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特許7390262緩衝体および放射性物質収納容器並びに放射性物質収納容器の縦起こし方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】緩衝体および放射性物質収納容器並びに放射性物質収納容器の縦起こし方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 5/08 20060101AFI20231124BHJP
   G21F 5/14 20060101ALI20231124BHJP
   G21C 19/32 20060101ALI20231124BHJP
   G21F 9/36 20060101ALI20231124BHJP
   G21F 5/005 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
G21F5/08
G21F5/14 H
G21C19/32 100
G21F9/36 501J
G21F9/36 531D
G21F9/36 501G
G21F5/005
G21F9/36 501C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020112847
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011604
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西 耕作
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 雄一
(72)【発明者】
【氏名】石生 大一
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 慶行
(72)【発明者】
【氏名】三井 秀晃
(72)【発明者】
【氏名】野末 貴大
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04423802(US,A)
【文献】実開昭55-078998(JP,U)
【文献】特開2000-131491(JP,A)
【文献】特開2017-211188(JP,A)
【文献】特許第6125343(JP,B1)
【文献】韓国登録特許第10-1885607(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 5/08
G21F 5/005
G21F 5/14
G21C 19/32
G21F 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性物質収納容器に装着可能な緩衝体において、
装着時に前記放射性物質収納容器の側面より外方に位置して互いに対向して位置する少なくとも一対の外側部と、
前記外側部の内方に位置して前記外側部に対してずれて位置すると共に互いに対向して位置する少なくとも一対の内側部と、
前記一対の内側部に隣接して外面が前記放射性物質収納容器の側面より径方向の外方に位置する縦置き用緩衝体と、
を備える緩衝体。
【請求項2】
前記放射性物質収納容器における径方向の第1長さと、前記一対の外側部同士を結ぶ直線の第2長さと、前記一対の内側部同士を結ぶ直線の第3長さは、第2長さ>第1長さ≧第3長さの関係である、
請求項1に記載の緩衝体。
【請求項3】
前記外側部は、円弧形状をなし、前記内側部は、直線形状をなす、
請求項1に記載の緩衝体。
【請求項4】
前記一対の内側部が2組設けられると共に前記一対の外側部が2組設けられる、
請求項1または請求項2に記載の緩衝体。
【請求項5】
前記放射性物質収納容器の周方向に所定角度だけずれて装着可能な複数の分割緩衝体を有し、前記複数の分割緩衝体は、それぞれ前記外側部および前記内側部を有する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の緩衝体。
【請求項6】
前記複数の分割緩衝体は、前記放射性物質収納容器の上端部に設けられる、
請求項5に記載の緩衝体。
【請求項7】
前記複数の分割緩衝体は、前記放射性物質収納容器の側面に設けられる、
請求項5に記載の緩衝体。
【請求項8】
放射性物質収納容器の長手方向の一方に開口部を有して内部に放射性物質を収納可能な胴部と、
前記開口部に着脱可能に装着される複数の蓋を有する蓋部と、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の緩衝体と、
を備える放射性物質収納容器。
【請求項9】
前記胴部は、上部側面に周方向に所定間隔を空けて複数の縦起こし用トラニオンが設けられ、前記一対の内側部は、前記トラニオンに対して周方向の同位置に位置する、
請求項8に記載の放射性物質収納容器。
【請求項10】
前記トラニオンは、吊り具が係止可能な係止部を有し、前記一対の内側部は、前記係止部より径方向の内側に位置する、
請求項9に記載の放射性物質収納容器。
【請求項11】
請求項8から請求項10のいずれか一項に記載の放射性物質収納容器の縦起こし方法において、
吊り具を移動して横置きされた前記放射性物質収納容器の縦起こし用トラニオンに係止する工程と、
前記吊り具を上昇させて前記内側部に干渉させることなく前記放射性物質収納容器の下部を支点として上部を縦起こす工程と、
前記放射性物質収納容器の上部を縦起こした後に前記吊り具を移動して前記縦起こし用トラニオンへの係止を解除する工程と、
前記縦置き用緩衝体を装着する工程と、
を有する放射性物質収納容器の縦起こし方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射性物質を収納して搬送や貯蔵を行う放射性物質収納容器に装着される緩衝体、放射性物質収納容器、横置きされた放射性物質収納容器を縦起こす放射性物質収納容器の縦起こし方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力施設にて、原子炉などで発生した使用済燃料などの放射性廃棄物は、放射性物質収納容器に収納され、貯蔵施設などに輸送され、貯蔵される。このとき、放射性物質収納容器は、搬送車両の荷台に横置き状態に搭載されて搬送される。搬送車両が貯蔵施設に到着すると、放射性物質収納容器は、搬送車両から降ろされ、縦起こされた後に縦置き状態で貯蔵される。放射性物質収納容器は、外周部に一対の上部トラニオンと一対の下部トラニオンが設けられる。クレーンから吊り下げられた吊り具を各上部トラニオンに係止し、吊り具を引き上げることで、各下部トラニオンを支点として放射性物質収納容器側部を縦起こす。
【0003】
