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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】キャビテーション処理装置
(51)【国際特許分類】
   B23P 17/00 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
B23P17/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021039606
(22)【出願日】2021-03-11
(65)【公開番号】P2022139300
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 英明
(72)【発明者】
【氏名】三辺 征夫
(72)【発明者】
【氏名】光江 豊彰
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特許第6250488(JP,B2)
【文献】特開平10-142376(JP,A)
【文献】特開2011-083892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 17/00;
B26F 3/00;
B24C 5/02;
B08B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の高圧水を噴射する第1のノズルを有する第1のノズルユニットと
第2のノズルユニットであって、
第2の高圧水を噴射する第2のノズルと
前記第2の高圧水を前記第2のノズルに供給する内管と、
先端部に配置される第1の昇降溝を有し、前記内管の外方に、前記内管と一体に回転可能に、かつ、前記内管に対して相対的に軸方向に移動可能に支持される外管と、
前記内管と一体に前記第2のノズルを旋回させる旋回部であって、
前記内管または前記外管と接続する旋回溝と、
旋回駆動源と、
前記旋回溝と係合し、前記旋回駆動源によって回転する旋回係合部と、
を有する旋回部と、
前記外管および前記内管のいずれか一方を昇降する昇降部であって、
昇降駆動源と、
前記昇降駆動源と接続する昇降係合部と、
前記昇降係合部と係合し、前記外管および前記内管のいずれか一方に配置される第2の昇降溝と、
を有する昇降部と、
前記第2のノズルを揺動させる揺動部であって、
前記内管の先端部に揺動可能に配置され、前記第2のノズルと連結するノズル揺動部と、
前記ノズル揺動部に配置され、前記昇降部によって前記外管が前記ノズル揺動部に近接するときに、前記第1の昇降溝に係合して、前記外管に対する前記ノズル揺動部の昇降動作に伴って前記ノズル揺動部が揺動する揺動係合部と、
を有する揺動部と、
を含む第2のノズルユニットと、
備えるキャビテーション処理装置。
【請求項2】
ワークを配置する固定部と、
前記固定部を内部に配置する水槽と、を有する、請求項に記載のキャビテーション処理装置。
【請求項3】
前記第1のノズルユニットおよび前記第2のノズルユニットをX軸に移動させるX軸移動部と、
前記第1のノズルユニットおよび前記第2のノズルユニットをY軸に移動させるY軸移動部と、
前記第1のノズルユニットおよび前記第2のノズルユニットをZ軸に移動させるZ軸移動部と、を有する、請求項1又は2に記載のキャビテーション処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品にキャビテーション処理をするためのキャビテーション処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機部品等の高機能部品に対して、キャビテーション処理をすることによって、各種部品の表面に圧縮残留応力を付加することや、ディンプルを形成することで摩擦を緩和するとともに潤滑油を保持すること等が行われる。
【0003】
しかし、液体(例えば、水)を利用したキャビテーションは、原理的に解明されていないことも多く、キャビテーションを安定的に制御するための方法の確立や装置化は容易ではない。一部、原子力分野において、装置化が図られてはいるものの、まだまだ発展の余地がある。
【0004】
