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特許7390226粘着剤組成物、粘着剤層および粘着シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着剤層および粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20231124BHJP
   C09J 129/10 20060101ALI20231124BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20231124BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20231124BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20231124BHJP
【FI】
C09J133/00
C09J129/10
C09J133/06
C09J133/14
C09J7/38
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020047859
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021147466
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横倉 精二
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第00155557(EP,A1)
【文献】特開昭49-015731(JP,A)
【文献】米国特許第03657396(US,A)
【文献】米国特許第03313647(US,A)
【文献】国際公開第2020/213659(WO,A1)
【文献】Alexander Zettl,Modifizierung von Polyacrylatdispersionen fuer Haftklebstoffe. Teil II.,Adhaesion ,ドイツ,1998年03月,Vol.33 No.3,Page.27-32
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00ー201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル重合体(A)と、
架橋剤(B)と、
下記式(1)で表される構成単位を有するポリビニルエーテル(C)と
を含有し、
前記(メタ)アクリル重合体(A)100質量部に対して、前記ポリビニルエーテル(C)を3~50質量部含有し、
前記(メタ)アクリル重合体(A)が、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートおよびアルキル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種と、架橋性官能基含有モノマーとを含む重合性単量体の共重合体である、
粘着剤組成物。
【化1】
[式(1)中、Rは、炭素数1~20のアルキル基、または炭素数2~20のアルコキシアルキル基である。]
【請求項2】
前記ポリビニルエーテル(C)の重量平均分子量(Mw)が、3万~80万である請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記ポリビニルエーテル(C)が、ポリビニルメチルエーテルである請求項1または2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル重合体(A)が、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートを51~99.5質量%と、架橋性官能基含有モノマーを0.5~5質量%とを含む重合性単量体の共重合体である請求項1~のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の粘着剤組成物から形成された粘着剤層。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、粘着剤層および粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤層を有する粘着シートは、屋外に設置される対象物に貼付されることがある。屋外に設置される対象物に貼付された粘着シートは、紫外線環境下に晒される。また、粘着シートの貼付対象物が屋外にない場合でも、その貼付対象物が紫外線に晒される場合もある。以下、貼付対象物を「被着体」ともいう。粘着シートとしては、従来、種々の粘着シートが知られている(例えば、特許文献1、2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-317090号公報
【文献】特開2017-082103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粘着シートは被着体に貼付された後、短期間で剥がされる場合があり、粘着シートを被着体から剥離するときに、被着体への糊残りを抑制できる特性が求められている。しかしながら、従来の粘着シートでは、紫外線に晒された後に剥離を行うと、糊残りの発生が確認されていた。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、被着体に貼付後、紫外線に晒された粘着シートを剥離するときに、被着体への糊残りを抑制できる粘着剤層を形成可能な粘着剤組成物、粘着剤層および粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく検討した結果、以下に記載の粘着剤組成物により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は例えば以下の通りである。
【0007】
[1](メタ)アクリル重合体(A)と、架橋剤(B)と、下記式(1)で表される構成単位を有するポリビニルエーテル(C)とを含有し、前記(メタ)アクリル重合体(A)100質量部に対して、前記ポリビニルエーテル(C)を3~50質量部含有する粘着剤組成物。
【0008】
【化1】
[式(1)中、Rは、炭素数1~20のアルキル基、または炭素数2~20のアルコキシアルキル基である。]
【0009】
[2]前記ポリビニルエーテル(C)の重量平均分子量(Mw)が、3万~80万である前記[1]に記載の粘着剤組成物。
