(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】掴み替え装置及び曲げ加工システム
(51)【国際特許分類】
B21D 5/02 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
B21D5/02 U
(21)【出願番号】P 2020047901
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】小泉 典久
(72)【発明者】
【氏名】西畠 裕人
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-13303(JP,A)
【文献】特開昭54-138857(JP,A)
【文献】特開平4-75720(JP,A)
【文献】国際公開第2012/63710(WO,A1)
【文献】特開平5-57354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレスブレーキの前方に左右方向へ移動可能に設けられた左右一対のキャリッジと、
各キャリッジに昇降可能に設けられ、上側に水平姿勢のワークを載置するためのワーク載置部を有した昇降体と、
各昇降体に左右方向内側に突出して設けられ、垂直姿勢のワークの端部を把持する第1ワーククランプと、
一対の前記昇降体のうちの少なくともいずれかの前記昇降体に左右方向外側に突出して設けられ、ワークの端部に成形された曲げフランジとの干渉を回避するための逃げ凹部を有し、垂直姿勢のワークの端部を把持する第2ワーククランプと、を備えたことを特徴とする掴み替え装置。
【請求項2】
各第1ワーククランプは、
各昇降体に左右方向内側に突出して設けられた第1固定クランプ爪と、
各昇降体に前記第1固定クランプ爪に対して接近離反する前後方向へ移動可能に設けられた第1可動クランプ爪と、を有し、
前記第2ワーククランプは、
いずれかの前記昇降体に左右方向外側に突出して設けられた第2固定クランプ爪と、
いずれかの前記昇降体に前記第2固定クランプ爪に対して接近離反する前後方向へ移動可能に設けられた第2可動クランプ爪と、を有し、
前記第2可動クランプ爪は、対応する前記第1可動クランプ爪と一体に構成され、前記第2固定クランプ爪又は前記第2可動クランプ爪に前記逃げ凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の掴み替え装置。
【請求項3】
ワークの曲げ加工を行うプレスブレーキと、
ワークの曲げ加工の補助を行う曲げロボットと、
請求項1又は請求項2に記載の掴み替え装置と、
前記曲げロボットのロボットハンドによるワークの掴み替えを行う前に、前記プレスブレーキの前方であっていずれかの前記キャリッジの左右方向外側に前記曲げロボットの動作領域を確保するために、いずれかの前記キャリッジが左右方向内側へ移動するように前記掴み替え装置を制御する掴み替えコントローラと、を備えたことを特徴とする曲げ加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げロボットのロボットハンドによるワークの掴み替えを行うための掴み替え装置、及びワークの曲げ加工を行うための曲げ加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
曲げ加工システムは、ワークの曲げ加工を行うプレスブレーキと、ワークの曲げ加工を補助する曲げロボットとを備えている。曲げロボットは、多関節のロボットアームと、ロボットアームの先端部に着脱可能に設けられかつワークを保持するロボットハンドとを有している。ここで、通常サイズ又は大型のワークの曲げ加工を行う場合には、ロボットハンドとして主に、ワークの表面又は裏面を吸着する複数のバキュームパッドを有した吸着式のロボットハンドが用いられる。帯状のワークの曲げ加工を行う場合には、ロボットハンドとして主に、ワークの端部を把持するグリッパ(ワーククランプ)を有した把持式のロボットハンドが用いられる。また、特許文献1に示す曲げ加工システムは、プレスブレーキ及び曲げロボットの他に、ロボットハンドによるワークの掴み替えを行うための掴み替え装置(特許文献1ではワークサポート装置)を備えている。そして、先行技術に係る掴み替え装置の構成について簡単に説明すると、次の通りである。
【0003】
プレスブレーキの前方には、左右一対のキャリッジ(特許文献1では左右移動部材)が左右方向へ移動可能に設けられている。各キャリッジには、昇降体(特許文献1では上下移動部材)が昇降可能に設けられている。各昇降体は、その上側に、水平姿勢の通常サイズ又は大型のワークを載置するためのワーク載置部(特許文献1ではワーク支持部)を有している。また、各昇降体の正面には、垂直姿勢の帯状のワークの端部を把持するワーククランプが設けられている。各ワーククランプは、各昇降体の正面に左右方向内側に突出して設けられた固定クランプ爪(特許文献1では固定クランプジョー)と、各昇降体の正面に固定クランプ爪に対して接近離反する前後方向へ移動可能に設けられた可動クランプ爪(特許文献1では可動クランプジョー)とを有している。
