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特許7390311溶解流体電極装置を管理するための装置、システム、及び、方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】溶解流体電極装置を管理するための装置、システム、及び、方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/39 20060101AFI20231124BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20231124BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H01M10/39 C
H01M10/39 A
H01M10/39 Z
H01M4/02 A
H01M4/38 Z
【請求項の数】 56
(21)【出願番号】P 2020563911
(86)(22)【出願日】2019-04-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 US2019027359
(87)【国際公開番号】W WO2019221861
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-04-08
(31)【優先権主張番号】15/982,497
(32)【優先日】2018-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520421950
【氏名又は名称】ビサーズ バッテリー コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビサーズ、ダニエル、アール
(72)【発明者】
【氏名】テノーリオ、マヌエル
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-229591(JP,A)
【文献】特開2015-153754(JP,A)
【文献】特表2016-539461(JP,A)
【文献】特表2011-524611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/05-10/0587
H01M10/36-10/39
H01M 4/00- 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項36】
前記起動手順の間、
前記選択された負極電極貯蔵部は、
加熱され、前記負極電極材料融点未満である負極電極貯蔵部初期温度から、前記負極 材料融点を超える負極電極貯蔵部動作温度まで、前記選択された負極電極貯蔵部内の負極電極材料をもっていき、及び、
前記選択された正極電極貯蔵部は、
加熱され、前記正極電極材料融点未満である正極電極貯蔵部初期温度から、前記正極 材料融点を超える正極電極貯蔵部動作温度まで、前記選択された正極電極貯蔵部内の正極電極材料をもっていく、請求項3に記載の装置。
【請求項56】
前記正極電極貯蔵部の総数は、少なくとも140である、請求項44に記載の電池システム。
【発明の詳細な説明】
【優先権主張】
【0001】
本出願は、発明の名称:溶解流体電極装置管理のための装置、システム、及び方法、出願日2018年5月17日、代理人整理番号VBC0006であり、及び、ここに、完全な形で、参照によって組み入れられる米国特許出願番号15/982,497号に関する優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般に、熱電池に関し、より詳細には、溶解流体電極を有する装置を管理するための方法、装置、及び、システムに関する。
【背景技術】
【0003】
電池は、一般に、正極(カソード)、負極(アノード)、及び、電解質を有する。電池は、典型的には、電池の端子に電気的な流れを方向付ける電流コレクタを、電極に、有している。電極材料を加熱することによって、電極の一方または両方が流体状態に維持される電極用の流体を使用する試みがなされてきた。これらの電池は、熱電池、又は、高温電池と呼ばれることがあり、及び、例えば、液体-金属電池、及び、再充電可能な液体-金属電池と呼ばれることがある装置を含んで切る。残念ながら、数十年の研究、及び、開発では、例えば、ナトリウム、及び、硫黄、又は、リチウム、及び、硫黄のような高重量エネルギー密度(kWh/kg)の電気化学的結合を用いる安全で信頼性の高い熱電池は、製造されていない。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図面は、単に例示のためのものであり、添付の特許請求の範囲を限定するものではないことを理解すべきである。さらに、図面中の構成要素は、必ずしも縮尺どおりではない。図面において、同様の参照番号は、異なる図面全体を通して対応する部品を示す。
【0005】
図1】少なくとも反応チャンバ、複数の負極貯蔵部、複数の正極貯蔵部、電極材料分配システム、加熱システム、及び、制御部を有する流体電極装置のブロック図である。
【0006】
図2】硫黄電極材料を収容するための複数の正極材料貯蔵部に接続された単一の反応チャンバと、リチウム電極材料を収容するための複数の負極材料貯蔵部とを含む単セル電池システムの一例を示す図である
【0007】
図3】反応チャンバ、複数のリチウム電極材料貯蔵部、及び、複数の硫黄電極材料貯蔵部が垂直に積層された、平面的な四角柱である単一セル電池システムの正面図である。矩形プリズム
【0008】
図4】各反応チャンバが複数のリチウム電極材料貯蔵部、及び、複数の硫黄電極材料貯蔵部に接続される、複数の反応チャンバを有する複数セル電池システムの一例のブロック図である。
【0009】
図5】リチウム電極材料貯蔵部、反応チャンバ、及び、硫黄電極材料貯蔵部が平面的であり、及び、垂直に積層されている、2つの反応チャンバを有する複数セル電池システムの一例の正面図である。
【0010】
図6】リチウム電極材料貯蔵部、反応チャンバ、及び、硫黄電極材料貯蔵部が平面的であり、及び、垂直に積層されている、14個の反応チャンバを有する複数セル電池システムの一例の斜視図である。
【0011】
図7A】複数セル電池システムの反応チャンバ、リチウム電極材料貯蔵部、及び、硫黄電極材料貯蔵部の平面図である。
【0012】
図7B】1つの反応チャンバの一部の断面側面を示す図である。
【0013】
図7C】1つのリチウム電極材料貯蔵部の一部の断面側面を示す図である。
【0014】
図7D】1つの硫黄電極材料貯蔵部の一部の断面側面を示す図である。
【0015】
図8】複数セル電池システムを管理する方法の一例を示すフローチャートである。
【0016】
図9】電池起動手順を実行する方法の一例を示すフローチャートである。
【0017】
図10】電池シャットダウン手順を実行する方法の一例を示すフローチャートである。
【0018】
図11】電池システムの放電中に、電極材料の流れ、及び、加熱システムを管理する方法の一例を示すフローチャートである。
【0019】
図12】電池システムの充電中に、電極材料の流れ、及び、加熱システムを管理する方法の一例を示すフローチャートである。
【0020】
図13】電池システムにおけるポンプの管理方法の一例を示すフローチャートである。
【発明の詳細な説明】
【0021】
【実施例1】
【0022】
熱電池は、他の種類の電池よりもいくつかの利点を有している。熱電池(高温電池)の比較的低コスト、高エネルギー密度、及び、高出力密度によって、これらのタイプの電池は、いくつかの用途に対して非常に魅力的になる。残念ながら、これらのデバイスに対する安全性の問題は、強制的に広く取り上げられている。それらの高エネルギー化学のために、熱電池は、火災、及び、爆発という危険リスクに悩まされてきた。従来の熱電池設計は、第3の材料によって分離される流体(すなわち、溶解)材料の2つのプールを有している。第3の材料が、故障し、及び、溶解した材料が混合し、及び、反応することを許してしまった場合、大量の熱エネルギーが、短時間で放出される。これらの状態は、しばしば、危険な火災状態、又は、爆発をもたらす。この厳しい制限は、今日、依然として継続しているが、安全な熱電池の需要は、第2次世界大戦中の発端以来、存在し続けてきた。数十年の試みでは、この問題に対する適切な解決策はもたらされなかった。例えば、いくつかの試行には、重力フロー電池設計を使用することが含まれており、重力フロー電池設計では、溶解した活物質の1つは、反応チャンバの壁が固体電解質である、より小さな反応チャンバの上方に物理的に位置する大きな貯蔵部に含まれる。個体電解質の反対側には、他の溶解した活物質の大きな貯蔵部がある。固体電解質が故障し、及び、2つの溶解した活物質が混合を許される場合には、2つの溶解した活物質の混合の化学反応によって形成される固体生成物が、他の溶解した活物質の他の大きな貯蔵部とともに、物理的に上に位置する大きな貯蔵部からの活物質の流れを制限することが、期待される。重力フロー電池設計の試行が失敗するのは、上部の貯蔵部からの流れを遮断するように意図された固体反応生成物が、熱電池の動作温度において十分に急速に合体しないからである。したがって、2つの溶解した活物質の混合は、この設計によって鈍化されるだけであり、及び、熱暴走事象の防止には不十分である。他の試行には、溶解した活物質の化学を、固体電解質の故障が熱暴走事象を引き起こさないような金属ハロゲン化化学へ変更することが含まれる。残念ながら、この技術は、特定のエネルギー密度(kWh/kg)、及び、体積エネルギー密度(kWh/l)を低減する全てのコストを、熱電池が多くの用途のための実行可能な解決策ではない点までもっていってしまう。
【0023】
熱電池における研究は、高い危険性のために、断念されてきた。例えば、主要な自動車製造業者は、1993年に、熱ナトリウム-硫黄電池を使用した電気自動車のフリートを開発した。試験中に、2つの車両が、充電中に爆発し、炎に包まれた。これらの火災の結果、製造者は、その熱ナトリウム-硫黄電池プログラムを終了し、及び、米国エネルギー省は、熱電池研究の資金供給を停止した。これは、安全な熱電池が、他の産業と同様に、電気自動車産業に提供するであろう多大な利点にかかわらなかった。熱電池が相対的に軽量で、及び、低コストであることは、火災のリスクが軽減されるならば、明らかに、これらの装置を、電気自動車での使用のための最良の選択にする。
【0024】
本明細書に記載された技術によれば、熱電池のための火災のリスクは、電池内の任意の1つの時間に存在する流体、又は、溶解した材料の量を制限することによって、最小化される。固体電極材料の一部のみが、流体状態に加熱される。残りの非流体、固体材料の部分は、電池内で構造的な故障が生じても、結合し、及び、反応するリスクがない。固体電解質中の割れ目による流体材料の反応から放出される熱エネルギーは、反応チャンバ内の流体材料の量を制限すると共に、電池内に存在する流体材料の量を制限することによって、最小化される。電池内の電極材料は、少なくとも1つの反応チャンバと複数の貯蔵部との間に分配される。加熱システムは、反応チャンバ、及び、貯蔵部に、選択的に、制御される一方、電極分配機構は、電池内で構成要素間の流体電極材料を管理する。以下に述べる実施例では、制御部は、パラメータを監視し、及び、加熱システム、電極材料分配システム、及び、熱暴走緩和システムを制御して、電池の安全な、及び、効率的な動作を管理する。
【0025】
本明細書で検討されるように、材料が、十分に液化された濃度を有し、1つの領域から他の領域へと流れることが許容されるとき、材料は流体状態にある。言い換えると、流体材料の粘度は、材料が、方向付けられ、ポンピングされ、又は、他の点では、1つの領域から他の領域へ流れることができるようなものである。しかしながら、流体材料は、少なくとも部分的に固体である一方、他の部分は液相にあるいくつかの構成要素を有している。結果として、流体材料は、必ずしも、全て液相にある必要はない。本明細書で検討されるように、材料は、それが流れないように十分に固化されている非流体状態にある。換言すれば、非流体状態における材料の粘度は、材料が、方向付けられ、ポンピングされ、又は、他の点では、1つの領域から他の領域へ流れることができないようなものである。しかしながら、非流体材料は、固相にある他の構成要素と同様に、液相中にあるいくつかの構成要素を有してもよい。材料が流体状態にあるとき、それは流体であり、及び、材料が非流体状態にあるとき、それは非流体である。本明細書で説明する実施例では、電極材料は、加熱によって非流体状態から流体状態に移行し、及び、溶解した電極材料、及び、溶解した流体電極材料として参照され得る。
【0026】
以下に説明する例では、電池は、固体電解質によって分離された流体電極を有し、電池に含まれる電極材料の選択された部分のみが、加熱され、流体状態の中にその電極材料の部分を配置し、及び、維持する反応チャンバを有する。電池内の総負極電極材料は、電池の、複数の負極電極材料貯蔵部と反応チャンバの負極電極領域との間に分布し、総正極電極材料は、複数の正極電極材料貯蔵部と反応チャンバの正極電極領域との間に分布している。制御部は、加熱システム、及び、電極材料分配システムを制御し、電池内の電極材料の温度、及び、流れを管理する。以下にさらに詳細に説明するように、各電極材料貯蔵部は、独立して制御され、選択された温度で、及び、適切な状態に、貯蔵部内の電極材料を維持する。電極材料分配システムは、制御部が反応チャンバ、及び、貯蔵部に、及び、から電極材料を方向付けることを可能にする、任意の数のポンプ、バルブ、及び、チャネルを有してもよい。いくつかの状況では、電極材料は、貯蔵部間で移送される。本明細書の例では、正極電極材料は、放電、又は、充電電流が閾値を超えている間に、反応チャンバの正極電極領域と1つ以上の正極電極材料貯蔵部との間で、連続的に、循環される。多くの状況では、放電、又は、充電電流が閾値を下回っているならば、正極電極材料を循環させる必要はない。負極電極材料は、電池の放電中に、1つ以上の選択された負極電極材料貯蔵部から反応チャンバの負極電極領域に送られ、及び、電池の充電中に、貯蔵部に戻される。加熱システムは、各貯蔵部を独立して加熱、及び、冷却され得るように構成される。加えて、熱回収、及び、熱再生技術を、効率のために、用いてもよい。
【0027】
図1は、反応チャンバ102、複数の負極電極貯蔵部104、106、108、複数の正極電極貯蔵部110、112、114、電極材料分配システム115、加熱システム116、及び、制御部117を少なくとも有する流体電極装置100のブロック図である。装置100は、電池セルを形成してもよく、電池の一部であってもよく、及び/又は、電池システムの一部であってもよい。例えば、装置100に従って実装されたいくつかの構造体を接続して、マルチセル電池システムを形成できる。図1の図示は、例の一般的な原理を示しており、及び、必ずしも、表された構成要素の特定の形状、相対的な大きさ、距離、又は、他の構造的な細部を示すものではない。いくつかの状況では、2つ以上のブロックの構造は、単一の構成要素、又は、構造で実装されてもよい。さらに、図1の単一のブロックで実行されるように説明される機能は、分離構造で実施されてもよい。
【0028】
加熱システム116は、少なくとも1つの負極電極貯蔵部、及び、少なくとも1つの正極電極貯蔵部を加熱して、これらの選択された貯蔵部104、110内に収容された材料を流体状態に配置し、及び、維持する。したがって、装置100は、材料の一部が非流体状態にあり、及び、材料の一部が流体状態にある負極電極材料118を有している。本明細書で検討されるように、装置100に含まれる総負極電極材料は、負極電極材料118として参照され、流れることができない非流体状態の総負極電極材料118の部分は、非流体負極材料120として参照され、及び、流れることができる流体状態の総負極材料118の部分は、流体負極電極材料124として参照される。装置100は、また、材料126の一部が非流体状態にあり、及び、材料126の一部が動作中に流体状態にある正極電極材料126を有している。本明細書で論じるように、電池に含まれる総正極電極材料は、正極電極材料126として参照され、非流体状態にあり、及び、流れない正極電極材料126の部分は、非流体正極電極材料128として参照され、及び、流れることができる流体状態の正極電極材料126の部分は、流体正極電極材料130として参照される。
【0029】
反応チャンバ102は、固体電解質136によって分離された負極電極領域132、及び、正極電極領域134を有している。複数の負極電極貯蔵部104、106、108は、負極電極材料が流体状態にあるときに、貯蔵部104、106、108に含まれる負極電極材料が貯蔵部と負極電極領域132との間を流れることができるように、負極電極領域132に接続されている。複数の正極電極貯蔵部110、112、114は、正極電極材料が流体状態にあるときに、貯蔵部110、112、114に含まれる正極電極材料が貯蔵部と正極電極領域132との間を流れることができるように、正極電極領域134に接続されている。電池100の動作中、負極電極領域132は、流体負極電極材料124を含み、及び、正極電極領域134は、流体正極電極材料130を含んでいる。さらに詳細に後述するように、正極電極領域134は、装置100の通常動作から生じるいくつかの反応生成物を含んでもよい。負極電極領域132内の流体負極電極材料124は、装置100の流体負極電極138を形成する。正極電極領域134内の流体正極材料130は、装置100の流体正極電極140を形成する。各電極138、140に適切に配置された電流コレクタ(図示せず)とともに、各電極138、140において、固体電解質136を介して流体負極電極138と流体正極電極140との間で、装置内で反応が生じ、及び、その電気化学反応から、電気エネルギーを利用できる。電気エネルギーを電流コレクタに印加して、装置100を充電することによって、この反応を、逆転できる。したがって、図1の例における反応チャンバ102の動作は、 従来の熱電池、及び、流体電極を有する電池の動作と類似のものとなる。しかしながら、従来の熱電池を超える実施例の重要な利点は、流体状態にある電極材料の量を制限し、それによって構造的故障の間の火災の可能性を最小にすることを含んでいる。例えば、固体電解質中の割れ目が生じても、望ましくない化学反応に利用できる負極電極領域132内の流体負極電極材料の量、及び、正極電極領域134内の流体正極電極材料の量を制限するように、反応チャンバ102を構成できる。流体電極の直接的な化学反応によって生成される熱エネルギーの量は、反応チャンバ102内の各流体電極の材料量に、直接的に、比例し、及び、反応チャンバ102の各電極領域132、134の体積に、直接的に、比例する。したがって、1つの有利な設計の目的は、反応チャンバ102内の電極領域132、134の体積を最小化することによって、電極領域132、134内の流体電極材料の量を最小化することを含む。いくつかの状況では、化学反応における反応物質の1つを制限することが化学反応全体を制限するため、電極領域の1つのみを制限することによって、望ましくない化学反応に起因する熱エネルギーの量を最小化できる。
【0030】
装置の安全性を高めるために、固体の脆弱でない電解質を使用できる。加えて、固体電解質は、固体電解質を介して安全性、及び、イオン移送特性を向上するための強化構造を含んでもよい。このような固体電解質の例は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる米国特許出願番号15/982,480、発明の名称「改善されたリチウムイオン移送特性を有する個体ヨウ化リチウム電解質を有する溶解流体電極装置」、代理人整理番号VBC003、出願日2018年5月17日に開示されている。
【0031】
