(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】車両用クリーナシステム
(51)【国際特許分類】
B60S 1/48 20060101AFI20231124BHJP
B60S 1/62 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B60S1/48 Z
B60S1/62 120B
(21)【出願番号】P 2020567437
(86)(22)【出願日】2019-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2019050489
(87)【国際公開番号】W WO2020153081
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2019009592
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019009593
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019009594
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】河村 和貴
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一弘
(72)【発明者】
【氏名】舟見 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 義雄
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-105260(JP,A)
【文献】国際公開第2019/013138(WO,A1)
【文献】特開2014-011785(JP,A)
【文献】国際公開第2019/012882(WO,A1)
【文献】特開平04-121256(JP,A)
【文献】国際公開第2012/046264(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0290632(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108556800(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/00-1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転モードで走行可能な車両に搭載された洗浄対象に向かって洗浄液を吐出させる複数のクリーナユニットと、
前記クリーナユニットまで洗浄液を供給するモータポンプと、
各々の前記クリーナユニットと前記モータポンプとの間にそれぞれ設けられ、前記モータポンプから前記クリーナユニットへの洗浄液の移動の許可および不許可を切り替える電磁弁と、
前記電磁弁および前記モータポンプを制御する制御モジュールと、
各々の前記電磁弁と前記制御モジュールとの電気的接続の間にそれぞれ設けられ、前記電磁弁のショートまたはオープン時に、前記電磁弁に過電流が流れるのを保護し、前記電磁弁のショートおよびオープンを前記制御モジュールに伝える複数の保護診断部を有し、
前記制御モジュールは、前記保護診断部から取得した前記電磁弁のショートおよびオープンを示す信号に基づいて使用不可能な前記電磁弁の情報を、車両を制御する車両制御部へ出力する、車両用クリーナシステム。
【請求項2】
前記モータポンプに接続され、洗浄液を貯留するタンクと、
前記タンクに貯留された洗浄液の残量が所定値以下となったことを知らせる残量計を有し、
前記制御モジュールは、前記残量計から洗浄液の残量が所定値以下となったときにその旨を前記車両制御部へ出力する、請求項1に記載の車両用クリーナシステム。
【請求項3】
車両に搭載された洗浄対象に向かって洗浄液を吐出させる複数のクリーナユニットと、
前記クリーナユニットまで洗浄液を供給するモータポンプと、
各々の前記クリーナユニットと前記モータポンプとの間にそれぞれ設けられ、前記モータポンプから前記クリーナユニットへの洗浄液の移動の許可および不許可を切り替える常閉型電磁弁と、
電源から前記常閉型電磁弁および前記モータポンプへの通電を制御して、前記常閉型電磁弁および前記モータポンプを制御する制御モジュールと、
各々の前記電磁弁と前記制御モジュールとの電気的接続の間にそれぞれ設けられ、前記電磁弁のショートおよびオープン時に、前記電磁弁に過電流が流れるのを保護し、前記電磁弁のショートおよびオープンを前記制御モジュールに伝える複数の保護診断部を有し、
前記制御モジュールは、前記保護診断部から前記電磁弁のショートおよびオープンを示す信号を取得したときに、前記モータポンプを停止させる、車両用クリーナシステム。
【請求項4】
前記制御モジュールは、前記モータポンプを停止させたまま、ショートおよびオープンを示した前記電磁弁に通電して故障診断を行う、請求項3に記載の車両用クリーナシステム。
【請求項5】
車両に搭載された洗浄対象に向かって洗浄液を吐出させる複数のクリーナユニットと、
前記クリーナユニットまで洗浄液を供給するモータポンプと、
各々の前記クリーナユニットと前記モータポンプとの間にそれぞれ設けられ、前記モータポンプから前記クリーナユニットへの洗浄液の移動の許可および不許可を切り替える常閉型電磁弁と、
電源から前記常閉型電磁弁への通電を制御して、前記常閉型電磁弁の開閉を制御するクリーナ制御部と、を有し、
前記クリーナ制御部は、前記常閉型電磁弁を開状態とした後にPWM制御を行う、車両用クリーナシステム。
【請求項6】
前記クリーナ制御部は、30%以上70%以下のデューティー比で前記PWM制御を行う、請求項5に記載の車両用クリーナシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用クリーナシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両にカメラが搭載されてきている。カメラは取得した情報を、自車両を制御する車両用ECUなどに出力する。このようなカメラを洗浄液で洗浄可能な車両用クリーナが特許文献1などにより知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両には、複数のカメラやセンサが搭載されるようになってきている。これら複数のカメラやセンサを上述した車両用クリーナで洗浄することが考えられる。この場合には、複数の車両用クリーナを含む車両用クリーナシステムとして統合し、車両に搭載することが考えられる。
