(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】ブロー成形用金型、これを用いた樹脂製容器の製造方法および樹脂製の容器
(51)【国際特許分類】
B29C 49/48 20060101AFI20231124BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20231124BHJP
B29C 49/42 20060101ALI20231124BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20231124BHJP
B65D 1/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B29C49/48
B29C45/00
B29C49/42
B29C49/06
B65D1/00 120
(21)【出願番号】P 2020531318
(86)(22)【出願日】2019-07-16
(86)【国際出願番号】 JP2019027947
(87)【国際公開番号】W WO2020017505
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2018134579
(32)【優先日】2018-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 暢之
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-007786(JP,A)
【文献】特開2006-062110(JP,A)
【文献】特開2018-030629(JP,A)
【文献】特開平02-070420(JP,A)
【文献】特開平03-073316(JP,A)
【文献】特開平01-264808(JP,A)
【文献】特開2002-067130(JP,A)
【文献】特開平02-086424(JP,A)
【文献】米国特許第05662842(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00-49/80
B29C 33/00-33/76
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底型と、ネック型と、挟持機構と、回動機構と、を備えるブロー成形用金型であって、
前記挟持機構は、挟持部を備え、
前記挟持部は、前記底型に独立して設けられて、プリフォームの底部にゲート部と独立して設けられた突起部を掴むことが可能なように開閉可能に構成されており、
前記回動機構は、前記挟持部により前記突起部を掴んだ状態の前記底型を、前記ネック型で保持された静止状態の前記プリフォームの首部に対して回動させることが可能に構成されている、ブロー成形用金型。
【請求項2】
ブロー成形用金型の割型が開いている状態で、前記ブロー成形用金型に収容されたプリフォームの底部にゲート部と独立して設けられた突起部を挟持する挟持機構で掴む挟持工程、
前記突起部を掴んでいる前記挟持機構を、ネック型で保持された静止状態の前記プリフォームの首部に対して回動させて、前記プリフォームを曲げる曲工程、および
前記割型を閉じて加圧媒体により前記プリフォームを延伸させるブロー工程、
を有し、
前記挟持機構は挟持部を備え、
前記挟持部は、前記
ブロー成形用金型が備える底型に独立して設けられており、
前記挟持工程において、前記挟持部は、開閉することにより前記突起部を掴む、
樹脂製容器のブロー成形方法。
【請求項3】
前記挟持工程の前に、延伸ロッドにより前記プリフォームの前記底部を前記底型に向かって延伸させる予備延伸工程を有する、
請求項2に記載のブロー成形方法。
【請求項4】
開口を備える首部と、首部と連なるように形成されて側壁部分を規定する胴部と、胴部と連なるように形成された底部と、から構成される樹脂製の容器であって、
前記開口の中心を通り、前記開口が成す開口面に直交する軸と、前記容器の鉛直方向に延びる軸と、が成す傾斜角が50°以上80°以下であり、
前記開口の水平な直径方向に延びる方向を容器の幅方向とし、前記開口が成す開口面に直交する軸が伸びる方向を容器の奥行方向とした時に、
前記胴部の水平断面の幅方向の長さと奥行方向の長さとが異なり、
前記底部は、前記底部の外表面から外側へ張り出す張出部を備え、
前記張出部は、前記張出部の先端に形成されるゲート部と、前記ゲート部よりも前記底部に近い位置に形成される突出部とを備え、
前記突出部は、扁平形状である、
ストレッチブロー成形法より製造される容器。
【請求項5】
