(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】スパークプラグ
(51)【国際特許分類】
H01T 13/54 20060101AFI20231124BHJP
H01T 13/20 20060101ALI20231124BHJP
H01T 13/32 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H01T13/54
H01T13/20 B
H01T13/32
(21)【出願番号】P 2020073225
(22)【出願日】2020-04-16
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 翔太
(72)【発明者】
【氏名】西尾 典晃
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-118185(JP,A)
【文献】特開2011-18593(JP,A)
【文献】特開2007-35570(JP,A)
【文献】実開昭50-107834(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/00 - 13/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
副燃焼室(2)と、前記副燃焼室を外部に連通する少なくとも1つの噴孔(33)と、前記副燃焼室内に電極先端部(41)が配された中心電極(4)と、を備え、前記噴孔の少なくとも1つである火花形成噴孔(30)の内壁と前記電極先端部との間に放電を形成することができるよう構成されたスパークプラグ(1)であって、
前記火花形成噴孔の前記内壁は、前記火花形成噴孔の孔軸方向(X)における前記副燃焼室側に向かって前記孔軸方向に直交する断面の面積が拡大する拡大面部(301)を、前記孔軸方向の少なくとも一部の領域に有する、スパークプラグ。
【請求項2】
前記火花形成噴孔は、前記副燃焼室側の内側開口部(304)の面積が、前記スパークプラグの外部側の外側開口部(303)の面積よりも大きい、請求項1に記載のスパークプラグ。
【請求項3】
前記火花形成噴孔の内側領域と前記電極先端部の先端面(413)とは、互いに前記孔軸方向に重なる位置に形成されており、前記火花形成噴孔における前記副燃焼室側の内側開口部(304)の面積は、前記電極先端部の前記先端面よりも大きく、前記孔軸方向から見たとき、前記内側開口部の少なくとも一部は、前記電極先端部の前記先端面の外周側に形成されている、請求項1又は2に記載のスパークプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパークプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
スパークプラグは、車両用エンジン等の内燃機関における着火手段として用いられる。特許文献1には、絶縁碍子から突出した中心電極をプラグカバーで覆ったスパークプラグが開示されている。前記プラグカバーには、プラグカバーを貫通する貫通孔が複数形成されており、当該貫通孔の1つである挿入孔に中心電極の先端部が挿入されている。そして、特許文献1に記載のスパークプラグは、中心電極と前記挿入孔の内壁との間を、火花放電を発生させるための放電ギャップとしている。また、特許文献1に記載のスパークプラグは、放電ギャップに生じた放電火花を主燃焼室側に向かって引き伸ばすことができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のスパークプラグにおいては、着火性向上の観点から改善の余地がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、着火性を向上させることができるスパークプラグを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、副燃焼室(2)と、前記副燃焼室を外部に連通する少なくとも1つの噴孔(33)と、前記副燃焼室内に電極先端部(41)が配された中心電極(4)と、を備え、前記噴孔の少なくとも1つである火花形成噴孔(30)の内壁と前記電極先端部との間に放電を形成することができるよう構成されたスパークプラグ(1)であって、
前記火花形成噴孔の前記内壁は、前記火花形成噴孔の孔軸方向(X)における前記副燃焼室側に向かって前記孔軸方向に直交する断面の面積が拡大する拡大面部(301)を、前記孔軸方向の少なくとも一部の領域に有する、スパークプラグにある。
【発明の効果】
【0007】
前記態様のスパークプラグは、電極先端部と火花形成噴孔の内壁との間に放電を形成することができるよう構成されている。それゆえ、例えば点火タイミングを適宜調整することで、副燃焼室内にも、副燃焼室外にも放電火花を引き伸ばすことができる。そして、火花形成噴孔の内壁は、孔軸方向における副燃焼室側に向かって孔軸方向に直交する断面の面積が拡大する拡大面部を、孔軸方向の少なくとも一部の領域に有する。それゆえ、副燃焼室側に放電火花を引き伸ばす場合において次のような効果がある。
【0008】
拡大面部は、スパークプラグ外部から副燃焼室側へ向かうにつれて流路断面積が拡大する。それゆえ、火花形成噴孔を通って副燃焼室内に向かう気流は、拡大面部において拡散されて流速が低減する。これにより、放電火花が吹き消えやすくなることを防止することができる。
【0009】
以上のごとく、前記態様によれば、着火性を向上させることができるスパークプラグを提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1における、内燃機関に取り付けられたスパークプラグの、一部断面正面図。
