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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】受熱温度推定装置および火害診断方法
(51)【国際特許分類】
   G01K 11/06 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
G01K11/06 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020203071
(22)【出願日】2020-12-07
(65)【公開番号】P2022090580
(43)【公開日】2022-06-17
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 達朗
(72)【発明者】
【氏名】道越 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】馬場 重彰
(72)【発明者】
【氏名】池畠 由華
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-275792(JP,A)
【文献】特開昭59-203932(JP,A)
【文献】特開2009-6660(JP,A)
【文献】特開2010-256297(JP,A)
【文献】特開2012-188926(JP,A)
【文献】特開2013-210258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
G01N 33/46
G01N 25/00-25/72
E04B 1/00-1/99
E04G 23/00-23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災加熱を受けた木質部材の受熱温度を推定する受熱温度推定装置であって、
前記木質部材に所定間隔おきに設けられた示温材を複数備え、
前記示温材は、着火温度が木材以上でかつ所定温度を超えると不可逆的に変化することを特徴とする受熱温度推定装置。
【請求項2】
前記示温材は、受熱温度が所定温度を超えると溶融する熱可塑性樹脂であり、前記木質部材の表面に樹脂系接着剤で固定されて、透明性の高いシートで覆われることを特徴とする請求項1に記載の受熱温度推定装置。
【請求項3】
火災加熱を受けた木質部材が再使用可能か否かを診断する火害診断方法であって、
請求項1または2に記載の受熱温度推定装置を用いて、前記木質部材の受熱温度を推定する手順と、
前記推定した受熱温度に基づいて、前記木質部材の火害等級を判定する手順と、
前記火害等級が所定値以下の場合には、前記木質部材を補修あるいは補強することで、前記木質部材を再使用可能であると判定し、前記火害等級が所定値を超える場合には、前記木質部材を再使用不可能であると判定する手順と、を備えることを特徴とする火害診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災加熱を受けた木質部材の受熱温度を推定する受熱温度推定装置、および、この受熱温度推定装置を用いた火害診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄筋コンクリート部材が火災を受けた際に、この鉄筋コンクリート部材が再使用可能であるか否かを判定する方法が提案されている(特許文献1~3参照)。
特許文献1には、鉄筋コンクリート部材が火災を受けた際に、この鉄筋コンクリート部材を構成する鉄筋が火災後に再使用可能であるか否かを診断する方法が示されている。具体的には、火災を受けた鉄筋の硬さを測定して、その測定値から当該鉄筋の受熱温度を推定した後、この受熱温度の推定値から鉄筋の残存強度を導き出すとともに、この残存強度に基づいて、この鉄筋が再使用可能であるか否かを判定する。
【0003】
特許文献2には、火害を受けた鉄筋コンクリート部材に用いられる高強度鉄筋の再使用の可否を診断する火害診断方法が示されている。まず、調査対象となる高強度鉄筋近傍のコンクリートを採取し、この採取した試料をX線回折により分析して、X線の回折角2θと回折強度との関係を求める。次に、コンクリート中の沸石類について、X線の回折角2θ=10°近傍にて回折強度のピークが見られるか否かを判定する。この判定が肯定的である場合には、鉄筋の受熱温度が約400℃に到達していないため、高強度鉄筋の再使用が可能であると判定し、否定的である場合には、鉄筋の受熱温度が約400℃に到達したため、高強度鉄筋の再使用が不可能であると判定する。
特許文献3には、火災に晒されうるコンクリート構造物の熱劣化範囲検出方法が示されている。コンクリート構造物の表層部に中空の筒体を埋設し、この筒体の中空部にコンクリート劣化温度で不可逆的に変色する感温組成物を深さ方向に塗布する。火災後に感温組成物の非変色部分までの深さを検出することで、コンクリート構造物の熱劣化した範囲を検出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許4239733号公報
【文献】特開2013-210258号公報