[3]前記ポリビニルエーテル(C)が、ポリビニルメチルエーテルである前記[1]または[2]に記載の粘着剤組成物。
[4]前記(メタ)アクリル重合体(A)が、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートおよびアルキル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種と、架橋性官能基含有モノマーとを含む重合性単量体の共重合体である前記[1]~[3]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[5]前記(メタ)アクリル重合体(A)が、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートを51~99.5質量%と、架橋性官能基含有モノマーを0.5~5質量%とを含む重合性単量体の共重合体である前記[1]~[4]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[6]前記[1]~[5]のいずれかに記載の粘着剤組成物から形成された粘着剤層。
[7]前記[1]~[5]のいずれかに記載の粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する粘着シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被着体に貼付後、紫外線に晒された後に粘着シートを剥離するときに、被着体への糊残りを抑制できる粘着剤層を形成可能な粘着剤組成物、粘着剤層および粘着シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の粘着剤組成物、粘着剤層および粘着シートを説明する。
本明細書において、アクリルおよびメタクリルを総称して「(メタ)アクリル」とも記載する。
【0012】
〔粘着剤組成物〕
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル重合体(A)と、架橋剤(B)と、後述する構成単位を有するポリビニルエーテル(C)とを含有する。
【0013】
[(メタ)アクリル重合体(A)]
(メタ)アクリル重合体(A)は、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルを含む重合性単量体からなる重合体である。前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、脂環式基含有(メタ)アクリレート、芳香族基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、水酸基含有(メタ)アクリレートおよびカルボキシ基含有(メタ)アクリレートも挙げられるが、これらは架橋性官能基含有モノマーとして後述する。
【0014】
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシメチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3-エトキシプロピル(メタ)アクリレート、4-メトキシブチル(メタ)アクリレート、4-エトキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。アルコキシアルキル(メタ)アクリレートにおけるアルコキシアルキル基の炭素数は、通常は2~20、好ましくは2~10、より好ましくは2~6である。
【0015】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキル基の炭素数は、通常は1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~8である。
【0016】
アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0017】
脂環式基または芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0018】
以上の重合性単量体は、1種または2種以上用いることができる。
前記重合性単量体は、架橋性官能基含有モノマーを含むことが好ましい。架橋性官能基含有モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマーおよび酸基含有モノマーが挙げられる。
【0019】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロシキブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0020】
酸基としては、例えば、カルボキシ基、酸無水物基、リン酸基、硫酸基が挙げられる。
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸β-カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸5-カルボキシペンチル、コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等のカルボキシ基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸が挙げられる。カルボキシ基以外の酸基含有モノマーとしては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸等の酸無水物基含有モノマー;側鎖にリン酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー等のリン酸基含有モノマー;側鎖に硫酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー等の硫酸基含有モノマーが挙げられる。
【0021】
架橋剤(B)として後述するイソシアネート系架橋剤を用いる場合、架橋性官能基含有モノマーの中でも、水酸基含有モノマーが好ましい。水酸基含有モノマー由来の水酸基の少なくとも一部は、(メタ)アクリル重合体(A)中で架橋点となり、例えば後述するイソシアネート系架橋剤のイソシアネート基と反応することで、架橋構造(ネットワークポリマー)を形成することができる。
【0022】
架橋性官能基含有モノマーは、1種または2種以上用いることができる。
(メタ)アクリル重合体(A)を形成するために用いられる重合性単量体100質量%中、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートおよびアルキル(メタ)アクリレートの合計使用割合は、好ましくは51~99.5質量%、より好ましくは55~99質量%、さらに好ましくは60~97質量%である。
