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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】建物ユニットの設置方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
E04B1/348 W
E04B1/348 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020110154
(22)【出願日】2020-06-26
(65)【公開番号】P2022007280
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】杉山 健一
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-099771(JP,A)
【文献】特開2000-154597(JP,A)
【文献】特表2020-507535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00 - 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱及び梁を有してなるとともに仮設建物を構成する仮設用の建物ユニットを台車を用いて所定の設置位置に移動し設置する建物ユニットの設置方法であって、
前記建物ユニットにはそれよりも下方に延びる複数の脚部が設けられ、それら各脚部が地面の上に載置されることで前記建物ユニットが設置されるようになっており、
前記各脚部はいずれも脚長さの調整が可能とされており、
前記台車は、扁平の直方体状に形成され前記建物ユニットを載せるための台部と、前記台部に設けられた複数の車輪とを備え、
前記各脚部がいずれも平面視にて前記台車の外側に位置するように前記建物ユニットを前記台車の上に載置した状態で、全体が前記建物ユニットの下方に位置する当該台車を移動させることにより、当該建物ユニットを前記所定の設置位置まで移動させるユニット移動工程と、
前記ユニット移動工程の後、前記各脚部の脚長さを長くすることにより前記各脚部を地面の上に載置することで、それら各脚部により前記建物ユニットを支持する状態とする脚部載置工程と、
前記脚部載置工程の後、前記台車全体を前記建物ユニットの下方位置から退避させる台車退避工程と、
前記台車退避工程の後、前記各脚部の脚長さを調整することで前記建物ユニットを前記所定の設置位置に設置するユニット設置工程と、
を備えることを特徴とする建物ユニットの設置方法。
【請求項2】
前記建物ユニットを現在の設置位置から前記所定の設置位置へ移動し設置する際の建物ユニットの設置方法であって、
前記現在の設置位置に設置されている前記建物ユニットを前記各脚部の脚長さを伸ばすことにより上昇させるユニット上昇工程と、
前記上昇された前記建物ユニットの下方に前記台車の全体が位置するように前記台車を配置する台車配置工程と、
前記台車配置工程の後、前記各脚部の脚長さを短くすることにより前記建物ユニットを前記台車上に載置するユニット載置工程と、を備え、
前記ユニット載置工程の後、前記ユニット移動工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の建物ユニットの設置方法。
【請求項3】
前記各脚部は、前記建物ユニットの前記柱ごとに設けられ、
前記各柱は管状に形成されており、
前記脚部は、前記柱の下端部から下方に突出した状態で前記柱の内部に挿入され、その挿入状態で前記柱に沿ってスライドすることで脚長さの調整が可能とされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建物ユニットの設置方法。
【請求項4】
前記建物ユニットは、前記梁として、隣り合う前記柱の下端部の間を連結する複数の床大梁と、対向する各床大梁の間を連結し床面材を支持する複数の床小梁とを有しており、
前記各床小梁が前記台車の上に載置されることにより、前記建物ユニットが前記台車の上に載置されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の建物ユニットの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設建物を構成する仮設用の建物ユニットを所定の設置位置に設置する建物ユニットの設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の建物ユニットを用いて構築されるユニット式住宅が知られている。ユニット式住宅では、住宅を構成する建物ユニットが製造工場において製造され、その製造された建物ユニットが施工現場へトラックにより搬送される(例えば特許文献1参照)。そして、搬送された建物ユニットは施工現場においてトラックの荷台上からクレーンにより吊り上げられ、所定の設置位置に設置されるようになっている。