【文献】特開2012-188926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、木質部材が火災加熱を受けた際に、木質部材の受熱温度を容易に推定可能な受熱温度推定装置、および、この受熱温度推定装置を用いた火害診断方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、木質部材の受熱温度を推定する受熱温度推定装置として、木質部材の表面または内部に、着火温度が木材以上でかつ所定温度を超えると不可逆的に変化する示温材(例えば、熱可塑性樹脂材や温度チョーク)を設けておき、火災鎮火後にこの示温材の状態を確認することで、木材の受熱温度を確認できる点に着目して、本願発明に至った。
第1の発明の受熱温度推定装置(例えば、後述の受熱温度推定装置1、1A、1B)は、火災加熱を受けた木質部材(例えば、後述の木質梁2、木質柱3)の受熱温度を推定する受熱温度推定装置であって、前記木質部材に所定間隔おきに設けられた示温材(例えば、後述のポリプロピレン樹脂10、温度チョーク10A)を複数備え、前記示温材は、着火温度が木材以上でかつ所定温度を超えると不可逆的に変化することを特徴とする。
ここでいう着火温度とは、発火する限界温度(自然発火温度)とも呼ばれるもので、可燃物を空気中(酸素中)で加熱していくとき、限界温度まで達すると、その後は自らの発熱反応によって温度が上昇し、その後発火する温度のことである。種火がない場合の木材の着火温度は約400℃で、種火がある場合の木材の着火温度は約250~260℃で程度である。また、標準的なプラスチック樹脂の場合、発火温度は450℃以上である。
【0007】
この発明によれば、着火温度が木材以上でかつ所定温度を超えると不可逆的に変化する示温材を用意し、この示温材を木質部材に所定間隔おきに複数設けた。よって、木質部材が火災加熱を受けた際、この示温材の状態を確認するだけで、木質部材の受熱温度を容易に推定できる。また、示温材の着火温度を木材以上としたので、火災時に木質部材の燃焼が拡大していく段階であっても、示温材が木質部材の燃焼を助けることはない。
【0008】
第2の発明の受熱温度推定装置は、前記示温材は、受熱温度が所定温度を超えると溶融する熱可塑性樹脂であり、前記木質部材の表面に樹脂系接着剤で固定されて、透明性の高いシート(例えば、後述のシート11)で覆われることを特徴とする。
ここで、熱可塑性樹脂とは、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂である。
【0009】
この発明によれば、示温材を、受熱温度が所定温度を超えると溶融する熱可塑性樹脂としたので、木質部材が火災加熱を受けた際、示温材の変形状態を確認するだけで、木質部材の受熱温度を容易に推定できる。
【0010】
第3の発明の火害診断方法は、火災加熱を受けた木質部材が再使用可能か否かを診断する火害診断方法であって、上述の受熱温度推定装置を用いて、前記木質部材の受熱温度を推定する手順(例えば、後述のステップS1)と、前記推定した受熱温度に基づいて、前記木質部材の火害等級を判定する手順(例えば、後述のステップS2)と、前記火害等級が所定値以下の場合には、前記木質部材を補修あるいは補強することで、前記木質部材を再使用可能であると判定し、前記火害等級が所定値を超える場合には、前記木質部材を再使用不可能であると判定する手順(例えば、後述のステップS3)と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、木質部材が火災を受けた場合に、上述の受熱温度推定装置を用いて、木質部材の受熱温度を推定し、その受熱温度から木質部材の火害等級を評価する。そして、木質部材火害等級に基づき、木質部材を補修あるいは補強することで、この木質部材を再使用可能か否か容易に判定できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、木質部材が火災加熱を受けた際に、木質部材の受熱温度を容易に推定可能な受熱温度推定装置、および、この受熱温度推定装置を用いた火害診断方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る受熱温度推定装置が設けられた木質梁および木質柱の模式的な斜視図である。
図2】第1実施形態に係る受熱温度推定装置の断面図である。
図3】火災を受けた木造建物の火害を診断して再利用する手順のフローチャートである。
図4】火害等級の定義を示す図である。
図5】木質部材の火害等級を判定する手順のフローチャートである。
図6】第2実施形態に係る受熱温度推定装置の断面図および斜視図である。
図7】第3実施形態に係る受熱温度推定装置の断面図および斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、木質部材の受熱温度を検出する受熱温度推定装置、および、この受熱温度推定装置を用いた木質部材の火害診断方法である。本発明では、受熱温度推定装置として、木質部材の表面または内部に配置した所定温度を超えると不可逆的に変化する示温材(温度チョーク、熱可塑性樹脂)を設けた。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0015】
〔第1実施形態〕