【0023】
一実施態様では、(メタ)アクリル重合体(A)を形成するために用いられる重合性単量体100質量%中、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートの使用割合は、糊残りがより低減されることから、好ましくは51~99.5質量%、より好ましくは55~97質量%、さらに好ましくは60~95質量%である。
【0024】
他の一実施態様では、(メタ)アクリル重合体(A)を形成するために用いられる重合性単量体100質量%中、アルキル(メタ)アクリレートの使用割合は、粘着物性発現の観点から、好ましくは0~48.5質量%、より好ましくは2~44質量%、さらに好ましくは4~37質量%である。
【0025】
架橋性官能基含有モノマーの使用割合は、(メタ)アクリル重合体(A)を形成するために用いられる重合性単量体100質量%中、好ましくは0.5~5質量%、より好ましくは1~5質量%、さらに好ましくは1.5~4質量%である。このような態様であると、(メタ)アクリル重合体(A)の架橋構造が適度に形成され、適度な柔軟性を有する粘着剤層が得られる傾向にある。
【0026】
(メタ)アクリル重合体(A)は、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートおよびアルキル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種と、架橋性官能基含有モノマーとを含む重合性単量体の共重合体であることが好ましい。
【0027】
(メタ)アクリル重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定される重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算値で、通常は20万~150万であり、好ましくは25万~120万、より好ましくは30万~100万である。Mwが前記範囲にある(メタ)アクリル重合体(A)を用いることで、粘着力のバランスを取りやすく、塗工に適した粘度の粘着剤組成物とすることができる。
【0028】
GPCの測定条件の詳細は、後述する実施例欄に記載する。
(メタ)アクリル重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、例えば、当該重合体を構成する重合性単量体単位およびその含有割合から、Foxの式により算定することができる。例えば、Foxの式により求めた、(メタ)アクリル重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、通常は-70~-10℃、好ましくは-60~-20℃である。
【0029】
Foxの式における各重合性単量体からなるホモポリマーのガラス転移温度は、例えば、Polymer Handbook Fourth Edition(Wiley-Interscience 2003)記載の値を用いることができる。
【0030】
(メタ)アクリル重合体(A)は、1種または2種以上用いることができる。
(メタ)アクリル重合体(A)を製造する方法としては、上述した重合性単量体を重合し得る方法をいずれも採用することができるが、塊状重合または溶液重合により製造することが好ましい。例えば、反応容器内に重合性単量体を仕込み、重合開始剤を添加し、反応温度50~90℃程度で2~20時間反応させる。前記反応においては、必要に応じて重合溶媒が仕込まれていてもよい。例えば、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で重合を行う。また、重合反応中に、重合性単量体、重合開始剤、連鎖移動剤、重合溶媒を適宜追加添加してもよい。
【0031】
重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤が挙げられる。アゾ化合物系重合開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)が挙げられる。過酸化物系重合開始剤としては、例えば、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、カプロイルパーオキシド、ジ-イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシビバレートが挙げられる。
【0032】
重合開始剤は、1種または2種以上用いることができる。
重合開始剤の使用量は、前記重合性単量体100質量部に対して、通常は0.001~2質量部、好ましくは0.002~1質量部である。
【0033】
重合溶媒としては、有機溶媒が好ましい。
有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、フェニルエチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル;クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル;アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセタミド、N-メチルピロリドン等のアミド;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシドが挙げられる。
重合溶媒は、1種または2種以上用いることができる。
【0034】
[架橋剤(B)]
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤(B)を含有する。架橋剤(B)は(メタ)アクリル重合体(A)に導入されうる架橋性基によって適宜選択され、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤を用いることができ、好ましくはイソシアネート系架橋剤である。
【0035】
架橋剤(B)により、(メタ)アクリル重合体(A)を架橋することで、架橋構造(ネットワークポリマー)を形成することができる。
架橋剤(B)は、1種または2種以上用いることができる。
【0036】
