(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】異方導電性樹脂組成物、異方導電性接着フィルム、及びマイクロLEDディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
C08G 59/32 20060101AFI20231124BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20231124BHJP
C08L 27/12 20060101ALI20231124BHJP
H01B 5/16 20060101ALI20231124BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20231124BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20231124BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20231124BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20231124BHJP
C09J 127/12 20060101ALI20231124BHJP
H01L 33/62 20100101ALI20231124BHJP
【FI】
C08G59/32
C08L63/00 A
C08L63/00 C
C08L27/12
H01B5/16
H01B1/22 A
C09J7/35
C09J9/02
C09J163/00
C09J127/12
H01L33/62
(21)【出願番号】P 2020065121
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 正和
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-299025(JP,A)
【文献】特開2004-083823(JP,A)
【文献】特開2015-137338(JP,A)
【文献】特開2019-140101(JP,A)
【文献】特開2000-345010(JP,A)
【文献】特開平09-124771(JP,A)
【文献】特開2012-241136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
H01B 1/00-1/24、5/00-5/16
H01L 33/00、33/48-33/64
C09J 7/35、9/02、127/12、163/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シリコーン変性エポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、(C)導電性粒子と、(D)含フッ素重合体と、を含む異方導電性樹脂組成物であって、
前記(A)シリコーン変性エポキシ樹脂が、下記一般式(1)で表される構造を有
し、
前記(D)含フッ素重合体が、フルオロオレフィンに基づく重合単位(a)と、アルキルビニルエーテルに基づく重合単位(b)及び/又はカルボン酸ビニルエステルに基づく重合単位(c)と、を含む、含フッ素共重合体である、
異方導電性樹脂組成物。
【化1】
[式(1)中、R
1はそれぞれ独立に1価の有機基を示し、R
2はそれぞれ独立に炭素数1~10の鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素数3~10の環状の脂肪族炭化水素基及びフェニル基から選ばれる基を示し、Yは環状エーテル基を含有する有機基を示す。Xはそれぞれ同一であっても異なってもよい。aとbは正の数であってa+b=1かつ0.3≦a<1であり、nは1~25である。]
【請求項2】
前記(D)含フッ素重合体が、CTFE(クロロトリフルオロエチレン)と、ヒドロキシブチルビニルエーテルと、前記CTFE及び前記ヒドロキシブチルビニルエーテルと共重合可能な単量体と、を含む、請求項
1に記載の異方導電性樹脂組成物。
【請求項3】
前記共重合可能な単量体が、α-オレフィン類、ハロオレフィン類、カルボン酸アリル類、アリルエーテル類、及び(メタ)アクリル酸エステル類から選択される少なくとも一種である、請求項
2に記載の異方導電性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)導電性粒子の平均粒径が0.5~10μmである、請求項1~
3のいずれか1項に記載の異方導電性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の異方導電性樹脂組成物をシート状に形成してなる、異方導電性接着フィルム。
【請求項6】
請求項