本発明は、どのクリーナが故障したかを把握できる車両用クリーナシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面に係る車両用クリーナシステムは、
自動運転モードで走行可能な車両に搭載された洗浄対象に向かって洗浄液を吐出させる複数のクリーナユニットと、
前記クリーナユニットまで洗浄液を供給するモータポンプと、
各々の前記クリーナユニットと前記モータポンプとの間にそれぞれ設けられ、前記モータポンプから前記クリーナユニットへの洗浄液の移動の許可および不許可を切り替える電磁弁と、
前記電磁弁および前記モータポンプを制御する制御モジュールと、
各々の前記電磁弁と前記制御モジュールとの電気的接続の間にそれぞれ設けられ、前記電磁弁のショートおよびオープン時に、前記電磁弁に過電流が流れるのを保護し、前記電磁弁のショートおよびオープンを前記制御モジュールに伝える複数の保護診断部を有し、
前記制御モジュールは、前記保護診断部から取得した前記電磁弁のショートおよびオープンを示す信号に基づいて使用不可能な前記電磁弁の情報を、車両を制御する車両制御部へ出力する。
【0006】
本発明の一側面に係る車両用クリーナシステムは、
車両に搭載された洗浄対象に向かって洗浄液を吐出させる複数のクリーナユニットと、
前記クリーナユニットまで洗浄液を供給するモータポンプと、
各々の前記クリーナユニットと前記モータポンプとの間にそれぞれ設けられ、前記モータポンプから前記クリーナユニットへの洗浄液の移動の許可および不許可を切り替える常閉型電磁弁と、
電源から前記常閉型電磁弁および前記モータポンプへの通電を制御して、前記常閉型電磁弁および前記モータポンプを制御する制御モジュールと、
各々の前記電磁弁と前記制御モジュールとの電気的接続の間にそれぞれ設けられ、前記電磁弁のショートおよびオープン時に、前記電磁弁に過電流が流れるのを保護し、前記電磁弁のショートおよびオープンを前記制御モジュールに伝える複数の保護診断部を有し、
前記制御モジュールは、前記保護診断部から前記電磁弁のショートおよびオープンを示す信号を取得したときに、前記モータポンプを停止させる。
【0007】
本発明の一側面に係る車両用クリーナシステムは、
車両に搭載された洗浄対象に向かって洗浄液を吐出させる複数のクリーナユニットと、
前記クリーナユニットまで洗浄液を供給するモータポンプと、
各々の前記クリーナユニットと前記モータポンプとの間にそれぞれ設けられ、前記モータポンプから前記クリーナユニットへの洗浄液の移動の許可および不許可を切り替える常閉型電磁弁と、
電源から前記常閉型電磁弁への通電を制御して、前記常閉型電磁弁の開閉を制御するクリーナ制御部と、を有し、
前記クリーナ制御部は、前記常閉型電磁弁を開状態とした後にPWM制御を行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、どのクリーナが故障したかを把握できる車両用クリーナシステムが提供される。
本発明によれば、応答性のよい電磁弁を有する車両用クリーナシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】クリーナシステムを搭載した車両の上面図である。
【
図5】第一状態における
図4のV-V線断面矢視図である。
【
図7】第二状態における
図4のV-V線断面矢視図である。
【
図8】
図7のVIII-VIII線断面矢視図である。
【
図9】後ポンプ、後カメラクリーナ、後LC、後WWに対して第八電磁弁~第十電磁弁が接続される様子を示した模式図である。
【
図10】後ポンプと第八電磁弁~第十電磁弁を駆動させる制御回路を示している。
【
図11】比較例に係る電磁弁を開くときのタイミングチャートである。
図11の(a)は、電磁弁の開状態および閉状態を示している。
図11の(b)は、電磁弁へ通電する電圧の変化を示している。
図11の(c)は、電磁弁のコイルの温度変化を示している。
【
図12】本実施形態に係る電磁弁を開くときのタイミングチャートである。
図12の(a)は、電磁弁の開状態および閉状態を示している。
図12の(b)は、電磁弁へ通電する電圧の変化を示している。
図12の(c)は、電磁弁のコイルの温度変化を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の第一実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、本実施形態の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、説明の便宜上、その説明は省略する。また、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0011】
また、本実施形態の説明では、説明の便宜上、「左右方向」、「前後方向」、「上下方向」について適宜言及する。これらの方向は、
図1に示す車両1について設定された相対的な方向である。ここで、「上下方向」は、「上方向」及び「下方向」を含む方向である。「前後方向」は、「前方向」及び「後方向」を含む方向である。「左右方向」は、「左方向」及び「右方向」を含む方向である。
【0012】
図1は、本実施形態に係る車両用クリーナシステム100(以下、クリーナシステム100と称す)が搭載された車両1の上面図である。車両1は、クリーナシステム100を備えている。本実施形態において、車両1は自動運転モードで走行可能な自動車である。
【0013】
まず、
図2を参照して車両1の車両システム2について説明する。
図2は、車両システム2のブロック図を示している。
図2に示すように、車両システム2は、車両制御部3と、内部センサ5と、外部センサ6と、ランプ7と、HMI8(Human Machine Interface)と、GPS9(Global Positioning System)と、無線通信部10と、地図情報記憶部11とを備えている。さらに、車両システム2は、ステアリングアクチュエータ12と、ステアリング装置13と、ブレーキアクチュエータ14と、ブレーキ装置15と、アクセルアクチュエータ16と、アクセル装置17とを備えている。
【0014】
