され、再び圧縮機58に供給される。なお、熱交換器52、冷媒循環手段54、タービン55、発電機56、圧縮機58は熱電素子等に置き換えることで、発電や熱を用いた水素製造等に利用することもできる。
【0022】
原子力発電システム50は、以上のように、原子炉11から取り出された熱を高熱伝導材料を介し、タービン55を回転する媒体となる冷媒に伝達する。これにより、原子炉11と、タービン55を回転する媒体となる冷媒とを隔離することができ、タービン55を回転する媒体が汚染される恐れを低減できる。
【0023】
図2は、実施形態に係る原子炉を示す模式図である。
図3は、実施形態に係る原子炉の断面模式図である。
図4は、実施形態に係る原子炉の一部切取拡大模式図である。
図5は、実施形態に係る原子炉の一部切取拡大模式図である。
図6は、実施形態に係る原子炉の制御を示すタイムチャート図である。
図7は、実施形態に係る原子炉の制御を示すフォローチャート図である。
図8は、実施形態に係る原子炉の制御を示すフォローチャート図である。
【0024】
図2から
図5に示すように、原子炉11は、燃料部(炉心)1と、遮へい部2と、熱伝導部3と、制御部4と、を含む。
【0025】
燃料部1は、
図4および
図5に示す核燃料1Aが支持されている。また、図には明示しないが、燃料部1は、核燃料1Aの核反応を制御する制御棒が抜き挿し可能に設けられている。燃料部1は、制御棒が挿入されることで核燃料1Aの核反応を抑制する。また、燃料部1は、制御棒が抜き出されることで核燃料1Aの核反応を生じさせる。
【0026】
燃料部1は、全体として柱状に形成されている。本実施形態では、燃料部1は、ほぼ円柱状に形成されている。この柱状の延びる方向を軸方向という場合もある。また、軸方向に直交する方向を径方向と言う場合もある。燃料部1は、
図4、
図5に示すように、核燃料1Aと、支持体1Bと、を含む。
図4、
図5では、
図3に示している燃料部1を断面六角形の柱状に切り取ったイメージ図である。支持体1Bは、燃料部1がなす柱状の軸方向寸法をなすように軸方向に延びて形成されている。支持体1Bは、後述する棒状の熱伝導部3が軸方向で挿入される挿入穴1Baが軸方向に貫通して形成されている。本実施形態では、挿入穴1Baは、円形の断面形状に形成されている。また、支持体1Bは、挿入穴1Baの周囲に核燃料1Aが配置される穴部1Bbが軸方向に貫通して形成されている。本実施形態では、穴部1Bbは、円形の断面形状に形成されている。支持体1Bは、減速材として例えばグラフェンを用いることができる。支持体1Bは、減速材として例えば黒鉛を用いることができる。核燃料1Aは、本実施形態では、支持体1Bの穴部1Bbに配置されるように、円形の断面形状であり、軸方向に連続した棒状に形成されている。なお、棒状の核燃料1Aは、上記円形の断面形状の筒の内部にペレット状の核燃料が挿入されて形成することができる。核燃料1Aは、核分裂性物質としてウラン(例えばウラン235))やプルトニウム(例えばプルトニウム239、241)、トリウムを用いることができる。
【0027】
遮へい部2は、燃料部1の周囲を覆うものである。遮へい部2は、金属ブロックからなり、核燃料1Aから照射される放射線(中性子)を反射することで、燃料部1を覆った外部への放射線の漏洩を防ぐ。遮へい部2は、使用する材料の中性子散乱および中性子吸収の能力に応じて反射体と呼ばれることがある。
【0028】
遮へい部2は、本実施形態では、燃料部1に柱形状の全外周を囲むように筒状に形成された胴体2Aと、胴体2Aの両端を塞ぐ各蓋体2Bと、を含む。なお、遮へい部2は、燃料部1を内部に収容するにあたり、内部の酸化を防止する目的から、密閉構造とした内部に例えば窒化ガス等の不活性ガスを充填するとよい。
【0029】
熱伝導部3は、遮へい部2を貫通して当該遮へい部2が覆う内部に設けられている燃料部1の内部に挿入されることで、燃料部1の内部および遮へい部2の外部に延出して配置されている。熱伝導部3は、燃料部1の核燃料1Aの核反応により生じる熱を遮へい部2の外部に固体熱伝導で伝える。熱伝導部3は、例えばグラフェンを用いることができる。熱伝導部3は、例えばチタン、ニッケル、銅、グラファイトを用いることができる。熱伝導部3の遮へい部2の外部に延出した部分は、原子炉容器51の内部にて冷媒と熱交換可能に設けられている。
【0030】