5に記載の異方導電性接着フィルムを用いて、基板上にマイクロLEDをアレイ状に並べて実装してなる、マイクロLEDディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方導電性樹脂組成物、異方導電性接着フィルム、及びマイクロLEDディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンス素子に次ぐ表示素子として、小型のLED(Light Emitting Diode)を用いた、いわゆるマイクロLEDが注目されている。マイクロLEDは有機エレクトロルミネッセンス素子と同様、発光素子であり、当該発光素子を用いたアクティブマトリクス型表示装置が知られている(特許文献1及び特許文献2)。
また、従来から、表示素子に駆動回路を実装する方法として、異方性導電膜(ACF:Anisotropic Conductive Film)(以下、「異方導電性接着剤」ということがある。)を介して、表示素子の取り出し電極部と駆動回路基板上の接続端子とを電気的に接続することが行われている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2019/220267号公報
【文献】特開2007-123861号公報
【文献】特開2010-192802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、マイクロLEDに用いる小型のLEDチップの実装やそれらのリペアの際に、位置出し用のアライメントマークを照合する場合がある。例えば、異方導電性接着剤を介して、実装基板に小型のLEDチップを実装する際に、実装基板の所定の位置に精度良く実装するために、実装基板上に形成された位置出し用のアライメントマークを、撮像素子を含むカメラ等により認識する必要がある。このような場合、認識エラーを回避するために、光学的に透過度が高く、耐変色性に優れた異方導電性樹脂組成物からなる異方導電性接着剤が求められることがある。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みなされたものであり、光透過性に優れた異方導電性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有するシリコーン変性エポキシ樹脂、硬化剤、導電性粒子及び特定の含フッ素重合体を含む異方導電性樹脂組成物が、例えば、表示素子等を有する基板上の電極等と駆動回路基板の接続端子等との電気的接続、また、小型のLEDチップ等の実装時の電気的接続を、容易に精度良く行う接着剤に適した硬化物を与えることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の(1)~(7)を提供するものである。
(1)(A)シリコーン変性エポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、(C)導電性粒子と、(D)含フッ素重合体と、を含む異方導電性樹脂組成物であって、前記(A)シリコーン変性エポキシ樹脂が、下記一般式(1)で表される構造を有する、異方導電性樹脂組成物。
【化1】
[式(1)中、R
1はそれぞれ独立に1価の有機基を示し、R
2はそれぞれ独立に炭素数1~10の鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素数3~10の環状の脂肪族炭化水素基及びフェニル基から選ばれる基を示し、Yは環状エーテル基を含有する有機基を示す。Xはそれぞれ同一であっても異なってもよい。aとbは正の数であってa+b=1かつ0.3≦a<1であり、nは1~25である。]
(2)前記(D)含フッ素重合体が、フルオロオレフィンに基づく重合単位(a)と、アルキルビニルエーテルに基づく重合単位(b)及び/又はカルボン酸ビニルエステルに基づく重合単位(c)と、を含む、含フッ素共重合体である、上記(1)に記載の異方導電性樹脂組成物。
(3)前記(D)含フッ素重合体が、CTFE(クロロトリフルオロエチレン)と、ヒドロキシブチルビニルエーテルと、前記CTFE及び前記ヒドロキシブチルビニルエーテルと共重合可能な単量体と、を含む、上記(1)又は(2)に記載の異方導電性樹脂組成物。(4)前記共重合可能な単量体が、α-オレフィン類、ハロオレフィン類、カルボン酸アリル類、アリルエーテル類、及び(メタ)アクリル酸エステル類から選択される少なくとも一種である、上記(3)に記載の異方導電性樹脂組成物。
(5)前記(C)導電性粒子の平均粒径が0.5~10μmである、上記(1)~(4)のいずれかに記載の異方導電性樹脂組成物。
(6)上記(1)~(5)のいずれかに記載の異方導電性樹脂組成物をシート状に形成してなる、異方導電性接着フィルム。
(7)上記(6)に記載の異方導電性接着フィルムを用いて、基板上にマイクロLEDをアレイ状に並べて実装してなる、マイクロLEDディスプレイ装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光透過性に優れた異方導電性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[異方導電性樹脂組成物]