【
図2】実施形態1における、スパークプラグの先端部の断面図。
【
図5】実施形態1における、圧縮行程での放電火花の引き伸ばされ方を示すスパークプラグの先端部の断面図。
【
図6】実施形態1における、膨張行程での放電火花の引き伸ばされ方を示すスパークプラグの先端部の断面図。
【
図7】実施形態2における、スパークプラグの先端部の断面図。
【
図8】実施形態3における、スパークプラグの先端部の断面図。
【
図9】実施形態4における、スパークプラグの先端部の断面図。
【
図10】実施形態5における、スパークプラグの先端部の断面図。
【
図11】実施形態6における、スパークプラグの先端部の断面図。
【
図12】実施形態6の変形形態における、スパークプラグの先端部の断面図。
【
図13】実施形態7における、スパークプラグの先端部の断面図。
【
図14】実施形態8における、スパークプラグの先端部の断面図。
【
図15】実施形態9における、スパークプラグの先端部の断面図。
【
図16】実施形態10における、スパークプラグの先端部の断面図。
【
図17】実施形態11における、スパークプラグの先端部の断面図。
【
図18】実施形態12における、スパークプラグの先端部の断面図。
【
図19】実施形態13における、スパークプラグの先端部の断面図。
【
図20】実施形態14における、スパークプラグの先端部の断面図。
【
図21】実施形態15における、スパークプラグの先端部の断面図。
【
図23】実施形態16における、スパークプラグの先端部の断面図。
【
図24】実施形態17における、スパークプラグの先端部の断面図。
【
図26】実施形態17の変形形態における、
図25に相当する断面図。
【
図27】実施形態18における、スパークプラグの先端部の断面図。
【
図28】実施形態19における、スパークプラグの先端部の断面図。
【
図30】実施形態20における、スパークプラグの先端部の断面図。
【
図31】実施形態21における、スパークプラグの先端部の断面図。
【
図32】実施形態22における、スパークプラグの先端部の断面図。
【
図33】第1の変形形態における、
図3に相当する断面図。
【
図34】第2の変形形態における、
図4に相当する断面図。
【
図35】第3の変形形態における、
図4に相当する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
スパークプラグの実施形態につき、
図1~
図6を用いて説明する。
図2に示すごとく、本形態のスパークプラグ1は、副燃焼室2と、副燃焼室2をスパークプラグ1の外部に連通する少なくとも1つの噴孔33と、副燃焼室2内に電極先端部41が配された中心電極4とを備える。スパークプラグ1は、噴孔33の少なくとも1つである火花形成噴孔30の内壁と電極先端部41との間に放電を形成することができるよう構成されている。本形態においては、詳細は後述するが、内燃機関の膨張行程において、火花形成噴孔30の内壁と電極先端部41との間に放電が形成される。
【0012】
火花形成噴孔30の内壁は、孔軸方向Xの副燃焼室2側に向かって孔軸方向Xに直交する断面の面積が拡大する拡大面部301を、孔軸方向Xの少なくとも一部の領域に有する。拡大面部301を含む火花形成噴孔30の孔軸方向Xに直交する断面の面積は、前記断面に表れる火花形成噴孔30の内側領域の面積である。孔軸方向Xとは、火花形成噴孔30の中心軸が延びる方向である。
以後、本形態につき詳説する。
【0013】
本形態において、スパークプラグ1の中心軸をプラグ中心軸Cという。プラグ中心軸Cが延在する方向をプラグ軸方向Yという。プラグ軸方向Yは、筒状に形成されたハウジング5の軸方向、及び筒状に形成された絶縁碍子6の軸方向に一致している。また、詳細は後述するが、プラグ軸方向Yと孔軸方向Xとは同じ方向である。プラグ軸方向Yの一方側であって、スパークプラグ1における副燃焼室2が形成された側(例えば、
図1及び
図2の下側)をプラグ先端側といい、その反対側をプラグ基端側という。スパークプラグ1の径方向を、プラグ径方向という。スパークプラグ1の周方向を、プラグ周方向という。
【0014】
スパークプラグ1は、例えば、自動車、コージェネレーション等の内燃機関における着火手段として用いることができる。スパークプラグ1のプラグ基端側の端部は、図示しない点火コイルと接続され、プラグ先端側の端部は、内燃機関の燃焼室内に配される。
図1に示すごとく、燃焼室は、内燃機関のシリンダブロック、ピストン、シリンダヘッド11に囲まれた領域であり、燃焼室のうち、スパークプラグ1の外部側を主燃焼室12、スパークプラグ1の後述のプラグカバー3の内側を副燃焼室2という。スパークプラグ1は、ハウジング5において内燃機関のシリンダヘッド11に取り付けられる。
【0015】
図1、
図2に示すごとく、ハウジング5は、導電性、熱伝導性、及び耐熱性を有する材料を筒状に形成してなる。ハウジング5の外周部には、取付ネジ部51が形成されている。
図1に示すごとく、取付ネジ部51は、シリンダヘッド11に設けられた雌ネジ穴111に螺合される部位である。スパークプラグ1がシリンダヘッド11に取り付けられた状態においては、スパークプラグ1における取付ネジ部51のプラグ先端側の部位が主燃焼室12内に曝される。ハウジング5は、その内周部において絶縁碍子6を保持している。
【0016】
絶縁碍子6は、例えば電気的絶縁性を有する材料を円筒状に形成してなる。図示は省略するが、絶縁碍子6は、ハウジング5に対してプラグ軸方向Yに係止されている。図示は省略するが、絶縁碍子6とハウジング5との係止部には、これらの間のシール性を確保するパッキンが設けられている。絶縁碍子6は、その内周部において中心電極4を保持している。