熱伝導部3は、軸方向に延びる棒状に形成されている。本実施形態では、熱伝導部3は、断面が円形の棒状に形成されている。熱伝導部3は、燃料部1における支持体1Bに形成された挿入穴1Baに挿入され、かつ遮へい部2における一方の蓋体2Bを貫通して遮へい部2の外部に延出して配置される。
【0031】
制御部4は、遮へい部2に支持されている。制御部4は、燃料部1の柱形状の周りを囲むように複数(本実施形態では12個)に設けられている。複数の制御部4は、燃料部1の柱形状の周りを囲むように均等に配置されている。制御部4は、円筒状であって、いわゆるドラム状に形成され、燃料部1の柱形状の延在方向である軸方向に延びて形成されている。制御部4は、円筒状の中心の周りに回転が可能に設けられている。制御部4は、円筒状の外周の一部に中性子吸収体4Aが設けられている。中性子吸収体4Aは、例えば、ボロンカーバイト(B4C)を用いることができる。中性子吸収体4Aは、制御部4の回転に伴って回転移動し、炉心である燃料部1に対して接近または離隔することが可能に設けられている。中性子吸収体4Aが燃料部1に対して接近すると、燃料部1の反応度が下がり、中性子吸収体4Aが燃料部1に対して離隔すると、燃料部1の反応度が上がる。このように、制御部4は、中性子吸収体4Aを燃料部1に対して接近または離隔することで炉心である燃料部1の反応度を制御でき、燃料部1の炉心温度を制御できる。炉心温度は、熱伝導部3により遮へい部2の外部に取り出される炉心平均温度である。
【0032】
制御部4は、制御装置5により回転移動を制御される。制御装置5は、例えば、コンピュータであり、図には明示しないが、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを含む演算処理装置などにより実現される。制御装置5は、燃料部1の炉心温度を取得することができる。制御装置5は、制御部4の回転位置を制御して、中性子吸収体4Aを燃料部1に対して離隔させる。すると、炉心である燃料部1の反応度が上がり、原子炉11は運転を開始する。また、制御装置5は、制御部4の回転位置を制御して、中性子吸収体4Aを燃料部1に対して接近させる。すると、炉心である燃料部1の反応度が下がり、原子炉11は運転を停止する。
【0033】
従って、本実施形態の原子炉11は、燃料部1の核燃料1Aの核反応により生じる熱を、熱伝導部3により固体熱伝導で遮へい部2の外部に取り出すことができる。そして、遮へい部2の外部に取り出された熱は、冷媒に伝達され、タービン55を回転させる。
【0034】
本実施形態の原子炉11は、燃料部1の核燃料1Aの熱を熱伝導部3により固体熱伝導で遮へい部2の外部に取り出し(
図2矢印参照)、冷媒に熱を伝えることができる。本実施形態の原子炉11は、放射性物質などの漏えいを防止できる。本実施形態の原子炉11は、熱伝導部3が燃料部1の内部および遮へい部2の外部に延出して配置されているため、燃料部1の核燃料1Aの熱の伝熱距離を抑えつつ遮へい部2の外部に取り出すことができる。本実施形態の原子炉11は、高い出力温度を確保できる。なお、本実施形態の原子炉11は、固体熱伝導で熱を取り出す形態の熱伝導部3を説明したが、例えば、他の熱伝導部として、流体が封入されたヒートパイプを用いる流体熱伝導で熱を取り出す形態を用いてもよい。
【0035】
ここで、上述した本実施形態の原子炉11は、運転期間中において、核燃料1Aの核分裂性物質の重量密度を5wt%以上としている。本実施形態の原子炉11は、好ましくは、核燃料1Aの核分裂性物質の重量密度を15wt%以上としている。本実施形態の原子炉11は、より好ましくは、核燃料1Aの核分裂性物質の重量密度を15wt%以上20wt%以下としている。また、本実施形態の原子炉11は、運転期間中において、炉心温度(炉心平均温度)を350℃以上としている。本実施形態の原子炉11は、好ましくは、炉心温度を500℃以上1500℃以下としている。本実施形態の原子炉11は、より好ましくは、炉心温度を750℃以上1500℃以下としている。核燃料1Aの体積当たりの熱出力および運転期間は運転に伴う核分裂性物質の減損量を運転開始時の1/3以下に抑えるようにしている。本実施形態の原子炉11は、好ましくは、核燃料1Aの体積当たりの熱出力および運転期間は運転に伴う核分裂性物質の減損量を運転開始時の1/5以下に抑えるようにしている。本実施形態の原子炉11は、より好ましくは、核燃料1Aの体積当たりの熱出力および運転期間は運転に伴う核分裂性物質の減損量を運転開始時の1/10以下に抑えるようにしている。
【0036】
このような本実施形態の原子炉11は、運転開始から運転停止までの運転期間中において、臨界制御が行われる。即ち、
