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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】認識度指数設定装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20231124BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20231124BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20231124BHJP
   G16Y 40/10 20200101ALI20231124BHJP
   G06Q 40/08 20120101ALI20231124BHJP
【FI】
G08G1/16 F
G06T7/00 660A
G06T7/00 650Z
G16Y10/40
G16Y40/10
G06Q40/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021059656
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022156121
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2021-11-29
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 茉菜
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 豊
(72)【発明者】
【氏名】岡田 隆博
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-015451(JP,A)
【文献】特開2010-250445(JP,A)
【文献】特開2017-091017(JP,A)
【文献】特開2020-067711(JP,A)
【文献】特開2006-244344(JP,A)
【文献】特許第3465590(JP,B2)
【文献】特開2003-331388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G06T 7/00
G16Y 10/00-40/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方を撮像する第1撮像装置により撮像された前記車両の前方情報から、ドライバによる危険運転を検出する危険運転検出部と、
前記車両の前記ドライバの顔を撮像する第2撮像装置により撮像された前記ドライバの顔情報から、該ドライバの表情を検出する表情検出部と、
前記危険運転検出部により危険運転が検出されたときの、前記表情検出部により検出された前記ドライバの表情に基づいて、危険運転をしたことに対するドライバ自身の認識度を示す認識度指数を設定する認識度指数設定部と
前記危険運転検出部により検出される前記危険運転の危険度を設定する危険度設定部と、
前記表情検出部により検出される表情に基づいて、前記ドライバの感情の変化度を推定する感情変化推定部と、を備え、
前記認識度指数設定部は、前記危険度設定部により設定された危険度が所定以上のときの前記感情変化推定部により推定された感情の変化度と、前記危険度設定部により設定された危険度が所定未満のときの前記感情変化推定部により推定された感情の変化度と、の差分が小さいほど、前記認識度指数を高く設定することを特徴とする認識度指数設定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の認識度指数設定装置において、
前記危険運転検出部は、道路の路面標示、交差点に設置された信号機の表示および他車両との車間距離のいずれかに基づいて、前記ドライバによる危険運転を検出することを特徴とする認識度指数設定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の認識度指数設定装置において、
前記認識度指数設定部により設定された前記認識度指数を送信する送信部をさらに備え、
前記送信部は、前記ドライバの関係者が所持する端末に、前記認識度指数を送信することを特徴とする認識度指数設定装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の認識度指数設定装置において、
前記認識度指数設定部により設定された前記認識度指数を送信する送信部をさらに備え、