加熱システム116は、選択された貯蔵部を選択的に加熱することを可能にするいくつかの部分を有している。例えば、加熱システム116は、複数の負極電極貯蔵部104、106、108の選択された貯蔵部のそれぞれを独立に加熱するように構成された複数の負極材料加熱システム部142、144、146、及び、複数の正極電極貯蔵部110、112、114の選択された貯蔵部のそれぞれを独立に加熱するように構成された複数の正極材料加熱システム部148、150、152、を有している。加熱システム116は、また、電極138、140が流体状態にある動作温度に反応チャンバ102を維持するように構成された反応チャンバ部154を有している。加熱システム116の負極分配加熱部160は、負極材料分配機構158を加熱し、及び、加熱システム116の正極分配加熱部162は、正極材料分配機構156を加熱する。図1の例では、加熱システム116は、加熱された熱伝導流体を、1つ以上の加熱器と加熱される装置内の構成要素との間で移動させる加熱コイル、又は、導管のネットワークを有している。非流体状態に電極材料を維持するために十分に低い温度に、選択されていない貯蔵部を維持する一方、選択された貯蔵部の加熱を促進し、加熱熱伝導流体を適切な位置に方向付けるために、バルブ、及び、ポンプを利用できる。しかしながら、他の加熱システムを利用できる。例えば、加熱システム116は、選択されていない貯蔵部を非流体状態に維持するのに十分に低い温度に維持しながら、選択された貯蔵部の加熱を促進にするいくつかの電気加熱素子を有する電気加熱システムであってもよい。いくつかの状況では、選択されていない貯蔵部は、周囲温度よりもかなり低い温度に維持される。このような技術は、周囲温度よりも低く電極材料を冷却するために必要とされる追加のエネルギーによる効率の低下のコストで安全性を高めてもよい。1つ以上の選択された貯蔵部は、活動貯蔵部が、反応チャンバに接続され、及び、電極材料が活動貯蔵部から反応チャンバに流れることが許容される貯蔵部である活動貯蔵部として構成され得る。したがって、本明細書で説明するように、選択された貯蔵部は、電極材料を流体状態に配置し、及び、維持するように加熱される貯蔵部であり、活動貯蔵部は、反応チャンバ102に動作可能に接続もされた選択された貯蔵部である。
【0032】
図1に示す状況では、第1の負極電極貯蔵部104、及び、第1の正極電極貯蔵部110は、第1の負極材料加熱システム部142、及び、第1の正極材料加熱システム部148によって、それぞれ、加熱される。したがって、選択されている貯蔵部は、第1の負極電極貯蔵部104、及び、第1の正極電極貯蔵部110を含み、選択されていない貯蔵部は、第2の負極電極貯蔵部106、第3の負極電極貯蔵部108、及び、第2の正極電極貯蔵部112、第3の正極電極貯蔵部114を含む。図1では、 選択されていない負極電極貯蔵部106、108に関連する負極加熱システム部144、146は、クロスハッチで示される一方、選択されている負極電極貯蔵部104に関連する負極加熱システム部142は、明るい背景で示され、負極加熱システム部142が、選択された負極電極貯蔵部104を加熱していることを示す。同様に、選択されていない正極電極貯蔵部150、152に関連する正極加熱システム部150、152は、クロスハッチで示される一方、選択されている正極電極貯蔵部110に関連する正極加熱システム部148は、明るい背景で示され、正極加熱システム部148が、選択されている正極電極貯蔵部110を加熱していることを示す。2つの選択されている貯蔵部は、また、実施例における活動貯蔵部である。流体正極材料130は、正極電極貯蔵部110とチャンバ102の正極電極領域134との間を流れる。したがって、3つの負極電極貯蔵部のうちの1つだけ、及び、3つの正極電極貯蔵部のうちの1だけが、加熱されて、追加の流体電極材料が必要とされるまで、選択された貯蔵部内に、流体状態に、材料を配置し、及び、維持する。流体状態に電極材料を配置し、及び、維持するために加熱される貯蔵部の数が、特定の電極材料を含む貯蔵部の総数よりも少なければ、任意の数の貯蔵部を含んでもよく、及び、任意の数を加熱してもよい。一例では、以下に説明するように、20個の負極電極材料貯蔵部、及び、10個の正極電極材料貯蔵部が1つ反応チャンバを支持する。1つ正極電極材料貯蔵部、及び、1つの負極電極材料貯蔵部が加熱され、電極材料を流体状態に維持し、流体電極材料を反応チャンバに供給する。新しい貯蔵部を現在の活動貯蔵部の1つに切り替える遷移点が近づくと、電極材料の供給を中断することなく、新しい貯蔵部を切り替えできるように、新たな貯蔵部を加熱し、電極材料を流体状態に配置し、及び、維持する。いくつかの状況では、必要に応じて、追加の流体電極材料を反応チャンバに供給する準備のために、活動貯蔵部に加えて、バックアップの貯蔵部を継続的に加熱してもよい。しかしながら、このような実装は、安全性、及び、効率性に影響を与える可能性がある。
【0033】
加熱される負極電極貯蔵部の数よりも、異なる数の正極婉曲貯蔵部を加熱してもよい。さらに、十分に加熱され、流体状態にこれらの貯蔵部に材料を配置し、及び、維持する選択された貯蔵部に加えて、他の貯蔵部を加熱するが、材料が溶解し、及び、流体になり始める温度よりも低い温度に維持してもよい。いくつかの状況では、十分に加熱され、流体状態にこれらの貯蔵部に材料を配置し、及び、維持する選択された貯蔵部に加えて、他の貯蔵部を加熱するが、材料が溶解し、流体になり始めるが、十分に冷えて、危険でない状態にできる温度、又は、それ以上の温度に維持してもよい。例えば、いくつかの待機リチウム電極材料貯蔵部を、華氏600度(摂氏315度)付近の温度に維持してもよい。これらの温度における溶解リチウムは、空気中で安定であるという兆候がある。従って、華氏600度、又は、以下のリチウム電極材料貯蔵部は、リチウムが溶融しているが、より高温のリチウム貯蔵部よりも安全である。その結果、従来のシステムよりも安全である溶解電極装置の一例は、装置内の総電極材料の一部を反応チャンバの動作温度より低い温度で流体状態に維持することを含む。装置100を実装するために、多数の構成、サイズ、及び、温度スキームを利用できる。したがって、正極電極貯蔵部は、負極電極貯蔵部とは異なるサイズ、数、形状、及び、温度を有してもよい。さらに、各正極電極貯蔵部の大きさと形状は、他の正極電極貯蔵部と同じであってもよく、又は、異なっていてもよく、及び、負極電極貯蔵部の各々のサイズおよび形状は、他の負極電極貯蔵部と同じであってもよく、又は、異なっていてもよい。
【0034】
装置100の動作中、制御部117は、電極材料分配システム115、加熱システム116、及び、センサ、及び、他のソースから受信されたデータに基づくその他のメカニズムを管理する。制御部117は、装置の全体的な機能性の促進と同様に、本明細書に記載された機能を管理する任意の制御部、プロセッサ、電気回路、論理回路、処理回路、電子機器、又は、プロセッサ構成である。制御部117は、電極材料分配システム115に制御信号を供給し、貯蔵部と反応チャンバとの間の流体電極材料の流れを管理する。制御部117は、例えば、流体電極分配システム115のバルブ、モータ、及び、ポンプなどの構成要素に制御信号を送信し、装置100の放電、及び、充電サイクル中に活動貯蔵部を選択し、及び、切り替えてもよい。制御部117は、選択された貯蔵部を加熱する時、適切な加熱された貯蔵部を反応チャンバに接続し、流体電極材料の流れを管理する時を決定する。言い換えると、制御部117は、加熱システム116、及び、流体電極材料分配システム115を制御し、選択された貯蔵部を加熱し、及び、反応チャンバへの活動貯蔵部の接続を管理する。
【0035】
流体電極材料分配システム115は、流体正極材料を管理する正極材料分配機構156、及び、流体負極材料を管理する負極材料分配機構158を有している。本明細書の例では、正極材料分配機構は、正極電極領域134と活動正極電極貯蔵部110との間で、流体正極材料を循環させる。反応生成物の濃度が、第1の正極放電閾値に達すると、制御部117は、他の(第2の)正極電極貯蔵部112を加熱する。他の技術を使用してもよいが、制御部117は、活動貯蔵部110の正極電極材料の体積に基づいて第1の正極放電閾値に達したか否かを判断する。いくつかの状況では、体積は、直接的に検出される一方、他の状況では、体積は、1つ以上のパラメータに基づいて計算される。装置が放電されると、負極電極領域132内の負極電極材料は、固体電解質を通って移動し、流体正極電極と反応し、及び、反応生成物を生成する。したがって、循環される流体正極材料の体積は、装置が放電されるにしたがって、増加する。体積が特定の値に達したと判断することによって、制御部117は、第1の正極閾値に達したと判断する。制御装置117は、正極電極材料機構115を制御し、制御装置が第2の正極放電閾値に達したと判定したときに、新たな加熱された正極電極材料貯蔵部を接続(スイッチイン)し、活動正極電極貯蔵部を切断(スイッチアウト)する。一例では、第2の正極放電閾値は、循環される流体正極電極材料の特定の反応生成物の濃度に、少なくとも部分的には、基づいている。大部分の状況における特定の反応生成物濃度は、完全に放電された正極電極材料に関連する反応生成物であり、及び、装置に関して確立された最大値である。例えば、特定の反応生成物の濃度は、かなりの量の固体反応生成物を含む濃度よりも低い濃度であってもよい。
【0036】
少なくとも一部の実施例では、制御部117は、循環される流体正極電極材料の体積に基づいて、第2の正極放電閾値に達したか否かを判定する。正極電極貯蔵部のセンサを使用して、流体正極電極材料の体積を判定できる。例えば、貯蔵部を横切る静電容量を測定、又は、少なくともその電荷を検出するセンサを、各貯蔵部内に、1つ以上の選択されたレベルに配置できる。静電容量は、電極材料が存在しない場合と比較して、正極電極材料が配置されている場合、2つのセンサ間で異なるため、貯蔵部内の正極電極材料が、そのレベルにおける正極電極材料の存在を示す静電容量に基づいて、少なくとも特定のレベルにあると判定できる。他の種類のセンサを用いて、体積を判定できる。一例には、容積を、閉鎖システムの圧力から決定できるため、圧力センサの使用が含まれる。他の例では、制御部は、電流センサから測定された電流を積分し、貯蔵器が活動された時点から移送される総電荷を計算し、流体正極電極材料の特定の体積増加に相当する流体正極電極材料の平均反応生成物を判定する。流体負極電極材料の平均反応生成物の判定を用いて、トリガ閾値が満たされたか否かを判定できる。さらに別の例では、セル電圧と平均反応生成物との間に既知の関係があるため、反応チャンバを横切る電圧を用いて、流体負極電極材料における平均反応生成物を判定する。したがって、反応チャンバを横切る電圧は、トリガ閾値が満たされたか否かを判定するために利用される。
【0037】
ここでの実施例では、負極材料分配機構158は、装置の放電中に、必要に応じて、負極電極領域132に流体負極電極材料を供給する。装置が放電されると、流体負極電極材料は、固体電解質136を通って移動する。消費された流体負極電極材料は、活動負極材料貯蔵部104からの流体負極電極材料で補充される。活動負極電極材料貯蔵部104の負極電極材料の体積が第1の負極放電閾値に達すると、制御部117は、加熱システム116を制御し、新しい負極材料貯蔵部を加熱する。制御部117は、負極材料機構158を制御し、制御部117が、第2の負極閾値に達したと判断したときに、新たに加熱された負極電極材料貯蔵部106を接続(スイッチイン)し、及び、現在の活動負極電極貯蔵部104を切断(スイッチアウト)する。いくつかの状況では、活動貯蔵部、及び、新しい貯蔵部の両方を、切り替え期間中に、反応チャンバの負極電極領域に接続してもよい。制御部117は、加熱システム116を制御し、反応チャンバ102から切り離された貯蔵部の加熱を停止する。センサを利用し、負極電極材料貯蔵部の負極電極材料のレベルを判定できる。一例には、負極電極材料が特定のレベルで存在するときに、より高い導電率が測定される、貯蔵部内のそのレベルで2点間の導電率を測定することが含まれる。他の技術も利用ができる。上述のように、圧力、電流、移送された総電荷、静電容量に関連するパラメータを利用できる。
【0038】
装置は、電流コレクタに電圧を印加し、及び、電力を供給することにより、充電される。充電手順の間、電流コレクタを横切る電位によって、結果として、反応チャンバの正極電極領域内の正極電極材料から負極電極材料イオンが放出される。負極電極材料イオンは、固体電解質を通って、反応チャンバの負極電極領域に移動する。負極電極材料は、負極電極材料貯蔵部に方向付けられ、貯蔵部を補充する。負極電極材料貯蔵部が容量まで充填されると、空であるか、又は、少なくとも利用可能な容量を有する待機中の負極電極材料貯蔵部が接続され、及び、充填された貯蔵部が、切断される。負極電極材料が正極電極材料から放出されると、正極電極材料内の負極電極材料の濃度が低下する。例えば、リチウムと硫黄との電気化学的な結合を使用する装置において、2Liは、2個のLiイオンが移動させられると、Liになることができる。正極電極材料は、反応チャンバの正極電極領域と正極電極材料貯蔵部との間で循環しているので、正極電極材料内の負極電極材料の濃度も、充電工程の間、活動正極電極材料貯蔵部で減少していく。濃度レベルが、許容可能な閾値に達すると、電極材料分配システムは、待機正極電極材料貯蔵部を接続し、及び、今や、正極電極材料中の負極電極材料の濃度が低くなった現在の活動正極電極材料貯蔵部を切り離す。正極電極材料中の負極電極材料に関して相対的に高い濃度を有する待機正極電極材料貯蔵部は、新しい活動正極電極材料貯蔵部になる。充電プロセスは、全ての負極電極材料貯蔵部が充填され、及び、全ての正極電極材料貯蔵部が、閾値を下回る正極電極材料内の負極電極材料の濃度を有するまで継続する。
【0039】
溶解流体電極装置100は、異なる材料、及び、電気化学結合を用いて実施されてもよい。図2を参照して後述する例では、負極電極は、リチウム(Li)を含み、及び、正極電極は硫黄(S)を含む。他の例では、ナトリウム-硫黄(Na-S)電池は、ナトリウム(Na)を有する流体負極電極、及び、硫黄(S)を有する流体正極電極を有する。さらに、他の材料を電極に利用してもよい。さらに、電極材料は、いくつかの状況では、複数の元素を含む混合物、又は、化合物を有してもよい。例えば、 溶解リチウム負極電極を有するいくつかの電池では、硫黄とリンとの溶融混合物を、流体正極電極として利用できる。
【0040】
貯蔵部、負極電極領域、正極電極領域、及び、流体電極材料分配システムの動作温度、又は、温度範囲を、例えば、負極電極材料の融点、正極電極材料の融点、負極電極材料の沸点、及び、正極電極材料の沸点、正極電極材料と結果としての化学種との共晶点、及び、固体電解質の融点を含むいくつかの要因に基づいて、選択できる。本明細書で説明する実施例では、加熱システム116は、選択され、及び、活動している貯蔵部、反応チャンバ102、及び、流体電極材料分配システム115を同じ温度に維持する。いくつかの状況では、しかしながら、選択された貯蔵部、反応チャンバ、及び、流体電極材料分配システムは、異なる温度に維持されてもよい。例えば、選択された負極貯蔵部は、負極電極材料の融点よりも高いが、ほとんど同じ温度に維持されてもよく、選択された正極貯蔵部は、正極材料の融点、及び、反応チャンバの温度よりも高いが、ほとんど同じ温度に維持されてもよく、及び、流体電極材料分配システムは、両方の電極材料の融点よりも高い温度に維持されてもよい。典型的には、正極電極領域134の温度は、固体電解質136を横切る温度勾配を避けるために、負極電極領域132と同じ温度に維持される。いくつかの状況では、しかしながら、温度は異なっていてもよい。
【0041】
図2は、硫黄正極電極材料を収容するための複数の正極電極材料貯蔵部110、112、114、及び、リチウム負極電極材料を収容するための複数の負極電極材料貯蔵部104、106、108に接続される1つの反応チャンバ102を含む単一セル電池システム200を示す図である。本明細書で検討されるように、硫黄正極電極材料は、硫黄を有し、及び、各反応生成物の濃度が、硫黄正極電極材料貯蔵部に接続される電池の充放、及び、放電段階中に変化する他の反応生成物を有してもよい。硫黄正極電極材料は、また、いくつかの状況では、他の材料を有してもよい。リチウム負極電極材料は、リチウムを含み、及び、他の材料を有してもよい。図2の例では、 単一セル電池システム200は、図1を参照して説明した装置100に係る構成を有する。したがって、単一セル電池システム200は、流体電極装置100の一例である。図4図5、及び、図6を参照してさらに詳細に説明するように、複数の単一セル電池システム200を直列、又は、並列に接続し、複数セル電池システムを形成してもよい。図2は、本実施例の一般原理を示し、及び、表されている構成要素の特定の形状、相対的な大きさ、距離、又は、他の構造的な詳細を、必ずしも表すものではない。図2は、システム200のいくつかの構造的な、寸法的な、配向的な、及び、位置的な態様を反映しているが、図は、必ずしも縮尺どおりではなく、及び、必ずしも単一セル電池システム200の全ての特徴を表すものではない。いくつかの状況では、2つ以上のブロックの構造は、1つの構成要素、又は、構造で実装されてもよい。さらに、図2の1つのブロックで実行されるように説明された機能は、いくつかの状況では、離れた構造で実施されてもよい。
【0042】
異なる固体電解質材料、及び、構造を利用できるが、固体電解質は、図2の例のためのヨウ化リチウム(LiI)を有し、及び、強化構造を有している。ヨウ化リチウム固体電解質のための適切な技術、及び、構造の例は、上記で参照された米国特許出願番号XX/XXX,XXX、発明の名称「改善されたリチウムイオン輸送特性を有する個体ヨウ化リチウム電解質を有する溶解流体電子装置」に開示されている。参照された特許出願に記載されているように、固体電解質は、複数のリチウムカチオン、複数のヨウ化アニオン、及び、複数の欠陥を有するヨウ化リチウム格子を有することができる。
【0043】
欠陥は、固体電解質とナノ粒子との界面に結晶粒界欠陥を形成する、固体電解質へ複数のナノ粒子を導入することにより、固体電解質の複数のナノ粒子の存在によって維持され、又は、固定される固体電解質合成プロセスにより、又は、固体電解質に異原子価のイオンを導入することにより、結果として、生ずる可能性がある。
【0044】
図2の例は、単一セル電池システム200を形成するいくつかの構成要素を含み、そこでは、全ての構成要素は、真空密閉された主ハウジング202に封入され、及び、いくつかの構成要素は、真空密閉された個々のハウジング204~211にも封入される。反応チャンバ102は、反応チャンバハウジング204に封入される。各正極電極材料貯蔵部110、112、114は、正極貯蔵部ハウジング205~207に封入され、及び、各負極電極材料貯蔵部104、106、108は、正極貯蔵部ハウジング208~210に収容される。以下に説明するように、いくつかのハウジンを、いくつかの状況において、省略できる。ハウジングは、真空下の内部を有するが、ハウジングを、いくつかの状況では、アルゴンのような不活動ガスで満たすことができる。また、他の状況では、内部を空気で満たしてもよい。一般に、ハウジングの内部圧力は、互いに異なっていてもよく、及び、周囲圧力と異なっていてもよい。
【0045】
本実施例では、負極電極材料118は、リチウム(Li)を含み、正極電極材料126は、硫黄(S)を含み、及び、固体電解質136は、ヨウ化リチウム(LiI)を含む。したがって、図2の例では、反応チャンバ102は、リチウム-硫黄(LiI)セル、又は、LiS反応チャンバとしてされ、及び、流体負極電極138は流体リチウムを含み、及び、流体正極電極140は動作中に流体硫黄を含む、図1を参照して説明した反応チャンバ102の一例である。いくつかの状況では、他の材料が、流体電極内に存在してもよい。流体正極電極140は、例えば、リチウム-硫黄反応生成物を含んでもよい。
【0046】
LiS単一セル電池システム200の動作は、図1の装置100を参照して説明した動作に従う。第1の電流コレクタ212を、流体負極電極138に配置し、及び、第2の電流コレクタ214を、流体正極電極140に配置する。各電極138、140に適切に配置された電流コレクタ212、214によって、固体電解質136を介して、流体負極電極138と流体正極電極140との間のセル内で発生する電気化学反応から、電気エネルギーを利用できる。導電体216、218は、単一セル電池システム200を有する主ハウジング202内で、電流コレクタ214、212をセル構成ネットワーク220へ接続する。