前記胴部は、前記開口が成す開口面に直交する軸と直交する向きに沿って傾斜する傾斜面部を備える上方胴部と、前記上方胴部と連なり鉛直方向に沿って伸びる下方胴部とを備え、
前記上方胴部および前記下方胴部の水平断面の形状が多角形状であり、
前記上方胴部の多角形状の水平断面の角の数が、前記下方胴部の多角形状の水平断面の角の数よりも少ない、請求項4に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロー成形用金型、これを用いた樹脂製容器の製造方法および樹脂製の容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、特許文献2および特許文献3には、ストレッチブロー成形方法が開示されている。特許文献4には、ダイレクトブロー成形方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2006-062110号公報
【文献】日本国特許5103247号公報
【文献】日本国特許3893054号公報
【文献】日本国特許4093562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブロー成形で製造される容器として、首部の中心軸が胴部の中心軸に対し傾斜した首曲がり容器というものが存在する。首部の傾斜角が小さいものは、特許文献1、特許文献2および特許文献3の傾斜延伸機構を用いることで、ストレッチブロー成形でも製造できる。しかし、これら傾斜延伸機構で首部の傾斜角が大きい容器(例えば60°以上)を成形することは実質不可能なため、このような容器は特許文献4のダイレクトブロー成形で製造される。
【0005】
一方、ダイレクトブロー成形で製造できる容器は概してストレッチブロー成形のものより美的外観の面で劣る。傾斜角が大きい首曲がり容器もストレッチブロー成形で製造したいという要望が上がっている。
【0006】
本発明は、傾斜角が大きい首曲がり容器をストレッチブロー成形で製造できる、ブロー成形用金型、これを用いた樹脂製容器の製造方法および樹脂製の容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することのできる本発明のブロー成形用金型は、
底型と、ネック型と、挟持機構と、回動機構と、を備えるブロー成形用金型であって、
前記挟持機構は、前記底型に独立して設けられて、プリフォームの底部にゲート部と独立して設けられた突起部を掴むことが可能なように構成されており、
前記回動機構は、前記挟持機構により前記突起部を掴んだ状態の前記底型を、前記ネック型で保持された静止状態の前記プリフォームの首部に対して回動させることが可能に構成されている。
【0008】
上記の構成を備えるブロー成形用金型によれば、傾斜角の大きい首曲がり容器をストレッチブロー成形において製造することができる。
【0009】
また本発明の樹脂製容器の製造方法は、
ブロー成形用金型の割型が開いている状態で、前記ブロー成形用金型に収容されたプリフォームの底部にゲート部と独立して設けられた突起部を、前記ブロー成形用金型の底型に独立して設けられた挟持機構で掴む挟持工程、
前記突起部を掴んでいる前記底型を、ネック型で保持された静止状態の前記プリフォームの首部に対して回動させて、前記プリフォームを曲げる曲工程、および
前記割型を閉じて加圧媒体により前記プリフォームを延伸させるブロー工程、
を有する。
【0010】
上記の構成を備える樹脂製容器のブロー成形方法によれば、傾斜角の大きい首曲がり容器をダイレクトブロー成形以外の方法においても製造することができる。
【0011】
また本発明の樹脂製の容器の製造方法は、
前記挟持工程の前に、延伸ロッドにより前記プリフォームの前記底部を前記底型に向かって延伸させる予備延伸工程を有すると好ましい。
【0012】
上記の構成を備える樹脂製容器のブロー成形方法によれば、傾斜角の大きい首曲がり容器をストレッチブロー成形において製造することができる。
【0013】
また、本発明の樹脂製の容器は、
開口を備える首部と、首部と連なるように形成されて側壁部分を規定する胴部と、胴部と連なるように形成された底部と、から構成される樹脂製の容器であって、
前記開口の中心を通り、前記開口が成す開口面に直交する軸と、前記容器の鉛直方向に延びる軸と、が成す傾斜角が50°以上80°以下であり、
前記開口の水平な直径方向に延びる方向を容器の幅方向とし、前記開口が成す開口面に直交する軸が伸びる方向を容器の奥行方向とした時に、
前記胴部の水平断面の幅方向の長さと奥行方向の長さとが異なる、
ストレッチブロー成形法より製造される容器である。
【0014】
また上記の容器において、
前記底部が、前記底部の外表面から外側へ張り出す張出部を備える、と好ましい。
