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特許7390336抗デングウイルス抗体、変異型Fc領域を含むポリペプチド、およびその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】抗デングウイルス抗体、変異型Fc領域を含むポリペプチド、およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/47 20060101AFI20231124BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20231124BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20231124BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20231124BHJP
   A61K 47/55 20170101ALI20231124BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 39/44 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
C07K14/47
C12P21/08
C12N15/13 ZNA
C07K16/00
A61P31/14
A61K39/395 D
A61K39/395 S
A61K47/68
A61K47/55
A61K39/395 Y
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K38/17 100
A61P43/00 105
A61K39/44
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021113980
(22)【出願日】2021-07-09
(62)【分割の表示】P 2019514822の分割
【原出願日】2017-09-15
(65)【公開番号】P2021169485
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】10201607778X
(32)【優先日】2016-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508305029
【氏名又は名称】エージェンシー フォー サイエンス, テクノロジー アンド リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】三瓶 全次郎
(72)【発明者】
【氏名】クウ シンア クリスティーン
(72)【発明者】
【氏名】フィンク カーチャ
(72)【発明者】
【氏名】ツースト ローランド
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/130516(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/173348(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/089647(WO,A1)
【文献】Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,2012年,Vol.109, No.19,pp.7439-7444
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親Fc領域中に少なくとも1つのアミノ酸改変を含む変異型Fc領域を含むポリペプチドであって、
変異型Fc領域が、親Fc領域と比較した場合に、低下したFcγR結合活性を有し、かつ低下したC1q結合活性を有さず、
変異型Fc領域が、EUナンバリングに従って、234位のAlaと、235位のAlaと、以下の(a)~(c):
(a) 267位のGlu、268位のPhe、および324位のThr
(b) 236位のAla、267位のGlu、268位のPhe、324位のThr、および332位のGlu;ならびに
(c) 326位のAla、Asp、Glu、若しくはTrpおよび333位のSer
のいずれか1つのさらなるアミノ酸改変とを含
前記ポリペプチド。
【請求項2】
変異型Fc領域が、EUナンバリングに従って、
(a) 434位のAla;
(b) 434位のAla、436位のThr、438位のArg、および440位のGlu;
(c) 428位のLeu、434位のAla、436位のThr、438位のArg、および440位のGlu;ならびに
(d) 428位のLeu、434位のAla、438位のArg、および440位のGlu
からなる群より選択されるアミノ酸をさらに含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
親Fc領域中に少なくとも1つのアミノ酸改変を含む変異型Fc領域を含むポリペプチドであって、
変異型Fc領域が、EUナンバリングに従って、234位のAlaと、235位のAlaと、以下の(a)~(c):
(a) 267位のGlu、268位のPhe、および324位のThr
(b) 236位のAla、267位のGlu、268位のPhe、324位のThr、および332位のGlu;ならびに
(c) 326位のAla、Asp、Glu、若しくはTrpおよび333位のSer
のいずれか1つのさらなるアミノ酸改変とを含
前記ポリペプチド。
【請求項4】
変異型Fc領域が、EUナンバリングに従って、
(a) 434位のAla;
(b) 434位のAla、436位のThr、438位のArg、および440位のGlu;
(c) 428位のLeu、434位のAla、436位のThr、438位のArg、および440位のGlu;ならびに
(d) 428位のLeu、434位のAla、438位のArg、および440位のGlu
からなる群より選択されるアミノ酸をさらに含む、請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
抗体である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のポリペプチドと、薬学的に許容される担体とを含有する、薬学的製剤。
【請求項7】
抗体を調製するための方法であって、
(a) VH配列を、SEQ ID NO: 51~56、58および59のいずれか1つのヒトIgG Fc変異体配列と組み合わせる工程;
(b) VL配列を組み合わせる工程;
(c) 該組み合わせのそれぞれを発現ベクター中にクローニングする工程;
(d) 得られた発現ベクターをコトランスフェクト細胞において発現させる工程;ならびに
(e) 工程(d)から得られた抗体を精製する工程
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、抗デングウイルス抗体およびその使用方法に関する。本発明はまた、変異型Fc領域を含むポリペプチドおよびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
デング熱は、世界中で最も一般的な節足動物媒介性のウイルス疾患である。デング熱を引き起こすウイルス(本明細書ではDENVと呼ばれる)は、DENV-1、DENV-2、DENV-3、およびDENV-4などの4つの異なる感染性の血清型に分類することができる。デング熱感染症の症状には、発熱、筋肉痛、頭痛、血小板数の減少、白血球数の減少、血液凝固障害、出血、血管漏出などがあり、これらはデングショック症候群を引き起こす可能性がある。人が以前にデング熱に感染した後でデングウイルスにさらされると、抗ウイルス抗体が宿主細胞へのウイルスの取り込みを促進することがあり、その患者は重症型のデング熱を発症する危険性が高くなる。しかし、重症型のデング熱は最初の感染の際にも起こり得る。
【0003】
最も一般的な節足動物媒介性のウイルス疾患であるのに、今日まで、デング熱を治療するために利用可能な薬物は存在しない。疾患としてのデング熱に関するアプローチは、主に感染の予防および/または症状を緩和するための治療に向けられてきた。
【0004】
したがって、少なくとも1つのデング血清型を中和し、かつ/またはそれに結合することができる薬剤を提供する必要がある。最近、いくつかのグループが抗DENV中和抗体について報告している(例えば、WO2012/082073、WO2013/089647、WO2013/151764、WO2013/173348、WO2014/025546、WO2015/123362、WO2015/122995、およびWO2016/012800(特許文献1~8)を参照されたい)。しかしながら、優れた治療特性を有する抗体は依然として必要とされている。
【0005】
ワクチンおよび抗体治療薬がウイルス感染を予防および治療するために現在開発中である。しかしながら、抗体ベースの治療はリスクがないわけではない。そのようなリスクの1つは抗体依存性感染増強(antibody-dependent enhancement: ADE)であり、これは非中和抗ウイルス抗体が宿主細胞へのウイルス侵入を促進して、細胞内での感染力の増加をもたらす場合に起こる(Expert Rev Anti Infect Ther (2013) 11, 1147-1157(非特許文献1))。ADEの最も一般的なメカニズムは、抗体のFc部分を介したウイルス-抗体複合体と細胞表面のFc受容体(FcR)との相互作用である。通常は軽いウイルス感染がADEによって増強されて、命を脅かす疾患になる。FcγRへの結合を妨げる突然変異をFc領域に有する抗DENV抗体は、DENV感染を増強しなかったことが報告されている(WO2010/043977(特許文献9))。しかし、抗体依存性感染増強のリスクを高めることのない抗体治療薬の必要性が依然として存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2012/082073
【文献】WO2013/089647
【文献】WO2013/151764
【文献】WO2013/173348
【文献】WO2014/025546
【文献】WO2015/123362
【文献】WO2015/122995
【文献】WO2016/012800
【文献】WO2010/043977
【非特許文献】
【0007】
【文献】Expert Rev Anti Infect Ther (2013) 11, 1147-1157
【発明の概要】
【0008】
概要
本発明は、抗DENV抗体、変異型Fc領域を含むポリペプチド、およびそれらの使用方法を提供する。
【0009】
いくつかの態様において、本発明の単離された抗DENV抗体はDENV Eタンパク質に結合する。いくつかの態様では、本発明の抗DENV抗体は、以下を含む:
(a) (i)アミノ酸配列:
(ここでX1はRまたはEであり、X2はRまたはFであり、X3はG、DまたはLである)(SEQ ID NO: 42)を含むHVR-H3、
(ii)アミノ酸配列:
(ここでX1はD、SまたはEであり、X2はDまたはAである)(SEQ ID NO: 45)を含むHVR-L3、および
(iii)アミノ酸配列:
(ここでX1はTまたはRであり、X2はAまたはRである)(SEQ ID NO: 41)を含むHVR-H2;
(b) (i)アミノ酸配列:
SX1YX2H
(ここでX1はNまたはYであり、X2はIまたはMである)(SEQ ID NO: 40)を含むHVR-H1、
(ii)アミノ酸配列:
(ここでX1はTまたはRであり、X2はAまたはRである)(SEQ ID NO: 41)を含むHVR-H2、および
(iii)アミノ酸配列:
(ここでX1はRまたはEであり、X2はRまたはFであり、X3はG、DまたはLである)(SEQ ID NO: 42)を含むHVR-H3;
(c) (i)アミノ酸配列:
SX1YX2H
(ここでX1はNまたはYであり、X2はIまたはMである)(SEQ ID NO: 40)を含むHVR-H1、
(ii)アミノ酸配列:
(ここでX1はTまたはRであり、X2はAまたはRである)(SEQ ID NO: 41)を含むHVR-H2、
(iii)アミノ酸配列:
(ここでX1はRまたはEであり、X2はRまたはFであり、X3はG、DまたはLである)(SEQ ID NO: 42)を含むHVR-H3、
(iv)アミノ酸配列:
(ここでX1はDまたはEであり、X2はKまたはQである)(SEQ ID NO: 43)を含むHVR-L1、
(v)アミノ酸配列:
(ここでX1はNまたはEであり、X2はTまたはFである)(SEQ ID NO: 44)を含むHVR-L2、および
(vi)アミノ酸配列:
(ここでX1はD、SまたはEであり、X2はDまたはAである)(SEQ ID NO: 45)を含むHVR-L3;または
(d) (i)アミノ酸配列:
(ここでX1はDまたはEであり、X2はKまたはQである)(SEQ ID NO: 43)を含むHVR-L1、
(ii)アミノ酸配列:
(ここでX1はNまたはEであり、X2はTまたはFである)(SEQ ID NO: 44)を含むHVR-L2、および
(iii)アミノ酸配列:
(ここでX1はD、SまたはEであり、X2はDまたはAである)(SEQ ID NO: 45)を含むHVR-L3。
いくつかの態様では、本発明の抗体は、(i) SEQ ID NO: 11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii) SEQ ID NO: 13のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii) SEQ ID NO: 16のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv) SEQ ID NO: 21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v) SEQ ID NO: 24のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(vi) SEQ ID NO: 27のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗体ではない。
【0010】
いくつかの態様では、本発明の単離された抗DENV抗体は、以下を含む:
(a) (i) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H3、(ii) SEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L3、および(iii) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H2;
(b) (i) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H1、(ii) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H2、および(iii) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H3;
(c) (i) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H1、(ii) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H2、(iii) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H3、(iv) SEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L1、(v) SEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L2、および(vi) SEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L3;
(d) (i) SEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L1、(ii) SEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L2、および(iii) SEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L3;または
(e) (i) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H1、(ii) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H2、(iii) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H3、(iv) SEQ ID NO: 7のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L1、(v) SEQ ID NO: 7のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L2、および(vi) SEQ ID NO: 7のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L3。
いくつかの態様では、本発明の抗体は、(i) SEQ ID NO: 1のVH配列由来のHVR-H1、(ii) SEQ ID NO: 1のVH配列由来のHVR-H2、(iii) SEQ ID NO: 1のVH配列由来のHVR-H3、(iv) SEQ ID NO: 7のVL配列由来のHVR-L1、(v) SEQ ID NO: 7のVL配列由来のHVR-L2、および(vi) SEQ ID NO: 7のVL配列由来のHVR-L3を含む抗体ではない。
【0011】
いくつかの態様では、本発明の単離された抗DENV抗体は、重鎖可変ドメインフレームワークSEQ ID NO: 31のアミノ酸配列を含むFR1、SEQ ID NO: 32のアミノ酸配列を含むFR2、SEQ ID NO: 33または34のアミノ酸配列を含むFR3、SEQ ID NO: 35のアミノ酸配列を含むFR4をさらに含む。いくつかの態様では、本発明の単離された抗DENV抗体は、軽鎖可変ドメインフレームワークSEQ ID NO: 36のアミノ酸配列を含むFR1、SEQ ID NO: 37のアミノ酸配列を含むFR2、SEQ ID NO: 38のアミノ酸配列を含むFR3、SEQ ID NO: 39のアミノ酸配列を含むFR4をさらに含む。
【0012】
いくつかの態様では、本発明の単離された抗DENV抗体は、(a) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVH配列;(b) SEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVL配列;(c) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列およびSEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのVL配列;または(d) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列およびSEQ ID NO: 7のいずれか1つのVL配列を含む。
【0013】
いくつかの態様では、本発明の単離された抗DENV抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの態様では、本発明の単離された抗DENV抗体はヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である。いくつかの態様では、本発明の単離された抗DENV抗体は、DENVまたはDENV Eタンパク質に結合する抗体フラグメントである。いくつかの態様では、本発明の単離された抗DENV抗体は全長IgG抗体である。
【0014】
いくつかの態様では、本発明の抗DENV抗体のFc領域は、EUナンバリングに従って234位にAlaを、235位にAlaを含む。いくつかの態様では、本発明の抗DENV抗体のFc領域は、本明細書に記載の変異型Fc領域から選択することができる。
【0015】
本発明はまた、本発明の抗DENV抗体をコードする単離された核酸を提供する。本発明はまた、本発明の核酸を含む宿主細胞を提供する。本発明はまた、抗体が産生されるように本発明の宿主細胞を培養することを含む、抗体の産生方法を提供する。
【0016】
本発明はまた、本発明の抗DENV抗体および薬学的に許容される担体を含有する薬学的製剤を提供する。
【0017】
本発明の抗DENV抗体は、医薬として使用するためのものであり得る。いくつかの態様では、本発明の抗DENV抗体は、DENV感染の治療に用いるためのものであり得る。
【0018】
本発明の抗DENV抗体は、医薬の製造に使用することができる。いくつかの態様では、その医薬はDENV感染症の治療用である。
【0019】
本発明はまた、DENV感染症にかかっている個体を治療する方法を提供する。いくつかの態様では、本方法は、有効量の本発明の抗DENV抗体を該個体に投与する工程を含む。いくつかの態様では、本方法は、例えば後述するような、追加の治療薬を該個体に投与する工程をさらに含む。
【0020】
いくつかの態様では、本発明の変異型Fc領域は、親Fc領域に少なくとも1つのアミノ酸改変を含む。さらなる態様では、変異型Fc領域は、親Fc領域と比較した場合に、実質的に低下したFcγR結合活性を有する。さらなる態様では、変異型Fc領域は、親Fc領域と比較した場合に、実質的に低下したC1q結合活性を有しない。
【0021】
いくつかの態様では、本発明の変異型Fc領域は、EUナンバリングに従って、234位にAlaを、235位にAlaを含む。さらなる態様では、変異型Fc領域は、以下の(a)~(c)のいずれか1つのアミノ酸改変を含む:(a) 267、268、および324位、(b) 236、267、268、324、および332位、ならびに(c) 326および333位;EUナンバリングに従う。
【0022】
いくつかの態様では、本発明の変異型Fc領域は、以下からなる群より選択されるアミノ酸を含む:(a) 267位のGlu、(b) 268位のPhe、(c) 324位のThr、(d) 236位のAla、(e) 332位のGlu、(f) 326位のAla、Asp、Glu、MetまたはTrp、および(g) 333位のSer;EUナンバリングに従う。
【0023】
いくつかの態様では、本発明の変異型Fc領域は、以下からなる群より選択されるアミノ酸をさらに含む:(a) 434位のAla、(b) 434位のAla、436位のThr、438位のArg、および440位のGlu、(c) 428位のLeu、434位のAla、436位のThr、438位のArg、および440位のGlu、ならびに(d) 428位のLeu、434位のAla、438位のArg、および440位のGlu;EUナンバリングに従う。
【0024】
いくつかの態様では、本発明の変異型Fc領域は、表4に記載されるような、アミノ酸改変のいずれかを、単独でまたは組み合わせて、含む。いくつかの態様では、本発明に記載の親Fc領域はヒトIgG1に由来する。本発明は、SEQ ID NO: 51~59のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。
【0025】
いくつかの態様では、本発明の変異型Fc領域を含むポリペプチドは抗体である。さらなる態様では、その抗体は抗ウイルス抗体である。さらなる態様では、その抗体は、本明細書に記載の抗DENV抗体に由来する可変領域を含む。
【0026】
さらなる態様では、前記抗体は、以下を含む:
(a) (i) SEQ ID NO: 16のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(ii) SEQ ID NO: 27のアミノ酸配列を含むHVR-L3、および(iii) SEQ ID NO: 13のアミノ酸配列を含むHVR-H2;
(b) (i) SEQ ID NO: 11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii) SEQ ID NO: 13のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(iii) SEQ ID NO: 16のアミノ酸配列を含むHVR-H3;
(c) (i) SEQ ID NO: 11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii) SEQ ID NO: 13のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii) SEQ ID NO: 16のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv) SEQ ID NO: 21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v) SEQ ID NO: 24のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(vi) SEQ ID NO: 27のアミノ酸配列を含むHVR-L3;または
(d) (i) SEQ ID NO: 21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii) SEQ ID NO: 24のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(iii) SEQ ID NO: 27のアミノ酸配列を含むHVR-L3。
【0027】
さらなる態様では、前記抗体は、以下を含む:
(a) (i) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H3、(ii) SEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L3、および(iii) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H2;
(b) (i) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H1、(ii) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H2、および(iii) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H3;
(c) (i) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H1、(ii) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H2、(iii) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H3、(iv) SEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L1、(v) SEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L2、および(vi) SEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L3;
(d) (i) SEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L1、(ii) SEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L2、および(iii) SEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L3;または
(e) (i) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H1、(ii) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H2、(iii) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H3、(iv) SEQ ID NO: 7のVL配列由来のHVR-L1、(v) SEQ ID NO: 7のVL配列由来のHVR-L2、および(vi) SEQ ID NO: 7のVL配列由来のHVR-L3。
【0028】
本発明はまた、本発明の変異型Fc領域を含むポリペプチドをコードする単離された核酸を提供する。本発明はまた、本発明の核酸を含む宿主細胞を提供する。本発明はまた、変異型Fc領域を含むポリペプチドが産生されるように本発明の宿主細胞を培養することを含む、該ポリペプチドの産生方法を提供する。
【0029】
本発明はまた、本発明の変異型Fc領域を含むポリペプチドおよび薬学的に許容される担体を含有する薬学的製剤を提供する。
【0030】
本発明の変異型Fc領域を含むポリペプチドは、医薬として使用するためのものであり得る。いくつかの態様では、本発明の変異型Fc領域を含むポリペプチドは、ウイルス感染症の治療に使用するためのものであり得る。
【0031】
本発明の変異型Fc領域を含むポリペプチドは、医薬の製造に使用することができる。いくつかの態様では、その医薬はウイルス感染症の治療用である。
【0032】
本発明はまた、ウイルス感染症にかかっている個体を治療する方法を提供する。いくつかの態様では、本方法は、有効量の本発明の変異型Fc領域を含むポリペプチドを該個体に投与する工程を含む。
【0033】
本発明はまた、本発明の変異型Fc領域を含むポリペプチドをさらに含む、本明細書に記載の抗DENV抗体を提供する。
【0034】
一態様では、本発明は、(a) SEQ ID NO: 12のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b) SEQ ID NO: 15のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c) SEQ ID NO: 20のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d) SEQ ID NO: 21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e) SEQ ID NO: 24のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f) SEQ ID NO: 27のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗体を調製する方法を提供し、この方法は、以下の工程を含む:
(a) 3CH1047 (SEQ ID NO: 6)および3CH1049 (SEQ ID NO: 95)からなる群より選択されるVH変異体配列を、SG182 (SEQ ID NO: 46)、SG1095 (SEQ ID NO: 54)およびSG1106 (SEQ ID NO: 59)からなる群より選択されるヒトIgG1 CH配列と組み合わせる工程;
(b) 3CL (SEQ ID NO: 7)および3CL633 (SEQ ID NO: 98)からなる群より選択されるVL変異体配列を、ヒトCL配列SK1 (SEQ ID NO: 60)と組み合わせる工程;
(c) 該組み合わせのそれぞれを発現ベクター中にクローニングする工程;
(d) 得られた発現ベクターをコトランスフェクト細胞(宿主細胞)において発現させる工程;および
(e) 工程(d)から得られた抗体を精製する工程。
[本発明1001]
デングウイルス(DENV)Eタンパク質に結合する単離された抗体であって、
(a) (i)アミノ酸配列:
(ここでX1はRまたはEであり、X2はRまたはFであり、X3はG、DまたはLである)(SEQ ID NO: 42)を含むHVR-H3、
(ii)アミノ酸配列:
(ここでX1はD、SまたはEであり、X2はDまたはAである)(SEQ ID NO: 45)を含むHVR-L3、および
(iii)アミノ酸配列:
(ここでX1はTまたはRであり、X2はAまたはRである)(SEQ ID NO: 41)を含むHVR-H2;
(b) (i)アミノ酸配列:
SX1YX2H
(ここでX1はNまたはYであり、X2はIまたはMである)(SEQ ID NO: 40)を含むHVR-H1、
(ii)アミノ酸配列:
(ここでX1はTまたはRであり、X2はAまたはRである)(SEQ ID NO: 41)を含むHVR-H2、および
(iii)アミノ酸配列:
(ここでX1はRまたはEであり、X2はRまたはFであり、X3はG、DまたはLである)(SEQ ID NO: 42)を含むHVR-H3;
(c) (i)アミノ酸配列:
SX1YX2H
(ここでX1はNまたはYであり、X2はIまたはMである)(SEQ ID NO: 40)を含むHVR-H1、
(ii)アミノ酸配列:
(ここでX1はTまたはRであり、X2はAまたはRである)(SEQ ID NO: 41)を含むHVR-H2、
(iii)アミノ酸配列:
(ここでX1はRまたはEであり、X2はRまたはFであり、X3はG、DまたはLである)(SEQ ID NO: 42)を含むHVR-H3、
(iv)アミノ酸配列:
(ここでX1はDまたはEであり、X2はKまたはQである)(SEQ ID NO: 43)を含むHVR-L1、
(v)アミノ酸配列:
(ここでX1はNまたはEであり、X2はTまたはFである)(SEQ ID NO: 44)を含むHVR-L2、および
(vi)アミノ酸配列:
(ここでX1はD、SまたはEであり、X2はDまたはAである)(SEQ ID NO: 45)を含むHVR-L3;または
(d) (i)アミノ酸配列:
(ここでX1はDまたはEであり、X2はKまたはQである)(SEQ ID NO: 43)を含むHVR-L1、
(ii)アミノ酸配列:
(ここでX1はNまたはEであり、X2はTまたはFである)(SEQ ID NO: 44)を含むHVR-L2、および
(iii)アミノ酸配列:
(ここでX1はD、SまたはEであり、X2はDまたはAである)(SEQ ID NO: 45)を含むHVR-L3
を含み、
(i) SEQ ID NO: 11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii) SEQ ID NO: 13のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii) SEQ ID NO: 16のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv) SEQ ID NO: 21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v) SEQ ID NO: 24のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(vi) SEQ ID NO: 27のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗体ではない、前記抗体。
[本発明1002]
SEQ ID NO: 31のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインフレームワークFR1、SEQ ID NO: 32のアミノ酸配列を含むFR2、SEQ ID NO: 33または34のアミノ酸配列を含むFR3、SEQ ID NO: 35のアミノ酸配列を含むFR4
をさらに含む、本発明1001 (b)の抗体。
[本発明1003]
SEQ ID NO: 36のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインフレームワークFR1、SEQ ID NO: 37のアミノ酸配列を含むFR2、SEQ ID NO: 38のアミノ酸配列を含むFR3、SEQ ID NO: 39のアミノ酸配列を含むFR4
をさらに含む、本発明1001 (d)の抗体。
[本発明1004]
(a) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVH配列;(b) SEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVL配列;または(c) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列およびSEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのVL配列
を含む、単離された抗体。
[本発明1005]
(a) SEQ ID NO: 12のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b) SEQ ID NO: 15のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c) SEQ ID NO: 20のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d) SEQ ID NO: 21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e) SEQ ID NO: 24のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f) SEQ ID NO: 27のアミノ酸配列を含むHVR-L3
を含む、デングウイルス(DENV)Eタンパク質に結合する単離された抗体。
[本発明1006]
本発明1001~1005のいずれかの抗体と、薬学的に許容される担体とを含有する、薬学的製剤。
[本発明1007]
本発明1001~1005のいずれかの抗体の有効量を個体に投与する工程を含む、個体におけるDENV感染を治療する方法。
[本発明1008]
親Fc領域中に少なくとも1つのアミノ酸改変を含む変異型Fc領域を含むポリペプチドであって、
変異型Fc領域が、親Fc領域と比較した場合に、実質的に低下したFcγR結合活性を有し、かつ実質的に低下したC1q結合活性を有しない、
前記ポリペプチド。
[本発明1009]
変異型Fc領域が、EUナンバリングに従って、234位のAlaと、235位のAlaと、以下の(a)~(c):
(a) 267、268、および324位;
(b) 236、267、268、324、および332位;ならびに
(c) 326および333位
のいずれか1つのさらなるアミノ酸改変とを含む、本発明1008のポリペプチド。
[本発明1010]
変異型Fc領域が、EUナンバリングに従って、
(a) 267位のGlu;
(b) 268位のPhe;
(c) 324位のThr;
(d) 236位のAla;
(e) 332位のGlu;
(f) 326位のAla、Asp、Glu、MetまたはTrp;および
(g) 333位のSer
からなる群より選択されるアミノ酸を含む、本発明1009のポリペプチド。
[本発明1011]
変異型Fc領域が、EUナンバリングに従って、
(a) 434位のAla;
(b) 434位のAla、436位のThr、438位のArg、および440位のGlu;
(c) 428位のLeu、434位のAla、436位のThr、438位のArg、および440位のGlu;ならびに
(d) 428位のLeu、434位のAla、438位のArg、および440位のGlu
からなる群より選択されるアミノ酸をさらに含む、本発明1008~1010のいずれかのポリペプチド。
[本発明1012]
SEQ ID NO: 51~59のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、ポリペプチド。
[本発明1013]
抗体である、本発明1008~1012のいずれかのポリペプチド。
[本発明1014]
前記抗体が、
(a) (i) SEQ ID NO: 16のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(ii) SEQ ID NO: 27のアミノ酸配列を含むHVR-L3、および(iii) SEQ ID NO: 13のアミノ酸配列を含むHVR-H2;
(b) (i) SEQ ID NO: 11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii) SEQ ID NO: 13のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(iii) SEQ ID NO: 16のアミノ酸配列を含むHVR-H3;
(c) (i) SEQ ID NO: 11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii) SEQ ID NO: 13のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii) SEQ ID NO: 16のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv) SEQ ID NO: 21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v) SEQ ID NO: 24のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(vi) SEQ ID NO: 27のアミノ酸配列を含むHVR-L3;または
(d) (i) SEQ ID NO: 21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii) SEQ ID NO: 24のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(iii) SEQ ID NO: 27のアミノ酸配列を含むHVR-L3
を含む、本発明1013のポリペプチド。
[本発明1015]
本発明1008~1014のいずれかのポリペプチドと、薬学的に許容される担体とを含有する、薬学的製剤。
[本発明1016]
本発明1008~1012のいずれかのポリペプチドをさらに含む、本発明1001~1005のいずれかの抗体。
[本発明1017]
(a) SEQ ID NO: 12のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b) SEQ ID NO: 15のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c) SEQ ID NO: 20のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d) SEQ ID NO: 21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e) SEQ ID NO: 24のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f) SEQ ID NO: 27のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗体を調製するための方法であって、