単一セル電池システム200が、複数セル電池システム200の一部であるセル構成ネットワーク220は、また、主ハウジング202内で、他の単一セル電池システムからの導電体に接続される。セル構成ネットワーク220は、導電体216、218、及び、複数セル電池システムを形成する他の単一セル電池システムの導電体の間の接続を管理する。セル構成ネットワーク220は、(図2に示されていない)複数セル電池システムのセルのイン、及び、アウトを切り替える電子機器を有し、複数セル電池システムのパフォーマンス、及び、安全性を最大化する。例えば、セル構成ネットワーク220は、セルが不十分なパフォーマンス、低電圧、又は、他の問題のある症状を示す複数セル電池システムから、セルを切り離してもよい。セル構成ネットワーク220は、主ハウジング202の外部に配置される電池構成ネットワーク222に接続される。電池構成ネットワーク222は、2つ以上の複数セル電池システムからの電池出力を接続し、及び、結合された出力を負荷に供給する。単一セル電池システム200が他の単一セル電池システムに接続されていない場合には、セル構成ネットワーク220を省略できる。いくつかの状況では、電池構成ネットワーク222を省略できる。電池構成ネットワーク222は、典型的には、セル構成ネットワーク220よりも大きな電流を扱う。その結果、電池構成ネットワーク222内の電気的スイッチング素子、及び、関連する電気的相互接続は、より大きな電流、及び、関連する放熱を扱うように設計されなければならない。したがって、電池構成ネットワーク222の適切な位置は、真空ハウジング202の外側である。
【0047】
制御部117を含む他の電子機器224は、主ハウジング202内に実装される。電子機器224は、単一セル電池システム200の動作を管理し、及び、加熱システム116、及び、電極材料分配システム115の構成要素に、(図2に示されない)センサと同様に、接続される。明確化の点で、図2は、電子機器224と他の構成要素との間の相互接続を示しておらず、及び、加熱システム116の部分を示していない。電子機器224が、1つの電池システム、及び/又は、複数の電池システムの複数のセルを管理する場合、いくつかの状況では、少なくともいくつかの他の電子機器を、ハウジング202の外部に配置してもよい。このような技術は、ハウジング内の追加の配線、及び、真空フィードスルーを含むコストの点で、電子部品を効率的に使用するという利点を有する。
【0048】
単一セル電池システム200は、いくつかの状況では、(図2に示されない)熱暴走緩和システム、又は、いくつかの他の冷却システムを有している。好適な熱暴走緩和システムの例は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる米国特許出願番号15/982,494、発明の名称「溶解流体電極装置の熱暴走状況を緩和する装置、システム、及び、方法」、代理人整理番号VBC005、出願日2018年5月17日で論じられている。制御部117に接続され、及び、制御部117によって制御される熱暴走緩和システムは、単一セル電池システム200内の熱暴走を防止し、又は、緩和する機構を提供する。熱暴走緩和システムは、複数セル電池システムにおける熱暴走を防止し、又は、緩和するより大きな熱暴走緩和システムの一部であってもよい。
【0049】
図2の例では、電子機器は、また、補助電源226を有する。補助電源226は、単一セル電池システム200、複数セル電池システム、又は、外部電源によって再充電できる電池であってもよい。また、補助電源226を、外部電源によって提供してもよい。補助電源226は、電子機器224に電力を供給し、電力が電池システムから利用できない場合に、制御部117がセルシステムを管理できるようにする。このような状況は、例えば、熱暴走を回避するため、または他の安全上の理由で、利用できないことを理由に、電池システムがシャットダウンされた場合、発生する可能性がある。例えば、補助電源226は、また、セルを始動させるためのエネルギーを提供する。電池セルが冷却し、及び、電力が電池によって生成されていないとき、補助電源226は、エネルギーを供給し、動作温度まで、少なくとも危険な構成要素を加熱する。例えば、セルが十分なエネルギーを生成し、加熱システム116に十分に電力を供給するまで、反応チャンバ、及び、少なくとも1つのリチウム負極電極材料貯蔵部、及び、少なくとも1つの硫黄正極電極材料貯蔵部を、加熱するために、補助電源226を利用してもよい。
【0050】
負極電極貯蔵部104、106、108は、リチウムを含む負極電極材料を有し、そこでは、活動リチウム貯蔵部104を加熱し、反応チャンバ102の負極電極領域132に流入できる流体状態に、リチウム電極材料228を配置し、及び、維持する。他の、選択されていない、活動していない負極電極貯蔵部106、108のリチウム電極材料230、232は、非流体状態に維持され、及び、新しい貯蔵部が必要とされるまで、チャンバ102に流れない。第1の負極閾値に達すると、(第2のリチウム貯蔵部106のような)他の負極貯蔵部を加熱し、その結果、新しい貯蔵部106に収容されたリチウム電極材料230は、流体になり、及び、第2の負極閾値に達したときに、反応チャンバ102に流れるように準備が整う。正極電極貯蔵部110、112、114は、硫黄を含む正極電極材料を有し、そこでは、少なくとも1つの貯蔵部110が加熱され、反応チャンバ102の正極電極領域134に流入できる流体状態に、硫黄電極材料234を配置し、及び、維持する。他の、選択されていない、活動していない負極電極貯蔵部112、114の硫黄電極材料236、238は、非流体状態に維持され、及び、新しい正極貯蔵部が必要とされるまで、チャンバ102に流れない。第1の正極閾値に達すると、(第2の正極貯蔵部112のような)他の正極貯蔵部を加熱し、その結果、新しい正極貯蔵部112に収容された硫黄電極材料236は、流体になり、及び、第2の正極放電閾値に達したときに、反応チャンバ102に流れるように準備が整う。
【0051】
単一セル電池システム200の動作の間、反応は、結果として、形成される他の化合物、又は、生成物を生ずる。例えば、正極電極領域が硫黄を含むことに加えて、その領域は、ジリチウムポリサルファイド種(nが2以上のLi)、及び、ジ-硫化リチウム(LiS)を含んでもよい。典型的には、電解質136を介する反応は、結果として、mが1以上の整数であるLiのような、いくつかの異なる化学種をもたらす。任意の数の化学種は、いくつかの状況におけるその他と同様に、例えば、LiS、Li、Li、及び、Liを、結果として生じ、及び、含んでもよい。
【0052】
図2の例では、正極材料分配システム156は、各硫黄電極材料貯蔵部110、112、114の入力バルブ245~247、及び、出力バルブ248~250と同様に、正極電極材料チャネル240、241、供給ポンプ242、及び、リターンポンプ244からなるネットワークを有している。各入力バルブ245~247は、リターンチャネル240と硫黄電極材料貯蔵部110、112、114との間に接続され、及び、各出力バルブ248~250は、硫黄電極材料貯蔵部110、112、114と供給チャネル241との間に接続される。入力バルブ245、及び、出力バルブ248は、活動硫黄電極材料貯蔵部110に対して開いている。供給ポンプ242は、活動硫黄電極材料貯蔵部110から供給チャネル241を介して反応チャンバ102の正極電極領域134に硫黄電極材料を圧送する。例えば、1つモータ252が、供給ポンプ242、及び、リターンポンプ244を駆動する。各ポンプ242、244のインペラ機構は、磁気的に、モータ252に結合される。流体硫黄電極材料234は、正極電極領域134から活動硫黄電極材料貯蔵部110に圧送される。したがって、流体硫黄電極材料234を、セルの放電中に、反応チャンバ102と活動硫黄電極材料貯蔵部110との間で循環させる。セルが放電し続けると、硫黄電極材料234のジリチウムポリサルファイド種の濃度が、増加する。その結果、循環する硫黄電極材料234の体積も、増加する。以下に説明するように、第1の正極放電閾値、及び、第2の正極放電閾値は、パラメータが活動貯蔵部内の硫黄電極材料の体積に関連する貯蔵部のセンサによって提供されるパラメータに基づくことができる。パラメータは、閾値が満たされたか否かを判定する制御部117に提供される。一例では、センサは、活動貯蔵部内の2つのレベルで貯蔵部の内部にわたる静電容量を測定し、硫黄電極材料の体積が、2つの特定のレベルに達したか否かを判定する。硫黄電極材料がそのレベルに達したときに、各レベルにおける2点間の静電容量が増加するので、制御部117は、体積レベルが満たされたか否かを判定できる。本明細書の例では、2点間の材料は、アルゴンガス、硫黄、ジリチウムポリサルファイド反応生成物、ジリチウムポリサルファイド反応生成物の組合せ、又は、これらの正極材料のいくつかの組み合わせのいずれかである。正極電極材料の比誘電率(εr)は、アルゴンガスの比誘電率よりも大きいため、正極電極材料が、2点間に存在する場合、静電容量はより大きくなる。第1のレベルに達すると、第1の正極閾値に達したと判定され、制御部は、待機中の硫黄電極材料貯蔵部112を加熱し始める。第1のレベルは、硫黄電極材料236が反応チャンバ102に必要とされる前に、適切な温度に硫黄電極材料236を加熱するために十分な時間が存在するように選択される。第2のレベルに達すると、制御部117は、第2の正極放電閾値が満たされたと判定し、及び、活動硫黄電極材料貯蔵部の入力、及び、出力バルブ、及び、待機硫黄電極材料貯蔵部を制御し、現在の活動貯蔵部を切断し、及び、新しい硫黄電極材料貯蔵部を接続し、新しい活動硫黄電極材料貯蔵部を選択する。制御部は、第1の硫黄電極材料貯蔵部のバルブを閉じ、及び、第2の硫黄電極材料貯蔵部のバルブを開く。いくつかの状況では、両方の貯蔵部のバルブは、変更中、開かれてもよい。
【0053】
体積閾値は、いくつかの要因に基づくことができる。一例として、閾値体積レベルは、少なくとも部分的に、硫黄電極材料234のジリチウムポリサルファイド種の濃度に基づいている。ジリチウム二硫化物(Li)の濃度が高く、及び、二硫化リチウム(LiS)が相対的に低くなるように、閾値体積を選択する。例えば、体積閾値を選択して、硫黄電極材料貯蔵部を切り替えるときに、硫黄電極材料234で、Liの濃度が高く、及びLiSが存在しないか、又は、LiSの濃度がわずかにしか存在しないようにしてもよい。言い換えれば、多量の固体LiSが生成される前に、硫黄電極材料貯蔵部をアウトに切り替える。他の例では、固体生成物フィルタは、硫化リチウム(LiS)生成物を除去し、及び、体積閾値を、固体LiSの除去された貯蔵部内の硫黄電極材料234の残りに基づいて設定する。
【0054】
固体生成物フィルタが使用される状況では、2つの体積依存正極放電閾値が存在する。まず、電池の深放電中に、LiSの体積が増加する。これにより、LiSの体積に対する閾値を、確立し、及び、トリガとして利用できる。もう一つの閾値を、溶解Liにより多くのリチウムを添加することで、溶解Liが固体LiSになるような電池の深放電中に、Liの体積が減少するので、Liの体積を監視することによって確立できる。反応チャンバを横切る電圧に基づく閾値は、深放電プロセスのこの段階の間、その電圧が比較的一定に維持されるため、正極材料中に高濃度のLiが存在し、及び、LiSが形成され、及び、LiSが正極から取り除かれる深放電のシナリオでは、役立たないかもしれない。上記技術に係る技術を、いくつかの状況では、他の電気化学的セルに適用してもよい。例えば、他の電気化学的化学現象は、放電プロセス中のある時点で溶融相から固相へ転移する類似の化学種を有し、したがって、正極から取り除くことができる。その結果、硫化ナトリウムのような他の電気化学的化学現象は、類似した閾値を有する。固体生成物フィルタの例は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる米国特許出願番号15/982,491、発明の名称「溶解流体電極装置の個体生成物を分離する装置、システム、及び、方法」、代理人整理番号VBC004、出願日2018年5月17日で論じられている。
【0055】
他の種類のセンサ、及び、データを用いて、正極放電閾値に達するときを判定できる。いくつかの例には、硫黄電極材料貯蔵部を動作した時点から反応チャンバによって移送された総電荷を監視することが含まれる。一例では、完全に充電された硫黄材料貯蔵部が切り替えられた時点からの電流を、反応チャンバ内で積分し、移送された総電荷を判定することが含まれる移送された全電荷から、溶解した硫黄電極材料に移送されたリチウムの量を知って、その結果、開始するための貯蔵部内の硫黄の総量を与えられるように、電極生成物を推定できる。この技術では、移送される全電荷、及び、硫黄の総量に基づく閾値を、確立し、正極の所望のリチウム多硫化物(Li)に関連付けることができる。他の例では、固体硫化リチウム(LiS)を除去しない場合、反応チャンバを横切る電圧は、その電圧が正極材料の化学種に依存するので、硫黄電極材料貯蔵部を切り替えるための有用な閾値になる。例えば、反応チャンバ内に硫黄のみが存在する場合の電圧は、二硫化リチウム(Li)のみが、反応チャンバ内にある場合の電圧とは異なる。先に述べたように、深放電プロセスのこの段階の間、電圧は比較的一定に保たれるため、正極生成物がLiに達し、及び、LiSが生成され、及び、正極から除去される深放電の間は、電圧閾値は、有用ではない。さらに他の技術では、硫黄電極材料中の1つ以上の生成物種の特定の濃度に関して、負極材料の体積が、正極材料の量に関連付けられる場合、閾値は、相関する総電荷を生成するために必要とされる負極材料の量に、少なくとも部分的に、基づいている。例えば、圧力測定、又は、電気伝導、又は、インピーダンス測定を用いて、負極材料の量を追跡できる。そして、正極材料に転送された負極材料の量を利用して、正極の化学種を判定できる。したがって、閾値を、確立し、Li、又は、Li、及び、低濃度のLiSの結合のような正極中の所望の化学種、又は、種群に関連付けることができる。
【0056】
循環された硫黄電極材料の体積は、セルの放電の間、増加するため、各硫黄電極材料貯蔵部の体積を、貯蔵部の硫黄電極材料の元の体積以上を収容するために十分に大きくなるように、選択する。各硫黄電極材料貯蔵部110、112、114の貯蔵空間252~254によって、体積の増加が許容される。図2は、循環された硫黄電極材料234の体積が、セルの放電の間に、増加した状態を示しているため、活動していない硫黄電極材料貯蔵部112、114の貯蔵空間253、254よりも少ない動作中の硫黄電極材料貯蔵部110の貯蔵空間252を示している。
【0057】
図2の例では、負極材料分配システムは、各リチウム電極材料貯蔵部104、106、108の負極材料供給チャネル256、及び、バルブ258~260を含んでいる。各バルブ258~260は、リチウム電極材料貯蔵部104、106、108の1つと負極材料供給チャネル256との間に接続される。バルブ258は、動作中のリチウム貯蔵部104に対して開放している。例えば、リチウム電極材料228は、必要に応じて、反応チャンバの負極電極領域132に、動作中の負極貯蔵部104から、引き出される。リチウム電極材料は、反応チャンバ102の電気化学反応によって消費されると、負極供給チャネル256を介して動作中の貯蔵部104から、補充される。負極材料貯蔵部104、106、108、及び、反応チャンバ102の定位、及び、相対的な位置を選択し、流体リチウム電極材料を、重力によって補助されるように流すことができる。他の状況では、ポンプを利用できる。リチウムの性質に起因して、リチウムを通過する電流、及び、磁界が、電流、及び、磁界ベクトル(例えば、F=∫Idl×B磁力)によって形成される平面に垂直な方向に、リチウム電極材料を進ませる電磁ポンプを利用できる。結果的な電磁力は、流体リチウム電極材料を移動させる。例えば、比較的少量のアルゴンガスを、貯蔵部の製造中に、各リチウム貯蔵部に導入する。アルゴンガスは、リチウム電極材料が貯蔵部から引き出されるように生成される真空を減少させる。ガスの量を選択し、貯蔵部からのリチウム電極材料の流れを、ひどく妨げる真空を回避するのに十分な量であるが、任意の時点で必要とされるものよりも、反応チャンバにより多くのリチウム電極材料を強制し、又は、反応チャンバを損傷する、貯蔵部の圧力の結果の量が存在する。
【0058】
したがって、流体リチウム電極材料は、材料が貯蔵部104から使い尽くされるまで、セルの放電の間、活動リチウム貯蔵部104から供給される。図2の例では、第1の負極放電閾値、及び、第2の負極放電閾値は、パラメータが活動貯蔵部のリチウム電極材料の体積に関連付けられている貯蔵部の1つ以上のセンサによって提供されるパラメータに基づいている。パラメータは、閾値が満たされたか否かを判定する制御部117に提供される。一例では、センサは、活動貯蔵部内の2つのレベルで活動貯蔵部の内部にわたる導電性(又は、抵抗)を測定し、リチウム電極材料の体積が2つの特定のレベルに達するときを判定する。各レベルにおける2点間の導電性は、リチウム電極材料がそのレベル未満に低下したときに、減少するため、制御部117は、閾値体積レベルが満たされたときを判定できる。第1のレベルが満たされると、第1の負閾値が満たされたと判定され、及び、制御部117は、(第2の貯蔵部106のような)準備中のリチウム貯蔵部を加熱し始める。第1のレベルは、現在の活動貯蔵部104が使い尽くされ、及び、追加のリチウムが反応チャンバ102に必要とされる前に、リチウム電極材料230を適切な温度に加熱するために十分な時間があるように選択される。第2のレベルが満たされると、制御部117は、第2の負極放電閾値が満たされたと判定し、現在の活動リチウム貯蔵器104、及び、準備中のリチウム貯蔵部106のバルブ258、259を制御し、現在の活動リチウム貯蔵部104を切断し、及び、新しいリチウム貯蔵部106を接続し、それによって、新しい活動リチウム貯蔵部を選択する。制御装置117は、第1のリチウム貯蔵部104のバルブ258を閉じ、及び、第2のリチウム貯蔵部106のバルブ259を開く。いくつかの状況では、両方の貯蔵部104、106のバルブ258、259を、移行中に、開いてもよい。
【0059】
他のタイプのセンサ、及び、データを用いて、負極放電閾値が満たされたときを判定できる。いくつかの実施例は、リチウム電極材料貯蔵部が活動化された時点から、反応チャンバによって生成された総電荷を監視することを含んでいる。総電荷に基づいて、リチウム電極材料が、どれくらいの量、活動貯蔵部内に残っているかを判定できる。
【0060】
硫黄電極材料貯蔵部の数、及び、リチウム電極材料貯蔵部の数は、典型的には、単一セル電池システム200の実相、及び、目的に依存する。貯蔵部の数を少なくとも部分的には判定できるいくつかの要因の例は、貯蔵部のコスト、重大な危険を示さない溶解リチウムの量、重大な危険を示さない溶解硫黄、及び、電池のエネルギー、電力、空間、及び、有効要件を含んでいる。貯蔵部の数を少なくとも部分的に判定してもよい他の要因の例は、各貯蔵部の体積、及び、形状要因、動作中の流体状態における電極材料の選択される最大量、選択されたハウジングの数、及び、単一セル電池システムが統合されてもよい電池システムの全体的な形状要因が含まれる。本明細書に記載の実施例の少なくともいくつかについて、単一セル電池200は、10個の硫黄電極材料貯蔵部、及び、20個のリチウム貯蔵部を有している。この例では、硫黄貯蔵部の数(すなわち、10個)より多くのリチウム貯蔵部の数(すなわち、20個)であり、及び、リチウムが固体電解質を通って移動し、及び、正極電極領域の硫黄と反応した後に、硫黄電極材料貯蔵部は、正極材料を収容するのに十分な大きさでなければならないため、リチウム電極材料貯蔵部は、硫黄電極材料貯蔵部よりも小さい。
【0061】