本発明の粘着剤組成物において、架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル重合体(A)100質量部に対して、0.3~5質量部であることが好ましく、0.5~3質量部であることがより好ましい。前記範囲内で架橋剤(B)を配合することにより、粘着剤組成物から形成される粘着剤層は、粘着剤層の凝集力により充分な耐熱性を得ることができる。また、粘着剤層の基材からのはみ出しや、被着体への糊残りの付着が抑制され、作業性に優れる。
【0037】
イソシアネート系架橋剤は、通常、1分子中のイソシアネート基数が好ましくは2~8、より好ましくは3~6の化合物である。イソシアネート基数が前記範囲にあると、(メタ)アクリル重合体(A)とイソシアネート系架橋剤との架橋反応効率、および粘着剤層の柔軟性を保つ観点から好ましい。
【0038】
1分子中のイソシアネート基数が2のジイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等の炭素数4~30の脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
【0039】
脂環族ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、シクロペンチルジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の炭素数7~30の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
【0040】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルプロパンジイソシアネート等の炭素数8~30の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0041】
1分子中のイソシアネート基数が3以上のイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。具体的には、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、4,4',4''-トリフェニルメタントリイソシアネートが挙げられる。
【0042】
また、イソシアネート系架橋剤としては、例えば、イソシアネート基数が2または3以上の前記イソシアネート化合物の多量体、誘導体または重合物が挙げられる。
前記多量体としては、例えば、2量体、3量体、ビウレット体およびイソシアヌレート体が挙げられ、前記誘導体としては、例えば、多価アルコールと2分子以上のジイソシアネート化合物との付加反応生成物が挙げられる。
【0043】
前記誘導体における多価アルコールとしては、低分子量または高分子量の多価アルコールが挙げられ、低分子量多価アルコールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリトリトール等の3価以上のアルコール;高分子量多価アルコールとして、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールが挙げられる。
【0044】
このようなイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの3量体;ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはトリレンジイソシアネートのビウレット体もしくはイソシアヌレート体;トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートまたはキシリレンジイソシアネートとの反応生成物(例えばトリレンジイソシアネートまたはキシリレンジイソシアネートの3分子付加物);トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物(例えばヘキサメチレンジイソシアネートの3分子付加物);ポリエーテルポリイソシアネート;ポリエステルポリイソシアネートが挙げられる。
【0045】
エポキシ系架橋剤としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられ、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1,3-ビス(N,N'-ジアミングリシジルアミノメチル)が挙げられる。
【0046】
金属キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属に、アルコキシド、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル等が配位した化合物が挙げられる。具体的には、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムセカンダリーブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネートが挙げられる。
【0047】
[ポリビニルエーテル(C)]
ポリビニルエーテル(C)は、下記式(1)で表される構成単位を有し、好ましくは下記式(1)で表される繰り返し構成単位を有する。
【0048】
(メタ)アクリル重合体(A)および架橋剤(B)とともに、ポリビニルエーテル(C)を含有する粘着剤組成物から形成された粘着剤層は、被着体に当該粘着剤層を貼付後、紫外線に晒された後に剥離しても、被着体への糊残り量は少ない。この理由は定かではないが、本発明者らは、(メタ)アクリル重合体(A)よりもポリビニルエーテル(C)が紫外線により分解・変質等しやすいこと、およびポリビニルエーテル(C)は粘着剤層の架橋構造に関与していないと考えられることから、ポリビニルエーテル(C)が存在することで、粘着剤層が紫外線に晒された場合であってもその架橋構造が維持されるためであると推測している。
【0049】
【化2】
式(1)中、Rは、炭素数1~20のアルキル基、または炭素数2~20のアルコキシアルキル基である。
【0050】
前記アルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~5である。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、2-エチルヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基が挙げられる。
【0051】
前記アルコキシアルキル基の炭素数は、好ましくは2~10、より好ましくは2~6である。前記アルコキシアルキル基としては、例えば、メトキシメチル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、3-メトキシプロピル基、3-エトキシプロピル基、4-メトキシブチル基、4-エトキシブチル基が挙げられる。