図6および
図7に示すように、原子炉11は、運転開始により炉心である燃料部1の反応度が上がり、炉心温度(炉心平均温度:℃)が所定値まで上昇し(A1)、臨界状態となる(ステップS1)。ステップS1において、ドップラー効果の共鳴領域での中性子の捕獲に伴い核分裂反応が低下して反応度が下がり、所定値で炉心温度は一定となる。原子炉11は、出力Pでの運転期間Tの経過と共に核分裂性物質が減損することで核分裂反応が低下して反応度が下がり、炉心温度は低下する(ステップS2)。ここで、炉心温度が低下することでドップラー効果のフィードバックにより正の反応度が添加されて反応度が上がり、炉心温度が上昇し一定となる(A2:ステップS3)。これにより臨界性が一定となり、臨界状態が維持される。原子炉11は、(A1)→(B1)のように、共鳴領域での中性子の捕獲に伴う核分裂反応の低下に則して炉心温度が所定値まで低下した時点を1つの運転サイクル[サイクル1]とする。
【0037】
また、本実施形態の原子炉11は、上述したように運転開始または運転停止に際して制御部4の回転位置を制御する。さらに、本実施形態の原子炉11の制御装置5は、当該炉心温度に応じて制御部4の回転位置を制御する。さらに、本実施形態の原子炉11の制御装置5は、炉心温度を取得して平均しており、平均炉心温度が所定温度以下になった際に、制御部4の回転位置を制御する。具体的に、
図8に示すように、原子炉11において、制御装置5は、運転開始に際して制御部4を回転させて炉心である燃料部1を臨界状態とする(ステップS11)。原子炉11は、臨界状態となった運転期間中においてドップラー効果による炉心温度低下のみで臨界制御を行う(ステップS12(
図6(A1)→(B1)参照))。即ち、ステップS12において、制御装置5は、制御部4の回転位置の制御を実施しない。その後、核燃料1Aが燃えて減少し反応度が下がることで、ドップラー効果による臨界制御が実施されていても炉心温度が低下する。このため、原子炉11の制御装置5において平均炉心温度が予め設定された所定温度を下回った場合(ステップS13:Yes)、運転を停止し(ステップS14)、検査が実施される。なお、定期的な運転期間(
図6のサイクル1)は、適宜任意に設定可能(例えば、1年間や5年間や10年間)である。また、運転の停止は、任意のタイミングで行ってもよい。なお、制御装置5において平均炉心温度が予め設定された所定温度を下回っていない場合は(ステップS13:No)、運転を継続する。原子炉11は、制御装置5により制御部4の回転位置を制御し運転を停止する(ステップS14)。なお、検査後において、原子炉11は、制御装置5により制御部4の回転位置を制御し運転を開始する。この運転開始時において、制御装置5は、前記運転期間のときよりも中性子吸収体4Aを核燃料1Aから離隔するように、制御部4の回転位置を制御する。即ち、原子炉11は、運転期間中よりも中性子吸収体4Aが核燃料1Aから遠ざかることで余剰反応度が添加されて核燃料1Aの反応度が上がり、前の運転期間において低下した炉心温度を上げることができる。従って、原子炉11は、前の運転期間と同等の熱を取り出すことができる。また、原子炉11は、ステップS12と同じく臨界状態となった運転期間中においてドップラー効果による炉心温度低下のみで臨界制御を行う。そして、本実施形態の原子炉11では、定期的な運転期間であるサイクル1の後、上述したように検査を行って制御部4の回転位置を制御した後、再び運転を開始することで、
図6に示すようにサイクル1と同様にサイクル2からサイクル6のように継続してドップラー効果のみによる運転および制御部4の回転位置制御を行う。
【0038】
このように、本実施形態の原子炉11は、核燃料1Aを有する炉心である燃料部1と、燃料部1の周囲を覆い放射線を遮へいする遮へい部2と、燃料部1で発生した熱を遮へい部2の外部に伝える熱伝導部3と、を含み、運転期間中において、核燃料1Aの核分裂性物質の重量密度を5wt%以上とする。
【0039】
従って、本実施形態の原子炉11は、核燃料1Aの核分裂性物質の重量密度を5wt%以上とすることで、運転期間中は、ドップラー効果による炉心温度低下のみで臨界制御を行うことができる。この結果、本実施形態の原子炉11によれば、例えば軽水炉のような制御棒やほう素による臨界制御と比較し、容易な臨界制御にて安定して熱を取り出すことができ、信頼性を向上できる。
【0040】
また、本実施形態の原子炉11では、運転期間中において、炉心温度を350℃以上とする。