このような放射性物質収納容器としては、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6125343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、放射性物質収納容器は、搬送車両により輸送されるとき、荷台からの落下による損傷防止のため、上部と下部に緩衝体が装着される。また、放射性物質収納容器は、縦置き状態で貯蔵されるとき、地震時の転倒や竜巻発生時の飛来物の衝突による損傷防止のため、上部に緩衝体が装着される。ところが、搬送車両から降ろされて横置き状態の放射性物質収納容器を縦起こすとき、クレーンの吊り具が緩衝体に干渉して縦起こしが困難となる。そのため、放射性物質収納容器を縦起こすときは、上部の緩衝体を外すこととなる。しかし、放射性物質収納容器の縦起こし時に、上部の緩衝体を外すと、このときの転倒や飛来物の衝突に対して損傷を防止することが困難となるという課題がある。なお、クレーンの吊り具が緩衝体に干渉せずに上部トラニオンに係止可能とする構造とすることが考えられるが、この場合、吊り具の大型化や大重量化を招くと共にコストが増加してしまう。
【0006】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、放射性物質収納容器の安全性を向上する緩衝体および放射性物質収納容器並びに放射性物質収納容器の縦起こし方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本開示の緩衝体は、放射性物質収納容器に装着可能な緩衝体において、装着時に前記放射性物質収納容器の側面より外方に位置して互いに対向して位置する少なくとも一対の外側部と、前記外側部の内方に位置して前記外側部に対してずれて位置すると共に互いに対向して位置する少なくとも一対の内側部と、を備える。
【0008】
また、本開示の放射性物質収納容器は、軸方向の一方に開口部を有して内部に放射性物質を収納可能な胴部と、前記開口部に着脱可能に装着される複数の蓋を有する蓋部と、前記緩衝体と、を備える。
【0009】
また、本開示の緩衝体は、放射性物質収納容器に装着可能な緩衝体において、装着時に前記放射性物質収納容器の側面より外方に位置する外側部と、前記外側部の内方に位置して前記外側部に対してずれて位置すると共に互いに対向して位置する少なくとも一対の内側部と、を備える。
【0010】
また、本開示の放射性物質収納容器の縦起こし方法は、前記放射性物質収納容器の縦起こし方法において、吊り具を移動して横置きされた前記放射性物質収納容器の縦起こし用トラニオンに係止する工程と、前記吊り具を上昇させて前記内側部に干渉させることなく前記放射性物質収納容器の下部を支点として上部を縦起こす工程と、前記放射性物質収納容器の上部を縦起こした後に前記吊り具を移動して前記縦起こし用トラニオンへの係止を解除する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本開示の緩衝体および放射性物質収納容器並びに放射性物質収納容器の縦起こし方法によれば、放射性物質収納容器の安全性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1実施形態の放射性物質収納容器を表す縦断面図である。
図2図2は、放射性物質収納容器の上部を表す正面図である。
図3図3は、放射性物質収納容器を表す平面図である。
図4図4は、放射性物質収納容器の吊り上げ状態を表す正面図である。
図5図5は、放射性物質収納容器の吊り上げ状態を表す平面図(図4のV-V断面図)である。
図6図6は、放射性物質収納容器の吊り上げ状態を表す側面図である。
図7図7は、放射性物質収納容器縦起こし状態を表す側面図である。
図8図8は、放射性物質収納容器のトラニオンおよび吊り具を表す正面図である。
図9図9は、放射性物質収納容器のトラニオンおよび吊り具を表す側面図である。
図10図10は、放射性物質収納容器のトラニオンおよび吊り具の変形例を表す側面図である。
図11図11は、第2実施形態の放射性物質収納容器貯蔵状態を表す正面図である。
図12図12は、放射性物質収納容器貯蔵状態を表す平面図である。
図13図13は、第3実施形態の放射性物質収納容器を表す平面図である。
図14図14は、第4実施形態の放射性物質収納容器を表す正面図である。
図15図15は、第4実施形態の放射性物質収納容器を表す平面図である。
【0013】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0014】
[第1実施形態]
<放射性物質収納容器>
図1は、第1実施形態の放射性物質収納容器を表す縦断面図である。
【0015】
第1実施形態において、図1に示すように、放射性物質収納容器(キャスク)10は、胴部11と、蓋部12と、バスケット13とを有する。
【0016】
胴部11は、胴本体21を有し、胴本体21における長手方向の一方、つまり、上部に開口部22が形成され、長手方向の他方、つまり、下部に底部(閉塞部)23が形成された底付きの円筒形状をなす。但し、胴部11は、円筒形状に限らず、多角筒形状などであってもよい。胴本体21は、内部にキャビティ24が設けられる。キャビティ24は、内面がバスケット13の外周形状に合わせた形状である。バスケット13は、例えば、使用済燃料集合体である放射性物質(図示略)を個々に収納するセルを複数有する。胴本体21は、下部に底部23が溶接結合または一体成形される。胴本体21及び底部23は、γ線遮蔽機能を有する炭素鋼製またはステンレス鋼製の鍛造品である。
【0017】
胴部11は、胴本体21の外周側に径方向に沿って所定の隙間を空けて外筒25が設けられる。胴部11は、胴本体21と外筒25との空間部に水素を多く含有する高分子材料で中性子遮蔽機能を有するボロンまたはボロン化合物を含有したレジン(中性子遮蔽体)26が充填される。
【0018】
胴部11は、底部23の下側に所定の隙間を空けて底板27が連結される。底部23と底板27との空間部にレジン(中性子遮蔽体)28が充填される。また、胴部11は、胴本体21の外周面に複数の上部トラニオン29と下部トラニオン30が固定される。複数のトラニオン29,30は、放射性物質収納容器10をクレーンなどの揚重設備により吊り上げる係止部として機能する。
【0019】
蓋部12は、一次蓋31と、二次蓋32と、三次蓋33とを有する。一次蓋31は、胴部11における胴本体21の開口部22に対して着脱可能に取付けられる。二次蓋32は、一次蓋31の外側で開口部22に対して着脱可能に取付けられる。三次蓋33は、二次蓋32の外側で開口部22に対して着脱可能に取付けられる。すなわち、一次蓋31と二次蓋32と三次蓋33は、胴本体21の開口部22に長手方向に並んで装着される。
【0020】
一次蓋31は、キャビティ24側の負圧を維持してキャビティ24内に充填されたガスの漏洩を防止すると共に、キャビティ24内に収納された放射性物質から出る放射線(γ線)を遮蔽する。一次蓋31は、図示しないが、二次蓋32側にレジン(中性子遮蔽体)が設けられる。二次蓋32は、一次蓋31との間に大気に対して加圧された圧力監視境界としての空間部34を有する。二次蓋32は、空間部34側からのガスの漏洩を阻止する。三次蓋33は、二次蓋32を外部の衝撃から防御する。