【0052】
ポリビニルエーテル(C)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは3万~80万であり、粘着剤層とした場合のブリードアウトを抑制する観点から、より好ましくは15万~80万であり、さらに好ましくは20万~75万である。Mwは、GPC法により測定され、ポリスチレン換算で算出される。
【0053】
ポリビニルエーテル(C)は、好ましくはポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテルおよびポリビニルイソプロピルエーテルであり、より好ましくはポリビニルメチルエーテルである。
【0054】
ポリビニルエーテル(C)としては、例えば、ビニルエーテルモノマーを重合して得られた重合体、ビニルエーテルモノマーとオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーとを共重合して得られた重合体が挙げられる。
【0055】
ビニルエーテルモノマーとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、sec-ブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、n-ペンチルビニルエーテル、n-ヘキシルビニルエーテル、2-メトキシエチルビニルエーテル、2-エトキシエチルビニルエーテルが挙げられる。ビニルエーテルモノマーは、1種または2種以上用いることができる。
【0056】
オレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ジイソブチレン、トリイソブチレン、スチレン、α-メチルスチレン、アルキル置換スチレンが挙げられる。オレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーは、1種または2種以上用いることができる。
【0057】
ポリビニルエーテル(C)が共重合体である場合は、ブロック共重合体およびランダム共重合体のいずれであってもよい。
また、市場で入手可能である、センカ製のポリビニルメチルエーテルを使用することができる。
【0058】
ポリビニルエーテル(C)は、1種または2種以上用いることができる。
本発明の粘着剤組成物において、ポリビニルエーテル(C)の含有量は、(メタ)アクリル重合体(A)100質量部に対して、3~50質量部であり、より好ましくは3.5~30質量部、さらに好ましくは4~25質量部である。このような態様であると、被着体から粘着剤層を剥離した際の糊残り低減および粘着物性の発現の観点から好ましい。
【0059】
[添加剤]
本発明の粘着剤組成物は、上記成分のほか、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、光安定剤、金属腐蝕防止剤、粘着付与剤、可塑剤、架橋促進剤、界面活性剤から選択される1種または2種以上を含有してもよい。
【0060】
[有機溶媒]
本発明の粘着剤組成物は、有機溶媒を含有することが好ましい。
有機溶媒としては、例えば、(メタ)アクリル重合体(A)の製造方法の説明で記載した重合溶媒が挙げられる。
本発明の粘着剤組成物において、有機溶媒の含有割合は、通常は0~90質量%であり、好ましくは10~80質量%である。
【0061】
〔粘着剤組成物の調製〕
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル重合体(A)と、架橋剤(B)と、ポリビニルエーテル(C)と、必要に応じて添加剤等の他の成分とを、従来公知の方法により混合することで調製することができる。例えば、(メタ)アクリル重合体(A)を合成する際に得られた、(メタ)アクリル重合体(A)を含むポリマー溶液に、架橋剤(B)と、ポリビニルエーテル(C)と、必要に応じて添加剤等の他の成分とを配合することが挙げられる。
【0062】
〔粘着剤層〕
本発明の粘着剤層は、上述の粘着剤組成物から形成される。例えば、上述の粘着剤組成物中の架橋反応を進めることにより、具体的には(メタ)アクリル重合体(A)を架橋剤(B)で架橋することにより、前記粘着剤層が得られる。
【0063】
粘着剤層の形成条件は、例えば以下のとおりである。本発明の粘着剤組成物を基材または剥離処理されたセパレータフィルム上に塗布し、溶媒の種類によっても異なるが、通常50~150℃、好ましくは60~100℃で、通常1~10分間、好ましくは2~7分間乾燥して溶媒を除去し、塗膜を形成する。乾燥塗膜の厚さは、通常5~75μm、好ましくは25~60μmである。
【0064】
粘着剤層は、以下の条件で形成することが好ましい。本発明の粘着剤組成物を基材または剥離処理されたセパレータフィルム上に塗布し、上記条件で形成された塗膜上に剥離処理されたセパレータフィルムまたは基材を貼付した後、通常3日以上、好ましくは7~10日間、通常5~60℃、好ましくは15~40℃、通常30~70%RH、好ましくは40~70%RHの環境下で熟成する。上記のような熟成条件で架橋を行うと、効率よく架橋構造(ネットワークポリマー)の形成が可能である。
【0065】
粘着剤組成物の塗布方法としては、公知の方法、例えばスピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法により、所定の厚さになるように塗布する方法を用いることができる。
【0066】
基材および剥離処理されたセパレータフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルムが挙げられる。基材および剥離処理されたセパレータフィルムの厚さは、特に限定されないが、通常10~150μm、好ましくは25~125μmである。
以上により得られる粘着剤層は、糊残りを抑制できる特性を有する他に、粘着剤としての粘着力および耐久性が優れたものとなる。
【0067】
〔粘着シート〕
本発明の粘着シートは、上述の粘着剤組成物より形成された上記粘着剤層を有する。粘着シートとしては、例えば、上記粘着剤層のみを有する両面粘着シート、基材と、基材の両面に形成された上記粘着剤層とを有する両面粘着シート、基材と、基材の一方の面に形成された上記粘着剤層を有する片面粘着シート、およびそれら粘着シートの粘着剤層の基材と接していない面に剥離処理されたセパレータフィルムが貼付された粘着シートが挙げられる。
【0068】