(a) 3CH1047 (SEQ ID NO: 6)および3CH1049 (SEQ ID NO: 95)からなる群より選択されるVH変異体配列を、SG182 (SEQ ID NO: 46)、SG1095 (SEQ ID NO: 54)、およびSG1106 (SEQ ID NO: 59)からなる群より選択されるヒトIgG1 CH配列と組み合わせる工程;
(b) 3CL (SEQ ID NO: 7)および3CL633 (SEQ ID NO: 98)からなる群より選択されるVL変異体配列を、ヒトCL配列SK1 (SEQ ID NO: 60)と組み合わせる工程;
(c) 該組み合わせのそれぞれを発現ベクター中にクローニングする工程;
(d) 得られた発現ベクターをコトランスフェクト細胞において発現させる工程;ならびに
(e) 工程(d)から得られた抗体を精製する工程
を含む、前記方法。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1A図1(A)~(D)は、実施例2に記載されるような、DENV-1 Eタンパク質(A)、DENV-2 Eタンパク質(B)、DENV-3 Eタンパク質(C)、およびDENV-4 Eタンパク質(D)に対する抗DENV抗体3Cおよび3CamのBIACORE(登録商標)センサーグラムを示す。
図1B図1Aの説明を参照のこと。
図1C図1Aの説明を参照のこと。
図1D図1Aの説明を参照のこと。
図2図2は、実施例4に記載されるような、異なるFc変異体を有する抗体のヒトC1qに対する結合アフィニティを示す。結合活性はELISAにより測定した。試験したFc変異体は、WT、LALA+KWES、LALA+EFT+AE、LALA+EFT、およびLALAである。
図3図3は、実施例4に記載されるような、異なるFc変異体を有する抗体のヒトC1qに対する結合アフィニティを示す。結合活性はELISAにより測定した。試験したFc変異体は、WT、LALA、LALA+KWES、LALA+KAES、LALA+KDES、LALA+KEES、およびLALA+KMESである。
図4図4は、実施例4に記載されるような、異なるFc変異体を有する抗体のヒトC1qに対する結合アフィニティを示す。結合活性はELISAにより測定した。試験したFc変異体は、WT、LALA、LALA+ACT3、LALA+ACT5、LALA+KAES、LALA+ACT3+KAES、およびLALA+ACT5+KAESである。
図5図5は、実施例4に記載されるような、異なるFc変異体を有する抗体のマウスC1qに対する結合アフィニティを示す。結合活性はELISAにより測定した。試験したFc変異体は、WT、LALA、LALA+ACT3、LALA+ACT5、LALA+KAES、LALA+ACT3+KAES、およびLALA+ACT5+KAESである。
図6A図6(a)~(h)は、実施例5に記載されるような、ヒトFcγRに結合するFc変異体についてのBiacore解析を示す。試験したFc変異体は、WT(この図ではWT IgGと記載)、KWES、EFT+AE、EFT、KAES、LALA+KWES、LALA+EFT+AE、LALA+EFT、LALA、LALA+ACT3、LALA+ACT5、LALA+KAES、LALA+KAES+ACT3、およびLALA+KAES+ACT5である。これらのFc変異体は、(a)ヒトFcγR1a、(b)ヒトFcγR2aアレル変異体167H、(c)ヒトFcγR2aアレル変異体167R、(d)ヒトFcγR2b、(e)ヒトFcγR3aアレル変異体158F、(f)ヒトFcγR3aアレル変異体158V、(g)ヒトFcγR3bアレル変異体NA1、および(h)ヒトFcγR3bアレル変異体NA2を含む、FcγRへの結合について試験した。各Fc変異体は、Fc変異体を有する抗体単独(Ab単独と記載)の形態、および該抗体と三量体CD154抗原とで形成された免疫複合体(CD154 ICと記載)の形態の両方において評価した。
図6B図6Aの説明を参照のこと。
図6C図6Aの説明を参照のこと。
図6D図6Aの説明を参照のこと。
図6E図6Aの説明を参照のこと。
図6F図6Aの説明を参照のこと。
図6G図6Aの説明を参照のこと。
図6H図6Aの説明を参照のこと。
図7A図7(a)~(d)は、実施例5に記載されるような、マウスFcγRに結合するFc変異体についてのBiacore解析を示す。試験したFc変異体は、WT(この図ではWT IgGと記載)、KWES、EFT+AE、EFT、KAES、LALA+KWES、LALA+EFT+AE、LALA+EFT、LALA、LALA+ACT3、LALA+ACT5、LALA+KAES、LALA+KAES+ACT3、およびLALA+KAES+ACT5である。これらのFc変異体は、(a)マウスFcγR1、(b)マウスFcγR2b、(c)マウスFcγR3、および(d)マウスFcγR4を含む、FcγRへの結合について試験した。各Fc変異体は、Fc変異体を有する抗体単独(Ab単独と記載)の形態、および該抗体と三量体CD154抗原とで形成された免疫複合体(CD154 ICと記載)の形態の両方において評価した。
図7B図7Aの説明を参照のこと。
図7C図7Aの説明を参照のこと。
図7D図7Aの説明を参照のこと。
図8図8は、実施例5に記載されるような、ヒトFcRnに結合するFc変異体についてのBiacore解析を示す。試験したFc変異体は、WT(この図ではhIgG1と記載)、LALA、LALA+ACT3、LALA+ACT5、LALA+KAES、LALA+KAES+ACT3、およびLALA+KAES+ACT5である。各Fc変異体は、Fc変異体を有する抗体単独(Ab単独と記載)の形態、および該抗体と三量体CD154抗原とで形成された免疫複合体(CD154 ICと記載)の形態の両方において評価した。
図9図9は、実施例6に記載されるような、AG129マウスへのDENV-2ウイルス感染後3日目のウイルス血症を示す。WT(hIgG1と記載)、LALA、およびLALA+KAESのFc変異体と組み合わせた抗DENV抗体3Cおよび3Cam、または陰性対照としてのPBSをウイルス感染後2日目に投与した。
図10A図10(A)~(D)は、実施例2に記載されるような、DENV-1 Eタンパク質(A)、DENV-2 Eタンパク質(B)、DENV-3 Eタンパク質(C)、およびDENV-4 Eタンパク質(D)に対する抗DENV抗体3Cおよび3Cam2のBIACORE(登録商標)センサーグラムを示す。
図10B図10Aの説明を参照のこと。
図10C図10Aの説明を参照のこと。
図10D図10Aの説明を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0036】
発明の態様の詳細な説明
本明細書に記載または引用される手法および手順は、概して充分に理解されており、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3d edition (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.;Current Protocols in Molecular Biology (F.M. Ausubel, et al. eds., (2003));the series Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.): PCR 2: A Practical Approach (M.J. MacPherson, B.D. Hames and G.R. Taylor eds. (1995)), Harlow and Lane, eds. (1988) Antibodies, A Laboratory Manual, and Animal Cell Culture (R.I. Freshney, ed. (1987));Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait, ed., 1984);Methods in Molecular Biology, Humana Press; Cell Biology: A Laboratory Notebook (J.E. Cellis, ed., 1998) Academic Press; Animal Cell Culture (R.I. Freshney), ed., 1987);Introduction to Cell and Tissue Culture (J. P. Mather and P.E. Roberts, 1998) Plenum Press; Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures (A. Doyle, J.B. Griffiths, and D.G. Newell, eds., 1993-8) J. Wiley and Sons; Handbook of Experimental Immunology (D.M. Weir and C.C. Blackwell, eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J.M. Miller and M.P. Calos, eds., 1987);PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis et al., eds., 1994);Current Protocols in Immunology (J.E. Coligan et al., eds., 1991);Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999);Immunobiology (C.A. Janeway and P. Travers, 1997);Antibodies (P. Finch, 1997);Antibodies: A Practical Approach (D. Catty., ed., IRL Press, 1988-1989);Monoclonal Antibodies: A Practical Approach (P. Shepherd and C. Dean, eds., Oxford University Press, 2000);Using Antibodies: A Laboratory Manual (E. Harlow and D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999);The Antibodies (M. Zanetti and J. D. Capra, eds., Harwood Academic Publishers, 1995);およびCancer: Principles and Practice of Oncology (V.T. DeVita et al., eds., J.B. Lippincott Company, 1993)に記載された広範に利用されている技法などの従来の技法を用いて、当業者により一般的に使用される。
【0037】
I.定義
別途定義しない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed., J. Wiley & Sons (New York, N.Y. 1994)、およびMarch, Advanced Organic Chemistry Reactions, Mechanisms and Structure 4th ed., John Wiley & Sons (New York, N.Y. 1992)は、本出願において使用される用語の多くに対する一般的指針を当業者に提供する。特許出願および刊行物を含む、本明細書に引用される全ての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0038】
本明細書を解釈する目的のために、以下の定義が適用され、該当する場合はいつでも、単数形で使用された用語は複数形をも含み、その逆もまた同様である。本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明することのみを目的としており、限定を意図したものではないことが、理解されるべきである。下記の定義のいずれかが、参照により本明細書に組み入れられた任意の文書と矛盾する場合には、下記の定義が優先するものとする。
【0039】
本明細書の趣旨での「アクセプターヒトフレームワーク」は、下で定義するヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する、軽鎖可変ドメイン (VL) フレームワークまたは重鎖可変ドメイン (VH) フレームワークのアミノ酸配列を含む、フレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに「由来する」アクセプターヒトフレームワークは、それらの同じアミノ酸配列を含んでもよいし、またはアミノ酸配列の変更を含んでいてもよい。いくつかの態様において、アミノ酸の変更の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下である。いくつかの態様において、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と、配列が同一である。
【0040】
「アフィニティ」は、分子(例えば、抗体)の結合部位1個と、分子の結合パートナー(例えば、抗原)との間の、非共有結合的な相互作用の合計の強度のことをいう。別段示さない限り、本明細書で用いられる「結合アフィニティ」は、ある結合対のメンバー(例えば、抗体と抗原)の間の1:1相互作用を反映する、固有の結合アフィニティのことをいう。分子XのそのパートナーYに対するアフィニティは、一般的に、解離定数 (Kd) により表すことができる。アフィニティは、本明細書に記載のものを含む、当該技術分野において知られた通常の方法によって測定され得る。結合アフィニティを測定するための具体的な実例となるおよび例示的な態様については、下で述べる。
【0041】
「アフィニティ成熟」抗体は、改変を備えていない親抗体と比較して、1つまたは複数の超可変領域 (hypervariable region: HVR) 中に抗体の抗原に対するアフィニティの改善をもたらす1つまたは複数の改変を伴う、抗体のことをいう。
【0042】
用語「抗DENV抗体」および「DENVに結合する抗体」は、十分なアフィニティでDENVに結合することができる抗体を指し、その結果、該抗体はDENVを標的とする際の診断薬および/または治療薬として有用である。該抗体はDENVのEタンパク質に結合し得る。用語「抗DENV Eタンパク質抗体」および「DENV Eタンパク質に結合する抗体」は、十分なアフィニティでDENV Eタンパク質に結合することができる抗体を指し、その結果、該抗体はDENVを標的とする際の診断薬および/または治療薬として有用である。一態様では、DENV Eタンパク質ではない無関係のタンパク質への抗DENV Eタンパク質抗体の結合の程度は、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)で測定して、DENV Eタンパク質への該抗体の結合の約10%未満である。特定の態様では、DENVおよび/またはDENV Eタンパク質に結合する抗体は、解離定数(Kd)が1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、または0.001nM以下(例えば、10-8 M以下、例えば10-8M~10 13M、10-9M~10-13M)である。特定の態様では、抗DENV抗体は、異なる血清型からのDENVの間で保存されているDENVのエピトープに結合する。特定の態様では、抗DENV Eタンパク質抗体は、異なる血清型からのDENV Eタンパク質の間で保存されているDENV Eタンパク質のエピトープに結合する。
【0043】
本明細書における用語「抗体」は最も広い意味で使用され、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例:二重特異性抗体)、および所望の抗原結合活性を示す限りでは抗体フラグメントを含むがこれらに限定されない、様々な抗体構造を包含する。
【0044】
「抗体依存性細胞媒介型細胞傷害」または「ADCC」は、ある種の細胞傷害性細胞(例えば、NK細胞、好中球、およびマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)に結合した分泌Igが、これらの細胞傷害性エフェクター細胞を抗原保有標的細胞に特異的に結合させ、続いて細胞毒素により該標的細胞を死滅させるようにする、細胞傷害の形態を指す。ADCCを媒介するための初代細胞のNK細胞はFcγRIIIのみを発現し、一方、単球はFcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcR発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991)の464ページの表3に要約される。対象となる分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号、同第5,821,337号、または米国特許第6,737,056号(Presta)に記載されるような、インビトロADCCアッセイを実施することができる。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、PBMC細胞およびNK細胞が含まれる。あるいは、またはさらに、対象となる分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al. PNAS (USA) 95:652-656 (1998)に開示されるような動物モデルで、評価することができる。
【0045】
「抗体フラグメント」とは、インタクトな抗体が結合する抗原に結合することができるインタクトな抗体の一部を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体フラグメントの例としては、限定するものではないが、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2;ダイアボディ;線形抗体;一本鎖抗体分子(例:scFv);および抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体が挙げられる。
【0046】
参照抗体と「同じエピトープに結合する抗体」とは、競合アッセイにおいて参照抗体のその抗原への結合をブロックする抗体を指し、逆に、参照抗体は競合アッセイにおいて抗体のその抗原への結合をブロックする。例示的な競合アッセイは本明細書に提供される。
【0047】
「C1q」は、免疫グロブリンのFc領域に対する結合部位を含むポリペプチドである。C1qは、2種のセリンプロテアーゼC1rおよびC1sと共に、補体依存性細胞傷害(CDC)経路の第1成分である複合体C1を形成する。ヒトC1qは、例えばQuidel社(San Diego, CA)から、商業的に購入することができる。
【0048】
用語「キメラ」抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の供給源または種に由来し、重鎖および/または軽鎖の残部が異なる供給源または種に由来する抗体を指す。
【0049】
抗体の「クラス」とは、その重鎖によって保有される定常ドメインまたは定常領域のタイプを指す。抗体には5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのうちのいくつかはサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分類することができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。
【0050】
「補体依存性細胞傷害」または「CDC」は、補体の存在下での標的細胞の溶解を指す。古典的補体経路の活性化は、コグネイト抗原に結合している(適切なサブクラスの)抗体への補体系の第1成分(C1q)の結合によって開始される。補体活性化を評価するために、例えばGazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されるような、CDCアッセイを実施することができる。Fc領域のアミノ酸配列が改変され(変異型Fc領域を有するポリペプチド)かつ増加または減少したC1q結合能を有するポリペプチド変異体は、例えば、米国特許第6,194,551 B1号およびWO 1999/51642に記載される。また、例えば、Idusogie et al. J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000)も参照されたい。
【0051】
本明細書でいう用語「細胞傷害剤」は、細胞の機能を阻害するまたは妨げる、および/または細胞の死または破壊の原因となる物質のことをいう。細胞傷害剤は、これらに限定されるものではないが、放射性同位体(例えば、211At、131I、125I、90Y、186Re、188Re、153Sm、212Bi、32P212Pb、およびLuの放射性同位体);化学療法剤または化学療法薬(例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド類(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、または他のインターカレート剤);増殖阻害剤;核酸分解酵素などの酵素およびその断片;抗生物質;例えば、低分子毒素または細菌、真菌、植物、または動物起源の酵素的に活性な毒素(その断片および/または変異体を含む)などの、毒素;および、以下に開示される、種々の抗腫瘍剤または抗がん剤を含む。
【0052】
「エフェクター機能」は、抗体のFc領域に起因する、抗体のアイソタイプによって異なる生物学的活性のことをいう。抗体のエフェクター機能の例には次のものが含まれる:C1q結合および補体依存性細胞傷害(complement dependent cytotoxicity:CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞介在性細胞傷害(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity: ADCC);貪食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御;および、B細胞活性化。
【0053】
ある剤(例えば、薬学的製剤)の「有効量」は、所望の治療的または予防的結果を達成するために有効である、必要な用量におけるおよび必要な期間にわたっての、量のことをいう。
【0054】
用語「エピトープ」は、抗体によって結合され得る任意の決定基を含む。エピトープは、抗原を標的とする抗体によって結合される該抗原の領域であり、抗体に直接接触する特定のアミノ酸を含む。エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基またはスルホニル基などの化学的に活性な表面分子群を含むことができ、かつ特異的な三次元構造特性および/または特定の電荷特性を備えることができる。一般的に、特定の標的抗原に特異的な抗体は、タンパク質および/または巨大分子の複雑な混合物中でその標的抗原上のエピトープを優先的に認識する。
【0055】
「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体のことをいう。いくつかの態様において、FcRは、天然型ヒトFcRである。いくつかの態様において、FcRは、IgG抗体に結合するもの(ガンマ受容体)であり、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIサブクラスの受容体を、これらの受容体の対立遺伝子変異体および選択的スプライシングによる形態を含めて、含む。FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害受容体」)を含み、これらは主としてその細胞質ドメインにおいて相違する類似のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン活性化モチーフ (immunoreceptor tyrosine-based activation motif: ITAM) を含む。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン阻害モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based inhibition motif: ITIM)を含む。(例えば、Daeron, Annu. Rev. Immunol. 15:203-234 (1997) を参照のこと。)FcRは、例えば、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991);Capel et al., Immunomethods 4:25-34 (1994);およびde Haas et al., J. Lab. Clin. Med 126:330-41 (1995)において総説されている。将来同定されるものを含む他のFcRも、本明細書の用語「FcR」に包含される。
【0056】
用語「Fc受容体」または「FcR」はまた、母体のIgGの胎児への移動(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976)およびKim et al., J. Immunol. 24:249 (1994))ならびに免疫グロブリンのホメオスタシスの調節を担う、新生児型受容体FcRnを含む。FcRnへの結合を測定する方法は公知である(例えば、Ghetie and Ward., Immunol. Today 18(12):592-598 (1997); Ghetie et al., Nature Biotechnology, 15(7):637-640 (1997); Hinton et al., J. Biol. Chem. 279(8):6213-6216 (2004); WO2004/92219 (Hinton et al.)を参照のこと)。インビボでのヒトFcRnへの結合およびヒトFcRn高アフィニティ結合ポリペプチドの血清半減期は、例えばヒトFcRnを発現するトランスジェニックマウスもしくはトランスフェクトされたヒト細胞株においてまたは変異Fc領域を伴うポリペプチドが投与される霊長類において測定され得る。WO2000/42072 (Presta) は、FcRに対する結合が改善されたまたは減少した抗体変異体を記載している。例えば、Shields et al. J. Biol. Chem. 9(2):6591-6604 (2001) も参照のこと。
【0057】
本明細書で用語「Fc領域」は、少なくとも定常領域の一部分を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために用いられる。この用語は、天然型配列のFc領域および変異体Fc領域を含む。一態様において、ヒトIgG重鎖Fc領域はCys226から、またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端まで延びる。ただし、Fc領域のC末端のリジン (Lys447)またはグリシン-リジン(残基446~447)は、存在していてもしていなくてもよい。本明細書では別段特定しない限り、Fc領域または定常領域中のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD 1991 に記載の、EUナンバリングシステム(EUインデックスとも呼ばれる)にしたがう。
【0058】
用語「Fc領域含有抗体」は、Fc領域を含む抗体のことをいう。Fc領域のC末端リジン(残基447)またはグリシン-リジン(残基446~447)は、例えば抗体の精製の間にまたは抗体をコードする核酸の組み換え操作によって除去され得る。したがって、本発明によるFc領域を有する抗体を含む組成物は、G446-K447を伴う抗体、G446を伴いK447を伴わない抗体、G446-K447が完全に除去された抗体、または3つのタイプの抗体の混合物を含み得る。
【0059】
「フレームワーク」または「FR」は、超可変領域 (HVR) 残基以外の、可変ドメイン残基のことをいう。可変ドメインのFRは、通常4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、およびFR4からなる。それに応じて、HVRおよびFRの配列は、通常次の順序でVH(またはVL)に現れる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0060】
用語「全長抗体」、「完全抗体」、および「全部抗体」は、本明細書では相互に交換可能に用いられ、天然型抗体構造に実質的に類似した構造を有する、または本明細書で定義するFc領域を含む重鎖を有する抗体のことをいう。
【0061】
「機能性Fc領域」は、天然型配列Fc領域の「エフェクター機能」を備える。例示的な「エフェクター機能」は、C1q結合;CDC;Fc受容体結合;ADCC;貪食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体: BCR)の下方制御等を含む。そのようなエフェクター機能は一般に、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わされることを必要とし、そして、例えば本明細書の定義の中で開示される様々なアッセイを用いて評価され得る。
【0062】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」、「コトランスフェクト細胞」、および「宿主細胞培養物」は、相互に交換可能に用いられ、外来核酸を導入された細胞(そのような細胞の子孫を含む)のことをいう。宿主細胞は「形質転換体」および「形質転換細胞」を含み、これには初代の形質転換細胞および継代数によらずその細胞に由来する子孫を含む。子孫は、親細胞と核酸の内容において完全に同一でなくてもよく、変異を含んでいてもよい。オリジナルの形質転換細胞がスクリーニングされたまたは選択された際に用いられたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異体子孫も、本明細書では含まれる。特定の態様において、宿主細胞またはコトランスフェクト細胞は、CHO-DXB11、CHO-K1、またはCHO-DG44である。そのような宿主細胞またはコトランスフェクト細胞は、タウリントランスポーターを発現する細胞であってよく、タウリントランスポーターをコードするDNAを導入することによって得られる(WO2007/119774)。
【0063】
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生された抗体またはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体コード配列を用いる非ヒト供給源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を備える抗体である。このヒト抗体の定義は、非ヒトの抗原結合残基を含むヒト化抗体を、明確に除外するものである。
【0064】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択群において最も共通して生じるアミノ酸残基を示すフレームワークである。通常、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。通常、配列のサブグループは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, NIH Publication 91-3242, Bethesda MD (1991), vols. 1-3におけるサブグループである。一態様において、VLについて、サブグループは上記のKabatらによるサブグループκIである。一態様において、VHについて、サブグループは上記のKabatらによるサブグループIIIである。
【0065】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVRからのアミノ酸残基およびヒトFRからのアミノ酸残基を含む、キメラ抗体のことをいう。ある態様では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、当該可変領域においては、すべてのもしくは実質的にすべてのHVR(例えばCDR)は非ヒト抗体のものに対応し、かつ、すべてのもしくは実質的にすべてのFRはヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、任意で、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を含んでもよい。抗体(例えば、非ヒト抗体)の「ヒト化された形態」は、ヒト化を経た抗体のことをいう。
【0066】
本明細書で用いられる用語「超可変領域」または「HVR」は、配列において超可変であり(「相補性決定領域」または「CDR」)、および/または構造的に定まったループ(「超可変ループ」)を形成し、および/または抗原接触残基(「抗原接触」)を含む、抗体の可変ドメインの各領域のことをいう。通常、抗体は6つのHVRを含む:VHに3つ(H1、H2、H3)、およびVLに3つ(L1、L2、L3)である。本明細書での例示的なHVRは、以下のものを含む:
(a) アミノ酸残基26-32 (L1)、50-52 (L2)、91-96 (L3)、26-32 (H1)、53-55 (H2)、および96-101 (H3)のところで生じる超可変ループ (Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987));
(b) アミノ酸残基24-34 (L1)、50-56 (L2)、89-97 (L3)、31-35b (H1)、50-65 (H2)、 および95-102 (H3)のところで生じるCDR (Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991));
(c) アミノ酸残基27c-36 (L1)、46-55 (L2)、89-96 (L3)、30-35b (H1)、47-58 (H2)、および93-101 (H3) のところで生じる抗原接触 (MacCallum et al. J. Mol. Biol. 262: 732-745 (1996));ならびに、
(d) HVRアミノ酸残基46-56 (L2)、47-56 (L2)、48-56 (L2)、49-56 (L2)、26-35 (H1)、26-35b (H1)、49-65 (H2)、93-102 (H3)、および94-102 (H3)を含む、(a)、(b)、および/または(c)の組合せ。
【0067】
別段示さない限り、HVR残基および可変ドメイン中の他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書では上記のKabatらにしたがって番号付けされる。
【0068】
「イムノコンジュゲート」は、1つまたは複数の異種の分子にコンジュゲートされた抗体である(異種の分子は、これに限定されるものではないが、細胞傷害剤を含む)。
【0069】
「個体」または「被験体」は哺乳動物である。哺乳動物は、これらに限定されるものではないが、飼育動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類(例えば、ヒト、およびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、ならびに、げっ歯類(例えば、マウスおよびラット)を含む。特定の態様では、個体または被験体は、ヒトである。
【0070】
「単離された」抗体は、そのもともとの環境の成分から分離されたものである。いくつかの態様において、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点分離法 (isoelectric focusing: IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフ(例えば、イオン交換または逆相HPLC)で測定して、95%または99%を超える純度まで精製される。抗体の純度の評価のための方法の総説として、例えば、Flatman et al., J. Chromatogr. B 848:79-87 (2007) を参照のこと。
【0071】
「単離された」核酸は、そのもともとの環境の成分から分離された核酸分子のことをいう。単離された核酸は、その核酸分子を通常含む細胞の中に含まれた核酸分子を含むが、その核酸分子は染色体外に存在しているかまたは本来の染色体上の位置とは異なる染色体上の位置に存在している。
【0072】
「抗体をコードする単離された核酸」は、抗体の重鎖および軽鎖(またはその断片)をコードする1つまたは複数の核酸分子のことをいい、1つのベクターまたは別々のベクターに乗っている核酸分子、および、宿主細胞中の1つまたは複数の位置に存在している核酸分子を含む。
【0073】
本明細書でいう用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体のことをいう。すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、生じ得る変異抗体(例えば、自然に生じる変異を含む変異抗体、またはモノクローナル抗体調製物の製造中に発生する変異抗体。そのような変異体は通常若干量存在している。)を除いて、同一でありおよび/または同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。したがって、修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られるものである、という抗体の特徴を示し、何らかの特定の方法による抗体の製造を求めるものと解釈されるべきではない。例えば、本発明にしたがって用いられるモノクローナル抗体は、これらに限定されるものではないが、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含んだトランスジェニック動物を利用する方法を含む、様々な手法によって作成されてよく、モノクローナル抗体を作製するためのそのような方法および他の例示的な方法は、本明細書に記載されている。
【0074】
「裸抗体」は、異種の部分(例えば、細胞傷害部分)または放射性標識にコンジュゲートされていない抗体のことをいう。裸抗体は、薬学的製剤中に存在していてもよい。
【0075】
「天然型抗体」は、天然に生じる様々な構造を伴う免疫グロブリン分子のことをいう。例えば、天然型IgG抗体は、ジスルフィド結合している2つの同一の軽鎖と2つの同一の重鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端に向かって、各重鎖は、可変重鎖ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域 (VH) を有し、それに3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)が続く。同様に、N末端からC末端に向かって、各軽鎖は、可変軽鎖ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域 (VL) を有し、それに定常軽鎖 (CL) ドメインが続く。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる、2つのタイプの1つに帰属させられてよい。
【0076】
「天然型配列Fc領域」は、自然界で見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。天然型配列ヒトFc領域は、天然型配列ヒトIgG1 Fc領域(非AおよびAアロタイプ);天然型配列ヒトIgG2 Fc領域;天然型配列ヒトIgG3 Fc領域;および天然型配列ヒトIgG4 Fc領域、ならびに天然に存在するそれらの変異体を含む。
【0077】
用語「添付文書」は、治療用品の商用パッケージに通常含まれ、そのような治療用品の使用に関する、適応症、用法、用量、投与方法、併用療法、禁忌、および/または警告についての情報を含む使用説明書のことをいうために用いられる。
【0078】
参照ポリペプチド配列に対する「パーセント (%) アミノ酸配列同一性」は、最大のパーセント配列同一性を得るように配列を整列させてかつ必要ならギャップを導入した後の、かつ、いかなる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとしたときの、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の、百分率比として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決める目的のアラインメントは、当該技術分野における技術の範囲内にある種々の方法、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、Megalign (DNASTAR) ソフトウェア、またはGENETYX(登録商標)(Genetyx Co., Ltd.)などの、公に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用することにより達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列のアラインメントをとるための適切なパラメーターを決定することができる。
【0079】
ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、ジェネンテック社の著作であり、そのソースコードは米国著作権庁 (US Copyright Office, Washington D.C., 20559) に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、ジェネンテック社 (Genentech, Inc., South San Francisco, California) から公に入手可能であるし、ソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、Digital UNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステム上での使用のためにコンパイルされる。すべての配列比較パラメーターは、ALIGN-2プログラムによって設定され、変動しない。アミノ酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bへの、またはそれとの、またはそれに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、所与のアミノ酸配列Bへの、またはそれとの、またはそれに対する、ある%アミノ酸配列同一性を有するまたは含む所与のアミノ酸配列A、ということもできる)は、次のように計算される:分率X/Yの100倍。ここで、Xは配列アラインメントプログラムALIGN-2によって、当該プログラムのAおよびBのアラインメントにおいて同一である一致としてスコアされたアミノ酸残基の数であり、YはB中のアミノ酸残基の全数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBへの%アミノ酸配列同一性は、BのAへの%アミノ酸配列同一性と等しくないことが、理解されるであろう。別段特に明示しない限り、本明細書で用いられるすべての%アミノ酸配列同一性値は、直前の段落で述べたとおりALIGN-2コンピュータプログラムを用いて得られるものである。
【0080】
用語「薬学的製剤」は、その中に含まれた有効成分の生物学的活性が効果を発揮し得るような形態にある調製物であって、かつ製剤が投与される被験体に許容できない程度に毒性のある追加の要素を含んでいない、調製物のことをいう。
【0081】
「薬学的に許容される担体」は、被験体に対して無毒な、薬学的製剤中の有効成分以外の成分のことをいう。薬学的に許容される担体は、これらに限定されるものではないが、緩衝液、賦形剤、安定化剤、または保存剤を含む。
【0082】
本明細書で使用する用語「DENV Eタンパク質」は、他に指示がない限り、DENV-1、DENV-2、DENV-3、およびDENV-4を含めて、任意のDENV血清型からの天然のDENV Eタンパク質を指す。DENVゲノムは、3つの構造タンパク質(キャプシド(C)、プレメンブレン/メンブレン(prM/M)、およびエンベロープ(E))ならびに7つの非構造タンパク質(NS1、NS2A、NS2B、NS3、NS4A、NS4B、およびNS5)をコードする。Eタンパク質は、約55kDaの糖タンパク質であり、ビリオンの成熟前にはPrMタンパク質とのヘテロ二量体として存在している。Eタンパク質の細胞外ドメインのX線結晶学的研究からは、らせん状のステムアンカーによってウイルス膜に連結された3つの異なるβバレルドメインと、2つの逆平行膜貫通ドメインとが明らかにされた。ドメインIII(EDIII)は免疫グロブリン様フォールド(immunoglobulin-like fold)をとり、受容体相互作用において重要な役割を果たすことが示唆されている。ドメインII(EDII)は、2つの長いフィンガー様構造からなる細長いドメインであって、高度に保存された13アミノ酸の融合ループ(EDII-FL)を先端に含み、Eタンパク質の膜融合および二量体化に関与している。中央ドメイン(ドメインI;EDI)は、1つおよび4つの可動性リンカーによってそれぞれEDIIIおよびEDIIに連結されている9本鎖βバレルである。Eタンパク質は、ウイルスアセンブリ、受容体結合、侵入、ウイルス融合、そしておそらくはウイルスの生活環での免疫回避にとって重要であり、したがって、ウイルス粒子上でいくつかの異なる立体構造および配置をとるために必要とされる動的タンパク質である。この用語は、プロセシングされていない「全長」のDENV Eタンパク質だけでなく、細胞内でのプロセシングから生じるDENV Eタンパク質の任意の形態を包含する。この用語はまた、DENV Eタンパク質の天然に存在する変異体、例えば血清型変異体または準種(quasispecies)をも包含する。
【0083】
本明細書で使用する語句「実質的に低下した」、「実質的に増加した」、または「実質的に異なる」とは、2つの数値(一般的には、ある分子に関連する数値と、参照/比較分子に関連する他の数値)間の十分に高度な差を指し、その結果、当業者は、これら2つの値間の差を、前記値(例えば、Kd値)により測定された生物学的特徴という状況の中で統計的有意性があると見なすであろう。
【0084】
本明細書で用いられる「治療」(および、その文法上の派生語、例えば「治療する」、「治療すること」など)は、治療される個体の自然経過を改変することを企図した臨床的介入を意味し、予防のためにも、臨床的病態の経過の間にも実施され得る。治療の望ましい効果は、これらに限定されるものではないが、疾患の発生または再発の防止、症状の軽減、疾患による任意の直接的または間接的な病理的影響の減弱、転移の防止、疾患の進行速度の低減、疾患状態の回復または緩和、および寛解または改善された予後を含む。いくつかの態様において、本発明の抗体は、疾患の発症を遅らせる、または疾患の進行を遅くするために用いられる。
【0085】
用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体を抗原へと結合させることに関与する、抗体の重鎖または軽鎖のドメインのことをいう。天然型抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVHおよびVL)は、通常、各ドメインが4つの保存されたフレームワーク領域 (FR) および3つの超可変領域 (HVR) を含む、類似の構造を有する。(例えば、Kindt et al., Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91 (2007) 参照。)1つのVHまたはVLドメインで、抗原結合特異性を与えるに充分であろう。さらに、ある特定の抗原に結合する抗体は、当該抗原に結合する抗体からのVHまたはVLドメインを使ってそれぞれVLまたはVHドメインの相補的ライブラリをスクリーニングして、単離されてもよい。例えばPortolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993); Clarkson et al., Nature 352:624-628 (1991) 参照。
【0086】
「変異Fc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾(改変)、好ましくは1つまたは複数のアミノ酸置換によって天然型配列Fc領域のそれと相違するアミノ酸配列を含む。好ましくは、変異Fc領域は、天然型配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域と比較して、天然型配列Fc領域中または親ポリペプチドのFc領域中に少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば約1~約10個のアミノ酸置換、好ましくは約1~約5個のアミノ酸置換を有する。本明細書の変異Fc領域は、好ましくは、天然型配列Fc領域および/または親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の相同性、最も好ましくはそれらと少なくとも約90%の相同性、より好ましくはそれらと少なくとも約95%の相同性を備える。
【0087】
本明細書で用いられる用語「ベクター」は、それが連結された別の核酸を増やすことができる、核酸分子のことをいう。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、および、それが導入された宿主細胞のゲノム中に組み入れられるベクターを含む。あるベクターは、自身が動作的に連結された核酸の、発現をもたらすことができる。そのようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」とも称される。
【0088】
II. 組成物および方法
一局面において、本発明は、一部には、抗DENV抗体およびその使用に基づいている。特定の態様では、DENVおよび/またはDENV Eタンパク質に結合する抗体が提供される。本発明の抗体は、例えば、DENV感染の診断または治療に有用である。
【0089】
一局面において、本発明は、一部には、変異型Fc領域を含むポリペプチドおよびその使用に基づいている。特定の態様では、実質的に低下したFcγR結合活性を有する変異型Fc領域を含むポリペプチドが提供される。特定の態様では、実質的に低下したC1q結合活性を有しない変異型Fc領域を含むポリペプチドが提供される。特定の態様では、本発明のポリペプチドは抗体である。本発明の変異型Fc領域を含むポリペプチドは、例えば、ウイルス感染の診断または治療に有用である。
【0090】
A. 例示的な抗DENV抗体および変異型Fc領域を含むポリペプチド
一局面において、本発明は、DENVおよび/またはDENV Eタンパク質に結合する単離された抗体を提供する。特定の態様では、抗DENV抗体は、宿主細胞へのDENVおよび/またはDENV Eタンパク質の結合をブロックする。特定の態様では、抗DENV抗体は宿主細胞へのDENV侵入を阻害する。特定の態様では、抗DENV抗体はDENV粒子全体に結合する。さらなる態様では、該抗体は、単量体のDENV Eタンパク質に結合するよりもDENV粒子全体に結合する。特定の態様では、本発明の抗DENV抗体は、DENV血清型1(DENV-1)、DENV血清型2(DENV-2)、DENV血清型3(DENV-3)、およびDENV血清型4(DENV-4)からなる群より選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または4つ全てのDENV血清型に結合しかつ/またはそれを中和する。特定の態様では、抗DENV抗体は、DENV-1、DENV-2、DENV-3、およびDENV-4からなる群より選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または4つ全てのDENV血清型に由来するDENV Eタンパク質に結合しかつ/またはそれを中和する。「血清型」は、ウイルス種内の明確に区別できる多様性(variation)を指す。
【0091】
一局面において、本発明は、(a) SEQ ID NO: 11~12のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b) SEQ ID NO: 13~15のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c) SEQ ID NO: 16~20のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d) SEQ ID NO: 21~23のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e) SEQ ID NO: 24~26のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(f) SEQ ID NO: 27~30のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含む抗DENV抗体を提供する。
【0092】
別の局面において、本発明は、(a) SEQ ID NO: 40のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b) SEQ ID NO: 41のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c) SEQ ID NO: 42のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d) SEQ ID NO: 43のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e) SEQ ID NO: 44のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(f) SEQ ID NO: 45のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含む抗DENV抗体を提供する。
【0093】
別の局面において、本発明は、(a) SEQ ID NO: 12のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b) SEQ ID NO: 15のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c) SEQ ID NO: 20のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d) SEQ ID NO: 23のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e) SEQ ID NO: 26のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(f) SEQ ID NO: 30のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含む抗DENV抗体を提供する。
【0094】
別の局面において、本発明は、(a) SEQ ID NO: 12のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b) SEQ ID NO: 15のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c) SEQ ID NO: 20のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d) SEQ ID NO: 21のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e) SEQ ID NO: 24のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(f) SEQ ID NO: 27のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含む抗DENV抗体を提供する。
【0095】
一局面において、本発明は、(a) SEQ ID NO: 11~12のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b) SEQ ID NO: 13~15のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2;および(c) SEQ ID NO: 16~20のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH HVR配列を含む抗体を提供する。一態様では、該抗体は、SEQ ID NO: 16~20のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む。別の態様では、該抗体は、SEQ ID NO: 16~20のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3およびSEQ ID NO: 27~30のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。さらなる態様では、該抗体は、SEQ ID NO: 16~20のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3、SEQ ID NO: 27~30のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3、およびSEQ ID NO: 13~15のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2を含む。さらなる態様では、該抗体は、(a) SEQ ID NO: 11~12のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b) SEQ ID NO: 13~15のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2;および(c) SEQ ID NO: 16~20のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む。
【0096】
別の局面において、本発明は、(a) SEQ ID NO: 40のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b) SEQ ID NO: 41のアミノ酸配列を含むHVR-H2;および(c) SEQ ID NO: 42のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH HVR配列を含む抗体を提供する。一態様では、該抗体は、SEQ ID NO: 42のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む。別の態様では、該抗体は、SEQ ID NO: 42のアミノ酸配列を含むHVR-H3およびSEQ ID NO: 45のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。さらなる態様では、該抗体は、SEQ ID NO: 42のアミノ酸配列を含むHVR-H3、SEQ ID NO: 45のアミノ酸配列を含むHVR-L3、およびSEQ ID NO: 41のアミノ酸配列を含むHVR-H2を含む。さらなる態様では、該抗体は、(a) SEQ ID NO: 40のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b) SEQ ID NO: 41のアミノ酸配列を含むHVR-H2;および(c) SEQ ID NO: 42のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む。
【0097】
別の局面において、本発明は、(a) SEQ ID NO: 12のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b) SEQ ID NO: 15のアミノ酸配列を含むHVR-H2;および(c) SEQ ID NO: 20のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH HVR配列を含む抗体を提供する。一態様では、該抗体は、SEQ ID NO: 20のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む。別の態様では、該抗体は、SEQ ID NO: 20のアミノ酸配列を含むHVR-H3およびSEQ ID NO: 30のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。別の態様では、該抗体は、SEQ ID NO: 20のアミノ酸配列を含むHVR-H3およびSEQ ID NO: 27のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。さらなる態様では、該抗体は、SEQ ID NO: 20のアミノ酸配列を含むHVR-H3、SEQ ID NO: 30のアミノ酸配列を含むHVR-L3、およびSEQ ID NO: 15のアミノ酸配列を含むHVR-H2を含む。さらなる態様では、該抗体は、SEQ ID NO: 20のアミノ酸配列を含むHVR-H3、SEQ ID NO: 27のアミノ酸配列を含むHVR-L3、およびSEQ ID NO: 15のアミノ酸配列を含むHVR-H2を含む。さらなる態様では、該抗体は、(a) SEQ ID NO: 12のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b) SEQ ID NO: 15のアミノ酸配列を含むHVR-H2;および(c) SEQ ID NO: 20のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む。
【0098】
別の局面において、本発明は、(a) SEQ ID NO: 21~23のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1;(b) SEQ ID NO: 24~26のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(c) SEQ ID NO: 27~30のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL HVR配列を含む抗体を提供する。一態様では、該抗体は、(a) SEQ ID NO: 21~23のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1;(b) SEQ ID NO: 24~26のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(c) SEQ ID NO: 27~30のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0099】
別の局面において、本発明は、(a) SEQ ID NO: 43のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(b) SEQ ID NO: 44のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(c) SEQ ID NO: 45のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL HVR配列を含む抗体を提供する。一態様では、該抗体は、(a) SEQ ID NO: 43のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(b) SEQ ID NO: 44のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(c) SEQ ID NO: 45のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0100】
別の局面において、本発明は、(a) SEQ ID NO: 23のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(b) SEQ ID NO: 26のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(c) SEQ ID NO: 30のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL HVR配列を含む抗体を提供する。一態様では、該抗体は、(a) SEQ ID NO: 23のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(b) SEQ ID NO: 26のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(c) SEQ ID NO: 30のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0101】
別の局面において、本発明の抗体は、(a) (i) SEQ ID NO: 11~12のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii) SEQ ID NO: 13~15のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(iii) SEQ ID NO: 16~20のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH HVR配列を含むVHドメインと、(b) (i) SEQ ID NO: 21~23のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii) SEQ ID NO: 24~26のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(iii) SEQ ID NO: 27~30のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL HVR配列を含むVLドメインとを含む。
【0102】
別の局面において、本発明の抗体は、(a) (i) SEQ ID NO: 40のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii) SEQ ID NO: 41のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(iii) SEQ ID NO: 42のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH HVR配列を含むVHドメインと、(b) (i) SEQ ID NO: 43のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii) SEQ ID NO: 44のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(iii) SEQ ID NO: 45のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL HVR配列を含むVLドメインとを含む。
【0103】
別の局面において、本発明の抗体は、(a) (i) SEQ ID NO: 12のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii) SEQ ID NO: 15のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(iii) SEQ ID NO: 20のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH HVR配列を含むVHドメインと、(b) (i) SEQ ID NO: 23のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii) SEQ ID NO: 26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(iii) SEQ ID NO: 30のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL HVR配列を含むVLドメインとを含む。
【0104】
別の局面において、本発明の抗体は、(a) (i) SEQ ID NO: 12のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii) SEQ ID NO: 15のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(iii) SEQ ID NO: 20のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH HVR配列を含むVHドメインと、(b) (i) SEQ ID NO: 21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii) SEQ ID NO: 24のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(iii) SEQ ID NO: 27のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL HVR配列を含むVLドメインとを含む。
【0105】
別の局面において、本発明は、(a) SEQ ID NO: 11~12のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b) SEQ ID NO: 13~15のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c) SEQ ID NO: 16~20のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d) SEQ ID NO: 21~23のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e) SEQ ID NO: 24~26のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(f) SEQ ID NO: 27~30のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗体を提供する。
【0106】
別の局面において、本発明は、(a) SEQ ID NO: 40のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b) SEQ ID NO: 41のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c) SEQ ID NO: 42のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d) SEQ ID NO: 43のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e) SEQ ID NO: 44のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(f) SEQ ID NO: 45のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗体を提供する。
【0107】
別の局面において、本発明は、(a) SEQ ID NO: 12のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b) SEQ ID NO: 15のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c) SEQ ID NO: 20のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d) SEQ ID NO: 23のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e) SEQ ID NO: 26のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(f) SEQ ID NO: 30のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗体を提供する。
【0108】
別の局面において、本発明は、(a) SEQ ID NO: 12のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b) SEQ ID NO: 15のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c) SEQ ID NO: 20のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d) SEQ ID NO: 21のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e) SEQ ID NO: 24のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(f) SEQ ID NO: 27のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗体を提供する。
【0109】
特定の態様では、上述した抗DENV抗体のいずれか1つ以上のアミノ酸は、以下のHVR位置で置換される:(a) HVR-H1 (SEQ ID NO: 11)では、2位および4位;(b) HVR-H2 (SEQ ID NO: 13)では、9位および10位;(c) HVR-H3 (SEQ ID NO: 16)では、3位、14位および16位;(d) HVR-L1 (SEQ ID NO: 21)では、5位および8位;(e) HVR-L2 (SEQ ID NO:24)では、4位および7位;ならびに(f) HVR-L3 (SEQ ID NO:27)では、4位および5位。
【0110】
特定の態様では、抗DENV抗体の1つ以上のアミノ酸置換は、本明細書に提供されるような、保存的置換である。特定の態様では、以下の置換のいずれか1つ以上を任意の組み合わせで行うことができる:(a) HVR-H1 (SEQ ID NO: 11)では、N2Y; I4M;(b) HVR-H2 (SEQ ID NO: 13)では、T9R; A10R;(c) HVR-H3 (SEQ ID NO: 16)では、R3E; R14F; G16DまたはL;(d) HVR-L1 (SEQ ID NO: 21)では、D5E; K8Q;(e) HVR-L2 (SEQ ID NO: 24)では、N4E; T7F;および(f) HVR-L3 (SEQ ID NO: 27)では、D4SまたはE; D5A。
【0111】
上記の置換の全ての可能な組み合わせは、HVR-H1、HVR-H2、HVR-H3、HVR-L1、HVR-L2、およびHVR-L3についての、それぞれSEQ ID NO: 40、41、42、43、44および45のコンセンサス配列に包含される。
【0112】
さらなる態様では、本発明の抗DENV抗体は、(i) SEQ ID NO: 11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii) SEQ ID NO: 13のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii) SEQ ID NO: 16のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv) SEQ ID NO: 21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v) SEQ ID NO: 24のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(vi) SEQ ID NO: 27のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗体ではない。
【0113】
別の局面において、本発明は、(a) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H1;(b) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H2;(c) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H3;(d) SEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L1;(e) SEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L2;および(f) SEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L3から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含む抗DENV抗体を提供する。
【0114】
別の局面において、本発明は、(a) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H1;(b) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H2;(c) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H3;(d) SEQ ID NO: 7のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L1;(e) SEQ ID NO: 7のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L2;および(f) SEQ ID NO: 7のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L3から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含む抗DENV抗体を提供する。
【0115】
別の局面において、本発明は、(a) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H1;(b) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H2;(c) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H3;(d) SEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L1;(e) SEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L2;および(f) SEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L3から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含む抗DENV抗体を提供する。
【0116】
別の局面において、本発明は、(a) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H1;(b) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H2;(c) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H3;(d) SEQ ID NO: 7のVL配列由来のHVR-L1;(e) SEQ ID NO: 7のVL配列由来のHVR-L2;および(f) SEQ ID NO: 7のVL配列由来のHVR-L3から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含む抗DENV抗体を提供する。
【0117】
一局面において、本発明は、(a) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H1;(b) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H2;および(c) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH HVR配列を含む抗体を提供する。一態様では、該抗体は、SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H3を含む。別の態様では、該抗体は、SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H3およびSEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L3を含む。別の態様では、該抗体は、SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H3およびSEQ ID NO: 7のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L3を含む。さらなる態様では、該抗体は、SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H3、SEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L3、およびSEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H2を含む。さらなる態様では、該抗体は、SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H3、SEQ ID NO: 7のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L3、およびSEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H2を含む。さらなる態様では、該抗体は、(a) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H1;(b) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H2;および(c) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H3を含む。
【0118】
一局面において、本発明は、(a) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H1;(b) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H2;(c) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH HVR配列を含む抗体を提供する。一態様では、該抗体は、SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H3を含む。別の態様では、該抗体は、SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H3およびSEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L3を含む。別の態様では、該抗体は、SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H3およびSEQ ID NO: 7のVL配列由来のHVR-L3を含む。さらなる態様では、該抗体は、SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H3、SEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L3、およびSEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H2を含む。さらなる態様では、該抗体は、SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H3、SEQ ID NO: 7のVL配列由来のHVR-L3、およびSEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H2を含む。さらなる態様では、該抗体は、(a) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H1;(b) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H2;および(c) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H3を含む。