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る受熱温度推定装置1が設けられた木質梁2の模式的な斜視図である。図1(b)は、受熱温度推定装置1が設けられた木質柱3の模式的な斜視図である。図2は、受熱温度推定装置1の断面図である。
受熱温度推定装置1は、木造建物の木質部材としての木質梁2および木質柱3に設けられる。これら木質部材2、3の外周面には、被覆材4が設けられている。被覆材4は、例えば、耐火被覆材、仕上材、燃えしろ材である。また、以下、木質梁2および木質柱3を木質部材2、3と呼ぶ。
【0016】
受熱温度推定装置1は、火災加熱を受けた木質部材2、3の受熱温度を推定するものである。この受熱温度推定装置1は、木質部材2、3の表面に所定間隔おきに設けられた複数の示温材としてのポリプロピレン樹脂10を備える。具体的には、このポリプロピレン樹脂10を、木質部材2、3表面の鉛直方向や水平方向に500mm間隔で配置するとともに、木質部材2、3の出隅部にも配置する。
ポリプロピレン樹脂10は、着火温度が木材以上であり、受熱温度が180℃を超えると溶融して不可逆的に変化する熱可塑性樹脂である。つまり、ポリプロピレン樹脂10は、融点が180℃である。このポリプロピレン樹脂10は、後述の木質部材の火害等級の判定プロセス(火害等級II級の場合、受熱温度の判定値は180℃)を考慮して選定した。
【0017】
ポリプロピレン樹脂10は、木質部材2、3の表面に樹脂系接着剤で固定されて、透明性の高いシート11で覆われている。シート11も、ポリプロピレン樹脂10と同様に、木質部材2、3の表面に樹脂系接着剤で固定される。
ここで、樹脂系接着剤としては、プラスチック・セラミック用接着剤またはエポキシ樹脂系接着剤がある。これらプラスチック・セラミック用接着剤またはエポキシ樹脂系接着剤は、溶融温度が250℃~350℃程度であり、火災時に木質部材が延焼した際であっても、ポリプロピレン樹脂10を木質部材に固定でき、ポリプロピレン樹脂10が受熱温度推定装置としての役割を果たすことが可能である。
【0018】
次に、火災を受けた木造建物の火害を診断して再利用する手順について、図3のフローチャートを参照しながら説明する。
ここで、火災加熱を受けた木質部材が再使用可能か否かを診断する火害診断方法は、鉄筋コンクリート造、及び鉄骨造を対象とした火害診断方法(日本建築学会:建物の火害診断および補修・補強方法 指針・同解説、第1版、2015年2月)を参考にした。
具体的には、ステップS1では、木造建物を構成する各木質部材2、3について、上述の受熱温度推定装置1を用いて、受熱温度を推定する。
ステップS2では、木造建物を構成する各木質部材2、3について、推定した受熱温度に基づいて、火害等級を判定する(図4参照)。この火害等級の判定手順については、後に詳述する。
ステップS3では、火害等級に基づいて、木造建物の補修・補強計画を作成する。具体的には、木造建物の回復目標を設定して、補修・補強範囲および補修・補強方法を決定する。
【0019】
具体的には、図4に示すように、火害等級がI級およびII級である場合は、木質部材2、3の耐力が低下していないため、補修や補強を行うことなく、木質部材2、3を再使用可能であると判定する。火害等級がIII級およびIV級である場合は、木質部材2、3の耐力が低下しているため、補修や補強を行うことで、木質部材2、3を再使用可能であると判定する。火害等級がV級である場合は、木質部材2、3を再使用できず、木質部材2、3の交換が必要であると判定する。
なお、図4の火害等級III級とIV級以上との判定値である260℃は、木材が炭化を開始する炭化開始温度であり、火害等級II級とIII級以上との判定値である180℃は、この炭化開始温度の約70%である。これは、木材の加熱温度が約260℃以上になると木材に炭化が生じ、木材の加熱温度が約200℃以上になると加熱冷却後も回復しない力学的性能の低下が生じる、という知見に基づいて設定したものである(加來千紘他:火災加熱が木材の力学的性能に及ぼす影響、日本建築学会構造系論文集、第70巻、第701号、PP.1065~1072)。
ステップS4では、決定した補修・補強計画に基づいて、木造建物に補修・補強工事を実施する。
【0020】
次に、ステップS2の木質部材2、3の火害等級を判定する手順について、図5のフローチャートを参照しながら説明する。
ステップS11では、木質部材2、3が無被害か否かを目視で判定する。この判定がYesである場合には、ステップS12に移り、火害等級がI級であると判定する。一方、この判定がNoである場合には、ステップS13に移る。
ステップS13では、木質部材2、3の焼失など、被害が甚大であるか否かを目視で判定する。この判定がYesである場合には、ステップS14に移り、火害等級がV級であると判定する。一方、この判定がNoである場合には、ステップS15に移る。
【0021】
ステップS15では、木質部材2、3の表面に炭化が生じているか否かを目視で判定する。この判定がNoである場合には、ステップS16に移り、Yesである場合には、ステップS17に移る。
ステップS16では、上述の受熱温度推定装置1を用いて、木質部材2、3表面の最高温度が180℃以下か否かを判定する。すなわち、木質部材2、3の被覆材4を除去し、木質部材2、3表面のポリプロピレン樹脂10が溶融していれば、木質部材2、3表面の最高温度が180℃を超えていると判定する。この判定がYesである場合には、ステップS18に移り、火害等級がII級であると判定する。一方、この判定がNoである場合には、ステップS19に移り、火害等級がIII級であると判定する。
