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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】便器装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 9/08 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
E03D9/08 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020044423
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021143565
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】東野 亨
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-285730(JP,A)
【文献】特開2004-257166(JP,A)
【文献】特開2013-36218(JP,A)
【文献】特開2019-27014(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0017586(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107569159(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/00 ー 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル部から洗浄水を吐出してユーザを洗浄する局部洗浄機構と、
前記ノズル部に高温水を流して洗浄する高温水供給路、前記高温水よりも低い通常の温度の通常水を供給する通常水供給路、並びに前記ノズル部の洗浄後の高温水及び前記通常水を混合する混合部を有するノズル洗浄機構と、を備える便器装置。
【請求項2】
前記ノズル部の下方に前記混合部が配置され、前記高温水が前記混合部に流下される、請求項1に記載の便器装置。
【請求項3】
前記混合部における前記通常水の水量は、前記高温水の水量よりも多い、請求項1又は2に記載の便器装置。
【請求項4】
前記通常水は、前記高温水よりも先に吐水され、前記混合部に前記高温水よりも先に供給される、請求項1~3のいずれか1項に記載の便器装置。
【請求項5】
前記局部洗浄機構に供給される洗浄水の逆流を防止するとともに、捨て水を排水するエアギャップ機構をさらに備え、
前記通常水は、前記エアギャップ機構から供給される、請求項1~4のいずれか1項に記載の便器装置。
【請求項6】
前記混合部は、混合した水を便器本体へ排水する排水孔を有し、
前記通常水は、前記高温水よりも前記排水孔に近い位置で流下される、請求項1~5のいずれか1項に記載の便器装置。
【請求項7】
前記ノズル洗浄機構は、
前記ノズル洗浄機構に供給される水の流量を検出する流量センサと、
前記流量センサの流量に基づいて、前記高温水を前記通常水と混合して所定温度まで温度を低下することが可能か否かの判定する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記高温水供給路に供給される水が所定の水量未満の場合、前記高温水の洗浄制御を停止する、請求項1~6のいずれか1項に記載の便器装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便器装置に、ノズル部から吐出される洗浄水にてユーザの局部を洗浄する局部洗浄機構を設けたものが知られている。ノズル部は、一定時間使用しない場合もあり、周囲の環境によってはこの間に衛生状態が悪化する可能性もある。このため、ノズル部を洗浄するノズル洗浄モードを備える便器装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-263424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