【0003】
近年、建物ユニットを用いて仮設住宅等の仮設建物を構築することが行われている。かかる仮設建物は、あらかじめ製造工場で製造された建物ユニットを用いて構築されるため、比較的短時間でかつ容易に建物を構築できる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-129954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建物ユニットを用いて仮設建物を構築する際には、建物ユニットを現場までトラックにより搬送し、その後、建物ユニットをクレーンによりトラックの荷台から吊り上げて所定の設置位置に設置することになると考えられる。しかしながら、仮設建物は、ユニット式住宅と異なり、少ない数(例えば1つ)の建物ユニットにより構築されるのが通常である。そのため、その少ない数の建物ユニットを設置するに際し、わざわざクレーンを用いて設置作業を行うのは大掛かりであると考えられ、その改善が求められる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、クレーン等の重機を用いることなく、建物ユニットを所定の位置に容易に設置することができる建物ユニットの設置方法を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、第1の発明の建物ユニットの設置方法は、柱及び梁を有してなるとともに仮設建物を構成する仮設用の建物ユニットを所定の設置位置に設置する方法であって、前記建物ユニットにはそれよりも下方に延びる複数の脚部が設けられ、それら各脚部が地面の上に載置されることで前記建物ユニットが設置されるようになっており、前記各脚部はいずれも脚長さの調整が可能とされており、前記各脚部がいずれも平面視にて台車の外側に位置するように前記建物ユニットを当該台車の上に載置した状態で、当該台車を移動させることにより、当該建物ユニットを前記所定の設置位置まで移動させるユニット移動工程と、前記ユニット移動工程の後、前記各脚部の脚長さを長くすることにより前記各脚部を地面の上に載置することで、それら各脚部により前記建物ユニットを支持する状態とする脚部載置工程と、前記脚部載置工程の後、前記台車を前記建物ユニットの下方位置から退避させる台車退避工程と、前記台車退避工程の後、前記各脚部の脚長さを調整することで前記建物ユニットを前記所定の設置位置に設置するユニット設置工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
第1の発明によれば、仮設建物を構成する建物ユニット(仮設用の建物ユニット)に複数の脚部が設けられ、それら各脚部が地面の上に載置されることにより建物ユニットが設置されるようになっている。また、各脚部はいずれも脚長さの調整が可能とされている。
【0009】
上記の建物ユニットを所定の設置位置に設置する際にはまず、建物ユニットを台車の上に載置した状態で、当該台車を移動させることで、建物ユニットを所定の設置位置まで移動させる。そして、その後、各脚部の脚長さを長くすることにより各脚部を地面の上に載置することでそれら各脚部により建物ユニットを支持する状態とする。その後、台車を建物ユニットの下方位置から退避させ、退避後、各脚部の脚長さを調整することで建物ユニットを所定の設置位置に設置する。このような建物ユニットの設置方法によれば、建物ユニットの設置に際しクレーン等の重機が不要となる。そのため、建物ユニットを所定の設置位置に容易に設置することが可能となる。
【0010】
第2の発明の建物ユニットの設置方法は、第1の発明において、前記建物ユニットを現在の設置位置から前記所定の設置位置へ移動し設置する際の建物ユニットの設置方法であって、前記現在の設置位置に設置されている前記建物ユニットを前記各脚部の脚長さを伸ばすことにより上昇させるユニット上昇工程と、前記上昇された前記建物ユニットの下方に前記台車を配置する台車配置工程と、前記台車配置工程の後、前記各脚部の脚長さを短くすることにより前記建物ユニットを前記台車上に載置するユニット載置工程と、を備え、前記ユニット載置工程の後、前記ユニット移動工程を行うことを特徴とする。
【0011】
第2の発明によれば、建物ユニットを現在の設置位置から新たな設置位置(所定の設置位置)へ移動させるに際しまず、現在の設置位置に設置されている建物ユニットを各脚部の脚長さを長くすることにより上昇させる。その後、その上昇した建物ユニットの下方に台車を配置し、配置後、各脚部の脚長さを短くすることにより建物ユニットを台車上に載置する。そして、その後、台車を移動させて建物ユニットを所定の設置位置まで移動させ、当該設置位置に建物ユニットを設置する。このような設置方法によれば、建物ユニットを現在の設置位置から新たな設置位置へと移設するに際し、クレーン等の重機を用い必要がない。そのため、建物ユニットの移設を容易に行うことが可能となる。