【0021】
胴部11は、胴本体21の開口部22の内周部に長手方向に並んで3個の段部41,42,43が設けられる。段部41,42,43のうち、第1段部41の内径が最小であり、第3段部43の内径が最大であり、第2段部42の内径が第1段部41の内径より大きく、第3段部43の内径より小さい。第1段部41は、第1座面部41aを有し、第1座面部41aに複数のねじ孔41bが胴本体21の周方向に等間隔で形成される。第2段部42は、第1段部41よりも開口部22の外側に位置し、第2座面部42aを有し、第2座面部42aは、複数のねじ孔42bが胴本体21の周方向に等間隔で形成される。第3段部43は、第2段部42よりも開口部22の外側に位置し、第3座面部43aを有し、第3座面部43aは、複数のねじ孔43bが胴本体21の周方向に等間隔で形成される。
【0022】
一次蓋31は、第1段部41に嵌合し、第1座面部41aに密着する。そして、ボルト51が一次蓋31の貫通孔31aを貫通してねじ孔41bに螺合することで、一次蓋31は、胴本体21の開口部22における第1段部41に固定される。二次蓋32は、第2段部42に嵌合し、第2座面部42aに密着する。そして、ボルト52が二次蓋32の貫通孔32aを貫通してねじ孔42bに螺合することで、二次蓋32は、胴本体21の開口部22における第2段部42に固定される。三次蓋33は、第3段部43に嵌合し、第3座面部43aに密着する。そして、ボルト53が三次蓋33の貫通孔33aを貫通してねじ孔43bに螺合することで、三次蓋33は、胴本体21の開口部22における第3段部43に固定される。
【0023】
放射性物質収納容器10は、搬送時や外部設置時に、蓋部12側と胴部11の底部23側に緩衝体61,62が取付けられる。放射性物質収納容器10は、蓋部12側に緩衝体61が着脱自在に装着され、胴部11の底部23に緩衝体62が着脱自在に装着される。緩衝体61は、外周部に複数の貫通孔が周方向に所定間隔で形成される。三次蓋33は、上面の外周部側に複数のねじ孔が周方向に等間隔で形成される。緩衝体61は、放射性物質収納容器10の胴部11の外周部に嵌合し、ボルトが緩衝体61および三次蓋33の貫通孔を貫通して胴部11のねじ孔に螺合することで緩衝体61は、胴部11に固定される。なお、図示しないが、緩衝体62も同様に胴部11の底部23に固定される。
【0024】
ところで、放射性物質収納容器10は、例えば、原子炉などで発生した使用済燃料などの放射性廃棄物が収納される。放射性廃棄物が収納された放射性物質収納容器10は、搬送車両の荷台に横置き状態に搭載されて貯蔵施設に搬送される。放射性物質収納容器10は、貯蔵施設にて、搬送車両から降ろされ、縦起こされた後に縦置き状態で貯蔵される。このとき、放射性物質収納容器10は、クレーンの吊り具が上部トラニオン29に係止し、吊り具を引き上げることで、下部のトラニオン30を支点として縦起こされる。
【0025】
<緩衝体>
図2は、放射性物質収納容器の上部を表す正面図、図3は、放射性物質収納容器を表す平面図である。以下の説明にて、2個の上部トラニオン29を結ぶ水平方向をX方向とし、X方向に直交する水平方向をY方向として説明する。
【0026】
図2および図3に示すように、緩衝体61は、放射性物質収納容器10の上部に装着可能である。ここで、放射性物質収納容器10の上部とは、放射性物質収納容器10における軸方向の中間位置より上方側の部分である。第1実施形態にて、緩衝体61は、放射性物質収納容器10を構成する胴部11の上端側面(上端外周面)と、蓋部12における三次蓋33の外周面および上面とに密着して装着される。
【0027】
緩衝体61は、円板形状をなす。緩衝体61は、外側部71と、内側部72と、上面部73と、下面部74と、凹部75とを備える。
【0028】
外側部71は、外面71aが放射性物質収納容器10(胴部11)の側面11aより径方向の外方に位置する。内側部72は、外面72aが放射性物質収納容器10(胴部11)の側面11aより径方向の外方に位置するが、側面11aより径方向の内方に位置していてもよい。但し、内側部72は、外面72aが外側部71の外面71aより径方向の内方に位置する。外側部71は、2個設けられ、互いに周方向に180度ずれて対向して位置するように設けられる。すなわち、2個の外側部71は、Y方向の両側に設けられる。内側部72は、2個設けられ、互いに周方向に180度ずれて対向して位置するように設けられる。すなわち、2個の内側部72は、X方向の両側に設けられる。外側部71と内側部72は、周方向に90度ずれて設けられる。
【0029】
外側部71は、水平方向に沿って湾曲した円弧形状をなし、内側部72は、鉛直方向に沿った平面形状をなす。外側部71は、胴部11および蓋部12と同心の円弧形状をなす。内側部72は、外側部71に対して90度ずれた位置に設けられる。内側部72は、外側部71の外面71aが延長された円弧部が直線形状をなすように切断された形状をなす。2個の内側部72は、平行をなす。
【0030】
放射性物質収納容器10(胴部11)における径方向の第1長さ(直径)L1、一対の外側部71同士を結ぶ直線の第2長さL2、一対の内側部72同士を結ぶ直線の第3長さL3とすると、長さL1,L2,L3関係は、以下のように設定される。
第2長さL2>第1長さL1≧第3長さL3
【0031】
胴部11は、側面11aの上部に周方向に所定間隔を空けて複数(本実施形態では、2個)の上部トラニオン29が設けられる。2個の上部トラニオン29は、胴部11の周方向に180度ずれた位置に設けられる。上部トラニオン29は、縦起こし用トラニオンとして用いられる。緩衝体61が放射性物質収納容器10の上部に装着されたとき、2個の内側部72は、2個の上部トラニオン29に対して周方向の同位置に設けられる。すなわち、放射性物質収納容器10の平面視(図3)にて、上部トラニオン29は、緩衝体61から露出し、上部トラニオン29におけるX方向上方の位置に緩衝体61が存在しない。
【0032】
上部トラニオン29は、後述するが、吊り具114,116が係止可能な係止部83、係止孔85を有する。複数の内側部72は、外面72aが係止部83、係止孔85より径方向の内側に位置する。
【0033】
上面部73は、緩衝体61の上面に円形状をなす平坦面である。下面部74は、緩衝体61の下面に環状をなして設けられる。下面部74は、周方向における外側部71の位置で、径方向の幅が広くなり、内側部72の位置で、径方向の幅が狭くなる。凹部75は、緩衝体61の下面に上方に向けて凹んで設けられる。凹部75は、円柱形状をなす空間部である。凹部75は、放射性物質収納容器10(胴部11および蓋部12)の上端部に設けられた小径部10aに嵌合可能である。
【0034】