加熱システム116は、選択された貯蔵部104、110を加熱し、リチウム、及び、硫黄を流体状態に配置し、及び、維持する一方、選択されていない非選択貯蔵部106、108、112、114内のリチウム、及び、硫黄を非流体状態に維持する。加熱システム116は、電極材料分配システム115、及び、反応チャンバ102を適当な温度に維持し、電極材料の流れ、及び、ヨウ化リチウムを有する固体電解質を介して硫黄とリチウムとの間の所望の反応を促進するために、電極材料分配システム115加熱システム部、及び、反応チャンバ加熱システム部154を有している。図2の例では、選択された負極貯蔵部104、及び、選択された正極貯蔵部110の温度は、摂氏約400度(℃)の温度に維持される。上述のように、動作温度は、電極、及び、固体電解質の材料の特性を含むいくつかの要因に基づいてもよい。図2の例では、考えられるいくつかの特性は、ヨウ化リチウムの融点、469℃、リチウムの融点、180.5℃、硫黄の融点、115.21℃、硫黄の沸点と、444.6℃、及び、リチウムポリサルファイド生成物(Li)共晶融点、365℃を含んでいる。リチウムポリサルファイド生成物の共晶融点以上であるが、LiIの融点より低い温度範囲は、いくつかの状況で利用できる365℃~469℃の温度範囲を提供する。硫黄の沸点以下に温度を維持することを利用し、それによって、他の状況で利用できる365℃~444℃の範囲を提供してもよい。しかしながら、適切な温度範囲は、375℃~425℃の間の温度を含んでいる。115.21℃~469℃のより広い温度範囲を、さらに他の状況で、利用することもできる。ここでの実施例では、選択された負極貯蔵部104、選択された正極貯蔵部110、電極材料分配システム115、負極電極領域132、及び、正極電極領域134の温度は、ほぼ同じ温度に維持される。他の利点の中で、このようなスキームは、固体電解質を横切る温度勾配を回避する。しかしながら、いくつかの状況では、その温度は、異なる選択された貯蔵部と電極領域との間で、異なっていてもよい。電極材料の選択された部分が、反応チャンバに流れることができる限り、他の温度範囲、及び、スキームを利用できる。その結果、選択された正極貯蔵部110、及び、正極電極領域134は、硫黄の融点、115.21℃より高く、及び、選択された負極貯蔵部104、及び、負極電極領域132は、リチウムの融点、180.5℃より高くあるべきである。
【0062】
いくつかの状況では、追加の材料を、正極電極材料、及び/又は、負極電極材料に添加してもよい。例えば、リンを正極電極材料に含ませて、その結果、流体リン-硫黄正極電極を形成できる。したがって、流体電極装置100の他の例は、リチウムリン-硫黄(LiPS)電池を含んでいる。したがって、一例では、正極電極材料は硫黄を含んでおり、及び、別の例では、正極電極材料は硫黄、及び、リンを含んでいる。LiPS電池用の貯蔵部、及び、反応チャンバの適切な温度範囲の例は、上述したように、図2のLiS単一セル電池システム200を参照して上述した範囲を含んでいる。上述したように、ナトリウム、及び、硫黄などの他の電池の電気化学的結合を利用できる。動作温度の選択は、特定の電気化学的結合に応じて変化してもよい。
【0063】
いくつかの状況では、安全のために、追加のバルブを反応チャンバに含めることができる。例えば、リチウム電極材料貯蔵部208~210のバルブ258に加えて、バルブを、反応チャンバ102のチャネル256の他端に含めることができる。同様に、追加のバルブを、供給チャネル241、及び、リターンチャネル240の反応チャンバ120の正極電極領域134に、入力ポート262、及び、出力ポート264に、含めることができる。このような構成を用いて、反応チャンバ内の流体電極材料を、他の電池、及び、熱暴走事象、又は、他の故障の場合の環境から、さらに隔離する能力を提供してもよい。
【0064】
単一セル電池システム200は、電流コレクタに、電圧を印加し、及び、電力を供給することによって充電される。充電手順中、電流コレクタの両端の電位は、結果として、反応チャンバの正極電極領域の硫黄正極材料から放出されるリチウム負極電極材料イオンを生じる。リチウムイオンは、固体電解質を通って、反応チャンバの負極電極領域に移動する。リチウムは、リチウム負極材料貯蔵部に方向付けられ、貯蔵部を補充する。リチウム負極材料貯蔵部が容量まで満たされると、空であるか、または少なくとも利用可能な容量を有する待機リチウム負極材料貯蔵部が接続され、及び、満たされたリチウム負極材料貯蔵部は、切断される。硫黄正極電極材料からリチウムが放出されると、正極電極材料内の負極電極材料の濃度が低下する。例えば、2Liは、2Liイオンが除去されるとLiになるか、又は、2Liは、2Liイオンが除去されると、Liとなるか、又は、Liは、2Liイオンが除去されると、Sになることができる。これにより、単一セル電池システム200が充電される際に、循環される硫黄正極電極材料において、正極電極材料内の負極電極材料(すなわち、リチウム)の濃度が減少する。硫黄正極電極材料は、反応チャンバの正極電極領域と硫黄正極材料貯留部との間で循環されているため、正極電極材料内の負極電極材料の濃度も、充電工程の間、活動硫黄正極材料貯蔵部内で減少する。濃度レベルが、許容可能な閾値に達したとき、電極材料分配システムは、待機硫黄正極材料貯蔵部を接続し、及び、今や、正極電極材料内の負極電極材料のより低い濃度を有する現在の活動硫黄正極材料貯蔵部を切り離す。正極電極材料内の負極電極材料の相対的に高い濃度を有する待機硫黄正極材料貯蔵部は、新しい活動硫黄正極材料貯蔵部となる。全てのリチウム負極材料貯蔵部が満たされ、及び、全ての硫黄正極材料貯蔵部が閾値未満の正極電極材料内の負極電極材料の濃度を有するまで、充電工程は、継続する。
【0065】
図3は、反応チャンバ302、複数のリチウム電極材料貯蔵部304、及び、複数の硫黄電極材料貯蔵部306が垂直に積層され、平面的な矩形状の直方体である単一セル電池システム300の正面図を示している。したがって、図3の単一セル電池システム300は、図2の単一セル電池システム200の一例である。図3は、本実施例の一般原理を示し、及び、表されている構成要素の特定の形状、相対的な大きさ、距離、又は、他の構造的な詳細を、必ずしも表すものではない。図3は、単一セル電池システム300のいくつかの構造的な、寸法的な、配向的な、及び、位置的な態様を反映しているが、図は、必ずしも縮尺どおりではなく、及び、必ずしも単一セル電池システム300の全ての特徴を表すものではない。いくつかの状況では、2つ以上のブロックの構造は、1つの構成要素、又は、構造で実装されてもよい。さらに、図3の1つのブロックで実行されるように説明された機能は、いくつかの状況では、離れた構造で実施されてもよい。
【0066】
単一セル電池システム300は、上述した装置100、及び、単一セル電池システム200の動作に応じて動作する。図3の例では、複数のリチウム電極材料貯蔵部304は、複数の硫黄電極材料貯蔵部306の真上に位置する反応チャンバ302の真上に配置されている。 貯蔵部304、306、及び、反応チャンバ302は、丸められた角を有する長方形の角柱(立方体)である。反応チャンバ302、及び、貯蔵部304、306は、比較的に薄く、及び、長さ、及び、幅に比べて、比較的に短い高さを有している。以下に説明する1つの複数セルシステムの例では、貯蔵部、及び、反応チャンバは、数十センチメートルの幅(例えば、50cm)、及び、数十センチメートルの長さ(例えば、50cm)のオーダーであり、及び、100分の1センチメートル(すなわち、数十マイクロメートル(μm))のオーダー)の高さを有している。したがって、反応チャンバ302は、反応チャンバが、薄く、及び、平面的、立方体形状を有する反応チャンバ102の一例である。
【0067】
リチウム電極材料貯蔵部304は、リチウム貯蔵部ハウジング308に封入され、反応チャンバ302は、反応チャンバハウジング310に封入され、及び、硫黄電極材料貯蔵部306は、硫黄電極材料貯蔵部ハウジング312に封入されている。したがって、単一セル電池システム300の貯蔵部304、306は、図2の単一セル電池システム200に記載されているように、離れたハウジング内に、個別に、封入されない。
【0068】
上記の説明によれば、モータ252は、ポンプ242、244を駆動して、硫黄電極材料貯蔵部と反応チャンバの正極電極領域との間で、硫黄電極材料を循環させる。図3の例では、歯車機構のような回転機構314、316は、単一のモータ252を使用し、ポンプ242、244を駆動できるようにする。回転機構314、316は、ポンプ242、244のインペラに、磁気的に、結合される。状況によっては、回転機構314、316を省略することができ、及び、2つのモータを使用できる。ポンプの好適な実施形態の一例には、正極電極材料チャネル240、241に取り付けられたインペラを使用することが含まれる。
【0069】
リチウム電極材料貯蔵部から反応チャンバの負極電極領域へのリチウム電極材料の流れは、重力によって補助される。本明細書で説明される実施例では、単一セル電池システム300は、20個のリチウム電極材料貯蔵部304、及び、10個の硫黄電極材料貯蔵部306を有している。単一セル電池システム300は、互いに関連する構成要素の位置を維持する固定機構(図示せず)を有している。いくつかの技術のいずれを用いても、空間に構成要素を固定できるが、 固定機構は、構成要素を、互いに、電気的、及び、熱的に絶縁する一方、システム300の構造を維持しなければならない。1つの好適な例には、構成要素の容器同士の間に、及び、ハウジング同士の間に、非導電性支持体を配置することが含まれる。
【0070】
図3に示されていない追加の構成要素、及び、特徴が、含まれていてもよい。例えば、他の例を参照して説明した熱暴走緩和構成要素、加熱要素、センサ、及び、電子機器が含まれてもよい。上述のように、いくつかの状況では、反応チャンバに、追加のバルブを含めることができる。
【0071】
本明細書に記載されたいくつかの実施例について、電極材料分配システムは、貯蔵部のセットから選択された貯蔵部を、反応チャンバに接続し、そこでは、その貯蔵部のセットのみを特定の反応チャンバに接続できる。電極材料分配システムを、任意の1つの貯蔵部を任意の1つの反応チャンバに接続するように構成してもよい。後述するように、例えば、電極材料分配システムは、故障した反応チャンバに関連する貯蔵部のセットから冗長な反応チャンバに、貯蔵部を接続してもよい。多くの状況では、電極分配システムの複雑さは、反応チャンバに接続する貯蔵部の汎用性、及び、柔軟性のレベルと共に増加する。
【0072】
図4は、複数の反応チャンバ402を有する複数セル電池システム400のブロック図を示し、そこでは、各反応チャンバが、複数のリチウム電極材料貯蔵部404、及び、複数の硫黄電極材料貯蔵部406に接続される。図4の例では、したがって、複数の反応チャンバ402のそれぞれは、複数のリチウム電極材料貯蔵部404の2つ以上のリチウム電極材料貯蔵部、及び、複数の硫黄電極材料貯蔵部406の2つ以上の硫黄電極材料貯蔵部に接続される。単一の反応チャンバ、及び、複数の貯蔵部を有する構成要素のグループのそれぞれは、上述した装置100、又は、単一セル電池システム200、300のような単一セル電池システムを形成する。任意の数の反応チャンバ402、及び、貯蔵部404、406を使用でき、そこでは、選択される数は、複数セル電池システム400の意図される目的、及び、他の要因に依拠してもよい。図6を参照して以下に説明する例では、複数セル電池システムは、14個の反応チャンバ、280個のリチウム電極材料貯蔵部、及び、140個の硫黄電極材料チャンバを有し、そこでは、各単一セル電池システムは、1個の反応チャンバ、20個のリチウム電極材料貯蔵部、及び、10個の硫黄電極材料貯蔵部を有している。図4の例は、リチウムを有する負極電極材料、及び、硫黄を有する正極電極材料を有しているが、図4を参照して説明した技術は、他の電気化学的結合を伴う複数の溶解電極セルに適用され得る。その技術は、例えば、ナトリウム(Na)を有する負極電極材料、及び、硫黄を含む正極電極材料を有する複数セル電池システムに使用され得る。上述したように、正極電極材料は、いくつかの状況では、リンのような追加の材料を有してもよい。
【0073】
複数セル電池システム400の動作中に、反応チャンバ402、及び、選択された貯蔵部の全てを、加熱システム408によって加熱し、選択された貯蔵部の電極材料を流体状態に配置し、及び、維持する。負極電極材料分配システム412、及び、正極電極材料分配システム414も加熱し、分配される電極材料が、確実に、流体状態を維持するようにする。いくつかの状況では、複数セル電池システム400に、性能不良、又は、故障した反応チャンバに置換できる1つ以上の冗長な反応チャンバを含めてもよい。冗長な反応チャンバを、必要とされるまで加熱しなくてもよく、又は、動作温度、又は、動作温度より低い温度に加熱してもよい。加熱システム408は、反応チャンバを加熱するための加熱反応チャンバ部分、電極材料分配システムを加熱するための加熱電極材料分配システム部分、及び、選択された貯蔵部を選択的に加熱することを可能にするいくつかの部分を含む。したがって、加熱システム408は、複数セル電池システム400では、複数の単一セル電池システムについて上述した加熱システム116の機能を実行する。例えば、加熱システム408は、複数のリチウム材料電極貯蔵部404の選択された貯蔵部の各々を、独立して、及び、選択的に、加熱するように構成された複数の負極材料加熱システム部分、及び、複数の硫黄電極材料貯蔵部406の選択された貯蔵部の各々を、独立に、加熱するように構成された複数の正極材料加熱システム部分を有している。
【0074】
いくつかの状況では、加熱システム408は、再生、又は、回復加熱技術を採用し、効率を改善してもよい。例えば、充電プロセス中に、活動負極材料貯蔵部は、再充填され、及び、活動正極材料貯蔵部は、正極電極材料がない、又は、低濃度である満充電状態に戻るように転移される。 一旦、負極電極材料貯蔵部が完全に満たされるか、又は、正極電極材料貯蔵部が完全に充電されると、制御部416は、バルブ、又は、バルブ群を閉じることによって、関連付けられた電極材料分配システムから、活動負極、又は、正極電極材料貯蔵部を取り除き、及び、活動電極材料貯蔵部を、非動作状態に移行させる。非動作状態になると、この非動作の電極材料貯蔵部に関連する熱エネルギーを使用して、様々な方法を用いて、電池の他のより冷えている部分を加熱できる。一例では、熱伝導流体を、非動作の電極材料貯蔵部の周りに循環させ、次いで、電池内の別のより冷えている構成要素の周りに循環させ、このより冷えている構成要素に、熱エネルギーを伝達できる。この循環は、熱平衡が確立されるまで継続する。次いで、電極材料貯蔵部の残りの熱エネルギーは、同じ技術を用いて、異なるより冷えている部品に移送される。このプロセスは、電極材料貯蔵部の残りの熱エネルギーが、電池の他のより冷えている部品を加熱するのに、もはや、有益でなくなるまで継続する。加熱されている電池のより冷えている構成要素は、電極材料貯蔵部、反応チャンバ、電極分配システム、又は、熱質量にできる。放電プロセス中、活動負極伝導材料貯蔵部を空にし、空になると、この貯蔵部から、熱エネルギーをほとんど伝達できない。一方、放電プロセスにおける活動正極電極材料貯蔵部は、正極種が放電状態に移行するにつれて、体積を増加していく。活動正極貯蔵部が完全に放電された状態に達すると、制御部416は、バルブを閉じることによって、活動正極材料貯蔵部を、正極材料分配システムから除去し、活動正極貯蔵部を非動作状態に移行する。非動作状態になると、熱伝達は、先に述べたのと同じ方法に従う。他の技術を使用して、電池システムのエネルギーを効率的に再利用できる。電極材料分配システム410は、制御部416の方向付け、及び、制御で、複数セル電池システム400の各単一セル電池システムに関するリチウム電極材料、及び、硫黄電極材料の流れを方向付け、及び、制御する負極材料分配システム412、及び、正極材料分配システム414を有している。したがって、負極材料分配システム412は、単一セル電池システム200、300、及び、装置100で参照した上述の負極材料分配システム158のようないくつかの単一セル負極材料分配システムを有するか、又は、少なくとも、その機能を実行する。同様に、正極材料分配システム414は、単一セル電池システム200、300、及び、装置100で参照した上述の正極材料分配システム156のようないくつかの単一セル正極材料分配システムを有するか、又は、少なくとも、その機能を実行する。いくつかの状況では、電極材料分配システム410は、各反応チャンバのための独立した単一セル電極材料分配システムを有している。他の状況では、単一セル電極材料分配システムは、互いに完全に独立していなくてもよく、及び、共通の構成要素を共有してもよい。1つの構成では、例えば、単一のモータを使用し、複数の反応チャンバのためのポンプのインペラを駆動してもよい。
【0075】
複数のセンサ418、420、422は、制御部416が、加熱システム408、熱暴走緩和システム424、電極材料分配システム410、及び、セル構成ネットワーク220を制御するために利用できる情報を提供する。複数のセンサ418、420、422は、反応チャンバセンサ418、リチウム貯蔵部センサ420、及、硫黄貯蔵部センサ422を有している。センサ418、420、422は、温度、電流、電圧、容量、電気伝導性、圧力、体積、重量、加速度、湿度、湿度、及び、それらの組み合わせに関連するデータを提供することができるいくつかの異なる種類のセンサを有してもよい。例えば、硫黄貯蔵部センサ422は、硫黄電極材料貯蔵部406の複数の体積レベルにおける容量を測定するセンサを有してもよく、及び、リチウム貯蔵部センサ420は、リチウム電極材料貯蔵部404の様々なレベルの導電率を測定するセンサを有してもよく、及び、反応チャンバセンサ418は、各反応チャンバから出力される電流、又は、電圧を測定するセンサを有してもよい。いくつかの状況では、一部のセンサを省略してもよい。複数のセンサは、他の構成要素に関連付けられたパラメータを測定する、システム400の他のセンサを有志亭もよい。例えば、センサを、各ハウジングに配置し、ハウジングの破損を検出するために、湿度、又は、圧力を測定してもよい。
【0076】
電池システム400のセンサによって提供される測定値、及び、パラメータに加えて、他のパラメータ426が、電池システム400の外部のいくつかの任意の供給源から提供されてもよい。例えば、 加速、又は、減速と見做すデータが、電池システムによって動力が供給される車両を有する車両システムによって提供されてもよい。このような情報は、交通事故が発生したこと、及び、電池システム400を安全モードに置くことの判定に有益であろう。安全モードは、熱暴走状況を、防止し、又は、軽減することを含んでもよい。
【0077】
図4の実施例に関して、複数セル電池システム400は、熱暴走緩和システム424を有している。熱暴走緩和システム424は、少なくとも一部を冷却し、熱暴走事象を、回避し、又は、逆転する。好適な技術の例は、参照された発明の名称「溶解流体電極装置の熱暴走を緩和する装置、システム、及び、方法」の特許出願に記載されている。いくつかの状況では、電極材料の一方、又は、両方を冷却して、材料を固体、非流体状態に置く。1つ以上のパラメータに基づいて、制御部416は、少なくとも選択された貯蔵部のための加熱システム408をオフにし、及び、冷却している熱伝達流体を、電池システム400の少なくとも一部を冷却するように方向付ける。電池システム400のセンサによって提供されるセンサ情報に基づくパラメータに加えて、パラメータは、電池システム400の外部から提供される外部パラメータ426を有してもよい。上述したように、車両は、電池システム400を安全モードに置くために使用される情報を提供してもよい。安全モードは、熱暴走緩和システム424を動作させることを含んでもよい。
【0078】
制御部416は、複数セル電池システム400の全体的な機能を促進するとともに、ここに記載された機能を管理する任意の制御部、プロセッサ、電気回路、論理回路、処理回路、電子回路、又は、プロセッサ構成である。制御部は、電極材料分配システムに制御信号を提供し、貯蔵部と反応チャンバとの間の流体電極材料の流れを管理する。制御部416は、例えば、流体電極分配システム410バルブやポンプなどの構成要素に制御信号を送信し、システム400の放電、及び、充電サイクル中に、活動貯蔵部を選択し、及び、切り替えてもよい。制御部416は、選択された貯蔵部をいつ加熱するか、及び、反応チャンバに貯蔵部をいつ接続し始めるのかを判定し、流体電極材料の流れを管理する。言い換えると、制御部416は、加熱システム、及び、流体電極材料分配システムを制御し、選択された貯蔵部を加熱し、及び、反応チャンバへの活動貯蔵部の接続を管理する。上述したように、制御部416は、また、熱暴走緩和システム424の構成要素を制御し、電池システム400の安全性を高め、及び、火災の可能性を最小化する。制御部416は、また、セル構成ネットワーク220を管理し、反応チャンバを接続し、及び、切断してもよい。したがって、制御部416は、他の機能に加えて、上述した制御部117の機能を実行してもよい。
