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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】車両制御装置及び車両管理システム
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/12 20100101AFI20231124BHJP
   B60S 5/00 20060101ALI20231124BHJP
   F16H 59/68 20060101ALI20231124BHJP
   F16H 61/18 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
F16H61/12
B60S5/00
F16H59/68
F16H61/18
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020056607
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021156347
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】竹森 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】長尾 和也
(72)【発明者】
【氏名】高松 正明
(72)【発明者】
【氏名】内野 智司
(72)【発明者】
【氏名】牛膓 翔太
(72)【発明者】
【氏名】森 泰三
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】野口 智之
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-078025(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0051637(US,A1)
【文献】特開2005-227141(JP,A)
【文献】特開2019-113116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00-61/12,61/16-61/24,
61/66-61/70,63/40-63/50
B60S 3/00-13/02
B60R 16/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両制御装置とサーバとを含んで構成され、
前記車両制御装置は、
車両に設けられたセンサによる測定値に基づいて部品のダメージを計算するダメージ計算部と、
前記ダメージが所定の閾値以上となった場合に、前記車両の動作を制限する制御を行う制御部と、
を備え
前記サーバは、
前記部品に応じて前記車両の動作を制御するためのプログラムを前記車両制御装置に提供するプログラム送信部と、
前記ダメージを前記車両制御装置から取得する状態情報受信部と、
前記ダメージの履歴を記憶する状態記憶部と、
前記ダメージが前記閾値以上となってからの経過時間に応じて、ディーラーに対してメンテナンスが必要な旨のメッセージを送信するメッセージ送信部と、
を備える
ことを特徴とする車両管理システム
【請求項2】
前記車両制御装置
前記部品ごとに前記制御を行うためのプログラムを記憶するプログラム記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記ダメージが前記閾値以上となった前記部品に対応する前記プログラムを実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両管理システム
【請求項3】
前記車両制御装置
前記ダメージ計算部は、前記部品ごとに設定される前記測定値に応じて前記ダメージの度合を決定するためのマップを用いて前記部品への負荷の度合を決定し、前記負荷の度合と前記部品の使用度合とに基づいて前記ダメージを計算する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両管理システム
【請求項4】
前記車両制御装置