【0012】
第3の発明の建物ユニットの設置方法は、第1又は第2の発明において、前記各脚部は、前記建物ユニットの前記柱ごとに設けられ、前記各柱は管状に形成されており、前記脚部は、前記柱の下端部から下方に突出した状態で前記柱の内部に挿入され、その挿入状態で前記柱に沿ってスライドすることで脚長さの調整が可能とされていることを特徴とする。
【0013】
第3の発明によれば、建物ユニットの柱の内部に脚部がスライド可能に挿入され、そのスライドにより脚部の脚長さが調整可能となっている。この場合、建物ユニットの柱を利用して比較的簡単に脚長さ調整が可能な脚部を構成することができる。
【0014】
第4の発明の建物ユニットの設置方法は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記建物ユニットは、前記梁として、隣り合う前記柱の下端部の間を連結する複数の床大梁と、対向する各床大梁の間を連結し床面材を支持する複数の床小梁とを有しており、前記各床小梁が前記台車の上に載置されることにより、前記建物ユニットが前記台車の上に載置されることを特徴とする。
【0015】
第4の発明によれば、建物ユニットの床小梁が台車の上に載置されることで、建物ユニットが台車上に載せられる。この場合、床面材を支持する床小梁を利用して建物ユニットを台車の上に載せることができるため、建物ユニット側の構成を大きく変えることなく、台車上に建物ユニットを載置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】仮設店舗を示す正面図。
図2】建物ユニットを示す斜視図。
図3】建物ユニットの柱に脚部が取り付けられた状態を示す正面図。
図4】制御システムの電気的構成を示す図。
図5】建物ユニットの設置方法を説明するための説明図。
図6】大型トラックに建物ユニットが載せられた状態を示す図。
図7】軽トラックにより建物ユニットを移設する際の流れを説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、本発明における建物ユニットの設置方法を、仮設店舗を構成する建物ユニットの設置方法として具体化している。そこで、まず仮設店舗の構成について図1及び図2に基づき説明する。図1は仮設店舗を示す正面図であり、図2は建物ユニットを示す斜視図である。
【0018】
図1に示すように、仮設店舗10は、直方体状に形成された一の建物ユニット11と、その建物ユニット11に設けられた複数(具体的には4つ)の脚部12とを備えている。各脚部12は建物ユニット11の四隅に配置され、建物ユニット11よりも下方に延びている。これら各脚部12は地面Gの上に載置され、その載置状態で建物ユニット11が各脚部12を介して地面Gの上に設置されている。なお、仮設店舗10が「仮設建物」に相当する。建物ユニット11が「仮設用の建物ユニット」に相当する。
【0019】
建物ユニット11は、図2に示すように、その骨格(躯体)を構成する直方体状の枠体15を備えている。枠体15は、その四隅に配設される4本の柱21と、各柱21の上端部及び下端部をそれぞれ連結する各4本の天井大梁22及び床大梁23とを備えている。それら柱21、天井大梁22及び床大梁23により枠体15の外枠が形成されている。柱21は四角筒状の角形鋼よりなる。天井大梁22及び床大梁23は断面コ字状の溝形鋼よりなり、その開口部が向き合うようにして設置されている。
【0020】
枠体15の天井部には、長辺側の対向する天井大梁22の間に、所定の間隔(詳しくは等間隔)で複数の天井小梁25が架け渡されている。また、枠体15の床部には、長辺側の対向する床大梁23の間に、所定の間隔(詳しくは等間隔)で複数の床小梁26が架け渡されている。天井小梁25はリップ溝形鋼よりなり、床小梁26は角形鋼よりなる。
【0021】
建物ユニット11の天井部には天井面材27が設けられ、床部には床面材28が設けられている。天井面材27は各天井小梁25により上方から支持され、床面材28は各床小梁26により下方から支持されている。また、建物ユニット11の側面部には壁面材29(図1参照)が設けられている。壁面材29は、柱21及び各大梁22,23に跨って取り付けられている。なお、図1では図示を省略しているが、例えば壁面材29の一部には窓部や出入口といった開口部が設けられている。
【0022】