例えば、原子力プラントの管状体に適用するのに好適なウォータージェットピーニング装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この装置は、着座部材と、着座部材に旋回可能に取り付けられた旋回部と、旋回部に設けられ昇降される昇降装置とを備える。また、この装置は、着座部材がウォータージェットピーニング施工対象物である管状体上に着座されたとき、管状体内に挿入される噴射ノズルと、昇降部材に取り付けられ、着座部材が管状体上に着座されたとき、管状体の外部に配置される噴射ノズルとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6250488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の装置は、原子力プラントの管状体等のメンテンナンス等を行う場合に用いるものであり、自動車産業等の一般産業向けに応用するためには、操作性が良く、小型の装置が期待されていた。
【0007】
また、ウォータージェットを用いたキャビテーション処理の場合、高圧水を利用する。ウォータージェットは、様々な用途に利用されており、表面処理、洗浄、剥離、切断、バリ取り等の分野で効果的な技術である。しかし、キャビテーション処理、表面処理、洗浄、剥離、切断、バリ取り等を1台の装置で行うとなると、装置が複雑化および大型化し、結果、高額な装置となり、一般産業向けには利用し難い、という課題があった。
【0008】
本発明は、洗浄、バリ取り、およびキャビテーション処理を複合的に行うことができ、小型化が可能で汎用性の高いキャビテーション処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のキャビテーション処理装置は、第1の高圧水を噴射する第1のノズルを有する第1のノズルユニットと、第2のノズルユニットであって、第2の高圧水を噴射する第2のノズルと前記第2の高圧水を前記第2のノズルに供給する内管と、先端部に配置される第1の昇降溝を有し、前記内管の外方に、前記内管と一体に回転可能に、かつ、前記内管に対して相対的に軸方向に移動可能に支持される外管と、前記内管と一体に前記第2のノズルを旋回させる旋回部であって、前記内管または前記外管と接続する旋回溝と、前記内管と接続する旋回溝と、旋回駆動源と、前記旋回溝と係合し、前記旋回駆動源によって回転する旋回係合部と、を有する旋回部と、前記外管および前記内管のいずれか一方を昇降する昇降部であって、昇降駆動源と、前記昇降駆動源と接続する昇降係合部と、前記昇降係合部と係合し、前記外管および前記内管のいずれか一方に配置される第2の昇降溝と、を有する昇降部と、前記第2のノズルを揺動させる揺動部であって、前記内管の先端部に揺動可能に配置され、前記第2のノズルと連結するノズル揺動部と、前記ノズル揺動部に配置され、前記昇降部によって前記外管が前記ノズル揺動部に近接するときに、前記第1の昇降溝に係合して、前記外管に対する前記ノズル揺動部の昇降動作に伴って前記ノズル揺動部が揺動する揺動係合部と、を有する揺動部と、を含む第2のノズルユニットと、備える
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、洗浄、バリ取り、およびキャビテーション処理を複合的に行うことができ、小型化が可能で汎用性の高いキャビテーション処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態のキャビテーション処理装置を模式的に示す斜視図
図2】実施形態のキャビテーション処理装置を模式的に示す上面図
図3】実施形態のキャビテーション処理装置における制御装置の詳細を示す正面図
図4】実施形態のキャビテーション処理装置における第1のノズルユニットの詳細を模式的に示す断面図
図5】実施形態のキャビテーション処理装置における第2のノズルユニットの詳細を模式的に示す断面図
図6】実施形態のキャビテーション処理装置における固定部の変形例を模式的に示す斜視図
図7】実施形態のキャビテーション処理装置におけるノズルユニットの変形例の詳細を模式的に示す断面図
図8】実施形態のキャビテーション処理装置における第2のノズルユニットの変形例の詳細を模式的に示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下に示す図面において、同一または同種の部材については、同一の参照符号を付し、重複した説明を適宜省略する。また、部材のサイズ及び形状は、説明の便宜のため、変形または誇張して模式的に表す場合がある。