【0017】
中心電極4は、例えば金属をプラグ軸方向Yに長尺に形成してなる。
図2に示すごとく、中心電極4は、絶縁碍子6からプラグ先端側に突出した電極先端部41を備える。電極先端部41は、プラグ軸方向Yに延在する円柱状を呈している。電極先端部41は、ハウジング5のプラグ先端側の端面よりもプラグ先端側に突出している。
【0018】
電極先端部41は、絶縁碍子6の内側に配された中心電極4の部位と同材料で一体的に形成された電極先端本体411と、電極先端本体411の側面に配された中心チップ412とを備える。
図2、
図3に示すごとく、電極先端本体411の側面には、チップ配置面411aが形成されている。チップ配置面411aは、プラグ径方向の外側を向くとともに、プラグ径方向に直交する平面状に形成されている。そして、チップ配置面411aに、中心チップ412が配されている。
【0019】
中心チップ412は、電極先端本体411よりも耐消耗性の高い材料からなり、例えば貴金属からなる。中心チップ412は、チップ配置面411aの法線方向に厚みを有する矩形板状に形成されている。中心チップ412は、プラグ先端側の端部の位置を、電極先端本体411のプラグ先端側の端部の位置と一致させている。中心チップ412は、後述の接地電極7との間に放電ギャップGを形成している。放電ギャップGは、初期の火花放電を形成する空間である。後述するように、放電火花Sは、副燃焼室2内の気流に押されて移動するが、初期の火花放電は、移動する前の放電火花Sを意味するものとする。
【0020】
図1、
図2に示すごとく、ハウジング5のプラグ先端側の端部に、副燃焼室2を区画するプラグカバー3が配されている。プラグカバー3は、導電性、熱伝導性、及び耐熱性を有する材料からなる。プラグカバー3は、プラグ基端側に開口するカップ状に形成されている。すなわち、プラグカバー3は、副燃焼室2をプラグ周方向に覆うカバー側壁31と、副燃焼室2をプラグ先端側から覆う円板状のカバー底壁32とを備える。プラグカバー3のプラグ基端側の端部は、ハウジング5に全周において接合されており、ハウジング5に対して電気的、熱的に接続されている。なお、本形態において、ハウジング5とプラグカバー3とは別体で構成したが、これらを一つの部材によって構成してもよい。
【0021】
図2、
図3に示すごとく、プラグカバー3は、電極先端部41の先端面413とプラグ軸方向Yに対向する領域に火花形成噴孔30を有する。火花形成噴孔30は、カバー底壁32をプラグ軸方向Yに貫通するよう形成されている。そして、火花形成噴孔30の軸方向である孔軸方向Xは、プラグ軸方向Yと同じ方向となるよう形成されている。
【0022】
前述のごとく、火花形成噴孔30の内壁は、孔軸方向Xの副燃焼室2側に向かって孔軸方向Xに直交する断面の面積が拡大する拡大面部301を、孔軸方向Xの少なくとも一部の領域に有する。本形態において、火花形成噴孔30の内壁は、プラグ先端側から順に、円筒面部302と拡大面部301とを備える。
【0023】
図2に示すごとく、円筒面部302は、プラグ軸方向Yにまっすぐ形成された円筒状を呈している。すなわち、円筒面部302は、プラグ軸方向Yの各位置における形状が互いに同様の円形となる。円筒面部302のプラグ先端側の端部は、プラグ先端側に向かって開口した外側開口部303となっている。円筒面部302のプラグ基端側の端部からプラグ基端側に、拡大面部301が形成されている。
【0024】
拡大面部301は、プラグ基端側に向かうほど拡径するテーパ状に形成されている。すなわち、拡大面部301は、プラグ軸方向Yの各位置における形状が、互いに相似形の円形となり、かつ、プラグ基端側に向かうほど、拡大面部301のプラグ軸方向Yに直交する断面の面積が大きくなる。そして、拡大面部301のプラグ基端側の端部は、プラグ基端側に開口した内側開口部304となっている。火花形成噴孔30は、副燃焼室2側の内側開口部304の面積が、スパークプラグ1の外部側の外側開口部303の面積よりも大きくなるよう構成されている。
【0025】
図3に示すごとく、火花形成噴孔30の内側領域と電極先端部41の先端面413とは、互いに孔軸方向Xに重なる位置に形成されている。なお、電極先端部41の先端面413は、電極先端部41のプラグ先端側の面のうち最もプラグ先端側にあるものを意味する。本形態において、
図2に示すごとく、電極先端部41を構成する電極先端本体411と中心チップ412とは、プラグ先端側の端部の位置が同じであるため、電極先端部41の先端面413は、電極先端本体411と中心チップ412との双方の先端面である。
図2、
図3に示すごとく、火花形成噴孔30における副燃焼室2側の内側開口部304の面積は、電極先端部41の先端面413よりも大きい。孔軸方向Xから見たとき、内側開口部304の少なくとも一部は、電極先端部41の先端面413の外周側に形成されている。本形態において、孔軸方向Xから見たとき、内側開口部304の全体は、電極先端本体411の先端面の外周側に形成されている。また、孔軸方向Xから見たとき、外側開口部303の全体は、電極先端本体411の先端面の内側に収まるよう形成されている。
【0026】
図2、
図4に示すごとく、プラグカバー3の内壁面(すなわち副燃焼室2側の面)に、接地電極7が設けられている。接地電極7は、接地本体部71と接地チップ72とを有する。
【0027】
接地本体部71は、孔軸方向Xに延在する矩形板状に形成されている。
図2、