後述するように、本建物ユニット11は所定の設置位置に設置される際、その設置位置まで台車40を用いて運ばれるようになっている。この際、建物ユニット11は、各床小梁26が台車40の上に載置されることにより当該台車40の上に載せられ、その状態で設置位置まで運ばれるようになっている。したがって、本建物ユニット11では、各床小梁26が台車40上に載置される載置部として利用されるようになっている。そのため、本建物ユニット11では、各床小梁26が、台車40上に載置された際にたわみ等の変形が生じるのを抑制すべく、比較的高い強度を有して形成されている。より詳しくは、通常の建物ユニットでは、各床小梁が床面材を支持できるだけの強度を有していれば足りるが、本建物ユニット11では、台車40上の載置に耐えうる強度が求められるため、各床小梁26が通常の建物ユニットの床小梁よりも高強度で形成されている。
【0023】
続いて、脚部12について図3に基づいて説明する。図3は、建物ユニット11の柱21に脚部12が取り付けられた状態を示す正面図である。
【0024】
図3に示すように、建物ユニット11の各柱21にはそれぞれ脚部12が設けられている。これらの脚部12は上下方向に延びており、角形鋼管により四角筒状に形成された脚本体12aと、脚本体12aの下端部に溶接により固定された平板状の下端プレート12bとを有している。
【0025】
各脚部12は、柱21の内部に挿入された状態で当該柱21に取り付けられている。各脚部12は、柱21に挿入された状態で、その一部が柱21の下端部よりも下方に突出している。この場合、その突出した部分の長さが脚部12の脚長さLに相当する。また、各脚部12は、柱21に挿入された状態で当該柱21に沿って上下方向にスライド可能とされている。そして、そのスライドにより脚部12の脚長さLを調整することが可能となっている。
【0026】
建物ユニット11には、各脚部12ごとに、脚部12を柱21に沿って上下にスライド移動させる脚駆動部31が設けられている。各脚駆動部31は、例えば電動モータからなり、柱21の内部に設けられている。この脚駆動部31の駆動により脚部12が上下にスライドされ、ひいては脚部12の脚長さLが調整されるようになっている。
【0027】
続いて、脚部12の脚長さLを調整する制御システムの構成について図4を用いながら説明する。なお、図4は、かかる制御システムの電気的構成を示す図である。また、図4には、後述する台車40の制御システムについても併せて示されている。
【0028】
図4に示すように、建物ユニット11には、各脚駆動部31の駆動制御を行うユニット制御部35が設けられている。ユニット制御部35は、CPU等を有する周知のマイクロコンピュータを備えて構成され、リモコン38からの操作信号を受信する受信部36と接続されている。リモコン38は、脚部12の脚長さLを調整する際に操作される脚用操作部であり、作業者により携帯される。リモコン38が作業者により操作されると、その操作に応じた操作信号がリモコン38から受信部36に無線により送信される。この操作信号が受信部36により受信されると、操作信号が受信部36からユニット制御部35に入力される。
【0029】
ユニット制御部35には各脚駆動部31が接続されている。ユニット制御部35は、リモコン38から受信した操作信号に基づき、各脚駆動部31を駆動制御して、各脚部12の脚長さLを調整する。また、建物ユニット11には、当該建物ユニット11の水平度を検知する水平センサ37が設けられている。水平センサ37はユニット制御部35と接続され、ユニット制御部35に逐次検知結果を出力する。ユニット制御部35は、水平センサ37からの検知結果に基づき各脚駆動部31を駆動制御する。具体的には、ユニット制御部35は、建物ユニット11が水平状態を維持するように各脚駆動部31を駆動制御して、各脚部12の脚長さLを調整する。
【0030】
続いて、上述した建物ユニット11(ひいては仮設店舗10)を所定の設置位置に設置する際の設置方法について図5に基づき説明する。図5は、建物ユニット11の設置方法を説明するための説明図である。本実施形態では、建物ユニット11を台車40を用いて所定の設置位置まで移動し設置するようにしている。そこで、以下ではまず、台車40の構成について簡単に説明する。
【0031】
図5(c)等に示すように、台車40は、建物ユニット11を載せるための台部41と、その台部41に設けられた複数の車輪42とを備える。台部41は、扁平の直方体状に形成され、その上面が建物ユニット11が載置される載置面41aとなっている。また、各車輪42は、台部41の側面にそれぞれ取り付けられている。台車40は、その幅(平面視における短手方向の長さ)が建物ユニット11の短辺方向に隣り合う各脚部12の間隔よりも小さくされ、その長さ(平面視における長辺方向の長さ)が建物ユニット11の長辺方向に隣り合う各脚部12の間隔よりも小さくされている。
【0032】