【0079】
図4の実施例では、反応チャンバ420からの複数の導管428が、電池システム出力を提供するセル構成ネットワーク220に提供される。電池システム出力を、他の電池システムの出力に結合し、選択された電流、又は、電圧を有する結合された出力を生成してもよい。一例では、例えば、各々が14個の反応チャンバを有する5つの電池システム400を並列に結合し、30ボルト、200kWh、150kWの電池システムを形成する。他の例では、各々が14個の反応チャンバを含む5つの電池システム400を直列に結合し、150ボルト、200kWh、150kWの電池システムを形成する。非常に高い電池システムの可用性が要求されるならば、1つ以上の冗長な電池システム400をその電池システムに追加できる。冗長な電池システムをともなうか、又は、ともなわない直列、及び、並列の電気回路の様々な組み合わせを構成し、様々な電池システムの要件を満たすことができる。
【0080】
複数セル電池システム400は、セルが、電池システム400の動作を維持、及び/又は、管理するために十分なエネルギーを発生しないとき、システムに電力を供給するための補助電源428)を有している。例えば、電池が制御部によって、シャットダウン(電源オフ)され、又は、熱暴走緩和システム424によって、非活動化されたとき、補助電源428は、制御部、及び、他の電気機器に電力を供給し、電池システム400を管理する。補助電源428は、また、電池起動手順中に、電力を供給する。補助電源428を用いて、少なくとも選択された反応チャンバ、及び、貯蔵部を、直接的に、又は、間接的に、加熱する。電池システム400が、十分なエネルギーを生成し、制御部、加熱システム、及び、他の危険な電子機器をサポートするときは、もはや補助電源428を用いずとも、これらの構成要素をサポートする。補助電源428は、加熱システム408、熱暴走緩和システム424、及び、制御部416に接続され、図4の破線で示され、特定の状況の間にのみ電力を供給することを示している。補助電源428は、再充電可能な電池システムであってもよい。いくつかの状況では、補助電源428は、他のシステムによって提供される外部電池システムであってもよい。例えば、電池システム400が電気自動車で使用される場合、車両は、追加の電池システムを有してもよい。補助電源428は、また、家庭、オフィスビル、又は、充電ステーションにおける交流電源(AC)によって、少なくとも部分的に、提供されてもよい。補助電源428は、変圧器、及び、レギュレータのような他の電子機器を有してもよい。
【0081】
図5は、リチウム電極材料貯蔵部506~513、反応チャンバ502、504、及び、硫黄電極材料貯蔵部514~517が平面に、及び、垂直に積層された2つ反応チャンバ502、504を有する複数セル電池システム500の一例の正面図である。一例として、第1の反応チャンバ502は、4つのリチウム電極材料貯蔵部506、508、510、512、及び、2つの硫黄材料電極材料貯蔵部514、516に接続され、及び、第2の反応チャンバ504は、4つのリチウム電極材料貯蔵部507、509、511、513、及び、2つの硫黄材料電極材料貯蔵部515、517に接続される。したがって、複数セル電池システム500は、各セル池電池システムが図3の単一セル電池システム300の一例である2つの単一セル電池システムを有している。図5は、本実施例の一般原理を示し、及び、表されている構成要素の特定の形状、相対的な大きさ、距離、又は、他の構造的な詳細を、必ずしも表すものではない。図5は、複数セル電池システム500のいくつかの構造的な、寸法的な、配向的な、及び、位置的な態様を反映しているが、図は、必ずしも縮尺どおりではなく、及び、必ずしも複数セル電池システム500の全ての特徴を表すものではない。いくつかの状況では、2つ以上のブロックの構造は、1つの構成要素、又は、構造で実装されてもよい。さらに、図5の1つのブロックで実行されるように説明された機能は、いくつかの状況では、離れた構造で実施されてもよい。
【0082】
各単一セル電池システムは、上述した装置100、単一セル電池システム200、及び、単一セル電池システム300の動作に順じて動作する。図5の実施例では、複数のリチウム電極材料貯蔵部506~513は、複数の硫黄電極材料貯蔵部514~517の真上に位置する反応チャンバ50、504の真上に配置される。貯蔵部506~517、及び、反応チャンバ502、504は、丸い角を有する長方形の直方体(立方体)である。反応チャンバ、及び、貯蔵部は、比較的に薄く、及び、長さ、及び、幅に比べて比較的に短い高さを有する。このような構造は、電極と固体電解質との間の界面の面積を最大化し、より高い電流の流れを促進する。以下に説明される1つの複数セル例では、貯蔵部、及び、反応チャンバは、十センチメートル程度の幅、及び、長さであり、及び、センチメートルの100分の1程度の高さを有している。しかしながら、反応チャンバ、及び、貯蔵部の寸法を選択する際には、他の要因も考慮してもよい。正電極領域の供給チャネルと戻りチャネルとの間の距離は、例えば、反応チャンバの最大電流に少なくとも部分的に影響を与えるだろう。その結果、反応チャンバの形状は長方形であってよく、及び、チャネル間の距離が長方形の他の2辺の間の距離よりも小さい寸法を有してもよい。
【0083】
リチウム電極材料貯蔵部506~513は、リチウム貯蔵部ハウジング518に封入され、反応チャンバ502、504は、反応チャンバハウジング520に封入され、及び、硫黄電極材料貯蔵部514~517は、硫黄電極材料貯蔵部ハウジング522に封入されている。したがって、図5の例では、両方の単一セル電池システムのリチウム電極材料貯蔵部は、同じリチウムハウジング内に含まれ、両方の反応チャンバ502、504は、同じ反応チャンバハウジングに含まれ、及び、両方の単一セル電池システムの硫黄電極材料貯蔵部は、同じ硫黄貯蔵部ハウジング内に含まれる。電池ハウジング524は、他の構成要素と同様に、3つのハウジング518、520、522を封入する。
【0084】
複数セル電池システム500の電極材料分配システム528は、リチウム電極材料分配システム530、及び、硫黄電極材料分配システム532を有している。リチウム電極材料分配システム530は、第1の反応チャンバ部分534、及び、第2の反応チャンバ部分536を有している。リチウム電極材料分配システム530の第1の反応チャンバ部分534は、第1の反応チャンバ520に接続される各リチウム電極材料貯蔵部506、508、510、512に接続される負極チャネル、及び、バルブを有している。リチウム電極材料分配システム530の第2の反応チャンバ部分536は、第2の反応チャンバ504に接続される各リチウム電極材料貯蔵部507、509、511、513に接続される負極チャネル、及び、バルブを有している。したがって、各部分534、536は、単一セル負極材料分配システムに関して上述した負極材料分配システム158の一例である。
【0085】
硫黄電極材料分配システム532は、それぞれが、正極材料チャネルのネットワーク、供給ポンプ、リターンポンプ、入力バルブ、及び、出力バルブを有する第1の反応チャンバ部分538、及び、第2の反応チャンバ部分540を有している。したがって、硫黄電極材料分配システム532の第1の反応チャンバ部分538は、第1の反応チャンバ502に接続される各硫黄電極材料貯蔵部514、516に、正極チャネル550、552、供給ポンプ554、リターンポンプ556、入力バルブ、及び、出力バルブを有している。硫黄電極材料分配システム532の第2の反応チャンバ部分540は、第2の反応チャンバ504に接続される各硫黄電極材料貯蔵部515、517に、正極チャネル542、544、供給ポンプ546、リターンポンプ548、入力バルブ、及び、出力バルブを有している。したがって、各部分538、540は、単一セル負極材料分配システムに関して上述した正極材料分配システム156の一例である。
【0086】
電極材料分配システム528の第1の反応チャンバ部分534、538、及び、第2の反チャンバ部分536、540の動作は、上述した単一セル電極材料分配システム115、負極材料分配機構158、及び、正極材料分配機構156の動作の通りである。図5の例では、1つモータ252が、両方の反応チャンバ502、504のポンプを駆動する。
【0087】
モータ252によって駆動される各一対のポンプ546、548(554、556)は、硫黄電極材料貯蔵部と各反応チャンバ502、504の正極電極領域との間に硫黄電極材料を循環させる。したがって、この実施例では、モータ252は、回転機構316を介して、硫黄電極材料分配システム532に関して、第1の反応チャンバ部分538の供給ポンプ554、及び、第2の反応チャンバ部分540の供給ポンプ546を駆動する。モータ252)は、また、他の回転機構314を介して、硫黄電極材料分配システム532に関して、第1の反応チャンバ部分538のリターンポンプ556、及び、第2の反応チャンバ部分540のリターンポンプ548を駆動する。
【0088】
複数セル電池システム500は、互いに対する構成要素の位置を維持する固定機構(図示せず)を有している。いくつかの技術のいずれかを用いて、構成要素を適所に固定ができるが、固定機構は、構成要素を、互いに、電気的に、及び、熱的に、絶縁する一方、システム500の構造を維持しなければならない。1つの好適な例は、部品の容器間に、非導電性支持体を配置することを含んでいる。
【0089】
2つ反応チャンバ502、504により形成される2つの単一セル電池システムは、実施例では、同時に動作する。各単一セル電池システムによって生成される電気エネルギーをセル構成ネットワーク220によって直接に結合し、単一セル電池システムの出力電圧の2倍の複数セル電池システムの出力電圧を提供できる。さらに、各単一セル電池システムによって生成される電気エネルギーを、セル構成ネットワーク220によって、並列に結合し、単一セル電池システムの電流の2倍の複数セル電池システムの出力電流を提供できる。図5の実施例は、2つの反応チャンバを示しているが、本明細書に記載の技術は、任意の数の反応チャンバ、及び、貯蔵部に適用できる。図6を参照して後述するように、例えば14個の反応チャンバを直列に結合し、リチウム-硫黄化学反応のために約30Vの電圧を提供できる。
【0090】
図5に示されていない追加の構成要素、及び、特徴を有してもよい。例えば、他の実施例を参照して説明された熱暴走緩和構成要素、加熱要素、センサ、及び、電子機器を有してもよい。上述したように、安全性の観点から、反応チャンバに、追加のバルブを含めることができる。
【0091】
図6は、リチウム電極材料貯蔵部602、反応チャンバ604、及び、硫黄電極材料貯蔵部606が平坦に、及び、垂直に、積層された14個の反応チャンバを有する複数セル電池システム600の一例の斜視図である。この例では、14個の反応チャンバの各々は、20個のリチウム電極材料貯蔵部、及び、10個の硫黄材料電極材料貯蔵部に接続されている。 したがって、複数セル電池システム600は、各単一セル電池システムが図3の単一セル電池システム300の一例である14個の単一セル電池システムを有している。また、複数セル電池システム600は、14個の反応チャンバ、280個のリチウム電極材料貯蔵部、及び、140個の硫黄電極材料貯蔵部を有する複数セル電池システム500の一例である。図6は、本実施例の一般原理を示し、及び、表されている構成要素の特定の形状、相対的な大きさ、距離、又は、他の構造的な詳細を、必ずしも表すものではない。図6は、システム600のいくつかの構造的な、寸法的な、配向的な、及び、位置的な態様を反映しているが、図は、必ずしも縮尺どおりではなく、及び、必ずしも複数セル電池システム600の全ての特徴を表すものではない。
【0092】
各単一セル電池システムは、上述した装置100、単一セル電池システム200、及び、単一セル電池システム300の動作の通りに動作し、及び、複数セル電池システム600は、上述した複数セル電池システム400、500の通りに動作する。図6の実施例では、複数のリチウム電極材料貯蔵部602が、複数の硫黄電極材料貯蔵部606の真上に位置する14個の反応チャンバ604の真上に配置されている。貯蔵部602、606、及び、反応チャンバ604は、丸い角を有する長方形の直方体(立方体)である。反応チャンバ、及び、貯蔵部は、比較的薄く、及び、長さ、及び、幅に比べて比較的に短い高さを有している。図6の実施例では、各反応チャンバの外幅、及び、長さは44.721cmであり、高さは、703.2μmである。
【0093】
リチウム電極材料貯蔵部602は、リチウム貯蔵部ハウジング518に封入され、反応チャンバ604は、反応チャンバハウジング520に封入され、及び、硫黄電極材料貯蔵部606は、硫黄電極材料貯蔵部ハウジング522に封入される。したがって、図6の実施例では、全てのリチウム電極材料貯蔵部は、同じリチウムハウジングに封入され、全ての反応チャンバ604は、同じ反応チャンバハウジングに封入され、及び、全ての硫黄電極材料貯蔵部は、同じ硫黄貯蔵部ハウジングに封入される。電池ハウジング524は、3つのハウジング518、520、522、及び、他の構成要素を封入する。
【0094】
複数セル電池システム600の電極材料分配システム528は、リチウム電極材料分配システム530、及び、硫黄電極材料分配システム522を有している。リチウム電極材料分配システム530は、図5を参照して説明した通りに動作する。しかしながら、図6の実施例のリチウム電極材料分配システム530は、各部分が反応チャンバ、及び、20個のリチウム電極材料貯蔵部に接続されるような14個の部分を有している。上述したように、リチウム電極材料分配システム530の各部分は、負極チャネル、各リチウム電極材料貯蔵部のバルブ、及び、潜在的には、ポンプを有している。リチウム電極材料分配システム530は、複数セル電池システム600の前面608に沿って配置される。
【0095】
硫黄電極材料分配システム532は、図5を参照して説明した硫黄電極材料分配システム532の通りに動作する。しかしながら、図6の実施例の硫黄電極材料分配システム532は、各部分が、反応チャンバ、及び、10個の硫黄電極材料貯蔵部に接続されるような14個の部分を有している。上述のように、硫黄電極材料分配システム532の各部分は、各硫黄電極材料貯蔵部の入力バルブ、及び、出力バルブと同様に、正電極チャネル、供給ポンプ、及び、リターンポンプを有している。図6の実施例では、14の部分の供給ポンプ、及び、供給正極チャネルは、第1の側面610に配置され、及び、14の部分のリターンポンプ、及び、リターン正極チャネルは、第1の側面610に対向する反対側の第2の側面612に配置される。したがって、リチウム電極材料分配システム530は、硫黄電極材料分配システム52に使用される2つの側面以外の側面に沿って配置される。いくつかの状況では、他の構成要素を、第4の側面(前面に対向する背面)に配置できる。例えば、電子機器を、背面付近のハウジングの内面に取り付けてもよく、又は、センサを、電池システム600の背面に配置してもよい。加えて、構成要素を、上面614、又は、底面616に沿って、又は、近くに配置してもよい。実施例では、モータ252、及び、ギアのような関連する機械機構を、底面616に沿って、又は、近くに、電池ハウジング524内に配置してもよい。
【0096】
複数セル電池システム600は、互いに関連する構成要素の位置を維持する固定機構を有している。いくつかの技術のいずれかを用いて、構成要素を適所に固定できるが、固定機構は、構成要素を、互いに、電気的に、及び、熱的に、絶縁する一方、複数セル電池システム600の構造を維持しなければならない。1つの好適な例は、部品の容器間に、非導電性支持体を配置することを含んでいる。
【0097】
図7A図7B図7C、及び、図7Dは、複数セル電池システム600の一部の構成を示す図である。図7Aは、複数セル電池システム600の反応チャンバ、リチウム電極材料貯蔵部、及び、硫黄電極材料貯蔵部の平面図を示している。図6、及び、図7Aを参照して説明される実施例では、反応チャンバ604、リチウム電極材料貯蔵部602、及び、硫黄電極材料貯蔵部606は、同じ長さ、及び、幅を有している。実施例では、外部長さ(L)702、及び、幅(W)704は、両方とも、44.721cmに等しい。図7B図7C、及び、図7Dを参照して、以下において、構成要素の高さを説明する。
【0098】
複数セル電池システム600は、上部から、正方形の断面を有しているが、他の形状を用いることもできる。電池システムの同じ電力容量を維持するために、形状の面積は、同じであるべきである。上述のように、反応チャンバの形状は、正電極領域の供給チャネルとリターンチャネルとの間の距離は、比較的短く、及び、反応チャンバの他の長さは、比較的長い長方形とし、一定の面積を維持し、及び、セルによって生成される最大電流を増加してもよい。供給チャネルとリターンチャネルとの間の距離を減少させることにより、反応器を通って流れている流体正極材料は、完全な放電状態に、急速には、変換されない。例えば、反応チャンバの供給チャネルとリターンチャネルとの間の距離が、所与の流体正極材料の流量、及び、放電電流に対して大きすぎる場合、流体正極材料は、反応チャンバの終端に達する前に、固体状態に、完全に放電され得り、及び、反応チャンバを通る流体正極材料の流れを妨げる可能性がある。この潜在的な問題を解決し、セルによって生成される電流を最大にするために、供給チャネルとリターンチャネルとの間の距離を最小にでき、及び、正極材料の流量を最大にできる。このアプローチによって、供給チャネルとリターンチャネルとの間の距離が他の長方形寸法よりも短い長方形の幾何学的形状が導かれるだろう。
【0099】