【0022】
ステップS17では、木質部材2、3の大半が炭化しているか否かを目視で判定する。この判定がNoである場合には、ステップS20に移り、火害等級がIV級であると判定する。一方、この判定がYesである場合には、上述のステップS14に移り、火害等級がV級であると判定する。
【0023】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)着火温度が木材以上でかつ受熱温度が180℃を超えると溶融して不可逆的に変化するポリプロピレン樹脂10を用意し、このポリプロピレン樹脂10を木質部材2、3に所定間隔おきに複数設けた。よって、木質部材2、3が火災加熱を受けた際、このポリプロピレン樹脂10の状態を確認するだけで、木質部材2、3の受熱温度を容易に推定できる。また、示温材として着火温度が木材以上のポリプロピレン樹脂10を用いたので、火災時に木質部材2、3の燃焼が拡大していく段階であっても、ポリプロピレン樹脂10が木質部材2、3の燃焼を助けることはない。また、ポリプロピレン樹脂10を覆うシート11を設けたので、木質部材2、3に含まれる水分や木質部材2、3の外部から浸透する雨水等から示温材であるポリプロピレン樹脂10を保護できる。
(2)本発明の火害診断方法によれば、木造建物の木質部材2、3が火災を受けた場合に、受熱温度推定装置1を用いて、この木質部材2、3を再使用可能か否か容易に判定できる。
具体的には、受熱温度推定装置1に受熱温度が180℃を超えると溶融するポリプロピレン樹脂10を用いることで、火害等級IIと火害等級IIIとを容易に判別でき、木造建物の補修・補強計画の作成が容易となる。
【0024】
〔第2実施形態〕
図6(a)は、本発明の第2実施形態に係る受熱温度推定装置1Aの断面図である。図6(b)は、受熱温度推定装置1Aの斜視図である。
本実施形態では、示温材として、指示温度が180℃の温度チョーク10A、10Bを用いた点が、第1実施形態と異なる。温度チョーク10Aは、受熱温度が180℃を超えると溶融するものであり、温度チョーク10Bは、受熱温度が260℃を超えると溶するものである。
本実施形態では、ステップS15において、目視で木質部材2、3の表面に炭化が生じているか否かを判定するのではなく、温度チョーク10Bの状態を確認することで、ステップS15の判定を行う。
温度チョーク10A、10Bとしては、例えば、指示温度を高精度で管理可能な、テンピルステック(登録商標、愛知産業株式会社製)を用いる。具体的には、温度チョーク10Aとしては、TSCO180(指示温度180℃)を用いて、温度チョーク10Bとしては、TSCO260(指示温度260℃)を用いる。
本実施形態によれば、上述の(1)、(2)に加え、以下のような効果がある。
(3)ステップS15において、温度チョーク10Bの状態を確認するだけでよいので、目視で木質部材2、3の状態を確認する必要がなく、ステップS15の判定作業が容易となる。
【0025】
〔第3実施形態〕
図7(a)は、本発明の第3実施形態に係る受熱温度推定装置1Bの断面図である。図7(b)は、受熱温度推定装置1Bを構成する板状断熱材12の斜視図である。
本実施形態では、温度チョーク10A、10Bを木質部材2、3の深さ方向に配置した点が、第2実施形態と異なる。すなわち、木質部材2、3には、穴5が形成されており、この穴5には、板状断熱材12が挿入されている。板状断熱材12の側面には、上下方向(深さ方向)に延びる温度チョーク10A、10Bが並んで設けられている。
この板状断熱材12としては、例えば、けい酸カルシウム板や、超低熱伝導断熱材であるロスリムボード TOMBO No.4350(登録商標、ニチアス株式会社製)が挙げられる。
本実施形態によれば、上述の(1)~(3)の効果に加えて、以下のような効果がある。
(4)温度チョーク10A、10Bを木質部材2、3の深さ方向に配置したので、木質部材2、3の深さ方向の受熱温度の変化を容易に確認できる。
【0026】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上述の第1実施形態では、熱可塑性樹脂としてポリプロピレン樹脂10を用いたが、これに限らず、ポリエチレン樹脂など、溶融温度が180℃~約260℃のポリプロピレン樹脂以外の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
また、上述の第2実施形態および第3実施形態では、指示温度が180℃と260℃の2種類の温度チョーク10A、10Bを用いたが、これに限らず、温度チョークを1種類としてもよいし、180℃、220℃、260℃のように3種類としてもよいし、4種類以上としてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1、1A、1B…受熱温度推定装置 2…木質梁(木質部材)
3…木質柱(木質部材) 4…被覆材 5…穴
10…ポリプロピレン樹脂(示温材) 10A…温度チョーク(示温材)
11…シート 12…板状断熱材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7