【0015】
また上記の容器において、
前記胴部は、前記開口が成す開口面に直交する軸と直交する向きに沿って傾斜する傾斜面部を備える上方胴部と、前記上方胴部と連なり鉛直方向に沿って伸びる下方胴部とを備え、
前記上方胴部および前記下方胴部の水平断面の形状が多角形状であり、
前記上方胴部の多角形状の水平断面の角の数が、前記下方胴部の多角形状の水平断面の角の数よりも少ない、と好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、傾斜角が大きい首曲がり容器をストレッチブロー成形で製造できる、ブロー成形用金型、これを用いた樹脂製容器の製造方法および樹脂製の容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】傾斜角が大きい首曲がり容器を示す図である。(a)は容器の左側面の様子を示し、(b)は容器の正面の様子を示す。
【
図3】プリフォームの外観を示す図である。(a)は、プリフォームの正面図、(b)はプリフォームの左側面図、(c)はプリフォームの正面図の部分拡大図、(d)はプリフォームの左側面図の部分拡大図を示す。
【
図4】ブロー成形用金型を示す図である。(a)は金型の正面図、(b)は金型の左側面図を表す。
【
図6】ブロー成形の様子を示す図である。(a)は、割型(図示省略)が開いている状態で、金型にプリフォームが収容された様子を示す図であり、(b)は、プリフォームの突出部を挟持機構で掴んだ状態を示す図であり、(c)は、プリフォームを曲げた状態を示す図である。
【
図7】傾斜角が大きい首曲がり容器の一態様を示す図である。(a)は容器を開口側から見た際の様子を示し、(b)は容器の正面の様子を示し、(c)は容器の右側面の様子を示し、(d)は容器のE-E断面の様子を示し、(e)は容器のF-F断面の様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0019】
まず、
図1を参照して、本実施形態に係る首曲がり容器10を説明する。
図1の(a)は容器10の左側面図、
図1の(b)は容器10の正面図を表す。容器10は、開口11を備える首部12と、首部12と連なるように形成されて容器10の側壁部分を規定する胴部13と、胴部13と連なるように形成された底部14と、から構成される樹脂製の容器である。底部14は、水平面状に形成されて接地面となる外縁部と、胴部13の側に向けて窪んで凹部を形成する上底部、とからなる。底部14(上底部)の外表面には、底部14の窪みの深さ(上底部の深さ)の範囲内に収まった、図示しない張出部(張出痕跡部)215が設けられている。本実施形態において、首部12の開口11の中心を通り、開口面に直交する軸Aと、容器10の鉛直方向に延びる軸Bと、が成す角を傾斜角Xという。本例の容器10の傾斜角Xは大きく、略60°である。胴部13を鉛直方向で二等分した際の上側の部分は、正面視で略三角形状である(
図1の(b))。鉛直方向における上側の位置で首部12と接続している胴部13の一部は湾曲しており、鉛直方向における下側の位置で首部12と接続している胴部13の一部は開口面と平行に延びている(
図1の(b))。なお、胴部13の水平方向の横断面形状は、偏平形状、略楕円形状、略真円形状または略多角形状の何れであっても良い(
図1の容器10では、偏平形状になっている)。本例の容器10の高さは略13cm、幅は略3cm、奥行きは略4cmである。なお、容器10および後述する容器10Aにおいて、幅は胴部13または底部14の水平横断面の短軸方向(短径方向)の長さを、奥行きは胴部13または底部14の水平横断面の長軸方向(短径方向)の長さを、示している。
【0020】
続いて、
図2を参照して容器を製造するためのブロー成形装置100について説明する。
図2はブロー成形装置100のブロック図である。
【0021】
図2に示すように、ブロー成形装置100は、プリフォーム20を製造するための射出成形部110と、製造されたプリフォーム20の温度を調整するための温調部120とを備えている。射出成形部110には、原材料である樹脂材料を供給する射出装置112が接続されている。原材料となる合成樹脂は熱可塑性樹脂であり、用途に応じ適宜選定できる。合成樹脂としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PCTA(ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、Tritan(トライタン:コポリエステル)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PC(ポリカーボネート)、PES(ポリエーテルスルホン)、PPUS(ポリフェニルスルホン)、PS(ポリスチレン)、COP/COC(環状オレフィン系ポリマー)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル:アクリル)、PLA(ポリ乳酸)、等が挙げられる。また、生分解性プラスチックも挙げられる。また、ブロー成形装置100は、プリフォーム20をブローして容器10を製造するためのブロー成形部130と、製造された容器10を取り出すための取出部140とを備えている。