図7は、1つの反応チャンバ604の一部の断面側面図を示す。実施例では、反応チャンバの容器706は、電池に必要な温度で動作できる延性を有する鋳鉄、又は、他の比較的低コストの金属、又は、金属合金である。一例では、電流コレクタは、反応チャンバ壁から離れており、及び、比較的低コストの金属、又は、金属合金の反応チャンバ壁は、不活性被膜によって、化学的攻撃から保護され、及び、電流コレクタは、導電性不活性被膜によって保護される。反応チャンバの負極電極領域で使用するための好適な非導電性被膜の例としては、酸化マグネシウム(MgO)、窒化ホウ素(BN)、酸化カルシウム(CaO)、タンタル(III)酸化物(Ta)、サマリウム(III)酸化物(Sa)、酸化リチウム(LiO)、酸化ベリリウム(BeO)、テルビウム(III)酸化物(Tb)、ジスプロシウム(III)酸化物(Dy)、二酸化トリウム(ThO)、ガドリニウム(III)酸化物(Gd)、エルビウム(III)酸化物(Er) イットリウム(III)酸化物(Y)、塩化リチウム(LiCl)、ホルミウム(III)酸化物(Ho)、ネオジム(III)酸化物(Nd)、イッテルビウム(III)酸化物(Yb)、ランタン(III)酸化物(La)、プラセオジム(III)酸化物(Pr)、フッ化リチウム(LiF)、ルテチウム(III)酸化物(Lu)、スカンジウム(III)酸化物(Sc)、ツリウム(III)酸化物(Tm)、サマリウム(III)酸化物(Sm)、セリウム(III)酸化物(Ce)、及び、メンデレビウム(III)酸化物(Md)。好適な他の潜在的な不活性被膜は、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、フッ化マグネシウム(MgF)、セリウム(IV)酸化物(CeO)、ウラン(IV)酸化物(UO)、ユーロピウム(II)酸化物(EuO)、二酸化ジルコニウム(ZrO)、フッ化ナトリウム(NaF)、ユーロピウム(III)酸化物(Eu)、クリソベリル(BeAl)、ケイ酸カルシウム(CaSiO)、ハフニウム(IV)酸化物(HfO)、チタン酸カルシウム(CaTiO)、CaAlSO、アルミン酸マグネシウム(MgAl)、カシライト(KAlSiO)、メタケイ酸マグネシウム(MgSiO)、CaMg(SiO、CaMgSi、メルウィナイト(CaMg(Si0)、ケイ酸カルシウム(CaSiO)を含む。反応チャンバの負極電極領域で使用するための適切な導電性被膜の例は、バナジウム、V-3Ti-1Si、V-15Cr-5Ti、V-9Cr-3Fe-1Zrのようなバナジウム合金、モリブデン、Mo-0.5Ti-0.08Zr(TZM)のようなモリブデン合金、ニオビウム、及び、タンタルを含む。適切な他の潜在的な不活動導電性被膜は、タングステン、クロム、ジルコニウム、チタン、及び、ステンレス鋼304(593℃以下で動作する場合)を含む。反応チャンバの正電極領域で使用するための好適な非導電性被膜の例としては、酸化マグネシウム(MgO)、酸化チタン(TiO)、窒化ホウ素(BN)、酸化カルシウム(CaO)、タンタル(III)酸化物(Ta)、サマリウム(III)酸化物(Sa)、酸化リチウム(LiO)、酸化ベリリウム(BeO)、テルビウム(III)酸化物(Tb)、ジスプロシウム(III)酸化物(Dy)、二酸化トリウム(ThO)、ガドリニウム(III)酸化物(Gd)、エルビウム(III)酸化物(Er) イットリウム(III)酸化物(Y)、塩化リチウム(LiCl)、ホルミウム(III)酸化物(Ho)、ネオジム(III)酸化物(Nd)、イッテルビウム(III)酸化物(Yb)、ランタン(III)酸化物(La)、プラセオジム(III)酸化物(Pr)、フッ化リチウム(LiF)、ルテチウム(III)酸化物(Lu)、スカンジウム(III)酸化物(Sc)、ツリウム(III)酸化物(Tm)、サマリウム(III)酸化物(Sm)、セリウム(III)酸化物(Ce)、及び、メンデレビウム(III)酸化物(Md)。好適な他の潜在的な不活性被膜は、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、フッ化マグネシウム(MgF)、セリウム(IV)酸化物(CeO)、ウラン(IV)酸化物(UO)、ユーロピウム(II)酸化物(EuO)、二酸化ジルコニウム(ZrO)、フッ化ナトリウム(NaF)、ユーロピウム(III)酸化物(Eu)、クリソベリル(BeAl)、ケイ酸カルシウム(CaSiO)、ハフニウム(IV)酸化物(HfO)、チタン酸カルシウム(CaTiO)、CaAlSO、アルミン酸マグネシウム(MgAl)、カシライト(KAlSiO)、メタケイ酸マグネシウム(MgSiO)、CaMg(SiO、CaMgSi、メルウィナイト(CaMg(Si0)、ケイ酸カルシウム(CaSiO)を含む。さらに、適切な他の潜在的な不活性非導電性被膜は、アルミナ(AI2O3)、シリカ(SiO)、酸化カリウム(KO)、及び、三酸化ホウ素(B)のような種々の金属酸化物、コーニング社のマコール(macor)製品のような独自の材料を含む。さらに、適切な他の潜在的な不活性導電性被膜は、モリブデン、Mo-0.5Ti-0.08Zr(TZM)のようなモリブデン合金を含む。非導電性被膜のいくつかは、電池の動作温度において導電性になってもよいことに留意すべきである。安価な金属、又は、金属合金の壁厚(t)706は、100μmであり、不活性被膜の厚さは、約500nmである。不活性被膜の厚さは、不活性被膜材料に依存する。固体電解質13は、500μmの高さ(HSE)710を有している。正極電極領域134は、1.1μmの高さ(H)712を有しており、及び、負極電極領域132は、2.1μmの高さ(H)714を有している。
【0100】
電流コレクタは、導電性材料から形成される。好適なコレクタ材料の一例は銅を含んでいる。いくつかの状況では、真鍮を用いることができ、及び、銅よりもいくらかのコスト削減を提供してもよい。電流コレクタ212、214は、不活動導電性被膜で被覆されている。負極コレクタ212の好適な被覆材料の一例は、バナジウム、不活動導電性被膜である。負極コレクタ212に適した他の被膜としては、バナジウム、V-3Ti-1Si、V-15Cr-5Ti、V-9Cr-3Fe-1Zrのようなバナジウム合金、モリブデン、Mo-0.5Ti-0.08Zr(TZM)のようなモリブデン合金、ニオビウム、及び、タンタルを含む。適切な他の潜在的な不活性導電性被膜は、タングステン、クロム、ジルコニウム、チタン、及び、ステンレス鋼304(593℃以下で動作する場合)を含む。
【0101】
正極コレクタを、ルチル相で、不活動で導電性の被膜であるタングステン添加酸化チタンを用いて被覆してもよい。正極コレクタ214に適した他の被膜は、ニオブ添加酸化チタン、タンタル添加酸化チタン、インジウムスズ酸化物、モリブデン、及び、Rがランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、及び、ガドリニウム(Gd)であるRCoOを含む。
【0102】
他の例では、コレクタ212、214を、反応チャンバの壁に組み込む。反応チャンバの金属、又は、金属合金の壁は、導電性被膜で被覆され、電流が被膜、及び、チャンバの壁を通って流れることを可能にする。反応チャンバの壁に組み込まれたときの負極コレクタ212は、比較的低コストの金属、又は、金属合金の壁に関連する100μmの厚さ、及び、バナジウム、安価な金属、又は、金属合金の壁の不活動、導電性被膜に関連する2.5μmの厚さを有する。不活動被膜は、負極材料との反応から、コレクタ212を保護する。負極コレクタ212に適した他の被膜は、バナジウム、V-3Ti-1Si、V-15Cr-5Ti、V-9Cr-3Fe-1Zrのようなバナジウム合金、モリブデン、Mo-0.5Ti-0.08Zr(TZM)のようなモリブデン合金、ニオビウム、及び、タンタルを含む。適切な他の潜在的な不活性導電性被膜は、タングステン、クロム、ジルコニウム、チタン、及び、ステンレス鋼304(593℃以下で動作する場合)を含む。
【0103】
反応チャンバの壁に組み込まれたときの正極コレクタ214は、安価な金属、又は、金属合金の壁に関連する100μmの厚さ、及び、ルチル相のタングステン添加酸化チタン、金属、又は、金属合金の壁の不活動、導電性被膜に関連する500nmの厚さを有する。不活動被膜は、正極材料との反応から、コレクタ214を保護する。正極コレクタ214に適した他の被膜は、ニオブ添加酸化チタン、タンタル添加酸化チタン、インジウムスズ酸化物、モリブデン、及び、Rがランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、及び、ガドリニウム(Gd)であるRCoOを含む。
【0104】
電流コレクタが反応チャンバ壁と一体化されている場合、反応チャンバ構造の各部分は、互いに電気的に絶縁されている。すなわち、反応チャンバの負極電極領域を囲む反応チャンバの壁は、反応チャンバの正極電極領域を囲む反応チャンバの壁とは、電気的に、絶縁されている。
【0105】
電流コレクタが反応チャンバの壁と一体化されている場合、追加の電気絶縁を使用して、各セルを他から分離してもよい。これは、冗長な反応チャンバを、電池システムに組み込み、故障した反応チャンバを交換できる場合に、特に有用である。いくつかの状況では、電池システムは、反応チャンバが物理的に積み重ねられ、及び、互いに電気的に接触するように、実装されてもよい。 例えば、いくつかの反応チャンバを含む電池システムは、下方の反応チャンバの負極反応チャンバ部分が、その下方の反応チャンバの上方の反応チャンバの正極反応チャンバ部分に接触する構造を有してもよい。したがって、そのような実装においては、反応チャンバを、直列の組み合わせで接続する。故障した反応チャンバを交換するために、動作中に、電池システムを容易に再構成できないため、このような構造の利用は、電池セルの故障間隔時間(MTBF)、及び、要求される性能に、少なくとも部分的に依存してもよい。
【0106】
図7Cは、1つのリチウム電極材料貯蔵部602の部分の断面側面図715を示している。実施例では、リチウム電極材料貯蔵部602の容器716は、電池に要求される温度で動作できる、不活性被膜で被覆されたダクタイル鋳鉄 又は、比較的低コストの金属、又は、金属合金であり、100μmの壁厚さ(tLR)718、及び、500nmの不活動被覆厚さを有している。リチウム電極材料貯蔵部の内部高さ(HLR)720は、実施例では、187μmである。不活性被膜は、リチウム電極材料貯蔵部602を、負極材料との反応から保護する。適切な不活性被膜の例は、酸化マグネシウム(MgO)、窒化ホウ素(BN)、酸化カルシウム(CaO)、タンタル(III)酸化物(Ta)、サマリウム(III)酸化物(Sa)、酸化リチウム(LiO)、酸化ベリリウム(BeO)、テルビウム(III)酸化物(Tb)、ジスプロシウム(III)酸化物(Dy)、二酸化トリウム(ThO)、ガドリニウム(III)酸化物(Gd)、エルビウム(III)酸化物(Er) イットリウム(III)酸化物(Y)、塩化リチウム(LiCl)、ホルミウム(III)酸化物(Ho)、ネオジム(III)酸化物(Nd)、イッテルビウム(III)酸化物(Yb)、ランタン(III)酸化物(La)、プラセオジム(III)酸化物(Pr)、フッ化リチウム(LiF)、ルテチウム(III)酸化物(Lu)、スカンジウム(III)酸化物(Sc)、ツリウム(III)酸化物(Tm)、サマリウム(III)酸化物(Sm)、セリウム(III)酸化物(Ce)、及び、メンデレビウム(III)酸化物(Md)。好適な他の潜在的な不活性被膜は、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、フッ化マグネシウム(MgF)、セリウム(IV)酸化物(CeO)、ウラン(IV)酸化物(UO)、ユーロピウム(II)酸化物(EuO)、二酸化ジルコニウム(ZrO)、フッ化ナトリウム(NaF)、ユーロピウム(III)酸化物(Eu)、クリソベリル(BeAl)、ケイ酸カルシウム(CaSiO)、ハフニウム(IV)酸化物(HfO)、チタン酸カルシウム(CaTiO)、CaAlSO、アルミン酸マグネシウム(MgAl)、カシライト(KAlSiO)、メタケイ酸マグネシウム(MgSiO)、CaMg(SiO、CaMgSi、メルウィナイト(CaMg(Si0)、ケイ酸カルシウム(CaSiO)を含む。反応チャンバの負極電極領域で使用するための適切な導電性被膜の例としては、バナジウム、V-3Ti-1Si、V-15Cr-5Ti、V-9Cr-3Fe-1Zrのようなバナジウム合金、モリブデン、Mo-0.5Ti-0.08Zr(TZM)のようなモリブデン合金、ニオビウム、及び、タンタルを含む。好適であろうその他の潜在的な不活性被膜は、タングステン、クロム、ジルコニウム、チタン、及び、ステンレス鋼304(593℃以下で動作する場合)を含む。異なる被覆厚さが、様々な被膜材料に要求されるであろうことに留意されたい。例えば、同レベルの腐食保護を提供するために、500nmの酸化マグネシウム(MgO)のみが要求される場合に、長期間の腐食からリチウム貯蔵部を保護するために、2.5μmのバナジウム被膜が要求される。
【0107】
図7Dは、1つの硫黄電極材料貯蔵部606の部分の断面側面図721を示している。実施例では、硫黄電極材料貯蔵部606の容器722は、電池に要求される温度で動作できるダクタイル鋳鉄 又は、比較的低コストの金属、又は、金属合金であり、及び、不活性被膜で被覆されている。硫黄電極材料貯蔵部606は、100μmの壁厚さ(tSR)724、及び、500nmの不活動被覆厚さを有している。硫黄電極材料貯蔵部の内部高さ(HSR)726は、実施例では、644.65μmである。不活性被膜は、硫黄電極材料貯蔵部606を、正極材料との反応から保護する。好適な不活性被膜の例は、酸化マグネシウム(MgO)、酸化チタン(TiO)、窒化ホウ素(BN)、酸化カルシウム(CaO)、タンタル(III)酸化物(Ta)、サマリウム(III)酸化物(Sa)、酸化リチウム(LiO)、酸化ベリリウム(BeO)、テルビウム(III)酸化物(Tb)、ジスプロシウム(III)酸化物(Dy)、二酸化トリウム(ThO)、ガドリニウム(III)酸化物(Gd)、エルビウム(III)酸化物(Er) イットリウム(III)酸化物(Y)、塩化リチウム(LiCl)、ホルミウム(III)酸化物(Ho)、ネオジム(III)酸化物(Nd)、イッテルビウム(III)酸化物(Yb)、ランタン(III)酸化物(La)、プラセオジム(III)酸化物(Pr)、フッ化リチウム(LiF)、ルテチウム(III)酸化物(Lu)、スカンジウム(III)酸化物(Sc)、ツリウム(III)酸化物(Tm)、サマリウム(III)酸化物(Sm)、セリウム(III)酸化物(Ce)、及び、メンデレビウム(III)酸化物(Md)。好適な他の潜在的な不活性被膜は、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、フッ化マグネシウム(MgF)、セリウム(IV)酸化物(CeO)、ウラン(IV)酸化物(UO)、ユーロピウム(II)酸化物(EuO)、二酸化ジルコニウム(ZrO)、フッ化ナトリウム(NaF)、ユーロピウム(III)酸化物(Eu)、クリソベリル(BeAl)、ケイ酸カルシウム(CaSiO)、ハフニウム(IV)酸化物(HfO)、チタン酸カルシウム(CaTiO)、CaAlSO、アルミン酸マグネシウム(MgAl)、カシライト(KAlSiO)、メタケイ酸マグネシウム(MgSiO)、CaMg(SiO、CaMgSi、メルウィナイト(CaMg(Si0)、ケイ酸カルシウム(CaSiO)を含む。さらに、適切な他の潜在的な不活性非導電性被膜は、モリブデン、Mo-0.5Ti-0.08Zr(TZM)のようなモリブデン合金、アルミナ(AI2O3)、シリカ(SiO)、酸化カリウム(KO)、及び、三酸化ホウ素(B)のような種々の金属酸化物、コーニング社のマコール(Macor)製品のような独自の材料を含む。異なる被覆厚さが、様々な被膜材料に要求されるであろうことに留意されたい。例えば、同レベルの腐食保護を提供するために、500nmの酸化マグネシウム(MgO)のみが要求される場合に、長期間の腐食から硫黄電極材料貯蔵部を保護するために、1μmのモリブデン被膜が要求される。
【0108】
リチウム電極材料貯蔵部のハウジング518、反応チャンバのハウジング520、硫黄電極材料貯蔵部のハウジング522、及び、電池ハウジング524に関連する安全性の改善は、これらのハウジングの内部部分への、保護被膜の追加によって可能となる。
【0109】
例えば、リチウム電極材料貯蔵部のハウジング518の内部部分を、リチウム電極材料貯蔵部のハウジング518を、1つのリチウム貯蔵部、又は、1つのリチウム電極材料分配構成要素の破損形態とすべき負極材料との反応から保護する不活性被膜で被覆できる。好適な被膜材料は、リチウム電極材料貯蔵部602について先に詳述した被膜材料を含む。
【0110】
反応チャンバのハウジング520の内部部分は、反応チャンバのハウジング520を、1つの反応チャンバ、又は、1つのリチウム、又は、硫黄電極材料分配構成要素の破損形態とすべき負極材料、及び、正極材料との反応から保護する不活性被膜で被覆できる。好適な不活性被膜の例は、酸化マグネシウム(MgO)、窒化ホウ素(BN)、酸化カルシウム(CaO)、タンタル(III)酸化物(Ta)、サマリウム(III)酸化物(Sa)、酸化リチウム(LiO)、酸化ベリリウム(BeO)、テルビウム(III)酸化物(Tb)、ジスプロシウム(III)酸化物(Dy)、二酸化トリウム(ThO)、ガドリニウム(III)酸化物(Gd)、エルビウム(III)酸化物(Er) イットリウム(III)酸化物(Y)、塩化リチウム(LiCl)、ホルミウム(III)酸化物(Ho)、ネオジム(III)酸化物(Nd)、イッテルビウム(III)酸化物(Yb)、ランタン(III)酸化物(La)、プラセオジム(III)酸化物(Pr)、フッ化リチウム(LiF)、ルテチウム(III)酸化物(Lu)、スカンジウム(III)酸化物(Sc)、ツリウム(III)酸化物(Tm)、サマリウム(III)酸化物(Sm)、セリウム(III)酸化物(Ce)、及び、メンデレビウム(III)酸化物(Md)。好適な他の潜在的な不活性被膜は、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、フッ化マグネシウム(MgF)、セリウム(IV)酸化物(CeO)、ウラン(IV)酸化物(UO)、ユーロピウム(II)酸化物(EuO)、二酸化ジルコニウム(ZrO)、フッ化ナトリウム(NaF)、ユーロピウム(III)酸化物(Eu)、クリソベリル(BeAl)、ケイ酸カルシウム(CaSiO)、ハフニウム(IV)酸化物(HfO)、チタン酸カルシウム(CaTiO)、CaAlSO、アルミン酸マグネシウム(MgAl)、カシライト(KAlSiO)、メタケイ酸マグネシウム(MgSiO)、CaMg(SiO、CaMgSi、メルウィナイト(CaMg(Si0)、ケイ酸カルシウム(CaSiO)を含む。ささらに、適切な他の潜在的な不活性導電性被膜は、モリブデン、Mo-0.5Ti-0.08Zr(TZM)のようなモリブデン合金を含む。
【0111】
硫黄電極材料貯蔵部のハウジング522の内部部分を、硫黄電極材料貯蔵部のハウジング522を、1つの硫黄貯蔵部、又は、1つの硫黄電極材料分配構成要素の破損形態とすべき正極材料との反応から、保護する不活性被膜で被覆できる。好適な被膜材料は、硫黄電極材料貯蔵部606について先に詳述した被膜材料を含む。
【0112】
電池のハウジング524の内部部分を、電池のハウジング524を、1つのリチウム、又は、硫黄電極材料分配構成要素の破損形態、又は、電池のハウジング524に配置される構成要素の他の破損形態とすべき負極、及び、正極材料との反応から、保護する不活性被膜で被覆できる。好適な被覆材料は、反応チャンバのハウジング520について先に詳述した被膜材料を含む。
【0113】
例えば、リチウム電極材料貯蔵部のハウジング518、反応チャンバのハウジング520、硫黄電極材料貯蔵部のハウジング522、及び、電池ハウジング524の壁は、被膜材料に応じて500nmから2.5μmの範囲の被膜厚さを有する500μmのアルミニウムである。他の貯蔵部、及び、反応チャンバの寸法、及び、厚さを使用できる。他の被膜、及び、被膜の組合せも、また、特定の状況に応じて、使用できる。
【0114】
図8は、複数セル電池システムを管理する方法の一例のフローチャートである。本方法を、他の電池システムで実施できるが、図8の例は、図4図5図6、及び、図7A~Dを参照して説明される複数セル電池システムのような溶解流体電極を有する熱電池を有する複数セル電池システムにおいて、実施される。図8のステップを、図示されたものとは異なる順序で実行でき、また、いくつかのステップを、1つのステップに組み合わせできる。追加のステップを実行してもよく、また、いくつかのステップを省略してもよい。さらに、いくつかの状況では、2つ以上のステップを同時に実行できる。例えば、充電、及び、放電ステップは、典型的には、それぞれの状態において、電池システムを管理するためのステップと、連続的に、及び、同時に、実施される。
【0115】
ステップ802において、電池起動手順が実行される。電池起動手順は、適切な状態に構成要素を配置し、動作のための電池システムを準備する。
【0116】
ステップ803において、ポンプが管理される。本明細書の例では、正極材料分配システムのポンプの速度は、変更でき、及び、条件に基づいて調整でき得る。可変速ポンプの使用は、電池システムの効率を改善するだろう。
【0117】
ステップ804において、熱暴走状態が存在するか否かが、判定される。制御部は、内部センサ、外部センサ、及び、データ同様に計算されたパラメータからの情報を任意に組み合わせることによって提供される情報、又は他のシステムから提供される信号を監視して、バッテリシステムが熱暴走事象にあるか、又は、状態が、熱暴走事象が可能であることを示しているか、を判定する。熱暴走状態が存在しない場合、方法は、ステップ806に続く。そうでない場合、方法は、熱暴走緩和手順が実行されるステップ808に続く。熱暴走手順は、電池の少なくとも一部を冷却し、電池システムの溶解流体電極材料の少なくとも一部を凍結する。ステップ804、808を実行するための方法の好適な例は、参照された米国特許出願、発明の名称「溶解流体電極装置における熱暴走状態を緩和する装置、システム、及び、方法」に記載されている。