前記送信部は、前記ドライバの契約する自動車保険を提供する保険会社の事業体端末に、前記認識度指数を送信することを特徴とする認識度指数設定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を運転するドライバの危険運転に対する認識度を示す認識度指数を設定する認識度指数設定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、高齢ドライバの運転が社会問題として提起されており、車両の適切な運転を支援する装置が種々提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3465590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、高齢ドライバは認知機能が低下している場合が多く、自身の認知機能の低下を認識していない高齢ドライバも多い。このため、高齢ドライバによる危険運転が認知機能の低下に起因するものでるか否かを客観的に判断することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様である認識度指数設定装置は、車両の前方を撮像する第1撮像装置により撮像された車両の前方情報から、ドライバによる危険運転を検出する危険運転検出部と、車両のドライバの顔を撮像する第2撮像装置により撮像されたドライバの顔情報から、このドライバの表情を検出する表情検出部と、危険運転検出部により危険運転が検出されたときの、表情検出部により検出されたドライバの表情に基づいて、危険運転をしたことに対するドライバ自身の認識度を示す認識度指数を設定する認識度指数設定部と、危険運転検出部により検出される危険運転の危険度を設定する危険度設定部と、表情検出部により検出される表情に基づいて、ドライバの感情の変化度を推定する感情変化推定部と、を備える。認識度指数設定部は、危険度設定部により設定された危険度が所定以上のときの感情変化推定部により推定された感情の変化度と、危険度設定部により設定された危険度が所定未満のときの感情変化推定部により推定された感情の変化度と、の差分が小さいほど、認識度指数を高く設定する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ドライバの危険運転に対する認識度を客観的に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る認識度指数設定装置を備えるシステムの構成の一例を示す図。
図2図1の車載装置の要部構成を示すブロック図。
図3図1の携帯端末の要部構成を示すブロック図。
図4図1の事業体端末の要部構成を示すブロック図。
図5】本発明の実施形態に係る認識度指数設定装置の要部構成を示すブロック図。
図6】危険運転時の高齢ドライバの感情の変化度の差分と、認識度指数との関係を示す図。
図7】認識度指数設定装置の演算部で実行される認識度指数作成処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1図7を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る認識度指数設定装置は、車両を運転するドライバの危険運転に対する認識度を示す認識度指数(以下、単に認識度指数と呼ぶ)を設定するための装置である。この認識度指数設定装置では、認識度指数が高く設定されるほど、ドライバの認知機能が低下していることを意味する。以下では、高齢ドライバが運転する車両の危険運転に対し、高齢ドライバの認識度指数を設定する例を説明する。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係る認識度指数設定装置を備えるシステム(以下、認識度指数設定システムと呼ぶ)の構成の一例を示す図である。図1に示すように、認識度指数設定システム100は、高齢ドライバが運転する車両1に搭載される車載装置2と、高齢ドライバの子供が有する携帯端末3と、高齢ドライバが契約する自動車保険会社が有する事業体端末4と、高齢ドライバの運転を支援する事業体等が有する認識度指数設定装置5と、を備えて構成される。なお、ここでいう高齢ドライバの子供とは、高齢ドライバの成人した子を意味する。
【0010】
車載装置2、携帯端末3、事業体端末4および認識度指数設定装置5は、通信網6を介して互いに通信可能に構成される。通信網6には、インターネット網や携帯電話網等に代表される公衆無線通信網だけでなく、所定の管理地域ごとに設けられた閉鎖的な通信網、例えば無線LAN、Wi-Fi(登録商標)等も含まれる。