車両制御部3は、電子制御ユニット(ECU)により構成されている。車両制御部3は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、各種車両制御プログラムが記憶されたROM(Read Only Memory)と、各種車両制御データが一時的に記憶されるRAM(Random Access Memory)とにより構成されている。プロセッサは、ROMに記憶された各種車両制御プログラムから指定されたプログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理を実行するように構成されている。車両制御部3は、車両1の走行を制御するように構成されている。
【0015】
内部センサ5は、自車両の情報を取得可能なセンサである。内部センサ5は、例えば、加速度センサ、速度センサ、車輪速センサ及びジャイロセンサ等の少なくとも一つである。内部センサ5は、車両1の走行状態を含む自車両の情報を取得し、該情報を車両制御部3に出力するように構成されている。
内部センサ5は、運転者が運転席に座っているかどうかを検出する着座センサ、運転者の顔の方向を検出する顔向きセンサ、車内に人がいるかどうかを検出する人感センサなどを備えていてもよい。
【0016】
外部センサ6は、自車両の外部の情報を取得可能なセンサである。外部センサは、例えば、カメラ、レーダ、LiDAR等の少なくとも一つである。外部センサ6は、車両1の周辺環境(他車、歩行者、道路形状、交通標識、障害物等)を含む自車両の外部の情報を取得し、該情報を車両制御部3に出力するように構成されている。あるいは、外部センサ6は、天候状態を検出する天候センサや車両1の周辺環境の照度を検出する照度センサなどを備えていてもよい。
カメラは、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(相補型MOS)等の撮像素子を含むカメラである。カメラは、可視光を検出するカメラや、赤外線を検出する赤外線カメラである。
レーダは、ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ又はレーザーレーダ等である。
LiDARとは、Light Detection and RangingまたはLaser Imaging Detection and Rangingの略語である。LiDARは、一般にその前方に非可視光を出射し、出射光と戻り光とに基づいて、物体までの距離、物体の形状、物体の材質、物体の色などの情報を取得するセンサである。
【0017】
ランプ7は、車両1の前部に設けられるヘッドランプやポジションランプ、車両1の後部に設けられるリヤコンビネーションランプ、車両の前部または側部に設けられるターンシグナルランプ、歩行者や他車両のドライバーに自車両の状況を知らせる各種ランプなどの少なくとも一つである。
【0018】
HMI8は、運転者からの入力操作を受付ける入力部と、走行情報等を運転者に向けて出力する出力部とから構成される。入力部は、ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダル、車両1の運転モードを切替える運転モード切替スイッチ等を含む。出力部は、各種走行情報を表示するディスプレイである。
【0019】
GPS9は、車両1の現在位置情報を取得し、当該取得された現在位置情報を車両制御部3に出力するように構成されている。無線通信部10は、車両1の周囲にいる他車の走行情報を他車から受信すると共に、車両1の走行情報を他車に送信するように構成されている(車車間通信)。また、無線通信部10は、信号機や標識灯等のインフラ設備からインフラ情報を受信すると共に、車両1の走行情報をインフラ設備に送信するように構成されている(路車間通信)。地図情報記憶部11は、地図情報が記憶されたハードディスクドライブ等の外部記憶装置であって、地図情報を車両制御部3に出力するように構成されている。
【0020】
車両1が自動運転モードで走行する場合、車両制御部3は、走行状態情報、周辺環境情報、現在位置情報、地図情報等に基づいて、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号のうち少なくとも一つを自動的に生成する。ステアリングアクチュエータ12は、ステアリング制御信号を車両制御部3から受信して、受信したステアリング制御信号に基づいてステアリング装置13を制御するように構成されている。ブレーキアクチュエータ14は、ブレーキ制御信号を車両制御部3から受信して、受信したブレーキ制御信号に基づいてブレーキ装置15を制御するように構成されている。アクセルアクチュエータ16は、アクセル制御信号を車両制御部3から受信して、受信したアクセル制御信号に基づいてアクセル装置17を制御するように構成されている。このように、自動運転モードでは、車両1の走行は車両システム2により自動制御される。
【0021】
一方、車両1が手動運転モードで走行する場合、車両制御部3は、アクセルペダル、ブレーキペダル及びステアリングホイールに対する運転者の手動操作に従って、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号を生成する。このように、手動運転モードでは、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号が運転者の手動操作によって生成されるので、車両1の走行は運転者により制御される。
【0022】
次に、車両1の運転モードについて説明する。運転モードは、自動運転モードと手動運転モードとからなる。自動運転モードは、完全自動運転モードと、高度運転支援モードと、運転支援モードとからなる。完全自動運転モードでは、車両システム2がステアリング制御、ブレーキ制御及びアクセル制御の全ての走行制御を自動的に行うと共に、運転者は車両1を運転できる状態にはない。高度運転支援モードでは、車両システム2がステアリング制御、ブレーキ制御及びアクセル制御の全ての走行制御を自動的に行うと共に、運転者は車両1を運転できる状態にはあるものの車両1を運転しない。運転支援モードでは、車両システム2がステアリング制御、ブレーキ制御及びアクセル制御のうち一部の走行制御を自動的に行うと共に、車両システム2の運転支援の下で運転者が車両1を運転する。一方、手動運転モードでは、車両システム2が走行制御を自動的に行わないと共に、車両システム2の運転支援なしに運転者が車両1を運転する。
【0023】