凹部75が小径部10aに嵌合することで、緩衝体61が放射性物質収納容器10の上部に装着される。すなわち、緩衝体61は、凹部75が小径部10aに嵌合し、複数のボルト(図示略)が緩衝体61および三次蓋33の貫通孔を貫通して胴部11のねじ孔に螺合することで固定される。
【0035】
<放射性物質収納容器の縦起こし方法>
ここで、第1実施形態の放射性物質収納容器10の縦起こしについて説明する。図4は、放射性物質収納容器の吊り上げ状態を表す正面図、図5は、放射性物質収納容器の吊り上げ状態を表す平面図(図4のV-V断面図)、図6は、放射性物質収納容器の吊り上げ状態を表す側面図、図7は、放射性物質収納容器縦起こし状態を表す側面図、図8は、放射性物質収納容器のトラニオンおよび吊り具を表す正面図、図9は、放射性物質収納容器のトラニオンおよび吊り具を表す側面図、図10は、放射性物質収納容器のトラニオンおよび吊り具の変形例を表す側面図である。
【0036】
放射性物質収納容器10は、内部に放射性廃棄物が収納されると、緩衝体61,62が装着される。放射性物質収納容器10は、搬送車両の荷台に横置き状態に搭載され、貯蔵施設に搬送される。搬送車両が貯蔵施設に到着すると、放射性物質収納容器10は、搬送車両から貯蔵施設の所定の場所に横置き状態で降ろされる。そして、放射性物質収納容器10は、吊り装置により吊り上げられ、横置き状態から縦置き状態に起こされ、縦置き状態で貯蔵される。
【0037】
図4から図6に示すように、支持装置100は、支持板101と、一対の上部支持アーム102と、一対の下部支持アーム103とを備える。支持板101は、床面Gに設置される。一対の上部支持アーム102および一対の下部支持アーム103は、支持板101上に所定間隔を空けて固定される。一対の上部支持アーム102は、支持板101の上面に水平方向に所定間隔を空けて鉛直方向に沿って固定される。一対の上部支持アーム102の間隔は、放射性物質収納容器10における胴部11の直径より若干大きい長さである。上部支持アーム102は、下端部が支持板101に固定され、上端部に半円形状をなす上支持部104が形成される。上支持部104は、放射性物質収納容器10の上部トラニオン29を受け止めて支持可能である。
【0038】
一対の下部支持アーム103は、支持板101の上面に水平方向に所定間隔を空けて鉛直方向に沿って固定される。一対の下部支持アーム103の間隔は、放射性物質収納容器10における胴部11の直径より若干大きい長さである。一対の下部支持アーム103は、下端部が支持板101に固定され、上端部に半円形状をなす下支持部105が形成される。下支持部105は、放射性物質収納容器10の下部トラニオン30を受け止めて支持可能である。
【0039】
そのため、支持装置100は、一対の上部支持アーム102が放射性物質収納容器10の上部トラニオン29を支持し、一対の下部支持アーム103が下部トラニオン30を支持することで、放射性物質収納容器10を横置き状態で支持することができる。
【0040】
吊り装置110は、クレーン(図示略)と、吊りロープ111と、吊り架台112と、一対の吊りアーム113と、一対の吊り具114とを備える。クレーンは、吊りロープ111が吊り下げられ、吊りロープ111に連結部115を介して吊り架台112が連結される。吊り架台112は、水平状態を維持して吊り下げられる。クレーンを操作することで、吊りロープ111を介して吊り架台112を水平方向に沿って移動することができると共に、鉛直方向に沿って昇降することができる。吊り架台112は、水平方向に沿って長い部材である。吊り架台112は、長手方向のおける各端部に所定間隔を空けて一対の吊りアーム113が設けられる。
【0041】
一対の吊りアーム113は、吊り架台112から垂下して設けられる。一対の吊りアーム113の間隔は、放射性物質収納容器10における胴部11の直径より若干大きい長さである。吊りアーム113は、上端部が吊り架台112の下面に支持され、下端部に吊り具114が設けられる。一対の吊りアーム113は、吊り架台112に互いに接近離反可能に支持される。吊り具114は、一対の吊りアーム113の下端部に装着される。吊り具114は、一対の吊りアーム113が接近離反することで、放射性物質収納容器10の上部トラニオン29に係脱可能である。
【0042】
そのため、吊り装置110は、一対の吊り具114が放射性物質収納容器10の一対の上部トラニオン29に係止した状態で、吊り架台112を上昇させると、放射性物質収納容器10を吊り上げることができる。
【0043】
ここで、上部トラニオン29と吊り具114との関係について説明する。図8および図9に示すように、上部トラニオン29は、円柱形状をなす。上部トラニオン29は、基端部が胴部11の側面11aに固定され、先端が胴部11の径方向の外方に突出して設けられる。上部トラニオン29は、取付部81と、台形部82と、係止部83と、フランジ部84とを有する。取付部81は、円板形状をなし、例えば、胴部11にねじ固定される。台形部82は、取付部81の先端に一体に設けられる。台形部82は、先端に向けて直径が小さくなる先細の円柱形状をなす。係止部83は、台形部82の先端に一体に設けられる。係止部83は、直径が台形部82の先端部の直径より小さい円柱形状をなす。フランジ部84は、係止部83の先端に一体に設けられる。フランジ部84は、直径が係止部83の直径より大きい円板形状をなす。
【0044】
一方、吊り具114は、本体121と、貫通孔122と、係止孔123と、連結孔124とを有する。本体121は、鉛直方向に沿って長い板形状をなす。本体121は、上端部が吊りアーム113の下端部に固定され、下端部が下方に延出する。貫通孔122は、本体121の上部に設けられ、係止孔123は、本体121の下部に設けられ、連結孔124は、貫通孔122と係止孔123との間に設けられる。貫通孔122は、円形状をなし、内径が上部トラニオン29のフランジ部84の直径より大きい。係止孔123は、円形状をなし、内径が上部トラニオン29の係止部83と同じまたは若干大きく、フランジ部84の直径より小さい。連結孔124は、貫通孔122と係止孔123を連通させるものであり、係止孔123の直径と同じ幅で貫通孔122と係止孔123に連通する。
【0045】
まず、吊りアーム113を下降し、吊り具114の貫通孔122と上部トラニオン29とが水平方向に対向する位置で停止する。次に、吊りアーム113を胴部11に接近する方向に移動し、貫通孔122が上部トラニオン29の係止部83まで進入した位置で停止する。そして、吊りアーム113を上昇すると、連結孔124を介して係止孔123が上部トラニオン29の係止部83に係止する。ここで、吊りアーム113をさらに上昇すると、吊り具114および上部トラニオン29を介して放射性物質収納容器10を吊り上げることができる。
【0046】