【0119】
別の局面において、本発明は、(a) SEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L1;(b) SEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L2;および(c) SEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL HVR配列を含む抗体を提供する。一態様では、該抗体は、(a) SEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L1;(b) SEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L2;および(c) SEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L3を含む。
【0120】
別の局面において、本発明は、(a) SEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L1;(b) SEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L2;および(c) SEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL HVR配列を含む抗体を提供する。一態様では、該抗体は、(a) SEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L1;(b) SEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L2;および(c) SEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L3を含む。
【0121】
別の局面において、本発明の抗体は、(a) (i) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H1、(ii) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H2、および(iii) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH HVR配列を含むVHドメインと、(b) (i) SEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L1、(ii) SEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L2、および(iii) SEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL HVR配列を含むVLドメインとを含む。
【0122】
別の局面において、本発明の抗体は、(a) (i) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H1、(ii) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H2、および(iii) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH HVR配列を含むVHドメインと、(b) (i) SEQ ID NO: 7のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L1、(ii) SEQ ID NO: 7のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L2、および(iii) SEQ ID NO: 7のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL HVR配列を含むVLドメインとを含む。
【0123】
別の局面において、本発明の抗体は、(a) (i) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H1、(ii) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H2、および(iii) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH HVR配列を含むVHドメインと、(b) (i) SEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L1、(ii) SEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L2、および(iii) SEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL HVR配列を含むVLドメインとを含む。
【0124】
別の局面において、本発明の抗体は、(a) (i) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H1、(ii) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H2、および(iii) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH HVR配列を含むVHドメインと、(b) (i) SEQ ID NO: 7のVL配列由来のHVR-L1、(ii) SEQ ID NO: 7のVL配列由来のHVR-L2、および(iii) SEQ ID NO: 7のVL配列由来のHVR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL HVR配列を含むVLドメインとを含む。
【0125】
別の局面において、本発明は、(a) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H1;(b) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H2;(c) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H3;(d) SEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L1;(e) SEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L2;および(f) SEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L3を含む抗体を提供する。
【0126】
別の局面において、本発明は、(a) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H1;(b) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H2;(c) SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列由来のHVR-H3;(d) SEQ ID NO: 7のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L1;(e) SEQ ID NO: 7のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L2;および(f) SEQ ID NO: 7のいずれか1つのVL配列由来のHVR-L3を含む抗体を提供する。
【0127】
別の局面において、本発明は、(a) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H1;(b) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H2;(c) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H3;(d) SEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L1;(e) SEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L2;および(f) SEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L3を含む抗体を提供する。
【0128】
別の局面において、本発明は、(a) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H1;(b) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H2;(c) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H3;(d) SEQ ID NO: 7のVL配列由来のHVR-L1;(e) SEQ ID NO: 7のVL配列由来のHVR-L2;および(f) SEQ ID NO: 7のVL配列由来のHVR-L3を含む抗体を提供する。
【0129】
さらなる態様では、本発明の抗DENV抗体は、(i) SEQ ID NO: 1のVH配列由来のHVR-H1;(ii) SEQ ID NO: 1のVH配列由来のHVR-H2;(iii) SEQ ID NO: 1のVH配列由来のHVR-H3;(iv) SEQ ID NO: 7のVL配列由来のHVR-L1;(v) SEQ ID NO: 7のVL配列由来のHVR-L2;および(vi) SEQ ID NO: 7のVL配列由来のHVR-L3を含む抗体ではない。
【0130】
上記態様のいずれにおいても、抗DENV抗体はヒト化することが可能である。一態様では、抗DENV抗体は、上記態様のいずれかにおけるHVRを含み、さらにアクセプターヒトフレームワーク、例えばヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。別の態様では、抗DENV抗体は、上記態様のいずれかにおけるHVRを含み、さらにFR配列を含むVHまたはVLを含む。さらなる態様では、抗DENV抗体は、以下の重鎖および/または軽鎖可変ドメインFR配列を含む。重鎖可変ドメインの場合には、FR1はSEQ ID NO: 31のアミノ酸配列を含み、FR2はSEQ ID NO: 32のアミノ酸配列を含み、FR3はSEQ ID NO: 33または34のアミノ酸配列を含み、FR4はSEQ ID NO: 35のアミノ酸配列を含む。軽鎖可変ドメインの場合には、FR1はSEQ ID NO: 36のアミノ酸配列を含み、FR2はSEQ ID NO: 37のアミノ酸配列を含み、FR3はSEQ ID NO: 38のアミノ酸配列を含み、FR4はSEQ ID NO: 39のアミノ酸配列を含む。
【0131】
別の局面において、抗DENV抗体は、SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。特定の態様では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、その配列を含む抗DENV抗体はDENVに結合する能力を保持する。特定の態様では、合計1~10個のアミノ酸がSEQ ID NO: 2~6のいずれか1つにおいて置換、挿入および/または欠失されている。特定の態様では、置換、挿入または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR)に生じる。場合により、抗DENV抗体は、翻訳後修飾を含む、SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つのVH配列を含む。特定の態様では、該VHは、(a) SEQ ID NO: 11~12のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b) SEQ ID NO: 13~15のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(c) SEQ ID NO: 16~20のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む。翻訳後修飾には、重鎖または軽鎖のN末端のグルタミンまたはグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾が含まれるが、これに限定されない。
【0132】
別の局面において、抗DENV抗体は、SEQ ID NO: 6のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。特定の態様では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、その配列を含む抗DENV抗体はDENVに結合する能力を保持する。特定の態様では、合計1~10個のアミノ酸がSEQ ID NO: 6において置換、挿入および/または欠失されている。特定の態様では、置換、挿入または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR)に生じる。場合により、抗DENV抗体は、翻訳後修飾を含む、SEQ ID NO: 6のVH配列を含む。特定の態様では、該VHは、(a) SEQ ID NO: 12のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b) SEQ ID NO: 15のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(c) SEQ ID NO: 20のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む。翻訳後修飾には、重鎖または軽鎖のN末端のグルタミンまたはグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾が含まれるが、これに限定されない。
【0133】
別の局面において、抗DENV抗体は、SEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)配列を含む。特定の態様では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、その配列を含む抗DENV抗体はDENVに結合する能力を保持する。特定の態様では、合計1~10個のアミノ酸がSEQ ID NO: 8~10のいずれか1つにおいて置換、挿入および/または欠失されている。特定の態様では、置換、挿入または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR)に生じる。場合により、抗DENV抗体は、翻訳後修飾を含む、SEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのVL配列を含む。特定の態様では、該VLは、(a) SEQ ID NO: 21~23のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b) SEQ ID NO: 24~26のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(c) SEQ ID NO: 27~30のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む。翻訳後修飾には、重鎖または軽鎖のN末端のグルタミンまたはグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾が含まれるが、これに限定されない。
【0134】
別の局面では、SEQ ID NO: 10のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗DENV抗体が提供される。特定の態様では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、その配列を含む抗DENV抗体はDENVに結合する能力を保持する。特定の態様では、合計1~10個のアミノ酸がSEQ ID NO: 10において置換、挿入および/または欠失されている。特定の態様では、置換、挿入または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR)に生じる。場合により、抗DENV抗体は、翻訳後修飾を含む、SEQ ID NO: 10のVL配列を含む。特定の態様では、該VLは、(a) SEQ ID NO: 23のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b) SEQ ID NO: 26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(c) SEQ ID NO: 30のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む。翻訳後修飾には、重鎖または軽鎖のN末端のグルタミンまたはグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾が含まれるが、これに限定されない。
【0135】
別の局面では、上記態様のいずれかにおけるようなVHと、上記態様のいずれかにおけるようなVLとを含む抗DENV抗体が提供される。一態様では、該抗体は、翻訳後修飾を含む、SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つおよびSEQ ID NO: 8~10のいずれか1つのそれぞれVH配列およびVL配列を含む。一態様では、該抗体は、翻訳後修飾を含む、SEQ ID NO: 2~6のいずれか1つおよびSEQ ID NO: 7のそれぞれVHおよびVL配列を含む。翻訳後修飾には、重鎖または軽鎖のN末端のグルタミンまたはグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾が含まれるが、これに限定されない。
【0136】
別の局面では、上記態様のいずれかにおけるようなVHと、上記態様のいずれかにおけるようなVLとを含む抗DENV抗体が提供される。一態様では、該抗体は、翻訳後修飾を含む、SEQ ID NO: 6およびSEQ ID NO: 10のそれぞれVH配列およびVL配列を含む。一態様では、該抗体は、翻訳後修飾を含む、SEQ ID NO: 6およびSEQ ID NO: 7のそれぞれVH配列およびVL配列を含む。翻訳後修飾には、重鎖または軽鎖のN末端のグルタミンまたはグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾が含まれるが、これに限定されない。
【0137】
さらなる局面において、本発明は、本明細書に提供される抗DENV抗体と同じエピトープに結合する抗体を提供する。特定の態様では、DENV-2 Eタンパク質上のG100、W101、K122、I162、S274、K310、W391およびF392からなる群より選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、または全てのアミノ酸を含むエピトープに結合する抗体が提供される。特定の態様では、DENV-2 Eタンパク質上のK122、I162、およびS274からなる群より選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または全てのアミノ酸を含むエピトープに結合する抗体が提供される。特定の態様では、エピトープがK122、I162、およびS274からなる群より選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または全てのアミノ酸を含む場合、G100、W101、K310、W391、およびF392からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸をさらに含む該エピトープに結合する抗体が提供される。
【0138】
本発明のさらなる局面では、上記態様のいずれかによる抗DENV抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体を含めて、モノクローナル抗体である。一態様では、抗DENV抗体は、抗体フラグメント、例えば、Fv、Fab、Fab'、scFv、ダイアボディ、またはF(ab')2フラグメントである。別の態様では、該抗体は、全長抗体、例えば、インタクトなIgG1抗体、または本明細書に定義される他の抗体クラスもしくはアイソタイプである。
【0139】
さらなる局面では、本発明の抗DENV抗体は、Fcガンマ受容体(FcγR)への抗体の結合を無効にする修飾を有し得る。理論に拘束されるものではないが、Fcガンマ受容体への抗体の結合を無効にする修飾は、FcRへの結合の減少が、FcRとの相互作用によって主に媒介されると考えられる感染のADE(抗体依存性増強)現象を回避することができるので、有利であり得る。一態様では、本発明の抗DENV抗体のFc領域は、EUナンバリングに従って234位にAlaを、235位にAlaを含む。
【0140】
さらなる局面において、上述の態様の任意のものによる抗DENV抗体は、単独または組み合わせで、以下の項目1~7に記載の任意の特徴を取り込んでもよい。
【0141】
1.抗体のアフィニティ
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下または0.001nM以下(例えば、10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数 (Kd) を有する。
【0142】
一態様において、Kdは、放射性標識抗原結合アッセイ (radiolabeled antigen binding assay: RIA) によって測定される。一態様において、RIAは、目的の抗体のFabバージョンおよびその抗原を用いて実施される。例えば、抗原に対するFabの溶液中結合アフィニティは、非標識抗原の漸増量系列の存在下で最小濃度の (125I) 標識抗原によりFabを平衡化させ、次いで結合した抗原を抗Fab抗体でコーティングされたプレートにより捕捉することによって測定される。(例えば、Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881(1999) を参照のこと)。測定条件を構築するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート (Thermo Scientific) を50mM炭酸ナトリウム (pH9.6) 中5μg/mlの捕捉用抗Fab抗体 (Cappel Labs) で一晩コーティングし、その後に室温(およそ23℃)で2~5時間、PBS中2% (w/v) ウシ血清アルブミンでブロックする。非吸着プレート (Nunc #269620) において、100 pMまたは26 pMの [125I]-抗原を、(例えば、Presta et al., Cancer Res. 57:4593-4599 (1997) における抗VEGF抗体、Fab-12の評価と同じように)目的のFabの段階希釈物と混合する。次いで、目的のFabを一晩インキュベートするが、このインキュベーションは、平衡が確実に達成されるよう、より長時間(例えば、約65時間)継続され得る。その後、混合物を、室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のために捕捉プレートに移す。次いで溶液を除去し、プレートをPBS中0.1%のポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルのシンチラント(MICROSCINT-20(商標)、Packard)を添加し、TOPCOUNT(商標)ガンマカウンター (Packard) においてプレートを10分間カウントする。最大結合の20%以下を与える各Fabの濃度を、競合結合アッセイにおいて使用するために選択する。
【0143】
別の態様によれば、Kdは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを用いて測定される。例えば、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000 (BIAcore, Inc., Piscataway, NJ) を用いるアッセイが、およそ10反応単位 (response unit: RU) の抗原が固定されたCM5チップを用いて25℃で実施される。一態様において、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ (CM5、BIACORE, Inc.) は、供給元の指示にしたがいN-エチル-N’- (3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミドヒドロクロリド (EDC) およびN-ヒドロキシスクシンイミド (NHS) を用いて活性化される。抗原は、およそ10反応単位 (RU) のタンパク質の結合を達成するよう、5μl/分の流速で注入される前に、10mM酢酸ナトリウム、pH4.8を用いて5μg/ml(およそ0.2μM)に希釈される。抗原の注入後、未反応基をブロックするために1Mエタノールアミンが注入される。反応速度測定のために、25℃、およそ25μl/分の流速で、0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤含有PBS (PBST) 中のFabの2倍段階希釈物 (0.78nM~500nM) が注入される。結合速度 (kon) および解離速度 (koff) は、単純な1対1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)評価ソフトウェアバージョン3.2)を用いて、結合および解離のセンサーグラムを同時にフィッティングすることによって計算される。平衡解離定数 (Kd) は、koff/kon比として計算される。例えば、Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881 (1999) を参照のこと。上記の表面プラズモン共鳴アッセイによってオン速度が106M-1s-1を超える場合、オン速度は、分光計(例えばストップフロー式分光光度計 (Aviv Instruments) または撹拌キュベットを用いる8000シリーズのSLM-AMINCO(商標)分光光度計 (ThermoSpectronic))において測定される、漸増濃度の抗原の存在下でのPBS、pH7.2中20nMの抗抗原抗体(Fab形態)の25℃での蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、バンドパス16nm)の増加または減少を測定する蛍光消光技術を用いて決定され得る。
【0144】
2.抗体断片
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、抗体断片である。抗体断片は、これらに限定されるものではないが、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、および scFv断片、ならびに、後述する他の断片を含む。特定の抗体断片についての総説として、Hudson et al. Nat. Med. 9:129-134 (2003) を参照のこと。scFv断片の総説として、例えば、Pluckthun, in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., (Springer-Verlag, New York), pp.269-315 (1994);加えて、WO93/16185;ならびに米国特許第5,571,894号および第5,587,458号を参照のこと。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含みインビボ (in vivo) における半減期の長くなったFabおよびF(ab')2断片についての論説として、米国特許第5,869,046号を参照のこと。
【0145】
ダイアボディは、二価または二重特異的であってよい、抗原結合部位を2つ伴う抗体断片である。例えば、EP404,097号; WO1993/01161; Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003); Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993) 参照。トリアボディ (triabody) やテトラボディ (tetrabody) も、Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003) に記載されている。
【0146】
シングルドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分、または軽鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分を含む、抗体断片である。特定の態様において、シングルドメイン抗体は、ヒトシングルドメイン抗体である(Domantis, Inc., Waltham, MA;例えば、米国特許第6,248,516号B1参照)。
【0147】
抗体断片は、これらに限定されるものではないが、本明細書に記載の、完全抗体のタンパク質分解的消化、組み換え宿主細胞(例えば、大腸菌 (E. coli) またはファージ)による産生を含む、種々の手法により作ることができる。
【0148】
3.キメラおよびヒト化抗体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、キメラ抗体である。特定のキメラ抗体が、例えば、米国特許第4,816,567号;および、Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984) に記載されている。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサルなどの非ヒト霊長類に由来する可変領域)およびヒト定常領域を含む。さらなる例において、キメラ抗体は、親抗体のものからクラスまたはサブクラスが変更された「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片も含む。
【0149】
特定の態様において、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、親非ヒト抗体の特異性およびアフィニティを維持したままでヒトへの免疫原性を減少させるために、ヒト化される。通常、ヒト化抗体は1つまたは複数の可変ドメインを含み、当該可変ドメイン中、HVR(例えばCDR(またはその部分))は非ヒト抗体に由来し、FR(またはその部分)はヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体は、任意で、ヒト定常領域の少なくとも一部分を含む。いくつかの態様において、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば、抗体の特異性またはアフィニティを回復または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基の由来となった抗体)からの対応する残基で置換されている。
【0150】
ヒト化抗体およびその作製方法は、Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008)において総説されており、また、例えば、Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988); Queen et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 86:10029-10033 (1989); 米国特許第5,821,337号、第7,527,791号、第6,982,321号、および第7,087,409号;Kashmiri et al., Methods 36:25-34 (2005)(特異性決定領域 (specificity determining region: SDR) グラフティングを記載);Padlan, Mol. Immunol. 28:489-498 (1991) (「リサーフェイシング」を記載); Dall’Acqua et al., Methods 36:43-60 (2005) (「FRシャッフリング」を記載);ならびに、Osbourn et al., Methods 36:61-68 (2005) およびKlimka et al., Br. J. Cancer, 83:252-260 (2000) (FRシャッフリングのための「ガイドセレクション」アプローチを記載)において、さらに記載されている。
【0151】
ヒト化に使われ得るヒトフレームワーク領域は、これらに限定されるものではないが:「ベストフィット」法(Sims et al. J. Immunol. 151:2296 (1993) 参照)を用いて選択されたフレームワーク領域;軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(Carter et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4285 (1992) および Presta et al. J. Immunol. 151:2623 (1993) 参照);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008) 参照);および、FRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(Baca et al., J. Biol. Chem. 272:10678-10684 (1997) および Rosok et al., J. Biol. Chem. 271:22611-22618 (1996) 参照)を含む。
【0152】
4.ヒト抗体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野において知られる種々の手法によって製造され得る。ヒト抗体は、van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol. 5: 368-74 (2001) および Lonberg, Curr. Opin. Immunol. 20:450-459 (2008) に、概説されている。
【0153】
ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答して完全ヒト抗体またはヒト可変領域を伴う完全抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物へ免疫原を投与することにより、調製されてもよい。そのような動物は、典型的にはヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部もしくは一部分を含み、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部もしくは一部分は、内因性の免疫グロブリン遺伝子座を置き換えるか、または、染色体外にもしくは当該動物の染色体内にランダムに取り込まれた状態で存在する。そのようなトランスジェニックマウスにおいて、内因性の免疫グロブリン遺伝子座は、通常不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得る方法の総説として、Lonberg, Nat. Biotech. 23:1117-1125 (2005) を参照のこと。また、例えば、XENOMOUSE(商標)技術を記載した米国特許第6,075,181号および第6,150,584号;HUMAB(登録商標)技術を記載した米国特許第5,770,429号;K-M MOUSE(登録商標)技術を記載した米国特許第7,041,870号;ならびに、VELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載した米国特許出願公開第2007/0061900号を、併せて参照のこと。このような動物によって生成された完全抗体からのヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせるなどして、さらに修飾されてもよい。
【0154】
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づいた方法でも作ることができる。ヒトモノクローナル抗体の製造のための、ヒトミエローマおよびマウス‐ヒトヘテロミエローマ細胞株は、既に記述されている。(例えば、Kozbor J. Immunol., 133: 3001 (1984);Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987);およびBoerner et al., J. Immunol. 147: 86 (1991) 参照。)ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体も、Li et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103:3557-3562 (2006) に述べられている。追加的な方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の製造を記載)、および、Ni, Xiandai Mianyixue, 26(4):265-268 (2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマを記載)に記載されたものを含む。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)も、Vollmers and Brandlein, Histology and Histopathology, 20(3):927-937 (2005) およびVollmers and Brandlein, Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology, 27(3):185-91 (2005)に記載されている。
【0155】
ヒト抗体は、ヒト由来ファージディスプレイライブラリから選択されたFvクローン可変ドメイン配列を単離することでも生成できる。このような可変ドメイン配列は、次に所望のヒト定常ドメインと組み合わせることができる。抗体ライブラリからヒト抗体を選択する手法を、以下に述べる。
【0156】
5.ライブラリ由来抗体
本発明の抗体は、所望の1つまたは複数の活性を伴う抗体についてコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって単離してもよい。例えば、ファージディスプレイライブラリの生成や、所望の結合特性を備える抗体についてそのようなライブラリをスクリーニングするための、様々な方法が当該技術分野において知られている。そのような方法は、Hoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology 178:1-37; O'Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, 2001) において総説されており、さらに例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554;Clackson et al., Nature 352: 624-628 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1992); Marks and Bradbury, in Methods in Molecular Biology 248:161-175 (Lo, ed., Human Press, Totowa, NJ, 2003); Sidhu et al., J. Mol. Biol. 338(2): 299-310 (2004); Lee et al., J. Mol. Biol. 340(5): 1073-1093 (2004); Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(34):12467-12472 (2004);およびLee et al., J. Immunol. Methods 284(1-2): 119-132(2004) に記載されている。
【0157】
特定のファージディスプレイ法において、VHおよびVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応 (polymerase chain reaction: PCR) により別々にクローニングされ、無作為にファージライブラリ中で再結合され、当該ファージライブラリは、Winter et al., Ann. Rev. Immunol. 12: 433-455 (1994) に述べられているようにして、抗原結合ファージについてスクリーニングされ得る。ファージは、典型的には、単鎖Fv (scFv) 断片としてまたはFab断片としてのいずれかで、抗体断片を提示する。免疫化された供給源からのライブラリは、ハイブリドーマを構築することを要さずに、免疫源に対する高アフィニティ抗体を提供する。あるいは、Griffiths et al., EMBO J, 12: 725-734 (1993) に記載されるように、ナイーブレパートリーを(例えば、ヒトから)クローニングして、免疫化することなしに、広範な非自己および自己抗原への抗体の単一の供給源を提供することもできる。最後に、ナイーブライブラリは、Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227: 381-388 (1992) に記載されるように、幹細胞から再編成前のV-遺伝子セグメントをクローニングし、超可変CDR3領域をコードしかつインビトロ (in vitro) で再構成を達成するための無作為配列を含んだPCRプライマーを用いることにより、合成的に作ることもできる。ヒト抗体ファージライブラリを記載した特許文献は、例えば:米国特許第5,750,373号、ならびに、米国特許出願公開第2005/0079574号、2005/0119455号、第2005/0266000号、第2007/0117126号、第2007/0160598号、第2007/0237764号、第2007/0292936号、および第2009/0002360号を含む。