また、車両1の運転モードは、運転モード切替スイッチを操作することで切り替えられてもよい。この場合、車両制御部3は、運転モード切替スイッチに対する運転者の操作に応じて、車両1の運転モードを4つの運転モード(完全自動運転モード、高度運転支援モード、運転支援モード、手動運転モード)の間で切り替える。また、車両1の運転モードは、自動運転車が走行可能である走行可能区間や自動運転車の走行が禁止されている走行禁止区間についての情報または外部天候状態についての情報に基づいて自動的に切り替えられてもよい。この場合、車両制御部3は、これらの情報に基づいて車両1の運転モードを切り替える。さらに、車両1の運転モードは、着座センサや顔向きセンサ等を用いることで自動的に切り替えられてもよい。この場合、車両制御部3は、着座センサや顔向きセンサからの出力信号に基づいて、車両1の運転モードを切り替える。
【0024】
図1に戻り車両1は、外部センサ6として、前LiDAR6f、後LiDAR6b、右LiDAR6r、左LiDAR6l、前カメラ6c、後カメラ6dを有している。前LiDAR6fは車両1の前方の情報を取得するように構成されている。後LiDAR6bは車両1の後方の情報を取得するように構成されている。右LiDAR6rは車両1の右方の情報を取得するように構成されている。左LiDAR6lは車両1の左方の情報を取得するように構成されている。前カメラ6cは車両1の前方の情報を取得するように構成されている。後カメラ6dは車両1の後方の情報を取得するように構成されている。
【0025】
なお、
図1に示した例では、前LiDAR6fは車両1の前部に設けられ、後LiDAR6bは車両1の後部に設けられ、右LiDAR6rは車両1の右部に設けられ、左LiDAR6lは車両1の左部に設けられた例を示しているが、本発明はこの例に限られない。例えば車両1の天井部に前LiDAR、後LiDAR、右LiDAR、左LiDARがまとめて配置されていてもよい。
【0026】
車両1は、ランプ7として、右ヘッドランプ7rと左ヘッドランプ7lを有している。右ヘッドランプ7rは車両1の前部のうちの右部に設けられ、左ヘッドランプ7lは車両1の前部のうちの左部に設けられている。右ヘッドランプ7rは左ヘッドランプ7lよりも右方に設けられている。
【0027】
車両1は、フロントウィンドウ1fと、リヤウィンドウ1bを有している。
【0028】
車両1は、本発明の実施形態に係るクリーナシステム100を有している。クリーナシステム100は、洗浄対象物に付着する水滴や泥や塵埃等の異物を洗浄媒体を用いて除去するシステムである。本実施形態において、クリーナシステム100は、前ウィンドウウォッシャ(以降、前WWと称す)101、後ウィンドウウォッシャ(以降、後WWと称す)102、前LiDARクリーナ(以降、前LCと称す)103、後LiDARクリーナ(以降、後LCと称す)104、右LiDARクリーナ(以降、右LCと称す)105、左LiDARクリーナ(以降、左LCと称す)106、右ヘッドランプクリーナ(以降、右HCと称す)107、左ヘッドランプクリーナ(以降、左HCと称す)108、前カメラクリーナ109a、後カメラクリーナ109bを有する。各々のクリーナ101~109bは一つ以上のノズルを有し、ノズルから洗浄液または空気といった洗浄媒体を洗浄対象物に向けて吐出する。
【0029】
前WW101は、フロントウィンドウ1fを洗浄可能である。後WW102は、リヤウィンドウ1bを洗浄可能である。前LC103は、前LiDAR6fを洗浄可能である。後LC104は、後LiDAR6bを洗浄可能である。右LC105は、右LiDAR6rを洗浄可能である。左LC106は、左LiDAR6lを洗浄可能である。右HC107は、右ヘッドランプ7rを洗浄可能である。左HC108は、左ヘッドランプ7lを洗浄可能である。前カメラクリーナ109aは、前カメラ6cを洗浄可能である。後カメラクリーナ109bは、後カメラ6dを洗浄可能である。なお、以降の説明で前カメラクリーナ109aと後カメラクリーナ109bをまとめてカメラクリーナ109と呼ぶことがある。
【0030】
図3は、クリーナシステム100のブロック図である。クリーナシステム100は、クリーナ101~109bの他に、前タンク111、前ポンプ112、後タンク113、後ポンプ114、クリーナ制御部116を有している。
【0031】
前WW101、前LC103、右LC105、左LC106、右HC107、左HC108、前カメラクリーナ109aは、前ポンプ112を介して前タンク111に接続されている。前ポンプ112は前タンク111に貯留された洗浄液を、前WW101、前LC103、右LC105、左LC106、右HC107、左HC108、前カメラクリーナ109aに送る。
【0032】
後WW102と後LC104と後カメラクリーナ109bは、後ポンプ114を介して後タンク113に接続されている。後ポンプ114は後タンク113に貯留された洗浄液を後WW102と後LC104と後カメラクリーナ109bに送る。
【0033】
各々のクリーナ101~109bには、ノズルを開状態にさせて洗浄液を洗浄対象物に吐出させるアクチュエータが設けられている。各々のクリーナ101~109bに設けられたアクチュエータは、クリーナ制御部116に電気的に接続されている。また、クリーナ制御部116は、前ポンプ112、後ポンプ114、車両制御部3にも電気的に接続されている。
【0034】
本発明の第一実施形態に係るクリーナシステム100においてクリーナ制御部116は、車両制御部から出力される信号に基づいてセンサクリーナ103~106,109を作動させる信号をセンサクリーナ103~106,109へ出力するように構成されている。
【0035】
図3に示すように、本実施形態に係るクリーナシステム100において、前ポンプ112と前WW101とを接続する管路の間に第一電磁弁21、第一電磁弁21と前LC103とを接続する管路に第二電磁弁22、第二電磁弁22と右LC105とを接続する管路に第三電磁弁23、第三電磁弁23と左LC106とを接続する管路に第四電磁弁24、第四電磁弁24と右HC107とを接続する管路に第五電磁弁25、第五電磁弁25と左HC108とを接続する管路に第六電磁弁26、第六電磁弁26と前カメラクリーナ109aとを接続する管路に第七電磁弁27、がそれぞれ設けられている。
また、後ポンプ114と後カメラクリーナ109bとを接続する管路に第八電磁弁28、第八電磁弁28と後LC104とを接続する管路に第九電磁弁29、第九電磁弁29と後WW102とを接続する管路に第十電磁弁30、がそれぞれ設けられている。
【0036】
これら第一電磁弁21から第十電磁弁30はいずれも同じ構成を有している。第一電磁弁21について、
図4から
図8を用いて説明する。
図4は、第一電磁弁21の正面図である。