(A)シリコーン変性エポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、(C)導電性粒子と、(D)含フッ素重合体と、を含む異方導電性樹脂組成物であって、前記(A)シリコーン変性エポキシ樹脂が、下記一般式(1)で表される構造を有する、異方導電性樹脂組成物。
【化2】
[式(1)中、R
1はそれぞれ独立に1価の有機基を示し、R
2はそれぞれ独立に炭素数1~10の鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素数3~10の環状の脂肪族炭化水素基及びフェニル基から選ばれる基を示し、Yは環状エーテル基を含有する有機基を示す。Xはそれぞれ同一であっても異なってもよい。aとbは正の数であってa+b=1かつ0.3≦a<1であり、nは1~25である。]
【0009】
[(A)シリコーン変性エポキシ樹脂]
本発明の異方導電性樹脂組成物には、下記一般式(1)で表される構造を有するシリコーン変性エポキシ樹脂を必須成分として含む。
【0010】
【0011】
式(1)中、R1はそれぞれ独立に1価の有機基を示し、R2はそれぞれ独立に炭素数1~10の鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素数3~10の環状の脂肪族炭化水素基及びフェニル基から選ばれる基を示し、Yは環状エーテル基を含有する有機基を示す。Xはそれぞれ同一であっても異なってもよい。aとbは正の数であってa+b=1かつ0.3≦a<1であり、nは1~25である。
R1の1価の有機基として、ヒドロキシ基を有する1価の有機基、直鎖または分岐のアルキル基、アルコキシ基、アリール基等が挙げられる。
R2の炭素数1~10の鎖状の脂肪族炭化水素基として、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、又はn-へキシル基等が挙げられる。
R2の炭素数3~10の環状の脂肪族炭化水素基として、シクロプロピル基、シクロプチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、又はシクロオクチル基等が挙げられる。
Yの環状エーテル基を含有する有機基として、3~6員環の構造を有する環状エーテル基が挙げられ、特に環歪みエネルギーが大きく、反応性の高い3員環又は4員環の環状エーテル基が好ましく、3員環のエーテル基がより好ましい。β-グリシドキシエチル基、γ-グリシドキシプロピル基、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基等の炭素数1~3のアルキル基にオキシグリシジル基が結合したグリシドキシアルキル基、オキシラン基を持った炭素数5~8のシクロアルキル基で置換された炭素数3以下のアルキル基が好ましい。
【0012】
本実施形態において、シリコーン変性エポキシ樹脂は、異方導電性樹脂組成物の全質量100質量部に対して、好ましくは30~80質量部であり、より好ましくは40~70質量部であり、45~60質量部であることがさらに好ましい。
シリコーン変性エポキシ樹脂の質量部がこの範囲にあると、耐熱性、耐光性、及び耐マイグレーション性を有しやすくなる。
なお、前記シリコーン変性エポキシ樹脂は、例えば、特開2012-241136に記載されている。
【0013】
[(B)硬化剤]
本発明の異方導電性樹脂組成物には、(B)硬化剤を必須成分として含む。
(B)硬化剤としては、前記(A)シリコーン変性エポキシ樹脂がエポキシ基を有するため、例えば、熱硬化では、一般的に使用されるアミン系硬化剤、酸無水物硬化剤が挙げられる。この中で、光透過性、耐熱性等の観点から、酸無水物硬化剤を用いることが好ましい。
酸無水物硬化剤としては、例えば、無水コハク酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3-メチル-ヘキサヒドロ無水フタル酸、4-メチル-ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチル-テトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、ノルボルナン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチルノルボルナン-2,3-ジカルボン酸無水物及びメチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物等が挙げられる。これらの中で、光透過性の観点から、4-メチル-ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、又はメチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物が好ましい。