洗浄により除菌効果を高めるためには、ノズル部を洗浄する水の温度が高いことが好ましい。しかし、洗浄後の高温の水をそのまま排出すると、使用者に高温の水が掛かる懸念や、便器の高温水がかかる場所が破損する懸念がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、ノズル部から洗浄水を吐出してユーザを洗浄する局部洗浄機構と、前記ノズル部に高温水を流して洗浄する高温水供給路、前記高温水よりも低い通常の温度の通常水を供給する通常水供給路、並びに前記ノズル部の洗浄後の高温水及び前記通常水を混合する混合部を有するノズル洗浄機構と、を備える便器装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本実施形態に係る便器装置の斜視図である。
図2】本実施形態に係る機能部の斜視図である。
図3】本実施形態に係るノズル洗浄機構を説明する模式図である。
図4】本実施形態に係るノズル洗浄機構の水回路を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の便器装置1の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下の説明においては、便器装置1の便座21に座った人から視た場合の前後の方向を前後方向と定義する。前後方向に交差する左右を結ぶ方向を左右方向と定義する。鉛直方向に沿った上下の方向を上下方向と定義する。
【0008】
図1に示すように、便器装置1は、便器本体10と、便座21と、便蓋22と、機能部3と、局部洗浄機構4と、ノズル洗浄機構5(図3参照)と、を有する。便器装置1は、例えばトイレルーム(図示省略)に配置され、汚物を下水へ流して洗浄する水洗式の装置である。
【0009】
便器本体10は、上部が開口した便鉢部11を有する容器である。便鉢部11は、便器本体10の前方側に形成される凹部であり、下部に排水口が形成されて下水管(図示省略)と接続されている。便座21は、中央が後述する便器本体10の開口に連通するように開口した略環状で平坦な部材である。便座21は、便器本体10の上面に設置され、開閉可能に取り付けられている。便蓋22は、便座21の上に配置され、便座21と同様に開閉可能に取り付けられて、便座21及び便器本体10の凹部を覆っている。
【0010】
機能部3は、便器本体10の後方に配置され、便器装置1の機能を発揮する各種の機能部品が取り付けられる部分である。図2に示すように、機能部3には、以下に説明する便器装置1の局部洗浄機構4及びノズル洗浄機構5が、機能部3に取り付けられている。他に、例えば脱臭ユニット91、温風ユニット92、給水バルブ61、エアギャップ機構62、ヒータ63、ポンプ64、流量センサ65、温度検知サーミスタ66、温度調整サーミスタ67等(図4参照)、及びこれらの各機構を制御する制御部7が配置される。機能部3には、これらの各機構や装置を接続し、機能部3内の機能部品に電力を供給するための電気配線や、給水用の配管等が配置される。
【0011】
脱臭ユニット91は、内部に吸引ファン及び塵芥フィルタを有し、便鉢部11内の空気を吸引して脱臭及び滅菌を行う装置である。
【0012】
温風ユニット92は、ヒータ及び送風ファンを有し、ユーザに向けて温風を送風する装置である。
【0013】
給水バルブ61は、図示しない給水源から供給される洗浄水を、以下に説明する局部洗浄機構4やノズル洗浄機構5(図3参照)へ供給する流路(高温水供給路51及び通常水供給路52、温水供給路40、図4参照)の基端に設けられる。給水バルブ61は、機能部3の後方に配置される。給水バルブ61は、洗浄水の止水及び給水を行う。
【0014】
図2に示すように、局部洗浄機構4は、便器本体10の後方に配置され、機能部3の幅方向における略中央部に、便器本体10の前後方向に沿って配置される。局部洗浄機構4は、温水供給路40と、ノズル部41と、カバー42と、給水機構43とを有する。局部洗浄機構4は、便鉢部11内に洗浄水を吐出し、ユーザの局部近傍を洗浄する装置である。
【0015】
図3に示すように、ノズル部41は、円筒状に形成され、便鉢部11内に湯水を吐出する管であり。ノズル部41は、先端側から洗浄水を吐出して、ユーザの局部近傍を洗浄する。ノズル部41は、ユーザの臀部用とビデ用の用途で設けられる隣り合う二本の管を有する。ノズル部41は、後方側から前方側へ向かって下方に傾斜して取り付けられる。ノズル部41は、ユーザがリモートコントローラーで操作することにより、洗浄水の吐出の際に前方へ移動し、使用後は後退するように進退移動する。ノズル部41の先端は便鉢部11の後方上部に配置されている。ノズル部41が後退している間は、ノズル部41が出し入れされる機能部3の開口を、シャッター41aが覆っている。