図4に示すように、第一電磁弁21は、第一管路40と、第二管路50を備えている。第一電磁弁21は、前ポンプ112から吐出されて第一電磁弁21に流入する洗浄液を前WW101に送ることを許容する第一状態と、前ポンプ112から吐出され第一電磁弁21に流入する洗浄液を前WW101に送らない第二状態と、を切替可能である。
【0037】
図5は、第一状態における
図4のV-V線断面矢視図である。
図6は
図5のVI-VI線断面矢視図である。
図5および
図6に示すように、第一管路40は、第一軸線Aに沿って延びている。洗浄液は、基本的には、第一管路40内を
図5における上方から下方に向かって流れる。第一管路40は、内径の異なる3つの部位で構成されている。これら3つの部位を、上流側から下流側に向かって、収納部41、上流部42、下流部43と呼ぶ。収納部41の内径は、上流部42の内径および下流部43の内径よりも大きい。上流部42の内径は、収納部41の内径よりも小さく、下流部43の内径よりも大きい。下流部43の内径は、収納部41の内径および上流部42の内径よりも小さい。
【0038】
収納部41には、ソレノイド60が収容されている。ソレノイド60は、コイル61(固定子)と、可動子62と、ヨーク63と、バネ64を含んでいる。バネ64は非圧縮状態でヨーク63と可動子62との間に設けられている。可動子62は、第一軸線Aに沿って直線的に変位可能である。可動子62の移動方向の先端(バネ64と反対側の先端)に封止部65が設けられている。封止部65はゴムなどの弾性変形可能な材料で形成されている。
【0039】
可動子62は、収納部41と上流部42とに跨るように設けられている。収納部41と上流部42との境界付近には、シール部材44が設けられている。シール部材44は可動子62の外周面に摺接する。シール部材44は、上流部42から収納部41への洗浄液の進入を阻止しつつ、可動子62が移動方向に沿って移動することを許容する。つまり収納部41には洗浄液が進入することはない。
【0040】
上流部42(合流部)では、第一管路40と第二管路50が合流する。第二管路50を流れてきた洗浄液は、上流部42において第一管路40に進入する。合流する部位よりも下流で、上流部42と下流部43との境界には、受座45が設けられている。受座45の内径は、封止部65の外径よりも小さい。
【0041】
下流部43は、配管を介して前WW101に接続されている。下流部43の下流側の端部に第一出口側端部46が設けられている。
【0042】
第二管路50は、第一軸線Aと交差する第二軸線Bに沿って延びている。図示した例においては、第二管路50は第一管路40と直交する方向に延びている。
図4に示した例において、洗浄液は第二管路50を左方から右方に流れる。第二管路50の上流側(左側)には、入口側端部51が設けられている。入口側端部51は、配管を介して前ポンプ112に接続されている。第二管路50の下流側(右側)には、第二出口側端部52が設けられている。第二出口側端部52は、配管を介して第二電磁弁22に接続されている。第二管路50は、入口側端部51と第二出口側端部52の間で、第一管路40と合流している。
【0043】
図7は、第二状態における
図4のV-V線断面矢視図である。
図8は
図7のVIII-VIII線断面矢視図である。
図5および
図7に示したように、封止部65は第一管路40の第一軸線Aに沿って直線的に移動可能である。封止部65は、受座45に密着する位置と受座45から離間した位置とに移動可能である。
図7および
図8に示したように、封止部65が受座45に密着すると、洗浄液が上流部42から下流部43へ流れることが阻止される。
【0044】
コイル61に通電しない通常状態においては、第一電磁弁21は
図7および
図8に示した閉状態となっている。この閉状態においては、バネ64が封止部65による押圧力と上流部42に貯まった洗浄液の静水圧が、封止部65を受座45に押し付けるように作用している。例えば、第二電磁弁22が閉状態であるなど、第二管路50の第二出口側端部52で洗浄液の移動が阻止されているときには、上流部42に溜まった洗浄液の静水圧によって封止部65が受座45に押し付けられる。また、第二電磁弁22が開状態である場合でも、第二管路50を流れる洗浄液の全圧のうち、静水圧が封止部65を受座45に押し付けるように作用する。
【0045】
なお、コイル61に通電すると、可動子62にコイル61に近づこうとする力(
図5において上方に向かう力)が生じる。可動子62はバネ64の弾性力に抗してバネ64を圧縮させながら、
図5の上方に移動する。すると、封止部65は受座45から離間して、第二管路50から第一管路40の第一出口側に洗浄液が流れる。
【0046】
このように、本実施形態に係る電磁弁によれば、コイル61を通電しない通常状態において、バネ64が封止部65による押圧力と上流部42に貯まった洗浄液の静水圧が、封止部65を受座45に押し付けるように作用し、閉状態が維持されている。つまり封止部65に静水圧が作用するので、閉状態を維持するために封止部65を受座45に押し付けるバネ64の押圧力を大きく設定しなくてもよい。これにより、開状態にするために可動子62をコイル61に引きつける力も大きく設定する必要がなくなる。このため、コイル61への通電量を大きく設定する必要が無い。コイル61へ通電する電源ユニットを小型化できたり、あるいはコイル61の放熱を促すラジエータを設ける必要がなくなり、クリーナシステム100をコンパクトに構成することができる。
【0047】
図9は、後ポンプ114、後カメラクリーナ109b、後LC104、後WW102に対して第八電磁弁28~第十電磁弁30が接続される様子を示した模式図である。
図9に示したようにクリーナシステム100は、
上述した構造の第八電磁弁28を含む上流側分岐部71と、
上流側分岐部71の第八電磁弁28の入口側端部51に接続され、洗浄液を貯留する後タンク113と、
上流側分岐部71の第八電磁弁28の第一出口側端部46に接続された上流側クリーナユニット(後カメラクリーナ109b)と、
上述した構造の第十電磁弁30を含む下流側分岐部73と、
上流側分岐部71の第八電磁弁28の第二出口側端部52と下流側分岐部73の第十電磁弁30の入口側端部51とを接続する接続部72と、
下流側分岐部73の第十電磁弁30の第一出口側端部46に接続された下流側クリーナユニット(後WW102)と、
下流側分岐部73の第十電磁弁30の第二出口側端部52に設けられ、第十電磁弁30の第二出口側端部52から外部への洗浄液の吐出を防止する閉塞部74と、を有している。