前記ダメージが前記閾値以上となった場合にアラートを出力するアラート出力部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の車両管理システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置及び車両管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示すように、自動車車両にセンサを配し、車両の状態を把握することが行われている。また従来、車両の走行距離に基づいて該車両の劣化状態を判断し、それに基づいて車両の評価を行ったり必要なメンテンナンスの推奨を行ったりすることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-31123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両に搭載された装置やその構成部品の劣化は、車両の走行距離だけでなく、車両の運転の仕方や走行する道路事情などの要因により大きく異なる傾向がある。したがって、車両に搭載された装置や部品の劣化に関して、車両が安全に走行可能な距離や期間は車両ごとに異なるのが実際であるところ、車両ごとの要因による装置や部品の劣化はこれまで考慮されていなかった。また、車両ごとの要因による装置や部品の劣化が考慮されていなかったため、車両の装置や部品の劣化に伴い車両のユーザにアラートを出すなど適切な対策も講じられていなかった。
【0005】
本発明はこのような背景を鑑みてなされたものであり、車両の装置や部品の劣化をより適切に判断できるようにすることで、長期に渡って車両をより安全な状態に保つことのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明にかかる車両制御装置は、車両(1)に設けられたセンサ(101)による測定値に基づいて部品のダメージを計算するダメージ計算部(111)と、前記ダメージが所定の閾値以上となった場合に、前記車両の動作を制限する制御を行う制御部(114)と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、この車両制御装置では、前記部品ごとに前記制御を行うためのプログラムを記憶するプログラム記憶部(117)をさらに備え、前記制御部(114)は、前記ダメージが前記閾値以上となった前記部品に対応する前記プログラムを実行するようにしてもよい。
【0008】
また、この車両制御装置では、前記ダメージ計算部(111)は、前記部品ごとに設定される前記測定値に応じて前記ダメージの度合を決定するためのマップを用いて前記部品への負荷の度合を決定し、前記負荷の度合と前記部品の使用度合とに基づいて前記ダメージを計算するようにしてもよい。
【0009】
また、この車両制御装置では、前記ダメージが前記閾値以上となった場合にアラートを出力するアラート出力部(112)をさらに備えてもよい。
【0010】
また、本発明に係る車両管理システムは、前記車両制御装置とサーバ(2)とを含んで構成され、前記車両制御装置は、車両に設けられたセンサによる測定値に基づいて部品のダメージを計算するダメージ計算部(111)と、前記ダメージが所定の閾値以上となった場合に、前記車両の動作を制限する制御を行う制御部(114)と、を備え、前記サーバ(2)は、前記部品に応じて前記車両の動作を制御するためのプログラムを前記車両制御装置に提供するプログラム送信部(213)を備えることを特徴とする。
【0011】
また、この車両管理システムでは、前記サーバ(2)は、前記ダメージを前記車両制御装置から取得する状態情報受信部(211)と、前記ダメージの履歴を記憶する状態記憶部(214)と、前記ダメージが前記閾値以上となってからの経過時間に応じて、ディーラーに対してメンテナンスが必要な旨のメッセージを送信するメッセージ送信部(212)と、を備えてもよい。
【0012】
その他本願が開示する課題やその解決方法については、発明の実施形態の欄及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車両の装置や部品の劣化をより適切に判断できるようにすることで、長期に渡って車両をより安全な状態に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の車両管理システムの構成例を示す図である。
図2】本実施形態に係る車両制御装置を備えた車両の構成を全体的に示す概略図である。
図3】本実施形態の車両管理システムのハードウェア構成を概要を示す図である。
図4】本実施形態の車両管理システムのソフトウェア構成を概要を示す図である。
図5】シャフトに関するダメージの計算の一例を示す図である。