【0016】
カバー42は、一対のノズル部41の外面を覆うカバーである。カバー42は、機能部3の幅方向の略中央において、便器本体10の前後方向に延びるように配置されている。
【0017】
給水機構43は、温水供給路40を構成するホースや、湯水を供給する給水管の弁を開閉する電磁弁、これらを駆動するモータ等を有する。給水機構43は、ノズル部41の後部下方に配置されている。
【0018】
温水供給路40は、ノズル部41に温水を供給する水路である。温水供給路40は、給水バルブ61からノズル部41へ接続されるホース内の水路であり、図4に示すように、一部が後述する高温水供給路51と同じ水路を流れ、途中で高温水供給路51から分岐する。
【0019】
ヒータ63は、ノズル部41に供給する水の一部を所定温度に加熱する瞬間式熱交換器である。ヒータ63は、ノズル部41の下方に配置されている。ヒータ63は、局部洗浄機構4及び後述するノズル洗浄機構5に供給する洗浄水を予め設定された温度に加熱して、温水を生成する。生成された温水は、温度調整サーミスタ67を経て設定された温度へ調整される。
【0020】
エアギャップ機構62は、給水バルブ61から局部洗浄機構4及びノズル洗浄機構5へ供給される洗浄水の供給路に配置される。エアギャップ機構62は、下流から上流への洗浄水の逆流を防止するとともに捨て水を排水する機構である。エアギャップ機構62は、タンク621と、排水口622と、流出口623と、を有する。タンク621は、供給された洗浄水を一時的に貯留する容器である。排水口622は、タンク621に形成され、タンク621から余剰の捨て水を排水する開口である。排水口622は、後述する通常水供給路52に接続される。流出口623は、エアギャップ機構62を通じて局部洗浄機構4へ洗浄水が流出する開口であり、後述する温水供給路40に接続される。
【0021】
排水口622は、流出口623よりもタンク621内の上方に位置しており、流出口623から洗浄水が流出しきらずにタンク621内の水位が上昇した場合に、排水口622から捨て水が排水される。排水口622の下縁とタンク621の天面との間は空間が空いている。このため、仮に下流から上流への逆流が起こったとしても、排水口622から排水されるので、エアギャップ機構62よりも上流に洗浄水が逆流することが防止される。
【0022】
図3及び図4に示すように、ノズル洗浄機構5は、ノズル部41を高温水で洗浄し、洗浄に用いた湯水を便鉢部11へ流して排水する機構である。ノズル洗浄機構5は、高温水供給路51と、通常水供給路52と、混合部53と、流量センサ65と、ノズル洗浄制御を行う制御部70と、を有する。高温水供給路51は、ノズル部41に高温水を流して洗浄する水路である。高温水供給路51は、ヒータ63に接続され、ノズル部41の上部に配置されるホースにより構成される。本明細書において、高温水とは、例えば45度以上65度以下の加温された水を言い、好ましくは60度前後となるように生成される。高温水供給路51の終端には、高温水をノズル部41の先端側へ向けて吐水可能な吐水部510が設けられている。高温水は、ノズル部41の幅方向の外側に吐出され、流下する。高温水は、ノズル部41に吐水された後、後述する混合部53へ流下する。
【0023】
図4に示すように、高温水供給路51には、途中に第1切替弁51aが配置されており、温水の流通経路が高温水供給路51と温水供給路40とに切り替えられるように構成されている。すなわち、第1切替弁51aまでは、局部洗浄機構4へ供給される水とノズル洗浄機構5へ供給される水とは同じ高温水供給路51を流通する。第1切替弁51aまでは、高温水供給路51と温水供給路40とは同じホース内を流通する水路であり、第1切替弁51aから分岐する。
【0024】