【0011】
図2は、図1の車両1に搭載される車載装置2の要部構成を示すブロック図である。車載装置2が搭載される車両1は、高齢ドライバが所有し、日常的に使用する車両である。なお、車両1は、認識度指数を設定するための専用車両であってもよい。
【0012】
図2に示すように、車載装置2は、コントローラ20と、コントローラ20に電気的に接続された入出力装置21、ナビゲーション装置22、通信ユニット23、アクチュエータ24、センサ群25、第1撮像装置26および第2撮像装置27と、を主に有する。
【0013】
入出力装置21は、高齢ドライバからの指令が入力されたり、高齢ドライバに対し情報が出力されたりする装置の総称である。例えば入出力装置21には、操作部材の操作により高齢ドライバが各種指令を入力する各種スイッチ、高齢ドライバが音声で指令を入力するマイク、高齢ドライバに表示画像を介して情報を提供するモニタ、高齢ドライバに音声で情報を提供するスピーカなどが含まれる。
【0014】
ナビゲーション装置22は、高齢ドライバにより入力された目的地までの道路上の目標経路を検索するとともに、目標経路に沿った案内を行う装置である。目的地の入力および目標経路に沿った案内は、入出力装置21を介して行われる。通信ユニット23は、通信網6を介して認識度指数設定装置5等の外部の装置と無線通信可能に構成される。また通信ユニット23は、通信網6を介さずにBluetooth(登録商標)などの近距離無線を介して携帯端末3や高齢ドライバの有する携帯無線端末等の外部の装置と無線通信することもできる。
【0015】
アクチュエータ24は、コントローラ20からの指令により車両1に搭載された各種機器を駆動する。アクチュエータ24は、一例として、車両1の走行を制御するための走行用アクチュエータ241を有する。走行用アクチュエータ241には、スロットル(加速ペダル)用アクチュエータ、ブレーキ用アクチュエータおよび転舵用アクチュエータ等が含まれる。センサ群25は、車両1の走行状態や車内の状態を検出する内部センサ群251を有する。内部センサ群251は、一例として、車両1の車速を検出する車速センサやアクセルペダルの操作等を検出するセンサ等を有する。
【0016】
第1撮像装置26は、高齢ドライバが運転する車両1の前方を含む車外を撮像するカメラにより構成され、コントローラ20からの指令により、車両1の前方を含む車外を撮像する。第1撮像装置26は、一例として、車両1のフロントガラスに取り付けられ、車外を撮像可能なドライブレコーダにより構成される。第2撮像装置27は、車両1を運転する高齢ドライバの顔を含む車内を撮像するカメラにより構成され、コントローラ20からの指令により、高齢ドライバの顔を含む車内を撮像する。第2撮像装置27は、一例として、車両1のフロントガラスに取り付けられ、車内を撮像可能なドライブレコーダにより構成される。
【0017】
車両1が車外および車内を同時に撮像可能なドライブレコーダを搭載している場合には、第1および第2撮像装置26,27は、このドライブレコーダにより構成してもよい。また、第1および第2撮像装置26,27は、走行中の車外および高齢ドライバの顔を常時撮像し、コントローラ20からの指令により認識度指数設定装置5に前方情報および顔情報を送信する構成であってもよい。
【0018】
コントローラ20は、CPU等の演算部201と、ROM,RAM,ハードディスク等の記憶部202と、図示しないその他の周辺回路と、を有するコンピュータを含んで構成される。演算部201は、予め記憶部202に記憶されたプログラムを実行することで、情報受信部201a、情報送信部201bおよび情報出力部201cとして機能する。
【0019】
情報受信部201aは、認識度指数設定装置5等の外部の装置や各部から送信される各種指令や情報等を受信する。例えば、情報受信部201aは、通信ユニット23を介して、認識度指数設定装置5から送信される情報送信指令を受信する。また情報受信部201aは、第1撮像装置26が撮像した車両1の前方情報および第2撮像装置27が撮像した高齢ドライバの顔情報や、内部センサ群251により検出される車両1の車速データ等を受信する。
【0020】
情報送信部201bは、通信ユニット23を介して、各種情報を認識度指数設定装置5等の外部の装置に送信する。例えば、情報送信部201bは、通信ユニット23を介して、情報受信部201aが受信した車両1の前方情報データ、高齢ドライバの顔情報データおよび車両1の車速データ等を認識度指数設定装置5に送信する。