図6】ロックアップクラッチ(LC)のダメージの計算の一例を示す図である。
図7】ダメージの推移を表すグラフの一例である。
図8】ACCにおける最大加速度の抑制について説明する図である。
図9】アラートが出力されている時間を表すグラフの一例である。
図10】本実施形態の車両管理システムの動作を説明する図である。
図11】セーフモードを利用した場合のダメージを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る車両管理システムについて説明する。
<システムの概要>
本実施形態の車両管理システムは、自動車車両の部品のダメージに応じて車両をセーフモードに移行することで、車両をなるべく安全な状態に保とうとするものである。セーフモードとは、部品への負荷を低減するように機能を制限することである。セーフモードでは、例えば、シャフト応力を低減するため、ACC(アダプティブクルーズコントロール)において車両に生じる最大加速度を抑制することや、駆動力や加速度を低減すること、変速機などの制御のためのマップを変更することなどが行われる。セーフモードの内容は、車両に搭載された装置やその構成部品ごとに設定することができる。
【0016】
図1は、本実施形態の車両管理システムの構成例を示す図である。本実施形態の車両管理システムは、車両1及びサーバ2を含んで構成される。車両1とサーバ2とは通信ネットワーク4を介して通信可能に接続される。通信ネットワーク4は、例えばインターネットであり、例えば、公衆電話回線網や携帯電話回線網、無線通信路、イーサネット(登録商標)などにより構築される。サーバ2はまた、車両1のディーラーのディーラー端末3とも通信ネットワーク4を介して通信可能に接続される。
【0017】
車両1は、トランスミッション(変速機)などを制御するためのシフトコントローラ(TCU;Transmisson Control Unit;本発明の車両制御装置に対応する。)90を備える。本実施形態では、シフトコントローラ90がトランスミッションなどの各部品のダメージを計算し、計算したダメージに応じてセーフモードへの移行を行うことができる。また、シフトコントローラ90は、計算したダメージと車両1の走行距離とをサーバ2に送信することができる。ここでいう部品には、オイルなどの消耗品も含まれる。部品のダメージ計算には、例えば、マイナー則を用いることができ、オイルのダメージ(劣化度合)にはアレニウスモデルを用いることができる。サーバ2は、ダメージの推移を蓄積することができる。またサーバ2は、ダメージが所定の閾値以上になってからの経過時間に応じて、ディーラー端末3に対してメンテナンスの提案を行うことができる。
【0018】
<車両の構成>
図2は、本実施形態に係る車両制御装置を備えた車両1の構成を全体的に示す概略図である。図2において、符号10はエンジン(内燃機関(駆動源))を示す。エンジン10は駆動輪12を備えた車両1に搭載される。
【0019】
エンジン10の吸気系に配置されたスロットルバルブ(図示せず)は車両運転席床面に配置されるアクセルペダル16との機械的な接続が絶たれ電動モータなどのアクチュエータからなるDBW(Drive By Wire)機構18に接続され、DBW機構18で開閉される。
【0020】
スロットルバルブで調量された吸気はインテークマニホルドを通って流れ、各気筒の吸気ポート付近でインジェクタ20から噴射された燃料と混合して混合気を形成し、吸気バルブが開弁されたとき、当該気筒の燃焼室に流入する。燃焼室において混合気は点火プラグで点火されて燃焼し、ピストンを駆動してクランクシャフト22を回転させた後、排気となってエンジン10の外部に放出される。
【0021】
クランクシャフト22の回転はトルクコンバータ24を介して無段変速機(Continuously Variable Transmission, 以下「CVT」という)26に入力される。即ち、DBW機構18で運転者のアクセルペダル16の操作に応じて調整されるスロットル開度で決定されるエンジン10の出力軸の回転はトルクコンバータ24を介してCVT26に入力される。
【0022】
エンジン10のクランクシャフト22はトルクコンバータ24のポンプ・インペラ24aに接続される一方、それに対向配置されて流体(作動油)を収受するタービン・ランナ24bはメインシャフト(入力軸)MSに接続される。トルクコンバータ24はロックアップクラッチ24cを備える。
【0023】