通常水供給路52は、高温水よりも低い温度の通常水を供給する水路である。通常水供給路52は、給水バルブ61側を基端としてエアギャップ機構62に接続され、ノズル部41の上部に配置されるホースである。通常水供給路52は、エアギャップ機構62からの捨て水を通常水としてノズル部41のカバー42の外側表面へ供給する。通常水供給路52は、ノズル部41の幅方向略中央側に配置される。通常水は、通常水供給路52を通ってカバー42の外側表面における幅方向の中央部に吐水され、ノズル部41を伝って流下する。本明細書において通常水とは、0度以上45度未満の温度の水であり、好ましくは30度以下であり、より好ましくは25度プラスマイナス5度の常温水である。さらに好ましくは、20度程の通常水である。通常水は、高温水よりも先に吐水され、後述する混合部53に高温水よりも先に供給される。
【0025】
混合部53は、ノズル部41を洗浄した洗浄後の洗浄後高温水と通常水とを混合する容器である。混合部53は、ノズル部41の下方に配置され、トレー部531と、貯留部532と、排水孔533と、を有する。
【0026】
トレー部531は、供給される湯水を受け止めるため、ノズル部41の下方に延出する平坦で広い面を有する。トレー部531は、機能部3を構成するベースプレートの一部であってもよい。トレー部531は、ノズル部41に吐水されてノズル部41の表面を伝った高温水、及びノズル部41の外側に吐水される通常水を下方で受け止める。トレー部531には、下方に向かって排水勾配が設けられている。
【0027】
貯留部532は、トレー部531の前方で後退したノズル部41の先端側の下方に配置され、湯水を貯留可能な凹部を有する。貯留部532は、少なくとも、後退したノズル部41の下方まで延びる前後方向の長さと、ノズル部41の幅方向以上の幅を有する。貯留部532には、洗浄に使用された洗浄後高温水が流下される前に、通常水供給路52から通常水が供給されて貯留されている。通常水が貯留された貯留部532に、上方からノズル部41を洗浄した洗浄後高温水が流下して通常水に混合される。貯留部532における通常水の水量は、高温水の水量よりも多くなるように構成されている。
【0028】
排水孔533は、貯留部532に設けられる。排水孔533は、貯留部532の底部に形成される貫通孔である。排水孔533を介して、混合部53で混合された水が便器本体10へ排水される。通常水供給路52は、少なくともその一部から、高温水供給路51よりも排水孔533に近くで水が混合部53に供給されるように配置されている。通常水は、高温水よりも排水孔533に近い位置で流下される。
【0029】
ポンプ64は、高温水供給路51に配置され、高温水供給路51に給水バルブ61を介して供給される水を供給するよう加圧する。
【0030】
流量センサ65は、単位時間当りにノズル洗浄機構5に供給される水の水量を検出するセンサである。具体的には、流量センサ65は、高温水供給路51に配置され、高温水供給路51を通過する水の流量を検出する。高温水供給路51を通る水は、ヒータ63で加熱される前は、まだ高温になっていない。ヒータ63で加熱される前の水量が所定量を越えていない場合、高温水となるように温度を上げると、高温水に混合して高温水を冷ますための水が足りなくなる。そこで、流量センサ65の流量に基づいて、高温水を通常水と混合して所定温度まで温度を低下することが可能か否かを制御部70が判定し、制御部70は、高温水にするための水が所定の水量を越えない場合、高温水の洗浄制御を停止する。ここで所定量とは、高温水の給水量の倍以上の量である。
【0031】
温度検知サーミスタ66は、高温水供給路51におけるヒータ63の下流に配置される。温度検知サーミスタ66は、加熱された高温水の温度を検出し、所定温度以上の場合に出湯を停止させるように設定されている。温度検知サーミスタ66は、高温水供給路51に設けられる第1サーミスタ661と、温水供給路40に設けられる第2サーミスタ662とを有する。第1サーミスタ661は、温水の温度が65度以上の場合に高温水供給路51から高温水の出湯を停止する。第2サーミスタ662は、温水供給路40を流通する温水の温度が45度以上である場合に、温水供給路40から温水の出湯を停止する。
【0032】
制御部70は、機能部3の各機構に接続される制御部7のうち、局部洗浄機構4及びノズル洗浄機構5を構成する機構に電気的に接続される回路基板である。制御部70は、ユーザがリモートコントローラー(図示省略)を操作することにより、及び、ノズル部の洗浄を予めリモートコントローラーで設定しておくことのいずれかにより、制御部70がノズル部41の洗浄の制御を開始する。予めノズル部41の洗浄を設定しておく場合には、リモートコントローラーの操作後、一定時間後にノズル部41の洗浄を行うように、ユーザが操作する。