【0021】
情報出力部201cは、情報受信部201aが受信した各種情報を出力する。例えば情報出力部201cは、情報受信部201aが通信ユニット23を介して情報送信指令を受信すると、第1および第2撮像装置26,27に撮像信号を出力する。情報出力部201cから出力された撮像信号を受信すると、第1撮像装置26は車両1の前方を撮像し、第2撮像装置27は高齢ドライバの顔を含む車内を撮像する。
【0022】
図3は、図1の携帯端末3の要部構成を示すブロック図である。携帯端末3は、高齢ドライバの子供により操作される端末であり、スマートフォンに代表される携帯無線端末等により構成される。図3に示すように、携帯端末3は、CPU等の演算部30と、ROM、RAM等の記憶部31と、入出力部32と、I/Oインターフェース等の図示しないその他の周辺回路とを有するコンピュータを含んで構成される。また携帯端末3は、通信部33を有し、通信部33は、通信網6を介して、認識度指数設定装置5等の外部の装置と無線通信可能に構成される。
【0023】
入出力部32は、各種指令や各種情報を入出力する装置の総称であり、モニタやタッチパネル等により構成される。高齢ドライバの子供は、タッチパネルを介して、認識度指数設定装置5に認識度指数の設定依頼を入力することができるとともに、認識度指数設定装置5から送信される高齢ドライバの認識度指数をモニタで確認することができる。
【0024】
演算部30は、予め記憶部31に記憶されたプログラムを実行することで、情報受信部301、情報表示部302および情報送信部303として機能する。情報受信部301は、通信部33を介して認識度指数設定装置5等の外部の装置から送信される各種情報を受信する。例えば、情報受信部301は、通信部33を介して、認識度指数設定装置5から送信される高齢ドライバの認識度指数等の情報を受信する。情報表示部302は、情報受信部301により受信された高齢ドライバの認識度指数の情報等を入出力部(モニタ)32に表示する。情報送信部303は、通信部33を介して各種信号等を認識度指数設定装置5等の外部の装置に送信する。例えば、情報送信部303は、入出力部(タッチパネルを)32介して認識度指数の設定依頼が入力されると、通信部33を介して、認識度指数の設定を指令する信号(以下、単に設定指令信号と呼ぶ)を認識度指数設定装置5に送信する。
【0025】
図4は、図1の事業体端末4の要部構成を示すブロック図である。事業体端末4は、高齢ドライバが契約する自動車保険会社の従業者により操作される端末であり、パーソナルコンピュータ等により構成される。図3に示すように、事業体端末4は、CPU等の演算部40と、RAM、ROM等の記憶部41と、入出力部42と、I/Oインターフェース等の図示しない周辺回路とを有するコンピュータを含んで構成される。また事業体端末4は、通信部43を有し、通信部43は、通信網6を介して、認識度指数設定装置5等の外部装置と無線通信可能に構成される。
【0026】
入出力部42は、各種指令や各種情報を入出力する装置の総称であり、自動車保険会社の従業者が操作可能なキーボード、マイク、スピーカ、モニタ等により構成される。自動車保険会社の従業者は、入出力部(モニタ)42を介して、認識度指数設定装置5から送信される高齢ドライバの認識度指数を確認することができる。
【0027】
演算部40は、予め記憶部41に記憶されたプログラムを実行することで、情報受信部401および情報表示部402として機能する。情報受信部401は、通信部43を介して認識度指数設定装置5等の外部装置から送信される各種情報を受信する。例えば、情報受信部401は、通信部43を介して、認識度指数設定装置5から送信される高齢ドライバの認識度指数等の情報を受信する。情報表示部402は、情報受信部401により受信された高齢ドライバの認識度指数の情報等を入出力部(モニタ)42に表示する。
【0028】
図5は、本発明の実施形態に係る認識度指数設定装置5の要部構成を示すブロック図である。認識度指数設定装置5は、高齢ドライバの運転を支援する事業体の従業者に管理される端末であり、例えば、サーバ装置により構成される。認識度指数設定装置5は、クラウド上で仮想サーバ機能を利用して構成することもでき、複数の端末に分散して設ける構成であってもよい。また、認識度指数設定装置5を、高齢ドライバが契約する上述の自動車保険会社が有し、自動車保険会社によって高齢ドライバの認識度指数が管理される構成であってもよい。
【0029】