【0022】
射出成形部110と温調部120とブロー成形部130と取出部140とは、搬送手段150を中心として所定角度(本実施形態では90度)ずつ回転した位置に設けられている。搬送手段150は回転板等で構成されており、後述する
図4および
図6に示すように、回転板に取付けられているネック型152により首部12,22が支持された状態のプリフォーム20又は容器10が、回転板の回転に伴って各部に搬送されるように構成されている。
【0023】
図2に示す射出成形部110は、図示を省略する射出キャビティ型、射出コア型、ネック型等を備えている。これらの型が型締めされることで形成されるプリフォーム形状の空間内に、射出装置112から樹脂材料を流し込むことにより、有底のプリフォーム20が製造される。
【0024】
ここで、
図3を参照して本実施形態に係るプリフォーム20について説明する。
図3の(a)は、プリフォーム20の正面図、
図3の(b)はプリフォーム20の右側面図、
図3の(c)はプリフォーム20の正面図の部分拡大図、
図3の(d)はプリフォーム20の右側面図の部分拡大図を示す。プリフォーム20は開口21を備える首部22と、首部22と連なるように形成されてプリフォーム20の側壁部分を規定する胴部23と、胴部23と連なるように形成された底部24と、から構成されている。底部24の中心部分には張出部25が設けられている。張出部25は、プリフォーム成形時の樹脂の射出ゲートに近いゲート部26と、ゲート部26よりも鉛直方向において上側に形成され、プリフォーム20の下端と連なる突起部27と、で構成されている。突起部27は、扁平状に形成されており、正面視においてゲート部26よりも拡径されて(幅広に)形成され(
図3の(a)および
図3の(c))、側面視においてゲート部26と同等の幅に形成されている(
図3の(b)および
図3の(d))。すなわち、突起部27の左右方向(
図3の(a)および
図3の(b)の紙面上における左右方向。プリフォーム20がネック型152により支持された状態において、突起部27がゲート部26よりも幅広に見える幅広方向)における長さは、ゲート部26の
図3の(a)および
図3の(b)の紙面上における左右方向における長さよりも長い。突起部27の前後方向(
図3の(b)および
図3の(d)の紙面上における左右方向。プリフォーム20がネック型152により支持された状態において、突起部27の幅とゲート部26の幅とが同等に見える方向)における長さは、ゲート部26の前後方向における長さと同等である。
【0025】
図2に戻り、ブロー成形装置100を説明する。温調部120は、射出成形部110で製造されたプリフォーム20の温度を、最終ブローするための適した温度に調整するように構成されている。ブロー成形部130は、温調部120で温度調整されたプリフォーム20に対してブロー成形を行い、樹脂製の容器10を製造するように構成されている。ブロー成形部130は、ブロー成形用金型200と延伸ロッド132とを備えている。
【0026】
ここで、
図4を参照して、ブロー成形部130が備えるブロー成形用金型200について詳細に説明する。
図4の(a)は金型200の正面図、
図4の(b)は金型200の左側面図を表す。金型200は、一対の割型(ブローキャビティ割型)210と、底型220と、一対のネック型152と、挟持機構230と、回動機構240と、を備えている。
【0027】
割型210は、側面視においてパーティング面Cを基準にして左右方向(開閉方向D)に開閉可能に構成されている(
図4の(b))。左右一対の割型210は、閉じた状態で、容器10の胴部13を規定する空間Sを構成する。
【0028】
底型220は、容器10の底部14を規定する第一の底型部材221と、その下方に配置される第二の底型部材(収容ブロック)260とからなる。また底型220には、その内部に収容されるように挟持機構230が設けられている(
図4の(a)および