【0004】
従って、通常サイズ又は大型のワークの一連の曲げ加工中に、曲げロボットによって水平姿勢のワークを一対のワーク載置部に載置させて、ワークの表面と裏面との間で吸着式のロボットハンドの掴み換えを行う。また、帯状のワークの一連の曲げ加工中に、一対のワーククランプによって垂直姿勢のワークの端部を把持して、ワークの端部と他の端部との間で把持式のロボットハンドの掴み換えを行う。
【0005】
なお、本発明に関連する先行技術として特許文献1の他に、特許文献2に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-13303号公報
【文献】特開2016-112667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、小物のワークの曲げ加工を行う場合には、帯状のワークの曲げ加工を行う場合と同様に、ロボットハンドとして主に把持式のロボットハンドが用いられる。小物のワークの端部に曲げフランジが成形された後に、ワーククランプによって小物のワークの曲げフランジ成形済みの端部を把持することができない。また、小物のワークの端部がワーク載置部から突出した状態で、小物のワークをワーク載置部に安定的に載置させることもできない。つまり、小物のワークの一連の曲げ加工中に、小物のワークにおける曲げフランジ未成形の端部と曲げフランジ成形済みの端部との間で把持式のロボットハンドの掴み換えを行うことができない。その結果、曲げ加工システムによって小物のワークの一連の曲げ加工を最後まで行うことができないという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、前述の問題を解決するために、小物のワークの端部に成形された曲げフランジと干渉を回避しながら、ワークの曲げフランジ成形済みの端部を把持することができる、掴み替え装置及び曲げ加工システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1実施形態に係る掴み替え装置は、プレスブレーキの前方に左右方向へ移動可能に設けられた左右一対のキャリッジ(可動フレーム)と、各キャリッジに昇降可能に設けられ、上側に水平姿勢のワーク(板金)を載置するためのワーク載置部を有した昇降体と、各昇降体に左右方向内側に突出して設けられ、垂直姿勢のワークの端部を把持する第1ワーククランプと、一対の前記昇降体のうちの少なくともいずれかの前記昇降体に左右方向外側に突出して設けられ、ワークの端部に成形された曲げフランジとの干渉を回避するための逃げ凹部を有し、垂直姿勢のワークの端部を把持する第2ワーククランプと、を備えている。
【0010】
第1実施態様では、各第1ワーククランプは、各昇降体に左右方向内側に突出して設けられた第1固定クランプ爪と、各昇降体に前記第1固定クランプ爪に対して接近離反する前後方向へ移動可能に設けられた第1可動クランプ爪と、を有してもよい。前記第2ワーククランプは、いずれかの前記昇降体に左右方向外側に突出して設けられた第2固定クランプ爪と、いずれかの前記昇降体に前記第2固定クランプ爪に対して接近離反する前後方向へ移動可能に設けられた第2可動クランプ爪と、を有してもよい。この場合に、前記第2可動クランプ爪は、対応する前記第1固定クランプ爪と一体に構成され、前記第2固定クランプ爪又は前記第2可動クランプ爪に前記逃げ凹が形成されている。
【0011】
第1実施態様によると、前述のように、前記第2ワーククランプが前記逃げ凹部を有している。そのため、小物のワークの一連の曲げ加工中に、曲げフランジと前記第2ワーククランプとの干渉を回避しながら、前記第2ワーククランによってワークの曲げフランジ成形済みの端部を把持することができる。
【0012】
第2実施態様に係る曲げ加工システムは、ワークの曲げ加工を行うプレスブレーキと、ワークの曲げ加工の補助を行う曲げロボットと、第1実施形態に係る掴み替え装置と、前記曲げロボットのロボットハンドによる小物のワークの掴み替えを行う前に、前記プレスブレーキの前方(正面側)であっていずれかの前記キャリッジの左右方向外側に前記曲げロボットの動作領域を確保(形成)するために、いずれかの前記キャリッジが左右方向内側へ移動するように前記掴み替え装置を制御する掴み替えコントローラと、を備えている。
【0013】