これらは単独、もしくは2種類以上混合して使用することができる。
【0014】
本実施形態において、硬化剤は、良好な硬化性や硬化物特性が得られるという観点から、異方導電性樹脂組成物の全質量100質量部に対して、好ましくは4~70質量部であり、より好ましくは10~50質量部であり、15~35質量部であることがさらに好ましい。
【0015】
さらに、前記硬化剤との反応に有効な硬化促進剤、硬化触媒を併用して使用することができる。
前記硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の有機リン化合物;エチルトリフェニルホスフォニウムブロマイド、メチルトリフェニルホスホニウムリン酸ジエチル、テトラ-n-ブチルホスホニウム-O,O’-ジエチルホスホロジチオネート等の第4級ホスフォニウム塩;1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデカン-7-エン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデカン-7-エンとオクチル酸の塩、オクチル酸亜鉛、テトラブチルアンモニウムブロミド等の第4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの中で、密着性の観点から、テトラ-n-ブチルホスホニウム-O,O’-ジエチルホスホロジチオネート、4ヒドロキシ2(トリフェニルホスホニウム)フェノラトが好ましい。
これらは単独、もしくは2種類以上混合して使用することができる。
【0016】
上記硬化触媒としては、例えば、トリフェニルフォスフィン及びジフェニルフォスフィン等の有機フォスフィン系硬化触媒;1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、トリエタノールアミン及びベンジルジメチルアミン等の三級アミン系硬化触媒;2-メチルイミダゾール及び2-フェニル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類等が挙げられる。
これらは単独、もしくは2種類以上混合して使用することができる。
【0017】
また、熱カチオン硬化触媒や光カチオン硬化触媒を添加して熱硬化、光硬化とすることができる。
上記熱カチオン硬化触媒として、例えば、ベンジルスルホニウム塩、チオフェニウム塩、チオラニウム塩、ベンジルアンモニウム、ピリジニウム塩、ヒドラジニウム塩、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル及びアミンイミド等が挙げられる。
これらは単独、もしくは2種類以上混合して使用することができる。
上記光カチオン硬化触媒としては、例えば、スルホニウム塩系やヨウドニウム塩系が挙げられる。スルホニウム塩系の例としては、例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート及びトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられ、ヨードニウム塩系の例として、例えば、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート及びジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
これらは単独、もしくは2種類以上混合して使用することができる。
【0018】
[(C)導電性粒子]
本発明の異方導電性樹脂組成物には、(C)導電性粒子を必須成分として含む。
(C)導電性粒子としては、例えば、金属及びカーボンが挙げられる。前記金属としては、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)等の遷移金属;金(Au)、銀(Ag)、白金族金属等の貴金属;及びはんだ等の合金が挙げられる。
導電性粒子は、核となる粒子を上記金属又はカーボンで被覆した被覆粒子であることが好ましい。
導電性粒子の最外層は、充分なポットライフが得られ易い観点から、Au、Ag、白金族金属等の貴金属を含むことが好ましく、Auを含むことがより好ましい。
導電性粒子は、例えば、Ni等の遷移金属を核として、その表面をAu等の貴金属で被覆したものであってもよく、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等を核として、その表面に前記金属等の導通層を被覆等により形成したものであってもよい。前記導通層は、単一の層であってもよく、複数の層であってもよいが、最外層は貴金属層であることが好ましい。
【0019】
被覆粒子(例えば、プラスチックを核とする導電性粒子)又は熱溶融金属粒子は、加熱及び加圧による変形性を付与し得ることから、接続時に回路電極等の高さのばらつきを解消すること及び回路電極等との接触面積を増大させることが容易であり、これにより信頼性がさらに向上すると考えられる。