図5に示すように、認識度指数設定装置5は、コントローラ50と、コントローラ50に電気的に接続される通信ユニット53と、を有する。通信ユニット53は、通信網6を介して、車載装置2、携帯端末3および事業体端末4等の外部の装置と無線通信可能に構成される。
【0030】
コントローラ50は、CPU等の演算部51と、ROM,RAM,ハードディスク等の記憶部52と、図示しないその他の周辺回路と、を有するコンピュータを含んで構成される。演算部51は、予め記憶部52に記憶された認識度指数設定プログラムを実行することで、情報受信部511、情報出力部512、情報送信部513、危険運転検出部514、危険度設定部515、表情検出部516、感情変化推定部517および認識度指数設定部518として機能する。
【0031】
情報受信部511は、車載装置2等の外部の装置や各部から送信される各種情報や各種信号等を受信する。例えば、情報受信部511は、通信ユニット53を介して車載装置2から送信される車両1の前方情報データ、高齢ドライバの顔情報データおよび車両1の車速データ等を受信する。また情報受信部511は、通信ユニット53を介して携帯端末3から送信される設定指令信号を受信する。さらに情報受信部511は、認識度指数設定部518により設定された認識度指数の情報等を受信する。
【0032】
情報出力部512は、情報受信部511が受信した各種情報を出力する。例えば、情報出力部512は、情報受信部511が受信した車両1の前方情報データおよび車両1の車速データ等を危険運転検出部514に出力する。また情報出力部512は、情報受信部511が受信した高齢ドライバの顔情報データを表情検出部516に出力する。
【0033】
情報送信部513は、通信ユニット53を介して、情報受信部511が受信した各種情報や各種指令等を車載装置2、携帯端末3および事業体端末4等の外部の装置に送信する。例えば情報送信部513は、情報受信部511が受信した認識度指数の情報を、通信ユニット53を介して携帯端末3および事業体端末4に送信する。また情報送信部513は、情報受信部511が設定指令信号を受信すると、車両1の前方情報データおよび高齢ドライバの顔情報データを取得するための情報送信指令を、通信ユニット53を介して車載装置2に送信する。
【0034】
危険運転検出部514は、車両1の前方情報データおよび車速データから、高齢ドライバの危険運転を検出する。危険運転検出部514は、例えば、道路の路面標示、交差点に設置された信号機の表示および他車両との車間距離のいずれかに基づいて、車両1を運転する高齢ドライバによる危険運転を検出する。道路の路面標示に基づく危険運転としては、道路の白線をはみ出した走行、道路に表示された規制標示(速度制限や追越し制限等)や指示標示(右左折レーン等)に違反した走行等が挙げられる。信号機の表示に基づく危険運転としては、赤信号での交差点への進入(信号無視)、黄色信号での交差点への進入等が挙げられる。他車両との車間距離には、前を走行する車両との車間距離に加え、対向車線を走行する対向車との車間距離が含まれる。
【0035】
危険度設定部515は、危険運転検出部514により検出された危険運転の危険度を設定する。危険度設定部515は、道路の白線のはみ出し走行の場合は、隣接する車線(対向車線を含む)へのはみ出し量に応じて危険度を設定する。例えば、危険度設定部515は、車両1が自車線で白線の近くを走行している場合には危険度「小」と設定し、車両1が白線上を走行している場合には危険度を「中」と設定し、車両1が白線をまたいで隣接する車線にはみ出して走行している場合には危険度「大」と設定する。危険度設定部515は、危険運転検出部514が、車両1による上記の走行を所定時間以上連続して検出した場合や複数回にわたって検出した場合に上記の危険度を設定する。
【0036】
また危険度設定部515は、例えば、道路に表示された規制標示(速度制限や追越し制限等)や指示標示(右左折レーン等)に違反した走行が検出された場合には危険度「大」と設定し、赤信号での交差点への進入(信号無視)が検出された場合も危険度「大」と設定する。一方、黄色信号での交差点への進入が検出された場合には、危険度設定部515は危険度「中」と設定し、交差点に進入する直前に黄色信号に変わったことが検出された場合には、危険度設定部515は危険度「小」と設定する。
【0037】