図4の(b))。第一の底型部材221には少なくとも挟持機構230の挟持部232(後述)の一部が収容され、第二の底型部材260には少なくとも挟持機構230の開閉機構234(後述)の一部が収容される。第二の底型部材260は、後述する被ガイド部244の上面に設けられている。底型220及び被ガイド部244(後述)は、一体となってガイド部242(後述)に沿って移動可能に構成されている。
【0029】
ここで、
図5を参照して挟持機構230を説明する。挟持機構230は、プリフォーム20の底部24に設けられた張出部25の突起部27を掴むことが可能なように構成された挟持部232を備えている。挟持部232は底型220から独立して(底型220に直接設けられておらず分離して)設けられている。挟持部232は、底型220の下方でリンク機構を介して連接した駆動部材(開閉機構234)により開閉可能に構成されて、開いた状態から閉じた状態になることで突起部27を挟持する。挟持部232の先端部分には、挟持部232の内側に突出した爪部233が設けられ、挟持部232が閉じた状態で爪部233が突起部27に食い込むように構成されている。
【0030】
第一の底型部材221は、第一収容部236Aを含む。第二の底型部材260は、第二収容部236Bを含む。ここで、第一収容部236Aと第二収容部236Bとからなる部分を、本明細書では収容部236と定義する。尚、第一収容部236Aと第二収容部236Bは連通している。収容ブロック260及び底型220には、プリフォーム20の張出部25を挟持部232に導くための開口部がそれぞれ設けられている。挟持部232と開閉機構234とは、収容部236に覆われている。収容部236には、挟持機構230が配置されている。
【0031】
図4に戻り、金型200を説明する。ネック型152は、前述のように回転板に取付けられて、首部12,22を支持した状態でプリフォーム20又は容器10を、回転板の回転に伴って各部に搬送するように構成されている。回動機構240は、底型220の側方かつ割型210の下方に配され平板状でカム溝243を備えるガイド部242と、収容部236の直下に固定された移動ブロック(図示無し)に対し連結された被ガイド部(カムフォロア)244とを備える(
図4の(a))。ガイド部242のカム溝243は、少なくとも曲線部を備えており、必要に応じて直線部が設けられる。この曲線部は、回転板によって温調部120から搬送されたプリフォーム20の下方の鉛直方向に、一方の端部を有する。この曲線部に沿って被ガイド部244が移動することにより、プリフォーム20の胴部23及び底部24は首部22に対し、容器10の傾斜角Xに対応する所定角度(例えば60°)回動される。なお、この動作時、首部22はネック型等で位置不動に支持されている。
【0032】
回動機構240は、被ガイド部244をガイド部242のカム溝243に沿って移動させることで、移動ブロックを介して底型220を、ブロー成形時にネック型152が配置される位置に対して回動させることが可能なように構成されている。すなわち回動機構240は、挟持機構230により突起部27を掴んだ状態の底型220を、ネック型152で保持された静止状態のプリフォーム20の首部22に対して回動させることが可能なように構成されている。また、回動機構240は、底型220を金型200の割型210の開閉方向Dと直交する面の上で回動させることが可能なように構成されている。換言すると、回動機構240は底型220を割型210のパーティング面Cに沿って回動させることが可能なように構成されている。つまり、底型220は、曲げられていない(直線状の)プリフォーム20の胴部23の中心軸方向に対応する第一の位置から、曲がった(屈曲状の)プリフォーム20の胴部23の中心軸方向に対応する第二の位置へと、回動機構により移動される。なお、回動機構240はスイング機構または揺動機構と称しても良い。
【0033】
再び
図2に戻り、ブロー成形装置100の取出部140について説明する。取出部140は、ブロー成形部130で製造された容器10の首部12をネック型152から開放して容器10を取り出すように構成されている。
【0034】
続いて
図6を参照して、ブロー成形装置100のブロー成形部130における、容器10のブロー成形方法について説明する。
図6の(a)は、割型210(図示省略)が開いている状態で、金型200にプリフォーム20が収容された様子を示す図であり、
図6の(b)は、プリフォーム20の突起部27を挟持機構230で掴んだ状態を示す図であり、
図6の(c)は、プリフォーム20を曲げた状態を示す図である。本実施形態のブロー成形工程は、金型200の割型210が開いている状態で、金型200に収容されたプリフォーム20の突起部27を、金型200の挟持機構230で掴む挟持工程と、突起部27を掴んでいる底型220を、ネック型152で保持された静止状態のプリフォーム20の首部22に対して回動させて、プリフォーム20を曲げる曲工程と、割型210を閉じて加圧媒体によりプリフォーム20を延伸させるブロー工程と、を有する。