【0033】
図4を参照して、本実施形態におけるノズル部の洗浄方法について説明する。制御部70は、ノズル部41の洗浄を開始すると、まず、図4に示すように、ノズル部41へ洗浄水を供給する供給路にある第1切替弁51aを、高温水供給路51側へ切り替える。ノズル部41へ洗浄水を供給する供給路は、高温水供給路51及び温水供給路40に分岐する前の供給路である。
【0034】
次に、給水バルブ61を起動し、給水バルブ61からエアギャップ機構62へ洗浄水を供給する。エアギャップ機構62で受水された通常水は、エアギャップ機構62から排水され、通常水供給路52を通って混合部53へ供給される。
【0035】
次に、高温水供給路51に設けられている流量センサ65にて、高温水にするために供給される水の流量を検知する。この時点では、高温水供給路51に供給される水はまだ加熱されていない。制御部70は、流量センサ65の検出結果に基づいて、高温水を通常水と混合して45度まで温度を低下することが可能か否か、空焚きの発生の有無を判定する。制御部70は、高温水供給路51に供給される加熱されていない水の流量が予め設定された所定量以上であるか否かによって空焚きの発生の有無を判定する。流量が所定量以上ある場合には、高温水を生成しても、高温水を冷ますための通常水を十分供給することが可能であり、高温水は通常水よりも多くならない。したがって、制御部70は、空焚きは発生しないと判定し、高温水洗浄制御を継続する。高温水供給路51に供給される水の流量が所定量未満である場合、高温水を生成した後、冷ますための通常水の量が足りなくなるので、空焚きが発生すると判定し、制御部70は、高温水の洗浄制御を停止する。
【0036】
次に、制御部70は、ポンプ64を駆動し、加熱可能な水をノズル部41の先端へ向けて送り出す。ポンプ64は、制御部70が空焚きの有無を判定した所定量より少ない量の水を、高温水供給路51に流す。制御部70は、ポンプ64により、例えば加熱前の水の半分以下の水を流すよう流速を低下させて流量を絞る。高温水供給路51を流れる水の流量が絞られて低下することによって、エアギャップ機構62から通常水が溢れる。この結果、加熱されない通常水が通常水供給路52を流れるようになる。エアギャップ機構62から溢れた通常水は、混合部53へ供給される。
【0037】
ヒータ63はポンプ64によって送られた水を加熱する。ヒータ63は、水を60度で出湯できるように加熱するよう制御され、加温された温水は温度検知サーミスタ66にて温度を検知される。
【0038】
次に、ヒータ63で加熱した60度前後の高温水を、高温水供給路51の終端に設けられた吐水部510からノズル部41の先端側へ向けて吐水する。このとき、高温水は、ノズル部41の先端から、好ましくはノズル部41の1/2の範囲に吐水され、ヒータ63の加熱により60度に達してから84秒以上吐水する。高温水の吐水範囲は、ノズル部41の1/2の範囲を越えてもよい。
【0039】
ノズル部41の先端の洗浄に用いられた高温水は、吐水された後、貯留部532で受け止められる。貯留部532には、先んじてエアギャップ機構62から通常水が供給されて貯水されているので、60度の高温水は、通常水と混合される。
【0040】
貯留部532で、水温を45度以下、好ましくは40度以下となるように低下させる。貯留部532で温度を下げられた水は、貯留部532の排水孔533から便鉢部11へ排水される。排水後、ヒータ63、ポンプ64、給水バルブ61を順に出力を停止する。高温洗浄の終了時には、水回路内の温度は40度以下であることが好ましく、ノズル部41の表面温度は45度以下であることが好ましい。
【0041】
ノズル部41の洗浄ではなく、局部洗浄機構4による洗浄の場合、ユーザがリモートコントローラーで、臀部の洗浄、ビデ洗浄、高温ではない温水によるノズル部の洗浄等の、所望の洗浄を行うよう指示をし、制御部70が信号を受信する。そして、給水バルブ61から高温水供給路51へ加熱前の水が供給され、第1切替弁51aでノズル部側へ流路を切り替えられる。水は、第1切替弁51aを通過後、第2サーミスタ662で再度温度検知され、45度以下の場合にユーザ側への吐出が行われる。吐出は、最初にリモートコントローラーで選択された各種の洗浄モードに合わせたポートに第2切替弁40aによって切り替えられ、ユーザ側へ吐出される。