図3に示すごとく、接地本体部71の厚み方向は、中心チップ412の厚み方向と一致している。接地本体部71のプラグ先端側の端部は、プラグカバー3の内壁面における、内側開口部304近傍に接合されている。本形態においては、接地本体部71のプラグ先端側の端部は、プラグカバー3の内壁面における、内側開口部304から若干離れた領域に接合されている。接地本体部71におけるプラグ基端側の部位は、中心電極4のチップ配置面411aと対向している。そして、接地本体部71のプラグ基端側の部位における中心電極4側の面に、中心チップ412と対向するよう接地チップ72が設けられている。
【0028】
接地チップ72は、接地本体部71よりも耐消耗性の高い材料からなり、例えば貴金属からなる。接地チップ72は、矩形板状に形成されており、その厚み方向が中心チップ412の厚み方向と一致するよう配されている。
図2に示すごとく、接地チップ72は、そのプラグ基端側の端部の位置を、接地本体部71のプラグ基端側の端部の位置と一致させている。また、
図3、
図4に示すごとく、接地チップ72の孔軸方向Xに直交する幅方向(例えば
図4の左右方向)の両端の位置は、前記幅方向における接地本体部71の両端の位置と一致している。なお、
図4においては、便宜上、接地チップ72にハッチングを施している。
【0029】
図3に示すごとく、前記幅方向(すなわち
図3の上下方向)における接地チップ72の寸法と中心チップ412の寸法とは、互いに同等である。
図2に示すごとく、本形態において、接地チップ72のプラグ基端側の端部は、中心チップ412よりもプラグ基端側に突出しており、接地チップ72のプラグ先端側の端部は、中心チップ412のプラグ先端側の端部よりもプラグ基端側の位置にある。そして、接地チップ72と中心チップ412との間に、放電ギャップGが形成されている。
図2、
図3に示すごとく、放電ギャップGは、少なくとも一部が内側開口部304の内側領域に孔軸方向Xに重なる位置に配されている。
【0030】
図1、
図2に示すごとく、プラグカバー3は、火花形成噴孔30以外にも、プラグカバー3を貫通する複数の噴孔33を有する。以後、単に噴孔33といったときは、特に断らない限り火花形成噴孔30以外の噴孔33を意味するものとする。複数の噴孔33は、火花形成噴孔30よりもプラグ径方向の外周側に形成されている。各噴孔33は、プラグ先端側へ向かうにつれてプラグ径方向の外周側に向かうよう傾斜して形成されている。複数の噴孔33は、プラグ周方向に等間隔に形成されている。なお、噴孔33の数、形状、配置箇所等は、要請に応じて適宜決定される。
【0031】
次に、
図5、
図6を用いて、本形態のスパークプラグ1において放電ギャップGに形成される放電火花が引き伸ばされる様子につき説明する。本形態のスパークプラグ1は、内燃機関の圧縮行程(すなわち上死点前;BTDC)又は膨張行程(すなわち上死点後;ATDC)において放電を生じさせるよう制御されている。内燃機関の圧縮行程において放電を生じさせた場合と、膨張行程において放電を生じさせた場合とで、スパークプラグ1の放電の引き伸ばされ方が異なる。
【0032】
まず、
図5を用いて、圧縮行程において火花放電を放電ギャップGに生じさせる場合につき説明する。圧縮行程においては、火花形成噴孔30周辺では主燃焼室12側から副燃焼室2側に向かって流れる気流F1が生じている。当該気流F1は、主燃焼室12から火花形成噴孔30の円筒面部302に流入するとき、流路断面積が急減することにより、局所的に流速が速くなる。そして、当該気流F1は、円筒面部302から拡大面部301に流入されるとき、流路断面積が徐々に拡大していくため、気流が拡散されて流速が低下する。そして、副燃焼室2内に到達した気流は、中心電極4を避けるようプラグ基端側に向かい、一部が放電ギャップGを通過する。
【0033】
そして、放電ギャップGに生じる初期の放電火花Sは、例えば、中心電極4と接地電極7の間の空間距離が最も近くなる、中心チップ412と接地チップ72との間において生じる。そして、当該初期の放電火花Sは、前述のように放電ギャップGを通る、拡散された気流F1に押され、その両起点間の部位がプラグ基端側に向かって大きく引き伸ばされる。そして、放電火花Sは、副燃焼室2内に大きく引き伸ばされ、副燃焼室2内の混合気に直接着火し、副燃焼室2内に火炎を形成する。副燃焼室2で成長した火炎は、火花形成噴孔30及びその他の噴孔33から主燃焼室12に火炎ジェットとして噴出される。ここで、火花形成噴孔30は、プラグ先端側に向かうほど流路断面積が減少するため、火花形成噴孔30を通過して噴出される火炎ジェットの勢いが増す。これにより、内燃機関の燃焼期間を短くすることができる。なお、便宜上、
図5においては初期の放電火花Sと当該初期の放電火花Sが引き伸ばされた状態との2つを表している。
【0034】
例えば、プラグカバー3、ハウジング5、絶縁碍子6、中心電極4等の副燃焼室2に面する部材がある程度高温となる、冷間始動時以外のときに、圧縮行程において火花放電を生じさせることができる。
【0035】
次に、
図6を用いて、膨張行程において火花放電を放電ギャップGに生じさせる場合につき説明する。膨張行程においては、火花形成噴孔30周辺では副燃焼室2側から主燃焼室12側に向かって流れる気流F2が生じている。放電ギャップGに生じる初期の放電火花Sは、例えば、中心電極4と接地電極7との間の空間距離が最も近くなる、中心チップ412と接地チップ72との間において生じる。
【0036】