台車40は、外部からの操作に基づき走行するものとなっている。図4に示すように、台車40には、台車40の走行を駆動する走行駆動部49と、走行駆動部49を駆動制御する台車制御部45とが設けられている。走行駆動部49は、車輪42を回転駆動するモータ等からなり、台車制御部45と接続されている。台車制御部45は、リモコン48からの操作信号を受信する受信部46と接続されている。リモコン48は、台車40を走行(移動)させる際に操作される台車操作部であり、作業者により携帯される。リモコン48が作業者により操作されると、その操作に応じた操作信号がリモコン48から受信部46に無線により送信される。この操作信号が受信部46により受信されると、操作信号は受信部46から台車制御部45に入力される。そして、台車制御部45は、リモコン48から受信した操作信号に基づき、走行駆動部49を駆動制御し、台車40を走行させる。
【0033】
続いて、上述した台車40を用いた建物ユニット11(つまり仮設店舗10)の設置方法について図5を用いながら説明する。ここでは、所定の敷地内に複数の仮設店舗が集まっていわゆる店舗群が構成されていることを想定している。これら各仮設店舗はいずれも上述した仮設店舗10と同様、建物ユニットを用いて構成されている。これら仮設店舗は定期的に設置場所を変える場所変えを行うようになっており、以下では、仮設店舗10(建物ユニット11)を現在の設置位置から新たな設置位置(所定の設置位置に相当)へ場所変えを行う際の流れについて説明する。また、以下に説明する作業は、作業者がリモコン38,48を操作することにより行うようになっている。
【0034】
図5(a)には、建物ユニット11が現在の設置位置に設置されている状態が示されている。建物ユニット11を現在の設置位置から新たな設置位置へ移動するに際してはまず、図5(b)に示すように、建物ユニット11の各脚部12の脚長さLを伸ばすことにより建物ユニット11を上方に移動させるユニット上昇工程を行う。この工程では、建物ユニット11の下端部の高さ位置が台車40の台部41の載置面41aよりも高い位置に位置するまで建物ユニット11を上昇させる。
【0035】
次に、図5(c)に示すように、ユニット上昇工程により上昇させた建物ユニット11の下方に台車40を配置する台車配置工程を行う。この工程では、台車40を隣り合う脚部12の間を通じて建物ユニット11の下方位置まで移動させる。詳しくは、この工程では、台車40全体が建物ユニット11の下方(真下)に位置するように台車40を移動させる。
【0036】
次に、図5(d)に示すように、各脚部12の脚長さLを短くすることにより建物ユニット11を台車40の上に載置するユニット載置工程を行う。この工程では、建物ユニット11の各床小梁26を台車40の載置面41a上に載置することにより、建物ユニット11を台車40上に載置する。この場合、建物ユニット11が台車40上に載置された状態で、各脚部12はいずれも平面視において台車40の外側に位置する。
【0037】
次に、図5(e)に示すように、台車40を移動させることで、建物ユニット11を新たな設置位置まで移動させるユニット移動工程を行う。次に、図5(f)に示すように、各脚部12の脚長さLを長くすることにより各脚部12を地面Gの上に載置することで、各脚部12により建物ユニット11が支持される状態とする脚部載置工程を行う。この工程により、建物ユニット11は台車40の載置面41aから上方に離間された状態となる。
【0038】
次に、図5(g)に示すように、台車40を建物ユニット11の下方位置から退避させる台車退避工程を行う。この工程では、台車40を移動させることで、台車40全体を建物ユニット11の下方から退避させる。
【0039】
次に、図5(h)に示すように、各脚部12の脚長さLを調整することで建物ユニット11を新たな設置位置に設置するユニット設置工程を行う。この工程では、各脚部12の脚長さLを短くすることにより建物ユニット11を新たな設置位置に設置する。これにより、建物ユニット11は、その床面と地面Gとのレベル差が小さくされた状態で新たな設置位置に設置される。
【0040】
以上のように、建物ユニット11(仮設店舗10)は、現在の設置位置から新たな設置位置へ台車40を用いて移動され設置される。この場合、建物ユニット11を現在の設置位置から新たな設置位置にクレーン等の重機を用いることなく移設することができるため、建物ユニット11の移設を容易に行うことができる。
【0041】
また、本実施形態では、店舗群を構成する各仮設店舗(つまり建物ユニット)を新たな設置位置に移設する際にも、上述した仮設店舗10の移設の場合と同様、台車40を用いて移設することが可能となっている。この場合、台車40を使い回しする等して、各仮設店舗を容易に移設することができる。