本発明の粘着シートは、被着体に貼付後、紫外線に晒された後に剥離される場合でも、被着体への糊残り量が少ないという特性を有する。このため、本発明の粘着シートは、紫外線に晒される用途、例えば、屋外で使用される用途にも好適に使用することができる。
【0069】
本発明の粘着シートは、例えば、建築・建材用途、電子材料用途、自動車用途などにおける、通気性シート、保護シート、遮水シート、遮光シート、制振シート、調光シート、帯電防止シート、養生シート、遮音シート、化粧シート、マーキングシート、難燃シートなどとして有用である。基材は、各シートに応じて適宜選択される。
【実施例
【0070】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されない。以下の実施例等の記載において、特に言及しない限り、「部」は「質量部」を示す。
【0071】
[重量平均分子量(Mw)]
(メタ)アクリル重合体(A)およびポリビニルエーテル(C)について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、下記条件で標準ポリスチレン換算によるMwを求めた。
・測定装置:HLC-8120GPC(東ソー製)
・GPCカラム構成:以下の5連カラム(すべて東ソー製)
(1)TSK-GEL HXL-H (ガードカラム)
(2)TSK-GEL G7000HXL
(3)TSK-GEL GMHXL
(4)TSK-GEL GMHXL
(5)TSK-GEL G2500HXL
・サンプル濃度:1.0mg/cm3となるように、テトラヒドロフランで希釈
・移動相溶媒:テトラヒドロフラン
・流量:1.0cm3/min
・カラム温度:40℃
【0072】
[製造例1]
撹拌機、還流冷却器、温度計および窒素導入管を備えた反応装置に、n-ブチルアクリレート(BA)96.5部、アクリル酸(AA)3部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)0.5部、および酢酸エチル130部を仕込み、窒素ガスを導入しながら75℃に昇温した。次いで、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を加え、窒素雰囲気下、75~76℃で4時間重合反応を行い、(メタ)アクリル重合体(a1)を得た(下記表1:実施例1参照)。
【0073】
[製造例2~3]
重合性単量体の種類および使用量を下記表1に記載したとおりに変更したこと以外は製造例1と同様にして、(メタ)アクリル重合体(a2)、(メタ)アクリル重合体(a3)を得た。
【0074】
[実施例1]
製造例1で得られた上記(メタ)アクリル重合体(a1)を含む溶液に、上記(メタ)アクリル重合体(a1)100部に対して、イソシアネート系架橋剤(綜研化学製、L-45)を0.5部、Mwが46万のポリビニルメチルエーテルを5部となる量で配合して、粘着剤組成物を得た。
【0075】
[実施例2~7、比較例1~4]
配合組成を表1に記載したとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、粘着剤組成物を得た。
【0076】
[粘着シートの作製]
実施例および比較例で得られた粘着剤組成物を、剥離処理されたポリエチレンテレフタレート(以下「PET」ともいう。)フィルム1上に、乾燥後の厚さが30μmになるように塗布し、80℃で3分間乾燥させ溶媒を除去して、粘着剤層を形成した。粘着剤層のPETフィルム1と接している面とは反対側表面に、剥離処理されたPETフィルム2を貼り合わせた。次いで、23℃、65%RH環境下で7日間熟成を行った。その後、剥離処理されたPETフィルム1を剥がし、露出した粘着剤層に厚さ100μmのPETフィルム3を貼付し、厚さ30μmの粘着剤層を有する粘着シートを得た。
【0077】
[評価:粘着力]
得られた粘着シートを25mm幅に裁断し、試験片を作成した。試験片から剥離処理されたPETフィルム2を剥がし、露出した粘着剤層をガラス板に貼付した後、50℃/5atmに調整されたオートクレーブ中に20分間保持し、圧着した。圧着後23℃/50%RH環境下で1時間放置したサンプルと、圧着後23℃/50%RH環境下で150時間放置したサンプルを準備し、各々のサンプルについて粘着シートをガラス板に対して180°の角度で、300mm/minの速度で試験片端部を引っ張り、粘着力を測定した。
【0078】
[評価:糊残り]
得られた粘着シートを、25mm×100mmのサイズに裁断し、剥離処理されたPETフィルム2を剥がし、露出した粘着剤層をガラス板に貼付した後、50℃/5atmに調整されたオートクレーブ中に20分間保持し、圧着し、試験片を得た。圧着後、試験片を23℃/50%RH環境下で150時間静置した。その後、試験片に193nmの紫外線を10J/cm2照射し、被着体(ガラス板)から粘着シートを剥離し、被着体への糊残りの状態を確認した。結果を表1に表す。
糊残りの評価基準は下記の通りである。
AA:糊残り、粘着シートの貼跡が確認されない。
BB:糊残りは確認されないが、僅かに粘着シートの貼跡が確認される。
CC:粘着シート貼付箇所の一部に糊残りが確認される。
DD:粘着シート貼付箇所の全面にわたって糊残りが確認される。
【0079】
【表1】
BA :n-ブチルアクリレート
2EHA:2-エチルへキシルアクリレート
MEA :2-メトキシエチルアクリレート
AA :アクリル酸
HEA :2-ヒドロキシエチルアクリレート
L-45:イソシアネート系架橋剤(綜研化学製)
PVME1:Mw46万のポリビニルメチルエーテル
PVME2:Mw5万のポリビニルメチルエーテル
TEGDME:テトラエチレングリコールジメチルエーテル
【0080】
実施例1~7で得られる粘着シートは、被着体に貼付後、紫外線を照射した場合であっても、剥離した後の被着体への糊残りは確認されなかった。特に重量平均分子量(Mw)が高いポリビニルエーテル(C)を使用した場合、長期間に渡って粘着力が維持される結果となった。
【0081】
比較例1(ポリビニルエーテル(C)の含有量が所定量未満)、比較例4(ポリビニルエーテル(C)でないエーテル化合物を使用)で得られる粘着シートにおいては、紫外線照射後、剥離した際の被着体に糊残りが確認された。
【0082】
ポリビニルエーテル(C)を所定量以上配合させた比較例2においては、(メタ)アクリル重合体(A)との相溶性が悪い結果となった。
架橋剤を多量配合し、粘着剤層の架橋度を上げた比較例3の粘着シートにおいても紫外線照射後、剥離した際の被着体に糊残りが確認されたことから、ポリビニルエーテル(C)が配合されていない粘着剤層における紫外線照射後の糊残りは、紫外線照射により粘着剤層の架橋構造が破壊されることにより生じることが示唆された。