初期の放電火花Sは、前述の気流F2に押され、その両起点間の部位がプラグ先端側に向かって大きく引き伸ばされると同時に、接地チップ72側の起点が、接地チップ72から火花形成噴孔30の内壁上をプラグ先端側に移動し、やがて火花形成噴孔30の内壁のプラグ先端側の端部付近まで移動する。このようにして、火花形成噴孔30と中心電極4の電極先端部41との間に放電が形成される。そして、引き伸ばされた放電火花Sは、火花形成噴孔30からプラグ先端側、すなわち主燃焼室12内に形成され、主燃焼室12内の混合気に直接着火する。
【0037】
自動車エンジン等の内燃機関が冷えている状態で稼働させる冷間始動時等においては、触媒を早期に暖気して活性化させるために点火時期を大幅に遅角させることがあるが、この場合、膨張行程での点火となる。膨張行程で火花放電を発生させた際には、以下のメリットがある。冷間始動時などは、プラグカバー3、ハウジング5、絶縁碍子6等の副燃焼室2に面する部材が低温となっていることがある。したがって、特に冷間始動時等においては、主燃焼室12に向かって放電火花Sを伸長させ、初期火炎とプラグカバー3等との接触面積を抑制する。これにより、初期火炎の熱がプラグカバー3等に奪われる冷損を抑えやすい。その結果、冷間始動時等における着火性を向上させることができる。
【0038】
次に、本形態の作用効果につき説明する。
本形態のスパークプラグ1は、電極先端部41と火花形成噴孔30の内壁との間に放電を形成することができるよう構成されている。それゆえ、例えば点火タイミングを適宜調整することで、副燃焼室2内にも、副燃焼室2外にも放電火花Sを引き伸ばすことができる。そして、火花形成噴孔30の内壁は、孔軸方向Xにおける副燃焼室2側に向かって孔軸方向Xに直交する断面の面積が拡大する拡大面部301を、孔軸方向Xの少なくとも一部の領域に有する。それゆえ、副燃焼室2側に放電火花Sを引き伸ばす場合において次のような効果がある。
【0039】
拡大面部301は、スパークプラグ1外部から副燃焼室2側へ向かうにつれて流路断面積が拡大する。それゆえ、火花形成噴孔30を通って副燃焼室2内に向かう気流は、拡大面部301において拡散されて流速が低減する。これにより、放電火花Sが吹き消えやすくなって再放電が頻発することを防止することができる。
【0040】
また、拡大面部301は、副燃焼室2側からスパークプラグ1外部へ向かって流路断面積が縮小する。それゆえ、副燃焼室2内において放電火花Sによって着火されて生じた火炎は、副燃焼室2内において成長し、やがて噴孔33を通ってスパークプラグ1外部に噴出するが、火花形成噴孔30の拡大面部301を通過する気流は、進むにつれて拡大面部301の流路断面積が減少するため、圧縮されて流速が増大する。それゆえ、火花形成噴孔30から主燃焼室12側に噴出される火炎ジェットの勢いを増し、着火性を向上させやすい。
【0041】
また、火花形成噴孔30は、副燃焼室2側の内側開口部304の面積が、スパークプラグ1の外部側の外側開口部303の面積よりも大きい。主燃焼室12側から副燃焼室2側へ向かう気流を拡散しやすく、かつ、副燃焼室2側から主燃焼室12側へ向かう気流の流速を高めやすい。
【0042】
また、火花形成噴孔30の内側領域と電極先端部41の先端面413とは、互いに孔軸方向Xに重なる位置に形成されている。火花形成噴孔30における副燃焼室2側の内側開口部304の面積は、電極先端部41の先端面413よりも大きい。そして、孔軸方向Xから見たとき、内側開口部304の少なくとも一部は、電極先端部41の先端面413の外周側に形成されている。それゆえ、火花形成噴孔30の内側開口部304が電極先端部41に近付き過ぎることに起因して火花形成噴孔30に初期の放電火花Sが形成されてしまうことを抑制することができる。それゆえ、火花形成噴孔30が消耗することを防止することができる。
【0043】
以上のごとく、本形態によれば、着火性を向上させることができるスパークプラグを提供することができる。
【0044】
(実施形態2)
本形態は、
図7に示すごとく、実施形態1に対して、火花形成噴孔30の形状を変更した形態である。
【0045】
本形態においては、孔軸方向Xにおける火花形成噴孔30の全体が、拡大面部301となっている。すなわち、火花形成噴孔30は、全体的に、プラグ基端側に向かうほど、孔軸方向Xに直交する断面の面積が大きくなるようなテーパ状に形成されている。
【0046】
その他は、実施形態1と同様である。
なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0047】
本形態においては、火花形成噴孔30の形成を容易にしやすい。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0048】
(実施形態3)
本形態は、
図8に示すごとく、実施形態2に対して、火花形成噴孔30の形状を変更した形態である。本形態において、火花形成噴孔30は、孔軸方向Xの中央部が、内周側に突出するよう湾曲しており、ラッパ状を呈している。
その他は、実施形態2と同様である。
【0049】
本形態においても、実施形態2と同様の作用効果を有する。
【0050】
(実施形態4)
本形態は、
図9に示すごとく、実施形態2に対して、火花形成噴孔30の形状を変更した形態である。本形態において、火花形成噴孔30は、孔軸方向Xの中央部が、外周側に突出するよう湾曲している。
その他は、実施形態2と同様である。
【0051】
本形態においても、実施形態2と同様の作用効果を有する。
【0052】
(実施形態5)
本形態は、
図10に示すごとく、実施形態1に対して、火花形成噴孔30の形状を変更した形態である。
【0053】
本形態においては、火花形成噴孔30が、プラグ基端側の部位ほど、孔軸方向Xに直交する断面の面積が大きくなるような段状に形成されている。本形態において、火花形成噴孔30は、3段に形成されている。そして、孔軸方向Xにおける火花形成噴孔30の全体が、拡大面部301となっている。