なお、吊り具114による上部トラニオン29への係止構成は、上述したものに限定されるものではない。図10に示すように、上部トラニオン29は、取付部81と、台形部82と、係止部83と、フランジ部84と、係止孔85を有する。係止孔85は、フランジ部84の先端面から台形部82の中間位置まで形成される。係止孔85は、上部トラニオン29の軸方向に沿った円柱形状をなす凹部であり、フランジ部84の先端面に開口する。
【0047】
一方、吊り具116は、本体125と、軸部126と、係止部127とを有する。本体125は、水平方向に沿って長い部材である。本体125は、基端部が吊りアーム113の下端部に固定され、先端部が上部トラニオン29側に延出する。軸部126は、本体125の先端部に設けられ、係止部127は、軸部126の先端部に設けられる。軸部126は、外径が上部トラニオン29の係止孔85の内径より小さい。係止部127は、外径が軸部126の外径より大きく、係止孔85の内径より小さい。
【0048】
まず、吊りアーム113を下降し、吊り具116の係止部127と上部トラニオン29の係止孔85とが水平方向に対向する位置で停止する。次に、吊りアーム113を胴部11に接近する方向に移動し、係止部127が上部トラニオン29の係止孔85に進入した位置で停止する。そして、吊りアーム113を上昇すると、係止部127が上部トラニオン29の係止孔85に係止する。ここで、吊りアーム113をさらに上昇すると、吊り具116および上部トラニオン29を介して放射性物質収納容器10を吊り上げることができる。
【0049】
上述したように、緩衝体61の内側部72は、外面72aが係止部83、係止孔85より径方向の内側に位置する。すなわち、図9の吊り具114の場合、内側部72の外面72aは、上部トラニオン29の台形部82と係止部83との境界と胴部11の側面11aとの領域Aに位置することが好ましい。また、図10の吊り具116の場合、内側部72の外面72aは、上部トラニオン29のフランジ部84の先端面と胴部11の側面11aとの領域Aに位置することが好ましい。すなわち、内側部72の外面72aは、吊り具114,116が上部トラニオン29に係止する動作に対して邪魔にならず、且つ、放射性物質収納容器10の縦起こし動作に対して邪魔にならない位置に位置させることが好ましい。
【0050】
第1実施形態の放射性物質収納容器の縦起こし方法は、図7に示すように、吊り具114,116を移動して横置きされた放射性物質収納容器10の縦起こし用の上部トラニオン29に係止する工程と、吊り具114,116を上昇させて緩衝体61の内側部72に干渉させることなく放射性物質収納容器10の下部を支点として上部を縦起こす工程と、放射性物質収納容器10の上部を縦起こした後に吊り具114,116を移動して上部トラニオン29への係止を解除する工程とを有する。
【0051】
具体的に説明すると、まず、放射性物質収納容器10は、図7に二点鎖線で表すように、支持装置100に横置きに支持されている。このとき、放射性物質収納容器10は、上部トラニオン29が支持装置100の上部支持アーム102に支持され、下部トラニオン30が支持装置100の下部支持アーム103に支持される。
【0052】
この状態で、吊り装置110にて、クレーンの操作により吊り架台112を移動し、吊り具114,116を横置きされた放射性物質収納容器10の上部トラニオン29に係止する。このとき、放射性物質収納容器10の上部トラニオン29は、すでに支持装置100の上部支持アーム102に支持されているが、吊り具114,116は、上部支持アーム102に支持された上部トラニオン29の外側に係止する。
【0053】
吊り具114,116が上部トラニオン29に係止すると、クレーンの操作により吊り架台112を上昇させ、横置きされた放射性物質収納容器10の上部を吊り上げる。すると、放射性物質収納容器10は、下部支持アーム103に支持された下部トラニオン30を支点として上部が縦起こされる。このとき、放射性物質収納容器10は、図4および図5に示すように、緩衝体61に内側部72が設けられていることから、吊りアーム113および吊り具114,116が緩衝体61に干渉することがない。また、放射性物質収納容器10は、吊り装置110に支持されていることから、縦起こし方向に直交する方向であるX方向(図4の左右方向)に転倒することが抑制される。一方で、放射性物質収納容器10が縦起こし方向であるY方向(図6の左右方向)に転倒しても、緩衝体61に外側部71が設けられていることから、胴部11や蓋部12の損傷が抑制される。
【0054】
吊り装置110により放射性物質収納容器10が縦起こされると、クレーンの操作により吊り架台112を更に上昇させ、吊り具114,116および上部トラニオン29を介して放射性物質収納容器10を吊り上げる。そして、放射性物質収納容器10を所定の位置に敷設された設置板130(図3参照)上に設置する。ここで、クレーンの操作により吊り架台112を移動し、吊り具114,116を上部トラニオン29から外す。
【0055】
[第2実施形態]
図11は、第2実施形態の放射性物質収納容器貯蔵状態を表す正面図、図12は、放射性物質収納容器貯蔵状態を表す平面図である。
【0056】
第2実施形態において、図11および図12に示すように、放射性物質収納容器10Aは、胴部11と、蓋部12と、バスケット13(図1参照)と緩衝体63とを有する。
【0057】
緩衝体63は、放射性物質収納容器10の上部に装着可能である。第2実施形態にて、緩衝体63は、放射性物質収納容器10を構成する胴部11の上端側面(上端外周面)と、蓋部12における三次蓋33の外周面とに密着して装着される。
【0058】
緩衝体63は、複数(本実施形態では、2個)の分割緩衝体63A,63Bを有する。2個の分割緩衝体63A,63Bは、放射性物質収納容器10Aの周方向に所定角度(本実施形態では、180度)だけずれて装着可能である。分割緩衝体63A,63Bは、放射性物質収納容器10Aの上部トラニオン29が装着されていない周方向における所定の位置に装着される。すなわち、2個の分割緩衝体63A,63Bは、Y方向の両側に設けられる。
【0059】
分割緩衝体63A,63Bは、ほぼ同様の構成をなす。分割緩衝体63A,63Bは、それぞれ外側部201と、内側部202と、上面部203と、下面部204と、凹部205とを備える。
【0060】
外側部201は、Y方向にて、外面201aが放射性物質収納容器10A(胴部11)の側面11aより径方向の外方に位置する。内側部202は、X方向にて、外面202aが放射性物質収納容器10A(胴部11)の側面11aより径方向の内方に位置する。分割緩衝体63A,63Bは、それぞれ外側部201が1個設けられ、内側部202が2個設けられる。分割緩衝体63A,63Bが放射性物質収納容器10Aに装着されたとき、各外側部201は、X方向に沿って位置し、各内側部202は、Y方向に沿って位置する。分割緩衝体63A,63Bの各外側部201は、互いに周方向に180度ずれて位置する。また、分割緩衝体63A,63Bの各内側部202は、互いに周方向に180度ずれて位置する。外側部201と内側部202は、周方向に180度ずれて設けられる。