【0020】
導電性粒子の最外層が貴金属層である場合、該貴金属層の厚みは、接続される回路間の抵抗を充分に低減し易い観点から、通常、10nm以上である。ただし、貴金属層が、Ni等の遷移金属の上に設けられる場合、例えば、導電性粒子の混合分散時に、貴金属層が欠損すること等により、Ni等の遷移金属が異方導電性樹脂組成物中に露出し、当該遷移金属による酸化還元作用により遊離ラジカルが発生することがあり、該遊離ラジカルは、異方導電性樹脂組成物の保存安定性を低下させるおそれがある。このため、前記貴金属層の厚みは、好ましくは30nm以上であり、より好ましくは60nm以上であり、100nm以上がさらに好ましい。
前記貴金属層の厚みの上限は、特に制限はないが、製造コストの観点から、通常、1μm以下である。
【0021】
導電性粒子の平均粒径は、回路電極の高さのばらつきに対応し易く、回路電極間の導電性が低下し難い観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上である。導電性粒子の平均粒径は、隣接する回路電極間の絶縁性が低下し難い観点から、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。これらの観点から、導電性粒子の平均粒径は、好ましくは0.5~10μmであり、より好ましくは1~5μmであり、1.5~4.5μmであることがさらに好ましい。前記導電性粒子の平均粒子径は、任意の100個の導電性粒子を顕微鏡で観察することにより測定することができる。
【0022】
導電性粒子の含有量は、導電性に優れる観点から、異方導電性樹脂組成物の全質量100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上である。導電性粒子の含有量は、隣接回路の短絡等を抑制し易い観点から、異方導電性樹脂組成物の全質量100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下である。これらの観点から、導電性粒子の含有量は、異方導電性樹脂組成物の全質量100質量部に対して、好ましくは0.1~50質量部であり、より好ましくは0.1~40質量部であり、0.1~30質量部であることがさらに好ましい。
導電性粒子は、異方導電性樹脂組成物が加圧加熱された後に異方導電性接着剤としての機能を発揮することができるような密度で、異方導電性組成物中に分散されている。具体的には、水平投影面積当たり導電性粒子が好ましくは15~60%、より好ましくは25~60%を占める。また、単位面積当たりの個数は、平均粒子径に大きく依存するが、導電性の観点から、好ましくは10,000~100,000個/mm2であり、より好ましくは20,000~70,000個/mm2であり、30,000~60,000個/mm2であることがさらに好ましい。
【0023】
[(D)含フッ素重合体]
本発明の異方導電性樹脂組成物には、(D)含フッ素重合体を必須成分として含む。
本発明において、含フッ素重合体は、分子中にフッ素原子を有する高分子化合物を意味する。
含フッ素重合体は、フルオロオレフィンとフッ素原子を有さない単量体との共重合体を含むことが好ましい。
【0024】
フルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン等の炭素数2~3のフルオロオレフィン類、又は炭素数4以上のフルオロオレフィン類が挙げられる。この中で、好ましくはテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデンであり、より好ましくはテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンである。これらのフルオロオレフィンは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
フルオロオレフィン単独重合体及び2種以上のフルオロオレフィンの共重合体としては、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、フッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン系共重合体等が挙げられる。
【0026】
フッ素原子を有さない単量体としては、ビニルエーテル、イソプロペニルエーテル、カルボン酸ビニルエステル等のビニル系単量体が好ましい。
【0027】
ビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ネオペンチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;フェニルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ナフチルビニルエーテル等の芳香族ビニルエーテル類;2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、9-ヒドロキシノニルビニルエーテル、1-ヒドロキシメチル-4-ビニロキシメチルシクロヘキサン、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル類が挙げられる。