【0035】
まず、ネック型152に支持され、温調部120でブロー成形に適した温度に調整されたプリフォーム20を搬送手段150によってブロー成形部130に搬送し、割型210が開いている状態の金型200に収容する(
図6の(a))。次にブロー成形部130に設けられた待機位置にある延伸ロッド132を下降させ、プリフォーム20の底部24を内部から押圧して、底型220に向かってプリフォーム20を延伸させる(予備延伸工程)。プリフォーム20を底型220まで伸ばして、底部24の張出部25を底型220および収容部236の開口部に収容する(
図6の(b))。収容された張出部25の突起部27を挟持機構230で掴み、金型200の底型220とプリフォーム20の底部24とをつなぐ(挟持工程)。その後、延伸ロッド132を待機位置へと上昇させる。
【0036】
続いて、回動機構240により、底型220に取り付けられた被ガイド部244をガイド部242のカム溝243に沿って、
図6の(b)における左斜上方向へ移動させる。これにより、突起部27を掴んでいる底型220をネック型152で保持された静止状態のプリフォーム20の首部22に対して回動させる(
図6の(c))。これにより、プリフォーム20の首部22に近い胴部23の一部を曲げる(曲工程)。そして、割型210を閉じて、ネック型152と、割型210と、底型220とで構成される容器10の外形を規定する空間SSに、曲げられたプリフォーム20を収容する。この状態で、空気などの加圧媒体をプリフォーム20へ導入して、プリフォーム20をブロー・延伸させて容器10を成形する(ブロー工程)。成形が終わってから割型210を開いて容器10を開放し、搬送手段150によって取出部140へ容器10を搬送する。上記方法により、プリフォーム20から首曲がり容器10をブロー成形できる。
【0037】
ところで、首部の傾斜角が小さい容器は、特許文献1、特許文献2および特許文献3に開示の傾斜延伸機構を用いることで、ストレッチブロー成形でも製造できる。しかし、これら傾斜延伸機構は、ブローエアの導入前に延伸ロッドの先端をプリフォームの底部内壁面に当接させる事が必須条件となる。よって、首部の傾斜角が大きい容器(例えば60°以上)はこの条件を満たすことが実質不可能なため、このような容器はダイレクトブロー成形で製造されていた。
【0038】
一方、ダイレクトブロー成形で製造できる容器は概してストレッチブロー成形のものより美的外観の面で劣る。また、容器の底部のピンチオフ部における溶着不良(ピンホール)の懸念、容器の首部もエアブローで賦形させるため首部の寸法精度が高くない(気密性が良くない)、バリの切除が必須で無駄な樹脂量(ロス材)が多い、ブロー成形後も切除面のトリミングという後工程が必須、表面光沢性が高い容器の製造が困難、といった課題が存在した。
【0039】
上記の実施形態に係るブロー成形用金型200は、底型220に独立して設けられて、プリフォーム20の底部24にゲート部26と独立して設けられた突起部27を掴むことが可能なように構成された挟持機構230と、挟持機構230により突起部27を掴んだ状態の底型220を、ネック型152で保持された静止状態のプリフォーム20の首部22に対して回動させることが可能に構成されている回動機構240と、を備えている。当該構成を備えるブロー成形用金型200によれば、傾斜角の大きい首曲がり容器10をストレッチブロー成形において製造することができる。これにより、上記のダイレクトブロー成形における課題を考慮する必要なく、美的外観に優れる首部12の傾斜角が大きい首曲がり容器10を製造することができる。
【0040】
また上記の実施形態に係るブロー成形用金型200は、底型220が、回動機構240により金型200の割型210の開閉方向Dと直交する面の上を回動可能に構成されている。換言すると、底型220は割型210のパーティング面Cに沿って回動可能に構成されている。底型220を、割型210の開閉方向Dと直交する面の上で回動させることで、割型210の開閉方向Dに底型220が動く態様と比較して割型210が移動するのに必要な可動幅を縮小することができ、省スペースとすることができる。また、金型200の厚みを薄くでき熱効率の面でも有利である。
【0041】