なお、図示したクリーナシステム100において、接続部72は、第九電磁弁29を含む中間分岐部を構成している。接続部72は、複数の電磁弁を含んでいてもよい。
【0048】
第十電磁弁30の第二出口側端部52が閉塞部74で閉塞されている。このため、第十電磁弁30においては、開状態と閉状態のいずれの状態においても、第二出口側端部52から洗浄液が流れ出ることがない。つまり、第十電磁弁30の開状態と閉状態とを切り替えることにより、後WW102への洗浄液の吐出の許可と不許可とを切り替えることができる。また、閉塞部74によって第二出口側端部52が常時閉塞されているため、第十電磁弁30が閉状態のときには、合流部に溜まった洗浄液の全圧(静水圧)が封止部65に作用している。
【0049】
本実施形態に係るクリーナシステム100は、消費電力の少ない複数の電磁弁で構成されているので、消費電力が少ない。
【0050】
またこのように、上流側の電磁弁の第一出口側端部46が下流側の電磁弁の入口側端部51に接続されるように、複数の電磁弁が互いに接続されるように構成してもよい。このような構成により、複数のクリーナへの洗浄液の供給を個別に許可する/許可しないを切り替えることが可能な車両用クリーナシステム100が提供される。
【0051】
図10は、後ポンプ114、第八電磁弁28~第十電磁弁30を駆動させる制御回路118を示している。制御回路118は、クリーナ制御部116の一部である。
図10に示すように、制御回路118は、制御モジュール119と、複数のIPD(インテリジェントパワーデバイス)と、複数の逆接保護回路201,202と、複数のスイッチ221~224を備えている。
後ポンプ114は、複数のスイッチ221~224を介して電源IGおよび制御モジュール119に接続されている。制御モジュール119がスイッチ221~224を適宜切り替えることにより、後モータポンプ114は、正回転と逆回転とで回転可能である。
【0052】
第八電磁弁28~第十電磁弁30のコイル61は、IPD218~220と逆接保護回路201,202を介して電源IGに接続されている。電源IGと第八IPD218との間に逆接保護回路201,202が設けられている。逆接保護回路201,202と第八電磁弁28の間に第八IPD218が設けられている。
【0053】
各々のIPD218~220は、電源IGと、各々の電磁弁28~30と、制御モジュール119に接続されている。各々のIPD218~220は、電源IGから過電圧・過電流が入力された時に、IPD218~220の出力側に接続された各々の電磁弁28~30を保護する。また、IPD218~220は、各々の電磁弁28~30にショートおよびオープンが生じると、制御モジュール119へ各々の電磁弁28~30のショートおよびオープンを示す信号を制御モジュール119に出力する。例えば、電源IGから過電流が入力されてきた場合に、第八IPD218は第八電磁弁28に過電流が流れることを阻止し、第八電磁弁28を保護する。また、第九電磁弁29にオープンが生じると、第九IPD219は、制御モジュール119へ第九IPD219のオープンを示す信号を出力する。
【0054】
制御モジュール119は、通信線を介して車両制御部3と接続されている。制御モジュール119は、IPD218~220から取得した電磁弁28~30のショートおよびオープンを示す信号に基づいて、ショートおよびオープンしている電磁弁28~30を車両制御部3へ出力するように構成されている。例えば、第八電磁弁28がショートしていることを示す信号が第八IPD218から出力されてきた場合、制御モジュール119は、第八電磁弁28がショートしていることを示す信号を車両制御部3に出力するように構成されている。
【0055】
このように、本実施形態に係る車両用クリーナシステム100によれば、各々のIPD218~220(保護診断部)によって各々の電磁弁の状態を把握することができる。つまり、どのクリーナが使用可能かを常に把握することができる。このため、車両制御部3はクリーナの状況に適した車両の制御を行うことができる。例えば、前カメラ6cを洗う前カメラクリーナ109aが故障した場合には車両制御部3は自動運転モードを実行せず、後カメラ6dを洗う後カメラクリーナ109bが故障した場合には自動運転モードを実行するように構成できる。このように、どのクリーナが故障したかを把握し、その情報を制御モジュール119が車両制御部3に伝達することにより、車両制御部3はクリーナの状況に適した車両の制御を行うことができる。
【0056】
また、
図10に示したように、車両用クリーナシステム100は、後タンク113に貯留された洗浄液の残量が所定値以下となったことを知らせる残量計115を有し、制御モジュール119は残量計115から洗浄液の残量が所定値以下となったときにその旨を車両制御部3へ出力するように構成してもよい。
制御モジュール119がクリーナの故障とともにタンクの残量不足を車両制御部3に伝達することにより、車両制御部3はタンクの残量不足時には自動運転モードを実行しないといった制御を行うことができる。
【0057】
なお、上述した実施形態では、
図9および
図10を用いて、後ポンプ114と第八電磁弁28~第十電磁弁30を含む車両用クリーナシステム100を説明したが、前ポンプ112と第一電磁弁~第七電磁弁を含む車両用クリーナシステム100も、IPDを使って制御回路118を同様に構成できる。
【0058】
また、上述した実施形態では、前ポンプ112から供給される洗浄媒体の吐出を切り替える第一電磁弁21~第七電磁弁27を含む車両用クリーナシステム100と、後ポンプ114から供給される洗浄媒体の吐出を切り替える第八電磁弁28~第十電磁弁30を含む車両用クリーナシステム100とが互いに独立した車両用クリーナシステム100として構成した例を説明したが、本発明はこれに限られない。単一のクリーナ制御部116が、前ポンプ112から供給される洗浄媒体の吐出を切り替える第一電磁弁21~第七電磁弁27と、後ポンプ114から供給される洗浄媒体の吐出を切り替える第八電磁弁28~第十電磁弁30を制御するように車両用クリーナシステム100を構成してもよい。
【0059】
また本実施形態に係る車両用クリーナシステム100は、電磁弁の故障時に故障の影響が広がりにくい。本実施形態において、制御モジュール119は、各々のIPD218~220からその電磁弁28~30のショートまたはオープンを示す信号を取得したときに、後ポンプ114(モータポンプ)を停止させるように構成されている。例えば制御モジュール119が、第八IPD218から第八電磁弁28がショートまたはオープンしていることを示す信号を取得したとき、スイッチ221~224をOFFにして、後ポンプ114の作動を停止させる。