さらに危険度設定部515は、他車両との車間距離に応じて危険度を設定する。例えば、危険度設定部515は、車両1が60km/hで走行中に、他車両との車間距離を10m未満とする走行が検出された場合には危険度「大」と設定し、同車間距離が10m以上45m未満とする走行が検出された場合には危険度「中」と設定し、同車間距離が45m以上とする走行が検出された場合には危険度「小」と設定する。なお、危険度設定部515が設定する車間距離に基づく危険度は、車両1および他車両の走行速度に応じて変化する。
【0038】
表情検出部516は、高齢ドライバの顔情報データから、高齢ドライバの表情を検出する。例えば、表情検出部516は、予め登録した表情(危険運転が検出されていない通常の運転時の表情)から変化する高齢ドライバの表情を検出する。例えば、表情検出部516は、高齢ドライバの驚いた表情や緊張により変化する表情等を検出する。表情検出部516による高齢ドライバの表情の検出は、周知の顔認証などの認証技術を用いて検出することができる。また、表情検出部516により検出された顔画像データから高齢ドライバの心拍数を検出し、検出した心拍数から高齢ドライバの驚きや緊張を推定する構成であってもよい。
【0039】
感情変化推定部517は、表情検出部516により検出される高齢ドライバの表情に基づいて、高齢ドライバの感情の変化を推定する。感情変化推定部517は、予め登録した表情(通常の運転時の表情)を基準とし、基準とした表情から変化する表情に基づいて高齢ドライバの感情の変化を推定する。例えば、感情変化推定部517は、高齢ドライバの表情に基づいて、高齢ドライバの突発的な驚きや緊張を段階的に推定する。
【0040】
例えば感情変化推定部517は、高齢ドライバの感情が大きな驚きや緊張に変化した場合には変化度「大」と推定し、比較的小さな驚きや緊張に変化した場合には変化度「小」と推定し、「大」よりも小さく「小」よりも大きい変化度の場合は変化度「中」と推定する。なお、感情変化推定部517による高齢ドライバの感情の変化の検出も、周知の顔認証などの認証技術を用いて検出することができる。
【0041】
認識度指数設定部518は、危険運転検出部514により高齢ドライバの危険運転が検出されたときの、表情検出部516により検出された高齢ドライバの表情に基づいて、認識度指数を設定する。具体的には、認識度指数設定部518は、危険運転検出部514により検出され、危険度設定部515により設定された危険運転の危険度と、表情検出部516により検出され、感情変化推定部517により推定された感情の変化度とに基づいて、認識度指数を設定する。
【0042】
図6は、危険運転時の高齢ドライバの感情の変化度の差分と、認識度指数との関係を示す図である。図6に示すように、認識度指数設定部518は、危険度設定部515により設定された危険度が所定以上のときの感情変化推定部517により推定された感情の変化度と、危険度設定部515により設定された危険度が所定未満のときの感情変化推定部517により推定された感情の変化度と、の差分が小さいほど、認識度指数を高く設定する。なお、認識度指数は、前述したように、高く設定されるほど、高齢ドライバの認知機能が低下していることを意味する。
【0043】
例えば、危険度が「小」であると設定されたときの変化度が「小」であると推定された場合に、危険度が「大」であると設定されたときも、変化度が「小」であると推定されると、認識度指数設定部518は、認識度指数を「大」に設定する。これは、高齢ドライバが危険度の高い危険運転をしたにもかかわらず、自己の運転が危険運転であるとの認識がない、すなわち、認知機能が低下していることを意味する。
【0044】
また危険度が「小」であると設定されたときの変化度が「小」であると推定された場合に、危険度が「大」であると設定されたときの変化度が「中」であると推定されると、認識度指数設定部518は、認識度指数を「中」に設定する。これは、高齢ドライバが危険度の高い危険運転をしたときに、自己の運転が危険運転であったかもしれないとの認識がある、すなわち、認知機能が衰え始めているおそれがあることを意味する。
【0045】
また危険度が「大」または「小」であると設定されたときの変化度が、いずれも「大」または「中」であると推定されると、認識度指数設定部518は、認識度指数を「中」に設定する。これは、危険運転であるか否かにかかわらず、自己の運転が危険運転であったかもしれないと認識してしまい、認知機能が衰え始めているおそれがあることを意味する。
【0046】
一方、危険度が「小」であると設定されたときの変化度が「小」であると推定された場合に、危険度が「大」であると設定されたときの変化度も「大」であると推定されると、認識度指数設定部518は、認識度指数を「小」に設定する。これは、高齢ドライバが危険度の高い危険運転をしたときに、自己の運転が危険運転であるとの認識がある、すなわち、認知機能の低下がみられないことを意味する。