第2実施態様によると、第1実施態様の作用と同様の作用を奏する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、小物のワークの一連の曲げ加工中に、小物のワークにおける曲げフランジ未成形の端部と曲げフランジ成形済みの端部との間で曲げロボットのロボットハンドの掴み換えを行うことができる。つまり、本発明よれば、曲げ加工システムによって小物のワークの一連の曲げ加工を最後まで行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る曲げ加工システムの模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る掴み替え装置の模式的な正面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る掴み替え装置の上側部分の正面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る掴み替え装置の上側部分の平面図である。
【
図5】
図5(a)は、3つの端部に曲げフランジが成形された小物のワークを示す図である。
図5(b)は、3つの端部に曲げフランジが成形された小物のワークを示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る曲げ加工システムの制御ブロック図である。
【
図7A】
図7Aは、可動グリッパ爪と固定グリッパ爪によって小物のワークの曲げフランジ未成形の端部を把持した状態で、第2ワーククランプによって小物のワークの曲げフランジ成形済みの端部を把持する様子を示す正面図である。
【
図7B】
図7Bは、可動グリッパ爪と固定グリッパ爪によって小物のワークの曲げフランジ未成形の端部を把持した状態で、第2ワーククランプによって小物のワークの曲げフランジ成形済みの端部を把持する様子を示す拡大平面図である。
【
図8A】
図8Aは、第2ワーククランプによって小物のワークの曲げフランジ成形済みの端部を把持した状態で、可動グリッパ爪と固定グリッパ爪によって小物のワークの他の曲げフランジ成形済みの端部を把持する様子を示す正面図である。
【
図8B】
図8Bは、第2ワーククランプによって小物のワークの曲げフランジ成形済みの端部を把持した状態で、可動グリッパ爪と固定グリッパ爪によって小物のワークにおける他の曲げフランジ成形済みの端部を把持する様子を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施形態について
図1から
図8Bを参照して説明する。
【0017】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「設けられる」とは、直接的に設けられることの他に、別部材を介して間接的に設けられることを含む意である。「左右方向」とは、水平方向の1つであって、プレスブレーキの長さ方向と同義である。「左右方向内側」とは、左右方向のうち、プレスブレーキの長さ方向の中心(中心線)に向かう側のことをいう。「左右方向外側」とは、左右方向のうち、プレスブレーキの長さ方向の中心に向かう側の反対側のことをいう。「前後方向」とは、左右方向に直交する水平方向のことであり、プレスブレーキの奥行方向と同義である。図面中、「FF」は前方向、「FR」は後方向、「L」は左方向、「R」は右方向、「U」は上方向、「D」は下方向をそれぞれ指している。
【0018】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る曲げ加工システム10は、ワーク(板金)Wの曲げ加工を行うためのシステムである。曲げ加工システム10の加工対象であるワークWには、通常サイズ又は大型のワークWA、帯状のワークWB、小物のワークWCが含まれる。また、曲げ加工システム10は、パンチ金型(図示省略)とダイ金型(図示省略)の協働によってワークWの曲げ加工を行うプレスブレーキ12を備えている。なお、プレスブレーキ12の構成は周知であり、その説明を省略する。
【0019】
曲げ加工システム10は、ワークWの曲げ加工の補助を行う曲げロボット14を備えており、曲げロボット14は、プレスブレーキ12の前方に設置した支持フレーム16に左右方向へ移動可能に設けられている。また、曲げロボット14は、多関節のロボットアーム18と、ロボットアーム18の先端部に着脱可能に設けられかつワークWを保持する把持式のロボットハンド20とを備えている。ロボットハンド20を含む曲げロボット14の全体的な構成は、特許文献2に示す公知の構成からなる。
【0020】
ロボットハンド20は、ロボットアーム18の先端部に着脱可能に設けられたハンド本体22(
図7B参照)と、ハンド本体22に設けられた固定グリッパ爪(固定クランプ爪)24(