その他は、実施形態1と同様である。
【0054】
本形態においても、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0055】
(実施形態6)
本形態は、
図11に示すごとく、実施形態5に対して、火花形成噴孔30の形状を変更した形態である。
【0056】
本形態においては、火花形成噴孔30が、2段の段状に形成されている。カバー底壁32における外側開口部303の周囲には、円状のバリ取り凹部34が形成されている。プラグカバー3の火花形成噴孔30は、例えば副燃焼室2側からスパークプラグ1外側に向かう打ち抜きにより形成され、火花形成噴孔30の外側開口部303周囲に、スパークプラグ1外側に突出するバリが形成されることがある。そこで、バリ取り作業が行われるが、その痕跡がバリ取り凹部34としてプラグカバー3に残ることがある。バリ取り凹部34は、カバー底壁32の厚みの1/5の厚み以下に形成される。このように、カバー底壁32の最大厚みの1/5の厚み以下に形成された凹部は、気流の拡散等には略影響を及ぼさず、火花形成噴孔30とは言わない。
その他は、実施形態5と同様である。
【0057】
本形態においても、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0058】
なお、ドリルによるバリ取りがなされた場合、バリ取り凹部34は、
図12に示すごとく、プラグ先端側向かうほど拡径するテーパ状に形成される。このような場合は、バリ取り凹部34における最も深い部分(すなわち内周端部)の厚みが、カバー底壁32の厚みの1/5の厚み以下となるよう形成されれば、当該バリ取り凹部34は、火花形成噴孔30とは言わない。
【0059】
(実施形態7)
本形態は、
図13に示すごとく、実施形態1に対して、孔軸方向Xにおける接地チップ72の形成範囲を変更した形態である。
【0060】
本形態において、接地チップ72の孔軸方向Xの形成範囲は、中心チップ412の孔軸方向Xの形成範囲と同じである。すなわち、孔軸方向Xにおいて、接地チップ72のプラグ先端側の端部は、中心チップ412のプラグ先端側の端部と同位置にあり、接地チップ72のプラグ基端側の端部は、中心チップ412のプラグ基端側の端部と同位置にある。
その他は、実施形態1と同様である。
【0061】
本形態においても、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0062】
(実施形態8)
本形態は、
図14に示すごとく、実施形態1に対して、孔軸方向Xにおける接地チップ72の形成範囲を変更した形態である。
【0063】
本形態において、接地チップ72の孔軸方向Xの形成範囲は、中心チップ412の孔軸方向Xの形成範囲よりも大きい。孔軸方向Xにおいて、接地チップ72のプラグ先端側の部位は、中心チップ412からプラグ先端側に突出しているとともに、接地チップ72のプラグ基端側の部位は、中心チップ412からプラグ基端側に突出している。
その他は、実施形態1と同様である。
【0064】
本形態においては、放電火花Sの接地チップ72側の起点の、プラグ先端側に向かう移動、及びプラグ基端側に向かう移動を促進させやすい。これにより、スパークプラグ1の着火性を向上させやすい。また、接地電極7の電極消耗を抑制することができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0065】
(実施形態9)
本形態は、
図15に示すごとく、実施形態8に対して、孔軸方向Xにおける接地チップ72の形成範囲を変更した形態である。
【0066】
接地チップ72は、プラグ基端側の部位が、中心チップ412よりもプラグ基端側に突出している。そして、接地チップ72のプラグ先端側の部位が、中心チップ412とプラグ径方向に対向している。
その他は、実施形態1と同様である。
【0067】
本形態においては、放電火花Sの接地チップ72側の起点の、プラグ基端側に向かう移動を促進させやすい。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0068】
(実施形態10)
本形態は
図16に示すごとく、実施形態8に対して、孔軸方向Xにおける接地チップ72の形成範囲を変更した形態である。接地チップ72は、孔軸方向Xにおける接地本体部71の全領域に形成配されている。接地チップ72は、プラグ基端側の部位が、中心チップ412よりもプラグ基端側に突出しており、プラグ先端側の部位が、中心チップ412よりもプラグ先端側に突出している。そして、接地チップ72は、孔軸方向Xの中央部が、中心チップ412とプラグ径方向に対向している。
その他は、実施形態8と同様である。
【0069】
本形態においては、放電火花Sの接地チップ72側の起点の、プラグ先端側に向かう移動、及びプラグ基端側に向かう移動を促進させやすい。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0070】
(実施形態11)
本形態は、
図17に示すごとく、実施形態8に対して、孔軸方向Xにおける接地チップ72の形成範囲を変更した形態である。
【0071】
本形態のスパークプラグ1は、孔軸方向Xに互いに離れた2つの接地チップ72を備える。一方の接地チップ72は、接地本体部71のプラグ基端側の端部に配されており、他方の接地チップ72は、接地本体部71のプラグ先端側の端部に配されている。そして、孔軸方向Xにおける2つの接地チップ72間の領域は、接地本体部71と中心チップ412とがプラグ径方向に対向している。