CVT26はメインシャフトMSに配置される入力プーリ(ドライブ(DR)プーリ)26aと、メインシャフトMSに平行であると共に、駆動輪12に連結されるカウンタシャフト(出力軸)CSに配置される出力プーリ(ドリブン(DN)プーリ)26bと、その間に掛け回される無端伝達要素、例えば金属製のベルト26cからなる。
【0024】
CVT26は前後進切換機構28を介してエンジン10に接続される。前後進切換機構28は、車両1の前進方向への走行を可能にする前進クラッチ28aと、後進方向への走行を可能にする後進ブレーキクラッチ28bと、その間に配置されるプラネタリギア機構28cからなる。
【0025】
カウンタシャフトCSの回転はギアを介してセカンダリシャフト(中間軸)SSから駆動輪12に伝えられる。即ち、カウンタシャフトCSの回転はギア30a,30bを介してセカンダリシャフトSSに伝えられ、その回転はギア30cを介してディファレンシャル機構(差動機構)32からドライブシャフト(駆動軸)34を介して左右の駆動輪(右側のみ示す)12に伝えられる。
【0026】
駆動輪(前輪)12と従動輪(後輪。図示せず)からなる4個の車輪の付近にはディスクブレーキ36が配置されると共に、車両運転席床面にはブレーキペダル40が配置される。
【0027】
前後進切換機構28において前進クラッチ28aと後進ブレーキクラッチ28bの切換は、車両運転席に設けられたレンジセレクタ44を運転者が操作して例えばP,R,N,Dなどのレンジのいずれかを選択することで行われる。運転者のレンジセレクタ44の操作によるレンジ選択は油圧供給機構46のマニュアルバルブに伝えられる。
【0028】
図示は省略するが、油圧供給機構46はエンジン10によって駆動されてリザーバから作動油を汲み上げて油路に吐出する油圧ポンプと、油路に配置される種々の制御バルブと電磁バルブを備え、吐出された作動油の圧力を調整して得た油圧をトルクコンバータ24のロックアップクラッチ24cに供給し、ロックアップクラッチ24cを係合・開放する。
【0029】
また、油圧供給機構46はCVT26のプーリ26a,26bのピストン室に油圧を供給する。その結果、プーリ26a,26b間のプーリ幅が変化してベルト26cの巻掛け半径が変化し、エンジン10の回転を駆動輪12に伝達する変速比(レシオ)が無段階に変化させられる。
【0030】
さらに、油圧供給機構46は運転者によって操作されたレンジセレクタ44の位置に応じて動作するマニュアルバルブを介して油圧を前後進切換機構28の前進クラッチ28a又は後進ブレーキクラッチ28bのピストン室に供給し、車両1を前進方向あるいは後進方向に走行可能にする。
【0031】
エンジン10のカム軸(図示せず)付近などの適宜位置にはクランク角センサ50が設けられ、ピストンの所定クランク角度位置ごとにエンジン回転数NEを示す信号を出力する。吸気系においてスロットルバルブの下流の適宜位置には絶対圧センサ52が設けられ、吸気管内絶対圧(エンジン負荷)PBAに比例した信号を出力する。
【0032】
DBW機構18のアクチュエータにはスロットル開度センサ54が設けられ、アクチュエータの回転量を通じてスロットルバルブの開度THに比例した信号を出力する。
【0033】
また、アクセルペダル16の付近にはアクセル開度センサ60が設けられてアクセルペダル16の運転者による踏み込み量(アクセルペダル操作量)に相当するアクセル開度APに比例する信号を出力すると共に、ブレーキペダル40の付近にはブレーキスイッチ62が設けられて運転者のブレーキペダル40の操作に応じてオン信号を出力する。
【0034】
上記したクランク角センサ50などの出力は、エンジンコントローラ66に送られる。エンジンコントローラ66はCPU,ROM,RAM,I/Oなどからなるマイクロコンピュータを備え、それらセンサ出力に基づいてDBW機構18の動作を制御すると共に、インジェクタ20による燃料噴射と点火プラグなどによる点火時期を制御する。
【0035】
メインシャフトMSにはNTセンサ(回転数センサ)70が設けられ、タービン・ランナ24bの回転数、具体的にはメインシャフトMSの回転数NT、より具体的には変速機入力軸回転数(と前進クラッチ28aの入力軸回転数)を示すパルス信号を出力する。
【0036】
CVT26の入力プーリ26aの付近の適宜位置にはNDRセンサ(回転数センサ)72が設けられて入力プーリ26aの回転数NDR、換言すれば前進クラッチ28aの出力軸回転数に応じたパルス信号を出力する。
【0037】
出力プーリ26bの付近の適宜位置にはNDNセンサ(回転数センサ)74が設けられて出力プーリ26bの回転数NDN、具体的にはカウンタシャフトCSの回転数、より具体的には変速機出力軸回転数を示すパルス信号を出力する。