【0118】
ステップ806において、いずれかの反応チャンバが性能不良を示しているか否か、及び、交換されるべきか否かが判定される。制御部は、1つ以上のパラメータを監視し、いずれかの反応チャンバの性能が閾値を下回るかを判定する。一例では、制御部は、電圧を監視し、及び、電圧が最小電圧閾値を下回るかどうかを判定する。電池の再構成手順が必要であるか否かを判定するために監視され得る他のパラメータの例は、温度、電気インピーダンス、及び、反応チャンバを通る溶解電極の流れを含んで切る。交換が必要でない場合、方法は、ステップ810続く。そうでない場合には、バッテリ再構成手順が、ステップ812で実行される。
【0119】
ステップ812において、電池システムは、再構成され、性能が悪い、又は、故障した反応チャンバを交換する。いくつかの状況では、冗長な反応チャンバは、電池の動作中に、継続的に加熱され、それにより、他の反応チャンバを、直ちに、交換できる。他の状況では、冗長な反応チャンバは、現在の動作中の反応チャンバが、故障した、故障する可能性が高い、又は、交換される必要がある可能性が高いと判定されたときに、加熱される。冗長な反応チャンバが動作温度にあるとき、制御部は、交換される活動チャンバを切り離し、及び、冗長な反応チャンバを接続する。一例では、貯蔵部は、冗長な反応チャンバが電池システムに電気的に接続される前に、まず、交換される活動反応チャンバから切り離され、及び、冗長な反応チャンバに接続される。別の例では、冗長な反応チャンバは、貯蔵部の冗長なセットに接続され、及び、置換される反応チャンバによって使用される貯蔵部から電極材料を転送する必要なしに、電池に電気的に接続される。
【0120】
ステップ810において、電池システムが放電状態、充電状態、又は、準備状態にあるか否かが判定される。一例では、制御部は、電池システムを通る電流のレベル、及び、方向に基づいて、電池の状態を判定する。いくつかの状況では、準備状態において、バッテリシステムからの小さな電流消費があってもよい このような状況は、電池システムが電池システム内の電子機器に電力を供給するために使用されるか、又は、電子機器によって使用される電源を充電するために使用されるが、外部負荷は存在しない場合に起こり得る。電流が電池システムに負荷があることを示す場合、電流が閾値を下回るか否かが判定される。閾値を下回る電流消費が存在する場合、電池は、準備状態、又は、モードにあると判定される。電池システムが充電、又は、放電していない場合、加熱システムは、ステップ814において、待機状態に管理される。電池システムが放電していれば、方法は、ステップ816に続く。電池システムが充電していると判定されれば、方法は、ステップ818に続く。例えば、制御部は、電池システムの充電レベルに基づいて充電状態、又は、放電状態から準備モードに電池システムを置いてもよい。電池が、放電しており、及び、完全放電状態に近づいている、又は、達したときに、制御部は、電池システムが準備状態にあるべきであると判定し、及び、電池システムを負荷から切り離してもよい。以下に説明するように、電池システムは、また、電池システムが完全に放電され、及び、充電されていないときにも、シャットダウンされる。制御部は、また、充電しているとき、及び、完全に充電されたときに、電池を準備状態に置いてもよい。
【0121】
ステップ816において、加熱システムは、放電状態に管理される。制御部は、加熱システムの各部を制御し、反応チャンバ、及び、電極材料分配システムを適切な動作温度に維持し、及び、選択された貯蔵部を加熱する。リチウム電極材料貯蔵部は、十分な量の流体リチウム電極材料が反応チャンバに利用できることを確実にしながら、最小量のリチウム電極材料が流体状態にあるように加熱される。硫黄電極材料貯蔵部は、十分に低い濃度の、正極材料内の負極材料を伴う十分な量の硫黄電極材料が、反応チャンバに利用できることを確実にしながら、最小量の硫黄電極材料が流体状態にあるように加熱される。
【0122】
ステップ820において、電極材料の流れが、放電状態において管理される。制御部は、電極材料分配システムを制御し、流体電極材料を適切な貯蔵部から反応チャンバに方向付ける。制御部は、センサによって提供される情報に少なくとも部分的に基づいて、バルブを開閉する。新しいリチウム電極材料貯蔵部は、反応チャンバに接続され、及び、リチウム電極材料が、現在の活動リチウム電極材料貯蔵部から使い尽くされると、現在の活動リチウム電極材料貯蔵部は、反応チャンバから切り離される。新しい硫黄電極材料貯蔵部は、反応チャンバに接続され、及び、現在の活動硫黄電極材料貯蔵部の硫黄電極材料が、溶解二硫化リチウム(Li)のような所望の正極材料反応生成組成物に到達するか、又は、溶融二硫化リチウム(Li)と固体硫化リチウム(LiS)とのいくつかの比率に達するとき、現在の活動硫黄電極材料貯蔵部は、反応チャンバから切り離される。図11を参照して以下に説明するように、ステップ816、及び、820は、本明細書の実施例に関して、同時に、実行される。
【0123】
ステップ822において、電池システムは、放電を継続する。上述したように、放電ステップは、典型的には、放電状態中に、方法の他のステップと同時に実行していく。
【0124】
ステップ824では、電池システムがシャットダウン(すなわち、ターンオフ)されるべきか否かが判定される。制御部は、オン・オフインジケータが、電池システムがオン、又は、オフされるべきであることを示すか否かを判定する。このようなインジケータは、例えば、オン・オフスイッチの状態、又は、電池システムによって電源が供給されるシステムによって提供される信号であってもよい。シャットダウン判定は、また、電池が完全に放電されているか否かにも基づく。この実施例では、制御部は、バッテリが完全に放電されているとき、電池システムは、シャットダウンされるべきであると、及び、オン・オフインジケータが、「オン」に設定されているときでも、充電していないと、判定する。電池システムが充電状態にあり、及び、完全に充電されていれば、例えば、制御部は、オン・オフインジケータがオフに設定されている場合にのみ、電池システムは、シャットダウンされるべきと決定する。 しかし、いくつかの状況では、制御部は、他の条件を評価して、バッテリシステムが完全に充電されているかを判定してもよい。例えば、電池が完全に充電され、及び、放電していないため、電池が準備状態に達したならば、制御部は、電池を予め定められた最大時間期間の間、準備中とした後、電池をシャットダウンしてもよい。シャットダウンの判定は、他の要因に基づいてもよい。電池システムはターンオフされるべきであると判定された場合、方法は、ステップ826に続く。そうでない場合には、方法は、電池システムの監視、及び、管理を継続するステップ803に戻る。
【0125】
ステップ826において、電池システムのシャットダウン手順が実行される。制御部は、加熱システム、及び、電極材料分配システムを管理し、貯蔵部、及び、反応チャンバを系統的に冷却し、電池システムをオフ状態とする。本明細書の例では、制御部は、オフ状態のオン・オフインジケータを監視し、電池システムがオンにされるべきか否かを判定する。補助電源は、オフ状態で制御部に電力を供給してもよい。いくつかの状況では、電池システムは、オン・オフインジケータを監視せず、及び、バッテリ始動手順は、オン・オフインジケータの変化によって開始される。
【0126】
ステップ810において、電池システムが準備中モードにあると判定された場合、ステップ814において、加熱システムは、準備中状態に管理される。ステップ814において、反応チャンバ、電極材料分配システム、及び、選択された貯蔵部は、電池システムの動作温度に維持される。この実施例では、電極材料分配は、準備中モードでは、不活動である。本方法は、ステップ824に進む。
【0127】
ステップ810において、電池システムが充電状態にあると判定された場合、ステップ818において、加熱システムは、充電状態に管理される。ステップ818において、制御部は、加熱システムの部分を制御し、反応チャンバ、及び、電極材料分配システムを適切な動作温度に維持し、及び、選択された貯蔵部を加熱する。リチウム電極材料貯蔵部は加熱されるので、充電サイクル中に反応チャンバの負極電極領域にリチウムが生成されるように、流体リチウム電極材料を反応チャンバから加熱された貯蔵部に方向付けできる。リチウム電極材料貯蔵部が、ほぼ満容量になると、準備中のリチウム貯蔵部が加熱され、リチウム電極材料を受け入れるよう準備される。準備中のリチウム貯蔵部は、空であるか、又は、少なくとも、追加のリチウム電極材料を受け入れるために利用できる容量を有している。現在の活動硫黄電極材料貯蔵部の硫黄電極材料が、溶解硫黄(S8、、又は、他の硫黄種)、又は、ジ-リチウムポリサルファイド(Li)種に対する溶融硫黄(S8、、又は、他の硫黄種)のある比率のような要求される正極材料反応生成組成物に到達したときに、準備中の硫黄電極材料貯蔵部が動作温度に加熱されるように、硫黄電極材料貯蔵部は、加熱される。
【0128】
ステップ828において、電極材料の流れは、充電状態で管理される。制御部は、電極材料分配システムを制御し、流体電極材料を適切な貯蔵部から反応チャンバに方向付ける。制御部は、センサによって提供される情報に、少なくとも部分的に基づいて、バルブを開閉する。準備中のリチウム電極材料貯蔵部は、反応チャンバに接続され、及び、現在の活動リチウム電極材料貯蔵部のリチウム電極材料の体積が、十分に高いレベルに達したときに、現在の活動リチウム電極材料貯蔵部は、反応チャンバから切り離される。準備中のリチウム電極材料貯蔵部は、空であるか、又は、少なくともリチウム電極材料を受け入れる容量を有している。現在の活動硫黄電極材料貯蔵部の硫黄電極材料が、溶解硫黄(S8、、又は、他の硫黄種)、又は、ジリチウムポリサルファイド(Li)種に対する溶融硫黄(S8、、又は、他の硫黄種)のある比率のような要求される正極材料反応生成組成物に到達したときに、準備中の硫黄電極材料貯蔵部は、反応チャンバに接続され、及び、現在の活動硫黄電極材料貯蔵部は、反応チャンバから遮断される。本方法は、ステップ824に続く。
【0129】
したがって、本明細書で説明されるように、放電状態の間の準備中のリチウム電極材料貯蔵部は、反応チャンバに方向付けられるであろうリチウム電極材料を有するが、まだ活動リチウム電極材料貯蔵部ではないリチウム電極材料貯蔵部である。しかし、充電状態の間の準備中のリチウム電極材料貯蔵部は、空であるか、又は、少なくとも、反応チャンバからリチウム電極材料を受け入れる容量を有しているリチウム電極材料貯蔵部である。放電状態の間の準備中の硫黄電極材料貯蔵部は、正極材料内の負極材料の濃度が十分に低く、及び、比較的低い体積で、硫黄電極材料を含む硫黄電極材料貯蔵部である。充電状態の間の準備中の硫黄電極材料貯蔵部は、放電状態の間に使用されるため、正極材料内の負極材料の濃度がより高く、予備、比較的高い体積で、硫黄電極材料を含む硫黄電極材料貯蔵部である
【0130】
図9は、電池起動手順を実行する方法の一例を示すフローチャートである。したがって、図9の方法は、図8のステップ802を実行する方法の一例である。
【0131】
ステップ902において、オン・オフインジケータが「オン」に設定されているか否かが、判定される。いくつかの状況では、オン・オフインジケータは、スイッチの設定であってもよい。例えば、使用者は、選択した外部スイッチを、「オフ」設定を示すために、開き、又は、「オン」設定を示すために閉じてもよい。他の状況では、オン・オフインジケータは、外部システムによって提供される信号であってもよい。例えば、電池システムが電気自動車に設置されている場合、車両システムは、電池システムがオン、又は、オフにされるべきか否かを示すインジケータ信号を提供できる。インジケータが「オン」設定を示さないと判定された場合、方法は、ステップ902に続き、インジケータの監視を継続する。設定が「オン」である場合、方法は、一次反応チャンバが動作温度に加熱されるステップ904に続く。制御部は、加熱システムに適切な信号を送信し、一次反応チャンバを加熱する。電池システムが冗長な反応チャンバを有する場合、実施例では、ステップ904において、一次反応チャンバのみが、加熱される。上述したように、リチウムを有する負極、及び、硫黄を有する正極を有する電池システムの適切な動作温度の例は、400℃である。
【0132】
ステップ905において、電極材料分配システムは、動作温度に加熱される。制御部は、加熱システムに制御信号を提供し、選択された加熱システムの部分、又は、要素を動作させる。
【0133】
ステップ906において、一次貯蔵部が、加熱される。一次活動リチウム電極材料貯蔵部、及び、一次活動硫黄電極材料貯蔵部は、動作温度まで加熱される。制御部は、加熱システムに制御信号を提供し、選択された加熱システムの部分、又は、要素を動作させる。
【0134】
ステップ908において、冗長な反応チャンバが、動作温度に加熱される。冗長な反応チャンバを有するシステムでは、一次反応チャンバ、及び、一次貯蔵部が加熱された後に、冗長な反応チャンバが加熱される。制御部は、加熱システムに制御信号を提供し、選択された加熱システムの部分、又は、要素を動作させる。
【0135】
ステップ910において、冗長な貯蔵部が、動作温度まで加熱される。冗長な貯蔵部を有するシステムにおいて、冗長な貯蔵部は、一次反応チャンバ、一次貯蔵部、及び、冗長な反応チャンバが加熱された後に、加熱される。制御部は、加熱システムに制御信号を提供し、選択された加熱システムの部分、又は、要素を動作させる。冗長な反応チャンバ、又は、貯蔵部を有さない電池システム、又は、一次反応チャンバに故障、又は、想定された故障が発生したときに、冗長な反応チャンバ、又は、貯蔵部を加熱するだけの電池システムにおいては、ステップ908、及び、910を省略できる。
【0136】
図10は、電池シャットダウン手順を実行する方法の一例を示すフローチャートである。したがって、図10の方法は、図8のステップ826を実行する方法の一例である。
【0137】
ステップ1004において、冗長な貯蔵部が、冷却される。一例では、冗長な貯蔵部は、加熱されなくなり、及び、周囲温度まで冷却される。いくつかの状況では、エネルギーが、周囲温度以下まで冗長な貯蔵部を冷却するために使用されるので、効率性を犠牲にして、安全性の増加させるために、冗長な貯蔵部は、周囲温度より低い温度まで冷却される。冗長な貯蔵部を有するシステムでは、冗長な貯蔵部は、一次反応チャンバ、一次貯蔵部、及び、冗長な反応チャンバが冷却される前に、冷却される。制御部は、加熱システムに制御信号を提供し、選択された加熱システムの部分、又は、構成要素を不活動化し、冗長な貯蔵部を冷却できるようにする。冗長な貯蔵部が周囲温度未満に冷却される場合、制御部は、導管、又は、チャネルのような冷却要素を、冷却された伝熱流体で冷却することを管理し、貯蔵部を冷却してもよい。
【0138】
ステップ1006において、冗長な反応チャンバは、周囲温度まで冷却される。冗長な反応チャンバを有するシステムでは、冗長な反応チャンバは、一次反応チャンバの前に冷却され、及び、一次貯蔵部は、シャットダウン手順例の間に冷却される。制御部は、加熱システムに制御信号を提供し、選択された加熱システムの部分、又は、構成要素を不活動化し、任意の冗長な反応チャンバを冷却する。冗長な反応チャンバ、又は、貯蔵部を有さない電池システム、又は、一次反応チャンバ内の故障又はah化故障が発生したときに、冗長な反応チャンバ又は貯蔵部を加熱するだけのバッテリシステムにおいて、ステップ(1004)、(1006)を省略することができる
【0139】
ステップ1008において、活動貯蔵部は、周囲温度まで冷却される。制御部は、適切な信号を加熱システムに送り、貯蔵部の加熱の部分を不活動化し、貯蔵部を冷却させる。状況によっては、活動貯蔵部を周囲温度未満の温度まで冷却できる。
【0140】
ステップ1009において、電極材料分配システムは、周囲温度まで冷却される。制御部は、適切な信号を加熱システムに送り、電極材料分配システムの加熱の部分を不活動化し、電極材料分配システムを冷却させる。いくつかの状況では、電極材料分配システムを周囲温度未満の温度まで冷却できる。
【0141】
ステップ1010において、一次反応チャンバは、周囲温度まで冷却される。冗長な反応チャンバ、及び、冗長な貯蔵部を有する鵜システムでは、一次反応チャンバは、冗長な反応チャンバ、冗長な貯蔵部、及び、一次貯蔵部が冷却された後に、冷却される。制御部は、加熱システムに制御信号を供給して、選択された加熱システムの部分又は、要素を不活動化し、反応チャンバを冷却させる。いくつかの状況では、一次反応チャンバを周囲温度未満の温度まで冷却できる。
【0142】
図11は、電池システムの放電中に加熱システム、及び、電極材料分配システムを管理する方法の一例を示すフローチャートである。したがって、図11の方法は、図8のステップ816、及び、ステップ820を実行する方法の一例である。
【0143】
ステップ1102において、反応チャンバの動作温度が、維持される。制御部は、加熱システムに信号を提供し、加熱システムの反応チャンバの部分を管理し、反応チャンバを動作温度に維持する。
【0144】
ステップ1103において、電極材料分配システムの動作温度が、維持される。制御部は、加熱システムに信号を提供し、加熱システムの電極材料分配システムの部分を管理し、電極材料分配システムを動作温度に維持する。
【0145】
ステップ1104において、活動リチウム電極材料貯蔵部、及び、活動硫黄電極材料貯蔵部は、動作温度に維持される。制御部は、活動貯蔵部に関する加熱システムの貯蔵部の部分を制御し、その貯蔵部を加熱する。
【0146】
ステップ1106において、第1の正極放電閾値、又は、第1の負極放電閾値が満たされたか否かが、判定される。実施例では、制御部は、活動硫黄電極材料貯蔵部の電極材料のレベル、及び、活動リチウム電極材料貯蔵部のリチウム電極材料のレベルを示す、各貯蔵部に関する少なくとも1つのパラメータを監視する。上述のように、静電容量を示すセンサ用いて、硫黄電極材料貯蔵部のレベルを判定でき、及び、抵抗、又は、導電性を示すセンサを用いて、リチウム電極材料貯蔵部のレベルを判定できる。他のセンサ、パラメータ、及び、技術を用いて、第1の閾値が満たされるかを判定できる。第1の正極放電閾値が第1の硫黄電極材料貯蔵部のいずれかについて満たされている場合、方法は、ステップ1108に続く。第1の負極放電閾値が第1のリチウム電極材料貯蔵部のいずれかについて満たされた場合、方法は、ステップ1110に続く。第1の正極放電閾値、及び、第1の負極放電閾値のいずれも満たされない場合、方法は、図8を参照して説明した方法に従ってシステムを監視し、及び、管理し続け、そして、方法は、ステップ822に戻る。
【0147】
ステップ1108において、活動硫黄電極材料貯蔵部が第1の正極閾値を満たしている場合、準備中の硫黄電極材料貯蔵部は、反応チャンバごとに加熱される。制御部は、加熱システムに制御信号を提供し、準備中の硫黄電極材料貯蔵部を動作温度まで加熱する。
【0148】
ステップ1110において、活動リチウム電極材料貯蔵部が第1の負極閾値を満たしている場合、準備中のリチウム電極材料貯蔵部は、反応チャンバごとに加熱される。制御部は、加熱システムに制御信号を提供し、準備中のリチウム電極材料貯蔵部を動作温度まで加熱する。
【0149】
ステップ1108、又は、ステップ1110が実行された後、方法は、第2の正極放電閾値、又は、第2の負極放電閾値が満たされているか否かが判定されるステップ1112に続く。実施例では、制御部は、上述したように、活動硫黄電極材料貯蔵部の電極材料のレベル、及び、リチウム電極材料貯蔵部のリチウム電極材料のレベルを示す、各貯蔵部に関する少なくとも1つのパラメータを監視する。静電容量を示すセンサを用いて、硫黄電極材料貯蔵部のレベルを判定でき、及び、抵抗、又は、導電性を示すセンサを用いて、リチウム電極材料貯蔵部のレベルを判定できる。他のセンサ、パラメータ、及び、技術を用いて、第2の閾値が満たされるかを判定できる。どちらの第2の放電閾値も満たされていない場合、方法は、ステップ822に戻り、おして、図8を参照して説明した方法に従って、電池システムの管理を継続する。第2の正極放電閾値が、いずれかの活動硫黄電極材料貯蔵部について満たされている場合、方法は、ステップ1114に続く。第2の負極放電閾値が、いずれかの活動リチウム電極材料貯蔵部について満たされた場合、方法は、ステップ1122に続く。