【0041】
従って、本実施形態の原子炉11は、上記炉心温度とすることで、運転期間中は、ドップラー効果による炉心温度低下のみで安定した臨界制御を行うことができる。この結果、本実施形態の原子炉11によれば、容易な臨界制御にてより安定して熱を取り出すことができる。
【0042】
また、本実施形態の原子炉11では、運転に伴う核分裂性物質の減損量が運転開始時の1/3を下回らないように熱出力および運転期間を制限する。本実施形態の原子炉11において、熱出力の抑制は、熱伝導部3において固体熱伝導や、ヒートパイプのような流体熱伝導とするにより実施できる。また、本実施形態の原子炉11において、運転期間の抑制は、上記1つのサイクルの炉心温度となるように運転開始時における制御部4の回転位置の制御により実施できる。
【0043】
従って、本実施形態の原子炉11は、運転に伴う核分裂性物質の減損量が運転開始時の1/3を下回らないように熱出力および運転期間を制限することで、運転期間中のドップラー効果のみによる臨界制御の実現性を高められる。
【0044】
また、本実施形態の原子炉11は、核燃料1Aを有する炉心である燃料部1と、燃料部1の周囲を覆い放射線を遮へいする遮へい部2と、燃料部1で発生した熱を遮へい部2の外部に伝える熱伝導部3と、を含み、運転期間中は、核燃料1Aの温度が所定値まで上昇すると共鳴領域での中性子の捕獲に伴う核分裂反応の低下に則った運転サイクルを継続させ、運転サイクルは、核燃料1Aの温度が所定値まで低下した時点とする。
【0045】
従って、本実施形態の原子炉11によれば、運転期間中は、ドップラー効果による炉心温度低下のみで安定した臨界制御を行うことができる。この結果、本実施形態の原子炉11によれば、容易な臨界制御にて安定して熱を取り出すことができ、信頼性を向上できる。
【0046】
また、本実施形態の原子炉11および原子炉11の制御方法では、中性子吸収体4Aを燃料部1に対して接近または離隔可能に設けられた制御部4を含み、炉心温度の低下に応じ、運転停止した後の運転開始時において前の運転期間よりも中性子吸収体4Aを燃料部1から離隔させる。
【0047】
従って、本実施形態の原子炉11は、前の運転期間において、炉心温度が所定値よりも低下した場合、例えば検査で運転を停止した後の運転開始時に、前の運転期間よりも中性子吸収体4Aを燃料部1から離隔させるように制御部4を制御することで、前の運転期間において低下した炉心温度を上昇できる。この結果、本実施形態の原子炉11によれば、先の運転期間と同等の熱を取り出すことができる。
【0048】
また、本実施形態の原子炉11では、熱伝導部3は、固体熱伝導により核燃料1Aの熱を遮へい部2の外部に伝える。
【0049】
従って、本実施形態の原子炉11は、固体熱伝導により核燃料1Aの熱を遮へい部2の外部に伝えることで、放射線の漏えいを抑制しつつ熱を取り出すことができ、高い出力温度を確保できる。しかも、本実施形態の原子炉11は、固体熱伝導により核燃料1Aの熱を遮へい部2の外部に伝えることで、流体熱伝導と比較して熱伝導率が低いことから、運転期間中のドップラー効果のみによる臨界制御の実現性を高められる。
【0050】
また、本実施形態の原子炉11では、遮へい部2は、放射線を反射する反射機能を含む。
【0051】
従って、本実施形態の原子炉11は、遮へい部2による放射線の反射機能により核燃料1Aの反応度を確保できる。この結果、本実施形態の原子炉11によれば、運転期間中のドップラー効果のみによる臨界制御の実現性を高められる。
【0052】
また、本実施形態の原子炉11では、燃料部1は、核燃料1Aの周囲を覆う減速材を含む支持体1Bを有する。
【0053】
従って、本実施形態の原子炉11は、減速材により核燃料1Aの反応度を安定させる。この結果、本実施形態の原子炉11によれば、運転期間中のドップラー効果のみによる臨界制御の実現性を高められる。
【0054】
また、本実施形態の原子炉11は、運転期間中はドップラー効果による炉心温度低下のみで臨界制御を行う。また、本実施形態の原子炉11の制御方法は、核燃料1Aを有する燃料部1の炉心温度を下げることにより臨界性を一定に保つように制御する。
【0055】
従って、本実施形態の原子炉11および原子炉11の制御方法によれば、容易な臨界制御にて安定して熱を取り出すことができ、信頼性を向上できる。
【符号の説明】
【0056】
1 燃料部(炉心)
1A 核燃料
2 遮へい部
3 熱伝導部
4 制御部
4A 中性子吸収体
11 原子炉