【0038】
またセカンダリシャフトSSのギア30bの付近には車速センサ(回転数センサ)76が設けられてセカンダリシャフトSSの回転数と回転方向を示すパルス信号(具体的には車速Vを示すパルス信号)を出力する。
【0039】
また、前記したレンジセレクタ44の付近にはレンジセレクタスイッチ80が設けられ、運転者によって選択されたR,N,Dなどのレンジに応じた信号を出力する。
【0040】
油圧供給機構46の油路には油圧センサ82が配置されて出力プーリ26bに供給される油圧に応じた信号を出力する。リザーバには油温センサ84が配置されて油温に応じた信号を出力する。
【0041】
上記したNTセンサ70などの出力はシフトコントローラ90に送られる。シフトコントローラ90もCPU,ROM,RAM,I/Oなどからなるマイクロコンピュータを備えると共に、エンジンコントローラ66と通信自在に構成される。また、シフトコントローラ90は通信機91と接続され、通信機91を介して外部装置と通信することができる。
【0042】
シフトコントローラ90は、それら検出値に基づき、油圧供給機構46の電磁バルブを励磁・非励磁して前後進切換機構28とCVT26とトルクコンバータ24を制御することができる。
【0043】
<システムハードウェア>
図3は、本実施形態の車両管理システムのハードウェア構成の概要を示す図である。上述したように、車両1は各種のセンサ101(クランク角センサ50、絶対圧センサ52、アクセル開度センサ60、NTセンサ70、NDRセンサ72、NDNセンサ74、車速センサ76、油圧センサ82、油温センサ84、その他図示しない任意のセンサを含む。)と、シフトコントローラ90と、通信機91とを備え、シフトコントローラ90は、CPU901、ROM902、RAM903、I/O904を備える。また、サーバ2は、CPU201、メモリ202、記憶装置203、通信機204を備え、ディーラー端末3は、CPU301、メモリ302、記憶装置303、通信機304、入力装置305、出力装置306を備える。通信機91、204、304は、例えばイーサネット(登録商標)に接続するためのアダプタ、公衆電話回線網に接続するためのモデム、無線通信を行うための無線通信機、シリアル通信のためのUSB(Universal Serial Bus)コネクタやRS232Cコネクタなどである。
【0044】
<システムソフトウェア>
図4は、本実施形態の車両管理システムのソフトウェア構成の概要を示す図である。
【0045】
==シフトコントローラ90==
シフトコントローラ90は、ダメージ計算部111、アラート出力部112、状態情報送信部113、運転モード設定部(制御部)114、プログラム更新部115、ダメージ記憶部116、プログラム記憶部117を備える。
【0046】
ダメージ記憶部116は、ダメージを含むレコード(以下、ダメージ情報という。)を記憶する。ダメージ情報には、ダメージが計算された日時、部品(オイルを含む。)を特定する部品ID、走行距離、及び計算されたダメージが含まれる。
【0047】
プログラム記憶部117は、セーフモードに移行するためのプログラムを記憶する。セーフモードは部品ごとに設定することができ、プログラム記憶部117は、部品ごとにプログラムを記憶する。シフトコントローラ90がプログラム記憶部117に記憶されているプログラムを実行することにより、例えば、シャフト応力を低減するためにACCにおける最大加速度を抑制することや、駆動力や加速度を低減すること、部品制御のためのマップを変更することなどを実現することができる。
【0048】
ダメージ計算部111は、センサ101から取得した測定値に基づいてダメージを計算する。ダメージ計算部111は、マイナー則によりギア、ベアリング、ディファレンシャルケース、ベルトなどの各部品のダメージを計算することができる。また、ダメージ計算部111は、アレニウスモデルによりオイルのダメージを計算することができる。ダメージ計算部111は、計算したダメージを部品(オイルを含む。)ごとに、車両1の走行距離とともにダメージ記憶部116に記憶する。なお、走行距離についてもセンサ101の測定値から取得可能であるものとする。ダメージ計算部111は、定期的に(例えば、1分、5分、1時間など任意の時間ごとに)センサ101から測定値を取得してダメージを計算することができる。
【0049】