【0150】
ステップ1112において、少なくとも1つの反応チャンバに関して第2の正極放電閾値が満たされたと判定された後、方法は、ステップ1114に続く。ステップ1114において、活動硫黄電極材料貯蔵部に関して第2の負極放電閾値に達した場合、各反応チャンバのための準備中の硫黄電極材料貯蔵部上で、供給バルブ、及び、リターンバルブを開く。制御部は、バルブに制御信号を提供し、バルブを開く。
【0151】
ステップ1116において、活動硫黄電極材料貯蔵部に関して第2の負極放電閾値に達した場合、各反応チャンバのための活動硫黄電極材料貯蔵部上で、供給バルブ、及び、リターンバルブが、閉じられる。制御部は、バルブに制御信号を提供し、バルブを閉じる。
【0152】
ステップ1118において、第2の正極放電閾値が満たされた場合、活動硫黄電極材料貯蔵部は、活動硫黄電極材料貯蔵部毎に、もはや加熱されない。制御部は、加熱システムに制御信号を提供し、第2の正極放電閾値が満たされる活動硫黄電極材料貯蔵部に関する貯蔵部の部分を不活動にする。
【0153】
ステップ1120において、待機硫黄電極材料貯蔵部は、第2の正極放電閾値が満たされた活動硫黄電極材料貯蔵部毎の活動硫黄電極材料として定義され、及び、活動硫黄電極材料貯蔵部は、反応チャンバから切り離される。したがって、元の活動硫黄電極材料貯蔵部が、もはや加熱されなくなった後、関連する反応チャンバに関して待機硫黄電極材料貯蔵部が、新しい活動硫黄電極材料貯蔵部となる。次に、方法は、ステップ822に続き、電池システムの放電、及び、管理を継続する。いくつかの状況では、ステップ1114、1116は、同時に実行される。他の状況では、ステップ1116は、ステップ1114の直後に実行される。さらに他の状況では、ステップ1114、及び、1116との間に遅延を適用して、活動硫黄電極材料貯蔵部、及び、待機硫黄電極材料貯蔵部の両方のバルブを、一定時間、開いたままにできる。このような技術によって、硫黄電極材料貯蔵部間での移送中に、硫黄電極材料の流れが中断される可能性が、最小化される。
【0154】
ステップ1122において、活動リチウム電極材料貯蔵部毎に第2の負極放電閾値に到達した場合、待機リチウム電極材料貯蔵部のバルブは、反応チャンバ毎に開かれる。活動リチウム電極材料貯蔵部のリチウム電極材料のレベルが第2の負極放電閾値に到達した場合、制御部は、制御信号を適切なバルブに提供し、各選択されたバルブを開き、リチウム電極材料を反応チャンバに流す。
【0155】
ステップ1124において、活動リチウム電極材料貯蔵部毎に第2の負極放電閾値に到達した場合、活動リチウム電極材料貯蔵部のバルブは、反応チャンバ毎に閉じられる。活動リチウム電極材料貯蔵部のリチウム電極材料のレベルが第2の負極放電閾値に到達した場合、制御部は、制御信号を適切なバルブに供給し、各選択されたバルブを閉じ、リチウム電極材料が、反応チャンバに流れることを停止させる。いくつかの状況では、ステップ1122、及び、1124は、同時に実行される。他の状況では、ステップ1124は、ステップ1122の直後に実行される。さらに他の状況では、ステップ1122、及び、1124との間に遅延を適用して、活動リチウム電極材料貯蔵部、及び、待機リチウム電極材料貯蔵部の両方のバルブを、一定時間、開いたままにできる。このような技術によって、リチウム電極材料貯蔵部間での移送中に、リチウム電極材料の流れが中断される可能性が、最小化される。
【0156】
ステップ1126において、第2の負極放電閾値が満たされた場合、活動リチウム電極材料貯蔵部は、もはや、活動リチウム電極材料貯蔵部毎に加熱されない。第2の正極放電閾値が満たされた場合、制御部は、制御信号を加熱システムに提供し、活動リチウム電極材料貯蔵部に関する貯蔵部の部分を不活動にする。
【0157】
ステップ1128において、第2の負極放電閾値が満たされた場合、待機リチウム電極材料貯蔵部は、活動リチウム電極材料貯蔵部毎に活動リチウム電極材料として定義される。したがって、現在の活動リチウム電極材料貯蔵部が、もはや、加熱されなくなった後、反応チャンバに関連付けられる待機リチウム電極材料貯蔵部が、新しい活動リチウム電極材料貯蔵部になる。そして、方法は、電池システムが放電を継続し、及び、図8を参照して説明した方法に従って管理されるステップ822に続く。
【0158】
図12は、電池システムの充電中に加熱システム、及び、電極材料分配システムを管理する方法の一例を示すフローチャートである。したがって、図12の方法は、図8のステップ818、及び、ステップ828を実行する方法の一例である。
【0159】
ステップ1202において、反応チャンバの動作温度が、維持される。制御部は、加熱システムに制御信号を提供し、加熱システムの反応チャンバの部分を管理し、反応チャンバを動作温度に維持する。
【0160】
ステップ1203において、電極材料分配システムの動作温度が、維持される。制御部は、加熱システムに制御信号を提供し、加熱システムの電極材料分配システムの部分を管理し、電極材料分配システムを動作温度に維持する。
【0161】
ステップ1204において、活動リチウム電極材料貯蔵部、及び、活動硫黄電極材料貯蔵部の動作温度が、維持される。制御部は、活動貯蔵部に関する加熱システムの貯蔵部の部分を制御し、貯蔵部を加熱する。
【0162】
ステップ1206において、第1の正極充電閾値、又は、第1の負極充電閾値が満たされたか否かが、判定される。実施例では、制御部は、活動硫黄電極材料貯蔵部の電極材料のレベル、及び、活動リチウム電極材料貯蔵部のリチウム電極材料のレベルを示す、各貯蔵部に関する少なくとも1つのパラメータを監視する。充電サイクル中、活動リチウム電極貯蔵部は、反応チャンバからリチウム電極材料を受け取り、及び、再充填されている貯蔵部である。したがって、第1の負極充電閾値は、活動リチウム電極材料貯蔵部の材料の体積に関連する。充電サイクル中、活動硫黄電極貯蔵部は、反応チャンバを通して硫黄電極材料を循環させる貯蔵部である。正極材料が反応チャンバを循環するとき、正極材料は、リチウムカチオンが固体電解質を通って反応チャンバの負極電極領域まで通過するときに、リチウムを使い果たす。したがって、第1の正極充電閾値は、活動硫黄電極材料貯蔵部の材料の体積に関連する。上述したように、静電容量を示すセンサを用いて、硫黄電極材料貯蔵部のレベルを判定でき、及び、抵抗、又は、導電性を示すセンサを用いて、リチウム電極材料貯蔵部のレベルを判定できる。他のセンサ、パラメータ、及び、技術を用いて、第1の閾値が満たされるかを判定できる。第1の正極充電閾値、及び、第1の負極充電閾値のいずれも満たされない場合、方法は、図8を参照して説明した方法に従ってシステムを監視し、及び、管理し続け、そして、方法は、ステップ830に戻る。第1の正極充電閾値が、いずれかの活動硫黄電極材料貯蔵部について満たされる場合、方法は、ステップ1208に続く。第1の負極充電閾値が、いずれかの活動リチウム電極材料貯蔵部について満たされる場合、方法は、ステップ1210に続く。
【0163】
ステップ1208において、活動硫黄電極材料貯蔵部が第1の正極充電閾値を満たしている場合、待機硫黄電極材料貯蔵部は、反応チャンバ毎に加熱される。制御部は、加熱システムに制御信号を提供し、待機硫黄電極材料貯蔵部を動作温度に加熱する。本明細書で検討されるように、充電状態の間の待機硫黄電極材料貯蔵部は、放電サイクル中に生成される追加の硫化リチウム生成物によって体積が増加した硫黄電極材料貯蔵部である。
【0164】
ステップ1210において、活動リチウム電極材料貯蔵部が第1の負極充電閾値を満たしている場合、待機いているリチウム電極材料貯蔵部は、反応チャンバ毎に加熱される。制御部は、加熱システムに制御信号を提供し、待機リチウム電極材料貯蔵部を動作温度に加熱する。充電プロセスにおける待機リチウム電極材料貯蔵部は、空であるか、または少なくとも、追加のリチウム電極材料を受け入れる容量を有するリチウム電極材料貯蔵部である。
【0165】
ステップ1208、又は、ステップ1210が実行された後、方法は、第2の正極充電閾値、又は、第2の負極充電閾値が満たされているか否かが判定されるステップ1212に続く。実施例では、制御部は、活動硫黄電極材料貯蔵部の電極材料のレベル、及び、活動リチウム電極材料貯蔵部のリチウム電極材料のレベルを示す、各貯蔵部に関する少なくとも1つのパラメータを監視する。上述のように、静電容量を示すセンサを用いて、硫黄電極材料貯蔵部のレベルを判定でき、及び、抵抗、又は、導電性を示すセンサを用いて、リチウム電極材料貯蔵部のレベルを判定できる。他のセンサ、パラメータ、及び、技術を用いて、第2の閾値が満たされるかを判定できる。第2の充電閾値が満たされていない場合、方法は、図8を参照して説明した方法に従って電池システムの管理、及び、監視が継続するステップ830に戻る。第2の正極充電閾値がいずれかの活動硫黄電極材料貯蔵部について満たされている場合、方法は、ステップ1214に続く。第2の負極充電閾値がいずれかの活動リチウム電極材料貯蔵部について満たされている場合、方法は、ステップ1222に続く。
【0166】
ステップ1214において、活動硫黄電極材料貯蔵部に関して第2の負極充電閾値に到達した場合、反応チャンバ毎に、待機硫黄電極材料貯蔵部上で、供給バルブ、及び、リターンバルブが、開かれる。制御部は、バルブに制御信号を提供し、バルブを開く。
【0167】
ステップ1216において、活動硫黄電極材料貯蔵部に関して第2の負極充電閾値に到達した場合、反応チャンバ毎に、活動硫黄電極材料貯蔵部上で、供給バルブ、及び、リターンバルブは、閉じられる。制御部は、バルブに制御信号を提供し、バルブを閉じる。
【0168】
ステップ1214、及び、1216は、いくつかの状況では、同時に実行され得る。他の状況では、ステップ1216は、ステップ1214の直後に実行される。さらに他の状況では、ステップ1124、及び、1126との間に遅延を適用して、活動硫黄電極材料貯蔵部、及び、待機硫黄電極材料貯蔵部の両方のバルブを、一定時間、開いたままにできる。このような技術によって、硫黄電極材料貯蔵部間の移送中の硫黄電極材料の流れが中断される可能性が、最小化される。
【0169】
ステップ1218において、第2の正極充電閾値が満たされた場合、活動硫黄電極材料貯蔵部は、もはや、活動硫黄電極材料貯蔵部毎に加熱されない。第2の正極充電閾値が満たされた場合、制御部は、制御信号を加熱システムに提供し、活動硫黄電極材料貯蔵部に関する貯蔵部の部分を不活動にする。
【0170】
ステップ1220において、第2の正極充電閾値が満たされた場合、待機硫黄電極材料貯蔵部は、活動硫黄電極材料貯蔵部毎に活動硫黄電極材料として定義される。したがって、現在の活動硫黄電極材料貯蔵部が、もはや、加熱されなくなった後、反応チャンバに関連付けられる待機硫黄電極材料貯蔵部が、新しい活動硫黄電極材料貯蔵部になる。そして、方法は、電池システムが、図8を参照して説明した方法に従って、放電され、監視され、及び、管理されるステップ830に戻る。
【0171】
ステップ1222において、活動リチウム電極材料貯蔵部について第2の負極充電閾値に到達した場合、待機リチウム電極材料貯蔵部のバルブは、反応チャンバ毎に開かれる。活動リチウム電極材料貯蔵部のリチウム電極材料のレベルが第2の負極充電閾値に到達した場合、制御部は、制御信号を適切なバルブに提供し、各選択されたバルブを開き、リチウム電極材料を反応チャンバに流す。充電中、第2の負極充電閾値は、リチウム電極材料貯蔵部が充電サイクル中に充填されているので、第1の負極充電閾値よりもリチウム電極材料貯蔵部内のより高い体積のリチウム電極材料と関連付けられる
【0172】
ステップ1224において、活動リチウム電極材料貯蔵部毎に第2の負極充電閾値に到達した場合、活動リチウム電極材料貯蔵部のバルブは、反応チャンバ毎に閉じられる。活動リチウム電極材料貯蔵部のリチウム電極材料のレベルが第2の負極充電閾値に到達した場合、制御部は、制御信号を適切なバルブに供給し、各選択されたバルブを閉じ、リチウム電極材料が、反応チャンバから活動リチウム電極材料貯蔵部に流れることを停止させる。いくつかの状況では、ステップ1222、及び、1224は、同時に実行される。他の状況では、ステップ1224は、ステップ1222の直後に実行される。さらに他の状況では、ステップ1222、及び、1224との間に遅延を適用して、活動リチウム電極材料貯蔵部、及び、待機リチウム電極材料貯蔵部の両方のバルブを、一定時間、開いたままにできる。このような技術によって、リチウム電極材料貯蔵部間での移送中に、リチウム電極材料の流れが中断される可能性が、最小化される。
【0173】
ステップ1226において、第2の負極充電閾値が満たされた場合、活動リチウム電極材料貯蔵部は、もはや、活動リチウム電極材料貯蔵部毎に加熱されない。第2の正極充電閾値が満たされた場合、制御部は、制御信号を加熱システムに提供し、活動リチウム電極材料貯蔵部に関する貯蔵部の部分を不活動にする。
【0174】
ステップ1228において、第2の負極充電閾値が満たされた場合、待機リチウム電極材料貯蔵部は、活動リチウム電極材料貯蔵部毎に活動リチウム電極材料として定義される。したがって、現在の活動リチウム電極材料貯蔵部が、もはや、加熱されなくなった後、反応チャンバに関連付けられる待機リチウム電極材料貯蔵部が、新しい活動リチウム電極材料貯蔵部になる。
【0175】
次に、方法は、図8を参照して説明された方法に従って、電池システムが、充電され、監視され、及び、管理されるステップ830に戻る。
【0176】
図13は、電極材料分配システム内でポンプを管理する方法の一例を示すフローチャートである。したがって、図13の方法は、図8のステップ803を実行する方法の一例である。
【0177】
ステップ1302において、電池システムの電流が下限電流閾値よりも大きいか否かが、判定される。制御部は、電流を示すセンサを監視し、及び、電流を下限閾値と比較する。電流が下限閾値を下回る場合、方法は、ステップ1304に進む。電流が下限閾値よりも下回らない場合、方法は、ステップ1306に続く。
【0178】
ステップ1306において、電池システムの電流が上限電流閾値よりも大きいか否かが、判定される。制御部は、電流を示すセンサを監視し、及び、電流を上限閾値と比較する。電流が上限閾値を上回る場合、方法は、ステップ1308に進む。電流が上限閾値よりも上回らない場合、方法は、ステップ1310に続く。
【0179】
ステップ1304において、正極材料分配システムのポンプは、オフにされる。制御部は、制御信号を提供し、供給ポンプ、及び、リターンポンプを駆動するモータをオフにし、ポンプを動作しなくする。
【0180】
ステップ1308において、正極材料分配システムのポンプは、最大速度に設定される。制御部は、制御信号を提供し、供給ポンプ、及び、リターンポンプを駆動するモータの速度を制御し、ポンプの速度を「高速」に設定する。
【0181】
ステップ1310において、正極材料分配システムのポンプは、中間速度に設定される。制御部は、制御信号を提供し、供給ポンプ、及び、リターンポンプを駆動するモータの速度を制御し、ポンプの速度を「中速」に設定する。
【0182】
したがって、放電中に放電電流が下限閾値を下回ると、固体硫化リチウム物生成物(LiS)の生成速度が十分に低くなり、ポンプをオフできる。固体LiSの生成は、反応チャンバでの反応を抑制し、及び、電池システム性能を低下させる可能性はない。しかし、放電電流が上限閾値を上回ると、固体硫化リチウム生成物(LiS)の生成率は十分に高く、ポンプを最大速度に設定することを保証する。放電電流が高いときの固体LiSの増加した生成物は、流体電極材料を凍結し、反応室を通る正極材料の流れを抑制し、反応チャンバの反応を抑制し、及び、電池システム性能を低下させる可能性がより高い。その結果、ポンプを高速に設定することによって、硫化リチウム生成物(LiS)の濃度を低下させ、及び、電池システムの性能を高めながら、追加の硫黄電極材料は、反応チャンバを通って移動させられる。電池システムからの放電電流が、下限電流閾値と上限電流閾値との間にある場合、中速設定は、不必要にポンプを高速に設定することなく、反応チャンバを通る硫黄電極材料の適切な流れを提供する。閾値は、電池システムのエネルギー生産の効率の最大化を、ポンプへの電力供給の効率の最大化に釣り合わせるように設定される。
【0183】
充電中に充電電流が下限閾値を下回ると、より高レベルの多硫化リチウム生成物(Lin+m、mは正の整数)、又は、硫黄種(即ち、S、S等)に対する多硫化リチウム生成物(Li)の分解率は十分に低く、ポンプをオフにできる。しかしながら、充電電流が上限閾値よりも高いとき、多硫化リチウム生成物(Li)からのリチウムカチオンの放出率は十分に高く、反応チャンバに、より高濃度の多硫化リチウム生成物(Li)をともなう電極材料を導入するために、ポンプを最大速度に設定することを保証する。より多くの多硫化リチウム生成物(Li)が、高電流条件下で、導入されない場合、多硫化リチウム生成物(Li)は、電池性能の問題を引き起こす反応チャンバの出力ポート264に到達する前に、硫黄種(即ち、S、S、S等)に移行できる。その結果、ポンプを梗塞に設定することによって、「完全に充電された」硫黄種(即ち、S、S等)の濃度を低下させ、及び、充電サイクル中の電池システムの性能を向上させながら、追加の多硫化リチウム生成物(Li)電極材料は、反応チャンバを通って移動させられる。電池システムからの充電電流が、下限電流閾値と上限電流閾値との間にある場合、中速設定は、不必要にポンプを高速に設定することなく、反応チャンバを通る多硫化リチウム生成物(Li)電極材料の適切な流れを提供する。閾値は、電池システムのエネルギー貯蔵の効率の最大化を、ポンプへの電力供給の効率の最大化に釣り合わせるように設定される。
【0184】
閾値は、電池システム電流に加えて、他のパラメータに基づいてもよい。例えば、閾値は、硫黄電極材料貯蔵部の硫黄電極材料のレベルに基づいてもよい。図13の例は、3つのポンプ速度(即ち、「オフ」、「中速」、及び、「高速」)を有するが、他のポンプ速度を用いてもよい。いくつかの状況では、ポンプを、「オン」、又は、「オフ」のいずれかに設定してもよい。他の状況では、3つ以上のポンプ速度設定を用いることができる。さらに、ポンプ速度は、ポンプ速度が可変であるように、多数の電位設定を有してもよい。例えば、ポンプ速度は、いくつかの状況では、電池システム電流の関数にできる。さらに、可変ポンプは、複数のパラメータ、及び、要因に基づいて出力されるアルゴリズムに基づいてもよい。一例では、ポンプの可変速は、電池システム電流、貯蔵部の硫黄正極材料に移送された総電荷、及び、硫黄電極材料貯蔵部の硫黄電極材料のレベルに基づく計算によって制御される。
【0185】
実施例に応じて、本明細書に記載されたいずれかの方法の特定の行為、又は、事象は、異なる順序で実行でき、追加され、統合され、又は、完全に取り除かれてもよい(例えば、方法の実施に関して、記載された全ての行為、又は、事象が必要でない)ことを理解すべきである。また、 ある実施例では、動作、又は、事象は、逐次的であり、又は、反転されるよりも、同時に、実行されてもよい。さらに、本開示の特定の態様は、明確性のために、単一のモジュール、又は、構成要素によって実行されるものとして、説明されているが、本開示に記載された機能は、構成要素の任意の適切な組み合わせによって実行されてもよいことを理解すべきである。
【0186】
明らかに、本発明の他の実施形態、及び、改変は、これらの教示に鑑みて、当業者に容易に行われるであろう。以上の説明は例示であり、及び、限定的なものではない。本発明は、上記明細書、及び、添付図面と合わせて見たときに、そのような実施形態、及び、改変を全て含む、以下の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。したがって、本発明の範囲は、上記の説明を参照して決定されるべきではなく、その代わりに、均等物の完全な範囲に加えて添付の特許請求の範囲を参照して決定されるべきである。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10
図11
図12
図13