本実施形態のキャビテーション処理装置1は、自動車等の一般産業分野で利用される各種部品や、一般的な金属部材等の表面に対して、キャビテーション処理を行う。
キャビテーション処理装置1を用いることによって、1台の装置で、洗浄、キャビテーションピーニング、バリ取りおよびディンプル形成等を行うことができる。すなわち、キャビテーション処理装置1は、部品洗浄だけでなく、部品を表面改質することで、部品寿命の向上、高機能および高付加価値な部品を製作することもできる。
キャビテーション処理装置1は、図1に示すように、本体2と、ノズルユニット3(第1のノズルユニット3a、第2のノズルユニット3b)と、固定部5aと、制御装置10と、を有する。
【0014】
本体2は、キャビテーション処理装置1の本体である。本体2は、ノズルユニット3を連結する移動部6を備える。移動部6は、スライド機構、ボールねじ等の回転直動変換機構等を用いることで、ノズルユニット3をXYZ軸方向に移動する機構である。図1に示すように、移動部6は、第1のノズルユニット3aおよび第2のノズルユニット3bをX軸方向に移動させるX軸移動部6aと、第1のノズルユニット3aおよび第2のノズルユニット3bをY軸方向に移動させるY軸移動部6bと、第1のノズルユニット3aおよび第2のノズルユニット3bをZ軸方向に移動させるZ軸移動部6cと、を備える。
【0015】
図2に示すように、ノズルユニット3は、洗浄、バリ取り、およびキャビテーション処理をするために、高圧水供給源Pから供給される高圧水Lをノズル4から噴射する。高圧水Lは、第1の高圧水L1および第2の高圧水L2の総称である(図4図5参照)。図2では、高圧水供給源Pの上方を覆う天板は省略した。キャビテーション処理は、キャビテーションピーニングおよびディンプル形成を含む。ノズルユニット3は、第1のノズルユニット3aおよび第2のノズルユニット3bで構成する。ノズル4は、第1のノズル4aおよび第2のノズル4bで構成する(図4図5参照)。
【0016】
図4に示すように、第1のノズルユニット3aは、高圧水供給源P(図2参照、以下同様)から供給される第1の高圧水L1を第1のノズル4aから噴射する部位である。第1のノズルユニット3aは、第1の高圧水L1を通過させるノズル流路4eと、ノズル流路4eの先端に配置する第1のノズル4aを有する。ノズル流路4eは、Z軸移動部6c(図1参照、以下同様)に設置された基部7に固定されている。第1のノズル4aは、洗浄用、バリ取り用に用いるノズルである。
【0017】
図5に示すように、第2のノズルユニット3bは、高圧水供給源Pから供給される第2の高圧水L2を第2のノズル4bから噴射する部位である。第2のノズルユニット3bは、第2の高圧水L2を第2のノズル4bに供給する内管11と、内管11の外周に配置された外管12と、外管12の外周に配置された支持部13と、を有する。内管11は、Z軸移動部6cに設置された基部7に対して、上下動不可で、中心軸のまわりに回転可能に取り付けられている。外管12と内管11とは、例えばキー部材等を用いることで、中心軸方向に摺動可能で、周方向(回転方向)に連動するように構成されている。
なお、第1の高圧水L1および第2の高圧水L2は、同一または複数の高圧水供給源Pからスイベルジョイント18を介して供給される。
【0018】
また、第2のノズルユニット3bは、第2のノズル4bを旋回させる旋回部14と、第2のノズル4bを揺動させる揺動部16と、を有する。第2のノズル4bは、内管11および外管12の中心軸のまわりに旋回させられる。
【0019】
旋回部14は、旋回駆動源14aと、旋回駆動源14aの回転が旋回軸14bを介して伝達されるとともに、支持部13に設けられた旋回溝13aと係合する旋回係合部14cと、を有する。旋回駆動源14aは、エアモータ等である。旋回軸14bは、旋回駆動源14aに連結し、旋回駆動源14aの回転を伝達する軸である。旋回係合部14cは、旋回軸14bと連結し、歯車、凹凸、段差等、支持部13の旋回溝13aと係合する形状であればよい。
【0020】
旋回駆動源14aの駆動に伴い、旋回軸14bを介して、旋回係合部14cが回転する。そして、旋回係合部14cと支持部13の旋回溝13aとが係合した状態で、支持部13と連結する外管12を介して内管11を回転させることで、第2のノズル4bおよびノズル本体4dが内管11および外管12の中心軸のまわりに旋回する。