【0060】
このような構成によれば、ある電磁弁21~30がショートして動作しなくなったとしても、他の部品への悪影響を低減できる。例えば第九電磁弁29がショートし、第九電磁弁29が閉状態のまま開かなくなったことを想定する。
図3に示したように、後ポンプ114と第九電磁弁29との間の管路には、第八電磁弁28が接続されている。
すると、第九電磁弁29が開かないにも関わらず、後ポンプ114を作動し続けてしまった場合には、後ポンプ114と第九電磁弁29との間の管路の洗浄液の液圧が高くなり過ぎてしまい、後ポンプ114や第八電磁弁28に高圧が作用してしまうことになる。このため、第九電磁弁29に加えて、後ポンプ114や第八電磁弁28も故障を引き起こしてしまうことがある。
本発明に係る車両用クリーナシステム100によれば、いずれかの電磁弁28~30のショートまたはオープンが検出された時点で、後ポンプ114の作動が停止されるので、後ポンプ114や他の電磁弁28~30に悪影響が及びにくい。
【0061】
なお、制御モジュール119は、後ポンプ114を停止させたまま、ショートまたはオープンを示した電磁弁に通電して故障診断を行うように構成してもよい。後ポンプ114を停止させた状態であれば、洗浄媒体の液圧が高まることがなく、他の部品に悪影響を及ぼしにくい。
【0062】
ところで、車両に特許文献1のようなクリーナシステムを搭載する際には、小型の電磁弁によりクリーナシステムを構成することが求められる。電磁弁の開閉は、コイルが生じさせる電磁力により行われる。電磁弁を小型化していくと、電磁力を生じさせるときにコイルで生じる熱が逃げにくくなり、応答性が悪くなる。そこで本発明によれば、応答性のよい電磁弁を有する車両用クリーナシステムが提供される。
【0063】
上述したように構成される車両用クリーナシステム100において、電磁弁21~30を開状態とするために、クリーナ制御部116は電磁弁21~30への通電を制御する。
図11は、比較例に係る電磁弁21~30を開くときのタイミングチャートである。
図11の(a)は、クリーナ制御部116が車両制御部3から取得したクリーナを作動させる信号を示している。
図11の(a)は、クリーナ制御部116が、クリーナを作動させないOFF信号を取得した後にクリーナを作動させるON信号を取得したことを示している。
図11の(b)は、電磁弁21~30へ通電する電圧の変化を示している。
図11の(c)は、電磁弁21~30のコイル61の温度変化を示している。
図11に示したように、電磁弁21~30を開状態とするために、電磁弁21~30へ電力を供給し続けると、電磁弁21~30のコイル61で熱が生じ、コイル61の温度が上昇してしまう。高温のコイル61に通電しても所定の電磁力が生じにくく、電磁弁21~30を開けられなくなってしまうことがある。この場合には、所定の冷却期間を経た後でなければ電磁弁21~30が再び動作しないので、電磁弁21~30の応答性が悪くなってしまうことがある。
【0064】
そこで本実施形態に係る車両用クリーナシステム100においては、クリーナ制御部116は、電磁弁21~30(常閉型電磁弁)を開状態にした後にPWM(Pulse Width Modulation)制御を行う。
図12は、本実施形態に係る電磁弁21~30を開くときのタイミングチャートである。
図12の(a)は、クリーナ制御部116が車両制御部3から取得したクリーナ作動信号を示している。
図12の(a)は、クリーナ制御部116が、クリーナを作動させないOFF信号を取得した後にクリーナを作動させるON信号を取得したことを示している。
図12の(b)は、電磁弁21~30へ通電する電圧の変化を示している。
図12の(c)は、電磁弁21~30のコイルの温度変化を示している。
【0065】
電磁弁21~30を開状態にするためには、コイル61へ通電して封止部65を受座45から完全に離間した位置に移動させる。コイル61へ通電することにより、可動子62を、受座45の反対側へそれ以上該方向へ移動できない限界位置まで移動させる。この可動子62が限界位置まで移動させた状態が、開状態である。なお、封止部65が受座45に密着した状態が閉状態であり、閉状態から開状態に至るまでの間の状態を遷移状態と呼ぶ。
【0066】
例えば、電磁弁21~30には、可動子62の受座45の反対側への移動を規制するストッパ66が設けられている(
図5および
図7参照)。可動子62の後端がこのストッパ66に当接する位置が限界位置である。なお、電磁弁21~30の構造によっては、ストッパ66ではなく収納部41の内部に設けられた突部によって可動子62の限界位置が定められていることもある。
【0067】
図12の(a)に示すように、クリーナ制御部116が車両制御部3からクリーナを1秒間作動させる信号を取得したとする。クリーナ制御部116は、まず閉状態から開状態にするために電磁弁21~30へ所定時間に亘って連続的に大きな電流を流す。これは、できるだけ大きな電力をコイル61へ供給し続けて、素早く電磁弁21~30を開状態にさせるためである。一般的には、クリーナ制御部116はクリーナ制御部116が供給し得る最大電圧をコイル61に連続的に付与する。
【0068】
電磁弁21~30が開状態となったら、クリーナ制御部116は、
図12の(a)に示すように、PWM制御を行う。可動子62を開状態の限界位置に維持しておくために要する力は、可動子62を受座45に密着していた位置からこの限界位置まで移動させるために要する力より弱い。つまり、可動子62を限界位置まで移動させてしまえば、コイル61への通電量を低減してもよい。そこで本実施形態においては、クリーナ制御部116は、電磁弁21~30を開状態とした後に、PWM制御を行うように構成されている。換言すれば、クリーナ制御部116は、クリーナを作動させる信号を取得すると、まず電磁弁21~30へ連続的に通電して開状態にし、クリーナを作動させる信号を取得してから所定期間Tの経過後にPWM制御を行うように構成されている。このため、開状態を維持する間のコイル61への通電量が少なく、コイル61が発熱しにくい。このため、電磁弁21~30の応答性が悪くなりにくい。また、PWD制御は電磁弁21~30を開状態とした後に行われ、電磁弁21~30を閉状態から開状態とするまでの間はPWD制御を行わない。このため電磁弁21~30を素早く開状態にすることができ、閉状態から開状態にするときの応答性が損なわれない。
【0069】