【0061】
外側部201は、鉛直方向および水平方向に沿った平面形状をなすが、円弧形状であってもよい。また、内側部202は、鉛直方向および水平方向に沿った平面形状をなす。緩衝体63が放射性物質収納容器10の上部に装着されたとき、X方向にて、4個の内側部202は、2個の上部トラニオン29に対して径方向の内方に設けられる。すなわち、放射性物質収納容器10Aの平面視(図12)にて、上部トラニオン29は、緩衝体63から露出し、上部トラニオン29に対してY方向に対向する位置に緩衝体63が存在しない。
【0062】
放射性物質収納容器10A(胴部11A)における径方向の第1長さ(直径)L1、一対の外側部201同士を結ぶ直線の第2長さL2、一対の内側部202同士を結ぶ直線の第3長さL3とすると、長さL1,L2,L3関係は、以下のように設定される。
第2長さL2>第1長さL1≧第3長さL3
【0063】
上面部203は、分割緩衝体63A,63Bの上面の平坦面である。下面部204は、分割緩衝体63A,63Bの下面の平坦面である。凹部205は、分割緩衝体63A,63Bの内面に外方に向けて凹んで設けられる。凹部205は、水平方向に湾曲した円弧形状をなす。凹部205は、放射性物質収納容器10Aの蓋部12の外周面に密着可能である。
【0064】
下面部204が胴部11の上面に密着すると共に、凹部205が蓋部12の外周面に密着することで、分割緩衝体63A,63Bが放射性物質収納容器10の上部に装着される。すなわち、分割緩衝体63A,63Bは、下面部204が胴部11の上面に密着して凹部205が蓋部12の外周面に密着し、複数のボルト(図示略)が分割緩衝体63A,63Bおよび三次蓋33の貫通孔を貫通して胴部11のねじ孔に螺合することで固定される。
【0065】
また、緩衝体63は、縦置き用緩衝体64を有する。縦置き用緩衝体64は、複数の内側部202に隣接して外面64aが放射性物質収納容器10の側面11aより径方向の外方に位置する。
【0066】
そのため、横置きに支持されている放射性物質収納容器10Aを縦起こすとき、放射性物質収納容器10Aは、緩衝体63(分割緩衝体63A,63B)に内側部202が設けられていることから、吊り具が緩衝体63に干渉することがない。また、放射性物質収納容器10Aは、放射性物質収納容器10Aが縦起こし方向であるY方向に転倒しても、緩衝体63(分割緩衝体63A,63B)に外側部201が設けられていることから、胴部11Aや蓋部12の損傷が抑制される。
【0067】
そして、放射性物質収納容器10Aが所定の貯蔵位置に縦置き状態で貯蔵されるとき、縦置き用緩衝体64が装着される。縦置き用緩衝体64は、X方向にて、外面64aが上部トラニオン29より径方向の外方に位置することから、放射性物質収納容器10AがX方向に転倒しても、胴部11や蓋部12の損傷が抑制される。
【0068】
[第3実施形態]
図13は、第3実施形態の放射性物質収納容器を表す平面図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0069】
第3実施形態において、図13に示すように、放射性物質収納容器10Bは、胴部11Bと、蓋部12と、バスケット13(図1参照)と緩衝体65とを有する。
【0070】
胴部11Bは、周方向に180度ずれて2個の上部トラニオン29が設けられる。また、胴部11Bは、周方向に180度ずれて2個の補助上部トラニオン29Aが設けられる。上部トラニオン29と補助上部トラニオン29Aは、軸方向における位置は同様である。上部トラニオン29と補助上部トラニオン29Aは、周方向に90度ずれて設けられる。
【0071】
緩衝体65は、放射性物質収納容器10Bの上部に装着可能である。緩衝体65は、正方形の板形状をなす。緩衝体65は、外側部211と、内側部212と、上面部213と、下面部214と、凹部215とを備える。
【0072】
外側部211は、外面211aが放射性物質収納容器10B(胴部11B)の側面11Baより径方向の外方に位置する。内側部212は、外面212aが放射性物質収納容器10B(胴部11B)の側面11Baより径方向の外方に位置する。但し、内側部212は、外面212aが外側部211の外面211aより径方向の内方に位置する。外側部211は、4個設けられ、互いに周方向に90度ずれて設けられる。すなわち、4個の外側部211は、X方向およびY方向に対して周方向に90度ずれた角度での径方向の両側に設けられる。内側部212は、4個設けられ、互いに周方向に90度ずれて設けられる。すなわち、2個の内側部212は、X方向およびY方向の両側に設けられる。外側部211と内側部212は、周方向に90度ずれて設けられる。
【0073】
外側部211は、鉛直方向および水平方向に沿った2個の平面からなるL字形状をなし、内側部212は、鉛直方向および水平方向に沿った平面形状をなす。緩衝体65は、平面視が正方形をなし、4個の外側部211は、角部であり、内側部212は、4個の辺である。
【0074】
緩衝体65が放射性物質収納容器10Bの上部に装着されたとき、2個の内側部212は、2個の上部トラニオン29に対して周方向の同位置に設けられ、残る2個の内側部212は、2個の補助上部トラニオン29Aに対して周方向の同位置に設けられる。すなわち、放射性物質収納容器10Bの平面視にて、上部トラニオン29および補助上部トラニオン29Aは、緩衝体65から露出し、上部トラニオン29に対してY方向に対向する位置に緩衝体65が存在せず、補助上部トラニオン29Aに対してX方向に対向する位置に緩衝体65が存在しない。
【0075】
放射性物質収納容器10B(胴部11B)における径方向の第1長さ(直径)L1、一対の外側部211同士を結ぶ直線の第2長さL2、一対の内側部212同士を結ぶ直線の第3長さL3とすると、長さL1,L2,L3関係は、以下のように設定される。
第2長さL2>第1長さL1≧第3長さL3
【0076】
上面部213は、緩衝体65の上面に正方形をなす平坦面である。下面部214は、緩衝体65の下面に環状をなして設けられる。凹部215は、緩衝体65の下面に上方に向けて凹んで設けられる。凹部215は、円柱形状をなす空間部である。凹部215は、放射性物質収納容器10B(胴部11Bおよび蓋部12)の上端部に設けられた小径部10Baに嵌合可能である。
【0077】
凹部215が小径部10Baに嵌合することで、緩衝体65が放射性物質収納容器10Bの上部に装着される。すなわち、緩衝体65は、凹部215が小径部10Baに嵌合し、複数のボルト(図示略)が緩衝体65および三次蓋33の貫通孔を貫通して胴部11のねじ孔に螺合することで固定される。
【0078】
そのため、横置きに支持されている放射性物質収納容器10Bを縦起こすとき、放射性物質収納容器10Bは、緩衝体65に内側部212が設けられていることから、吊り具が緩衝体65に干渉することがない。このとき、補助上部トラニオン29Aに吊り具(図示略)を係止することが可能となる。