これらの中で、透明性の観点から、アルキルビニルエーテル類又はヒドロキシアルキルビニルエーテル類が好ましい。
【0028】
イソプロペニルエーテルとしては、メチルイソプロペニルエーテル、エチルイソプロペニルエーテル、プロピルイソプロペニルエーテル、ブチルイソプロペニルエーテル、シクロヘキシルイソプロペニルエーテル等のイソプロペニルエーテル類;2-ヒドロキシエチルイソプロペニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルイソプロペニルエーテル、4-ヒドロキシブチルイソプロペニルエーテル、9-ヒドロキシノニルイソプロペニルエーテル、1-ヒドロキシメチル-4-イソプロペニルオキシメチルシクロヘキサン、3-ヒドロキシ-2-クロロプロピルイソプロペニルエーテル等のヒドロキシアルキルイソプロペニルエーテル類が挙げられる。
【0029】
カルボン酸ビニルエステルとしては、分岐状のアルキル基を有するベオバ-10(商品名、シェル化学社製)、酢酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のカルボン酸ビニル類が挙げられる。
これらのフッ素を含有しない単量体についても、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
また、フッ素原子を有さない他の共重合可能な単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のα-オレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロオレフィン類(ただし、フルオロオレフィンを除く。)、ギ酸アリル、酪酸アリル、安息香酸アリル、シクロヘキサンカルボン酸アリル、プロピオン酸アリル等のカルボン酸アリル類、エチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル、アリルフェニルエーテル等のアリルエーテル類、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。
これらの他の共重合可能な単量体についても、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。例えば、テトラフルオロエチレン、エチレン、プロピレンを主成分とする共重合体、又は、この共重合体にアクリル樹脂成分をシード重合等により複合化したもの等が、好ましい。
【0031】
本発明において、(D)含フッ素重合体は、フルオロオレフィンに基づく重合単位(a)と、アルキルビニルエーテルに基づく重合単位(b)及び/又はカルボン酸ビニルエステルに基づく重合単位(c)とを含む、含フッ素共重合体であることがより好ましい。
【0032】
また、一態様として、例えば、(D)含フッ素重合体が、CTFE(クロロトリフルオロエチレン)と、ヒドロキシブチルビニルエーテルと、前記CTFE及び前記ヒドロキシブチルビニルエーテルと共重合可能な単量体と、を含むことがさらに好ましい。
前記共重合可能な単量体としては、前述したフッ素原子を有さない他の共重合可能な単量体等が挙げられる。
このような、硬化性官能基を有するCTFE系ポリマーの共重合体としては、例えば、AGCコーテック社製の“オブリガード”(登録商標)、旭硝子社製の“ルミフロン”(登録商標)、DIC社製の“フルオネート”(登録商標)、セントラル硝子社製の“セフラルコート”(登録商標)等が挙げられる。
【0033】
また、適正なフィルムを得る観点から、好ましくは数平均分子量2,000~100,0000であり、より好ましくは5,000~50,000である。数平均分子量が2,000未満であると、フィルム基材の強度低下のおそれがあり、また数平均分子量100,000超であると、フィルム形成性に劣るおそれがある。
【0034】
本発明において、含フッ素重合体は、異方導電性樹脂組成物の全質量100質量部に対して、好ましくは5~40質量部であり、より好ましくは10~30質量部であり、さらに好ましくは12~25質量部である。
【0035】
(その他成分)
本発明の異方導電性樹脂組成物には、カップリング剤を添加してもよい。カップリング剤としては、この種の樹脂組成物に配合される公知のカップリング剤であれば特に限定されないが、例えば、シランカップリング剤およびチタネート系カップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、通常、エポキシシラン系、アミノシラン系、カチオニックシラン系、ビニルシラン系、アクリルシラン系、メルカプトシラン系、及びこれらの複合系が挙げられ、任意の添加量で用いることができる。また、チタネート系カップリング剤としては、通常、少なくとも炭素数1~60のアルキレート基を有するチタネート系カップリング剤、アルキルホスファイト基を有するチタネート系カップリング剤、アルキルホスフェート基を有するチタネート系カップリング剤もしくはアルキルパイロホスフェート基を有するチタネート系カップリング剤、及びこれらの複合系カップリング剤が挙げられ、任意の添加量で用いることができる。