【0047】
図7は、認識度指数設定装置5の演算部51で実行される認識度指数設定処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えば、携帯端末3から送信される設定指令信号を認識度指数設定装置5が受信すると開始され、認識度指数設定装置5から携帯端末3および事業体端末4に認識度指数の情報が送信されると処理を終了する。
【0048】
まず、ステップS1において、情報送信部513での処理により、車載装置2に情報送信指令を送信する。次いで、ステップS2で、情報受信部511での処理により、車載装置2から送信される車両1の前方情報データ、高齢ドライバの顔情報データおよび車両1の車速データ等を受信する。次いで、ステップS3で、情報出力部512での処理により、車両1の前方情報データおよび車両1の車速データ等を危険運転検出部514に出力するとともに、高齢ドライバの顔情報データを表情検出部516に出力する。
【0049】
次いで、ステップS4で、危険運転検出部514での処理により、車両1の前方情報データおよび車速データから、高齢ドライバの危険運転を検出する。次いで、ステップS5で、危険度設定部515での処理により、危険運転検出部514により検出された危険運転の危険度を設定する。
【0050】
次いで、ステップS6で、表情検出部516での処理により、高齢ドライバの顔情報データから、高齢ドライバの表情を検出する。次いで、ステップS7で、感情変化推定部517での処理により、表情検出部516により検出される高齢ドライバの表情に基づいて、高齢ドライバの感情の変化度を推定する。次いで、ステップS8で、認識度指数設定部518での処理により、危険度設定部515により設定された危険度と、感情変化推定部517により推定された感情の変化度とに基づいて、認識度指数を設定する。次いで、ステップS9で、情報送信部513での処理により、通信ユニット53を介して認識度指数を携帯端末3および事業体端末4に送信し、処理を終了する。
【0051】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)本実施形態に係る認識度指数設定装置5は、車両1の前方を撮像する第1撮像装置26により撮像された車両1の前方情報から、高齢ドライバによる危険運転を検出する危険運転検出部514と、車両1の高齢ドライバの顔を撮像する第2撮像装置27により撮像された高齢ドライバの顔情報から、高齢ドライバの表情を検出する表情検出部516と、危険運転検出部514により危険運転が検出されたときの、表情検出部516により検出された高齢ドライバの表情に基づいて、高齢ドライバによる危険運転に対する認識度を示す認識度指数を設定する認識度指数設定部518と、を備える(図2図5)。
【0052】
一般に、危険運転が検出されたときに、高齢ドライバの表情に変化がない、例えば、驚いたり、緊張したり、動揺したりすることがない場合には、高齢ドライバの危険運転に対する認知機能が低下していることが考えられる。このため、危険運転が検出されたときの高齢ドライバの表情に基づいて認識度指数を設定することで、高齢ドライバの危険運転に対する認識度を客観的に判断することができる。
【0053】
(2)本実施形態に係る認識度指数設定装置5は、危険運転検出部514により検出される危険運転の危険度を設定する危険度設定部515と、表情検出部516により検出される表情に基づいて、高齢ドライバの感情の変化度を推定する感情変化推定部517と、をさらに備える(図5)。認識度指数設定部518は、危険度設定部515により設定された危険度と、感情変化推定部517により推定された感情の変化度とに基づいて、認識度指数を設定する。
【0054】
例えば、危険度の高い危険運転が検出されたときに、高齢ドライバの感情の変化が小さい、すなわち、高齢ドライバが驚いたり等の感情の変化が小さい場合には、高齢ドライバの危険運転に対する認知機能が低下していることが考えられる。このため、危険運転の危険度と、危険運転時の高齢ドライバの感情の変化度とに基づいて認識度指数を設定することで、高齢ドライバの危険運転に対する認識度を正確に判断することができる。
【0055】