【0079】
[第4実施形態]
図14は、第4実施形態の放射性物質収納容器を表す正面図、図15は、第4実施形態の放射性物質収納容器を表す平面図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0080】
第4実施形態において、図14に示すように、放射性物質収納容器10Cは、胴部11Bと、蓋部12と、バスケット13(図1参照)と緩衝体66とを有する。
【0081】
胴部11Bは、2個の上部トラニオン29と2個の補助上部トラニオン29Aが設けられる。また、胴部11Bは、2個の下部トラニオン30と2個の補助下部トラニオン30Aが設けられる。
【0082】
緩衝体66は、放射性物質収納容器10Bの上部に装着可能である。第4実施形態にて、緩衝体66は、放射性物質収納容器10を構成する胴部11の側面11Baに密着して装着される。
【0083】
緩衝体66は、複数(本実施形態では、2個)の分割緩衝体66A,66Bを有する。2個の分割緩衝体66A,66Bは、放射性物質収納容器10Cの周方向に所定角度(本実施形態では、180度)だけずれて装着可能である。分割緩衝体66A,66Bは、放射性物質収納容器10Cの上部トラニオン29が装着されていない周方向における所定の位置に装着される。すなわち、2個の分割緩衝体66A,66Bは、Y方向の両側である2個の補助下部トラニオン30Aに設けられる。
【0084】
分割緩衝体66A,66Bは、ほぼ同様の構成をなす。分割緩衝体66A,66Bは、円柱形状をなす。分割緩衝体66A,66Bは、それぞれ外側部221と、内側部222と、凹部225とを備える。
【0085】
外側部221は、Y方向にて、放射性物質収納容器10C(胴部11B)の側面11Baより径方向の外方に位置する。内側部222は、X方向にて、外周面が放射性物質収納容器10C(胴部11B)の側面11Baより径方向の内方に位置する。放射性物質収納容器10Cの平面視(図15)にて、上部トラニオン29は、緩衝体66から露出し、上部トラニオン29に対してY方向に対向する位置に緩衝体66が存在しない。
【0086】
放射性物質収納容器10C(胴部11B)における径方向の第1長さ(直径)L1、一対の外側部221同士を結ぶ直線の第2長さL2、一対の内側部222同士を結ぶ直線の第3長さL3とすると、長さL1,L2,L3関係は、以下のように設定される。
第2長さL2>第1長さL1≧第3長さL3
【0087】
凹部225は、分割緩衝体66A,66Bの内面に外方に向けて凹んで設けられる。凹部225は、円柱形状をなす。凹部225は、放射性物質収納容器10Cの上部トラニオン29Aに装着可能である。
【0088】
そのため、横置きに支持されている放射性物質収納容器10Cを縦起こすとき、放射性物質収納容器10Cは、緩衝体65(分割緩衝体66A,66B)に内側部222が設けられていることから、吊り具114が緩衝体66に干渉することがない。また、放射性物質収納容器10Cは、放射性物質収納容器10Cが縦起こし方向であるY方向に転倒しても、緩衝体66(分割緩衝体66A,66B)に外側部221が設けられていることから、胴部11Cや蓋部12の損傷が抑制される。
【0089】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る緩衝体は、放射性物質収納容器10,10A,10B,10Cに装着可能な緩衝体61,63,65,66において、装着時に放射性物質収納容器10,10A,10B,10Cの側面より外方に位置して互いに対向して位置する少なくとも一対の外側部71,201,211,221と、外側部71,201,211,221の内方に位置して外側部71,201,211,221に対してずれて位置すると共に互いに対向して位置する少なくとも一対の内側部72,202,212,222とを備える。
【0090】
第1の態様に係る緩衝体は、外側部71,201,211,221と内側部72,202,212,222と有する緩衝体61,63,65,66が放射性物質収納容器10,10A,10B,10Cの上部に装着されるとき、内側部72,202,212,222が縦起こし用の上部トラニオン29の位置に位置決めされる。横置き状態の放射性物質収納容器10,10A,10B,10Cを縦起こすとき、例えば、クレーンの吊り具114,116を上部トラニオン29に係止する。このとき、上部トラニオン29の位置に内側部72,202,212,222が設けられていることから、吊り具114,116は、内側部72,202,212,222により緩衝体61,63,65,66に干渉することが抑制される。その結果、上部トラニオン29を用いて放射性物質収納容器10,10A,10B,10Cを適正に縦起こしすることができ、放射性物質収納容器10,10A,10B,10Cの安全性を向上することができる。
【0091】
第2の態様に係る緩衝体は、放射性物質収納容器10,10A,10B,10Cにおける径方向の第1長さL1と、一対の外側部71,201,211,221同士を結ぶ直線の第2長さL2と、一対の内側部72,202,212,222同士を結ぶ直線の第3長さL3は、第2長さL2>第1長さL1≧第3長さL3の関係である。これにより、内側部72,202,212,222の一を適正位置に設けることができる。
【0092】
第3の態様に係る緩衝体は、外側部71は、円弧形状をなし、内側部72は、直線形状をなす。これにより、緩衝体61の形状を大きく変更することなく、放射性物質収納容器10,10A,10B,10Cの安全性を向上することができる。
【0093】
第4の態様に係る緩衝体は、一対の内側部212が2組設けられると共に一対の外側部211が2組設けられる。これにより、上部トラニオン29および補助上部トラニオン29Aを有する放射性物質収納容器10Cに対しても、吊り具114,116と上部トラニオン29および補助上部トラニオン29Aとの干渉を抑制することができる。
【0094】
第5の態様に係る緩衝体は、放射性物質収納容器10A,10Cの周方向に所定角度だけずれて装着可能な複数の分割緩衝体63A,63B,66A,66Bを有し、複数の分割緩衝体63A,63B,66A,66Bは、それぞれ外側部201,221および内側部202,222を有する。これにより、放射性物質収納容器10A,10Cを複数の分割緩衝体63A,63B,66A,66Bから構成することで、小型軽量化を図ることができる。
【0095】
第6の態様に係る緩衝体は、複数の分割緩衝体63A,63Bは、放射性物質収納容器10Aの上端部に設けられる。これにより、放射性物質収納容器10Aを縦起こししているとき、緩衝体63により転倒時における胴部11の上部や蓋部12の破損を抑制することができる。
【0096】
第7の態様に係る緩衝体は、複数の分割緩衝体66A,66Bは、放射性物質収納容器10Cの側面に設けられる。これにより、必要な箇所だけに緩衝体66を設けることで、小型軽量化を図ることができる。