なお、カップリング剤の配合量は、典型的には異方導電性樹脂組成物100質量%に対して5質量%以下である。
【0036】
また、本発明の異方導電性樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、離型剤、イオン捕捉剤等の添加剤を添加してもよい。
【0037】
[異方導電性接着フィルムの製造方法]
本発明の異方導電性樹脂組成物は、公知の方法を適用して製造することができる。
例えば、前記(A)~(D)成分、及び、必要に応じて配合される各種成分を、ポットミル、ボールミル、ビーズミル、ロールミル、ホモジナイザー、スーパーミル、ライカイ機等の公知の混練機を用いて、室温あるいは加熱下において混練した後、必要に応じて溶剤希釈して、異方導電性樹脂組成物を得ることにより製造することができる。
溶剤希釈して得られる異方導電性樹脂組成物の典型的な望ましい粘度は、0.5~2Pa・s程度である。
【0038】
本発明の異方導電性接着フィルムは、上記したように溶剤希釈して得られる異方導電性樹脂組成物を支持フィルム上に公知の方法により塗布し、乾燥させることにより得られる。
具体的には、支持フィルム上に、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等の公知の塗布方法により塗布し、乾燥処理し、半硬化状態とすることにより得られる。乾燥温度は、70℃~180℃であってもよく、80℃~150℃であってもよい。乾燥温度が70℃以上であるとシート中に残る溶剤分が少なく、前記異方導電性樹脂組成物を硬化させる際のボイドの発生が抑制され、150℃以下であると成膜性が高く、ハンドリングしやすくなる。塗工装置の具体例としては、(株)康井精機製のμコート350が挙げられる。
【0039】
[マイクロLEDアレイディスプレイ装置の製造方法]
本発明のマイクロLEDアレイディスプレイ装置の製造方法は、ロール等公知の手段で前記異方導電性接着フィルムを仮付けし、基板上に70℃~180℃、0.1~5MPa、0.1~1分で固定した後、長辺が50~200μm、短辺が10~50μmのマイクロLEDを所定の間隔で実装し、150~200℃、1~10MPa、0.1~2時間で加熱硬化することによりマイクロLEDをアレイ状に基板に接合することで得られる。
アレイ状とは、特に限定されないが、例えば、マイクロLEDをM行N列に配置することを意味する。ただし、ここでM及びNは整数であり、MとNとの少なくともいずれかは2以上である。
【実施例】
【0040】
次に実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0041】
[合成例1]
(A)シリコーン変性エポキシ樹脂の合成
温度計、冷却管、窒素導入管、撹拌翼のついた500mlの4つ口セパラブルフラスコに、ハイドロジェンポリジメチルシロキサン〔商品名:DMS-H03、Gelest,Inc.社製〕を85.0質量部、トルエンを100質量部投入し、常温で撹拌した。そこへ白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体キシレン溶液〔商品名:SIP6831.2、Gelest,Inc.社製〕を0.075質量部添加し、マントルヒーターを用いて60℃に加温した。そこへモノアリルグリシジルイソシアヌル酸〔商品名:MADGIC、四国化成工業株式会社製〕を53.1質量部投入し、溶解させた。その後、110℃まで上昇し、そのまま4時間撹拌した。
次いで、トルエン50質量部に溶解させた液状ポリブタジエン〔商品名:NISSO PB G-1000、日本曹達株式会社製〕11.9質量部を30分かけて反応溶液中に滴下し、さらに110℃で4時間撹拌した。得られた反応混合物の溶剤を減圧下で留去することにより、シリコーン変性エポキシ樹脂を得た。
【0042】
[実施例1、2、比較例1~3]
表1に示した配合比で各成分を混合し、異方導電性樹脂組成物を得た。
得られた異方導電性樹脂組成物を、厚さ40μmのポリプロピレンフィルムに、ロールコーターで乾燥後の厚さが5μmになるように塗布し、80℃、1分で乾燥して、異方導電性接着フィルムを得た。
得られた異方導電性接着フィルムを後述の方法で評価した。その結果を表1に併せて示す。なお、実施例及び比較例で用いた材料は、下記の特性を有するものを使用した。
【0043】
(A)シリコーン変性エポキシ樹脂:合成例1
その他の樹脂
・シリコーン樹脂(信越化学工業社製、商品名:KER-3000-M2)