【0021】
揺動部16は、第2のノズル4bと連結するノズル揺動部16aと、昇降部15による昇降に伴い、外管12に設けられた第1の昇降溝19aと係合するノズル揺動溝16bと、を有する。ノズル揺動部16aは、ノズル本体4dに連結し、第2のノズル4bを揺動させる。ノズル揺動溝16bは、ノズル揺動部16aと連結し、歯車、凹凸、段差等、外管12の第1の昇降溝19aと係合する形状であればよい。
【0022】
昇降駆動源15aの駆動に伴い、昇降軸15bを介して、昇降係合部15cが回転する。そして、昇降係合部15cと外管12に設けられた第2の昇降溝19bが係合した状態で、外管12を昇降させる。これにより、第1の昇降溝19aがノズル揺動溝16bと係合し、ノズル揺動部16aおよび第2のノズル4bが、内管11および外管12の中心軸に対して傾斜した軸(ここでは直交する軸)を中心として揺動する。
【0023】
昇降部15は、昇降駆動源15aと、昇降駆動源15aの回転が昇降軸15bを介して伝達されるとともに、外管12に設けられた第2の昇降溝19bと係合する昇降係合部15cと、を有する。昇降駆動源15aは、エアモータ等である。昇降軸15bは、昇降駆動源15aに連結し、昇降駆動源15aの回転を伝達する軸である。
昇降係合部15cは、昇降軸15bと連結し、歯車、凹凸、段差等、外管12の第2の昇降溝19bと係合する形状であればよい。
【0024】
図1に示すように、固定部5aは、ワークWを配置する。固定部5aは、ワークWを載置できる台であればよく、水槽5内に収まる大きさであればよい。ワークWを固定ジグや締結具を用いて固定することもできる。
【0025】
固定部5aの変形例として、図6に示すように、回転式のものを採用することもできる。変形例に係る固定部5bの両端に傾斜軸51を配置して、その両端に設けられた柱部52の少なくとも一方に配置される駆動源(モータやシリンダ機構等)を駆動させることで、固定部5bを傾斜させることができる。さらに、固定部5bの上部に回転テーブル5cを配置して、回転テーブル5cの下部に配置される駆動源(モータやシリンダ機構等)を駆動させることで、回転テーブル5cを360°回転させることができる。この場合、ワークWは、回転テーブル5c上に載置される。なお、制御装置10を用いて、固定部5bの傾斜と回転テーブル5cの回転について、角度、速度、タイミング等の組み合わせを制御することができる。
移動部6(X軸移動部6a、Y軸移動部6b、Z軸移動部6c)の3軸制御に、傾斜軸51のA軸、回転テーブル5cのB軸の2軸制御を加えることによって、5軸制御の装置として構成することができる。
【0026】
水槽5は、水中で、洗浄、バリ取り、およびキャビテーション処理を行うために、水等の液体を貯留する囲いである。水槽5内の液体の表面位置(水位)は、ワークWの大きさによって異なるため、図2に示すように、水位調整部9を配置し、水槽5内の液体量を調整することができる。水位調整部9は、水槽5と連通する水位調整通路9aと、外部から液体を出し入れする排出通路9bを有する。その他、水槽5は、処理後の高圧水Lに含まれるワークWのバリ等を除去するために、別途、排出部を設けることや、水位調整部9内に液体の浄化部を内包または連結することでもできる。
【0027】
制御装置10は、図3に示すように、洗浄、キャビテーションピーニング、バリ取り、およびディンプル形成を行うために、高圧水Lによる作業モードを、第1のモードM1~~第4のモードM4の中から選択して切り換える。第1のモードM1は、ワークWを洗浄するモードである。第2のモードM2は、ワークWをキャビテーションピーニングするモードである。第3のモードM3は、ワークWをバリ取りするモードである。第4のモードM4は、ワークWにディンプルを形成するモードである。また、制御装置10は、操作表示パネル10aを用いて、各モードに適した高圧水Lの圧力、流量、位置(X、Y、Z軸の位置)等を調整することができる。
【0028】
次に、ノズルユニット3の変形例(第3のノズルユニット3c)について、図7を用いて、説明する。第3のノズルユニット3cは、ワークWを洗浄する第1のノズル4aと、ワークWをキャビテーションピーニングする第2のノズル4bと、ワークWをバリ取りする第3のノズル4cと、を有する。キャビテーション処理装置1は、ワークWに対して、洗浄、キャビテーションピーニング、バリ取りおよびディンプル形成するために、圧力が10~100MPa、流量が20~70L/minの範囲内の高圧水Lを用いる。ディンプル形成は、第2のノズル4bを用いて行われる。