また上記の実施形態に係るブロー成形方法は、プリフォーム20の底部24にゲート部26と独立して設けられた突起部27を、ブロー成形用金型200の底型220に独立して設けられた挟持機構230で掴む挟持工程と、突起部27を掴んでいる底型220を、ネック型152で保持された静止状態のプリフォーム20の首部22に対して回動させて、プリフォーム20を曲げる曲工程と、有している。当該構成を備えるブロー成形方法によれば、傾斜角の大きい首曲がり容器10をダイレクトブロー成形以外の方法においても製造することができる。これにより、上記のダイレクトブロー成形における課題を考慮する必要なく、美的外観に優れる首部12の傾斜角が大きい首曲がり容器10を製造することができる。
【0042】
また上記の実施形態に係るブロー成形方法は、延伸ロッド132によりプリフォーム20の底部24を底型220に向かって延伸させる予備延伸工程を有している。当該構成を備える容器10のブロー成形方法によれば、傾斜角の大きい首曲がり容器10をストレッチブロー成形において製造することができる。
【0043】
また上記の実施形態において、挟持機構230により挟持される突起部27をゲート部26より上側に設けて、かつ拡径させて幅方向で厚みを持たせている。これにより、挟持機構230による突起部27の挟持が安定し、回動機構240により底型220を回動させる際に、プリフォーム20が挟持機構230から外れることを好適に防ぐことができる。また、突起部27のサイズを適宜変更することで、プリフォーム形状の変更が容易となる。
【0044】
また上記の実施形態において、挟持部232が底型220と独立して設けられており、底型220の下方にリンク機構を介して連接した駆動部材(開閉機構234)により、開閉可能に構成されている。これにより、挟持部232による突起部27の挟持を強固なものとすることができ、回動機構240により底型220を回動させる際に、プリフォーム20が挟持機構230から外れることを好適に防ぐことができる。
【0045】
また上記の実施形態において、挟持機構230の挟持部232に爪部233が設けられている。爪部233を設けることで、突起部27を強固に挟持することができ、回動機構240により底型220を回動させる際に、プリフォーム20が挟持機構230から外れることを好適に防ぐことができる。
【0046】
続いて、実施形態に係る樹脂製容器の一態様を、
図7を参照して説明する。
図7は、傾斜角が大きい首曲がり容器の一態様である容器10Aを示す図である。
図7の(a)は容器10Aを開口側から見た際の様子を示し、
図7の(b)は容器10Aの正面の様子を示し、
図7の(c)は容器10Aの右側面の様子を示し、
図7の(d)は容器10AのE-E断面の様子を示し、
図7の(e)は容器10AのF-F断面の様子を示す。
【0047】
容器10Aの基本的態様は容器10と同様であるが、傾斜角Xや容器の寸法等の取り得るバリエーションを含めて詳細に説明する。容器10Aは、開口11Aを備える首部12Aと、首部12Aと連なるように形成されて容器10Aの側壁部分を規定する胴部13Aと、胴部13Aと連なるように形成された底部14Aと、から構成される樹脂製の容器である(
図1の容器10の態様を参照)。底部14Aは、水平面状に形成されて接地面となる外縁部と、胴部13Aの側に向けて窪んで凹部を形成する上底部、とからなる。首部の開口11Aの中心を通り、開口面に直交する軸Aと、容器の鉛直方向に延びる軸Bと、が成す傾斜角Xは、50~80°の範囲である。傾斜角Xは、60°±5°または60°~70°の範囲であると好ましい。
【0048】
図7の(d)および
図7の(e)に示すように、容器10Aの胴部13Aの水平方向の横断面の形状は、把持して利用する際に首曲がり方向が把握できるような略偏平形状である。換言すると、容器10Aの胴部13Aの横断面の形状は、胴部13Aの幅(
図7の(d)および
図7の(e)における紙面上の胴部の上下方向の長さ)と奥行き(
図7の(d)および
図7の(e)における紙面上の胴部の左右方向の長さ)が相違する形状である。幅と奥行きとの相違から首曲がり方向を把握できる。
図7の容器10Aは、幅が奥行きよりも小さい形状である。また、開口11Aの水平な直径方向に延びる方向を容器の幅方向とし、開口11Aが成す開口面に直交する軸が伸びる方向を容器の奥行方向としてもよい。
【0049】
容器10Aの胴部13Aは、下方に向かって徐々に奥行き(
図7の(b)における紙面上の左右方向の幅)が広がる上部胴部13aと略同一径が続く下方胴部13bとを備えている。上部胴部13aは、軸Aと略直交する向きに沿って傾斜する傾斜面部13cと、首部12Aから離れるにつれて鉛直方向に延びるように曲がる曲面部13d(肩部)とを備えている。また、容器10Aの胴部13Aは、鉛直方向に沿って伸びる面状の部分である第一の鉛直面部13e、第二の鉛直面部13fおよび第三の鉛直面部13gを備える。第一の鉛直面部13eは、容器10Aを右側面視した際に(