【0158】
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体または抗体断片は、本明細書ではヒト抗体またはヒト抗体断片と見なす。
【0159】
6.多重特異性抗体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に結合特異性を有する、モノクローナル抗体である。特定の態様において、結合特異性の1つは、DENV Eタンパク質に対するものであり、もう1つは他の任意の抗原へのものである。特定の態様において、二重特異性抗体は、DENV Eタンパク質の異なった2つのエピトープに結合してもよい。二重特異性抗体は、DENV Eタンパク質を発現する細胞に細胞傷害剤を局在化するために使用されてもよい。二重特異性抗体は、全長抗体としてまたは抗体断片として調製され得る。
【0160】
多重特異性抗体を作製するための手法は、これらに限定されるものではないが、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖ペアの組み換え共発現(Milstein and Cuello, Nature 305: 537 (1983)、WO 93/08829、およびTraunecker et al., EMBO J. 10: 3655 (1991) 参照)、および「knob-in-hole」技術(例えば、米国特許第5,731,168号参照)を含む。多重特異性抗体は、Fcヘテロ二量体分子を作製するために静電ステアリング効果 (electrostatic steering effects) を操作すること (WO 2009/089004A1);2つ以上の抗体または断片を架橋すること(米国特許第4,676,980号およびBrennan et al., Science, 229: 81 (1985)参照);ロイシンジッパーを用いて2つの特異性を有する抗体を作成すること(Kostelny et al., J. Immunol. 148(5):1547-1553 (1992) 参照);「ダイアボディ」技術を用いて二重特異性抗体断片を作製すること(Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448 (1993) 参照);および、単鎖Fv (scFv) 二量体を用いること(Gruber et al., J. Immunol. 152:5368 (1994) 参照);および、例えばTutt et al., J. Immunol. 147: 60 (1991) に記載されるように三重特異性抗体を調製すること、によって作製してもよい。
【0161】
「オクトパス抗体」を含む、3つ以上の機能的抗原結合部位を伴う改変抗体も、本明細書では含まれる(例えば、米国特許出願公開第2006/0025576号A1参照)。
【0162】
本明細書で抗体または断片は、DENV Eタンパク質と別の異なる抗原とに結合する1つの抗原結合部位を含む、「デュアルアクティングFab」または「DAF」も含む(例えば、米国特許出願公開第2008/0069820号参照)。
【0163】
7.抗体変異体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体のアミノ酸配列変異体も、考慮の内である。例えば、抗体の結合アフィニティおよび/または他の生物学的特性を改善することが、望ましいこともある。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入すること、または、ペプチド合成によって、調製されてもよい。そのような修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列からの欠失、および/または抗体のアミノ酸配列中への挿入、および/または抗体のアミノ酸配列中の残基の置換を含む。最終構築物が所望の特徴(例えば、抗原結合性)を備えることを前提に、欠失、挿入、および置換の任意の組合せが、最終構築物に至るために行われ得る。
【0164】
a)置換、挿入、および欠失変異体
特定の態様において、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する抗体変異体が提供される。置換的変異導入の目的部位は、HVRおよびFRを含む。保存的置換を、表1の「好ましい置換」の見出しの下に示す。より実質的な変更を、表1の「例示的な置換」の見出しの下に提供するとともに、アミノ酸側鎖のクラスに言及しつつ下で詳述する。アミノ酸置換は目的の抗体に導入されてもよく、産物は、例えば、保持/改善された抗原結合性、減少した免疫原性、または改善したADCCまたはCDCなどの、所望の活性についてスクリーニングされてもよい。
【0165】
(表1)
【0166】
アミノ酸は、共通の側鎖特性によって群に分けることができる:
(1) 疎水性:ノルロイシン、メチオニン (Met)、アラニン (Ala)、バリン (Val)、ロイシン (Leu)、イソロイシン (Ile);
(2) 中性の親水性:システイン (Cys)、セリン (Ser)、トレオニン (Thr)、アスパラギン (Asn)、グルタミン (Gln);
(3) 酸性:アスパラギン酸 (Asp)、グルタミン酸 (Glu);
(4) 塩基性:ヒスチジン (His)、リジン (Lys)、アルギニン (Arg);
(5) 鎖配向に影響する残基:グリシン (Gly)、プロリン (Pro);
(6) 芳香族性:トリプトファン (Trp)、チロシン (Tyr)、フェニルアラニン (Phe)。
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを、別のクラスのメンバーに交換することをいう。
【0167】
置換変異体の1つのタイプは、親抗体(例えば、ヒト化またはヒト抗体)の1つまたは複数の超可変領域残基の置換を含む。通常、その結果として生じ、さらなる研究のために選ばれた変異体は、親抗体と比較して特定の生物学的特性における修飾(例えば、改善)(例えば、増加したアフィニティ、減少した免疫原性)を有する、および/または親抗体の特定の生物学的特性を実質的に保持しているであろう。例示的な置換変異体は、アフィニティ成熟抗体であり、これは、例えばファージディスプレイベースのアフィニティ成熟技術(例えば本明細書に記載されるもの)を用いて適宜作製され得る。簡潔に説明すると、1つまたは複数のHVR残基を変異させ、そして変異抗体をファージ上に提示させ、特定の生物学的活性(例えば、結合アフィニティ)に関してスクリーニングを行う。
【0168】
改変(例えば、置換)は、例えば抗体のアフィニティを改善するために、HVRにおいて行われ得る。そのような改変は、HVRの「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセスの間に高頻度で変異が起こるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury, Methods Mol. Biol. 207:179-196 (2008) を参照のこと)および/または抗原に接触する残基において行われ得、得られた変異VHまたはVLが結合アフィニティに関して試験され得る。二次ライブラリからの構築および再選択によるアフィニティ成熟が、例えば、Hoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O’Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, (2001)) に記載されている。アフィニティ成熟のいくつかの態様において、多様性は、任意の様々な方法(例えば、エラープローンPCR、チェーンシャッフリングまたはオリゴヌクレオチド指向変異導入)によって成熟のために選択された可変遺伝子に導入される。次いで、二次ライブラリが作製される。次いで、このライブラリは、所望のアフィニティを有する任意の抗体変異体を同定するためにスクリーニングされる。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6残基)を無作為化するHVR指向アプローチを含む。抗原結合に関与するHVR残基は、例えばアラニンスキャニング変異導入またはモデリングを用いて、具体的に特定され得る。特に、CDR-H3およびCDR-L3がしばしば標的化される。
【0169】
特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、そのような改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に減少させない限り、1つまたは複数のHVR内で行われ得る。例えば、結合アフィニティを実質的に減少させない保存的改変(例えば、本明細書で提供されるような保存的置換)が、HVRにおいて行われ得る。そのような改変は、例えば、HVRの抗原接触残基の外側であり得る。上記の変異VHおよびVL配列の特定の態様において、各HVRは改変されていないか、わずか1つ、2つ、もしくは3つのアミノ酸置換を含む。
【0170】
変異導入のために標的化され得る抗体の残基または領域を同定するのに有用な方法は、Cunningham and Wells(1989), Science, 244:1081-1085によって記載される、「アラニンスキャニング変異導入」と呼ばれるものである。この方法において、一残基または一群の標的残基(例えば、荷電残基、例えばアルギニン、アスパラギン酸、ヒスチジン、リジン、およびグルタミン酸)が同定され、中性または負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニンもしくはポリアラニン)で置き換えられ、抗体と抗原の相互作用が影響を受けるかどうかが決定される。この初期置換に対して機能的感受性を示したアミノ酸位置に、さらなる置換が導入され得る。あるいはまたは加えて、抗体と抗原の間の接触点を同定するために、抗原抗体複合体の結晶構造を分析してもよい。そのような接触残基および近隣の残基を、置換候補として標的化してもよく、または置換候補から除外してもよい。変異体は、それらが所望の特性を含むかどうかを決定するためにスクリーニングされ得る。
【0171】
アミノ酸配列の挿入は、配列内部への単一または複数のアミノ酸残基の挿入と同様、アミノ末端および/またはカルボキシル末端における1残基から100残基以上を含むポリペプチドの長さの範囲での融合も含む。末端の挿入の例は、N末端にメチオニル残基を伴う抗体を含む。抗体分子の他の挿入変異体は、酵素(例えば、ADEPTのための)または抗体の血漿内半減期を増加させるポリペプチドを、抗体のN-またはC-末端に融合させたものを含む。
【0172】
b)グリコシル化変異体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加させるまたは減少させるように改変されている。抗体へのグリコシル化部位の追加または削除は、1つまたは複数のグリコシル化部位を作り出すまたは取り除くようにアミノ酸配列を改変することにより、簡便に達成可能である。
【0173】
抗体がFc領域を含む場合、そこに付加される炭水化物が改変されてもよい。哺乳動物細胞によって産生される天然型抗体は、典型的には、枝分かれした二分岐のオリゴ糖を含み、当該オリゴ糖は通常Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN-リンケージによって付加されている。例えば、Wright et al., TIBTECH 15:26-32 (1997) 参照。オリゴ糖は、例えば、マンノース、N‐アセチルグルコサミン (GlcNAc)、ガラクトース、およびシアル酸などの種々の炭水化物、また、二分岐のオリゴ糖構造の「幹」中のGlcNAcに付加されたフコースを含む。いくつかの態様において、本発明の抗体中のオリゴ糖の修飾は、特定の改善された特性を伴う抗体変異体を作り出すために行われてもよい。
【0174】
一態様において、Fc領域に(直接的または間接的に)付加されたフコースを欠く炭水化物構造体を有する抗体変異体が提供される。例えば、そのような抗体におけるフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%または20%~40%であり得る。フコースの量は、例えばWO 2008/077546に記載されるようにMALDI-TOF質量分析によって測定される、Asn297に付加されたすべての糖構造体(例えば、複合、ハイブリッド、および高マンノース構造体)の和に対する、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297は、Fc領域の297位のあたりに位置するアスパラギン残基を表す(Fc領域残基のEUナンバリング)。しかし、複数の抗体間のわずかな配列の多様性に起因して、Asn297は、297位のおよそ±3アミノ酸上流または下流、すなわち294位~300位の間に位置することもあり得る。そのようなフコシル化変異体は、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号 (Presta, L.) ;第2004/0093621号 (Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd) を参照のこと。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体変異体に関する刊行物の例は、US 2003/0157108; WO 2000/61739; WO 2001/29246; US 2003/0115614; US 2002/0164328; US 2004/0093621; US 2004/0132140; US 2004/0110704; US 2004/0110282; US 2004/0109865; WO 2003/085119; WO 2003/084570; WO 2005/035586; WO 2005/035778; WO 2005/053742; WO 2002/031140; Okazaki et al., J. Mol. Biol. 336:1239-1249 (2004); Yamane-Ohnuki et al., Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004) を含む。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例は、タンパク質のフコシル化を欠くLec13 CHO細胞(Ripka et al. Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986);米国特許出願公開第US 2003/0157108号A1、Presta, L;およびWO 2004/056312A1、Adams et al.、特に実施例11)およびノックアウト細胞株、例えばアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004);Kanda Y. et al., Biotechnol. Bioeng. 94(4):680-688 (2006);およびWO 2003/085107を参照のこと)を含む。
【0175】
例えば抗体のFc領域に付加された二分枝型オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている、二分されたオリゴ糖を有する抗体変異体がさらに提供される。そのような抗体変異体は、減少したフコシル化および/または改善されたADCC機能を有し得る。そのような抗体変異体の例は、例えば、WO2003/011878 (Jean-Mairet et al.) ;米国特許第6,602,684号 (Umana et al.);およびUS2005/0123546 (Umana et al.) に記載されている。Fc領域に付加されたオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異体も提供される。そのような抗体変異体は、改善されたCDC機能を有し得る。そのような抗体変異体は、例えば、WO1997/30087 (Patel et al.);WO1998/58964 (Raju, S.); およびWO1999/22764 (Raju, S.) に記載されている。
【0176】
c)Fc領域変異体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体のFc領域に1つまたは複数のアミノ酸修飾を導入して、それによりFc領域変異体を生成してもよい。Fc領域変異体は、1つまたは複数のアミノ酸位置のところでアミノ酸修飾(例えば、置換)を含む、ヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のFc領域)を含んでもよい。
【0177】
特定の態様において、すべてではないがいくつかのエフェクター機能を備える抗体変異体も、本発明の考慮の内であり、当該エフェクター機能は、抗体を、そのインビボでの半減期が重要であるが、特定のエフェクター機能(ADCCなど)は不要または有害である場合の適用に望ましい候補とするものである。CDCおよび/またはADCC活性を測定するために、インビトロおよび/またはインビボの細胞傷害測定を行うことができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合測定は、抗体がFcγR結合性を有し(よってADCC活性を有する蓋然性が高く)かつ/またはFcRn結合能を有するかどうかを確認するために行われ得る。ADCCを媒介するプライマリ細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現するが、一方単球はFcγRI、FcγRII、FcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcRの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-492 (1991) の第464頁のTable 3にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、 Hellstrom, I. et al. Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 83:7059-7063 (1986) 参照)および Hellstrom, I et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 82:1499-1502 (1985);米国特許第5,821,337号(Bruggemann, M. et al., J. Exp. Med. 166:1351-1361 (1987) 参照)に記載されている。あるいは、非放射性のアッセイを用いてもよい(例えば、ACT1(商標)non-radioactive cytotoxicity assay for flow cytometry (CellTechnology, Inc. Mountain View, CA);および、CytoTox 96(登録商標)non-radioactive cytotoxicity assays法 (Promega, Madison, WI) 参照)。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞 (peripheral blood mononuclear cell: PBMC) およびナチュラルキラー (natural killer: NK) 細胞を含む。あるいはまたは加えて、目的の分子のADCC活性は、例えば、Clynes et al. Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 95:652-656 (1998) に記載されるような動物モデルにおいて、インビボで評価されてもよい。また、抗体がC1qに結合できるか、よってCDC活性を有するかどうかを確認するために、C1q結合測定を行ってもよい。例えば、WO2006/029879 および WO2005/100402のC1qおよびC3c結合ELISAを参照のこと。また、補体活性化を評価するために、CDC測定を行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996);Cragg, M.S. et al., Blood 101:1045-1052 (2003);およびCragg, M.S. and M.J. Glennie Blood 103:2738-2743 (2004) 参照)。さらに、FcRn結合性およびインビボでのクリアランス/半減期の決定も、当該技術分野において知られた方法を用いて行い得る(例えばPetkova, et al., Int'l. Immunol. 18(12):1759-1769 (2006) 参照)。
【0178】
修飾されたエフェクター機能を伴う抗体は、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、および329の1つまたは複数の置換を伴うものを含む(米国特許第6,737,056号)。このようなFc変異体は、残基265および297のアラニンへの置換を伴ういわゆる「DANA」Fc変異体(米国特許第7,332,581号)を含む、アミノ酸位置265、269、270、297、および327の2つ以上の置換を伴うFc変異体を含む。
【0179】
FcRsへの改変された結合性を伴う特定の抗体変異体が、記述されている。(米国特許第6,737,056号;WO2004/056312、およびShields et al., J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001) を参照のこと。)
【0180】
特定の態様において、抗体変異体は、ADCCを改変する1つまたは複数のアミノ酸置換(例えば、Fc領域の位置298、333、および/または334(EUナンバリングでの残基)のところでの置換)を伴うFc領域を含む。
【0181】
いくつかの態様において、例えば米国特許第6,194,551号、WO99/51642、WO2011/091078、およびIdusogie et al. J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000) に記載されるように、改変された(つまり、増大したか低減したかのいずれかである)C1q結合性および/または補体依存性細胞傷害 (CDC) をもたらす改変が、Fc領域においてなされる。
【0182】
増加した半減期、および新生児型Fc受容体(FcRn:母体のIgG類を胎児に移行させる役割を負う(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976) and Kim et al., J. Immunol. 24:249 (1994)))に対する増大した結合性を伴う抗体が、米国特許出願公開第2005/0014934号A1(Hinton et al.) に記載されている。これらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合性を増大させる1つまたは複数の置換をその中に伴うFc領域を含む。このようなFc変異体は、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434の1つまたは複数のところでの置換(例えば、Fc領域残基434の置換(米国特許第7,371,826号))を伴うものを含む。
【0183】
Fc領域変異体の他の例については、Duncan & Winter, Nature 322:738-40 (1988);米国特許第5,648,260号および米国特許第5,624,821号;およびWO94/29351も参照のこと。
【0184】
別の態様において、抗体は、本明細書において以下に詳述する本発明の変異Fcを含んでもよい。
【0185】
d)システイン改変抗体変異体
特定の態様において、抗体の1つまたは複数の残基がシステイン残基で置換された、システイン改変抗体(例えば、「thioMAbs」)を作り出すことが望ましいだろう。特定の態様において、置換を受ける残基は、抗体の、アクセス可能な部位に生じる。それらの残基をシステインで置換することによって、反応性のチオール基が抗体のアクセス可能な部位に配置され、当該反応性のチオール基は、当該抗体を他の部分(薬剤部分またはリンカー‐薬剤部分など)にコンジュゲートして本明細書でさらに詳述するようにイムノコンジュゲートを作り出すのに使用されてもよい。特定の態様において、以下の残基の任意の1つまたは複数が、システインに置換されてよい:軽鎖のV205(Kabatナンバリング);重鎖のA118(EUナンバリング);および重鎖Fc領域のS400(EUナンバリング)。システイン改変抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるようにして生成されてもよい。
【0186】
e)抗体誘導体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、当該技術分野において知られておりかつ容易に入手可能な追加の非タンパク質部分を含むように、さらに修飾されてもよい。抗体の誘導体化に好適な部分は、これに限定されるものではないが、水溶性ポリマーを含む。水溶性ポリマーの非限定的な例は、これらに限定されるものではないが、ポリエチレングリコール (PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれでも)、および、デキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール類(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、および、これらの混合物を含む。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、その水に対する安定性のために、製造において有利であるだろう。ポリマーは、いかなる分子量でもよく、枝分かれしていてもしていなくてもよい。抗体に付加されるポリマーの数には幅があってよく、1つ以上のポリマーが付加されるならそれらは同じ分子であってもよいし、異なる分子であってもよい。一般的に、誘導体化に使用されるポリマーの数および/またはタイプは、これらに限定されるものではないが、改善されるべき抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が規定の条件下での療法に使用されるか否か、などへの考慮に基づいて、決定することができる。
【0187】
別の態様において、抗体と、放射線に曝露することにより選択的に熱せられ得る非タンパク質部分との、コンジュゲートが提供される。一態様において、非タンパク質部分は、カーボンナノチューブである(Kam et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102: 11600-11605 (2005))。放射線はいかなる波長でもよく、またこれらに限定されるものではないが、通常の細胞には害を与えないが抗体‐非タンパク質部分に近接した細胞を死滅させる温度まで非タンパク質部分を熱するような波長を含む。
【0188】
一局面において、本発明は、実質的に低下したFcγR結合活性を有する変異型Fc領域を含む単離されたポリペプチドを提供する。一局面において、本発明は、実質的に低下したC1q結合活性を有しない変異型Fc領域を含む単離されたポリペプチドを提供する。一局面では、本発明は、実質的に低下したFcγR結合活性を有しかつ実質的に低下したC1q結合活性を有しない、変異型Fc領域を含む単離されたポリペプチドを提供する。いくつかの局面では、該ポリペプチドは抗体である。いくつかの局面では、該ポリペプチドはFc融合タンパク質である。特定の態様では、変異型Fc領域は、天然配列または参照変異体配列のFc領域(本明細書ではまとめて「親」Fc領域と呼ばれる)の対応する配列と比較して、少なくとも1つのアミノ酸残基改変(例えば、置換)を含む。特定の態様では、本発明の変異型Fc領域は、親Fc領域と比較して、実質的に低下したFcγR結合活性を有する。特定の態様では、本発明の変異型Fc領域は、親Fc領域と比較して、実質的に低下したC1q結合活性を有しない。特定の態様では、FcγRは、ヒトFcγR、サルFcγR(例えば、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、チンパンジー、もしくはヒヒFcγR)、またはマウスFcγRである。
【0189】
一局面では、本発明の変異型Fc領域は、親Fc領域と比較して、例えば、FcγRIa、FcγRIIa(アレル変異体167Hおよび167Rを含む)、FcγRIIb、FcγRIIIa(アレル変異体158Fおよび158Vを含む)、およびFcγRIIIb(アレル変異体NA1およびNA2を含む)を含むがこれらに限定されない、1つ以上のヒトFcγRに対する実質的に低下した結合活性を有する。さらなる局面では、本発明の変異型Fc領域は、親Fc領域と比較して、ヒトFcγRIa、FcγRIIa(アレル変異体167Hおよび167Rを含む)、FcγRIIb、FcγRIIIa(アレル変異体158Fおよび158Vを含む)、およびFcγRIIIb(アレル変異体NA1およびNA2を含む)に対する実質的に低下した結合活性を有する。
【0190】
一局面では、本発明の変異型Fc領域は、親Fc領域と比較して、FcγRI、FcγRIIb、FcγRIII、およびFcγRIVを含むがこれらに限定されない、1つ以上のマウスFcγRに対する実質的に低下した結合活性を有する。さらなる局面では、本発明の変異型Fc領域は、親Fc領域と比較して、マウスFcγRI、FcγRIIb、FcγRIII、およびFcγRIVに対する実質的に低下した結合活性を有する。
【0191】
「Fcγ受容体」(本明細書では、Fcγ受容体、FcγRまたはFcgRという)は、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4モノクローナル抗体のFc領域に結合し得る受容体を指し、実際には、Fcγ受容体遺伝子によってコードされるタンパク質のファミリーの任意のメンバーを意味する。ヒトでは、このファミリーは以下を含むが、これらに限定されない:FcγRI (CD64)、例えば、アイソフォームFcγRIa、FcγRIb、FcγRIcなど;FcγRII (CD32)、例えば、アイソフォームFcγRIIa (アロタイプH131 (タイプH)およびR131 (タイプR)を含む)、FcγRIIb (FcγRIIb-1およびFcγRIIb-2を含む)、FcγRIIcなど;およびFcγRIII (CD16)、例えば、アイソフォームFcγRIIIa (アロタイプV158およびF158を含む)、FcγRIIIb (アロタイプFcγRIIIb-NA1およびFcγRIIIb-NA2を含む)など;ならびに、まだ発見されていないヒトFcγR、FcγRのアイソフォームまたはアロタイプ。FcγRIIb-1およびFcγRIIb-2はヒトFcγRIIbのスプライシング変異体として報告されている。さらに、FcγRIIb-3と名付けられたスプライシング変異体が報告されている(J Exp Med, 1989, 170: 1369-1385)。これらのスプライシング変異体に加えて、ヒトFcγRIIbには、NCBIに登録されている全てのスプライシング変異体が含まれ、それらはNP_001002273.1、NP_001002274.1、NP_001002275.1、NP_001177757.1、およびNP_003992.3である。さらに、ヒトFcγRIIbには、FcγRIIbだけでなく、以前に報告された全ての遺伝的多型(Arthritis Rheum. 48:3242-3252 (2003); Kono et al., Hum. Mol. Genet. 14:2881-2892 (2005); およびKyogoju et al., Arthritis Rheum. 46:1242-1254 (2002))、および今後報告される全ての遺伝的多型が含まれる。
【0192】
FcγRIIaには、2つのアロタイプがあり、1つはFcγRIIaの167位のアミノ酸がヒスチジンであり(タイプH)、もう1つは167位のアミノ酸がアルギニンで置換されている(タイプR)(Warrmerdam, J. Exp. Med. 172:19-25 (1990))。
【0193】
FcγRには、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、サル由来のFcγRが含まれるが、これらに限定されず、どのような生物由来のものでもよい。マウスFcγRには、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)、およびFcγRIV(CD16-2)、ならびに任意のマウスFcγR、またはFcγRアイソフォームが含まれるが、これらに限定されない。
【0194】
ヒトFcγRIaのアミノ酸配列はSEQ ID NO: 69に示される;ヒトFcγRIIa (167H)のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 70に示される;ヒトFcγRIIa (167R)のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 71に示される;ヒトFcγRIIbのアミノ酸配列はSEQ ID NO: 72に示される;ヒトFcγRIIIa (158F)のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 73に示される;ヒトFcγRIIIa (158V)のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 74に示される;ヒトFcγRIIIb (NA1)のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 75に示される;ヒトFcγRIIIb (NA2)のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 76に示される。
【0195】
マウスFcγRIのアミノ酸配列はSEQ ID NO: 77に示される;マウスFcγRIIbのアミノ酸配列はSEQ ID NO: 78に示される;マウスFcγRIIIのアミノ酸配列はSEQ ID NO: 79に示される;マウスFcγRIVのアミノ酸配列はSEQ ID NO: 80に示される。
【0196】
一局面では、本発明の変異型Fc領域は、実質的に低下したFcγR結合活性を有し、該FcγR結合活性は、親Fc領域のFcγR結合活性の関数として、50%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.2%未満、または0.1%未満である。一局面では、本発明の変異型Fc領域は、実質的に低下したFcγR結合活性を有し、これは、[FcγRと変異型Fc領域との相互作用の前後で変化したセンサーグラムのRU値の差]/[センサーチップにFcγRを捕捉する前後で変化したセンサーグラムのRU値の差]の比率が1未満、0.8未満、0.5未満、0.3未満、0.2未満、0.1未満、0.08未満、0.05未満、0.03未満、0.02未満、0.01未満、0.008未満、0.005未満、0.003未満、0.002未満、または0.001未満であることを意味する。
【0197】
一局面では、本発明の変異型Fc領域は、実質的に低下したC1q結合活性を有せず、これは、本発明の変異型Fc領域と親Fc領域との間のC1q結合活性の差が、親Fc領域のC1q結合活性の関数として、50%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、または5%未満であることを意味する。
【0198】
一局面では、本発明は、実質的に低下したADCC活性を有する変異型Fc領域を含む単離されたポリペプチドを提供する。一局面では、本発明は、実質的に低下したCDC活性を有しない変異型Fc領域を含む単離されたポリペプチドを提供する。一局面では、本発明は、実質的に低下したADCC活性を有しかつ実質的に低下したCDC活性を有しない変異型Fc領域を含む単離されたポリペプチドを提供する。
【0199】
一局面では、本発明の変異型Fc領域は、親Fc領域のADCC活性の関数として、50%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.2%未満、または0.1%未満である、実質的に低下したADCC活性を有する。
【0200】
一局面では、本発明の変異型Fc領域は、実質的に低下したCDC活性を有せず、これは、本発明の変異型Fc領域と親Fc領域との間のCDC活性の差が、親Fc領域のCDC活性の関数として、50%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、または5%未満であることを意味する。
【0201】
一局面では、本発明は、親Fc領域を含むポリペプチドと比較して、実質的に低下したFcγR結合活性を有しかつ実質的に低下したC1q結合活性を有しない変異型Fc領域を含む単離されたポリペプチドを提供する。さらなる局面では、本発明のポリペプチドは、EUナンバリングに従って、234、235、236、267、268、324、326、332、および333からなる群より選択される少なくとも1つの位置に少なくとも1つのアミノ酸改変を含む。
【0202】
一局面では、実質的に低下したFcγR結合活性を有しかつ実質的に低下したC1q結合活性を有しない変異型Fc領域は、EUナンバリングに従って、234位にAlaを、235位にAlaを、そして236、267、268、324、326、332、および333からなる群より選択される少なくとも1つの位置に少なくとも1つのアミノ酸改変を含む。
【0203】
一局面では、実質的に低下したFcγR結合活性を有しかつ実質的に低下したC1q結合活性を有しない変異型Fc領域は、EUナンバリングに従って、234位にAlaを、235位にAlaを、そして以下の(a)~(c)のいずれか1つのさらなるアミノ酸改変を含む:(a) 267、268、および324位; (b) 236、267、268、324、および332位; ならびに(c) 326および333位。
【0204】
さらなる局面では、実質的に低下したFcγR結合活性を有しかつ実質的に低下したC1q結合活性を有しない変異型Fc領域は、EUナンバリングに従って、(a) 267位のGlu; (b) 268位のPhe; (c) 324位のThr; (d) 236位のAla; (e) 332位のGlu; (f) 326位のAla、Asp、Glu、Met、またはTrp; および(g) 333位のSerからなる群より選択されるアミノ酸を含む。
【0205】
一局面では、実質的に低下したFcγR結合活性を有しかつ実質的に低下したC1q結合活性を有しない変異型Fc領域は、EUナンバリングに従って、以下のアミノ酸を含む:234位のAla、235位のAla、326位のAla、および333位のSer。一局面では、実質的に低下したFcγR結合活性を有しかつ実質的に低下したC1q結合活性を有しない変異型Fc領域は、EUナンバリングに従って、以下のアミノ酸を含む:234位のAla、235位のAla、326位のAsp、および333位のSer。一局面では、実質的に低下したFcγR結合活性を有しかつ実質的に低下したC1q結合活性を有しない変異型Fc領域は、EUナンバリングに従って、以下のアミノ酸を含む:234位のAla、235位のAla、326位のGlu、および333位のSer。一局面では、実質的に低下したFcγR結合活性を有しかつ実質的に低下したC1q結合活性を有しない変異型Fc領域は、EUナンバリングに従って、以下のアミノ酸を含む:234位のAla、235位のAla、326位のMet、および333位のSer。一局面では、実質的に低下したFcγR結合活性を有しかつ実質的に低下したC1q結合活性を有しない変異型Fc領域は、EUナンバリングに従って、以下のアミノ酸を含む:234位のAla、235位のAla、326位のTrp、および333位のSer。
【0206】
別の局面では、本発明の変異型Fc領域は、EUナンバリングに従って、428、434、436、438、および440からなる群より選択される少なくとも1つの位置に少なくとも1つのアミノ酸改変をさらに含むことができる。
【0207】
さらなる局面では、前記変異型Fc領域は、EUナンバリングに従って、以下からなる群より選択されるアミノ酸をさらに含むことができる:(a) 434位のAla; (b) 434位のAla、436位のThr、438位のArg、および440位のGlu; (c) 428位のLeu、434位のAla、436位のThr、438位のArg、および440位のGlu; ならびに(d) 428位のLeu、434位のAla、438位のArg、および440位のGlu(アミノ酸改変と変異型Fc領域のFcRn結合活性との間の関係を記載したWO2016/125495も参照されたい)。
【0208】
別の局面では、本発明の変異型Fc領域は、EUナンバリングに従って、以下のアミノ酸を含む:234位のAla、235位のAla、326位のAla、333位のSer、428位のLeu、434位のAla、436位のThr、438位のArg、および440位のGlu。別の局面では、本発明の変異型Fc領域は、EUナンバリングに従って、以下のアミノ酸を含む:234位のAla、235位のAla、326位のAla、333位のSer、428位のLeu、434位のAla、438位のArg、および440位のGlu。
【0209】
一局面では、本発明の変異型Fc領域は、親Fc領域と比較して、特にpH7.4で、実質的に増加したFcRn結合活性を有しないことが好ましい。
【0210】