【0029】
図7に示すように、切換部17を配置することで、第1のノズル4a~第3のノズル4cのONおよびOFFを切り換える。具体的には、切換部17は、第1の切換部17aと、第2の切換部17bと、第3の切換部17cと、を有する。第1の切換部17aは、第1のノズル4aのONおよびOFFを切り換える。第2の切換部17bは、第2のノズル4bのONおよびOFFを切り換える。第3の切換部17cは、第3のノズル4cのONおよびOFFを切り換える。切換部17としては、電磁バルブ、電磁弁等を用いることができ、制御装置10の操作表示パネル10a(図3参照)を用いて、ONおよびOFFを切り換えることができる。
【0030】
次に、第2のノズルユニット3bの変形例(第4のノズルユニット3d)について、図8を用いて、説明する。第2のノズルユニット3bでは、旋回部14が支持部13と連結する外管12を回転させ、昇降部15が外管12を昇降させる。これに対して、第4のノズルユニット3dは、旋回部14が支持部13と連結する内管11を回転させ、昇降部15が内管11を昇降させる点で、第2のノズルユニット3bと相違する。第4のノズルユニット3dは、第2の高圧水L2を第2のノズル4bに供給する内管11と、内管11の外周に配置された外管12と、内管11の外周に配置された支持部13と、を有する。外管12は、Z軸移動部6cに設置された基部7に対して、上下動不可で、中心軸のまわりに回転可能に取り付けられている。外管12と内管11とは、中心軸方向に摺動可能で、周方向(回転方向)に連動するように構成されている。外管12は、先端部のみが内管11と連動して回転可能であってもよい。
【0031】
図8に示すように、旋回駆動源14aの駆動に伴い、旋回軸14bを介して、旋回係合部14cが回転する。そして、旋回係合部14cと支持部13の旋回溝13aとが係合した状態で、支持部13と連結する内管11を回転させることで、第2のノズル4bおよびノズル本体4dが内管11および外管12の中心軸のまわりに旋回する。また、昇降駆動源15aの駆動に伴い、昇降軸15bを介して、昇降係合部15cが回転する。そして、昇降係合部15cと内管11に設けられた第2の昇降溝19bが係合した状態で、内管11を昇降させる。これにより、第1の昇降溝19aがノズル揺動溝16bと係合し、ノズル揺動部16aおよび第2のノズル4bが揺動する。
【0032】
次に、本実施形態のキャビテーション処理方法について説明する。以下、図1図5に示すキャビテーション処理装置1を用いた場合について説明する。この処理方法は、第1の高圧水L1を第1のノズル4aから噴射し、ワークWを洗浄する工程と、第2の高圧水L2を第2のノズル4bから噴射し、ワークWをキャビテーションピーニングする工程と、を含む。また、この処理方法は、第1の高圧水L1を第1のノズル4aから噴射し、ワークWをバリ取りする工程を含む。さらに、この処理方法は、第2の高圧水L2を第2のノズル4bから噴射し、ワークWにディンプルを形成する工程を含めることもできる。
【0033】
最初に、ワークWの固定作業と、高圧水による作業モード(第1のモードM1:洗浄、第2のモードM2:キャビテーションピーニング、第3のモードM3:バリ取り、第4のモードM4:ディンプル形成)の選択とを行う。まずは、水槽5内の固定部5aにワークWを固定し、水位調整部9から供給する液体量を調整することで、水槽5内の水位を調整する。次に、X軸移動部6a、Y軸移動部6b、Z軸移動部6cで、ノズルユニット3(第1のノズルユニット3a、第2のノズルユニット3b)の位置を調整する。さらに、高圧水供給源Pを起動し、第1のノズル4aおよび第2のノズル4bから高圧水Lを噴射できる状態とすることで、準備段階は完了する。
【0034】
次に、第1のモードM1である洗浄を選択した場合、ワークWに対して、圧力が10~100MPa、流量が20~70L/minの範囲内の第1の高圧水L1を噴射する。第1のモードM1を選択することによって、X軸移動部6a、Y軸移動部6b、Z軸移動部6cを動作させ、ワークWに対する第1のノズルユニット3aのXYZ軸方向の位置を調整する。第1のモードM1において、ワークWに第1の高圧水L1を噴射することによって、ワークW表面(内面を含む。以下同様)に付着する付着物を洗浄することができる。