・イソシアヌル酸構造を有するエポキシ樹脂(日産化学社製、商品名:TEPIC-FL)
【0044】
(B)硬化剤
・(B1)4-メチル-ヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化社製、商品名:リカシッドMH)
・(B2)イソシアネート系硬化剤(東ソー社製、商品名:コロネートHX)
【0045】
・硬化促進剤:テトラ-n-ブチルホスホニウム-O,O’-ジエチルホスホロジチオネート(日本化学工業社製、商品名:PX-4ET)
【0046】
(C)導電性粒子
・金メッキ樹脂粒子(積水化学社製、商品名:ミクロパールAU、平均粒子径:5μm)
【0047】
(D)含フッ素重合体
・(D1)水酸基含有CTFE系共重合体(AGC旭硝子社製、商品名:ルミフロンLF-400、水酸基価47mgKOH/g、酸価5mgKOH/g)
・(D2)水酸基含有CTFE系共重合体(AGC旭硝子社製、商品名:ルミフロンLF-552、水酸基価21mgKOH/g、酸価1.5~2.5mgKOH/g)
【0048】
その他成分
・シランカップリング剤(信越シリコーン社製、商品名:KBM-303)
【0049】
<評価方法>
(1)密着性
異方導電性接着剤を印刷評価基板に塗布し、さらに50μm×50μmのLEDを実装し、200℃で1時間加熱して接合した後、接着強度測定装置(西進商事社製、型名:SS-30WD)を用いて25℃及び260℃の環境下での接着強度を測定し、25℃での接着強度に対する260℃の接着強度の変化率(低下率)を算出した。評価基準は次の通りである。
[評価基準]
○:10%未満
△:10%以上20%未満
×:20%以上
【0050】
(2)初期透過率
2枚のガラス板に厚さ0.5mmのシリコーンゴムシートをスペーサーとして挟み込んで作製したセルに、上記異方導電性接着フィルムを100枚重ね合わせ、120℃で2時間、150℃で5時間の加熱を行い硬化して、厚さ0.5mmの板状硬化物を作成した。
紫外可視分光光度計(日本分光社製、製品名:V-570)を用いて、加熱硬化後の板状硬化物の波長460nmにおける光透過率を測定した。評価基準は次の通りである。
[評価基準]
○:90%以上
△:80%以上90%未満
×:80%未満
【0051】
(3)耐熱性試験(1)
前記(2)で得られた加熱硬化後の板状硬化物に対し、150℃の大気オーブンにて24時間加熱処理した。また、この加熱処理後の板状硬化物の460nmにおける光透過率を測定し、その変化率を算出した。評価基準は次の通りである。
[評価基準]
○:90%以上
△:80%以上90%未満
×:80%未満
【0052】
(4)耐熱性試験(2)
前記(2)で得られた加熱硬化後の板状硬化物に対し、150℃の大気オーブンにて1000時間加熱処理した。また、この加熱処理後の板状硬化物の460nmにおける光透過率を測定し、その変化率を算出した。評価基準は次の通りである。
[評価基準]
○:90%以上
△:80%以上90%未満
×:80%未満
【0053】
(5)耐光性試験(1)
前記(2)で得られた加熱硬化後の板状硬化物に対し、UV照射装置(オーク製作所製、製品名:UV-300、高圧水銀灯、400nm以下の波長カットフィルター使用)を用い、24時間UV照射処理した。また、この照射処理後の板状硬化物の460nmにおける光透過率を測定し、その変化率を算出した。評価基準は次の通りである。
[評価基準]
○:90%以上
△:80%以上90%未満
×:80%未満
【0054】
(6)耐光性試験(2)
前記(2)で得られた加熱硬化後の板状硬化物に対し、UV照射装置(オーク製作所製、製品名:UV-300、高圧水銀灯、400nm以下の波長カットフィルター使用)を用い、1000時間UV照射処理した。次いで、照射処理後の板状硬化物の460nmにおける光透過率を測定し、その変化率を算出した。評価基準は次の通りである。
[評価基準]
○:90%以上
△:80%以上90%未満
×:80%未満
【0055】
(7)耐マイグレーション性
くし型パターン基板(基板材料:窒化アルミ、電極材料:Cu、0.1mm間隔で5本)に実施例で得られた異方導電性接着フィルムを200℃、1MPaで60分間、熱圧着したサンプル(50×50mm、厚さ:0.1mm)に対し、85℃、湿度85%RHの環境下で電極に100Vの電圧を1000時間印加しマイグレーション性試験を行うことにより、耐マイグレーション性を評価した。評価基準は次の通りである。
[評価基準]
○:マイグレーション発生なし
×:マイグレーション発生
【0056】
【0057】
樹脂として、シリコーン変成エポキシ樹脂及び含フッ素重合体を用いた実施例1、2は、エポキシ樹脂のみを用いた比較例2(耐光性が悪い)、シリコーン樹脂のみを用いた比較例3(密着性、耐マイグレーション性が悪い)、また、樹脂として、含フッ素重合体のみを用いた比較例1(密着性が悪い)に比べ、密着性、光透過性、耐熱性、耐光性及び耐マイグレーション性のすべてが同時に満たされていることがわかる。