「FcRn」は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスIのポリペプチドと構造的に類似しており、MHCクラスI分子と22%~29%の配列同一性を示す。FcRnは、膜貫通α鎖または重鎖と複合体を形成した可溶性β鎖または軽鎖(β2ミクログロブリン)からなるヘテロ二量体として発現される。MHCと同様に、FcRnのα鎖は3つの細胞外ドメイン(α1、α2、およびα3)を含み、その短い細胞質ドメインがそれらを細胞表面につなぎとめている。α1およびα2ドメインは、抗体Fc領域のFcRn結合ドメインと相互作用する。ヒトFcRnのポリヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、例えば、それぞれNM_004107.4およびNP_004098.1に示される前駆体(シグナル配列を含む)から誘導することができる。
【0211】
ヒトFcRn(α鎖)のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 81に示される;ヒトβ2ミクログロブリンのアミノ酸配列はSEQ ID NO: 82に示される。
【0212】
一局面では、本発明の変異型Fc領域は、特にpH7.4で、親Fc領域のFcRn結合活性と比較して、1000倍未満、500倍未満、200倍未満、100倍未満、90倍未満、80倍未満、70倍未満、60倍未満、50倍未満、40倍未満、30倍未満、20倍未満、10倍未満、5倍未満、3倍未満、または2倍未満である、実質的に増加したFcRn結合活性を有しないことが好ましい。一局面では、本発明の変異型Fc領域は、特にpH7.4で、実質的に増加したFcRn結合活性を有せず、これは、[FcRnと変異型Fc領域との相互作用の前後で変化したセンサーグラムのRU値の差]/[センサーチップにFcRnを捕捉する前後で変化したセンサーグラムのRU値の差]の比率が0.5未満、0.3未満、0.2未満、0.1未満、0.08未満、0.05未満、0.03未満、0.02未満、0.01未満、0.008未満、0.005未満、0.003未満、0.002未満、または0.001未満であることを意味する。
【0213】
別の局面では、本発明の変異型Fc領域は、表4に記載されるアミノ酸改変のいずれかを、単独でまたは組み合わせて含む。別の局面では、本発明の変異型Fc領域は、表4に記載されるアミノ酸改変の少なくともいずれか1つを含む。別の局面では、本発明は、SEQ ID NO: 51~59のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。
【0214】
いくつかの態様では、本発明の変異型Fc領域を含むポリペプチドは、抗体重鎖の定常領域である。いくつかの態様では、本発明の変異型Fc領域を含むポリペプチドは、抗原結合ドメインをさらに含む。さらなる態様では、該ポリペプチドは抗体重鎖である。さらなる態様では、該ポリペプチドは抗体である。特定の態様では、抗体はキメラ抗体またはヒト化抗体である。抗体の起源は特に限定されないが、例としては、ヒト抗体、マウス抗体、ラット抗体、ウサギ抗体などが挙げられる。さらなる態様では、該ポリペプチドはFc融合タンパク質である。
【0215】
本明細書に記載の変異型Fc領域を含む2つ以上のポリペプチドは、1つの分子に含めることができ、その場合、変異型Fc領域を含む2つのポリペプチドは、抗体のように、会合される。抗体のタイプは限定されず、IgA (IgA1、IgA2)、IgD、IgE、IgG (IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、およびIgMなどを用いることができる。
【0216】
いくつかの態様では、本発明の変異型Fc領域を含むポリペプチドは抗体である。さらなる態様では、本発明の変異型Fc領域を含むポリペプチドは抗ウイルス抗体である。
【0217】
さらなる態様では、本発明の変異型Fc領域を含むポリペプチドは、以下を含む抗体可変領域を含む:
(a) (i) SEQ ID NO: 16のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(ii) SEQ ID NO: 27のアミノ酸配列を含むHVR-L3、および(iii) SEQ ID NO: 13のアミノ酸配列を含むHVR-H2;
(b) (i) SEQ ID NO: 11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii) SEQ ID NO: 13のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(iii) SEQ ID NO: 16のアミノ酸配列を含むHVR-H3;
(c) (i) SEQ ID NO: 11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii) SEQ ID NO: 13のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii) SEQ ID NO: 16のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv) SEQ ID NO: 21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v) SEQ ID NO: 24のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(vi) SEQ ID NO: 27のアミノ酸配列を含むHVR-L3;または
(d) (i) SEQ ID NO: 21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii) SEQ ID NO: 24のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(iii) SEQ ID NO: 27のアミノ酸配列を含むHVR-L3。
【0218】
さらなる態様では、本発明の変異型Fc領域を含むポリペプチドは、以下を含む抗体可変領域を含む:
(a) (i) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H3、(ii) SEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L3、および(iii) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H2;
(b) (i) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H1、(ii) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H2、および(iii) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H3;
(c) (i) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H1、(ii) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H2、(iii) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H3、(iv) SEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L1、(v) SEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L2、および(vi) SEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L3;
(d) (i) SEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L1、(ii) SEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L2、および(iii) SEQ ID NO: 10のVL配列由来のHVR-L3;または
(e) (i) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H1、(ii) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H2、(iii) SEQ ID NO: 6のVH配列由来のHVR-H3、(iv) SEQ ID NO: 7のVL配列由来のHVR-L1、(v) SEQ ID NO: 7のVL配列由来のHVR-L2、および(vi) SEQ ID NO: 7のVL配列由来のHVR-L3。
【0219】
さらなる態様では、本発明の変異型Fc領域を含むポリペプチドは、SEQ ID NO: 1のアミノ酸配列を含むVH領域と、SEQ ID NO: 7のアミノ酸配列を含むVL領域とを含む。さらなる態様では、本発明は、重鎖にSEQ ID NO: 1のアミノ酸配列を含むVH領域およびSEQ ID NO: 54のアミノ酸配列を含む変異型Fc領域を、軽鎖にSEQ ID NO: 7のアミノ酸配列を含むVL領域を含む抗体を提供する。さらなる態様では、本発明は、重鎖にSEQ ID NO: 1のアミノ酸配列を含むVH領域およびSEQ ID NO: 58のアミノ酸配列を含む変異型Fc領域を、軽鎖にSEQ ID NO: 7のアミノ酸配列を含むVL領域を含む抗体を提供する。さらなる態様では、本発明は、重鎖にSEQ ID NO: 1のアミノ酸配列を含むVH領域およびSEQ ID NO: 59のアミノ酸配列を含む変異型Fc領域を、軽鎖にSEQ ID NO: 7のアミノ酸配列を含むVL領域を含む抗体を提供する。
【0220】
本発明はまた、本発明の変異型Fc領域を含むポリペプチドをさらに含んでいる、本明細書に記載の抗DENV抗体を提供する。いくつかの態様では、本発明の抗DENV抗体は、重鎖にSEQ ID NO: 6のアミノ酸配列を含むVH領域およびSEQ ID NO: 54のアミノ酸配列を含む変異型Fc領域を、軽鎖にSEQ ID NO: 10のアミノ酸配列を含むVL領域を含む。いくつかの態様では、本発明の抗DENV抗体は、重鎖にSEQ ID NO: 6のアミノ酸配列を含むVH領域およびSEQ ID NO: 58のアミノ酸配列を含む変異型Fc領域を、軽鎖にSEQ ID NO: 10のアミノ酸配列を含むVL領域を含む。いくつかの態様では、本発明の抗DENV抗体は、重鎖にSEQ ID NO: 6のアミノ酸配列を含むVH領域およびSEQ ID NO: 59のアミノ酸配列を含む変異型Fc領域を、軽鎖にSEQ ID NO: 10のアミノ酸配列を含むVL領域を含む。
【0221】
いくつかの態様では、本発明の抗DENV抗体は、重鎖にSEQ ID NO: 6のアミノ酸配列を含むVH領域およびSEQ ID NO: 59のアミノ酸配列を含む変異型Fc領域を、軽鎖にSEQ ID NO: 7のアミノ酸配列を含むVL領域を含む。
【0222】
本明細書で使用する「親Fc領域」とは、本明細書に記載されるアミノ酸改変(複数可)を導入する前のFc領域を指す。親Fc領域の好ましい例には、天然抗体に由来するFc領域が含まれる。抗体としては、IgA (IgA1、IgA2)、IgD、IgE、IgG (IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、およびIgMなどが挙げられる。抗体はヒトまたはサル(例えば、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、チンパンジー、またはヒヒ)由来であり得る。天然の抗体は、自然に発生する突然変異を含んでいてもよい。「Sequences of proteins of immunological interest」、NIH公開第91-3242号には、遺伝的多型によるIgGの複数のアロタイプ配列が記載されており、それらのいずれも本発明において使用することができる。特に、ヒトIgG1については、356~358位(EUナンバリング)のアミノ酸配列はDELまたはEEMのいずれかであり得る。親Fc領域の好ましい例には、ヒトIgG1 (SEQ ID NO: 83)、ヒトIgG2 (SEQ ID NO: 84)、ヒトIgG3 (SEQ ID NO: 85)、およびヒトIgG4 (SEQ ID NO: 86)の重鎖定常領域に由来するFc領域が含まれる。親Fc領域の別の好ましい例は、重鎖定常領域SG1 (SEQ ID NO: 87)由来のFc領域である。親Fc領域の別の好ましい例は、重鎖定常領域SG182 (SEQ ID NO: 46)由来のFc領域である。さらに、親Fc領域は、天然抗体由来のFc領域に、本明細書に記載のアミノ酸改変以外のアミノ酸改変(複数可)を付加することによってもたらされたFc領域であってもよい。
【0223】
さらに、他の目的のために行われたアミノ酸改変を、本明細書に記載の変異型Fc領域において組み合わせることができる。例えば、FcRn結合活性を改善するアミノ酸置換(Hinton et al., J. Immunol. 176(1):346-356 (2006); Dall'Acqua et al., J. Biol. Chem. 281(33):23514-23524 (2006); Petkova et al., Intl. Immunol. 18(12):1759-1769 (2006); Zalevsky et al., Nat. Biotechnol. 28(2):157-159 (2010); WO 2006/019447; WO 2006/053301; およびWO 2009/086320)、および抗体の不均一性または安定性を改善するためのアミノ酸置換(WO 2009/041613)を追加することができる。あるいは、抗原クリアランスを促進する性質を有するポリペプチド(WO 2011/122011、WO 2012/132067、WO 2013/046704またはWO 2013/180201に記載)、標的組織に特異的に結合する性質を有するポリペプチド(WO 2013/180200に記載)、複数の抗原分子に繰り返し結合する性質を有するポリペプチド(WO 2009/125825、WO 2012/073992またはWO 2013/047752に記載)を本明細書に記載の変異型Fc領域と組み合わせることができる。あるいは、他の抗原に対する結合能を付与する目的で、EP1752471およびEP1772465に開示されるアミノ酸改変を、本明細書に記載の変異型Fc領域のCH3において組み合わせることができる。あるいは、血漿保持を増加させる目的で、定常領域のpIを減少させるアミノ酸改変(WO 2012/016227)を、本明細書に記載の変異型Fc領域において組み合わせることができる。あるいは、細胞への取り込みを促進する目的で、定常領域のpIを増加させるアミノ酸改変(WO 2014/145159)を、本明細書に記載の変異型Fc領域において組み合わせることができる。あるいは、血漿からの標的分子の排出を促進する目的で、定常領域のpIを増加させるアミノ酸改変(WO2016/125495およびWO2016/098357)を、本明細書に記載の変異型Fc領域において組み合わせることができる。
【0224】
酸性pH下でヒトFcRn結合活性を増強するアミノ酸改変もまた、本明細書に記載の変異型Fc領域において組み合わせることができる。具体的には、そのような改変として、例えば、以下が挙げられる:EUナンバリングに従って、428位のMetのLeuへの置換および434位のAsnのSerへの置換(Nat Biotechnol, 2010, 28: 157-159);434位のAsnのAlaへの置換(Drug Metab Dispos, 2010 Apr; 38(4): 600-605);252位のMetのTyrへの置換、254位のSerのThrへの置換および256位のThrのGluへの置換(J Biol Chem, 2006, 281: 23514-23524);250位のThrのGlnへの置換および428位のMetのLeuへの置換(J Immunol, 2006, 176(1): 346-356);434位のAsnのHisへの置換(Clin Pharmacol Ther, 2011, 89(2): 283-290);ならびにWO2010/106180、WO2010/045193、WO2009/058492、WO2008/022152、WO2006/050166、WO2006/053301、WO2006/031370、WO2005/123780、WO2005/047327、WO2005/037867、WO2004/035752、WO2002/060919などに記載の改変。別の態様では、そのような改変は、例えば、428位のMetのLeuへの置換、434位のAsnのAlaへの置換、および436位のTyrのThrへの置換からなる群より選択される少なくとも1つの改変を含むことができる。これらの改変は、438位のGlnのArgへの置換および/または440位のSerのGluへの置換をさらに含むことができる(WO2016/125495)。
【0225】
本発明において、アミノ酸改変とは、置換、欠失、付加、挿入、および修飾のいずれか、またはそれらの組み合わせを意味する。本発明では、アミノ酸改変はアミノ酸変異と言い換えることができる。
【0226】
アミノ酸改変は、当業者に知られている様々な方法によってもたらされる。そのような方法には、部位特異的変異誘発法(Hashimoto-Gotoh et al., Gene 152:271-275 (1995); Zoller, Meth. Enzymol. 100:468-500 (1983); Kramer et al., Nucleic Acids Res. 12: 9441-9456 (1984)); Kramer and Fritz, Methods Enzymol. 154: 350-367 (1987); およびKunkel, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:488-492 (1985))、PCR変異導入法、およびカセット変異導入法が含まれるが、これらに限定されない。
【0227】
Fc領域に導入されるアミノ酸改変の数は限定されない。特定の態様では、それは1つ、2つ以下、3つ以下、4つ以下、5つ以下、6つ以下、8つ以下、10以下、12以下、14以下、16以下、18以下、または20以下であり得る。
【0228】
さらに、本発明の変異型Fc領域を含むポリペプチドは、ポリエチレングリコール(PEG)および細胞毒性物質などの様々な分子を用いて化学的に修飾することができる。そのようなポリペプチドの化学修飾法は当技術分野で確立されている。
【0229】
いくつかの態様では、本発明の変異型Fc領域を含むポリペプチドは、抗体、または任意の抗原に結合することができるドメイン(複数可)を含むFc融合タンパク質である。そのような抗体およびFc融合タンパク質によって結合され得る抗原の例には、限定するものではないが、リガンド(サイトカイン、ケモカインなど)、受容体、癌抗原、ウイルス抗原、MHC抗原、分化抗原、免疫グロブリン、および免疫グロブリンを部分的に含む免疫複合体が含まれる。
【0230】
B. 組換え法および組成物
一つの例において、本明細書に記載の抗体を調製するためのプロセスに言及し、ここで該プロセスは、以下の工程を含む:
(a)本明細書に記載のVH変異体配列を、本明細書に記載のヒトIgG1 CH配列と組み合わせる工程、
(b)本明細書に記載のVL変異体配列を、ヒトCL配列SK1と組み合わせる工程、
(c)該組み合わせのそれぞれを発現ベクター中にクローニングする工程;
(d)得られた発現ベクターをコトランスフェクト細胞(宿主細胞)において発現させる工程;および
(e)工程(d)から得られた抗体を精製する工程。
特定の例において、宿主細胞は、CHO-DXB11、CHO-K1、またはCHO-DG44である。そのような宿主細胞は、タウリントランスポーターを発現する細胞であってよく、タウリントランスポーターをコードするDNAを導入することによって得られる(WO2007/119774)。そのような抗体の製造に使用できるベクターは、当技術分野において公知である。概して、例えば米国特許第4,816,567号に記載の組換え法および組成物を用いて、抗体を作製することができる。一態様において、本明細書に記載の抗DENV抗体をコードする単離された核酸が提供される。別の態様において、本明細書に記載の変異Fc領域または親Fc領域を含むポリペプチドをコードする単離された核酸が提供される。そのような核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列および/またはVHを含むアミノ酸配列(例えば抗体の軽鎖および/または重鎖)をコードしうる。さらなる態様において、そのような核酸を含む1つまたは複数のベクター(例えば発現ベクター)が提供される。さらなる態様において、そのような核酸を含む宿主細胞が提供される。そのような一態様において、宿主細胞は以下を含む(例えば、以下で形質転換されている):(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列と抗体のVHを含むアミノ酸配列とをコードする核酸を含む、ベクター、または(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第一のベクター、および抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第二のベクター。一態様において、宿主細胞は真核細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ球細胞(例えばY0、NS0、Sp2/0細胞)である。一態様において、抗DENV抗体を作製する方法が提供され、該方法は、上記で提供したような、該抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を、該抗体の発現に適した条件下で培養する工程と、任意で、該抗体を該宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収する工程を含む。別の態様において、変異Fc領域または親Fc領域を含むポリペプチドを作製する方法が提供され、該方法は、上記で提供したような、抗体、Fc領域、または変異Fc領域などのポリペプチドをコードする核酸を含む宿主細胞を、該ポリペプチドの発現に適した条件下で培養する工程と、任意で、該ポリペプチドを該宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収する工程を含む。
【0231】
抗DENV抗体を組換え的に作製するためには、例えば上述のような、抗体をコードする核酸を単離して、さらなるクローニングおよび/または宿主細胞中での発現のための1つまたは複数のベクターに挿入する。Fc領域を組換え的に作製するためには、Fc領域をコードする核酸を単離し、さらなるクローニングおよび/または宿主細胞中での発現のための1つまたは複数のベクターに挿入する。そのような核酸は、(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによる)従来の手法を用いて、容易に単離および配列決定され得る。
【0232】
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞は、本明細書に記載の原核細胞または真核細胞を含む。例えば、抗体は、特にグリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合は、細菌で製造してもよい。細菌での抗体断片およびポリペプチドの発現に関して、例えば、米国特許第5,648,237号、第5,789,199号、および第5,840,523号を参照のこと。(大腸菌における抗体断片の発現について記載したCharlton, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ, 2003), pp.245-254も参照のこと。)発現後、抗体は細菌細胞ペーストから可溶性フラクション中に単離されてもよく、またさらに精製することができる。
【0233】
原核生物に加え、部分的なまたは完全なヒトのグリコシル化パターンを伴う抗体の産生をもたらす、グリコシル化経路が「ヒト化」されている菌類および酵母の株を含む、糸状菌または酵母などの真核性の微生物は、抗体コードベクターの好適なクローニングまたは発現宿主である。Gerngross, Nat. Biotech. 22:1409-1414 (2004)および Li et al., Nat. Biotech. 24:210-215 (2006) を参照のこと。
【0234】
多細胞生物(無脊椎生物および脊椎生物)に由来するものもまた、グリコシル化された抗体の発現のために好適な宿主細胞である。無脊椎生物細胞の例は、植物および昆虫細胞を含む。昆虫細胞との接合、特にSpodoptera frugiperda細胞の形質転換に用いられる、数多くのバキュロウイルス株が同定されている。
【0235】
植物細胞培養物も、宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、第6,040,498号、第6,420,548号、第7,125,978号、および第6,417,429号(トランスジェニック植物で抗体を産生するための、PLANTIBODIES(商標)技術を記載)を参照のこと。
【0236】
脊椎動物細胞もまた宿主として使用できる。例えば、浮遊状態で増殖するように適応された哺乳動物細胞株は、有用であろう。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40で形質転換されたサル腎CV1株 (COS-7);ヒト胎児性腎株(Graham et al., J. Gen Virol. 36:59 (1977) などに記載の293または293細胞);仔ハムスター腎細胞 (BHK);マウスセルトリ細胞(Mather, Biol. Reprod. 23:243-251 (1980) などに記載のTM4細胞);サル腎細胞 (CV1);アフリカミドリザル腎細胞 (VERO-76);ヒト子宮頸部癌細胞 (HELA);イヌ腎細胞 (MDCK);Buffalo系ラット肝細胞 (BRL 3A);ヒト肺細胞 (W138);ヒト肝細胞 (Hep G2);マウス乳癌 (MMT 060562);TRI細胞(例えば、Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982) に記載);MRC5細胞;および、FS4細胞などである。他の有用な哺乳動物宿主細胞株は、DHFR- CHO細胞 (Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980)) を含むチャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞;およびY0、NS0、およびSp2/0などの骨髄腫細胞株を含む。抗体産生に好適な特定の哺乳動物宿主細胞株の総説として、例えば、Yazaki and Wu, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ), pp. 255-268 (2003) を参照のこと。
【0237】
ポリクローナル抗体は好ましくは、関連する抗原およびアジュバントの複数回の皮下(sc)または腹腔内(ip)注射により動物において産生される。関連する抗原を、免疫化される種において免疫原性であるタンパク質に、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、またはダイズトリプシン阻害因子に、二官能性物質または誘導体化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介するコンジュゲーション)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介する)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2、またはR1N=C=NR(ここでRおよびR1は異なるアルキル基である)を用いて、コンジュゲートすることが有用であり得る。
【0238】
動物(通常は非ヒト哺乳動物)は、例えば、(ウサギまたはマウスについてそれぞれ)100μgまたは5μgのタンパク質またはコンジュゲートを3倍容量のフロイント完全アジュバントと組み合わせてその溶液を複数部位に皮内注射することによって、抗原、免疫原性コンジュゲート、または誘導体に対して免疫化される。1ヶ月後、複数部位に皮下注射することによって、最初の量の1/5~1/10の、フロイント完全アジュバント中のペプチドまたはコンジュゲートで該動物を追加免疫する。7~14日後、該動物から採血し、血清を抗体力価についてアッセイする。力価がプラトーに達するまで動物を追加免疫する。好ましくは、同一抗原であるが別のタンパク質にコンジュゲートされたおよび/または別の架橋試薬を介してコンジュゲートされたコンジュゲートを用いて、該動物を追加免疫する。コンジュゲートは、組み換え細胞培養物中でタンパク質融合体として調製することも可能である。また、免疫応答を増強するために、ミョウバンなどの凝集剤も好適に使用される。
【0239】
モノクローナル抗体は、実質的に均一な抗体の集団から得られ、すなわち、該集団を構成する個々の抗体は、若干量存在しうる自然に生じる潜在的な突然変異および/または翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除いて同一である。したがって、修飾語「モノクローナル」は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示している。
【0240】
例えば、モノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature 256(5517):495-497 (1975)に最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製することができる。ハイブリドーマ法では、マウスまたは他の適切な宿主動物、例えばハムスターを本明細書に上記したように免疫化して、免疫化に使用されたタンパク質に特異的に結合する抗体を製造するか製造する能力があるリンパ球を誘導する。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫化することもできる。
【0241】
免疫化剤は、典型的には、抗原タンパク質またはその融合変異体を包含する。一般的に、ヒト起源の細胞が望まれる場合には末梢血リンパ球(PBL)が使用され、非ヒト哺乳動物源が望まれる場合には脾臓細胞またはリンパ節細胞が使用される。その後、リンパ球は、ポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を用いて不死化細胞株と融合され、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press (1986), pp. 59-103)。
【0242】
不死化細胞株は通常、形質転換された哺乳動物細胞、特に、げっ歯類、ウシおよびヒト起源のミエローマ細胞である。通常は、ラットまたはマウスのミエローマ細胞株が利用される。このようにして作製されたハイブリドーマ細胞を、未融合の親ミエローマ細胞の増殖または生存を阻害する1種以上の物質を好ましくは含有する適切な培養培地中に播種して増殖させる。例えば、親ミエローマ細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマ用の培養培地は、典型的には、HGPRT欠損細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(HAT培地)を含むであろう。
【0243】
好ましい不死化ミエローマ細胞とは、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの製造を補助し、かつHAT培地のような培地に対して感受性である、細胞である。これらの中でも、マウスミエローマ株、例えば、米国カリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerから入手できるMOPC-21およびMPC-11マウス腫瘍に由来するもの、ならびに米国バージニア州マナッサスのAmerican Type Culture Collectionから入手できるSP-2細胞(およびその誘導体、例えばX63-Ag8-653)が好ましい。ヒトモノクローナル抗体の製造について、ヒトミエローマ細胞株およびマウス-ヒトヘテロミエローマ細胞株もまた、記載されている(Kozbor et al., J Immunol. 133(6):3001-3005 (1984); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, pp. 51-63 (1987))。
【0244】
ハイブリドーマ細胞が増殖している培養培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の製造についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により製造されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降によって、またはインビトロ結合アッセイ、例えば放射免疫アッセイ(RIA)もしくは酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって決定される。このような技術およびアッセイは当技術分野で公知である。例えば、結合アフィニティは、Munson, Anal Biochem. 107(1):220-239 (1980)のスキャッチャード(Scatchard)解析によって求めることができる。
【0245】
所望の特異性、アフィニティ、および/または活性の抗体を製造するハイブリドーマ細胞が特定された後、該クローンを限界希釈法によりサブクローニングして、標準的な方法(Goding、前掲)により増殖させることができる。この目的のための適切な培養培地としては、例えば、D-MEMまたはRPMI-1640培地が挙げられる。また、ハイブリドーマ細胞は哺乳動物内の腫瘍としてインビボで増殖させることができる。
【0246】
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、培養培地、腹水、または血清から、例えば、プロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティクロマトグラフィーなどの従来の免疫グロブリン精製法によって、適切に分離される。
【0247】
Fc領域は、ペプシンなどのプロテアーゼを用いてIgG1、IgG2、IgG3、IgG4モノクローナル抗体などを部分的に消化した後に、プロテインAカラムに吸着したフラクションを再度溶出することによって、得てもよい。プロテアーゼは、それが全長抗体を消化でき、それによってFabおよびF(ab')2が、pHなどの酵素反応条件を適切に設定することによって制限的な様式で産生される限り、特に限定されず、例としてペプシンおよびパパインが含まれる。
【0248】
さらに、本発明は、親Fc領域を含むポリペプチドと比較して実質的に低減されたFcγR結合活性を伴いかつ実質的に低減されたC1p結合活性を伴わない変異Fc領域を含むポリペプチドを産生するための方法を提供し、本方法は、親Fc領域に少なくとも1つのアミノ酸改変を導入する工程を含む。いくつかの局面において、産生されたポリペプチドは抗体である。特定の態様において、抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗体である。いくつかの局面において、産生されたポリペプチドはFc融合タンパク質である。
【0249】
一局面では、実質的に低下したFcγR結合活性を有しかつ実質的に低下したC1q結合活性を有しない変異型Fc領域を含むポリペプチドを調製するための上記方法において、EUナンバリングに従って、234、235、236、267、268、324、326、332、および333からなる群より選択される少なくとも1つの位置の少なくとも1つのアミノ酸が改変される。
【0250】
別の局面では、実質的に低下したFcγR結合活性を有しかつ実質的に低下したC1q結合活性を有しない変異型Fc領域を含むポリペプチドを調製するための上記方法において、2つのアミノ酸が234位と235位で改変される。
【0251】
別の局面では、実質的に低下したFcγR結合活性を有しかつ実質的に低下したC1q結合活性を有しない変異型Fc領域を含むポリペプチドを調製するための上記方法において、アミノ酸が改変され、該改変は以下を含む:EUナンバリングに従って、(a) 234位と235位の2つのアミノ酸改変、ならびに(b) 236、267、268、324、326、332、および333からなる群より選択される少なくとも1つの位置の少なくとも1つのアミノ酸改変。
【0252】
別の局面では、実質的に低下したFcγR結合活性を有しかつ実質的に低下したC1q結合活性を有しない変異型Fc領域を含むポリペプチドを調製するための上記方法において、アミノ酸が改変され、該改変は以下を含む:EUナンバリングに従って、(a) 234位と235位の2つのアミノ酸改変、ならびに(b) 次の(i)~(iii)のいずれか1つの少なくとも1つのアミノ酸改変:(i) 267、268、および324位;(ii) 236、267、268、324、および332位;(iii) 326および333位。
【0253】
さらなる局面では、実質的に低下したFcγR結合活性を有しかつ実質的に低下したC1q結合活性を有しない変異型Fc領域を含むポリペプチドを調製するための上記方法におけるアミノ酸改変は、各位置で、以下からなる群より選択される:EUナンバリングに従って、(a) 234位のAla; (b) 235位のAla; (c) 267位のGlu; (d) 268位のPhe; (e) 324位のThr; (f) 236位のAla; (g) 332位のGlu; (h) 326位のAla、Asp、Glu、Met、Trp; および(i) 333位のSer。
【0254】
さらなる局面では、実質的に低下したFcγR結合活性を有しかつ実質的に低下したC1q結合活性を有しない変異型Fc領域を含むポリペプチドを調製するための上記方法におけるアミノ酸改変は、EUナンバリングに従って、234位のAla、235位のAla、326位のAla、および333位のSerである。さらなる局面では、実質的に低下したFcγR結合活性を有しかつ実質的に低下したC1q結合活性を有しない変異型Fc領域を含むポリペプチドを調製するための上記方法におけるアミノ酸改変は、EUナンバリングに従って、234位のAla、235位のAla、326位のAsp、および333位のSerである。さらなる局面では、実質的に低下したFcγR結合活性を有しかつ実質的に低下したC1q結合活性を有しない変異型Fc領域を含むポリペプチドを調製するための上記方法におけるアミノ酸改変は、EUナンバリングに従って、234位のAla、235位のAla、326位のGlu、および333位のSerである。さらなる局面では、実質的に低下したFcγR結合活性を有しかつ実質的に低下したC1q結合活性を有しない変異型Fc領域を含むポリペプチドを調製するための上記方法におけるアミノ酸改変は、EUナンバリングに従って、234位のAla、235位のAla、326位のMet、および333位のSerである。さらなる局面では、実質的に低下したFcγR結合活性を有しかつ実質的に低下したC1q結合活性を有しない変異型Fc領域を含むポリペプチドを調製するための上記方法におけるアミノ酸改変は、EUナンバリングに従って、234位のAla、235位のAla、326位のTrp、および333位のSerである。
【0255】
別の局面では、上記方法において、少なくとも1つのアミノ酸が、EUナンバリングに従って、428、434、436、438、および440からなる群より選択される少なくとも1つの位置でさらに改変される。
【0256】
さらなる局面では、上記方法におけるアミノ酸改変は、以下の(a)~(d)からさらに選択される:EUナンバリングに従って、(a) 434位のAla; (b) 434位のAla、436位のThr、438位のArg、および440位のGlu; (c) 428位のLeu、434位のAla、436位のThr、438位のArg、および440位のGlu; ならびに(d) 428位のLeu、434位のAla、438位のArg、および440位のGlu(アミノ酸改変と変異型Fc領域のFcRn結合活性との間の関係を記載したWO2016/125495も参照されたい)。
【0257】
さらなる局面では、上記方法におけるアミノ酸改変は、EUナンバリングに従って、234位のAla、235位のAla、326位のAla、333位のSer、428位のLeu、434位のAla、436位のThr、438位のArg、および440位のGluである。さらなる局面では、上記方法におけるアミノ酸改変は、EUナンバリングに従って、234位のAla、235位のAla、326位のAla、333位のSer、428位のLeu、434位のAla、438位のArg、および440位のGluである。
【0258】
一局面では、本発明の変異型Fc領域は、親Fc領域と比較して、特にpH7.4で、実質的に増加したFcRn結合活性を有しないことが好ましい。
【0259】
さらなる局面において、上述の産生方法におけるアミノ酸改変は、任意の単一の改変、単一の改変の組み合わせ、または表4に記載の組み合わせ改変より選択される。
【0260】
上述の方法のうちいずれかまたは当技術分野で公知の他の方法によって産生された変異Fc領域を含むポリペプチドも、本発明に含まれる。
【0261】
C.アッセイ
本明細書で提供される抗DENV抗体は、当該技術分野において知られている種々のアッセイによって、同定され、スクリーニングされ、または物理的/化学的特性および/または生物学的活性について明らかにされてもよい。
【0262】
本明細書で提供される変異Fc領域は、当該技術分野において知られている種々のアッセイによって、同定され、スクリーニングされ、または物理的/化学的特性および/または生物学的活性について明らかにされてもよい。
【0263】
1.結合アッセイおよびその他のアッセイ
一局面において、本発明の抗体は、例えばELISA、ウエスタンブロット等の公知の方法によって、その抗原結合活性に関して試験される。一局面において、本発明の変異Fc領域を含むポリペプチドは、例えばELISA、ウエスタンブロット等の公知の方法によって、その抗原結合活性に関して試験される。
【0264】