【0042】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0043】
台車40を用いて建物ユニット11を移設する上述のユニット設置方法によれば、クレーンを用いることなく建物ユニット11を移設することができるという上述の効果に加え、クレーンにより建物ユニット11を移設する場合と比べ、移設作業に関わる作業者の人数を低減させることが可能となる。
【0044】
建物ユニット11を脚部12を介して地面Gの上に設置するようにしたことで、建物ユニット11の設置に際し基礎を不要とすることができる。
【0045】
脚部12の脚長さLを調整可能としたため、脚部12の脚長さLを短くして建物ユニット11を床面と地面Gとのレベル差を小さくした状態で設置することができる。この場合、地面Gからの床段差を少なくすることができ、建物ユニット11への出入りをし易くすることができる。また、地面Gに不陸が生じている場合には、その不陸に応じて各脚部12の脚長さLを調整することで建物ユニット11を水平状態で設置することができる。
【0046】
脚部12を建物ユニット11の柱21の内部にスライド可能に挿入し、その脚部12のスライドにより脚長さLを調整可能とした。この場合、建物ユニット11の柱21を利用して比較的簡単に脚長さ調整可能な脚部12を構成することができる。
【0047】
建物ユニット11の床小梁26を台車40の上に載置される載置部として用いるようにした。この場合、床面材28を支持する床小梁26を利用して建物ユニット11を台車40上に載置することができるため、建物ユニット11側の構成を大きく変えることなく、台車40上に建物ユニット11を載置することが可能となる。
【0048】
仮設店舗10を構成する建物ユニット11を移設するに際し、台車40を用いた上記設置方法を適用した。仮設店舗10では、店舗を定期的に移動させることが想定される。そのため、こうした仮設店舗10を台車40を用いて容易に移設できるようにしたことの利点はとりわけ大きいといえる。
【0049】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0050】
(1)建物ユニット11を載せる台車の構成は必ずしも上記実施形態のものに限定されない。例えば、図6に示すように、大型トラック50の荷台51の上に建物ユニット11を載せて移動させるようにしてもよい。この場合、大型トラック50が「台車」に相当する。
【0051】
(2)また、図7に示すように、軽トラック55の荷台56の上に建物ユニット61を載せて移動させるようにしてもよい。この場合、軽トラック55が「台車」に相当する。軽トラック55の場合、荷台56が小さいため、荷台56の上に建物ユニット61を載置すると建物ユニット61が荷台56から後方に大きくはみ出してしまう。そのため、図7の例では、建物ユニット61において荷台56から後方にはみ出た部分に複数の車輪63が設けられている。図7(a)に示すように、これらの車輪63はそれぞれ車輪支持部64を介して建物ユニット11に取り付けられている。車輪支持部64は建物ユニット11の下部に取り付けられ、建物ユニット11よりも下方に延びている。この車輪支持部64の下端部に車輪63は取り付けられており、それにより車輪63は建物ユニット11よりも下方に位置している。各車輪63は、荷台56の上に建物ユニット61が載置された状態で地面G上に載置されるようになっている。この場合、建物ユニット61は軽トラック55の荷台56上に載置されるとともに、車輪63を介して地面G上に載置される。
【0052】
車輪支持部64は建物ユニット61に対して上下方向にスライド可能に設けられ、その車輪支持部64のスライドにより車輪63は上下方向に変位可能とされている。この場合、車輪63は、建物ユニット61よりも下方に位置し地面G上に載置される載置位置(図7(a)参照)と、その載置位置から上方に退避され下端が建物ユニット61の下端よりも下方に突出しない退避位置(図7(b)等参照)との間で変位可能とされている。また、図示は省略するが、各車輪63は電動モータ等からなる車輪駆動部の駆動により、載置位置と退避位置との間で変位されるようになっている。
【0053】
軽トラック55を用いて建物ユニット61を移設する際の流れについて説明すると、まず図7(a)に示すように、軽トラック55の荷台56上に建物ユニット61を載置した状態で、軽トラック55を移動させることで建物ユニット61を所定の設置位置まで移動させるユニット移動工程を行う。この場合、上述したように、建物ユニット61は荷台56上に載置されているとともに、車輪63を介して地面G上に載置されているため、軽トラック55の移動に伴い車輪63が回転しながら建物ユニット61が移動する。
【0054】