図7B参照)とを有している。また、ロボットハンド20は、ハンド本体22に固定グリッパ爪24に対して接近離反する方向へ移動可能に設けられた可動グリッパ爪(可動クランプ爪)26(
図7B参照)を有している。可動グリッパ爪26には、小物のワークWCの端部に成形された曲げフランジWCf(
図5参照)との干渉を回避するための逃げ凹部26d(
図7B参照)が形成されている。
【0021】
なお、図示は省略するが、本実施形態においては、通常サイズ又は大型のワークWAの曲げ加工を行う場合には、ロボットハンド20の代わりに、特許文献1に示す吸着式のロボットハンドがロボットアーム18の先端部に装着される。帯状のワークWBの曲げ加工を行う場合には、ロボットハンド20を用いる他に、特許文献1に示す把持式のロボットハンドがロボットアーム18の先端部に装着される。
【0022】
曲げ加工システム10は、ロボットハンド20等によるワークWの掴み替え(保持替え)を行うための掴み替え装置28を備えている。そして、本実施形態に係る掴み替え装置28の具体的な構成は、次の通りである。
【0023】
図1から
図4に示すように、プレスブレーキ12と支持フレーム16の間には、左右一対のガイドフレーム30が配設されており、各ガイドフレーム30は、左右方向に延びている。また、各ガイドフレーム30には、上下方向に延びたキャリッジ32が左右方向へ移動可能に設けられている。換言すれば、プレスブレーキ12の前方(正面側)には、左右一対のキャリッジ32が左右一対のガイドフレーム30を介して左右方向へ移動可能に設けられている。そして、各ガイドフレーム30の左右方向外側の端部には、各キャリッジ32を左右方向へ移動させるための移動アクチュエータとしてのサーボモータ34が設けられている。
【0024】
各キャリッジ32には、上下方向に延びた昇降体36が昇降可能(上下方向に移動可能)に設けられている。各昇降体36は、上昇位置(
図2に示す高さ位置)と下降位置との間で昇降する。各昇降体36は、ロボットハンド20等によるワークWの掴み替えを行う際に、下降位置から上昇位置に上昇する。また、各キャリッジ32の背面(後側面)には、各昇降体36を昇降させるための昇降アクチュエータとしての昇降シリンダ38(
図7B及び
図8B参照)が設けられている。各昇降シリンダ38は、昇降可能な作動ロッド38r(
図7B及び
図8B参照)を有しており、各作動ロッド38rの先端部は、各昇降体36の適宜位置に連結されている。
【0025】
図3及び
図4に示すように、各昇降体36は、その上側に、水平姿勢の通常サイズ又は大型のワークWAを載置するための平板状のワーク載置部40を有している。一対のワーク載置部40は、特許文献1に示すように、通常サイズのワーク又は大型のワークWAの表面と裏面との間で吸着式のロボットハンドの掴み換えを行う際に用いられる。
【0026】
各昇降体36の正面(前側面)の上部には、垂直姿勢の帯状のワークWAの端部を把持する第1ワーククランプ42が左右方向内側に突出して設けられている。一対の第1ワーククランプ42は、特許文献1に示すように、帯状のワークWAの端部と他の端部との間で把持式のロボットハンドの掴み替えを行う際に用いられる。
【0027】
各第1ワーククランプ42は、各昇降体36の正面の上部に設けられたクランプシリンダ44を備えている。各クランプシリンダ44は、各昇降体36の正面に固定されたシリンダ本体44aと、各シリンダ本体44aに前後方向へ移動可能に設けられた作動ロッド44rとを有している。また、各第1ワーククランプ42は、各昇降体36の正面の上部に各クランプシリンダ44のシリンダ本体44aを介して左右方向内側に突出して設けられた第1固定クランプ爪46を有している。各第1固定クランプ爪46は、その先端部に、ゴム等の弾性体からなる把持パッド46pを含んでいる。
【0028】
各第1ワーククランプ42は、各昇降体36の正面にガイドロッド48を介して第1固定クランプ爪46に対して接近離反する前後方向に移動可能に設けられた第1可動クランプ爪50を有している。各第1可動クランプ爪50は、その先端部に、ゴム等の弾性体からなる把持パッド50pを含んでいる。各第1可動クランプ爪50の基端部は、各クランプシリンダ44の作動ロッド44rの先端部に連結されている。換言すれば、各クランプシリンダ44は、各第1可動クランプ爪50を前後方向へ移動させるクランプアクチュエータに相当する。
【0029】
一対の昇降体36のうち右側の昇降体36の正面の上部には、垂直姿勢の小物のワークWCの端部を把持する第2ワーククランプ52が左右方向外側に突出して設けられている(
図7B及び
図8B参照)。第2ワーククランプ52は、小物のワークWCにおける曲げフランジ未成形の端部と曲げフランジ成形済みの端部との間でロボットハンド20の掴み替えを行う際に用いられる。ここで、