【0042】
高温水洗浄を行っている最中にユーザが便器装置1を使用し、局部洗浄機構4を使用しようとした場合には、高温水洗浄後、所定時間の冷却時間を置いてから局部洗浄機構4の動作を開始する。ここで、所定時間とは例えば20秒である。
【0043】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。便器装置1を、ノズル部41から洗浄水を吐出してユーザを洗浄する局部洗浄機構4と、ノズル部41に高温水を流して洗浄する高温水供給路51、高温水よりも低い通常の温度の通常水を供給する通常水供給路52、並びにノズル部41の洗浄後の高温水及び通常水を混合する混合部53を有するノズル洗浄機構5と、を含んで構成した。ノズル部41を高温水で洗浄することにより、効果的な除菌を行うことができる。高温水を用いて洗浄しても、混合部53にて高温水よりも低い温度の通常水と混合してから便器本体10へ吐水することができるので、便器本体10を高温水で痛めることを防止することができ、便器本体の耐久性が向上する。よって衛生的かつ耐久性の高い便器装置1を提供することができる。
【0044】
本実施形態によれば、ノズル部41の下方に混合部53を配置し、高温水を混合部53に流下させた。これにより、洗浄に使用した高温水の温度を混合部で低下させることができるので、上記と同様の効果を奏する。
【0045】
本実施形態によれば、混合部53における通常水の水量を、高温水の水量よりも多くした。これにより、高温水の温度を効果的に低下させることができ、上記と同様の効果を奏する。
【0046】
本実施形態によれば、通常水を、高温水よりも先に吐水し、混合部53に高温水よりも先に供給させた。これにより、混合部53が高温水のみを直に受けることがなく、通常水が満たされた状態で高温水を受け止めることができる。よって、混合部の耐久性を向上させることができる。
【0047】
本実施形態によれば、局部洗浄機構4に供給される洗浄水の逆流を防止するとともに、捨て水を排水するエアギャップ機構62をさらに備え、通常水を、エアギャップ機構62から供給させた。通常水を供給するために別途の供給路を設けなくてよいので、簡易な構成で高温水の温度を通常水により低下させることができる。
【0048】
本実施形態によれば、混合部53を、混合した水を便器本体10へ排水する排水孔533を含んで構成した。通常水を、高温水よりも排水孔533に近い位置で流下させた。通常水が高温水よりも早く排水孔533から排水されるように構成することで、より確実で安全に高温水を冷まして便器本体10へ排水させることができる。
【0049】
本実施形態によれば、ノズル洗浄機構5を、ノズル洗浄機構5に供給される水の流量を検出する流量センサ65と、流量センサ65の流量に基づいて、高温水を通常水と混合して所定温度まで温度を低下することが可能か否かの判定する制御部70と、を含んで構成した。制御部70に、高温水にするための水が所定の水量を越える場合、高温水の洗浄制御を停止させた。これにより、高温水を冷ますための通常水の水量を確保したうえで高温水を所定量生成することができるので、安全かつ確実に通常水に高温水を混合して高温水の温度を低下させることができる。
【0050】
本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、変形、改良等は本開示に含まれる。例えば、混合部をノズル部の周囲を覆うように形成してもよい。高温水でノズル部を洗浄している間に密閉し、その後、密閉した混合部内に高温水よりも低い通常の温度の通常水を供給してもよい。通常水は、加温されたぬるめの温水であってもよい。高温水供給路は、ノズル部の幅方向外側の一方と他方に配置され、通常水供給路の両側から高温水を吐水してもよい。
【0051】
高温水を、45度以上65度以下と例示した。しかし、通常水によって温度を低下することができればよく、65度を超える温度で生成されてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 便器装置、 4 局部洗浄機構、 5 ノズル洗浄機構、 10 便器本体、 51 高温水供給路、 52 通常水供給路、 53 混合部、 65 流量センサ、 62 エアギャップ機構、 70 制御部
図1
図2
図3
図4