次に、図7(b)に示すように、建物ユニット61の各脚部62の脚長さを長くすることにより各脚部62を地面Gの上に載置することで、それら各脚部62により建物ユニット61を支持する状態とする脚部載置工程を行う。この工程では、各脚部62の脚長さを伸ばすことにより、建物ユニット61が軽トラック55の荷台56から上方に離間するとともに、各車輪63がそれぞれ地面Gから上方に離間した状態となる。また、脚部載置工程の後、各車輪63をそれぞれ退避位置へ移行させる車輪退避工程を行う。
【0055】
次に、図7(c)に示すように、軽トラック55を建物ユニット61の下方位置から退避させるトラック退避工程を行う。このトラック退避工程は台車退避工程に相当する。次に、図7(d)に示すように、各脚部62の脚長さを調整することで建物ユニット61を所定の設置位置に設置するユニット設置工程を行う。ここでは、各脚部62の脚長さを短くすることにより建物ユニット61を所定の設置位置に設置している。以上のように、軽トラック55を用いても建物ユニット61を所定の設置位置に移設することが可能となる。
【0056】
(3)上記実施形態では、建物ユニット11の各床小梁26を台車40上に載置した状態で建物ユニット11を台車40上に載せるようにしたが、台車40上に載置する載置部は必ずしも床小梁26とする必要はない。例えば、床小梁26の下面に台車40上に載置される載置プレートを固定してもよい。この場合、載置プレートを複数箇所に配置することが考えられる。かかる構成では、各載置プレートが台車40上に載置されることで建物ユニット11が台車40上に載置される。
【0057】
また、対向する一対の床大梁23の間に、床小梁26よりも強度の高い横架材を複数本架け渡し、それら各横架材を台車40上に載置される載置部として用いるようにしてもよい。
【0058】
(4)上記実施形態では、脚部12を柱21の内部に挿入した状態で設けたが、脚部12を柱21の外側に設けるようにしてもよい。例えば、柱21の側面に脚部12を上下にスライドさせるレール部材を設け、そのレール部材に脚部12をスライド可能に取り付ける構成が考えられる。この場合にも、脚部12を上下にスライドさせることで、脚長さの調整が可能となる。また、脚部12を床大梁23等、柱21以外の部材に取り付けるようにしてもよい。
【0059】
(5)上記実施形態では、各仮設店舗を台車40を用いて移設する際、作業者のリモコン操作により仮設店舗の移設を行ったが、これを変更して、各仮設店舗を台車40を用いて自動で移設するようにしてもよい。例えば、各仮設店舗の現在の設置位置を把握する機能と、各仮設店舗の移設先の設置位置を設定する機能とを有する制御装置を備える構成が考えられる。この場合、制御装置は、店舗群で行われるイベントに関するイベント情報に基づき、仮設店舗の移設先の設置位置を設定し、適切な移設時刻になる仮設店舗を設定した移設先の設置位置へ移設する移設処理を行うようにする。この移設処理は、例えばAIによって行う。
【0060】
具体的には、制御装置は、移設処理に際し、ユニット制御部35と台車制御部45とにそれぞれ指令信号を送信することで、これら各制御部35,45に脚部12の脚長さ調整及び台車40の移動を行わせる。この場合、上述したユニット上昇工程→台車配置工程→ユニット載置工程→ユニット移動工程→脚部載置工程→台車退避工程→ユニット設置工程がこの順で行われるように、各制御部35,45を制御する。このような構成とすれば、各仮設店舗の移設を日々のイベント等に合わせて自動で行うことができる。そのため、例えば夜間等、人がいない時間帯に仮設店舗を最適な設置位置に自動で移設することが可能となる。
【0061】
(6)上記実施形態では、仮設店舗10(仮設建物に相当)を構成する建物ユニット11に本発明の設置方法を適用したが、例えば仮設住宅や仮設トイレ等、その他の仮設建物を構成する建物ユニットに本発明を適用してもよい。
【0062】
また、仮設住宅では、複数の建物ユニットにより当該住宅が構成されることがあるが、この場合には、それら各建物ユニットをそれぞれ台車40を用いて所定の設置位置に移動し設置するようにすればよい。
【0063】
(7)例えば仮設住宅において、洪水が発生した場合には脚部12の脚長さLを長くすることで床高さを高くし、それにより床上浸水等を回避することが可能となる。また、仮設住宅の場合、建物ユニットを設置後、不同沈下が生じて住宅の水平度が保たれなくなることが想定されるが、その場合には、各脚部12の脚長さを調整して住宅の水平度を再び保つことが可能となる。
【符号の説明】
【0064】
10…仮設建物としての仮設店舗、11…建物ユニット、12…脚部、21…柱、23…梁としての床大梁、26…梁としての床小梁、40…台車。
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図7