別の局面において、DENVおよび/またはDENV Eタンパク質への結合に関して本明細書に記載の任意の抗DENV抗体と競合する抗体を同定するために、競合アッセイが使用され得る。特定の態様において、そのような競合抗体が過剰に存在する場合、それは、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、またはそれを超えて、DENVおよび/またはDENV Eタンパク質への参照抗体の結合を阻止する(例えば、低減する)。いくつかの例において、結合は、少なくとも80%、85%、90%、95%、またはそれを超えて阻害される。特定の態様において、そのような競合抗体は、本明細書に記載の抗DENV抗体によって結合されるのと同じエピトープ(例えば、線状または立体構造エピトープ)に結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングする、詳細な例示的方法は、Morris (1996) 「Epitope Mapping Protocols」Methods in Molecular Biology vol. 66 (Humana Press, Totowa, NJ)に提供されている。
【0265】
例示的な競合アッセイにおいて、固定化されたDENVまたはDENV Eタンパク質は、DENVおよび/またはDENV Eタンパク質に結合する第1の標識された抗体およびDENVまたはDENV Eタンパク質への結合に関して第1の抗体と競合する能力に関して試験される第2の未標識の抗体を含む溶液中でインキュベートされる。第2の抗体は、ハイブリドーマ上清に存在し得る。対照として、固定化されたDENVまたはDENV Eタンパク質が、第1の標識された抗体を含むが第2の未標識の抗体を含まない溶液中でインキュベートされる。第1の抗体のDENVまたはDENV Eタンパク質に対する結合を許容する条件下でのインキュベーションの後、余分な未結合の抗体が除去され、固定化されたDENVまたはDENV Eタンパク質に結合した標識の量が測定される。固定化されたDENVまたはDENV Eタンパク質に結合した標識の量が対照サンプルと比較して試験サンプルにおいて実質的に減少している場合、それは第2の抗体がDENVまたはDENV Eタンパク質への結合に関して第1の抗体と競合していることを示す。Harlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual ch.14 (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY) を参照のこと。
【0266】
1つまたは複数のFcRファミリーメンバーに対する変異Fc領域を含むポリペプチドの結合活性を決定するためのアッセイが、本明細書に記載されているかまたはそうでなくとも当該技術分野において知られている。そのような結合アッセイには、限定されないが、BIACORE(登録商標)分析法が含まれ、これは、表面プラズモン共鳴(SPR)現象、増幅ルミネッセンス近接ホモジニアスアッセイ(ALPHA)スクリーニング、ELISA、および蛍光活性化細胞選別(FACS)を利用する(Lazar et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2006) 103(11): 4005-4010)。
【0267】
一態様において、BIACORE(登録商標)分析法を、例えば、分析物として様々なFcRを、公知の方法および試薬(例えばプロテインA、プロテインL、プロテインA/G、プロテインG、抗λ鎖抗体、抗κ鎖抗体、抗原ペプチド、抗原タンパク質)を用いてセンサーチップ上に固定化されるかまたは捕捉された変異Fc領域を含むポリペプチドとの相互作用に供したセンサーグラムの分析から得た解離定数(Kd)値が低下または増加しているかを観察することによって、変異Fc領域を含むポリペプチドの結合活性が、特定のFcRファミリーメンバーに対して増強されているか、または維持もしくは低減されているかを判断するために使用することができる。1つまたは複数のタイプのFcRを分析物として、捕捉された変異Fc領域を含むポリペプチドとの相互作用に供する前および後の、センサーグラムでのレゾナンスユニット(RU)値の変化を比較することによって、結合活性の変化も同様に決定することができる。あるいは、FcRをセンサーチップ上に固定化するかまたは捕捉することができ、変異Fc領域を含むポリペプチドが分析物として使用される。
【0268】
BIACORE(登録商標)分析において、相互作用の観察における基質の1つ(リガンド)を、センサーチップ上の金薄膜に固定化し、かつ、センサーチップの裏側から光を照射することで金薄膜とガラスとの間の界面で全反射が生じることにより、反射光の一部において、反射強度が低下した部分が形成される(SPRシグナル)。相互作用の観察における基質のうち他の1つ(分析物)がセンサーチップ表面上に流されて、リガンドが分析物に結合する場合、固定化されたリガンド分子の質量が増加し、センサーチップ表面上の溶媒の屈折率が変化する。屈折率のこの変化の結果としてSPRシグナルの位置がシフトする(他方で、この結合が解離すると、シグナル位置は戻る)。BIACORE(登録商標)システムは、上述のシフトの量を示すか、またはより具体的には、センサーチップ表面の質量の変化を測定データ(センサーグラム)として縦軸上にプロットすることにより質量の時間変量を示す。センサーチップ表面にトラップされたリガンドに結合した分析物の量は、センサーグラムから決定される。会合速度定数(ka)および解離速度定数(kd)のような動力学的パラメーターは、センサーグラムの曲線から決定され、解離定数(Kd)は、これらの定数の比から決定される。BIACORE(登録商標)法において、阻害を測定するための方法が、好ましくは用いられる。阻害を測定するための方法の例は、Lazar et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103(11):4005-4010 (2006)に記載される。
【0269】
ALPHAスクリーニングは、以下の原理に基づき、ドナーおよびアクセプターの2種のビーズを用いるALPHA技術によって実施される。ドナービーズに結合した分子が、アクセプタービーズに結合した分子と物理的に相互作用し、2種のビーズが互いに非常に近接している場合にのみ、発光シグナルが検出される。ドナービーズにおけるレーザー励起光増感物質が、周囲の酸素を励起状態の一重項酸素へと変換する。一重項酸素はドナービーズ周辺に分散し、それが隣接するアクセプタービーズに到達すると、ビーズにおいて化学発光反応が誘導され、最終的に光が放射される。ドナービーズに結合した分子が、アクセプタービーズに結合した分子と相互作用しない場合、ドナービーズによって生成される一重項酸素がアクセプタービーズに到達しないため、化学発光反応は生じない。
【0270】
例えば、ビオチン化ポリペプチド複合体はドナービーズに結合され、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)でタグ付けしたFc受容体はアクセプタービーズに結合される。変異型Fc領域を含む競合ポリペプチド複合体の非存在下では、親Fc領域を含むポリペプチド複合体はFc受容体と相互作用して、520~620nmのシグナルを生じる。タグなし変異型Fc領域を含むポリペプチド複合体は、Fc受容体との相互作用について、親Fc領域を含むポリペプチド複合体と競合する。相対的結合活性は、競合の結果として観察された蛍光の減少を定量することによって測定することができる。抗体のようなポリペプチド複合体のスルホ-NHS-ビオチンなどを用いたビオチン化はよく知られている。発現可能なベクターにおいてFc受容体をコードするポリヌクレオチドとGSTをコードするポリヌクレオチドとをインフレームで融合させて作製された融合遺伝子を保有する細胞内でFc受容体とGSTを発現させて、グルタチオンカラムを用いて精製する方法は、Fc受容体をGSTでタグ付けするための方法として採用するのにふさわしい。得られたシグナルは、例えば、GRAPHPAD PRISM(GraphPad社, San Diego)などのソフトウェアを用いて、非線形回帰分析を使用するワンサイト競合モデルにそれらをフィットさせることによって、解析することが好ましい。
【0271】
低下したFcR結合活性を有する変異型Fc領域は、実質的に同量の対応する親Fc領域と変異型Fc領域を用いてアッセイを行う場合に、親Fc領域よりも本質的に弱い結合活性でFcRに結合するFc領域を指している。さらに、増加したFcR結合活性を有する変異型Fc領域は、実質的に同量の親Fc領域と変異型Fc領域を用いてアッセイを行う場合に、対応する親Fc領域よりも本質的に強い結合活性でFcRに結合するFc領域を指している。FcR結合活性を維持する変異型Fc領域は、実質的に同量の対応する親Fc領域と変異型Fc領域を含むポリペプチドとを用いてアッセイを行う場合に、親Fc領域と同等または本質的に異ならない結合活性でFcRに結合するFc領域を指している。
【0272】
各種FcRに対するFc領域の結合活性が増加したか低下したかは、上記方法に従って測定された、Fc領域への各種FcRの結合量の増減から判定することができる。ここでは、Fc領域への各種FcRの結合量は、被分析物としての各種FcRとFc領域との相互作用の前後で変化したセンサーグラムのRU値の差を、センサーチップにFc領域を捕捉する前後で変化したセンサーグラムのRU値の差で割った値として、評価することができる。FcγRまたはFcRnに対するFc領域の結合活性は、本明細書の実施例5に記載の方法によって測定することができる。
【0273】
本発明において、実質的に低下したFcγR結合活性とは、好ましくは、例えば、FcγRに対する変異型Fc領域の結合活性が、親Fc領域のFcγR結合活性の関数として、50%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.2%未満、または0.1%未満であることを意味する。それはまた、好ましくは、例えば、[FcγRと変異型Fc領域との相互作用の前後で変化したセンサーグラムのRU値の差]/[センサーチップにFcγRを捕捉する前後で変化したセンサーグラムのRU値の差]の比率が1未満、0.8未満、0.5未満、0.3未満、0.2未満、0.1未満、0.08未満、0.05未満、0.03未満、0.02未満、0.01未満、0.008未満、0.005未満、0.003未満、0.002未満、または0.001未満であることを意味する。
【0274】
本発明において、特にpH7.4で、実質的に増加したFcRn結合活性を有しないとは、好ましくは、例えば、FcRnに対する変異型Fc領域の結合活性が、親Fc領域のFcRn結合活性と比較して、1000倍未満、500倍未満、200倍未満、100倍未満、90倍未満、80倍未満、70倍未満、60倍未満、50倍未満、40倍未満、30倍未満、20倍未満、10倍未満、5倍未満、3倍未満、または2倍未満であることを意味する。それはまた、好ましくは、例えば、[FcRnと変異型Fc領域との相互作用の前後で変化したセンサーグラムのRU値の差]/[センサーチップにFcRnを捕捉する前後で変化したセンサーグラムのRU値の差]の比率が0.5未満、0.3未満、0.2未満、0.1未満、0.08未満、0.05未満、0.03未満、0.02未満、0.01未満、0.008未満、0.005未満、0.003未満、0.002未満、または0.001未満であることを意味する。
【0275】
C1qに対する変異型Fc領域を含むポリペプチドの結合活性を測定するために、C1q結合ELISAを実施することができる。簡単に説明すると、アッセイプレートに、コーティング緩衝液中の変異型Fc領域を含むポリペプチドまたは親Fc領域を含むポリペプチド(対照)を4℃で一晩コーティングする。次いで、そのプレートを洗浄してブロッキングする。洗浄した後、ヒトC1qのアリコートを各ウェルに添加し、室温で2時間インキュベートする。さらに洗浄した後、100μlのヒツジ抗補体C1qペルオキシダーゼ結合抗体を各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートする。そのプレートを洗浄緩衝液で再度洗浄し、OPD(o-フェニレンジアミン二塩酸塩(Sigma社))を含有する基質緩衝液100μlを各ウェルに添加する。黄色の発色によって観察される酸化反応を30分間進行させ、100μlの4.5N H2SO4の添加により停止させる。その後、吸光度を(492~405)nmで読み取る。C1qに対するFc領域の結合活性は、本明細書の実施例4に記載の方法によって測定することができる。
【0276】
一局面では、本発明の変異型Fc領域と親Fc領域との間のC1q結合活性の差は、親Fc領域のC1q結合活性の関数として、50%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、または5%未満である。
【0277】
2. 活性アッセイ
一局面では、生物学的活性を有する抗DENV抗体を同定するためのアッセイが提供される。生物学的活性には、例えば、宿主細胞へのDENV Eタンパク質の結合をブロックすること、宿主細胞へのDENV侵入を阻止すること、宿主細胞のDENV感染を阻止および/または予防することなどが含まれる。また、インビボおよび/またはインビトロでそのような生物学的活性を有する抗体も提供される。
【0278】
特定の態様では、本発明の抗体はそのような生物学的活性について試験される。特定の態様では、試験抗体の活性または中和能力を測定するために、プラーク減少中和試験(PRNT)アッセイを利用することができる。いくつかの態様では、インビボでの抗DENV活性を測定するために、動物宿主を使用することができる。
【0279】
特定の態様では、DENVと試験抗体との結合について細胞を直接アッセイすることができる。免疫組織化学的技術、共焦点技術、および/または結合を評価するための他の技術は、当業者に周知である。この目的のために特別に操作された細胞を含めて、様々な細胞株がそのようなスクリーニングアッセイに利用され得る。スクリーニングアッセイに使用される細胞の例には、哺乳動物細胞、真菌細胞、細菌細胞、またはウイルス細胞が含まれる。細胞は、刺激された細胞、例えば増殖因子で刺激された細胞であり得る。当業者は、本明細書に開示された発明が、DENVに結合する試験抗体の能力を測定するための多種多様なアッセイを企図していることを理解するであろう。
【0280】
アッセイに応じて、細胞および/または組織培養が必要とされ得る。細胞は、多くの異なる生理学的アッセイのいずれかを用いて試験することができる。あるいは、またはさらに、タンパク質発現をモニターするためのウェスタンブロッティングおよび/またはタンパク質-タンパク質相互作用の試験、その他の化学修飾をモニターするための質量分析などを含むがこれらに限定されない、分子解析を実施することができる。
【0281】
いくつかの態様では、そのような方法は動物宿主を利用する。例えば、本発明に適した動物宿主は、哺乳動物宿主、例えば、霊長類、フェレット、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、およびげっ歯類、例えばマウス、ハムスター、ウサギ、ラットなどであり得る。いくつかの態様では、動物宿主は、試験抗体の投与前または投与と同時に、ウイルスを接種されるか、ウイルスに感染するか、または他の方法でウイルスにさらされる。ナイーブな動物および/または接種を受けた動物が様々な研究に使用され得る。例えば、そのような動物モデルは、当技術分野で知られるようなウイルス伝播研究に使用される。動物宿主へのウイルスの結合および/または感染力をブロックする際の試験抗体の有効性を判定するために、試験抗体をウイルス伝播研究の前、間または後に適切な動物宿主に投与することができる。
【0282】
一局面では、生物学的活性を有する変異型Fc領域を含むポリペプチドを同定するためのアッセイが提供される。生物学的活性には、例えば、ADCC活性およびCDC活性が含まれる。さらに、インビボおよび/またはインビトロでそのような生物学的活性を有する変異型Fc領域を含むポリペプチドも提供される。
【0283】
特定の態様では、本発明の変異型Fc領域を含むポリペプチドは、そのような生物学的活性について試験される。特定の局面では、本発明の変異型Fc領域を含むポリペプチドは、親Fc領域を含むポリペプチドと比較して、エフェクター機能をモジュレートする。特定の局面では、このモジュレーションはADCCおよび/またはCDCのモジュレーションである。
【0284】
CDC活性および/またはADCC活性を確認するために、インビトロおよび/またはインビボ細胞傷害性アッセイを実施することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行って、その抗体がFcγR結合を有し(したがってADCC活性を有する可能性が高い)かつFcRn結合能力を保持することを確認することができる。ADCCを媒介するための初代細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現し、一方、単球はFcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcR発現は、Ravetch and Kinet, Annu Rev Immunol (1991) 9, 457-492の464ページの表3に要約される。対象となる分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom et al, Proc Natl Acad Sci USA (1986) 83, 7059-7063参照)およびHellstrom et al, Proc Natl Acad Sci USA (1985) 82, 1499-1502;米国特許第5,821,337号(Bruggemann et al, J Exp Med (1987) 166, 1351-1361参照)に記載される。あるいは、非放射性アッセイ法を使用することができる(例えば、フローサイトメトリー用のACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology社, Mountain View, CA);およびCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega社, Madison, WI)を参照されたい)。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、またはさらに、対象となる分子のADCC活性はインビボで、例えば、Clynes et al, Proc Natl Acad Sci USA (1998) 95, 652-656に開示されるような動物モデルで、評価することができる。また、抗体がC1qに結合するゆえにCDC活性を有するかどうかを確認するために、C1q結合アッセイを実施することもできる。例えば、WO 2006/029879およびWO 2005/100402に記載のC1qおよびC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを実施することができる(例えば、Gazzano-Santoro et al, J Immunol Methods (1997) 202, 163-171; Cragg et al, Blood (2003) 101, 1045-1052; およびCragg and Glennie, Blood (2004) 103, 2738-2743を参照されたい)。FcRn結合およびインビボクリアランス/半減期測定もまた、当技術分野で公知の方法を用いて行うことができる(例えば、Petkova et al, Int Immunol (2006) 18, 1759-1769を参照されたい)。
【0285】
D. イムノコンジュゲート
いくつかの態様では、本発明はまた、1つ以上の細胞傷害剤、例えば、化学療法剤もしくは薬物、増殖抑制剤、毒素(例:タンパク質毒素、細菌、真菌、植物もしくは動物由来の酵素的に活性な毒素、またはそれらの断片)、または放射性同位元素などにコンジュゲートされた、本明細書に記載の抗DENV抗体を含むイムノコンジュゲートを提供する。いくつかの態様では、本発明はまた、1つ以上の細胞傷害剤、例えば、化学療法剤もしくは薬物、増殖抑制剤、毒素(例:タンパク質毒素、細菌、真菌、植物もしくは動物由来の酵素的に活性な毒素、またはそれらの断片)、または放射性同位元素などにコンジュゲートされた、本明細書に記載の変異型Fc領域を含むポリペプチドを含むイムノコンジュゲートを提供する。
【0286】
一態様では、イムノコンジュゲートは、抗体が1つ以上の薬物にコンジュゲートされている抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であり、そうした薬物として以下が挙げられるが、これらに限定されない:メイタンシノイド(米国特許第5,208,020号、同第5,416,064号、欧州特許EP 0 425 235 B1参照);アウリスタチン、例えばモノメチルアウリスタチン薬物部分DEおよびDF(MMAEおよびMMAF)(米国特許第5,635,483号、同第5,780,588号、および同第7,498,298号参照);ドラスタチン;カリケアマイシンまたはその誘導体(米国特許第5,712,374号、同第5,714,586号、同第5,739,116号、同第5,767,285号、同第5,770,701号、同第5,770,710号、同第5,773,001号、および同第5,877,296号;Hinman et al., Cancer Res. 53:3336-3342 (1993);ならびにLode et al., Cancer Res. 58:2925-2928 (1998)参照);アントラサイクリン、例えばダウノマイシンまたはドキソルビシン(Kratz et al., Current Med. Chem. 13:477-523 (2006); Jeffrey et al., Bioorganic & Med. Chem. Letters 16:358-362 (2006); Torgov et al., Bioconj. Chem. 16:717-721 (2005); Nagy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:829-834 (2000); Dubowchik et al., Bioorg. & Med. Chem. Letters 12:1529-1532 (2002); King et al., J. Med. Chem. 45:4336-4343 (2002); および米国特許第6,630,579号参照);メトトレキサート;ビンデシン;タキサン、例えばドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、およびオルタタキセル;トリコテセン;ならびにCC1065。
【0287】
別の態様では、イムノコンジュゲートは、酵素的に活性な毒素またはその断片にコンジュゲートされた本明細書に記載の抗体を含み、そうした毒素として以下が挙げられるが、これらに限定されない:ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の結合力のない活性断片、エキソトキシンA鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、αサルシン、オオアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolacca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、ツルレイシ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ(saponaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、およびトリコテセン類。
【0288】
別の態様では、イムノコンジュゲートは、ラジオコンジュゲート(radioconjugate)を形成するために、放射性原子にコンジュゲートされた本明細書に記載の抗体を含む。様々な放射性同位体がラジオコンジュゲートの製造に利用可能である。例としては、211At、131I、125I、90Y、186Re、188Re、153Sm、212Bi、32P、212PbおよびLuの放射性同位体が挙げられる。検出のためにラジオコンジュゲートを使用する場合、それは、シンチグラフ検査のための放射性原子、例えばTc-99mもしくは123I、または核磁気共鳴(NMR)イメージング(磁気共鳴イメージング、MRIとしても知られる)のためのスピンラベル、例えば、この場合もヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガンまたは鉄を含むことができる。
【0289】
抗体と細胞傷害剤とのコンジュゲートは、例えば以下のような、様々な二官能性タンパク質カップリング剤を用いて作製することができる:3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸N-スクシンイミジル(SPDP)、4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸スクシンイミジル(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアネート)、およびビス-活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al., Science 238:1098 (1987)に記載されるように調製され得る。炭素-14-標識した1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性核種を抗体にコンジュゲートするための例示的なキレート剤である。WO94/11026を参照されたい。リンカーは、細胞内で細胞傷害性薬物の放出を促進する「切断可能なリンカー」であり得る。例えば、酸に不安定なリンカー、ペプチダーゼに感受性のリンカー、光に不安定なリンカー、ジメチルリンカーまたはジスルフィド含有リンカー(Chari et al., Cancer Res. 52:127-131 (1992); 米国特許第5,208,020号)を使用することができる。
【0290】
本明細書に記載のイムノコンジュゲートまたはADCは、架橋剤試薬を用いて調製されたそのようなコンジュゲートを明確に企図しているが、それらに限定されない;架橋剤としては、限定するものではないが、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、およびスルホ-SMPB、ならびにSVSB((4-ビニルスルホン)安息香酸スクシンイミジル)が挙げられ、これらは商業的に入手可能である(例えば、Pierce Biotechnology社, Rockford, IL., 米国)。
【0291】
E. 診断および検出のための方法ならびに組成物
特定の態様では、本明細書に提供される抗DENV抗体は、生物学的サンプル中のDENVおよび/またはDENV Eタンパク質の存在を検出するのに有用である。本明細書で使用する用語「検出する」は、定量的または定性的検出を包含する。特定の態様では、生物学的サンプルは、細胞または組織、例えば、血清、全血、血漿、生検サンプル、組織サンプル、細胞懸濁液、唾液、痰、口腔液、脳脊髄液、羊水、腹水、乳汁、初乳、乳腺分泌物、リンパ液、尿、汗、涙液、胃液、滑液、腹水、眼レンズ液または粘液を含む。
【0292】
一態様では、診断または検出方法で使用するための抗DENV抗体が提供される。さらなる局面では、生物学的サンプル中のDENVの存在を検出する方法が提供される。特定の態様では、この方法は、抗DENV抗体のDENVへの結合を許容する条件下で、生物学的サンプルを本明細書に記載の抗DENV抗体と接触させる工程、および抗DENV抗体とDENVとの間に複合体が形成されるかどうかを検出する工程を含む。こうした方法はインビトロ方法またはインビボ方法であり得る。さらなる局面では、生物学的サンプル中のDENV Eタンパク質の存在を検出する方法が提供される。特定の態様では、この方法は、抗DENV抗体のDENV Eタンパク質への結合を許容する条件下で、生物学的サンプルを本明細書に記載の抗DENV抗体と接触させる工程、および抗DENV抗体とDENV Eタンパク質との間に複合体が形成されるかどうかを検出する工程を含む。こうした方法はインビトロ方法またはインビボ方法であり得る。一態様では、例えばDENVまたはDENV Eタンパク質が患者を選択するためのバイオマーカーである場合には、抗DENV抗体による治療に適格な対象者を選択するために抗DENV抗体が使用される。
【0293】
本発明の抗体を用いて診断することができる例示的な疾患には、DENV感染、ならびにDENV感染によって引き起こされるかまたは該感染に関連する疾患および/または症状、例えば、デング熱、デング出血熱(DHF)、デングショック症候群(DSS)などが含まれる。
【0294】
特定の態様では、標識した抗DENV抗体が提供される。標識には、限定するものではないが、直接的に検出される標識または成分(蛍光標識、発色団標識、高電子密度標識、化学発光標識、放射性標識など)、ならびに酵素またはリガンドなどの、例えば酵素的反応または分子間相互作用を介して、間接的に検出される成分が含まれる。例示的な標識としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:放射性同位体32P、14C、125I、3H、および131I、フルオロフォア、例えば希土類元素キレート、またはフルオレセインとその誘導体、ローダミンとその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、例えばホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖オキシダーゼ、例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、複素環オキシダーゼ、例えばウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ、色素前駆体を酸化するために過酸化水素を使用する酵素(HRP、ラクトペルオキシダーゼ、またはミクロペルオキシダーゼなど)とカップリングしたもの、ビオチン/アビジン、スピンラベル、バクテリオファージラベル、安定したフリーラジカルなど。
【0295】
一態様では、本発明の変異型Fc領域を含む抗体は、アフィニティ精製剤として使用することができる。このプロセスでは、当技術分野で周知の方法を用いて、抗体変異体をSephadex樹脂またはろ紙などの固相に固定化する。固定化した抗体変異体を、精製すべき抗原を含むサンプルと接触させ、その後支持体を適切な溶媒で洗浄するが、その際の溶媒は、固定化した抗体変異体に結合している精製すべき抗原を除いて、サンプル中の実質的に全ての物質を除去するものである。最後に、その支持体を、抗体変異体から抗原を放出させる、グリシン緩衝液pH5.0などの他の適切な溶媒を用いて洗浄する。
【0296】
抗体変異体はまた、例えば、特定の細胞、組織または血清中の対象となる抗原の発現を検出するための、診断アッセイにおいても有用であり得る。
【0297】
抗体変異体は、例えば、競合結合アッセイ、直接および間接サンドイッチアッセイ、免疫沈降アッセイなどの、公知のアッセイ方法において使用することができる。Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, (1987) pp. 147-158, CRC Press, Inc.。
【0298】
F. 薬学的製剤
本明細書に記載の抗DENV抗体の薬学的製剤は、所望の純度を有するそのような抗体を、1つ以上の任意の薬学的に許容される担体(Remington's Pharmaceutical Sciences 第16版, Osol, A.編 (1980))と混合することによって、凍結乾燥製剤または水性溶液剤の形態で調製される。
【0299】
本明細書に記載の変異型Fc領域を含むポリペプチドの薬学的製剤は、所望の純度を有するそのようなポリペプチドを、1つ以上の任意の薬学的に許容される担体と混合することによって、凍結乾燥製剤または水性溶液剤の形態で調製される。
【0300】
薬学的に許容される担体は、一般的に、使用される投与量および濃度でレシピエントに対して無毒性であり、そのような担体としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:緩衝液、例えばリン酸、クエン酸、他の有機酸など;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸、メチオニンなど;防腐剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリンなど;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドンなど;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リシンなど;単糖類、二糖類、および他の炭水化物、例えばグルコース、マンノース、デキストリンなど;キレート剤、例えばEDTAなど;糖類、例えばスクロース、マンニトール、トレハロース、ソルビトールなど;塩形成対イオン、例えばナトリウムなど;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);および/または非イオン性界面活性剤、例えばポリエチレングリコール(PEG)など。本明細書における例示的な薬学的に許容される担体には、間質薬物分散剤(interstitial drug dispersion agent)、例えば可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標), Baxter International社)などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質がさらに含まれる。いくつかの例示的なsHASEGPおよび使用方法は、rHuPH20を含めて、米国特許公開第2005/0260186号および同第2006/0104968号に記載されている。一局面では、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1つ以上の追加のグリコサミノグリカナーゼと組み合わされる。
【0301】
例示的な凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載されている。水性抗体製剤には、米国特許第6,171,586号およびWO2006/044908に記載のものが含まれ、後者の製剤はヒスチジン-酢酸緩衝液を含む。
【0302】
本明細書に記載の製剤はまた、治療される特定の適応症に必要な場合には、2つ以上の活性成分、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するもの、を含み得る。例えば、限定するものではないが、以下のような抗ウイルス剤を提供することが望ましい場合がある:インターフェロン(例えば、インターフェロンα-2b、インターフェロンγなど)、抗DENVモノクローナル抗体、抗DENVポリクローナル抗体、RNAポリメラーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、ヘリカーゼ阻害剤、免疫調節剤、アンチセンス化合物、低分子干渉RNA、低分子ヘアピン型RNA、マイクロRNA、RNAアプタマー、リボザイム、およびそれらの組み合わせ。そのような活性成分は、意図した目的に有効な量で組み合わせて、適切に存在する。
【0303】
活性成分は、例えば、コアセルベーション技術によってまたは界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル内に封入するか、コロイド薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルション中に閉じ込めることができる。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 第16版, Osol, A.編 (1980)に開示されている。
【0304】
持続放出製剤を調製することが可能である。持続放出製剤の適切な例には、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが含まれ、該マトリックスは造形品、例えばフィルム、またはマイクロカプセルの形態である。
【0305】
インビボ投与に使用される製剤は一般に無菌である。無菌性は、例えば除菌メンブレンを通過させるろ過によって、容易に達成することができる。
【0306】
G. 治療方法および組成物
本明細書に提供される抗DENV抗体はどれも、治療方法において使用することができる。
【0307】
一局面では、医薬として使用するための抗DENV抗体が提供される。さらなる局面では、DENV感染の治療に使用するための抗DENV抗体が提供される。特定の態様では、治療方法において使用するための抗DENV抗体が提供される。特定の態様では、本発明は、DENVに感染した個体を治療する方法において使用するための抗DENV抗体を提供し、本方法は、該個体に有効量の抗DENV抗体を投与する工程を含む。そのような一態様では、上記方法は、該個体に、有効量の、例えば以下に記載するような、少なくとも1つの追加の治療薬を投与する工程をさらに含む。さらなる態様では、本発明は、宿主細胞へのDENV Eタンパク質の結合および/または宿主細胞内へのDENV侵入を阻止するのに使用するための抗DENV抗体を提供する。特定の態様では、本発明は、個体における宿主細胞へのDENV Eタンパク質の結合および/または宿主細胞内へのDENV侵入を阻止する方法で使用するための抗DENV抗体を提供し、本方法は、該個体に、宿主細胞へのDENV Eタンパク質の結合および/または宿主細胞内へのDENV侵入を阻止するのに有効な量の抗DENV抗体を投与する工程を含む。上記態様のいずれかによる「個体」は、好ましくはヒトである。
【0308】
さらなる局面では、本発明は、医薬の製造または調製における抗DENV抗体の使用を提供する。一態様では、医薬はDENV感染を治療するためのものである。さらなる態様では、医薬は、DENVに感染した個体に有効量の医薬を投与する工程を含むDENV感染の治療方法において使用するためのものである。そのような一態様では、上記方法は、該個体に、有効量の、例えば以下に記載するような、少なくとも1つの追加の治療薬を投与する工程をさらに含む。さらなる態様では、医薬は、宿主細胞へのDENV Eタンパク質の結合および/または宿主細胞内へのDENV侵入を阻止するためのものである。さらなる態様では、医薬は、宿主細胞へのDENV Eタンパク質の結合および/または宿主細胞内へのDENV侵入を阻止するのに有効な量の医薬を個体に投与する工程を含む、該個体における宿主細胞へのDENV Eタンパク質の結合および/または宿主細胞内へのDENV侵入を阻止する方法で使用するためのものである。上記態様のいずれかによる「個体」は、ヒトであり得る。
【0309】
さらなる局面では、本発明は、DENV感染症を治療するための方法を提供する。一態様では、本方法は、DENVに感染した個体に、有効量の抗DENV抗体を投与する工程を含む。そのような一態様では、上記方法は、該個体に、有効量の、以下に記載するような、少なくとも1つの追加の治療薬を投与する工程をさらに含む。上記態様のいずれかによる「個体」は、ヒトであり得る。
【0310】
さらなる局面では、本発明は、個体における宿主細胞へのDENV Eタンパク質の結合および/または宿主細胞内へのDENV侵入を阻止するための方法を提供する。一態様では、本方法は、該個体に、宿主細胞へのDENV Eタンパク質の結合および/または宿主細胞内へのDENV侵入を阻止するのに有効な量の抗DENV抗体を投与する工程を含む。一態様では、「個体」はヒトである。
【0311】
さらなる局面では、本発明は、例えば上記の治療方法のいずれかで使用するための、本明細書に提供される抗DENV抗体のいずれかを含む薬学的製剤を提供する。一態様では、薬学的製剤は、本明細書に提供される抗DENV抗体のいずれかと、薬学的に許容される担体とを含有する。別の態様では、薬学的製剤は、本明細書に提供される抗DENV抗体のいずれかと、例えば以下に記載するような、少なくとも1つの追加の治療薬とを含む。
【0312】
さらなる局面では、薬学的製剤は、DENV感染を治療するためのものである。さらなる態様では、薬学的製剤は、宿主細胞へのDENV Eタンパク質の結合および/または宿主細胞内へのDENV侵入を阻止するためのものである。一態様では、薬学的製剤はDENVに感染した個体に投与される。上記態様のいずれかによる「個体」は、好ましくはヒトである。
【0313】
特定の態様では、DENV感染は、デング熱、デング出血熱(DHF)、デングショック症候群(DSS)などの、DENV感染によって引き起こされるかまたは該感染に関連する疾患および/または症状を含み得る。
【0314】
本明細書に記載の変異型Fc領域を含むポリペプチドはいずれも治療方法に使用することができる。
【0315】
一局面では、医薬として使用するための、変異型Fc領域を含むポリペプチドが提供される。特定の態様では、治療方法において使用するための、変異型Fc領域を含むポリペプチドが提供される。特定の態様では、本発明は、疾患を有する個体に、有効量の変異型Fc領域を含むポリペプチドを投与する工程を含む、該個体の治療方法において使用するための、変異型Fc領域を含むポリペプチドを提供する。そうした一態様では、本方法は、該個体に、有効量の少なくとも1つの追加の治療薬を投与する工程をさらに含む。一態様では、疾患はウイルス感染症である。一態様では、「個体」はヒトである。
【0316】
さらなる局面では、本発明は、医薬の製造または調製における変異型Fc領域を含むポリペプチドの使用を提供する。一態様では、その医薬は疾患を治療するためのものである。いくつかの局面では、該ポリペプチドは抗体である。いくつかの局面では、該ポリペプチドはFc融合タンパク質である。さらなる態様では、医薬は、治療すべき疾患を有する個体に有効量の医薬を投与する工程を含む疾患の治療方法において使用するためのものである。そうした一態様では、本方法は、該個体に、有効量の少なくとも1つの追加の治療薬を投与する工程をさらに含む。一態様では、疾患はウイルス感染症である。一態様では、「個体」はヒトである。
【0317】
さらなる局面では、本発明は、疾患を治療するための方法を提供する。一態様では、本方法は、そのような疾患を有する個体に、有効量の変異型Fc領域を含むポリペプチドを投与する工程を含む。そうした一態様では、本方法は、該個体に、有効量の少なくとも1つの追加の治療薬を投与する工程をさらに含む。一態様では、疾患はウイルス感染症である。一態様では、「個体」はヒトである。
【0318】
さらなる局面では、本発明は、治療方法、例えば本明細書に記載の治療方法のいずれかにおいて使用するための、本明細書に記載の変異型Fc領域を含むポリペプチドを含有する薬学的製剤を提供する。一態様では、薬学的製剤は、本明細書に記載の変異型Fc領域を含むポリペプチドと、薬学的に許容される担体とを含有する。別の態様では、薬学的製剤は、本明細書に記載の変異型Fc領域を含むポリペプチドと、少なくとも1つの追加の治療薬とを含有する。