図7の(c))、胴部13Aの中心に位置して容器10Aの底部14Aから首部12Aにかけて延在する略平面の部分である。第二の鉛直面部13fは、容器10Aを右側面視した際に(
図7の(c))、第一の鉛直面部13eを挟むようにして2つ存在し、底部14Aから曲面部13dにかけて延在する略平面の部分である。第三の鉛直面部13gは、それぞれの第二の鉛直面部13fの第一の鉛直面部13eと反対側の位置で第二の鉛直面部13fと隣り合って(
図7の(b))、底部14Aから首部12Aにかけて延在する略平面の部分である。傾斜面部13c、第一の鉛直面部13e、第二の鉛直面部13fおよび第三の鉛直面部13gを備えることにより、胴部13Aの断面形状は、底部14Aの近傍側(F-F断面)では略6角形状となり(
図7の(e))、首部12Aの近傍側(E-E断面)では略5角形状となる(
図7の(d))。なお、上述の第一、第二および第三の鉛直面部13e、13f、13gは各々、鉛直方向に延びる第一、第二および第三の平面部、の意味である。
【0050】
容器10Aの底部14Aの外表面(上底部の外表面)には、底部14Aから外側へ張り出した(鉛直方向の下方へ突出した)張出部215A(張出痕跡部)が存在している。この張出部215A(張出痕跡部)は、底部14Aの窪みの深さ(上底部の深さ)の範囲内に収まるように形成されている。容器10Aは上述の実施形態において説明した金型200とプリフォーム20とを用いて成形できる。当該張出部215Aは、プリフォーム20の張出部25が容器10Aの成形後に残ったものである。すなわち、容器10Aの張出部215Aには、プリフォーム20の張出部25と同様に、少なくとも突起部27が残っている(図示省略)。容器10Aを成形するためのプリフォーム20に設けられた張出部25は、プリフォーム20の中心軸上に設けられる。これにより、上述の金型200において延伸ロッド132でプリフォームを延伸して張出部25を挟持機構230で好適につかむことができる。よって、張出部215Aには、挟持機構230で挟まれた痕となる凹部が形成されている。また、プリフォーム20を曲げて成形される容器10Aの張出部215Aは、容器10Aの中心に設けられていなくても良い。例えば、容器10Aの底部の中心に対してオフセンター的に(中心からずれた位置で)設けられていても良い。なお、容器10Aの張出部215Aは外観を考慮して、例えば切除等により取り除いても良い(この場合も、張出部215Aが僅かながら残る)。容器10Aは、高さが10~20cm(好ましくは13cm±3cm)、幅が2~6cm(好ましくは3±1cm)、奥行きが3~10cm(好ましくは4±1cm)である。
【0051】
上記のように、容器10Aの胴部13Aを多角形状に形成することで、容器10Aの剛性度やグリップ性の向上が図れる。また、張出部215Aを底部14Aの窪みの深さの範囲内に収まるように形成することで、容器10Aの接地安定性も担保できる。
【0052】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0053】
上記の実施形態において傾斜角が略60°の首曲がり容器10の態様を説明したが、本実施形態の金型200及びブロー成形方法によれば、傾斜角が60°以上又は60°以下の容器であってもストレッチブロー成形において製造することが可能である。さらに、回動機構240の動作は回動だけでなく、水平移動や直線的・多段階的な斜め上方への移動で構成される動作であっても良い。
【0054】
上記の実施形態において、プリフォーム20をブローする加圧媒体として、空気を例として挙げたが、空気以外の気体媒体を用いてもよく、また水等の液体媒体を用いて加圧してもよい。
【0055】
なお、本願は、2018年7月17日付で出願された日本国特許出願(特願2018-134579)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【符号の説明】
【0056】
10:首曲がり容器、11:開口、12:首部、13:胴部、14:底部、20:プリフォーム、21:開口、22:首部、23:胴部、24:底部、25:張出部、26:ゲート部、27:突起部、100:ブロー成形装置、110:射出成形部、112:射出装置、120:温調部、130:ブロー成形部、132:延伸ロッド、140:取出部、150:搬送手段、152:ネック型、200:ブロー成形用金型、210:割型、220:底型、230:挟持機構、232:挟持部、233:爪部、234:開閉機構、236:収容部、240:回動機構、242:ガイド部、244:被ガイド部