ダメージ計算部111は、装置や部品ごとに設定される、センサ101による測定値に応じて装置や部品への負荷度合を決定するためのマップを用いて、装置や部品への負荷度合を決定し、決定した負荷度合と、装置や部品の使用度合とに基づいてダメージを計算することができる。
【0050】
図5は、CVT26のシャフトに関するダメージの計算の一例を示す図である。ダメージ計算部111は、トルク、レシオ、軸推力などの測定値をセンサ101から取得し、事前に設定された応力マップから、これらの測定値に対応するシャフト応力を決定し、これにプーリの回転数を乗じてシャフトのダメージを計算することができる。このダメージはダメージ記憶部116に蓄積される。ダメージ計算部111は、例えば10msなど所定時間ごとに応力マップを用いたシャフト応力の決定及びシャフトの瞬間ダメージの計算を行うことができる。
【0051】
図6は、ロックアップクラッチ(LC)24cのダメージの計算の一例を示す図である。ダメージ計算部111は、LCプレートの温度をセンサ101から取得し、事前に設定されたLC劣化度(被害度)マップから、LCプレートの温度に対応するLC劣化度を決定するとともに、センサ101からLCスリップが発生した時間を取得し、これを劣化度に乗じて、LCの瞬間ダメージを計算することができる。この瞬間ダメージもダメージ記憶部116に蓄積される。ダメージ計算部111は、例えば10msなど所定時間ごとにLC劣化度マップを用いたLC劣化度の決定及びLCの瞬間ダメージの計算を行うことができる。
【0052】
図4に戻り、アラート出力部112は、ダメージが所定の閾値以上となった場合に、アラートを出力する。アラート出力部112は、例えば、ランプ等によりアラートを表示したり、スピーカから音によりアラートを出力したり、ディスプレイにメッセージを表示したりすることができる。
【0053】
状態情報送信部113は、ダメージ及びアラートの出力状況(以下、状態情報という。)をサーバ2に送信する。状態情報送信部113は、ダメージ記憶部116に記憶されているダメージ情報を読み出し、読み出したダメージ情報に当該車両1を示す車両ID及び車両1の利用者を示すユーザIDならびにアラート出力部112がアラートを出力しているか否かを示す情報を含めてサーバ2に送信することができる。状態情報送信部113は、定期的に状態情報を送信することができる。また、状態情報送信部113は、ダメージ記憶部116に記憶されている全てのダメージ情報を送信するようにしてもよいし、一部のみを送信するようにしてもよい。また、状態情報送信部113は、サーバ2に送信したダメージ情報はダメージ記憶部116から消去するようにしてもよい。
【0054】
運転モード設定部114は、セーフモードと通常モードとの切り替えを行う。運転モード設定部114は、装置又は部品のダメージが所定の閾値以上となった場合に、その装置又は部品に対応するプログラムをプログラム記憶部117から読み出して実行することによりセーフモードに移行することができる。図7は、ダメージの推移を表すグラフの一例である。図7に示すように、装置又は部品のダメージが所定の閾値に達したときに、運転モード設定部114はセーフモードに移行する。図8は、ACCにおける最大加速度の抑制について説明する図である。シャフトのダメージが閾値に達した場合に、運転モード設定部114は、シャフトに対応するプログラムを実行することにより、ACCにおける車両1の最大加速度を、図8の例ではG2からG1(G2>G1)に抑制している。これによりシャフト応力が抑制され、シャフトの故障の可能性を効果的に低減し、車両1をなるべく安全な状態に保つことが可能となる。
【0055】
プログラム更新部115は、プログラム記憶部117に記憶されているプログラムを更新する。プログラム更新部115は、いわゆるOTA(Over The Air)によりサーバ2からプログラムを受信してプログラム記憶部116を更新することができる。なお、OTAによる書き換え対象は、プログラムに限らず、各種マップの変更などであってもよい。
【0056】
==サーバ2==
図4に示すように、サーバ2は、状態情報受信部211、メッセージ送信部212、プログラム送信部213、状態記憶部214を備える。
【0057】
状態情報受信部211は、車両1から状態情報を受信する。状態情報受信部211は受信した状態情報を状態記憶部214に登録する。
【0058】
状態記憶部214は、状態情報を記憶する。状態情報には、車両1を示す車両ID、車両1の利用者を示すユーザID、日時、装置又は部品を示す部品ID、車両1の走行距離、装置又は部品について計算されたダメージ、及びアラートが出力されているか否かを示す情報が含まれる。