【0035】
また、第2のモードM2であるキャビテーションピーニングを選択した場合、ワークWに対して、圧力が10~100MPa、流量が20~70L/minの範囲内の第2の高圧水L2を噴射し、ワークWをキャビテーションピーニングする。第2のモードM2を選択することによって、X軸移動部6a、Y軸移動部6b、Z軸移動部6cを動作させ、ワークWに対する第2のノズルユニット3bのXYZ軸方向の位置を調整する。第2のモードM2において、ワークWに第2の高圧水L2を噴射することによって、ワークW表面にキャビテーション気泡を衝突させ、ワークW表面における残留圧縮応力を付与することができる。
【0036】
また、第3のモードM3であるバリ取りを選択した場合、ワークWに対して、圧力が10~100MPa、流量が20~70L/minの範囲内の第1の高圧水L1を噴射し、バリを取る。第3のモードM3を選択することによって、X軸移動部6a、Y軸移動部6b、Z軸移動部6cを動作させ、ワークWに対する第1のノズルユニット3aのXYZ軸方向の位置を調整する。第3のモードM3において、ワークWに第1の高圧水L1を噴射することによって、ワークW表面に付着するバリをバリ取りすることができる。
【0037】
また、第4のモードM4であるディンプル形成を選択した場合、ワークWに対して、圧力が10~100MPa、流量が20~70L/minの範囲内の第2の高圧水L2を噴射し、ワークWにディンプルを形成する。第4のモードM4を選択することによって、X軸移動部6a、Y軸移動部6b、Z軸移動部6cを移動させ、ワークWに対する第2のノズルユニット3bのXYZ軸方向の位置を調整する。第4のモードM4において、ワークWに第2の高圧水L2を噴射することによって、ワークW表面にキャビテーション気泡を衝突させ、ワークW表面にディンプルを形成することができる。特に、高圧水(ウォータージェット)を利用したキャビテーションピーニングの場合、鉄球等を用いるショットピーニング等と比較して、ディンプルの深さが安定しており、細かな処理を施せる。また、高圧水を利用する方法は、処理後の鉄球等の回収が不要であるため、より効果的な手法である。
なお、第1のモードM1、第3のモードM3の場合は第1のノズルユニット3aを用い、第2のモードM2、第4のモードM4の場合は第2のノズルユニット3bを用いたが、これに限定されず、例えば逆であってもよい。
このように本実施形態によれば、洗浄、バリ取り、およびキャビテーション処理を複合的に行うことができ、小型化が可能で汎用性の高いキャビテーション処理装置1およびキャビテーション処理方法を提供できる。
なお、洗浄、バリ取り、キャビテーションピーニング、ディンプル形成の単一のモードで利用することもできるが、複数のモードを連続的に利用することもできる。
【0038】
以上、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0039】
1 キャビテーション処理装置
2 本体
3 ノズルユニット
3a 第1のノズルユニット
3b 第2のノズルユニット
3c 第3のノズルユニット(変形例)
3d 第4のノズルユニット(変形例)
4 ノズル
4a 第1のノズル(洗浄用ノズル)
4b 第2のノズル(キャビテーションピーニング用ノズル)
4c 第3のノズル(バリ取り用ノズル)
4d ノズル本体
4e ノズル流路
5 水槽
5a 固定部
5b 固定部(変形例)
5c 回転テーブル
6 移動部
6a X軸移動部
6b Y軸移動部
6c Z軸移動部
7 基部
9 水位調整部
9a 水位調整通路
9b 排出通路
10 制御装置
10a 操作表示パネル
11 内管
12 外管
13 支持部
13a 旋回溝
14 旋回部
14a 旋回駆動源
14b 旋回軸
14c 旋回係合部
15 昇降部
15a 昇降駆動源
15b 昇降軸
15c 昇降係合部
16 揺動部
16a ノズル揺動部
16b ノズル揺動溝
17 切換部
17a 第1の切換部
17b 第2の切換部
17c 第3の切換部
18 スイベルジョイント
19a 第1の昇降溝
19b 第2の昇降溝
51 傾斜軸
52 柱部
W ワーク
L 高圧水
L1 第1の高圧水
L2 第2の高圧水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8