【0097】
第8の態様に係る緩衝体は、一対の内側部202に隣接して外面64aが放射性物質収納容器10Aの側面より径方向の外方に位置する縦置き用緩衝体64を有する。これにより、放射性物質収納容器10Aが縦置き貯蔵されているとき、緩衝体63および縦置き用緩衝体64により転倒時における胴部11や蓋部12の破損を抑制することができる。
【0098】
第9の態様に係る緩衝体は、放射性物質収納容器10A,10Cに装着可能な緩衝体63,66において、装着時に放射性物質収納容器10A,10Cの側面より外方に位置する外側部201,221と、外側部201,221の内方に位置して外側部201,221に対してずれて位置すると共に互いに対向して位置する少なくとも一対の内側部202,222とを備える。
【0099】
緩衝体63,66は、一対の分割緩衝体63A,63B,66A,66Bを有するものであるが、緩衝体63,66を一方の分割緩衝体63A,63B,66A,66Bから構成してもよい。すなわち、放射性物質収納容器10A,10Cに対して分割緩衝体63A,66Aまたは分割緩衝体63B,66Bだけを装着する。例えば、放射性物質収納容器10A,10Cを縦起こすとき、放射性物質収納容器10A,10Cの下方側だけに分割緩衝体63A,66Aまたは分割緩衝体63B,66Bを装着する。また、放射性物質収納容器10A,10Cを縦置き状態で保管するとき、放射性物質収納容器10A,10Cが倒れやすい側だけに分割緩衝体63A,66Aまたは分割緩衝体63B,66Bを装着する。これにより、上部トラニオン29を用いて放射性物質収納容器10A,10Cを適正に縦起こしすることができ、放射性物質収納容器10A,10Cの安全性を向上することができる。
【0100】
第10の態様に係る放射性物質収納容器は、放射性物質収納容器10,10Bの長手方向の一方に開口部22を有して内部に放射性物質を収納可能な胴部11,11Bと、開口部22に着脱可能に装着される複数の蓋31,32,33を有する蓋部12と、緩衝体61,63,65,66とを備える。これにより、横置き状態の放射性物質収納容器10,10A,10B,10Cを縦起こすとき、例えば、クレーンの吊り具114,116を上部トラニオン29に係止する。このとき、上部トラニオン29の位置に内側部72,202,212,222が設けられていることから、吊り具114,116は、内側部72,202,212,222により緩衝体61,63,65,66に干渉することが抑制される。その結果、上部トラニオン29を用いて放射性物質収納容器10,10A,10B,10Cを適正に縦起こしすることができ、放射性物質収納容器10,10A,10B,10Cの安全性を向上することができる。
【0101】
第11の態様に係る放射性物質収納容器は、胴部11,11Bは、上部側面に周方向に所定間隔を空けて複数の縦起こし用の上部トラニオン29が設けられ、一対の内側部72,202,212,222は、上部トラニオン29に対して周方向の同位置に位置する。これにより、クレーンの吊り具114,116を上部トラニオン29に容易に係止することができると共に、吊り具114,116を移動して安全に放射性物質収納容器10,10A,10B,10Cを縦起こしすることができる。
【0102】
第12の態様に係る放射性物質収納容器は、上部トラニオン29は、吊り具114,116が係止可能な係止部83および係止孔85を有し、一対の内側部72,202,212,222は、係止部83および係止孔85より径方向の内側に位置する。これにより、内側部72,202,212,222に干渉することなく、クレーンの吊り具114,116を適正に上部トラニオン29に係止することができる。
【0103】
第13の態様に係る放射性物質収納容器の縦起こし方法は、吊り具114、116を移動して横置きされた放射性物質収納容器10,10A,10B,10Cの縦起こし用の上部トラニオン29に係止する工程と、吊り具114,116を上昇させて内側部72,202,212,222に干渉させることなく放射性物質収納容器10,10A,10B,10Cの下部を支点として上部を縦起こす工程と、放射性物質収納容器10,10A,10B,10Cの上部を縦起こした後に吊り具114,116を移動して上部トラニオン29への係止を解除する工程とを有する。これにより、上部トラニオン29を用いて放射性物質収納容器10,10A,10B,10Cを適正に縦起こしすることができ、放射性物質収納容器10,10A,10B,10Cの安全性を向上することができる。
【0104】
なお、上述した実施形態では、上部トラニオン29および下部トラニオン30を有する胴部11を有する放射性物質収納容器10,10Aに対する緩衝体61,63と、上部トラニオン29および下部トラニオン30と補助上部トラニオン29Aおよび補助下部トラニオン30Aを有する胴部11Bを有する放射性物質収納容器10B,10Cに対する緩衝体65,66を例に挙げて説明したが、緩衝体61,63,65,66は、いずれの胴部11,11Bを有する放射性物質収納容器10,10A,10B,10Cに対しても適用することができる。
【0105】
また、緩衝体61,63,65,66の形状は、上述した実施形態の形状に限定されるものではない。特に、外側部71,201,211,221や内側部72,202,212,222の形状は、適宜設定すればよいものである。
【0106】
また、上述した実施形態では、蓋部12を一次蓋31と二次蓋32と三次蓋33とから構成したが、蓋部12を一次蓋31と二次蓋32とから構成してもよい。
【符号の説明】
【0107】
10,10A,10B,10C 放射性物質収納容器
11,11B 胴部
11a 側面
12 蓋部
13 バスケット
21 胴本体
22 開口部
23 底部
29 上部トラニオン
29A 補助上部トラニオン
30 下部トラニオン
31 一次蓋
32 二次蓋
33 三次蓋
34 空間部
61,62,63,65,66 緩衝体
63A,63B,66A,66B 分割緩衝体
71,201,211,221 外側部
71a,201a,211a 外面
72,202,212,222 内側部
72a,202a,212a 外面
73,203,213 上面部
74,204,214 下面部
75 205,215,225 凹部
81 取付部
82 台形部
83 係止部
84 フランジ部
85 係止孔
100 支持装置
101 支持板
102 上部支持アーム
103 下部支持アーム
104 上支持部
105 下支持部
110 吊り装置
111 吊りロープ
112 吊り架台
113 吊りアーム
114,116 吊り具
115 連結部
121 本体
122 貫通孔
123 係止孔
124 連結孔
125 本体
126 軸部
127 係止部
130 設置板
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