図5(a)(b)に示すように、曲げフランジ未成形の端部とは、小物のワークWCの複数の端部のうち、曲げフランジWCfが成形される予定の端部のこという。曲げフランジ成形済みの端部とは、小物のワークWCの複数の端部のうち、曲げフランジWCfが成形された後の端部のことをいう。なお、
図5(b)においては、ワークWCの曲げフランジ未成形の端部に曲げフランジWCfが成形された様子を二点鎖線で示している。
【0030】
図3及び
図4に示すように、第2ワーククランプ52は、右側の昇降体36の正面の上部にクランプシリンダ44のシリンダ本体44aを介して左右方向外側に突出して設けられた第2固定クランプ爪54を有している。各第2固定クランプ爪54は、その先端部に、ゴム等の弾性体からなる2つの把持パッド54pを含んでいる。第2ワーククランプ52は、右側の昇降体36の正面の上部にガイドロッド56を介して第2固定クランプ爪54に対して接近離反する前後方向に移動可能に設けられた第2可動クランプ爪58を有している。第2可動クランプ爪58は、その先端部に、ゴム等の弾性体からなる2つの把持パッド58pを含んでいる。第2可動クランプ爪58は、対応する右側の第1可動クランプ爪50と一体に構成されており、右側のクランプシリンダ44の駆動により右側の第1可動クランプ爪50と一体的に前後方向へ移動する。
【0031】
第2固定クランプ爪54には、小物のワークWCの端部に成形された曲げフランジWCfとの干渉を回避するための逃げ凹部54dが後方向に凹んで形成されている。換言すれば、第2ワーククランプ52は、逃げ凹部54dを有している。第2固定クランプ爪54の逃げ凹部54dの凹み量は、曲げフランジWCfの高さよりも大きく設定されている。なお、第2固定クランプ爪54に逃げ凹部54dを形成する代わりに、第2可動クランプ爪58に小物のワークWCの曲げフランジWCfとの干渉を回避するための逃げ凹部(図示省略)が前方向に凹んで形成してもよい。
【0032】
図6に示すように、曲げ加工システム10は、曲げ加工プログラム等に基づいてプレスブレーキ12を制御するNC装置60を備えており、NC装置60は、コンピュータによって構成されている。曲げ加工システム10は、曲げ加工プログラム等に基づいて曲げロボット14を制御するロボットコントローラ62を備えている。ロボットコントローラ62は、コンピュータによって構成されており、ロボットコントローラ62は、NC装置60に接続されている。
【0033】
曲げ加工システム10は、曲げ加工プログラム等に基づいて掴み替え装置28(一対のサーボモータ34、一対の昇降シリンダ38、クランプシリンダ44)を制御する掴み替えコントローラ64を備えている。掴み替えコントローラ64は、コンピュータによって構成されており、NC装置60に接続されている。また、掴み替えコントローラ64は、ロボットハンド20による小物のワークWCの掴み替えを行う前に、プレスブレーキ12の前方であって右側のキャリッジ32の左右方向外側に曲げロボット14の動作領域MR(
図7A及び
図8A参照)を確保(形成)するために、右側のキャリッジ32が左右方向内側へ移動するように右側のサーボモータ34を制御する。なお、右側の昇降体36に対する第1ワーククランプ42と第2ワーククランプ52の左右方向の位置が反転できるように構成されていれば、前述のように右側のサーボモータ34を制御しなくても、曲げロボット14の動作領域MRを確保することができる。
【0034】
【0035】
図1及び
図6に示すように、ロボットコントローラ62によって曲げロボット14を制御しながら、NC装置60によってプレスブレーキ12を制御することにより、小物のワークWCの3つの端部に対して曲げ加工を行う。これにより、
図5(a)(b)に示すように、小物のワークWCの3つの端部に曲げフランジWCfを成形することができる。
【0036】
その後、
図6、
図7A、及び
図7Bに示すように、掴み替えコントローラ64によって右側のサーボモータ34を制御して右側のキャリッジ32を左右方向内側へ移動させて、プレスブレーキ12の前方であって右側のキャリッジ32の左右方向外側に曲げロボット14の動作領域MRを確保する。次に、可動グリッパ爪26と固定グリッパ爪24によって小物のワークWCの曲げフランジ未成形の端部を把持した状態で、ロボットコントローラ62によって曲げロボット14を制御して曲げロボット14の動作領域MRにおいてロボットアーム18等を適宜に動作させる。すると、小物のワークWCの曲げフラン成形済みの端部が第2固定クランプ爪54と第2可動クランプ爪58の間に位置する。そして、掴み替えコントローラ64によってクランプシリンダ44を制御して第2ワーククランプ52(第2固定クランプ爪54と第2可動クランプ爪58)によって小物のワークWCの曲げフラン成形済みの端部を把持する。