(3)認識度指数設定部518は、危険度設定部515により設定された危険度が所定以上のときの感情変化推定部517により推定された感情の変化度と、危険度設定部515により設定された危険度が所定未満のときの感情変化推定部517により推定された感情の変化度と、の差分が小さいほど、認識度指数を高く設定する(図6)。認識度指数は、高齢ドライバの認知機能が低下しているほど、高く設定される。この構成により、高齢ドライバの危険運転に対する認識度を具体的に判断することができ、より正確に高齢ドライバの危険運転に対する認識度を判断することができる。
【0056】
(4)危険運転検出部514は、道路の路面標示、交差点に設置された信号機の表示および他車両との車間距離のいずれかに基づいて、高齢ドライバによる危険運転を検出する。この構成により、高齢ドライバの危険運転に対する認識度をより具体的に判断することができる。また、この高齢ドライバに、車両1の運転に関して具体的なアドバイスを送ることもできる。
【0057】
(5)本実施形態に係る認識度指数設定装置5は、認識度指数設定部518により設定された認識度指数を送信する情報送信部513をさらに備える(図5)。情報送信部513は、高齢ドライバの子供が所持する携帯端末3に、前記の認識度指数を送信する(図1)。これにより、高齢ドライバの子供が、高齢ドライバの認知機能に関する状況を把握することができ、安心感を得たり、運転免許証の返納等の対応に用いたりすることができる。
【0058】
(6)本実施形態に係る認識度指数設定装置5は、認識度指数設定部518により設定された認識度指数を送信する情報送信部513をさらに備える(図5)。情報送信部513は、高齢ドライバの契約する自動車保険を提供する保険会社の事業体端末4に、認識度指数を送信する(図1)。これにより、高齢ドライバの契約する自動車保険が、高齢ドライバの保険料を客観的な指標をもとに算定することができる。
【0059】
上記実施は、種々の形態に変形することができる。例えば、上記実施形態では、高齢ドライバの認識度指数を作成する例を説明したが、高齢ドライバ以外のドライバ、例えば、初心者ドライバ、女性ドライバおよびペーパードライバ等の認識度指数の作成に用いてもよい。これらのドライバにおいては、認識度指数を複数回作成(例えば、半年ごとに作成)することで、認識度の変化、すなわち、運転の熟練度等の指標として使用することもできる。
【0060】
上記実施形態では、高齢ドライバの認識度指数を、高齢ドライバの子供の有する携帯端末3に送信する例を説明したが、高齢ドライバの認識度指数は、高齢ドライバの親族等の関係者の有する携帯端末に送信する構成であればよい。例えば、高齢ドライバの兄弟や親戚等、予め登録された複数の関係者の携帯端末に送信する構成であってもよい。
【0061】
上記実施形態では、第1および第2撮像装置26,27を、車両1に搭載されたドライブレコーダにより構成したが、ドライブレコーダ以外の車載カメラを用いる構成であってもよく、専用のカメラを車両1に設ける構成であってもよい。
【0062】
上記実施形態では、認識度指数設定装置5を、高齢ドライバの運転を支援する事業体により操作されるサーバ装置により構成したが、高齢ドライバが運転する車両1の車載装置2に設ける構成であってもよい。すなわち、高齢ドライバが運転する車両1の車載装置2から、携帯端末3や事業体端末4に認識度指数が送信される構成であってもよい。
【0063】
上記実施形態では、危険運転検出部514が検出する高齢ドライバの危険運転として、道路の路面標示、交差点に設置された信号機の表示および他車両との車間距離のいずれかとしたが、危険運転検出部514が検出する危険運転はこれに限定されない。危険運転検出部514が検出する危険運転には、一般的に危険運転と認識される運転が含まれる。
【0064】
上記実施形態では、危険度設定部515により設定される危険度を、「大」、「中」、「小」に設定したが、危険度を数値で設定する構成であってもよい。例えば、5段階や10段階の数値で設定する構成であってもよい。同様に、上記実施形態では、感情変化推定部517により推定される感情の変化度を、「大」、「中」、「小」に推定したが、変化度を数値で推定する構成であってもよい。例えば、5段階や10段階の数値で推定する構成であってもよい。
【0065】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 車両、2 車載装置、3 携帯端末、4 事業体端末、5 認識度指数設定装置、100 認識度指数設定システム、26 第1撮像装置、27 第2撮像装置、514 危険運転検出部、515 危険度設定部、516 表情検出部、517 感情変化推定部、518 認識度指数設定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7