図12において、クリーナ作動信号を受信している期間において、クリーナ制御部116はクリーナ作動信号を取得してすぐに連続通電を所定期間T行い、所定期間T経過後にPWM制御を行う。もっとも、車両制御部3がクリーナ制御部116にクリーナを作動させ続けるように要求する時間は、該所定期間Tより長い。
【0070】
なお、電磁弁21~30の可動子62が限界位置に達したか否かを検出可能なセンサを電磁弁21~30に設け、該センサの出力を取得したら連続通電からPWM制御を行うように構成してもよい。しかしながらこのようなセンサを搭載せず、クリーナ作動信号を取得した後にまず所定期間T連続通電を行い、該所定期間T経過後にPWM制御を行うように構成することが好ましい。
【0071】
なお、連続通電する所定期間T(クリーナ作動信号を取得してからPWM制御を開始するまでの期間)は、可動子62を閉状態である受座45に密着していた位置から開状態となる限界位置まで移動させるための時間と、温度上昇に応じてコイル61の電磁力の低下が生じるまでの時間に応じて定めることができる。連続通電する所定期間Tは、電磁弁21~30の特性や、電磁弁21~30の車両への取付状態などに応じて異なるが、おおよそ0.5秒以下とすることが好ましい。
【0072】
図12に示したように、本実施形態の車両用クリーナシステム100によれば、電磁弁21~30を開状態にした後にPWM制御を行うので、電磁弁21~30への通電量を低く抑えたまま電磁弁21~30を開状態に維持することができる。このため、電磁弁21~30が高温になりにくく、電磁弁21~30の応答性が低下しにくい。
【0073】
また、PWM制御のデューティー比は、30%以上とすることが好ましい。デューティー比が30%未満であると、電磁弁21~30を連続して開状態に維持することが難しくなる場合がある。
また、PWM制御のデューティー比は、70%以下とすることが好ましい。デューティー比が70%超であると、コイル61からの放熱量よりも通電による発熱量が大きくなり過ぎて、コイル61の温度が高くなり過ぎてしまうことがある。
【0074】
<種々の変形例>
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0075】
本実施形態では、車両の運転モードは、完全自動運転モードと、高度運転支援モードと、運転支援モードと、手動運転モードとを含むものとして説明したが、車両の運転モードは、これら4つのモードに限定されるべきではない。車両の運転モードは、これら4つのモードの少なくとも1つを含んでいてもよい。例えば、車両の運転モードは、いずれか一つのみを実行可能であってもよい。
【0076】
さらに、車両の運転モードの区分や表示形態は、各国における自動運転に係る法令又は規則に沿って適宜変更されてもよい。同様に、本実施形態の説明で記載された「完全自動運転モード」、「高度運転支援モード」、「運転支援モード」のそれぞれの定義はあくまでも一例であって、各国における自動運転に係る法令又は規則に沿って、これらの定義は適宜変更されてもよい。
【0077】
上述した実施形態では、クリーナシステム100を自動運転可能な車両に搭載した例を説明したが、クリーナシステム100は自動運転不可能な車両に搭載してもよい。
【0078】
なお上述した実施形態では、クリーナ101,103,105~109aが前タンク111に接続され、クリーナ102,104,109bが後タンク113に接続された例を説明したが、本発明はこれに限られない。
クリーナ101~109bが単一のタンクに接続されていてもよい。クリーナ101~109bがそれぞれ互いに異なるタンクに接続されていてもよい。
あるいは、クリーナ101~109bが、その洗浄対象の種類ごとに共通のタンクに接続されていてもよい。例えば、LiDARを洗浄するクリーナ103~106が共通の第一タンクに接続され、ヘッドランプを洗浄するクリーナ107,108が、第一タンクと異なる第二タンクに接続されるように構成してもよい。
あるいは、クリーナ101~109bが、その洗浄対象の配置位置ごとに共通のタンクに接続されていてもよい。例えば、前WW101と前LC103と前カメラクリーナ109aが共通の前タンクに接続され、右LC105と右HC107が共通の右タンクに接続され、後WW102と後LC104と後カメラクリーナ109bが共通の後タンクに接続され、左LC106と左HC108が共通の左タンクに接続されるように構成してもよい。
【0079】
なお、上述した実施形態では、
図3に示したように、前ポンプ、前WW、前LC、右LC、左LC、右HC、左HC、前カメラクリーナを洗浄するクリーナが一つのユニットを構成し、後ポンプ、後カメラクリーナ、後LC、後WWが別の一つのユニットを構成する例を説明した。本発明はこれに限られない。また、各々の洗浄対象が前ポンプや後ポンプに対して接続される順番もこの例に限られない。また、上述した実施形態では、
図3に示したように、一つの電磁弁の下流に一つのクリーナが接続される例を説明した。本発明はこれに限られない。一つの電磁弁の下流に複数のクリーナが接続されるように構成してもよい。一つの電磁弁の下流に、同時に洗浄する場合が多い洗浄対象物を洗浄する複数のクリーナを接続してもよい。
【0080】
本出願は、2019年1月23日出願の日本特許出願(特願2019-009592)、2019年1月23日出願の日本特許出願(特願2019-009593)および2019年1月23日出願の日本特許出願(特願2019-009594)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によれば、どのクリーナが故障したかを把握できる車両用クリーナシステムが提供される。
【符号の説明】
【0082】
1 車両
2 車両システム
3 車両制御部
21~30 電磁弁
40 第一管路
41 収納部
42 上流部
43 下流部
44 シール部材
45 受座
46 第一出口側端部
50 第二管路
51 入口側端部
52 第二出口側端部
60 ソレノイド
61 コイル
62 可動子
63 ヨーク
64 バネ
65 封止部
71 上流側分岐部
72 接続部
73 下流側分岐部
74 閉塞部
100 車両用クリーナシステム
100 クリーナシステム
101~109b クリーナ
111 前タンク
112 前ポンプ
113 後タンク
114 後ポンプ
115 残量計
116 クリーナ制御部
118 制御回路
119 制御モジュール
201,202 逆接保護回路
218~220 保護診断部
221~224 スイッチ