【0059】
メッセージ送信部212は、ダメージに応じて装置又は部品のメンテナンスを提案するメッセージを送信する。本実施形態では、メッセージ送信部212は、メッセージをディーラー端末3に送信するものとするが、車両1や車両1のユーザのユーザ端末(ユーザーが所有する携帯通信端末など)に送信するようにしてもよい。メッセージ送信部212は、所定の閾値以上のダメージを含む状態情報を受信した場合にメッセージを送信するようにしてもよいし、アラートが出力されている時間が所定の閾値以上となった場合にメッセージを送信するようにしてもよい。図9は、ワーニング(アラート)が出力されている時間を表すグラフの一例である。図9に示すように、ユーザ(車両1)ごとにワーニング(アラート)が出力されている期間(日)が示されており、この期間が同図の例では100日以上となったXさんについて、メッセージがディーラー端末3に送信されることになる。
【0060】
==ディーラー端末3==
図4に示すように、ディーラー端末3は、メッセージ受信部311、メッセージ出力部312を備える。
【0061】
メッセージ受信部311は、サーバ2からアラートやメッセージを受信する。
【0062】
メッセージ出力部312は、メッセージ受信部311が受信したアラートやメッセージを出力する。
【0063】
<動作>
図10は、本実施形態の車両管理システムの動作を説明する図である。
【0064】
シフトコントローラ90が車両1における各部品のダメージを計算し(S501)、計算したダメージが所定の閾値以上となった場合(S502:YES)、アラートを出力し(S503)、セーフモードに移行する(S504)。シフトコントローラ90は、ダメージとアラートを出力している時間(ダメージが閾値に達してからの経過時間)を含む状態情報をサーバ2に送信する(S505)。
【0065】
サーバ2は、アラートの出力時間が所定の閾値以上となった場合に(S506:YES)、ディーラー端末3にメンテナンスが必要である旨のメッセージを送信する(S507)。
【0066】
以上説明したように、本実施形態の車両管理システムでは、車両1の装置又は部品に一定以上のダメージが発生した場合にはセーフモードに移行することができるので、車両1をなるべく安全な状態に保つことができる。図11は、セーフモードを利用した場合のダメージを説明する図である。図11に示すように、ダメージが閾値に達した時点でセーフモードに移行することにより、部品に破損等の不具合の発生するレベルのダメージが発生するまでの時間・走行距離を延ばすことが可能となる。
【0067】
また、本実施形態の車両管理システムでは、アラートが長く出力されている車両1については、ディーラーに対してメンテナンスを行うように促すことができる。図11に示すように、部品を交換等することにより、当然ながら部品のダメージが下がり、安全に乗車可能な期間が延長される。したがって、例えば、耐久保証距離を超えて車両1が使用された場合であっても、車両1に不具合事象が発生する前にディーラー主導で修理交換のメンテナンスが行われることが期待され、これによりユーザは車両1に長く乗ることが可能となる。
【0068】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【0069】
例えば、本実施形態では、サーバ2は、メンテナンスを促すメッセージをディーラー端末3に送信することにとどめたが、車両1のユーザによるディーラーへの訪問日時を予約するようにしてもよい。この場合に、サーバ2は、例えば、ユーザのカレンダーに予約日時を設定するようにすることもできる。
【0070】
また、本実施形態では、アラートを行うダメージの閾値は一定であるものとしたが、これを例えばOTAにより閾値を更新するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 車両
2 サーバ
3 ディーラー端末
4 通信ネットワーク
111 ダメージ計算部
112 アラート出力部
113 状態情報送信部
114 運転モード設定部(制御部)
115 プログラム更新部
116 ダメージ記憶部
117 プログラム記憶部
211 状態情報受信部
212 メッセージ送信部
213 プログラム送信部
214 状態記憶部
311 メッセージ受信部
312 メッセージ出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11