その他は、実施形態8と同様である。
【0072】
本形態においては、放電火花Sの接地チップ72側の起点の、プラグ先端側に向かう移動、及びプラグ基端側に向かう移動を促進させながら、貴金属等で構成される接地チップ72の量を減らして高コスト化を防ぐことができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0073】
(実施形態12)
本形態は、
図18に示すごとく、実施形態1に対して、孔軸方向Xにおける接地電極7の寸法を変更した形態である。
【0074】
本形態において、接地電極7のプラグ基端側の端部は、中心電極4のプラグ先端側の端部と同等の位置、或いは中心電極4のプラグ先端側の端部よりもプラグ先端側に位置している。孔軸方向Xの接地チップ72の寸法は、孔軸方向Xの接地本体部71の寸法よりも小さい。接地チップ72は、接地本体部71のプラグ基端側の端部にのみ配されている。
その他は、実施形態1と同様である。
【0075】
本形態においても、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0076】
(実施形態13)
本形態は、
図19に示すごとく、実施形態12に対して、孔軸方向Xの接地チップ72の形成範囲を変更した形態である。すなわち、孔軸方向Xにおいて、接地チップ72は、接地本体部71の全体に形成されている。
その他は、実施形態11と同様である。
【0077】
本形態においても、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0078】
(実施形態14)
本形態は、
図20に示すごとく、接地本体部71のプラグ基端側の端面に接地チップ72を接合した実施形態である。接地チップ72は、中心チップ412とプラグ径方向に対向する領域に形成されている。本形態においては、接地チップ72の全体は、接地本体部71に孔軸方向Xに重なるよう形成されている。
その他は、実施形態1と同様である。
【0079】
本形態においても、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0080】
(実施形態15)
本形態は、
図21、
図22に示すごとく、実施形態1に対して、接地電極を無くした形態である。
【0081】
本形態において、中心電極4の電極先端部41は、火花形成噴孔30の内側開口部304との間が最も空間距離が近くなるよう形成されている。それゆえ、初期の火花放電は、電極先端部41と火花形成噴孔30との間に形成される。
【0082】
中心電極4の電極先端部41は、電極先端本体411のみから構成され、中心チップを備えない。
図22に示すごとく、電極先端部41は、孔軸方向Xに直交する断面形状が、円形となるよう形成されている。すなわち、電極先端部41は、例えば外周面に、中心チップ412を配置するための平面を形成する必要がなく、断面円形に形成されている。孔軸方向Xから見たとき、内側開口部304の全体は、電極先端部41の先端面413の外周側に形成されている。孔軸方向Xから見たとき、外側開口部303の全体は、電極先端部41の先端面413の内周側に形成されている。
その他は、実施形態1と同様である。
【0083】
本形態においても、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0084】
(実施形態16)
本形態は、
図23に示すごとく、実施形態15に対して、中心電極4の電極先端本体411のプラグ先端側の端面に、中心チップ412を設けた形態である。中心チップ412は、電極先端本体411の先端面と同様の円状を呈しており、電極先端本体411のプラグ先端側の端面の略全体に配されている。
その他は、実施形態15と同様である。
【0085】
本形態においても、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0086】
(実施形態17)
本形態は、
図24、
図25に示すごとく、実施形態1に対して、中心チップ及び接地チップを無くした形態である。すなわち、中心電極4の電極先端部41は、電極先端本体411のみで構成されており、接地電極7は、接地本体部71のみによって構成されている。
【0087】
中心電極4の電極先端本体411は、実施形態12と同様、断面円形に形成されている。また、
図24に示すごとく、接地電極7は、断面四角形状に形成されている。
その他は、実施形態1と同様である。
【0088】
本形態においても、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0089】
なお、本形態においては、接地本体部71に接地チップを設けていないため、接地本体部71において中心電極4側を向く平面を形成する必要がない。そのため、例えば接地本体部71を、
図26に示すような断面円形に形成することもできる。
【0090】
(実施形態18)
本形態は、
図27に示すごとく、実施形態17に対して、中心電極4の電極先端本体411のプラグ先端側の端面に、中心チップ412を設けた形態である。
【0091】
中心チップ412は、電極先端本体411のプラグ先端側の端面と同様の円状を呈しており、電極先端本体411のプラグ先端側の端面の略全体に配されている。中心チップ412の孔軸方向Xの長さは、中心チップ412の直径よりも大きい。そして、中心チップ412の外周面は、接地電極7とプラグ径方向に対向している。
その他は、実施形態17と同様である。
【0092】