【0037】
図6、8A、及び
図8Bに示すように、第2ワーククランプ52によって小物のワークWCの曲げフランジ成形済みの端部を把持した後に、ロボットコントローラ62によって曲げロボット14を制御して可動グリッパ爪26と固定グリッパ爪24による把持状態を解除する。更に、ロボットコントローラ62によって曲げロボット14を制御して曲げロボット14の動作領域MRにおいてロボットアーム18等を適宜に動作さながら、可動グリッパ爪26と固定グリッパ爪24によってワークWCの他の曲げフランジ成形済みの端部を把持する。そして、掴み替えコントローラ64によってクランプシリンダ44を制御して第2ワーククランプ52による把持状態を解除する。これにより、小物のワークWCにおける曲げフランジ未成形の端部と曲げフランジ成形済みの端部との間でロボットハンド20の掴み替えを行うことができる。
【0038】
ロボットハンド20の掴み替えを行った後、ロボットコントローラ62によって曲げロボット14を制御しながら、NC装置60によってプレスブレーキ12を制御することにより、小物のワークWCの1つの端部(曲げフランジ未成形の端部)に対して曲げ加工を行う。これにより、小物のワークWCの4つの端部に曲げフランジWCfを成形して、小物のワークWCの一連の曲げ加工が終了する。
【0039】
前述のように、第2固定クランプ爪54に曲げフランジWCfとの干渉を回避するための逃げ凹部54dが後方向に凹んで形成されている。そのため、小物のワークWCの一連の曲げ加工中に、曲げフランジWCfと第2ワーククランプ52との干渉を回避しながら、第2ワーククランプ52によって小物のワークWCの曲げフランジ成形済みの端部を把持することができる。従って、本実施形態によれば、小物のワークWCの一連の曲げ加工中に、前述のように、小物のワークWCにおける曲げフランジ未成形の端部と曲げフランジ成形済みの端部との間でロボットハンド20の掴み換えを行うことができる。つまり、本実施形態によれば、前述のように、曲げ加工システム10によって小物のワークWCの一連の曲げ加工(4辺曲げ)を最後まで行うことができる。
【0040】
また、前述のように、第2可動クランプ爪58が対応する右側の第1可動クランプ爪50と一体に構成されている。そのため、1つのクランプアクチュエータである右側のクランプシリンダ44によって右側の第1可動クランプ爪50及び第2可動クランプ爪58を前後方向へ移動させることができる。これにより、本実施形態によれば、掴み替え装置28のアクチュエータの個数の増加を抑えて、掴み替え装置28の構成の簡略化を図ることができる。
【0041】
更に、前述のように、掴み替えコントローラ64は、ロボットハンド20による小物のワークWCの掴み替えを行う前に、プレスブレーキ12の前方であって右側のキャリッジ32の左右方向外側に曲げロボット14の動作領域MRを確保するために、右側のキャリッジ32が左右方向内側へ移動するように右側のサーボモータ34を制御する。そのため、本実施形態によれば、プレスブレーキ12の近傍においてロボットハンド20による小物のワークWCの掴み替えを行うことができ、ワークWCの一連の曲げ加工の作業性を高めることができる。
【0042】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、適宜の変更を行うことにより、種々な態様で実施可能である。そして、本発明に包含される権利範囲は、前述の実施形態の説明に限定されないものである。
【符号の説明】
【0043】
10 曲げ加工システム
12 プレスブレーキ
12c プレスブレーキの中心
14 曲げロボット
16 支持フレーム
18 ロボットアーム
20 ロボットハンド
22 ハンド本体
24 固定グリッパ爪
26 可動グリッパ爪
26d 逃げ凹部
28 掴み替え装置
30 ガイドフレーム
32 キャリッジ
34 サーボモータ(移動アクチュエータ)
36 昇降体
38 昇降シリンダ(昇降アクチュエータ)
38r 作動ロッド
40 ワーク載置部
42 第1ワーククランプ
44 クランプシリンダ(クランプアクチュエータ)
44a シリンダ本体
44r 作動ロッド
46 第1固定クランプ爪
46p 把持パッド
48 ガイドロッド
50 第1可動クランプ爪
50p 把持パッド
52 第2ワーククランプ
54 第2固定クランプ爪
54p 把持パッド
52d 逃げ凹部
56 ガイドロッド
58 第2可動クランプ爪
58p 把持パッド
60 NC装置
62 ロボットコントローラ
64 掴み替えコントローラ
MR 曲げロボットの動作領域
W ワーク(板金)
WA 通常サイズ又は大型のワーク
WB 帯状のワーク
WC 小物のワーク
WCf 曲げフランジ