【0319】
さらなる局面では、薬学的製剤は、疾患を治療するためのものである。一態様では、薬学的製剤は、疾患を有する個体に投与される。一態様では、疾患はウイルス感染症である。一態様では、「個体」はヒトである。
【0320】
本発明の変異型Fc領域を含む抗ウイルス抗体は、従来の抗ウイルス抗体で観察された抗体依存性感染増強(ADE)を抑制することができる。ADEは、抗体に結合したウイルスが活性化FcγRを介して貪食され、結果として細胞へのウイルスの感染が増強される現象である。活性化FcγRとの相互作用を減少させるFc修飾は、ADEのリスクを軽減し得ると考えられる。LALA変異体を形成するためのロイシンからアラニンへの234位と235位の突然変異は、インビボでデング感染のADEのリスクを低減させることが示されている(Cell Host Microbe (2010) 8, 271-283)。しかしながら、そのような修飾は、ADCCおよびCDCなどの、抗体によって媒介される他のエフェクター免疫機能を低下させる。特に、CDCはADEを抑制する上で重要な役割を果たすことが期待されており、それゆえ、治療効果のためにFc領域の補体成分C1q結合を低下させるべきではない。さらに、抗体の半減期は、そのサルベージ受容体FcRnへの結合アフィニティを変化させるFc領域の工学的操作によって引き延ばすことができ、このことは、ウイルス感染を防御するための抗体の予防的使用につながる可能性がある。
【0321】
ウイルスは、好ましくは、アデノウイルス、アストロウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、パポバウイルス、ポックスウイルス、アレナウイルス、ブニヤウイルス、カルシウイルス、コロナウイルス、フィロウイルス、フラビウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、ピコルナウイルス、レオウイルス、レトロウイルス、ラブドウイルス、またはトガウイルスから選択される。
【0322】
好ましい態様では、アデノウイルスはヒトアデノウイルスを含むが、これに限定されない。好ましい態様では、アストロウイルスはマムアストロウイルス(mamastrovirus)を含むが、これに限定されない。好ましい態様では、ヘパドナウイルスはB型肝炎ウイルスを含むが、これに限定されない。好ましい態様では、ヘルペスウイルスは、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、ヒトサイトメガロウイルス、エプスタイン-バーウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ロゼオロウイルス(roseolovirus)、およびカポジ肉腫関連ヘルペスウイルスを含むが、これらに限定されない。好ましい態様では、パポバウイルスはヒトパピローマウイルスおよびヒトポリオーマウイルスを含むが、これらに限定されない。好ましい態様では、ポックスウイルスは、天然痘ウイルス(variola virus)、ワクシニアウイルス、牛痘ウイルス、サル痘ウイルス、天然痘ウイルス(smallpox virus)、偽牛痘ウイルス、丘疹性口炎ウイルス、タナポックスウイルス、ヤバサル腫瘍ウイルス、および伝染性軟属腫ウイルスを含むが、これらに限定されない。好ましい態様では、アレナウイルスは、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、ラッサウイルス、マチュポウイルス、およびフニンウイルスを含むが、これらに限定されない。好ましい態様では、ブニヤウイルスは、ハンタウイルス、ナイロウイルス、オルソブニヤウイルス、およびフレボウイルスを含むが、これらに限定されない。好ましい態様では、カルシウイルスは、ベシウイルス、ノロウイルス、例えばノーウォークウイルス、およびサポウイルスを含むが、これらに限定されない。好ましい態様では、コロナウイルスは、ヒトコロナウイルス(重症急性呼吸器症候群(SARS)の病原体)を含むが、これに限定されない。好ましい態様では、フィロウイルスはエボラウイルスおよびマールブルグウイルスを含むが、これらに限定されない。好ましい態様では、フラビウイルスは、黄熱病ウイルス、西ナイルウイルス、デングウイルス(DENV-1、DENV-2、DENV-3およびDENV-4)、C型肝炎ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、ロシア春夏脳炎ウイルス、オムスク出血熱ウイルス、牛ウイルス性下痢ウイルス、キャサヌル森林病ウイルス、およびポワッサン脳炎ウイルスを含むが、これに限定されない。好ましい態様では、オルソミクソウイルスは、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、およびC型インフルエンザウイルスを含むが、これらに限定されない。好ましい態様では、パラミクソウイルスは、パラインフルエンザウイルス、ルブラウイルス(おたふく風邪)、モルビリウイルス(麻疹)、ニューモウイルス、例えばヒトRSウイルス、および亜急性硬化性全脳炎ウイルスを含むが、これらに限定されない。好ましい態様では、ピコルナウイルスは、ポリオウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルスA、コクサッキーウイルスB、A型肝炎ウイルス、エコーウイルス、およびエンテロウイルスを含むが、これらに限定されない。好ましい態様では、レオウイルスはコロラドダニ熱ウイルスおよびロタウイルスを含むが、これらに限定されない。好ましい態様では、レトロウイルスは、レンチウイルス、例えばヒト免疫不全ウイルス、およびヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)を含むが、これらに限定されない。好ましい態様では、ラブドウイルスは、リッサウイルス、例えば狂犬病ウイルス、水疱性口炎ウイルス、および伝染性造血器壊死症ウイルスを含むが、これらに限定されない。好ましい態様では、トガウイルスは、アルファウイルス、例えばロスリバーウイルス、オニョンニョンウイルス、シンドビスウイルス、ベネズエラ馬脳炎ウイルス、東部馬脳炎ウイルス、および西部馬脳炎ウイルス、ならびに風疹ウイルスを含むが、これらに限定されない。
【0323】
さらなる局面では、本発明は、例えば上記の治療方法のいずれかで使用するための、医薬または薬学的製剤を調製する方法を提供し、本方法は、本明細書に記載の抗DENV抗体のいずれかを薬学的に許容される担体と混合する工程を含む。一態様では、医薬または薬学的製剤を調製する方法は、その医薬または薬学的製剤に少なくとも1つの追加の治療薬を添加する工程をさらに含む。
【0324】
本発明の抗体は、治療法において単独でまたは他の薬剤と組み合わせて使用することができる。例えば、本発明の抗体を少なくとも1つの追加の治療薬と同時投与することができる。特定の態様では、追加の治療薬は、抗ウイルス薬、例えば、限定するものではないが、インターフェロン(例:インターフェロンα-2b、インターフェロンγなど)、抗DENVモノクローナル抗体、抗DENVポリクローナル抗体、RNAポリメラーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、ヘリカーゼ阻害剤、免疫調節剤、アンチセンス化合物、低分子干渉RNA、低分子ヘアピン型RNA、マイクロRNA、RNAアプタマー、リボザイム、およびそれらの組み合わせである。
【0325】
さらなる局面では、本発明は、例えば上記の治療方法のいずれかで使用するための、医薬または薬学的製剤を調製する方法を提供し、本方法は、本明細書に記載の変異型Fc領域を含むポリペプチドのいずれかを薬学的に許容される担体と混合する工程を含む。一態様では、医薬または薬学的製剤を調製する方法は、その医薬または薬学的製剤に少なくとも1つの追加の治療薬を添加する工程をさらに含む。
【0326】
本発明の変異型Fc領域を含むポリペプチドは、治療法において単独でまたは他の薬剤と組み合わせて使用することができる。例えば、本発明の変異型Fc領域を含むポリペプチドを少なくとも1つの追加の治療薬と同時投与することができる。特定の態様では、追加の治療薬は、抗ウイルス薬、例えば、限定するものではないが、インターフェロン(例:インターフェロンα-2b、インターフェロンγなど)、抗ウイルスモノクローナル抗体、抗ウイルスポリクローナル抗体、RNAポリメラーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、ヘリカーゼ阻害剤、免疫調節剤、アンチセンス化合物、低分子干渉RNA、低分子ヘアピン型RNA、マイクロRNA、RNAアプタマー、リボザイム、およびそれらの組み合わせである。
【0327】
上記のそのような併用療法は、併用投与(2つ以上の治療薬が同じ製剤または別々の製剤に含まれる場合)、および個別投与を包含し、個別投与の場合には、本発明の抗体または変異型Fc領域を含むポリペプチドの投与を、追加の治療薬(複数可)の投与の前に、投与と同時に、および/または投与に続いて、行うことができる。一態様では、抗DENV抗体の投与および追加の治療薬の投与は、互いに、約1ヶ月以内、約1、2もしくは3週間以内、または約1、2、3、4、5もしくは6日以内に行われる。別の態様では、変異型Fc領域を含むポリペプチドの投与および追加の治療薬の投与は、互いに、約1ヶ月以内、約1、2もしくは3週間以内、または約1、2、3、4、5もしくは6日以内に行われる。
【0328】
本発明の抗体または変異型Fc領域を含むポリペプチド(および任意の追加の治療薬)は、いずれかの適切な手段によって、例えば、非経口、肺内、および鼻腔内投与で、局所治療が望まれる場合は病巣内投与で、投与することができる。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が含まれる。投薬は、一部にはその投与が短期であるか長期であるかに応じて、いずれかの適切な経路によって、例えば、静脈内または皮下注射などの注射によって行うことができる。様々な投薬スケジュール、例えば、様々な時点での単回または複数回投与、ボーラス投与、パルス注入などが本明細書で企図される。
【0329】
本発明の抗体または変異型Fc領域を含むポリペプチドは、適正な医療実施基準(good medical practice)と合致する方法で製剤化されて、投薬されるであろう。これに関連して考慮すべき要因には、治療される特定の疾患、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、疾患の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与計画、および医療従事者に公知の他の要因が含まれる。この薬剤は、必ずしもそうである必要はないが、任意で、問題の疾患を予防または治療するために現在使用されている1つ以上の薬剤と共に製剤化されてもよい。そのような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する薬剤の量、疾患または治療のタイプ、および上述した他の要因によって決まる。これらは一般に、本明細書に記載のものと同じ投与量および投与経路で、または本明細書に記載の投与量の約1~99%で、または適切であると経験的/臨床的に決定された任意の投与量および任意の経路で使用される。
【0330】
疾患を予防または治療する場合、本発明の抗体または変異型Fc領域を含むポリペプチドの(単独でまたは1つ以上の他の追加の治療薬と組み合わせて使用する場合の)適切な投与量は、以下の諸要因によって決まる:治療される疾患の種類、抗体のタイプ、変異型Fc領域を含むポリペプチドのタイプ、疾患の重症度および経過、抗体または変異型Fc領域を含むポリペプチドが予防目的で投与されるのかまたは治療目的で投与されるのか、以前の治療法、患者の病歴および抗体または変異型Fc領域を含むポリペプチドに対する患者の応答、ならびに主治医の判断。抗体または変異型Fc領域を含むポリペプチドは、患者に一度に投与されるか、または一連の治療にわたって適切に投与される。疾患の種類および重症度に応じて、抗体または変異型Fc領域を含むポリペプチドの約1μg/kg~15mg/kg(例えば、0.1mg/kg~10mg/kg)が、例えば1回以上の別々の投与によるかまたは連続注入によるかにかかわらず、患者に投与するための初期候補投与量であり得る。ある典型的な1日投与量は、上記の諸要因に応じて、約1μg/kg~100mg/kgまたはそれ以上の範囲であり得る。疾患に応じて、数日間またはそれ以上にわたる反復投与の場合、治療は一般に、疾患症状の望ましい抑制が生じるまで続けられる。抗体または変異型Fc領域を含むポリペプチドの1つの例示的な投与量は、約0.05mg/kg~約10mg/kgの範囲である。こうして、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kgまたは10mg/kg(またはそれらの任意の組み合わせ)を1回以上患者に投与することができる。そうした用量は、断続的に、(例えば、患者が抗体または変異型Fc領域を含むポリペプチドを約2~約20回、例えば約6回、受け取るように)例えば週に1回または3週間に1回、投与され得る。初期にはより高い負荷用量を、その後は1回以上のより低い用量を投与することができる。この治療法の進行は従来の技術およびアッセイによって容易にモニタリングされる。
【0331】
上記製剤または治療方法のいずれも、抗DENV抗体の代わりにまたはそれに加えて、本発明のイムノコンジュゲートを用いて実施され得ることが理解される。同様に、上記製剤または治療方法のいずれも、本明細書に記載の変異型Fc領域を含むポリペプチドの代わりにまたはそれに加えて、本発明のイムノコンジュゲートを用いて実施され得ることが理解される。
【0332】
H. 製造品
本発明の別の局面では、上記疾患の治療、予防および/または診断に有用な物質・材料を含む製造品が提供される。その製造品は、容器と、容器上のラベルまたは容器に同封された添付文書とを含む。適切な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、IV輸液バッグなどがある。容器はガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成することができる。容器には、組成物が、単独で、または疾患を治療、予防および/もしくは診断するのに有効な他の組成物と組み合わせて、入っており、無菌のアクセスポートが付いていてもよい(例えば、容器は静脈内輸液バッグまたは皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有するバイアルであり得る)。該組成物中の少なくとも1つの活性成分は、本発明の抗体または変異型Fc領域を含むポリペプチドである。ラベルまたは添付文書には、その組成物が所定の疾患の治療に使用されることが表示される。さらに、製造品は、(a)本発明の抗体または変異型Fc領域を含むポリペプチドを含有する組成物が入っている第1の容器;および(b)さらなる細胞傷害剤またはその他の治療薬を含有する組成物が入っている第2の容器を含むことができる。本発明のこの態様における製造品は、該組成物が特定の疾患の治療に使用され得ることを示す添付文書をさらに含んでもよい。あるいは、またはさらに、製造品は、薬学的に許容される緩衝液、例えば、静菌注射用水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液などを含む第2(または第3)の容器をさらに含んでもよい。それはさらに、商業的観点およびユーザーの観点から望ましい他の材料、例えば、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、注射器など、を含むことができる。
【0333】
上記製造品のいずれも、抗DENV抗体の代わりにまたはそれに加えて、本発明のイムノコンジュゲートを含み得ることが理解される。同様に、上記製造品のいずれも、変異型Fc領域を含むポリペプチドの代わりにまたはそれに加えて、本発明のイムノコンジュゲートを含み得ることが理解される。
【実施例
【0334】
III. 実施例
以下は、本発明の方法および組成物の例である。上記の一般的な説明を考慮に入れると、その他の様々な態様を実施できることが理解されよう。
【0335】
実施例1: 抗原および抗体の作製
DENV-1、DENV-2、DENV-3、およびDENV-4由来の組換え可溶性Eタンパク質の発現と精製
カルボキシ末端に8×ヒスチジンタグを有するDENV-1、DENV-2、DENV-3、およびDENV-4由来の組換え可溶性Eタンパク質(0.8E-His)(それぞれSEQ ID NO: 65~68)を、FreeStyle293-F細胞株またはExpi293細胞株(Thermo Fisher社, Carlsbad, CA, 米国)を用いて一過性に発現させた。DENV-1、DENV-2、DENV-3、およびDENV-4由来のprM0.8E-His(それぞれSEQ ID NO: 61~64)を発現させることによって、該細胞内でprM0.8E-Hisを単一のポリペプチドとして発現させた;このポリペプチドはその後細胞内でプロセシングされてprMと0.8E-Hisの間で切断される。その結果、0.8E-Hisが細胞培養液に分泌された。0.8E-Hisを含有する馴化培養液を、ニッケルまたはコバルトを添加した固定化金属アフィニティクロマトグラフィー(IMAC)樹脂を充填したカラムにアプライし、続いてイミダゾールで溶出した。0.8E-Hisを含有する画分をプールし、Superdex 200ゲルろ過カラム(GE healthcare社, Uppsala, スウェーデン)にアプライした。0.8E-Hisを含有する画分をプールして-80℃で保存した。
【0336】
組換えヒトFcγRの発現と精製
ヒトFcγRの細胞外ドメインを以下の方法で調製した。まず、FcγRの細胞外ドメインの遺伝子を当業者に周知の方法で合成した。その際、各FcγRの配列はNCBIに登録されている情報に基づいて作製した。具体的には、FcγRIaをNCBIアクセッション番号NM_000566 (バージョン番号NM_000566.3)の配列に基づいて作製し、FcγRIIaをNCBIアクセッション番号NM_001136219 (バージョン番号NM_001136219.1)の配列に基づいて作製し、FcγRIIbをNCBIアクセッション番号NM_004001 (バージョン番号NM_004001.3)の配列に基づいて作製し、FcγRIIIaをNCBIアクセッション番号NM_001127593 (バージョン番号NM_001127593.1)の配列に基づいて作製し、FcγRIIIbをNCBIアクセッション番号NM_000570 (バージョン番号NM_000570.3)の配列に基づいて作製し、そして各FcγR構築物のC末端にHisタグを結合させた。さらに、多型の存在がFcγRIIa、FcγRIIIa、およびFcγRIIIbについて知られており、FcγRIIaの場合はWarmerdam et al. (J Exp Med (1990) 172, 19-25)を、FcγRIIIaの場合はWu et al. (J Clin Invest (1997) 100, 1059-1070)を、FcγRIIIbの場合はOry et al. (J Clin Invest (1989) 84, 1688-1691)を参照することによって、多型部位を作製した。
【0337】
得られた遺伝子断片を動物細胞発現ベクターに挿入することにより発現ベクターを構築した。構築した発現ベクターをヒト胚性腎臓癌細胞由来のFreeStyle293細胞(Invitrogen社)に一過性に導入して、対象となるタンパク質を発現させた。一過性導入を受けた上記細胞の培養液から得られた培養上清を0.22μmフィルターでろ過して調製した液体を、原則として、以下の4工程により精製した:(i)カチオン交換カラムクロマトグラフィー(SP Sepharose FF);(ii)Hisタグ用のアフィニティカラムクロマトグラフィー(HisTrap HP);(iii)ゲルろ過カラムクロマトグラフィー(Superdex200);および(iv)滅菌ろ過。FcγRIを精製するために、Q Sepharose FFを用いたアニオン交換カラムクロマトグラフィーを工程(i)に使用した。精製したタンパク質の吸光度を分光光度計を用いて280nmで測定した。その測定値に基づいて、PACE (Protein Science (1995) 4, 2411-2423)などの方法によって決定された吸光係数を用いて、精製タンパク質の濃度を算出した。
【0338】
組換えマウスFcγRの発現と精製
マウスFcγR(mFcγR)の細胞外ドメインを以下の方法で調製した。まず、FcγRの細胞外ドメインの遺伝子を当業者に一般的に知られた方法で合成した。この合成では、NCBIに登録されている情報に基づいて各FcγRの配列を作製した。具体的には、mFcγRIをNCBIリファレンス配列: NP_034316.1の配列に基づいて作製し、mFcγRIIbをNCBIリファレンス配列: NP_034317.1の配列に基づいて作製し、mFcγRIIIをNCBIリファレンス配列: NP_034318.2の配列に基づいて作製し、そしてmFcγRIVをNCBIリファレンス配列: NP_653142.2の配列に基づいて作製した。これらの配列のそれぞれにHisタグをC末端で付加した。
【0339】
得られた各遺伝子断片を動物細胞での発現用のベクターに挿入して発現ベクターを作製した。作製した発現ベクターをヒト胚性腎臓癌細胞由来のFreeStyle293細胞(Invitrogen社)に一過性に導入して、対象となるタンパク質を発現させた。得られた培養上清を回収した後、0.22μmフィルターに通して培養上清を得た。得られた培養上清を、原則として、以下の4工程により精製した:(i)イオン交換カラムクロマトグラフィー;(ii)Hisタグ用のアフィニティカラムクロマトグラフィー(HisTrap HP);(iii)ゲルろ過カラムクロマトグラフィー(Superdex200);および(iv)滅菌ろ過。工程(i)のイオン交換カラムクロマトグラフィーは、mFcγRIについてはQ Sepharose HPを、mFcγRIIbとmFcγRIVについてはSP Sepharose FFを、そしてmFcγRIIIについてはSP Sepharose HPを用いて実施した。工程(iii)以降では溶媒としてD-PBS(-)を用いたが、mFcγRIIIには0.1Mアルギニンを含有するD-PBS(-)を用いた。分光光度計を用いて280nmで各精製タンパク質について吸光度を測定し、得られた値からPACE (Protein Science (1995) 4, 2411-2423)などの方法によって計算された吸光係数を用いて、精製タンパク質の濃度を算出した。
【0340】
組換えヒトFcRnの発現と精製
FcRnは、FcRnα鎖とβ2-ミクログロブリンとのヘテロダイマーである。公開されているヒトFcRn遺伝子配列(J Exp Med (1994) 180, 2377-2381)に基づいて、オリゴDNAプライマーを作製した。鋳型としてのヒトcDNA (Human Placenta Marathon-Ready cDNA, Clontech社)および作製したプライマーを用いて、PCRにより全遺伝子をコードするDNA断片を作製した。得られたDNA断片を鋳型として用いて、シグナル領域を含む細胞外ドメイン(Met1-Leu290)をコードするDNA断片をPCRで増幅し、哺乳動物細胞発現ベクターに挿入した。同様に、公開されているヒトβ2-ミクログロブリン遺伝子配列(Proc Natl Acad Sci USA (2002) 99, 16899-16903)に基づいて、オリゴDNAプライマーを作製した。鋳型としてのヒトcDNA (Human Placenta Marathon-Ready cDNA, Clontech社)および作製したプライマーを用いて、PCRにより全遺伝子をコードするDNA断片を作製した。得られたDNA断片を鋳型として用いて、シグナル領域(Met1-Met119)を含む全タンパク質をコードするDNA断片をPCRで増幅し、哺乳動物細胞発現ベクターに挿入した。
【0341】
可溶性ヒトFcRnを以下の手順で発現させた。ヒトFcRnα鎖(SEQ ID NO: 81)およびβ2-ミクログロブリン(SEQ ID NO: 82)の発現用に構築されたプラスミドを、ヒト胚性腎臓癌由来細胞株HEK293H (Invitrogen社)の細胞に、PEI (Polyscience社)を用いたリポフェクタミン法によって導入した。得られた培養上清を回収し、FcRnを、IgG Sepharose 6 Fast Flow (Amersham Biosciences社)を用いて精製した後、HiTrap Q HP (GE Healthcare社)を用いてさらに精製した(J Immunol (2002) 169, 5171-5180)。
【0342】
組換え抗体の発現と精製
FreeStyle293-F細胞株またはExpi293細胞株(Thermo Fisher社, Carlsbad, CA, 米国)のいずれかを用いて、組換え抗体を一過性に発現させた。抗体を発現している馴化培養液からの精製は、プロテインAを用いて従来の方法で行った。必要に応じて、ゲルろ過をさらに行った。
【0343】
組換え可溶性ヒトCD154の発現と精製
ヒトCD154遺伝子を、公開されているタンパク質配列(NP_000065.1)に基づいて合成した。FLAGタグを有する可溶性形態のヒトCD154 (shCD154)をコードするDNA断片を、合成したDNAを鋳型として用いてPCRにより作製し、得られたDNA断片を哺乳動物細胞発現ベクターに挿入し、それによってFLAG-shCD154 (SEQ ID NO: 106)発現ベクターを作製した。得られた発現ベクターのヌクレオチド配列を、当業者に公知の従来の方法論を用いて決定した。FLAG-shCD154は、FreeStyle 293細胞株(Invitrogen社)を用いて、メーカーが提供するプロトコルにより記載されるとおりに発現させた。トランスフェクション後、該細胞を適切な時間増殖させてから馴化培養液を回収した。その馴化培養液を、25mM MES (pH6.0)を用いてカチオン交換クロマトグラフィーにかけ、連続勾配25mM MES、1M NaCl (pH6.0)でFLAG-shCD154を溶出した。ピーク画分をプールし、AmiconUltra Ultracelを用いて濃縮し、リン酸緩衝生理食塩水(Wako社)を用いてゲルろ過クロマトグラフィーにかけた。ピーク画分を再度プールし、Amicon Ultra Ultracelを用いて濃縮し、次に0.22μm PVDFメンブレンフィルターでろ過して滅菌した。精製FLAG-shCD154の濃度を決定するために、分光光度計を用いて280nmで吸光度を測定した。測定された値から、Protein Science (1995) 4: 2411-2423に記載の方法によって計算された吸光係数を用いて、タンパク質濃度を算出した。
【0344】
実施例2: DENV Eタンパク質に対するアフィニティが改善された抗体変異体の作製
抗DENV Eタンパク質抗体のVH (3CH, SEQ ID NO: 1)およびVL (3CL, SEQ ID NO: 7)をコードする遺伝子を合成し、それぞれ、ヒトIgG1 CH (SG182, SEQ ID NO: 46)およびヒトCL (SK1, SEQ ID NO: 60)と組み合わせて、両方の構築物を単一の発現ベクターにクローニングした。この抗体は、本明細書では、DG_3CH-SG182/3CL-SK1または3Cと呼ばれる。
【0345】
3Cの結合特性を改善する突然変異およびそれらの組み合わせを同定するために、多くの突然変異およびそれらの組み合わせを調べた。次に、Eタンパク質に対する結合アフィニティを高めるために、可変領域に複数の突然変異を導入した。こうして、最適化されたVH変異体である3CH912 (SEQ ID NIO: 2)、3CH953 (SEQ ID NO: 3)、3CH954 (SEQ ID NO: 4)、3CH955 (SEQ ID NO: 5)、3CH1047 (SEQ ID NO: 6)、3CH987 (SEQ ID NO: 90)、3CH989 (SEQ ID NO: 91)、3CH992 (SEQ ID NO: 92)、3CH1000 (SEQ ID NO: 93)、3CH1046 (SEQ ID NO: 94)、3CH1049 (SEQ ID NO: 95)、および最適化されたVL変異体である3CL499 (SEQ ID NO: 8)、3CL563 (SEQ ID NO: 9)、3CL658 (SEQ ID NO: 10)、3CL012 (SEQ ID NO: 96)、3CL119 (SEQ ID NO: 97)、3CL633 (SEQ ID NO: 98)、3CL666 (SEQ ID NO: 99)、3CL668 (SEQ ID NO: 100)が得られた。VHをコードする遺伝子をヒトIgG1 CH (SG182, SEQ ID NO: 46; SG1095, SEQ ID NO: 54; またはSG1106, SEQ ID NO: 59のいずれか1つ)と組み合わせ、かつVLをコードする遺伝子をヒトCL (SK1, SEQ ID NO: 60)と組み合わせた。それらの各々を発現ベクターにクローニングした。抗体変異体のアミノ酸配列を表2に示す。変異体の1つ、DG_3CH1047-SG182/3CL658-SK1は本明細書では3Camとも呼ばれ、もう1つの変異体、DG_3CH1047-SG182/3CL-SK1は本明細書では3Cam2と呼ばれる。
【0346】
抗体は、重鎖発現ベクターと軽鎖発現ベクターの混合物でコトランスフェクトしたHEK293細胞において発現させ、プロテインAにより精製した。
【0347】
(表2)3Cおよび3C変異体のアミノ酸配列
【0348】
DENV-1、DENV-2、DENV-3、およびDENV-4のEタンパク質に結合する抗DENV Eタンパク質抗体のアフィニティを、Biacore T200機器(GE Healthcare社)を用いて25℃で測定した。アミンカップリングキット(GE Healthcare社)を用いて抗ヒスチジン抗体(GE Healthcare社)をCM4センサーチップの全てのフローセルに固定化した。全ての抗体および被分析物は、20mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、0.05%Tween 20および0.005%NaN3を含有する、pH7.4のPBS中に調製した。C末端Hisタグを有するDENV-1、DENV-2、DENV-3、およびDENV-4のEタンパク質をフローセル2または3に捕捉し、フローセル1を参照フローセルとした。Eタンパク質の捕捉レベルは200レゾナンスユニット(RU)を目指した。抗DENV Eタンパク質抗体をセンサー表面全体に250nMで180秒間注入し、続いて300秒間解離させた。各サイクル後に10mM Gly-HCl pH1.5を用いてセンサー表面を再生した。結合アフィニティは、Biacore T200の解析ソフトウェア、バージョン2.0 (GE Healthcare社)を用いてデータを処理し、1:1結合モデルにフィットさせることによって測定した。
【0349】
表3aおよび3bは、DENV-1(表ではDV1と記載)、DENV-2(表ではDV2と記載)、DENV-3(表ではDV3と記載)、およびDENV-4(表ではDV4と記載)のEタンパク質に結合する抗DENV Eタンパク質抗体のアフィニティ(Kd)を示す。各3C変異体は、親3Cと比較して、4つ全てのDENV血清型に対して増加した結合アフィニティを示した。例として、親抗体3C (DG_3CH-SG182/3CL-SK1)および1つの変異型抗体3Cam (DG_3CH1047-SG182/3CL658-SK1)のセンサーグラムを図1に示す。また、親抗体3C (DG_3CH-SG182/3CL-SK1)および1つの変異型抗体3Cam2 (DG_3CH1047-SG182/3CL-SK1)のセンサーグラムを図10に示す。
【0350】
(表3a)4つのDENV血清型に対する3Cおよび3C変異体のKd値
注:* 強い結合物質、遅いオフ速度<1E-05、KDは一意に決定され得ない。
【0351】
(表3b)DENV1およびDENV3血清型に対する3Cおよび3C変異体のKd値
注:* 強い結合物質、遅いオフ速度<1E-05、KDは一意に決定され得ない。
【0352】
実施例3: 改善された特性のための抗体CH変異体の作製
ヒトIgG1重鎖定常領域CH (SG182, SEQ ID NO: 46)に複数の変異を導入した。その結果として、ヒトIgG1 CH変異体のSG192 (SEQ ID NO: 47)、SG1085 (SEQ ID NO: 48)、SG1086 (SEQ ID NO: 49)、SG1087 (SEQ ID NO: 50)、SG1088 (SEQ ID NO: 51)、SG1089 (SEQ ID NO: 52)、SG1090 (SEQ ID NO: 53)、SG1095 (SEQ ID NO: 54)、SG1096 (SEQ ID NO: 55)、SG1097 (SEQ ID NO: 56)、SG1098 (SEQ ID NO: 57)、SG1105 (SEQ ID NO: 58)、SG1106 (SEQ ID NO: 59)、SG1109 (SEQ ID NO: 107)、SG1044 (SEQ ID NO: 108)、およびSG1045 (SEQ ID NO: 109)が作製された。CH変異体をコードする遺伝子を3CのVH (3CH, SEQ ID NO: 1)、1つの3C変異体のVH (3CH1047, SEQ ID NO: 6)、または抗CD154抗体のVH (SLAPH0336a, SEQ ID NO: 88)と組み合わせた。抗CD154抗体のVL遺伝子(SLAPL0336a, SEQ ID NO: 89)をヒトCL (SK1, SEQ ID NO: 60)と組み合わせた。それらの各々を発現ベクターにクローニングした。CH変異体の詳細を表4に要約する。各Fc受容体に対するCH変異体のアフィニティ結合を評価するために、三量体抗原CD154の存在下で大きな免疫複合体を形成することができる抗CD154抗体の可変領域SLAPH0336a/SLAPL0366aを使用した。
【0353】
抗体は、重鎖発現ベクターと軽鎖発現ベクターの混合物でコトランスフェクトしたHEK293細胞において発現させ、プロテインAにより精製した。
【0354】
(表4)変異型Fc領域のアミノ酸配列
【0355】
実施例4: Fc変異体を有する抗体の補体C1qに対する結合アフィニティ
ヒトC1q結合アッセイ
Fc変異体を有する抗CD154抗体(実施例3に記載の方法を用いて作製された自社(in-house)抗体)をNunc-ImmunoPlate MaxiSorp (Nalge Nunc International社)に分注し、4℃で一晩静置した。PBSTで洗浄した後、そのプレートを、0.5%BSAおよび1×Block Ace:ブロッキング剤(DS Pharma社)を含有するTBSTにより室温で2時間ブロックした。プレートを洗浄した後、ヒトC1q (Calbiochem社)をプレートに分注して、室温で1時間静置した。該プレートを洗浄し、HRP標識抗ヒトC1q抗体(Bio Rad社)を加えて室温で1時間反応させ、洗浄を行った。続いて、TMB基質(Invitrogen社)を添加した。シグナルをプレートリーダーにより450nm(試験波長)および570nm(基準波長)の波長で測定した。野生型Fc領域を有する抗体(WT)のヒトC1qへの結合アフィニティは、Fc領域にLALA変異を導入することによって低下し、ヒトC1qに対する結合アフィニティの低下は、LALA変異に加えて、KWES、EFT、またはEFT+AEをさらに導入することで回復した(図2)。LALA+KMES変異は結合アフィニティをわずかに増加させたが、LALA+KWES、LALA+KAES、およびLALA+KEES変異体はWTに匹敵するアフィニティでC1qに結合した(図3)。上記のLALAまたはLALA+KAES変異体の結合特性は、ACT3またはACT5変異をさらに導入しても影響を受けなかった(図4)。
【0356】
マウスC1q結合アッセイ
Fc変異体を有する抗CD154抗体(実施例3に記載の方法を用いて作製された自社抗体)をNunc-ImmunoPlate MaxiSorp (Nalge Nunc International社)に分注し、4℃で一晩静置した。PBSTで洗浄した後、そのプレートを0.5%BSAおよび1×Block Ace:ブロッキング剤(DS Pharma社)を含有するTBSTにより4℃で7時間ブロックした。プレートを洗浄した後、10%マウス血漿(Innovative Research社)を該プレートに分注し、4℃で一晩静置した。プレートを洗浄し、ビオチン化抗マウスC1q抗体(Hycult Biotech社)を加えて室温で1時間反応させ、洗浄を行った。ストレプトアビジン-HRP (Pierce社)を加えて室温で1時間反応させ、洗浄した。続いて、ABTS ELISA HRP基質(KPL社)を添加した。シグナルをプレートリーダーにより405nmの波長で測定した。野生型Fc領域を有する抗体(WT)のマウスC1qへの結合アフィニティは、Fc領域にLALA変異を導入することによって低下し、マウスC1qに対する結合アフィニティの低下は、LALA変異に加えて、KAESをさらに導入することで回復した。上記のLALAまたはLALA+KAES変異体の結合特性は、ACT3またはACT5変異をさらに導入しても影響を受けなかった(図5)。
【0357】
実施例5: FcγRおよびFcRnに結合するFc変異体のBiacore解析
pH7.4でのヒトまたはマウスFcγRおよびヒトFcRnに対するFc変異体の結合は、Biacore T200機器(GE Healthcare社)を用いて25℃で測定した。全ての抗体およびFcγRまたはFcRnは、50mMリン酸Na、150mM NaCl、0.05%Tween 20、0.005%NaN3を含有する、pH7.4のPBS-P中に調製した。FcγR結合アッセイでは、抗ヒスチジン抗体(GE Healthcare社)を、アミンカップリングキット(GE Healthcare社)を用いてCM4センサーチップの全てのフローセルに固定化した。FcγRのそれぞれを抗ヒスチジン抗体でフローセル2、3、または4に捕捉し、フローセル1を参照フローセルとした。FcγRの捕捉レベルは400レゾナンスユニット(RU)を目指した。全ての抗体を全てのフローセルに100nMで注入した。抗体と三量体CD154を1:1のモル比で混合することによって免疫複合体を調製し、室温で1時間インキュベートした。センサー表面は、各サイクル後に10mMグリシン-HCl pH1.5を用いて再生させた。
【0358】
FcRn結合アッセイでは、Biotin CAPtureキット(GE Healthcare社)を用いて、Biotin CAPture試薬(GE Healthcare社)をCAPセンサーチップのフローセル1および2の両方に固定化した。フローセル1を参照フローセルとして、フローセル2にビオチン化FcRnを捕捉した。FcRnの捕捉レベルは400RUを目指した。全ての抗体をフローセル1および2に100nMで注入した。抗体と三量体CD154を1:1のモル比で混合することによって免疫複合体を調製し、室温で1時間インキュベートした。センサー表面は、各サイクル後に8Mグアニジン-HCl、1M NaOH (3:1 vol/vol)を用いて再生させた。
【0359】
結合レベルは、対応するFcγRまたはFcRnの捕捉レベルに対して正規化した。ヒトもしくはマウスFcγRおよびヒトFcRnに対する抗体単独または免疫複合体(抗体と三量体CD154抗原)の結合を、結合応答に基づいてモニターした。免疫複合体は、アビディティ効果(avidity effect)によるFcγRまたはFcRnへの増強された結合を評価するために使用した。ヒトFcγR1a、FcγR2a 167Hおよび167R、FcγR2b、FcγR3a 158Fおよび158V、FcγR3b NA1およびNA2についての結果を図6(a)~(h)に示す。マウスFcγR1、FcγR2b、FcγR3、FcγR4についての結果を図7(a)~(d)に示す。野生型Fc領域(WT IgGと記載)の結合は、試験したFcγRのそれぞれについて、LALA、LALA+KAESまたはLALA+KWES変異をFc領域に導入することによって、有意に低下した。その傾向は、抗体単独(Ab単独と記載)および免疫複合体(CD154 ICと記載)を用いたアッセイ間でほぼ同じであった。KAESまたはKWES変異体の結合は、試験したFcγRのほとんどについて、WT IgGの結合と比較して大幅には低下しなかった。ヒトFcRnについての結果を図8に示す。野生型Fc領域(hIgG1と記載)のヒトFcRnへの結合は、LALAまたはLALA+KAES変異をFc領域に導入した後でさえも、影響を受けないようであった。その結合は、ACT3またはACT5変異をさらに導入することによってわずかに増強されたが、それでも比較的低いままであった(図8)。
【0360】
実施例6: DENV感染に対する抗DENV抗体のインビボ有効性
6~8週齢のAG129マウスに、106プラーク形成単位(pfu)のDENV-2株D2Y98Pを腹腔内感染させた。48時間後、マウスをPBS中25μgの抗体で処置した。該抗体を眼窩後方経路から静注した。さらに24時間後、すなわち最初の感染から72時間後、血液を採取した。以前の研究(Zust et al, J Virol (2014) 88, 7276-7285; Tan et al, PLOS Negl Trop Dis (2010) 4, e672)では、D2Y98P感染後のウイルス血症のピークは、感染後3~4日間で到達することが証明されている。ウイルスRNAを各マウス由来の血漿から抽出し、定量的PCRを実施して、プラークアッセイで既知の感染力を有するDENV-2標準と比較した。3C抗体と3Cam抗体は両方とも、このマウスモデルにおいてPBS対照と比較してウイルス血症を大幅に軽減させ、両抗体の有効性は同程度であった。Fc領域にLALA+KAES変異を有する抗体は、LALA変異のみを有する抗体と比較して、より強い有効性を示した。これは、3C抗体と3Cam抗体の両方に当てはまった(図9)。この結果は、LALA変異にKAES変異を加えることによるC1q結合活性の回復が抗体の抗ウイルス効果に寄与することを示している。
【0361】
上記発明は、理解を明確にする目的で、説明および実施例によってある程度詳しく記載されてきたが、その説明および実施例は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。本明細書に引用された全ての特許および科学文献の開示は、その全体が参照により本明細書に明示的に組み入れられる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
【配列表】
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