本形態においても、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0093】
(実施形態19)
本形態は、
図28、
図29に示すごとく、実施形態17に対して、中心チップ412を設け、かつ、中心チップ412の設け方を工夫した形態である。
【0094】
本形態において、中心電極4の電極先端本体411は、プラグ径方向の接地電極7側の部位に、電極先端凹部414を有する。電極先端凹部414は、電極先端本体411の側面が内周側に凹むよう形成されるとともに、プラグ先端側に開放されている。電極先端凹部414の底面414aは、接地電極7側を向く平面となるよう形成されている。
【0095】
そして、電極先端凹部414内に、中心チップ412が配されている。中心チップ412は、プラグ径方向に厚みを有する板状に形成されており、接地電極7とプラグ径方向に対向している。孔軸方向Xから見たとき、中心チップ412は、一部が電極先端凹部414内に配されており、他の部位が電極先端凹部414の外側に配されている。なお、
図29において、孔軸方向Xに直交する方向の電極先端凹部414の輪郭を二点鎖線にて表している。
その他は、実施形態17と同様である。
【0096】
本形態においても、実施形態17と同様の作用効果を有する。
【0097】
(実施形態20)
本形態は、
図30に示すごとく、実施形態1に対して、接地チップを無くした形態である。本形態においては、中心チップ412と接地本体部71との間に、初期の火花放電が形成される。
その他は、実施形態1と同様である。
【0098】
本形態においても、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0099】
(実施形態21)
本形態は、
図31に示すごとく、実施形態20に対して、接地電極7全体を貴金属からなる接地チップ72によって構成した実施形態である。本形態において、接地電極7と中心電極4との対向方向における接地電極7の最大幅は、接地電極7の孔軸方向Xの長さの1/2の長さ以下である。
その他は、実施形態20と同様である。
【0100】
本形態においても、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0101】
(実施形態22)
本形態は、
図32に示すごとく、実施形態1に対して、接地電極7をカバー側壁31に取り付けた形態である。
【0102】
接地電極7は、プラグ径方向に長尺に形成されている。接地電極7は、内周側の端面が、中心電極4側を向いている。接地電極7は、接地本体部71のみからなり、接地チップ72を備えないが、これに限られない。
【0103】
中心電極4の電極先端部41は、電極先端本体411と、電極先端本体411の側面に取り付けられた中心チップ412とを備える。中心チップ412は、電極先端本体411の側面における、接地電極7の内周側の端面とプラグ径方向に対向して放電ギャップGを形成するよう設けられている。
【0104】
そして、本形態においては、全噴孔33のうち、放電ギャップGに対して空間距離的に最も近い噴孔が、火花形成噴孔30となっている。本形態において、火花形成噴孔30は、カバー底壁32とカバー側壁31との間の角部付近に形成されており、プラグ基端側に向かうほど内周側に向かうよう、プラグ軸方向Yに対して傾斜している。これに伴い、孔軸方向Xも、プラグ基端側に向かうほど内周側に向かうようプラグ軸方向Yに対して傾斜している。火花形成噴孔30は、孔軸方向Xにおける副燃焼室2側に向かうほど、孔軸方向Xに直交する断面の面積が大きくなるよう形成されている。火花形成噴孔30の孔軸方向Xの延長線上には、放電ギャップGの少なくとも一部が配される。
【0105】
本形態において、内燃機関の圧縮行程において放電ギャップGに火花放電を生じさせる場合、気流が主燃焼室12側から火花形成噴孔30を通って拡散され、副燃焼室2内に到達する。そして、スパークプラグ1の放電ギャップGに生じる放電火花Sは、前述のように拡散された気流に押され、副燃焼室2内において引き伸ばされる。
【0106】
また、内燃機関の膨張行程において放電ギャップGに放電を生じさせる場合、放電火花Sが副燃焼室2側から主燃焼室12側に向かう気流に押され、放電火花Sの接地電極7側の起点が火花形成噴孔30に移り、やがて放電火花Sの両起点間の部位が火花形成噴孔30から主燃焼室12側に引き伸ばされる。
その他は、実施形態1と同様である。
【0107】
本形態においても、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0108】
本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【0109】
例えば、
図33に示すごとく、実施形態1に対して、接地電極7の孔軸方向Xに直交する断面形状を、円形の一部をまっすぐ切り取ったような略半円状とすることができる。この場合、接地電極7の断面形状における直線部73に、接地チップ72を配置することで、接地チップ72の配置が容易となる。
【0110】
また、
図34に示すごとく、実施形態1に対して、接地チップ72の配置範囲を変形してもよい。
図34に示す例において、中心電極側から見たとき、接地チップ72は接地本体部71の内側に収まるよう形成されている。また、
図35に示すごとく、中心電極側から見たときの接地チップ72の形状が円形となるようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0111】
1 スパークプラグ
2 副燃焼室
30 火花形成噴孔
301 拡大面部
33 噴孔
4 中心電極
41 電極先端部
X 孔軸方向